説明

低タンパク質及び無タンパク質で液状クリーマー、液状クリーマー濃縮液及び粉末状クリーマー、並びにこれらの製造方法

本発明は、低タンパク質及び無タンパク質クリーマー組成物、及びこれらの製造方法を提供する。クリーマー組成物は、少なくとも1種の乳化剤の乳化成分、少なくとも1種の緩衝剤の緩衝系、及び有機酸塩又は有機酸塩の少なくとも1種のキレート化剤のキレート系を含む。クリーマーは、クリーマーを加える水性媒体をさらに白色化するのに十分な量の白色剤を任意選択で含有する。組成物の脂肪又は油の含有量は、約0.5重量%〜約50重量%であり、タンパク質含有量は3重量%以下である。クリーマー組成物は、液状、濃縮液又は粉末状の形態とすることができ、様々なpH、硬度及び温度で飲物の水性媒体に加えられるとき、高い白色化能、及び認識できるフェザリング又は脂肪分離の無い心地よい口当たりをもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存期限が延長され(ESL)、無菌包装された非乳製品の液状クリーマー、液状クリーマー濃縮液及び粉末状クリーマーのための組成物、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーマーは、白色剤として、コーヒー、ココア及び紅茶などの、熱い飲物及び冷たい飲物と一緒に使用される。クリーマーは、粉末又は粒子の形態で、ミルク又はクリームの代用品としても、例えば、シリアルと一緒に又は調理に使用される。異なる香味のクリーマーが入手でき、口当たり、こく(body)及び質感などの所望の品質の点から様々であることが多い。
【0003】
クリーマー(又はホワイトナー)は、液状、濃縮液又は粉末状形態で入手できる。液状及び粉末状クリーマーは、小売及び食品提供サービス用途で広く使用されている。濃縮液及び粉末状クリーマーはまた、液体若しくは粉末の飲物の成分として、又は自動販売機に使用されている。
【0004】
新鮮な又は冷蔵保存された乳製品クリーマーは、通常、良好な口当たりをもたらすが、冷蔵条件下でさえ急速に傷んでしまうその傾向が、使用を不便にしている。この欠点は、非乳製品クリーマーによって克服できるが、管理可能な一定粘度を有し、冷蔵温度及び周囲温度のどちらでも数カ月間の保存中に安定である、保存期限が延長された(ESL)又は無菌の、均質な液体製品を創製するためには、依然として難題が残っている。粉末状クリーマーに対する主な難題は、製造工程中の良好なエマルション安定性、並びに飲物に加える際に、油の分離、フェザリング、沈殿、及びその他の物理化学的不安定性の問題の無い良好な溶解性である。
【0005】
コーヒーホワイトナーとしての非乳製品コーヒークリーマーの市場は急速に成長しており、米国は、このタイプの製品の主要市場である。低脂肪及び無脂肪クリーマーに対する需要も増えている。脂肪はエマルションの達成を助けるので、低脂肪又は無脂肪で、所望の安定性、色、質感、こく及び香味を有するクリーマーを提供することはさらなる難題である。
【0006】
クリーマーは、コーヒーなどの冷たい又は熱い飲物に加えた場合、良好な白色化能をもたらし、急速に溶解し、油の分離、フェザリング及び/又は沈殿の無い安定した状態を保ち、優れた味を提供すべきである。熱く酸性の環境において、並びに硬水を飲物の調製に使用する場合、物理的安定性を達成することは、特に難しいことに留意されたい。
【0007】
欧州特許出願第0457002号及び米国特許第3,935,325号などのいくつかの特許は、水、植物油、タンパク質又はタンパク質加水分解物、炭水化物、緩衝塩、乳化剤及びその他の材料から製造されるコーヒークリーマーを記載している。しかし、これらのコーヒーホワイトナーは、保存安定性がない。
【0008】
米国特許第4,748,028号は、無菌の液体コーヒーホワイトナー及びその調製方法を開示している。この方法には、水、植物性脂肪、乳化剤、乳タンパク質、塩及びその他の材料の混合物の超高温(UHT)滅菌を行うステップ、冷却するステップ、均質化するステップ、及びさらに冷却するステップ、並びに得られた液体を、無菌条件下で無菌容器に充填するステップが含まれる。このコーヒーホワイトナーの主な欠点は、クリーマー中の高レベルの脂肪、及び脂肪レベルを減らすとクリーマーの白色化力が不十分になることである。このクリーマーはまた、冷蔵条件下でのみ褐色化に対して安定である(最大4カ月)。
【0009】
米国特許第4,784,865号は、低脂肪乳、脱脂粉乳、好ましくはモノグリセリド又はジグリセリドから製造される乳化剤、及び白色剤としてのTiOを含む乳製品コーヒーホワイトナーを記載している。この製品は殺菌されており、冷蔵条件下及び非冷蔵条件下で、それぞれ少なくとも90日間及び30日間、安定した状態を保つ。このホワイトナーにはいずれの安定化系も無いので、保存中にTiOの深刻な沈殿が予想され得る。さらに、この製品は無菌処理されていないので、保存期限の延長(少なくとも6カ月)を達成することができない。
【0010】
米国特許第5,571,334号特許は、デンプン系乳白剤、その製造方法、並びに乳白剤を含有する食品及び非食品配合物を記載している。この乳白剤は、デンプンマトリックス中に組み込まれた乳白剤(例えばTiO)を含む。しかし、この開示におけるクリーマーは、無菌処理されていないので、保存期限の延長(少なくとも6カ月)を達成することができない。さらに、クリーマーのエマルション安定性を達成するために、大量のカゼインナトリウムが使用される。
【0011】
PCT出願国際公開第2007/044782号パンフレットは、安定なエマルションを達成するために、乳化剤のレベルが少なくとも1%の非乳製品で無菌の液状クリーマーを記載している。この乳化剤を、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、又はカゼインカリウムなどの乳タンパク質と組み合わせて、クリーマーの安定性を達成する。
【0012】
まとめると、現在、既存のクリーマー技術は、エマルション安定性を達成するために、通常非常に高いレベルのタンパク質を使用することを必要とする。タンパク質は強力な乳化剤として知られ、カゼイン、カゼインナトリウム及び乳清タンパク質などの乳タンパク質が、それらの独特の乳化特性のために好ましい。しかし、超高温(UHT)処理した液体コーヒークリーマーにタンパク質を加えると、タンパク質の変性及びタンパク質又はこれらの誘導体の水溶性の低下による沈殿を引き起こすことがある。さらに、粉末状クリーマー中のタンパク質は、熱い飲物、とりわけ酸性の環境においてクリーマーを再構成(reconstitution)した後、沈殿及び綿状沈殿を引き起こすことがある。その上、タンパク質と低分子量の乳化剤との競合によってエマルションが不安定になり、その結果製品にクリーミングが起こることがある。
【0013】
カゼイン及びカゼインナトリウムなどのタンパク質をクリーマーに使用することにおける別の欠点は、ESL又は無菌の液状クリーマーが保存中に凝集することである。例えば、クリーマーを、冷蔵温度、室温又は高温で保存すると、一晩で「塊(plug)」が形成され、注ぐことが困難になり、製品が使用できなくなることがある。さらに、コーヒーに加えると、熱く酸性の環境で、とりわけCa2+及び/又はMg2+イオンの存在下で、タンパク質のエマルションが不安定になることによってフェザリングが起こることがある。
【0014】
最後に、カゼインなどのタンパク質の原価の上昇に伴い、クリーマー中のタンパク質を低減又は排除することが望ましい。低タンパク質又は無タンパク質クリーマーを作る際の難題は、保存中、及び飲物、とりわけ熱く酸性の飲物に再構成した後に、相分離(例えば、クリーミング、ゲル化、離液)の無い安定なエマルションを達成することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、低タンパク質又は無タンパク質だが、新鮮なクリーマーの所望の特性を依然として保つ、ESL及び無菌の液状クリーマー、液状クリーマー濃縮液及び粉末状クリーマーが必要とされている。具体的には、このような低タンパク質又は無タンパク質クリーマーは、保存期限を通して良好な物理化学的安定性(クリーミング及び沈殿の無い)、及びコーヒーや紅茶などの液体の飲物に加えた時の心地よい口当たり(フェザリング及び脂肪分離の無い)を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に記載の本発明は、少なくとも1種の乳化剤を含む乳化成分、少なくとも1種の緩衝剤を含む緩衝系、及び有機酸又は有機酸塩の少なくとも1種のキレート化剤を含むキレート系を含む、非乳製品で低タンパク質又は無タンパク質のクリーマー組成物を提供することによって、当技術の対処されていないニーズを満たす。組成物は、クリーマーを加える水性媒体をさらに白色化するのに十分な量の白色剤を任意選択で含む。有利には、組成物の脂肪又は油の含有量は、組成物の約0.5重量%〜約50重量%であり、タンパク質含有量は組成物の3重量%以下である。これらの組成物は、様々なpH、硬度及び温度の飲物の水性媒体に加えられるとき、高い白色化能、及び認識できるフェザリング又は脂肪分離の無い心地よい口当たりをもたらす。
【0017】
本発明のクリーマーは、(a)開封前は周囲温度で少なくとも約9カ月間安定な、無菌の液状又は濃縮液クリーマー、(b)保存期限が延長され(ESL)、冷蔵温度で少なくとも約2カ月間安定な、液状又は濃縮液クリーマー、又は(c)周囲温度で少なくとも約24カ月間安定な粉末状クリーマーの形態とすることができる。本発明のクリーマーは、無タンパク質であるか、タンパク質含有量が組成物の3重量%以下である。本発明の液状又は濃縮液クリーマー組成物において、総固形分は、組成物の5重量%〜80重量%の範囲であるが、本発明の粉末状クリーマー組成物においては、総固形分が、組成物の94重量%〜99重量%の範囲である。本発明のクリーマー組成物は、脂肪又は植物油をさらに含む。
【0018】
本発明のクリーマーの実施形態において、少なくとも1種の乳化剤は、組成物の0.05重量%〜3.5重量%の量で存在する中程度の疎水性/親油性バランス(HLB)乳化剤である。好ましくは、中程度のHLB乳化剤は、スクシニル化モノグリセリド、スクシニル化ジグリセリドなどのグリセリド化合物、又はこれらの組合せを含む。好ましくは、組合せが使用される場合、ジグリセリドは、組成物中の総グリセリドの0.01重量%〜25重量%の量で存在する。スクシニル化ジグリセリドの脂肪酸鎖長はC−4〜C−24である。
【0019】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1種の緩衝剤は、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、有機酸若しくは無機酸の食品グレードの塩であるか、又は有機酸若しくは無機酸と組み合わされ、かつ、組成物の0.05重量%〜3.5重量%の量で存在する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種のキレート化剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、EDTA、EDTAのナトリウム塩若しくはカリウム塩、フィチン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸又はこれらの酸のナトリウム塩及びカリウム塩、又はこれらの組合せであり、組成物の0.02重量%〜3重量%の量で存在する。
【0021】
クリーマーは、低タンパク質又は無タンパク質とすることができる。本発明の低タンパク質クリーマー組成物において、乳化剤と油の重量比は、0.05:1〜5:1の範囲であり、緩衝剤と乳化剤は、0.1:1〜20:1の間の重量比で存在し、キレート化剤と乳化剤の重量比は、0.1:1〜15:1の範囲である。これらの比の組合せが存在することによって、最適な結果を得ることができる。
【0022】
本発明の無タンパク質クリーマー組成物において、乳化剤と油の重量比は、0.1:1〜4.5:1の範囲であり、緩衝剤と乳化剤の重量比は、0.5:1〜10:1であり、キレート化剤と乳化剤の重量比は、0.5:1〜10:1である。これらの比の組合せが存在することによって、最適な結果を得ることができる。
【0023】
これらのクリーマー中にタンパク質が存在してもよく、好都合なことには、カゼインがこの目的のために含まれている。油又は脂肪が約0.5%〜約20%の量で存在する場合、最大1〜1.5%のカゼインを使用することができ、一方、20%〜50%の油又は脂肪は、最大1.5〜2%のカゼインと共に存在することができ、油又は脂肪の量が多くなるのに対応してカゼインの量も多くなる。別法として、油又は脂肪とカゼインとの比は、0.5%〜20%の油又は脂肪を有するクリーマーに対しては40:1〜60:1、及び20%〜50%の油又は脂肪を有するクリーマーに対しては50:1〜60:1とすることができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、クリーマーは粉末状クリーマーの形態であり、約100〜約4000ミクロンの粒径を有する。
【0025】
ホワイトナーを使用する場合に好ましいものは、粒径が約0.1〜約0.7ミクロンで、平均粒径が0.3ミクロンの二酸化チタンであり、組成物の約0.1〜約1重量%の量で存在する。
【0026】
本発明は、水性液体、コーヒー、紅茶、チョコレート又は果実飲料などの飲物を形成する成分、及び飲物にクリーム効果をもたらすのに十分な量の本発明のクリーマーを含む飲物をさらに提供する。本発明のクリーマーは、食品と共に消費するため又は調理に使用するための乳製品代用品としても使用することができる。本発明のクリーマーは、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸塩及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の食品グレードの保存料をさらに含むことができる。
【0027】
本発明は、粉末形態又は液体形態の、乳化成分、緩衝剤及びキレート化剤、又はこれらの組合せを用意するステップ、並びに粉末成分を撹拌しながら水に溶解するステップを含む、本発明のクリーマーの製造方法をさらに提供する。水は、冷水、熱水、又は冷水の後、加熱した水、又は熱水の後、冷やした水とすることができる。一実施形態において、この方法は、粉末形態又は液体形態の甘味料若しくは白色剤又はこれらの組合せを、撹拌しながら水に加えるステップをさらに含む。さらに、植物油又は脂肪を水に加えて全ての成分の混合物を作製し、続いて、この混合物を、超高温(UHT)殺菌(pasteurization)若しくは滅菌(sterilization)、レトルト処理及びその他の熱処理手順からなる群から選択される加熱処理に供し、均質化し、冷却し、次いで、無菌条件下で容器に充填して液状若しくは濃縮液クリーマーを作製する、又は乾燥して粉末にし、無菌条件下で粉末を容器に充填して粉末状クリーマーを作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
高い疎水性/親油性バランス(HLB)値を有する乳化剤は、安定な水中油エマルションに最高の安定性をもたらすことがよく知られている。驚くべきことに、本発明者らは、スクシニル化モノグリセリド、スクシニル化ジグリセリド及びこれらの組合せから選択されるグリセリドなどの中程度のHLBを有する乳化剤が、低タンパク質及び無タンパク質環境において、液状クリーマーの最高のエマルション安定性をもたらすことを見出した。本発明は、中程度のHLB乳化剤、緩衝剤及びキレート化剤の組合せによって形成される新規な複合安定化系を活用することによって、低タンパク質及び無タンパクでESL及び無菌の液状クリーマー、濃縮液クリーマー及び粉末状クリーマーを提供する。本発明の無菌液状クリーマーは、少なくとも9カ月間貯蔵安定性があり、一方、粉末状クリーマーは、少なくとも24カ月の保存期限を有する。本発明のクリーマーは、コーヒー、紅茶、ココア又は果実飲料などの液体又は粉末の飲物用のホワイトナーとして使用することができる。クリーマーは、直接又はシリアルと一緒に消費され得る乳製品代用品として、ベリー類用のクリームや、スープ用のクリーマーとして、及びその他の多くの調理用途にも使用することができる。本発明のクリーマーをコーヒー又はその他の液体の飲物と組み合わせる場合、得られる液体は、2〜15%、好ましくは4〜10%、最も好ましくは5〜8%の固形分を有し、液体の飲物として消費できる。本発明のクリーマーは、RTDの飲物、2イン1又は3イン1濃縮液、及び2イン1又は3イン1粉末混合物などのその他の製品の一部としても使用できる。
【0029】
本発明の新規な複合安定化系によって、タンパク質のレベルを低減して使用して安定なエマルションを達成することができる。例えば、約0.5%〜約20%の油又は脂肪を含有する本発明の低タンパク質クリーマーは、安定なエマルションを得るためのカゼインを0〜1−1.5%しか必要としない。同様に、約20%〜50%の油又は脂肪を含有する本発明の低タンパク質クリーマーは、安定なエマルションを得るためのカゼインを0〜1.5−2.0%しか必要としない。したがって、油又は脂肪とカゼインの比は、0.5%〜20%の油を有するクリーマーに対しては40:1〜60:1であり、20%〜50%の油又は脂肪を有するクリーマーに対しては50:1〜60:1である。
【0030】
好ましくは、脂肪又は油は、1種又は複数のタンパク質若しくは炭水化物材料、又はこれらの混合物を含むマトリックス中に分散した1種又は複数の脂肪若しくは植物油を含む。脂肪は、カロリー性、非カロリー性、又はこれらの混合物とすることができ、固形脂肪、液体油、脂肪代替物、又はその他の水非混合性物質を含めた、任意の適した植物、動物、又はその他の源から得られる又はこれらを由来とする、天然の、合成の又は改質された、任意の食用の不揮発性親油性物質を挙げることができる。脂肪は、純粋な形態で、又は不揮発性の担体液体の形態の香味系の一部として、又は噴霧乾燥クリーマー及びショートニングパウダー、並びにカプセル化した香味において一般的に見られるように、乳化若しくはカプセル化した液滴、固体粒子若しくはこれらの混合物の分散液として、存在することができる。脂肪は、これらだけには限らないが、果実、野菜、豆、種子、ナッツ、穀物及びミルクを含めた植物源又は動物源から得られる又はこれらを由来とする、トリグリセリド、ジグリセリド、又はこれらの混合物を挙げることができる。非乳製品配合物には、ミルク製品は使用されない。
【0031】
存在する場合、本発明のクリーマー中のタンパク質としては、これらだけには限らないが、カゼイン、乳清、大豆、小麦、卵白、これらの誘導体又はこれらの組合せを挙げることができる。好ましくは、タンパク質源は、カゼイン、カゼインナトリウム、乳清タンパク質、大豆タンパク質、これらの単離物又は加水分解物である。最も好ましくは、タンパク質はカゼイン及びカゼインナトリウムである。
【0032】
本発明の無タンパク質クリーマーは、デンプン、親水コロイド又はこれらの組合せをさらに含有することができる。
【0033】
本発明の安定化系の乳化剤成分は、アニオン性乳化剤であるスクシニル化モノグリセリド(モノグリセリドのコハク酸エステル、SMG)などの、中程度のHLB値の少なくとも1種の乳化剤を含む。モノグリセリド乳化剤のコハク酸エステルに加えて、安定化系の乳化剤成分は、鎖長がC〜C24の様々な脂肪酸分子組成を有する、約0.01〜約25%のジグリセリド乳化剤のコハク酸エステルも、単独で又はこれらを組み合わせて含有することができる。これらのエステルを作製するのに使用される油としては、これらだけには限らないが、大豆油、ココナツ油、パーム油、パーム核油、綿実油、カノーラ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0034】
本発明の低タンパク質クリーマーにおいて、乳化剤と油又は脂肪の重量比は、0.05:1〜5:1、好ましくは0.1:1〜2.5:1、最も好ましくは0.15:1〜1.5:1の範囲である。無タンパク質クリーマーに対しては、乳化剤と油又は脂肪の重量比は、0.1:1〜5:1、好ましくは0.15:1〜3:1、最も好ましくは0.2:1〜2.5:1である。
【0035】
本発明のクリーマーは、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの組合せなどの少なくとも1種の緩衝剤を含む。
【0036】
本発明の低タンパク質クリーマーにおいて、緩衝剤と乳化剤の重量比は、0.1:1〜20:1、好ましくは0.5:1〜10:1、最も好ましくは1:1〜4:1の範囲である。無タンパク質クリーマーに対しては、緩衝剤と乳化剤の重量比は、0.5:1〜10:1、好ましくは1:1〜5:1、最も好ましくは1.5:1〜2.5:1の範囲である。
【0037】
本発明のクリーマーは、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、EDTA、EDTAのナトリウム塩若しくはカリウム塩、フィチン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸又はこれらの酸のカルシウム塩及び/又はカリウム塩、又はこれらの組合せなどの、少なくとも1種のキレート化剤も含む。
【0038】
本発明の低タンパク質クリーマーにおいて、キレート化剤と乳化剤の重量比は、0.1:1〜15:1、好ましくは0.5:1〜8:1、最も好ましくは1:1〜3.5:1の範囲である。無タンパク質クリーマーに対しては、キレート化剤と乳化剤の重量比は、0.5:1〜10:1、好ましくは0.5:1〜5:1、最も好ましくは1:1〜2.5:1の範囲である。
【0039】
クリーマーの白色化能を最大にするために、本発明の粉末状、濃縮液及び液状クリーマーに、主粒径がおおよそ0.3ミクロンの二酸化チタンを任意選択で加えることにより、光散乱/回折を最大限に活用することができる。クリーマーは、これらだけには限らないが、スクロース、フルクトース、マルトデキストリン、高フルクトースコーンシロップ、その他の天然甘味料、人口甘味料、又はこれらの組合せを含めた甘味料も含有することができる。甘味料は、総組成物の約0.1〜50重量%、好ましくは約5〜30重量%の濃度で存在することができる。クリーマーは、香味料(複数可)及び/又は着色料(複数可)も含有することができる。
【0040】
本発明の液状、濃縮液及び粉末状クリーマーは、様々な香味及び色並びにこれらの組合せを任意選択で含有してもよい。
【0041】
液状及び濃縮液クリーマーは、約5%〜約80%の総固体(TC)を有してもよく、粉末状クリーマーは、約94%〜約99%のTCを含有することができる。液状及び粉末状クリーマーの両方は、約0.1〜50wt%の脂肪又は植物油(複数可)を含有することができる。植物油(複数可)は、部分的又は完全に水素化した油を、単独で又は組み合わせて含むことができる。この油としては、これらだけには限らないが、大豆油、ココナツ油、パーム油、パーム核油、綿実油、カノーラ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油及びその他の油、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0042】
本発明の液状及び濃縮液クリーマーは、製品の最大消費期限に亘る様々な保存条件の間、クリーミング、沈殿及び経時的ゲル化などの相分離なしに、管理可能な粘度を有する。本発明によれば、低タンパク質及び無タンパク質で非乳製品の、無菌及びESL液状クリーマー及び濃縮液は均質であり、数カ月間の常温保存(ambient storage)中に相分離、ゲル化及び沈殿の無い管理可能な粘度を有する。低タンパク質及び無タンパク質粉末状クリーマーは、製造工程中の過酷な条件、例えば、高せん断応力及び噴霧乾燥中の温度による影響に耐える。
【0043】
本発明のクリーマーを入れたコーヒーの官能評価は、異臭や不快な後味の無い良好な口当たり、十分なこく(full body)、滑らかな質感及び良好な味を示した。具体的には、本発明のこのような無タンパク質粉末状クリーマーは、室温で2カ月保存した後でさえ味が劣化した兆候は示さなかった。
【0044】
本発明は、粉末形態の、乳化成分、緩衝剤及びキレート化剤を提供するステップ、及び粉末成分を、撹拌しながら水に溶解するステップを含めた、本発明の液状クリーマー又はクリーマー濃縮液の製造方法をさらに提供する。粉末形態の甘味料又は白色剤などのその他の任意選択の成分も、このステップに含めることができる。次に、溶かした油/脂肪を熱湯に加え、全ての成分の混合物を作製する。次いで、混合物に、UHT処理、均質化、冷却を行い、無菌条件下で無菌容器に充填する。均質化は、加熱処理前及び/又は加熱処理後に実施することができる。
【0045】
本発明は、粉末成分を、撹拌しながら水に溶解し、溶かした脂肪/油の添加、続いて殺菌、均質化、乾燥、冷却及び充填を含めた、本発明の低タンパク質又は無タンパク質粉末状クリーマーの製造方法をさらに提供する。粉末状クリーマーは、約100〜約4000ミクロン、好ましくは500〜3000ミクロン、最も好ましくは約1000〜2000ミクロンの粒径を有することができる。粉末状クリーマーは、床乾燥(bed dried)、噴霧乾燥、フリーズドライ、凝集、又は当技術分野で知られるその他の技術に従って調製することができる。例えば、本発明の粉末状クリーマーは、60〜80%(w/w)液体の供給原料の噴霧乾燥によって製造し、最終製品中に水分を最大約5%含有することができる。
【0046】
本発明には利点が多数ある。まず、本発明は、カゼイン又はその誘導体を限定的に使用する又は全く使用しないが高い白色化能及び心地よい口当たりを有する、低タンパク質又は無タンパク質で、乳製品を全く含まないクリーマーを達成する。その上、本発明の液状クリーマーは、冷蔵(約4℃)で、又は室温及び高温(例えば、30℃、38℃)での保存中にクリーミング、ゲル化、離漿又は沈殿などの相分離の無い、優れた物理化学的安定性(少なくとも9カ月の保存期限)を達成する。その上、本発明のクリーマーは、冷蔵及び室温で少なくとも9カ月間、酸化も変色もしないので、脂肪を含まなくても高い白色化能をもたらす。さらに、本発明のクリーマーは、コーヒー及び紅茶などの飲物に簡単に分散可能で、熱く酸性で高Ca2+及びMg2+の環境においても安定である。重要なことには、カゼインなどの乳タンパク質の必要性が低減される又は排除さえされることによって、著しいコストの削減ももたらす。その上、二酸化チタンを補完的なホワイトナーとして使用する場合、全ての温度条件下で、液状又は濃縮液クリーマーの保存期限を通して、完全に懸濁した状態でTiOを維持する。
【実施例】
【0047】
実施例1
コーンシロップ固体(1.2kg)を、激しく撹拌しながら180°Fの水に溶解し、次いで、リン酸二カリウム(0.3kg)及びクエン酸ナトリウム(0.3kg)を溶液に加えた。油(0.2kg)を140°Fで溶かし、SMG(0.1kg)を激しく撹拌しながら液化油に加えた。油/乳化剤混合物を、上記のコーンシロップ溶液に加えて、連続的に撹拌しながら混合した。
【0048】
得られた液体を、180°Fで2秒間、HTST条件で再加熱し、1000/500psiで均質化した。加熱処理後すぐに、得られた濃縮液を、従来の噴霧乾燥器を通して加工し、乾燥した粉末形態のクリーマーを収集した。
【0049】
製品を気密容器に入れ、周囲条件で保存した。コーヒークリーマーを入れたコーヒーの官能特性を、訓練を受けていない6人の審査員によって判定したところ、製品が、良好な口当たり、十分なこく、滑らかな質感及び良好な香味を有し、不快な味の無いことを見出した。
【0050】
実施例2
1kgのSMGを使用する以外は実施例1の通りに、コーヒークリーマーを調製した。コーヒークリーマーを入れたコーヒーの官能特性を、訓練を受けていない6人の審査員によって判定したところ、製品が、苦みの強い香味を伴って不快な口当たりを有する許容できないものであることを見出した。
【0051】
実施例3
0.01kgのSMGを使用する以外は実施例1の通りに、コーヒークリーマーを調製した。噴霧乾燥前の液体ミックスのエマルション安定性が乏しく、濃縮液の相分離を引き起こした。濃縮液が不安定であるため、噴霧乾燥できない。
【0052】
本明細書で例示及び考察した実施形態及び実施例は、本発明を製造及び使用する本発明者らに知られている最良の方法を当業者に教示することのみを意図する。上述の本発明の実施形態は、上記の教示に照らし、当業者によって容易に理解される通り、本発明から逸脱しない範囲で変形又は変更することができる。したがって、本明細書に記載した開示から、当業者によって、又は本開示から通常の実験によってすぐに達成できる全ての適切な変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される通り、本発明の趣旨及び範囲内であるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の乳化剤を含む乳化成分、
少なくとも1種の緩衝剤を含む緩衝系、及び
有機酸若しくは無機酸、又は有機酸塩若しくは無機酸塩の少なくとも1種のキレート化剤を含むキレート系
を含む低タンパク質又は無タンパク質のクリーマー組成物であって、
前記クリーマーを加える水性媒体をさらに白色化するのに十分な量の白色剤を任意選択で含み、
前記組成物の脂肪又は油の含有量は、前記組成物の約0.5重量%〜約50重量%であり、タンパク質含有量は前記組成物の3重量%以下であり、
前記クリーマーは、様々なpH、硬度及び温度の飲物の水性媒体に加えられるとき、高い白色化能、及び認識できるフェザリング又は脂肪分離の無い心地よい口当たりをもたらす、組成物。
【請求項2】
前記乳化剤が、グリセリド化合物を含む中程度の疎水性/親油性バランス(HLB)乳化剤であり、前記組成物の0.05重量%〜3.5重量%の量で存在し、前記緩衝剤が、リン酸、炭酸、酢酸又はアスコルビン酸化合物を含み、前記組成物の0.05重量%〜3.5重量%の量で存在し、前記キレート化剤が、前記組成物の0.02重量%〜3重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記乳化剤が、スクシニル化モノグリセリド、スクシニル化ジグリセリド又はこれらの組合せであり、組合せが使用される場合、前記ジグリセリドが、組成物中の総グリセリドの0.01重量%〜25重量%の量で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の緩衝剤が、有機酸若しくは無機酸の食品グレードの塩であるか、又は前記塩と有機酸若しくは無機酸との組み合わせであり、前記塩は、リン酸カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のキレート化剤が、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、EDTA、EDTAのナトリウム塩若しくはカリウム塩、フィチン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、又はこれらの酸のナトリウム塩及びカリウム塩、又はこれらの組合せである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、約0.1〜2%のカゼインをさらに含み、油又は脂肪の量が多くなるのに対応してカゼインの量も多くなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、(a)前記組成物の5重量%〜80重量%の範囲の総固形分を有し、開封前は周囲温度で少なくとも約9カ月間安定な、無菌の液状若しくは濃縮液クリーマー、又は(b)前記組成物の5重量%〜80重量%の範囲の総固形分を有し、冷蔵温度で少なくとも約2カ月間安定にするために保存期限が延長された(ESL)、液状若しくは濃縮液クリーマー、又は(c)約100〜約4000ミクロンの粒径、組成物の94重量%〜99重量%の範囲の総固形分を有し、周囲温度で少なくとも約24カ月間安定な粉末状クリーマーの形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
0.05:1〜5:1の範囲の前記乳化剤と油の重量比、
0.1:1〜20:1の間の前記緩衝剤と前記乳化剤の重量比、
0.1:1〜15:1の前記キレート化剤と前記乳化剤の重量比、又は
上記の比の組合せ
を有する、低タンパク質クリーマーの形態の請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも0.1:1〜4.5:1の前記乳化剤と油の重量比、
少なくとも0.5:1〜20:1の前記緩衝剤と前記乳化剤の重量比、
少なくとも0.5:1〜15:1の前記キレート化剤と前記乳化剤の重量比、又は
上記の比の組合せ
を有する、無タンパク質クリーマーの形態の請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
水性液体、飲物を形成する成分、及び前記飲物にクリーム効果をもたらすのに十分な量の請求項1のクリーマー組成物を含む飲物。
【請求項11】
前記飲物を形成する成分が、コーヒー、紅茶、チョコレート又は果実飲料である、請求項16に記載の飲物。
【請求項12】
食品と共に消費するため又は調理に使用するための、請求項1に記載の組成物を含む乳製品代用品。
【請求項13】
粉末形態又は液状形態の、前記乳化成分、前記緩衝剤及び前記キレート化剤、又はこれらの組合せを用意するステップ、並びに前記成分を撹拌しながら水に溶解するステップを含む、請求項1に記載のクリーマーの製造方法。
【請求項14】
粉末形態又は液体形態の甘味料若しくは白色剤又はこれらの組合せを、撹拌しながら水に加えるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
植物油又は脂肪を水に加えて全ての成分の混合物を作製し、続いて、前記混合物を加熱処理に供し、均質化し、冷却し、無菌条件下で容器に充填するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
植物油又は脂肪を水に加えて全ての成分の混合物を作製し、続いて、前記混合物を加熱処理に供し、均質化し、冷却し、乾燥して粉末にし、前記粉末を容器に充填するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2012−504407(P2012−504407A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529581(P2011−529581)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062934
【国際公開番号】WO2010/040727
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】