低ツイストキラル液晶偏光回折格子および関連する作製方法
偏光回折格子は、基板と、基板上の第1の偏光回折格子層と、を備えている。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を備えている。いくつかの実施形態は、第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層を備えることができる。第2の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を備えている。また、切換え可能な偏光回折格子は、第1の基板と第2の基板との間に液晶層を備えている。液晶層は、その両面間に定められる厚みにわたって、第1の基板の第1の周期的配向状態と第2の基板の第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対配向を有する液晶分子を含んでいる。関連する装置および作製方法も、検討されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、2007年4月16日に出願された「低ツイストキラル液晶偏光回折格子および関連する作製方法」という表題の米国仮特許出願第60/912,044号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照することによって、その全体がここに記載されているかのように含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、偏光回折格子に関するものであり、さらに詳細には、液晶偏光回折格子および関連する作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
液晶は、分子の規則正しい配向が存在する流動体の形態を取ることができる。典型的には、液晶(LC)分子は、異方性であり、細長の(棒状)形状または平坦な(円板)形状のいずれかを有している。異方性分子が規則的に配向することによって、バルクLCは、多くの場合、その物理的特性の異方性、例えば、機械的性質、電気的性質、磁気的性質、および/または光学的性質の異方性を呈することになる。
【0004】
棒状または円板状の性質によって、LC分子の配向分布は、光学的な用途、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)において、重要な役割を果たすことができる。これらの用途では、LC配向は、配向表面によって影響されることになる。配向表面は、LCが予測可能かつ制御可能に表面に対して配向するように、処理されるとよい。多くの場合、配向表面は、単一ドメインをLC装置の全体に至らせることを確実なものとする。処理された配向表面が存在していないと、LCは、多くのドメインおよび/または多くの配向不連続性を有することになる。光学的な用途では、これらのドメインおよび不連続性は、光の散乱を生じさせ、その結果、ディスプレイの性能が劣化することになる。
【0005】
偏光回折格子は、(従来の回折格子におけるように位相または振幅に影響を与えるのと対照的に)、通過する光の局所的な偏光状態に周期的に影響を与えるために、用いられるとよい。例えば、切換え可能な液晶偏光回折格子(LCPG)を用いて、非偏光で操作可能な強度変調器を実現することができる。さらに具体的には、このような切換え可能なLCPGは、例えば、プロジェクションディスプレイおよび光シャッターを含む用途において、(レーザのような)比較的狭帯域幅の非偏光の比較的高コントラスト変調を達成するために、用いることができる。例えば、いくつかの従来のLCPGは、<5%の帯域幅を有する光に対して、0次光では約200:1よりも大きいコントラスト比で光を変調することができる。しかし、従来のLCPGのコントラスト変調は、多くの用途において重要である(LEDのような)広帯域の光を変調するのに用いられたときに低下することがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、偏光回折格子は、基板と、基板上の第1の偏光回折格子層と、を備えている。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転していてもよい。また、基板は、反射基板であってもよい。
【0008】
他の実施形態では、偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層をさらに備えていてもよい。第2の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって、第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいてもよい。特に、第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転し、第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転しているようになっていてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の捩じれ角は、第1の捩じれ角と逆の角度になっていてもよい。従って、第2の偏光回折格子層の局部的異方性パターンは、第2の厚みにわたって、第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれと逆の連続的に変化する位相ずれを有することができる。例えば、第2の捩じれ角は、約70°であってもよく、第1の捩じれ角は、約−70°であってもよい。
【0010】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向は、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されていてもよい。基板は、透過基板であってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層は、第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第1のキラル液晶層であってもよい。第2の偏光回折格子層は、第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第2のキラル液晶層であってもよい。
【0012】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の少なくとも1つは、重合性液晶層であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の他の1つは、非反応性液晶層であってもよい。例えば、非反応性液晶層は、ネマチック液晶層であってもよい。
【0014】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層の第1の厚みおよび/または第2の偏光回折格子層の第2の厚みは、偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定されていてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、偏光回折格子は、第1の周期的配向状態を含む、基板上の第1の配向層をさらに備えていてもよい。第1の偏光回折格子層は、第1の配向層上に位置していてもよく、第1の偏光回折格子層の分子は、配向層の第1の周期的配向状態に従って配向されていてもよい。
【0016】
他の実施形態では、偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層上に、第1の配向層と向き合って位置する第2の周期的配向状態を含む第2の配向層をさらに備えていてもよい。第1の偏光回折格子層は、第1の配向層と第2の配向層との間の非反応性液晶層であってもよい。非反応性液晶層は、その厚みにわたって、第1の配向層の第1の周期的配向状態と第2の配向層の第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、偏光回折格子を形成する方法は、基板を形成することと、基板上に第1の偏光回折格子層を形成することと、を含んでいる。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する分子を含むように、形成されてもよい。また、基板は、反射基板であってもよい。
【0019】
他の実施形態では、第2の偏光回折格子層が、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。第2の偏光回折格子層は、前記第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって、第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じれている分子構造を含んでいてもよい。特に、第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転するように、形成されてもよい。同様に、第2の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転するように、形成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されるように、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。基板は、透過基板であってもよい。
【0021】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層を形成することは、第1の液晶層に第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでいてもよい。また、第2の偏光回折格子層を形成することは、第2の液晶層に第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでいてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、基板上に第1の配向層が形成されてもよい。第1の配向層は、第1の周期的配向状態を有していてもよい。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の分子が第1の周期的配向状態に従って配向されるように、第1の配向層上に直接形成されてもよい。次いで、第2の偏光回折格子層が、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。
【0023】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層は、重合性液晶層であってもよい。重合性液晶層は、第1の配向層上で光重合させた後、第2の偏光回折格子層を重合性液晶層上に形成してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の配向層が第2の基板上に形成されてもよい。第2の配向層は、第2の周期的配向状態を含んでいてもよい。第2の配向層を備える第2の基板は、第2の配向層と第1の配向層との間にギャップを形成するように、第1の偏光回折格子層に隣接して組み合わされてもよく、第2の偏光回折格子層がギャップ内に形成されてもよい。例えば、第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶層であってもよい。
【0025】
他の実施形態では、第2の偏光回折格子層は、重合性液晶層であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層の第1の厚みおよび/または第2の偏光回折格子層の第2の厚みは、偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定されていてもよい。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態によれば、切換え可能な偏光回折格子は、第1の周期的配向状態を含む第1の基板と、第2の周期的配向状態を含む第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間の液晶層と、を備えている。液晶層は、その両面間に定められる厚みにわたって、第1の周期的配向状態と第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の周期的配向状態は、第1の周期的配向状態に対して位相が異なっていてもよい。
【0029】
他の実施形態では、液晶層は、その厚みにわたって捩じれ角だけ液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラルドーパントを含むネマチック液晶層であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、液晶分子は、第1の配向層との間の界面および第2の配向層との間の界面のそれぞれにおいて、第1の配向層の第1の配向状態または第2の配向層の第2の配向状態に従って配向されていてもよい。また、液晶層の分子は、液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、液晶層の厚みにわたって捩じれ角だけ回転していてもよい。
【0031】
他の実施形態では、位相角は、約70°から約360°の範囲内にあってもよい。また、捩じれ角は、約70°から約360°の範囲内にあってもよい。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態によれば、切換え可能な偏光回折格子を作製する方法は、第1の周期的配向状態を含む第1の基板を形成することと、第2の周期的配向状態を含む第2の基板を形成することと、第1の基板および第2の基板上に液晶層を形成することと、を含んでいる。液晶層は、第1の周期的配向状態と第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ、両面間に定められる厚みにわたって回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の配向層が、第1の基板上に形成され、第1の配向層に第1の周期的配向状態を形成するようにパターンニングされてもよい。また、第2の配向層が、第2の基板上に形成され、第1の周期的配向状態に対して位相を異ならせて第2の周期的配向状態を第2の配向層に形成するようにパターンニングされてもよい。
【0034】
他の実施形態では、液晶層は、ネマチック液晶層であってもよい。ネマチック液晶層に、その厚みにわたって捩じれ角だけ液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラル分子がドープされてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、液晶層は、その分子が、第1の配向層と液晶層との間の界面および第2の配向層と液晶層との間の界面のそれぞれにおいて、第1の配向層の第1の配向状態および第2の配向層の第2の配向状態に従って配向されると共に、液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、液晶層の厚みにわたって捩じれ角だけ回転するように、形成されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態による他の装置および/または作製方法は、以下の図面および詳細な説明を再検討すれば、当業者には明らかになるだろう。このような付加的な方法および/または装置の全ては、本明細書に含まれ、本発明の範囲内に包含され、かつ添付の請求項によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明のいくつかの実施形態による偏向回折格子を示す透視図である。
【図1B】本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を示す上面図である。
【図1C】本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を示す側面図である。
【図1D】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子を示す側面図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の特性をシミュレートするために用いられるモデルを示す略図である。
【図3】シミュレーション結果に基づく本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の特性を示すグラフである。
【図4】図4Aおよび図4Bは、シミュレーション結果に基づく本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の特性を示すグラフである。
【図5】図5A〜図5Eは、本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を作製する方法およびそのように作製された装置を示す断面図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、実験結果に基づくいくつかの実施形態による偏向回折格子の特性を示すグラフである。
【図7】図7A〜図7Dは、本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子を作製する方法およびそのように作製された装置を示す断面図である。
【図8A】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8B】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8C】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8D】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8E】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明をさらに充分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が、十分かつ完全であって、本発明の範囲を当業者に十分に知らしめるために、提供されている。図面において、寸法および層および領域の相対的な大きさは、明瞭にするために、誇張されている場合がある。全体を通して、同様の番号は、同様の要素を指すものとする。
【0039】
「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などという用語が、種々の要素、構成部品、領域、層および/または区域を記述するために、ここに用いられていることがあるが、これらの要素、構成部品、領域、層および/または区域は、これらの用語に限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、構成部品、領域、層または区域を他の領域、層または区域から区別するために、用いられているにすぎない。従って、以下に述べる第1の要素、構成部品、領域、層または区域は、本発明の示唆から逸脱することなく、第2の要素、構成部品、領域、層または区域と呼ばれることもある。
【0040】
「〜の真下に (beneath)」、「〜の下方に(below)」、「〜の下側の(lower)」、「〜の下に(under)」、「〜の上方に(above)」、「〜の上側の(upper)」などの空間に関連する用語が、ここでは、図面に示されている1つの要素または特徴部と1つまたは複数の他の要素または特徴部との関係を説明するための記述を容易にするために、用いられていることがある。空間に関連する用語は、図面に描かれている方位に加え、使用時または操作時における装置の別の方位も含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、もし図面における装置が反転した場合、他の要素または特徴部の「下方に」、「真下に」または「下に」あると記述されている要素は、他の要素または特徴部の「上方に」配向されることになる。従って、「〜の下方に」または「〜の下に」という例示的な用語は、上方の方位と下方の方位の両方を含んでいることになる。装置は、これ以外に配向されることもあり(すなわち、90°または他の方位に回転されることもあり)、この場合、ここに用いられている空間に関連する記述用語も、これに応じて、解釈されるとよい。加えて、ある層が2つの層の「間」にあると記述されているとき、この層は、これらの2つの層の間の唯一の層であってもよいし、または1つまたは複数の介在層が存在していてもよいことも理解されたい。
【0041】
ここに用いられている専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。ここに用いられている単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。「〜を備える(comprise)」および/または「〜を備えている(comprising)」という用語は、本明細書において用いられる場合、記述されている特徴、完全体、工程、操作、要素および/または構成部品の存在を特定することになるが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成部品および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。ここに用いられている「および/または」という用語は、1つまたは複数の関連して列挙されている項目のどのような組合せも含んでいる。
【0042】
ある要素または層が、他の要素または層の「上に位置している」または他の要素または層に「接続されている」、「結合されている」または「隣接している」と記述されているときは、他の要素または層の上に直接位置するかまたは他の要素または層に直接接続、直接結合または直接隣接するようになっていてもよいし、または介在する要素または層が存在していてもよいことを理解されたい。対照的に、ある要素が、他の要素または層の「上に直接位置している」または他の要素または層に「直接接続されている」、「直接結合されている」または「直接隣接している」と記述されているときは、介在する要素または層が存在していないことになる。
【0043】
ここでは、本発明の理想的な実施形態(および中間的な構造)の概略図である断面図を参照して、本発明の実施形態を説明することになる。従って、例えば、製造技術および/または許容誤差の結果として、図面の形状との違いが生じることが見込まれている。従って、本発明の実施形態は、ここに図示されている領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造によって生じる形状の寸法誤差を含むべきである。すなわち、図面に示されている領域は、本質的に概略図であり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を示すことを意図したものではないし、本発明の範囲を限定することを意図したものでもない。
【0044】
特段の規定がない限り、ここに用いられている(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有している。また、一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術および/または本明細書の文脈における意味と一致している意味を有するものと解釈されるべきであり、ここに明示的に規定されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味に解釈されてはならないことをさらに理解されたい。
【0045】
ここに用いられる「透過」または「透明」基板は、入射光の少なくとも一部を透過させるものであることは、当業者によって理解されるだろう。従って、透明基板は、いくつかの実施形態では、ガラス基板であってもよい。対照的に、ここに記載されている「反射」基板は、入射光の少なくとも一部を反射するものである。また、「重合性液晶」は、重合可能な比較的低分子量の液晶材料を指し、ここでは「反応性メソゲン」と記述されることもある。対照的に、「非反応性液晶」は、重合されない比較的低分子量の液晶材料を指している。
【0046】
ここでは、液晶(LC)材料およびそれらの材料から構成される偏光回折格子を参照して、本発明の実施形態を説明することになる。ここに用いられる液晶は、ネマティク相、キラルネマティク相、スメクチック相、強磁性相および/または他の相を有している。加えて、多数の光重合性ポリマーが、ここに記載される偏光回折格子を作り出す配向層として用いられてもよい。光重合性に加えて、これらの材料は、LCに対して不活性であるとよく、LC装置の操作温度の範囲(例えば、約−50℃から約100℃の範囲)の全体にわたって安定した配向をもたらす必要があり、かつここに記載される作製方法に適合している必要がある。光重合性ポリマーのいくつかの例として、ポリイミド(例えば、JSR Micro社(カルフォニア州、サンバレー)から市販されているAL1254およびBrewer Science社(ミズリー州、ローラ)から市販されているNissanRN−1199)、およびケイ皮酸エステル(例えば、M. Schadtら:“線状重合された感光性ポリマーによる液晶の表面誘起平行配向”、Jpn. J. Appl. Phys., Vol 31. (1992), pp. 2155-2164に記載されているポリビニル4−メトキシ−ケイ皮酸エステル)が挙げられる。光重合性ポリマーの他の例は、Vantico社(カルフォルニア州、ロスアンジェルス)から市販されているStaralign. TM.である。さらに他の例として、カルコン−エポキシ材料(例えば、Dong Hoon Choiら:“直線偏光UVの照射による光化学的2官能性カルコン−エポキシフィルム上の低分子量ネマティク液晶の光配向”、Bull. Korean Chem. Soc., Vol. 23, No. 4587 (2002) に記載されているもの)、およびクマリン側鎖ポリイミド(例えば、M. Reeら:“光感受性ポリマーの薄膜上の液晶の配向挙動−光反応性基およびUV露光の影響”、Synth. Met., Vol. 117 (1-3), pp. 273-5 (2001)(これらの材料では、LCは、偏光の方向とほぼ直交して配向する)に開示されているもの)が挙げられる。また、液晶配向の方法のさらに他の例が、Crawfordらに付与された米国特許第7,196,758号明細書において検討されている。さらに、ここに記載されているいくつかの構造は、スピンコーティング法と液晶材料とのバランスによる精緻な作製法と関連している。本発明のいくつかの実施形態と共に用いられるさらに他の構造および/または方法が、Escutiらに付与された国際公開第2006/092758号パンフレットにおいて検討されている。この開示内容は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態は、捩じれた分子構造を厚みに沿って有する偏光回折格子を用いて、アクロマチック(広帯域)高コントラスト回折を達成することができる方法および装置を提供するものである。例えば、いくつかの実施形態では、高コントラストアクロマチック回折は、2つの液晶偏光回折格子層を用いて、得ることができる。このような液晶偏光回折格子層は、それぞれの厚みにわたって、互いに横方向にオフセットされたまたは互いに位相がシフトされた互いに逆の捩じれ性を有している。さらに具体的には、半波長リタデーション厚みおよび+70°の捩じれを有する第1の偏光回折格子が、透過基板上の−70°の捩じれを有する第2のPGに積層されるようになっている。加えて、第1の層が非反応性液晶層として具体化され、第2の層が重合性液晶層として具体化された場合(それぞれの捩じれ角は、約+70°および−70°)、この回折格子は、切換え可能とされ、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるのに適する空間光変調器をもたらすことができる。他の実施形態では、厚みにわたって70°の捩じれを有する単一ポリマーまたは単一の非反応性液晶偏光回折格子層が、反射基板上に設けられても、同様の結果をもたらすことになる。上記の実施形態のいずれにおいても、他の捩じれ角が用いられてもよい。対照的に、単層偏光回折格子は、非偏光を変調することは可能であるが、その高コントラスト作動は、極めて狭帯域の入力光に制限されることになる。従って、広帯域光は、多くの用途において用いられているが、そのような用途において、本発明のいくつかの実施形態を用いることによって、既存の技術と比較して、極めて高コントラストおよび/または極めて高輝度を得ることができる。
【0048】
加えて、本発明のいくつかの実施形態による低ツイスト液晶偏光回折格子では、電気−光学曲線の非線形応答を高めるために、LCのキラル捩じれと基板のオフセット角とを調和させることができる。従って、各画素内にTFTを設ける必要があるアクティブマトリックス式アドレッシング法の代わりに、低コストおよび/または低電力のパッシブマトリックス式アドレッシング法を用いることができる。このようなアドレッシング法は、例えば、携帯用途において、著しい利点をもたらすことになる。
【0049】
図1A〜1Dは、本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を示している。図1Aに示されているように、第2の偏光回折格子層PG2102が、第1の偏光回折格子層PG1101上に形成され、多層構造105を形成している。第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102は、互いに逆の捩じれ性を有する分子構造を含むキラル液晶層である。換言すれば、第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102は、互いに逆の旋回性を有するキラル分子(すなわち、互いに異なる左回り形態および右回り形態を有する非対称分子)を含んでいる。従って、いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層PG2102は、厚みd2にわたって、第1の偏光回折格子層PG1101の局部的異方性パターンが厚みd1にわたって位相ずれしているのと逆の位相ずれしている局部的異方性パターンを有しているとよい。厚みd1および厚みd2は、それぞれ、第1の偏光回折格子層PG1101の両面間および第2の偏光回折格子層PG2102の両面間に定められている。
【0050】
さらに具体的には、図1B,1Cに示されているように、第2の偏光回折格子層PG2102の分子は、第1の偏光回折格子層PG1101の(右回りの)分子と比較して、逆の(左回りの)旋回性を有している。例えば、第1の偏光回折格子層PG1101に、この層内の分子の配向がその厚みd1にわたって捩じれ角θtwistだけ回転される、すなわち、「捩じられる(twisted)」ように、キラル分子がドープされているとよく、第2の偏光回折格子層PG2102に、この層内の分子の配向がその厚みd2にわたって逆の捩じれ角−θtwistだけ「捩じられる(twisted)」ように、他のキラル分子がドープされているとよい。いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層PG2102は、約−70°の捩じれ角θtwistを有しているとよく、第1の偏光回折格子層PG1101は、約70°の捩じれ角θtwistを有しているとよい。このような実施形態では、第1の偏光回折格子層PG1101の厚みd1は、第2の偏光回折格子層PG1102の厚みd2と実質的に等しくなっているとよい。第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102を作製するとき、実質的な欠陥を生じることなく、それぞれの捩じれ角を誘発するように構成されたキラルLC分子が、ネマチックLC混合物にドープされるとよい。また、キラルドーパントの量および/または偏光回折格子層の厚みを変化させることによって、捩じれ角θtwistを変更することができる。各偏光回折格子の厚みにわたって分子の「捩じれ(twisting)」を生じさせることによって、局部的異方性パターンの連続的な位相ずれをもたらすことができる。図1Cにさらに示されているように、第1の偏光回折格子層PG1101の分子および第2の偏光回折格子層PG2102の分子は、第1の偏光回折格子層PG1101と第2の偏光回折格子層PG2102との間の界面において、整合されている、すなわち、同一の位相になっている。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102は、単一固体ポリマー層、例えば、反応性メソゲン層(すなわち、重合性液晶層)であるとよい。例えば、第1の偏光回折格子層PG1101は、露出している光配向層115上に、(所定の旋回性または捩じれ性をもたらすようにドープされた)第1のキラルLC材料を、偏光回折格子の作動に用いられる光に対して半波長厚みに達するように、スピンコーティングすることによって形成されるとよい。光配向層115は、ここではさらに説明しない周知の技術によって、透明基板、例えば、ガラス基板110a上に形成され、かつパターンニングされているとよい。逆の旋回性/捩じれ性をもたらすようにドープされた第2のキラルLC混合物が、第1の層PG1101上に、ここでも半波長厚みに達するまで直接塗布され、これによって、第2の偏光回折格子層PG2102を形成するようになっているとよい。
【0052】
他の実施形態では、切換え可能な液晶偏光回折格子が形成されてもよい。さらに具体的には、偏光回折格子層PG2102が、前述したように、所定の旋回性または捩じれ性(例えば、−70°)を有するように、形成されるとよい。露出した光配向材料115を含む対向する透過基板(例えば、ガラス基板110a)が、半波長セル厚みに対応するセルギャップを保って、偏光回折格子層PG2102上に積層されるとよい。光配向材料115は、偏光回折格子層PG2102の捩じれ性に基づいてオフセットされる周期的配向状態を含んでいるとよい。逆の捩じれ性(例えば、+70°)を有するキラルネマチックLC材料がギャップ内に充填され、光配向層115と偏光回折格子層PG2102との間に偏光層PG1101としての液晶層がもたらされ、これによって、切換え可能な液晶偏光回折格子が得られることになる。
【0053】
図1Dは、本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子を示している。図1Dの偏光回折格子は、反射基板110bのような基板上に形成された単一偏光回折格子層PG1101を備えている。例えば、偏光回折格子層PG1101は、反射基板110b上の露出した光配向層115上に、偏光回折格子の作動に用いられる光に対して半波長厚みに達するように、形成されているとよい。前述したように、偏光回折格子層PG1101に、この層内の分子の配向がその厚みd1にわたって捩じれ角θtwistだけ回転される、すなわち、捩じられる(twisted)ように、キラル分子がドープされ、これによって、局部的異方性パターンの連続的な位相ずれをもたらすようになっているとよい。偏向回折格子層PG1101は、約70°の捩じれ角θtwistを有しているとよい。しかし、捩じれ角θtwistは、キラルドーパントの量および/または偏光回折格子層PG1101の厚みを変化させることによって、変更することができる。いくつかの実施形態では、偏光回折格子層PG1101は、重合性液晶層であるとよいが、他の実施形態では、偏光回折格子層PG1101は、切換え可能な液晶偏光回折格子をもたらすための非反応性液晶層であってもよい。作動光が、反射基板110bの存在によって、(入射時および反射時において)2度偏光回折格子層PG1101を通過することになるので、図1Dの単層偏光回折格子は、任意選択的に、以下にさらに詳細に説明する図1Cの2層偏光回折格子と同じように機能することができる。
【0054】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、透過光の方向および/または偏光状態を広スペクトル域の全体にわたって制御し得る回折光学素子を提供することになる。これらの回折光学素子は、ディスプレイ用途において、例えば、バックライト、偏光無依存画素設計および/または光リサイクリングからより効率的な出力結合をもたらすために、用いることができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子(PG)は、異方性周期的構造を備えており、特異な回折特性(例えば、特別の偏光および100%にいたる回折効率をもたらす3つの可能な回折次数(0,±1))を発揮することができ、幅広い用途に適用され得るものである。従来のPGは、中心波長の約7%のスペクトル域の全体にわたって、比較的高効率で回折することができる。対照的に、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、この帯域幅を約5倍拡げることができ、可視スペクトル域の大半にわたって、例えば、広帯域照明(たとえば白色光)の場合であっても、約100%の効率で回折することができる。具体的には、本発明のいくつかの実施形態によるPGは、少なくとも2つのキラル液晶層を備えているとよく、各々が比較的穏やかな捩じれ角(例えば、70°)および互いに逆の捩じれ性を有しているとよい。
【0056】
PGが初歩的な偏光ホログラムとして導入されて以来、その回折特性および実用性が研究されてきている。例えば、PGの用途として、偏光測定およびハイパースペクトル・ポラリメトリが挙げられる。ネマチック液晶(LC)は、直線複屈折性を有する連続的組織のPGを作り出すことができる。この手法を用いて、所望の回折特性および/または比較的低散乱性を有する実質的に欠陥のない切換え可能なPGを作り出すことができる。従って、この切換え可能なPGは、偏光無依存変調器として用いることができる。
【0057】
従来の(「円偏光」式)PGは、空間的に変化する単軸複屈折(すなわち、n(x)=[cos(πx/∧)、sin(πx/∧)、0])を含んでいるとよい。標準的な入射に対する理想的な回折効率は、以下のように、導くことができる。
【0058】
【数1】
【0059】
上記の式において、ηmは、m次の回折効率であり、λは、入射光の真空波長であり、Δnは、直線複屈折であり、dは、回折格子の厚みであり、S’3=S3/S0は、入射光の楕円率に対応する正規化ストークス・パラメータである。3つの次数(0,±1)が存在し、一次光は、互いに直交する(左旋回および右旋回の)円偏光になる。PGの回折挙動は、(式(1)におけるΔnd/λに基づき)、波長に依存している。
【0060】
図1B,1Cを再び参照すると、本発明のいくつかの実施形態による2層ツイスト構造を備えるPGのアクロマチック性能は、比較的広いスペクトル幅、例えば、中心波長の約34.3%におよぶスペクトル幅にわたって、100%におよぶ回折効率をもたらすことができる。これは、中心波長の約6.8%のスペクトル幅をもたらす従来のPGと比較して、約5倍広がっていることを示している。従って、互いに逆の捩じれ性を有する2つのツイストPGを組み合わせることによって、PG回折の広帯域性(achromacity)を達成することができる。
【0061】
ツイストPGの広帯域回折のいくつかの設計パラメータとして、各PG層の厚みdおよび捩じれ角θtwistが挙げられる。これらのパラメータの影響は、有限差分時間−ドメイン(FDTD)法および周期的異方性媒体用に特別に開発されたオープンソースのソフトウエハパッケージを用いて、明らかにされている。従って、偏光ホログラフィおよび光配向技術を用いて重合性液晶フィルムとして形成されたアクロマチックPGの予備実験結果について、図2〜6を参照して説明する。
【0062】
図2は、前述したFDTDシミュレーション空間の基本的な幾何学的配置を示している。フレネル損失を低減させ、および/または最小限に抑えるために、屈折率を連続的に変化させる反射防止(AR)膜206が、偏光回折格子PG201の両側の空気−偏光回折格子界面に施されているとよい。周期的境界207および単軸完全整合層(UPML)技術による整合層境界208を用いて、シミュレーション空間を終端させ、および/またはシミュレーション時間を低減させるようになっているとよい。入力/入射平面波209は、回折格子構造の直前に位置する垂直方向の直線偏光をもたらすガウスパルス平面波(すなわち、広帯域源)であるとよく、出力回折効率が、回折格子の直後に位置するライン211の電場から計算されるようになっているとよい。近傍−遠方光学変換および時間的フーリエ変換を用いて、遠距離場におけるスペクトル回折を解析することができる。
【0063】
ここに用いられる高PG効率をもたらすスペクトル域Δλ(単位:波長)は、全一次回折Ση±1が約99.5%よりも大きい波長域として定義されている。正規化帯域幅Δλ/λcenter(単位:%)は、その中心波長λcenterに対するスペクトル域の比率として定義されている。
【0064】
図3は、0°から90°の範囲内の種々の捩じれ角に対する単層ツイストPGの回折特性を示すシミュレーション結果を示している。従って、データは、右旋回性および左旋回性に対して同一である。さらに具体的には、図3は、波形301,302,303,304,305によって、それぞれ、表わされている種々の捩じれ角(θtwist)0°、30°、60°、70°、90°に対する一次回折効率の合計(Ση±1)対正規化リタデーション(Δnd/λ)を示している。図3に示されているように、高効率帯域幅の最大値は、従来のPG(すなわち、θtwist=0°の波形301によって示されているPG)の場合に生じており、そのΔλ/λcenterは、6.8%である。すなわち、(導波路としても知られている)導波現象は、極めて小さい捩じれ角以外は適応しないので、捩じれ角の増加と共に回折効率の著しい低下が生じることになる。にもかかわらず、出力には、0次光および±1次光しか存在せず、一次の偏光は、(円偏光ではなく)、少しずつ楕円偏光になっている。
【0065】
しかし、本発明のいくつかの実施形態によれば、互いに逆の捩じれ性を有する2つのツイストPGを積層することによって、高回折効率(すなわち、約100%におよぶ回折効率)を得ることができる。両PG層の光学的特性は、(捩じれの方向を除けば)、実質的に同様または同一であるとよい。これによって、第2の層は、第1のツイスト構造の偏光効果を補償することができる。それ故、アクロマチック(広帯域)効果は、局部的リタデーションの補償として定性的に記述されてもよい。
【0066】
図4Aは、約0°から約90°の範囲の全体にわたって捩じれ角を変化させて、本発明のいくつかの実施形態による互いに逆の捩じれ性を有する2層ツイスト構造の回折特性を示すシミュレーション結果を示している。さらに具体的には、図4Aは、波形401,402,403,404,405によって、それぞれ、表わされているθtwist の種々の値0°、30°、60°、70°、90°に対して、正規化リタデーション(Δnd/λ)の関数として一次回折効率(Ση±1)を示している。最大帯域幅Δλ/λmax=34.3%は、図4Bにさらに示されているように、θtwist=70°のときに、得られている。さらに具体的には、図4Bのグレースケールレベルは、シミュレーションされた回折効率を示し、帯域幅Δλ/λcenter は、図示されている領域における最大値である。従って、従来のPGと比較して、最大回折帯域幅が約5倍に拡大されている。なお、回折帯域幅は、捩じれ角に対して鋭敏なので、帯域幅の性能を改良するには、θtwist の注意深い制御が重要である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、偏光ホログラフィと光配向技術との組合せを用いて、重合性液晶フィルムとして形成されている。材料および処理の最適化に基づいて、比較的高回折効率および/または比較的低散乱性をもたらす実質的に欠陥のないRMPGを作製することができる。図5A〜5Eに示されているように、重合性液晶PG501,502の作製は、以下のように行われるとよい。図5Aに示されているように、光配向材料の比較的薄い層515が、基板505上に被覆されることになる。いくつかの実施形態では、基板505は、ガラス基板のような透過基板または透明基板であるとよい。しかし、他の実施形態では、基板505は、反射基板であってもよい。図5Bに示されているように、基板505は、比較的小さい角度で照射される直交円偏光レーザからなるコヒーレントビーム509を用いて、露光またはパターンニングされ、これによって、実質的に一定の強度を有する偏光干渉パターン516を生じさせることになる。図5Cに示されているように、第1の捩じれ性を有する第1のRM層501が、光配向層515上に形成され、表面パターン516に従って配向されることになる。例えば、第1のRM混合物に、第1のキラルドーパントがドープされ、このドープされた第1のRM混合物が、光配向層上にスピンコーティングによって被覆され、第1のRM層501をもたらすようになっているとよい。図5Dに示されているように、第1のRM層501は、例えば、一面を覆う紫外線(UV)露光519によって、光重合され、構造化された大きな光学異方性を永続的に定着させるようになっている。図5Eに示されているように、逆の捩じれ性を有する第2のRM層502が、第1のRM層501上に形成されることになる。例えば、第2のRM混合物に、第2のキラルドーパントがドープされ、このドープされた第2のRM混合物が、第1のRM層501上にスピンコーティングによって被覆され、次いで、光重合され、第2のRM層502をもたらすようになっているとよい。第2のRM層502は、第1のRM層501と第2のRM層502との間の界面において、第1のRM層501の配向に基づいて配向されることになる。
【0068】
図5A〜5Eをさらに参照すると、いくつかの実施形態では、ROP−103(Rolic)のような線状光重合性ポリマー(LPP)が、光配向材料515として用いられているとよい。直交円偏光ビームのHdCdレーザ(325nm)を用いて、露光し、光配向層515上に、∧=8.5μmの周期を有する表面配向パターンを形成するとよい。光配向層の露光の後、第1のRMフィルム501および第2のRMフィルム502が、スピンコーティングによって、基板505上の光配向層515の上に堆積されるとよい。第1のRM層501は、少量(0.25%)のキラルドーパントCB15(Merck、右旋回)が添加されたRMS03−001(Merck、589nmにおけるΔn〜0.159)から構成された混合物であるとよく、第1のRM層501の厚みd1が半波長厚み(d=λ/2Δn)に達すると共に捩じれ角がθtwist=70°になるように、選択されているとよい。第2のRM層502は、第1のRM層501上に直接堆積されるとよく、少量(0.34%)の異なるキラルドーパントZLI−811(Merck、左旋回)がドープされたRMS03−001から構成され、同一厚みおよび逆の捩じれ状態が得られるようになっているとよい。従って、本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の最終的な格子厚みは、2dであるとよい。何故なら、2つの層501,502が積層され、各々が約半波長厚みdを有しているからである。
【0069】
図6Aは、(波形610によって示されている)従来のPGおよび(波形620によって示されている)本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGの分光光度計によって測定された0次回折効率のスペクトル特性を示す実験結果をもたらしている。清浄なガラススライドの測定された透過率(すなわち、波形630によって示されている約100%の透過率)もプロットされている。このガラススライドの透過率は、PGと実質的に同様の条件下で測定されたものである。従来のPG(610’)および本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPG(620’)の0次回折効率から計算された推定回折効率
【数2】
のスペクトル特性が、図6Bにプロットされている。図3および図4A,4BのFDTDシミュレーション結果から予期されているように、回折帯域幅の著しい改良が、図6A,6Bに示されている。また、図6Bに示されている推定回折効率を確認するために、従来のPGおよび本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGの両方に対して、3つの波長の回折効率が、赤(633nm)レーザ、緑(532nm)レーザおよび青(473nm)レーザを用いて、測定されている。ここに用いられている「回折効率」は、ηm=1m/1REFとして定義されている。ただし、Imは、m次の透過/回折光の測定された強度であり、1REFは、ガラス基板の参考透過強度である。非コヒーレント散乱は、回折されたスペクトルを清浄なガラススライドと比較することによって、400nmを超える波長において、約2%以下と概略的に評価されている。
【0070】
従って、本発明のいくつかの実施形態による互いに逆の捩じれ性を有する少なくとも2つの層を備えるアクロマチックPGは、以下の回折特性、すなわち、3つの回折次数(0,±1)が存在する特性、一次回折光が直交円偏光をもたらす特性、および/または一次回折光が(ストークス・パラメータと正比例する)著しく偏光に鋭敏である特性を有している。加えて、入射する円偏光は、約100%におよぶ回折効率によって、一次回折光の1つを生じさせ、入射する直線偏光または非偏光入力は、約50%の回折効率によって、一次回折光の各々を生じさせることになる。
【0071】
他のLC回折格子(すなわち、ポリマ−壁LC回折格子および/またはHPDLC回折格子)と比較して、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、同程度またはそれ以上の実験的回折効率、および/または低非コヒーレント散乱をもたらすことができる。従って、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、可視光域のほぼ全域にわたって、厚い回折格子(ブラッグ回折格子)の高い回折効率をもたらすことができる。ディスプレイの光学素子として用いられるとき、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、他の光学的部品と一体化され、これによって、ディスプレイをより小型にし、かつより効率化することができる。これらの回折光学素子は、ビーム分割、偏光測定、などにも有用である。加えて、同様のアクロマチックPG設計を用いて、変調器用途向けの切換え可能なLC回折格子をもたらすことも可能である。さらに具体的には、2つのツイストPG層の1つを非反応性ネマチック液晶材料によって形成し、構造の全体を電極付きの基板間に配置することによって、切換え可能なLC回折格子をもたらすことができる。
【0072】
このように、本発明のいくつかの実施形態による互いに逆の捩じれ性を有する少なくとも2つの層を備えるアクロマチックPGは、広スペクトル域の全体にわたって比較的高い回折効率を達成することができ、これによって、ディスプレイ技術分野において、その特異な回折挙動に基づいて光をより効率的に制御する幅広い潜在的な用途を提供することができる。さらに具体的には、このような薄膜アクロマチックPGは、(広スペクトル帯域幅に用いられる場合)、従来の回折格子よりも、透過光の方向、強度および/または偏光状態に関して著しく多くの機能的な制御を提供することができ、かつ多くの遠隔検出用途において潜在的な利得をもたらすことができる。
【0073】
加えて、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、周知の薄膜技術および/または周知の液晶材料を用いて作製することが可能であり、これによって、例えば、偏光無依存性マイクロディスプレイ、例えば、携帯プロジェクションディスプレイ、消費者TV、リアルタイムホログラフィ、などに用いられる改良された空間光変調器素子を実現することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、所望の中心波長の約45%におよぶ波長域の全体にわたって高コントラスト変調を高めることができ、その結果として、従来の単一偏光回折格子と比較して、900%の改良をもたらすことができる。従って、ディスプレイ用途では、画像品質を著しく改良することができる。
【0074】
さらに、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGを用いて、撮像偏光干渉計を提供することもできる。このPGは、3つの回折次数を生じ、一次光の各々は、偏光鋭敏性を有しているので、このPGと波長板を組み合わせることによって、互いに直交する偏光情報を2つの回折次数に分離することができる。従って、PGのこの偏光鋭敏性と波長分散性を組み合わせることによって、小型の分光偏光計をもたらすこともできる。例えば、各回折次数の強度を測定する代わりに、同じ偏光情報(すなわち、ストークス・パラメータ)を2つの実質的に同一のPGを通過する2つの回折ビームの干渉写真から取り出すことができる。さらに具体的には、第1のPGは、スペクトル画像を含むビームを2つの一次光に分離し、第2のPGは、これらのビームの方向を平行に変化させることができる。各回折ビームの偏光状態は、互いに直角に配列されたλ/2波長板を通過した後、同じ直線偏光に変換されることになる。2つの回折ビームを検出器が位置する同じ撮像面に集束させることによって、干渉パターンを得ることができる。
【0075】
本発明のさらに他の実施形態は、パッシブマトリックス式アドレッシング法を用いて、画素レベルで制御され得る切換え可能な液晶偏光回折格子(LCPG)を提供するものである。パッシブマトリックス式アドレッシングは、高コストのアクティブマトリックス式アドレッシングにおいて用いられているような個々の画素内に薄膜トランジスタ(TFT)を設ける必要性を低減および/または排除するために、列/行電圧平均化法を用いている。従って、パッシブマトリックス式アドレッシングは、(携帯電話およびPDAにおけるような)低電力および低コストが必要とされるLCDに用いられている。しかし、LCPGにおいてパッシブマトリックス式アドレッシングを実施するには、比較的急峻な電気−光学応答曲線が必要である。対照的に、従来のLCPG技術は、比較的良くない電気−光学的応答曲線を有し、その結果として、パッシブマトリックス式アドレッシングに用いられるのに適していない。従って、本発明のいくつかの実施形態は、(傾斜が)著しく急峻な電気−光学応答曲線を有する切換え可能なLCPGをもたらすものであり、これによって、パッシブアドレッシングされる列の数を、約1列から約100列以上に改良することができる。これは、スーパツイステッドネマチック(STN)構成に基づく従来の携帯電話用LCDに匹敵するものである。
【0076】
図7A〜7Dは、本発明のさらに他の実施形態によるLCPGを作製する方法およびこのように作製された装置を示す断面図である。図7Aを参照すると、比較的薄い配向層715a,715bが、それぞれ、第1の基板705および第2の基板710の上に形成されている。第1の基板705および/または第2の基板710は、ガラスのような透過材料または透明材料から形成されているとよい。各基板は、透明導電電極(図示せず)を備えていてもよい。図7Bにおいて、各基板上の配向層715a,715bは、各基板上に周期的配向状態をもたらすように、パターンニングされている。例えば、これらの配向層は、光重合性ポリマーを含む光配向層であるとよく、直交円偏光レーザビーム709a,709bを用いて、ホログラフィによってパターンニングされているとよい。図7Cに示されているように、第1の基板705aおよび第2の基板710bは、それぞれの配向層715a,715bの周期的配向状態が相対的位相角Φtだけオフセットされるように、組み合わされるようになっている。このようにして、図7Dに示されているように、所定の捩じれ性を有する液晶層725が、第1の基板と第2の基板との間のセルギャップ721内に形成されることになる。液晶層は、セルギャップ721の厚みdにわたって特定の捩じれ角Φcをもたらすようなキラル分子がドープされた単一ネマチックLC層であるとよい。換言すると、捩じれ角Φcは、液晶層の厚みdにわたって、局部的異方性パターンを連続的に変化させる位相ずれをもたらすことになる。また、液晶層725の分子は、光配向層の配向状態に基づいて、配向されている。従って、捩じれ角Φcが基板のオフセット角Φtと異なっているとき、弾性エネルギー歪が液晶層内に生じ、その結果、より非線形切換え挙動をもたらすことになる。STNディスプレイのように、これは、図8A〜8Eの例示的なシミュレーション結果にさらに示されているが、中間層チルト角を印加電圧の関数として計算することによって、定量化することができる。
【0077】
図8A〜8Eは、本発明のいくつかの実施形態によるLCPGの電気−光学応答を示している。図8A〜8Eに示されているように、捩じれ角Φcを基板オフセット角Φtに対して変化させると、比較的急峻な電気−光学応答が得られることになる。さらに具体的には、図8Aに示されているように、基準曲線(Φt=0°、Φc=0〜89°)は、パッシブアドレッシングに用いられるのに適していない。何故なら、比較的良好なコントラストをもたらすのは、約1列にすぎないからである。図8Bにさらに示されているように、(Φt=300°、Φc=240〜345°)設計の場合、曲線は、著しく急峻である。従って、100列を超える列をパッシブアドレシングすることができる。図8C,8Dは、Φt=240°,Φt=270°でΦcの値を変化させた場合の電気−光学応答を同様に示している。上記の評価に関連するさらなる詳細は、「Scheffer and Nehring, Annual Review of Material Science 27, 555-583 (1997)」および「Alt and Pleshko, IEEE Trans. Elec. Dev. ED-21, 146-155 (1974)」におけるSTNディスプレイアドレッシングの要約に見出される。これらの開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0078】
図8Eは、比較するために、図8A,8B,8Cの電気−光学応答曲線を共通する一組の軸に沿って示している。具体的には、曲線805aは、Φt=0°、Φc=0°の場合における電気−光学応答を示している。同様に、曲線805bは、Φt=300°、Φc=240°の場合における電気−光学応答を示し、曲線805cは、Φt=240°、Φc=180°の場合における電気−光学応答を示している。従って、図8Eは、捩じれ角Φcおよび基板のオフセット角Φtの変化に基づいて、応答曲線が著しく急峻になることを示している。特に、応答曲線805bは、相対的位相角Φtが約300°以上であり、かつ捩じれ角Φcが約240°から約300°の間にある場合に得られる改良された切換え挙動をもたらす比較的急峻な傾斜を示している。さらに一般的に、いくつかの実施形態では、相対的位相角Φtは、約70°から約360°の間にあるとよく、捩じれ角Φcは、約70°から約360°の間にあるとよい。
【0079】
従って、本発明のいくつかの実施形態によるLCPGは、キラル歪および捩じれ構造を用いて、より非線形の電気−光学的応答曲線をもたらすことができる。それ故に、本発明のいくつかの実施形態によるLCPGは、より容易にオフ状態からオン状態に切り換えることができ、パッシブマトリックス式アドレッシング法を用いてより好ましく制御することが可能である。
【0080】
前述の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、本発明を限定すると解釈されるべきではない。本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を施すことが可能であることを容易に理解するだろう。例えば、図1A〜1Dおよび図7A〜7Dを参照して前述した構造は、それぞれ、1つまたは2つの基板の組合せにおいて非切換え可能LC材料および/または切換え可能なLC材料を用いて作製することができることを理解されたい。さらに、ここに述べた基板は、例えば、基板上の透明なインジウム−錫−酸化物(ITO)によってもたらされる1つまたは複数の電極を表面上に備えていてもよい。従って、このような修正の全ては、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。それ故、前述の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、開示されている特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないこと、かつ開示されている実施形態の修正および他の実施形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、2007年4月16日に出願された「低ツイストキラル液晶偏光回折格子および関連する作製方法」という表題の米国仮特許出願第60/912,044号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、参照することによって、その全体がここに記載されているかのように含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、偏光回折格子に関するものであり、さらに詳細には、液晶偏光回折格子および関連する作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
液晶は、分子の規則正しい配向が存在する流動体の形態を取ることができる。典型的には、液晶(LC)分子は、異方性であり、細長の(棒状)形状または平坦な(円板)形状のいずれかを有している。異方性分子が規則的に配向することによって、バルクLCは、多くの場合、その物理的特性の異方性、例えば、機械的性質、電気的性質、磁気的性質、および/または光学的性質の異方性を呈することになる。
【0004】
棒状または円板状の性質によって、LC分子の配向分布は、光学的な用途、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)において、重要な役割を果たすことができる。これらの用途では、LC配向は、配向表面によって影響されることになる。配向表面は、LCが予測可能かつ制御可能に表面に対して配向するように、処理されるとよい。多くの場合、配向表面は、単一ドメインをLC装置の全体に至らせることを確実なものとする。処理された配向表面が存在していないと、LCは、多くのドメインおよび/または多くの配向不連続性を有することになる。光学的な用途では、これらのドメインおよび不連続性は、光の散乱を生じさせ、その結果、ディスプレイの性能が劣化することになる。
【0005】
偏光回折格子は、(従来の回折格子におけるように位相または振幅に影響を与えるのと対照的に)、通過する光の局所的な偏光状態に周期的に影響を与えるために、用いられるとよい。例えば、切換え可能な液晶偏光回折格子(LCPG)を用いて、非偏光で操作可能な強度変調器を実現することができる。さらに具体的には、このような切換え可能なLCPGは、例えば、プロジェクションディスプレイおよび光シャッターを含む用途において、(レーザのような)比較的狭帯域幅の非偏光の比較的高コントラスト変調を達成するために、用いることができる。例えば、いくつかの従来のLCPGは、<5%の帯域幅を有する光に対して、0次光では約200:1よりも大きいコントラスト比で光を変調することができる。しかし、従来のLCPGのコントラスト変調は、多くの用途において重要である(LEDのような)広帯域の光を変調するのに用いられたときに低下することがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、偏光回折格子は、基板と、基板上の第1の偏光回折格子層と、を備えている。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転していてもよい。また、基板は、反射基板であってもよい。
【0008】
他の実施形態では、偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層をさらに備えていてもよい。第2の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって、第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいてもよい。特に、第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転し、第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転しているようになっていてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の捩じれ角は、第1の捩じれ角と逆の角度になっていてもよい。従って、第2の偏光回折格子層の局部的異方性パターンは、第2の厚みにわたって、第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれと逆の連続的に変化する位相ずれを有することができる。例えば、第2の捩じれ角は、約70°であってもよく、第1の捩じれ角は、約−70°であってもよい。
【0010】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向は、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されていてもよい。基板は、透過基板であってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層は、第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第1のキラル液晶層であってもよい。第2の偏光回折格子層は、第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第2のキラル液晶層であってもよい。
【0012】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の少なくとも1つは、重合性液晶層であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の他の1つは、非反応性液晶層であってもよい。例えば、非反応性液晶層は、ネマチック液晶層であってもよい。
【0014】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層の第1の厚みおよび/または第2の偏光回折格子層の第2の厚みは、偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定されていてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、偏光回折格子は、第1の周期的配向状態を含む、基板上の第1の配向層をさらに備えていてもよい。第1の偏光回折格子層は、第1の配向層上に位置していてもよく、第1の偏光回折格子層の分子は、配向層の第1の周期的配向状態に従って配向されていてもよい。
【0016】
他の実施形態では、偏光回折格子は、第1の偏光回折格子層上に、第1の配向層と向き合って位置する第2の周期的配向状態を含む第2の配向層をさらに備えていてもよい。第1の偏光回折格子層は、第1の配向層と第2の配向層との間の非反応性液晶層であってもよい。非反応性液晶層は、その厚みにわたって、第1の配向層の第1の周期的配向状態と第2の配向層の第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、偏光回折格子を形成する方法は、基板を形成することと、基板上に第1の偏光回折格子層を形成することと、を含んでいる。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する分子を含むように、形成されてもよい。また、基板は、反射基板であってもよい。
【0019】
他の実施形態では、第2の偏光回折格子層が、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。第2の偏光回折格子層は、前記第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって、第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じれている分子構造を含んでいてもよい。特に、第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転するように、形成されてもよい。同様に、第2の偏光回折格子層は、第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転するように、形成されてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層および第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が、第1の偏光回折格子層と第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されるように、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。基板は、透過基板であってもよい。
【0021】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層を形成することは、第1の液晶層に第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでいてもよい。また、第2の偏光回折格子層を形成することは、第2の液晶層に第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでいてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、基板上に第1の配向層が形成されてもよい。第1の配向層は、第1の周期的配向状態を有していてもよい。第1の偏光回折格子層は、第1の偏光回折格子層の分子が第1の周期的配向状態に従って配向されるように、第1の配向層上に直接形成されてもよい。次いで、第2の偏光回折格子層が、第1の偏光回折格子層上に形成されてもよい。
【0023】
他の実施形態では、第1の偏光回折格子層は、重合性液晶層であってもよい。重合性液晶層は、第1の配向層上で光重合させた後、第2の偏光回折格子層を重合性液晶層上に形成してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、第2の配向層が第2の基板上に形成されてもよい。第2の配向層は、第2の周期的配向状態を含んでいてもよい。第2の配向層を備える第2の基板は、第2の配向層と第1の配向層との間にギャップを形成するように、第1の偏光回折格子層に隣接して組み合わされてもよく、第2の偏光回折格子層がギャップ内に形成されてもよい。例えば、第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶層であってもよい。
【0025】
他の実施形態では、第2の偏光回折格子層は、重合性液晶層であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層の第1の厚みおよび/または第2の偏光回折格子層の第2の厚みは、偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定されていてもよい。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態によれば、切換え可能な偏光回折格子は、第1の周期的配向状態を含む第1の基板と、第2の周期的配向状態を含む第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間の液晶層と、を備えている。液晶層は、その両面間に定められる厚みにわたって、第1の周期的配向状態と第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2の周期的配向状態は、第1の周期的配向状態に対して位相が異なっていてもよい。
【0029】
他の実施形態では、液晶層は、その厚みにわたって捩じれ角だけ液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラルドーパントを含むネマチック液晶層であってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、液晶分子は、第1の配向層との間の界面および第2の配向層との間の界面のそれぞれにおいて、第1の配向層の第1の配向状態または第2の配向層の第2の配向状態に従って配向されていてもよい。また、液晶層の分子は、液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、液晶層の厚みにわたって捩じれ角だけ回転していてもよい。
【0031】
他の実施形態では、位相角は、約70°から約360°の範囲内にあってもよい。また、捩じれ角は、約70°から約360°の範囲内にあってもよい。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態によれば、切換え可能な偏光回折格子を作製する方法は、第1の周期的配向状態を含む第1の基板を形成することと、第2の周期的配向状態を含む第2の基板を形成することと、第1の基板および第2の基板上に液晶層を形成することと、を含んでいる。液晶層は、第1の周期的配向状態と第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ、両面間に定められる厚みにわたって回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の配向層が、第1の基板上に形成され、第1の配向層に第1の周期的配向状態を形成するようにパターンニングされてもよい。また、第2の配向層が、第2の基板上に形成され、第1の周期的配向状態に対して位相を異ならせて第2の周期的配向状態を第2の配向層に形成するようにパターンニングされてもよい。
【0034】
他の実施形態では、液晶層は、ネマチック液晶層であってもよい。ネマチック液晶層に、その厚みにわたって捩じれ角だけ液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラル分子がドープされてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、液晶層は、その分子が、第1の配向層と液晶層との間の界面および第2の配向層と液晶層との間の界面のそれぞれにおいて、第1の配向層の第1の配向状態および第2の配向層の第2の配向状態に従って配向されると共に、液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、液晶層の厚みにわたって捩じれ角だけ回転するように、形成されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態による他の装置および/または作製方法は、以下の図面および詳細な説明を再検討すれば、当業者には明らかになるだろう。このような付加的な方法および/または装置の全ては、本明細書に含まれ、本発明の範囲内に包含され、かつ添付の請求項によって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明のいくつかの実施形態による偏向回折格子を示す透視図である。
【図1B】本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を示す上面図である。
【図1C】本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を示す側面図である。
【図1D】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子を示す側面図である。
【図2】本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の特性をシミュレートするために用いられるモデルを示す略図である。
【図3】シミュレーション結果に基づく本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の特性を示すグラフである。
【図4】図4Aおよび図4Bは、シミュレーション結果に基づく本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の特性を示すグラフである。
【図5】図5A〜図5Eは、本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を作製する方法およびそのように作製された装置を示す断面図である。
【図6】図6Aおよび図6Bは、実験結果に基づくいくつかの実施形態による偏向回折格子の特性を示すグラフである。
【図7】図7A〜図7Dは、本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子を作製する方法およびそのように作製された装置を示す断面図である。
【図8A】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8B】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8C】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8D】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【図8E】本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子の電気―光学特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明をさらに充分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が、十分かつ完全であって、本発明の範囲を当業者に十分に知らしめるために、提供されている。図面において、寸法および層および領域の相対的な大きさは、明瞭にするために、誇張されている場合がある。全体を通して、同様の番号は、同様の要素を指すものとする。
【0039】
「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などという用語が、種々の要素、構成部品、領域、層および/または区域を記述するために、ここに用いられていることがあるが、これらの要素、構成部品、領域、層および/または区域は、これらの用語に限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、構成部品、領域、層または区域を他の領域、層または区域から区別するために、用いられているにすぎない。従って、以下に述べる第1の要素、構成部品、領域、層または区域は、本発明の示唆から逸脱することなく、第2の要素、構成部品、領域、層または区域と呼ばれることもある。
【0040】
「〜の真下に (beneath)」、「〜の下方に(below)」、「〜の下側の(lower)」、「〜の下に(under)」、「〜の上方に(above)」、「〜の上側の(upper)」などの空間に関連する用語が、ここでは、図面に示されている1つの要素または特徴部と1つまたは複数の他の要素または特徴部との関係を説明するための記述を容易にするために、用いられていることがある。空間に関連する用語は、図面に描かれている方位に加え、使用時または操作時における装置の別の方位も含むことが意図されていることを理解されたい。例えば、もし図面における装置が反転した場合、他の要素または特徴部の「下方に」、「真下に」または「下に」あると記述されている要素は、他の要素または特徴部の「上方に」配向されることになる。従って、「〜の下方に」または「〜の下に」という例示的な用語は、上方の方位と下方の方位の両方を含んでいることになる。装置は、これ以外に配向されることもあり(すなわち、90°または他の方位に回転されることもあり)、この場合、ここに用いられている空間に関連する記述用語も、これに応じて、解釈されるとよい。加えて、ある層が2つの層の「間」にあると記述されているとき、この層は、これらの2つの層の間の唯一の層であってもよいし、または1つまたは複数の介在層が存在していてもよいことも理解されたい。
【0041】
ここに用いられている専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。ここに用いられている単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。「〜を備える(comprise)」および/または「〜を備えている(comprising)」という用語は、本明細書において用いられる場合、記述されている特徴、完全体、工程、操作、要素および/または構成部品の存在を特定することになるが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成部品および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。ここに用いられている「および/または」という用語は、1つまたは複数の関連して列挙されている項目のどのような組合せも含んでいる。
【0042】
ある要素または層が、他の要素または層の「上に位置している」または他の要素または層に「接続されている」、「結合されている」または「隣接している」と記述されているときは、他の要素または層の上に直接位置するかまたは他の要素または層に直接接続、直接結合または直接隣接するようになっていてもよいし、または介在する要素または層が存在していてもよいことを理解されたい。対照的に、ある要素が、他の要素または層の「上に直接位置している」または他の要素または層に「直接接続されている」、「直接結合されている」または「直接隣接している」と記述されているときは、介在する要素または層が存在していないことになる。
【0043】
ここでは、本発明の理想的な実施形態(および中間的な構造)の概略図である断面図を参照して、本発明の実施形態を説明することになる。従って、例えば、製造技術および/または許容誤差の結果として、図面の形状との違いが生じることが見込まれている。従って、本発明の実施形態は、ここに図示されている領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造によって生じる形状の寸法誤差を含むべきである。すなわち、図面に示されている領域は、本質的に概略図であり、それらの形状は、装置の領域の実際の形状を示すことを意図したものではないし、本発明の範囲を限定することを意図したものでもない。
【0044】
特段の規定がない限り、ここに用いられている(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有している。また、一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術および/または本明細書の文脈における意味と一致している意味を有するものと解釈されるべきであり、ここに明示的に規定されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味に解釈されてはならないことをさらに理解されたい。
【0045】
ここに用いられる「透過」または「透明」基板は、入射光の少なくとも一部を透過させるものであることは、当業者によって理解されるだろう。従って、透明基板は、いくつかの実施形態では、ガラス基板であってもよい。対照的に、ここに記載されている「反射」基板は、入射光の少なくとも一部を反射するものである。また、「重合性液晶」は、重合可能な比較的低分子量の液晶材料を指し、ここでは「反応性メソゲン」と記述されることもある。対照的に、「非反応性液晶」は、重合されない比較的低分子量の液晶材料を指している。
【0046】
ここでは、液晶(LC)材料およびそれらの材料から構成される偏光回折格子を参照して、本発明の実施形態を説明することになる。ここに用いられる液晶は、ネマティク相、キラルネマティク相、スメクチック相、強磁性相および/または他の相を有している。加えて、多数の光重合性ポリマーが、ここに記載される偏光回折格子を作り出す配向層として用いられてもよい。光重合性に加えて、これらの材料は、LCに対して不活性であるとよく、LC装置の操作温度の範囲(例えば、約−50℃から約100℃の範囲)の全体にわたって安定した配向をもたらす必要があり、かつここに記載される作製方法に適合している必要がある。光重合性ポリマーのいくつかの例として、ポリイミド(例えば、JSR Micro社(カルフォニア州、サンバレー)から市販されているAL1254およびBrewer Science社(ミズリー州、ローラ)から市販されているNissanRN−1199)、およびケイ皮酸エステル(例えば、M. Schadtら:“線状重合された感光性ポリマーによる液晶の表面誘起平行配向”、Jpn. J. Appl. Phys., Vol 31. (1992), pp. 2155-2164に記載されているポリビニル4−メトキシ−ケイ皮酸エステル)が挙げられる。光重合性ポリマーの他の例は、Vantico社(カルフォルニア州、ロスアンジェルス)から市販されているStaralign. TM.である。さらに他の例として、カルコン−エポキシ材料(例えば、Dong Hoon Choiら:“直線偏光UVの照射による光化学的2官能性カルコン−エポキシフィルム上の低分子量ネマティク液晶の光配向”、Bull. Korean Chem. Soc., Vol. 23, No. 4587 (2002) に記載されているもの)、およびクマリン側鎖ポリイミド(例えば、M. Reeら:“光感受性ポリマーの薄膜上の液晶の配向挙動−光反応性基およびUV露光の影響”、Synth. Met., Vol. 117 (1-3), pp. 273-5 (2001)(これらの材料では、LCは、偏光の方向とほぼ直交して配向する)に開示されているもの)が挙げられる。また、液晶配向の方法のさらに他の例が、Crawfordらに付与された米国特許第7,196,758号明細書において検討されている。さらに、ここに記載されているいくつかの構造は、スピンコーティング法と液晶材料とのバランスによる精緻な作製法と関連している。本発明のいくつかの実施形態と共に用いられるさらに他の構造および/または方法が、Escutiらに付与された国際公開第2006/092758号パンフレットにおいて検討されている。この開示内容は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態は、捩じれた分子構造を厚みに沿って有する偏光回折格子を用いて、アクロマチック(広帯域)高コントラスト回折を達成することができる方法および装置を提供するものである。例えば、いくつかの実施形態では、高コントラストアクロマチック回折は、2つの液晶偏光回折格子層を用いて、得ることができる。このような液晶偏光回折格子層は、それぞれの厚みにわたって、互いに横方向にオフセットされたまたは互いに位相がシフトされた互いに逆の捩じれ性を有している。さらに具体的には、半波長リタデーション厚みおよび+70°の捩じれを有する第1の偏光回折格子が、透過基板上の−70°の捩じれを有する第2のPGに積層されるようになっている。加えて、第1の層が非反応性液晶層として具体化され、第2の層が重合性液晶層として具体化された場合(それぞれの捩じれ角は、約+70°および−70°)、この回折格子は、切換え可能とされ、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるのに適する空間光変調器をもたらすことができる。他の実施形態では、厚みにわたって70°の捩じれを有する単一ポリマーまたは単一の非反応性液晶偏光回折格子層が、反射基板上に設けられても、同様の結果をもたらすことになる。上記の実施形態のいずれにおいても、他の捩じれ角が用いられてもよい。対照的に、単層偏光回折格子は、非偏光を変調することは可能であるが、その高コントラスト作動は、極めて狭帯域の入力光に制限されることになる。従って、広帯域光は、多くの用途において用いられているが、そのような用途において、本発明のいくつかの実施形態を用いることによって、既存の技術と比較して、極めて高コントラストおよび/または極めて高輝度を得ることができる。
【0048】
加えて、本発明のいくつかの実施形態による低ツイスト液晶偏光回折格子では、電気−光学曲線の非線形応答を高めるために、LCのキラル捩じれと基板のオフセット角とを調和させることができる。従って、各画素内にTFTを設ける必要があるアクティブマトリックス式アドレッシング法の代わりに、低コストおよび/または低電力のパッシブマトリックス式アドレッシング法を用いることができる。このようなアドレッシング法は、例えば、携帯用途において、著しい利点をもたらすことになる。
【0049】
図1A〜1Dは、本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子を示している。図1Aに示されているように、第2の偏光回折格子層PG2102が、第1の偏光回折格子層PG1101上に形成され、多層構造105を形成している。第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102は、互いに逆の捩じれ性を有する分子構造を含むキラル液晶層である。換言すれば、第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102は、互いに逆の旋回性を有するキラル分子(すなわち、互いに異なる左回り形態および右回り形態を有する非対称分子)を含んでいる。従って、いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層PG2102は、厚みd2にわたって、第1の偏光回折格子層PG1101の局部的異方性パターンが厚みd1にわたって位相ずれしているのと逆の位相ずれしている局部的異方性パターンを有しているとよい。厚みd1および厚みd2は、それぞれ、第1の偏光回折格子層PG1101の両面間および第2の偏光回折格子層PG2102の両面間に定められている。
【0050】
さらに具体的には、図1B,1Cに示されているように、第2の偏光回折格子層PG2102の分子は、第1の偏光回折格子層PG1101の(右回りの)分子と比較して、逆の(左回りの)旋回性を有している。例えば、第1の偏光回折格子層PG1101に、この層内の分子の配向がその厚みd1にわたって捩じれ角θtwistだけ回転される、すなわち、「捩じられる(twisted)」ように、キラル分子がドープされているとよく、第2の偏光回折格子層PG2102に、この層内の分子の配向がその厚みd2にわたって逆の捩じれ角−θtwistだけ「捩じられる(twisted)」ように、他のキラル分子がドープされているとよい。いくつかの実施形態では、第2の偏光回折格子層PG2102は、約−70°の捩じれ角θtwistを有しているとよく、第1の偏光回折格子層PG1101は、約70°の捩じれ角θtwistを有しているとよい。このような実施形態では、第1の偏光回折格子層PG1101の厚みd1は、第2の偏光回折格子層PG1102の厚みd2と実質的に等しくなっているとよい。第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102を作製するとき、実質的な欠陥を生じることなく、それぞれの捩じれ角を誘発するように構成されたキラルLC分子が、ネマチックLC混合物にドープされるとよい。また、キラルドーパントの量および/または偏光回折格子層の厚みを変化させることによって、捩じれ角θtwistを変更することができる。各偏光回折格子の厚みにわたって分子の「捩じれ(twisting)」を生じさせることによって、局部的異方性パターンの連続的な位相ずれをもたらすことができる。図1Cにさらに示されているように、第1の偏光回折格子層PG1101の分子および第2の偏光回折格子層PG2102の分子は、第1の偏光回折格子層PG1101と第2の偏光回折格子層PG2102との間の界面において、整合されている、すなわち、同一の位相になっている。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の偏光回折格子層PG1101および第2の偏光回折格子層PG2102は、単一固体ポリマー層、例えば、反応性メソゲン層(すなわち、重合性液晶層)であるとよい。例えば、第1の偏光回折格子層PG1101は、露出している光配向層115上に、(所定の旋回性または捩じれ性をもたらすようにドープされた)第1のキラルLC材料を、偏光回折格子の作動に用いられる光に対して半波長厚みに達するように、スピンコーティングすることによって形成されるとよい。光配向層115は、ここではさらに説明しない周知の技術によって、透明基板、例えば、ガラス基板110a上に形成され、かつパターンニングされているとよい。逆の旋回性/捩じれ性をもたらすようにドープされた第2のキラルLC混合物が、第1の層PG1101上に、ここでも半波長厚みに達するまで直接塗布され、これによって、第2の偏光回折格子層PG2102を形成するようになっているとよい。
【0052】
他の実施形態では、切換え可能な液晶偏光回折格子が形成されてもよい。さらに具体的には、偏光回折格子層PG2102が、前述したように、所定の旋回性または捩じれ性(例えば、−70°)を有するように、形成されるとよい。露出した光配向材料115を含む対向する透過基板(例えば、ガラス基板110a)が、半波長セル厚みに対応するセルギャップを保って、偏光回折格子層PG2102上に積層されるとよい。光配向材料115は、偏光回折格子層PG2102の捩じれ性に基づいてオフセットされる周期的配向状態を含んでいるとよい。逆の捩じれ性(例えば、+70°)を有するキラルネマチックLC材料がギャップ内に充填され、光配向層115と偏光回折格子層PG2102との間に偏光層PG1101としての液晶層がもたらされ、これによって、切換え可能な液晶偏光回折格子が得られることになる。
【0053】
図1Dは、本発明のさらに他の実施形態による偏光回折格子を示している。図1Dの偏光回折格子は、反射基板110bのような基板上に形成された単一偏光回折格子層PG1101を備えている。例えば、偏光回折格子層PG1101は、反射基板110b上の露出した光配向層115上に、偏光回折格子の作動に用いられる光に対して半波長厚みに達するように、形成されているとよい。前述したように、偏光回折格子層PG1101に、この層内の分子の配向がその厚みd1にわたって捩じれ角θtwistだけ回転される、すなわち、捩じられる(twisted)ように、キラル分子がドープされ、これによって、局部的異方性パターンの連続的な位相ずれをもたらすようになっているとよい。偏向回折格子層PG1101は、約70°の捩じれ角θtwistを有しているとよい。しかし、捩じれ角θtwistは、キラルドーパントの量および/または偏光回折格子層PG1101の厚みを変化させることによって、変更することができる。いくつかの実施形態では、偏光回折格子層PG1101は、重合性液晶層であるとよいが、他の実施形態では、偏光回折格子層PG1101は、切換え可能な液晶偏光回折格子をもたらすための非反応性液晶層であってもよい。作動光が、反射基板110bの存在によって、(入射時および反射時において)2度偏光回折格子層PG1101を通過することになるので、図1Dの単層偏光回折格子は、任意選択的に、以下にさらに詳細に説明する図1Cの2層偏光回折格子と同じように機能することができる。
【0054】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、透過光の方向および/または偏光状態を広スペクトル域の全体にわたって制御し得る回折光学素子を提供することになる。これらの回折光学素子は、ディスプレイ用途において、例えば、バックライト、偏光無依存画素設計および/または光リサイクリングからより効率的な出力結合をもたらすために、用いることができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子(PG)は、異方性周期的構造を備えており、特異な回折特性(例えば、特別の偏光および100%にいたる回折効率をもたらす3つの可能な回折次数(0,±1))を発揮することができ、幅広い用途に適用され得るものである。従来のPGは、中心波長の約7%のスペクトル域の全体にわたって、比較的高効率で回折することができる。対照的に、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、この帯域幅を約5倍拡げることができ、可視スペクトル域の大半にわたって、例えば、広帯域照明(たとえば白色光)の場合であっても、約100%の効率で回折することができる。具体的には、本発明のいくつかの実施形態によるPGは、少なくとも2つのキラル液晶層を備えているとよく、各々が比較的穏やかな捩じれ角(例えば、70°)および互いに逆の捩じれ性を有しているとよい。
【0056】
PGが初歩的な偏光ホログラムとして導入されて以来、その回折特性および実用性が研究されてきている。例えば、PGの用途として、偏光測定およびハイパースペクトル・ポラリメトリが挙げられる。ネマチック液晶(LC)は、直線複屈折性を有する連続的組織のPGを作り出すことができる。この手法を用いて、所望の回折特性および/または比較的低散乱性を有する実質的に欠陥のない切換え可能なPGを作り出すことができる。従って、この切換え可能なPGは、偏光無依存変調器として用いることができる。
【0057】
従来の(「円偏光」式)PGは、空間的に変化する単軸複屈折(すなわち、n(x)=[cos(πx/∧)、sin(πx/∧)、0])を含んでいるとよい。標準的な入射に対する理想的な回折効率は、以下のように、導くことができる。
【0058】
【数1】
【0059】
上記の式において、ηmは、m次の回折効率であり、λは、入射光の真空波長であり、Δnは、直線複屈折であり、dは、回折格子の厚みであり、S’3=S3/S0は、入射光の楕円率に対応する正規化ストークス・パラメータである。3つの次数(0,±1)が存在し、一次光は、互いに直交する(左旋回および右旋回の)円偏光になる。PGの回折挙動は、(式(1)におけるΔnd/λに基づき)、波長に依存している。
【0060】
図1B,1Cを再び参照すると、本発明のいくつかの実施形態による2層ツイスト構造を備えるPGのアクロマチック性能は、比較的広いスペクトル幅、例えば、中心波長の約34.3%におよぶスペクトル幅にわたって、100%におよぶ回折効率をもたらすことができる。これは、中心波長の約6.8%のスペクトル幅をもたらす従来のPGと比較して、約5倍広がっていることを示している。従って、互いに逆の捩じれ性を有する2つのツイストPGを組み合わせることによって、PG回折の広帯域性(achromacity)を達成することができる。
【0061】
ツイストPGの広帯域回折のいくつかの設計パラメータとして、各PG層の厚みdおよび捩じれ角θtwistが挙げられる。これらのパラメータの影響は、有限差分時間−ドメイン(FDTD)法および周期的異方性媒体用に特別に開発されたオープンソースのソフトウエハパッケージを用いて、明らかにされている。従って、偏光ホログラフィおよび光配向技術を用いて重合性液晶フィルムとして形成されたアクロマチックPGの予備実験結果について、図2〜6を参照して説明する。
【0062】
図2は、前述したFDTDシミュレーション空間の基本的な幾何学的配置を示している。フレネル損失を低減させ、および/または最小限に抑えるために、屈折率を連続的に変化させる反射防止(AR)膜206が、偏光回折格子PG201の両側の空気−偏光回折格子界面に施されているとよい。周期的境界207および単軸完全整合層(UPML)技術による整合層境界208を用いて、シミュレーション空間を終端させ、および/またはシミュレーション時間を低減させるようになっているとよい。入力/入射平面波209は、回折格子構造の直前に位置する垂直方向の直線偏光をもたらすガウスパルス平面波(すなわち、広帯域源)であるとよく、出力回折効率が、回折格子の直後に位置するライン211の電場から計算されるようになっているとよい。近傍−遠方光学変換および時間的フーリエ変換を用いて、遠距離場におけるスペクトル回折を解析することができる。
【0063】
ここに用いられる高PG効率をもたらすスペクトル域Δλ(単位:波長)は、全一次回折Ση±1が約99.5%よりも大きい波長域として定義されている。正規化帯域幅Δλ/λcenter(単位:%)は、その中心波長λcenterに対するスペクトル域の比率として定義されている。
【0064】
図3は、0°から90°の範囲内の種々の捩じれ角に対する単層ツイストPGの回折特性を示すシミュレーション結果を示している。従って、データは、右旋回性および左旋回性に対して同一である。さらに具体的には、図3は、波形301,302,303,304,305によって、それぞれ、表わされている種々の捩じれ角(θtwist)0°、30°、60°、70°、90°に対する一次回折効率の合計(Ση±1)対正規化リタデーション(Δnd/λ)を示している。図3に示されているように、高効率帯域幅の最大値は、従来のPG(すなわち、θtwist=0°の波形301によって示されているPG)の場合に生じており、そのΔλ/λcenterは、6.8%である。すなわち、(導波路としても知られている)導波現象は、極めて小さい捩じれ角以外は適応しないので、捩じれ角の増加と共に回折効率の著しい低下が生じることになる。にもかかわらず、出力には、0次光および±1次光しか存在せず、一次の偏光は、(円偏光ではなく)、少しずつ楕円偏光になっている。
【0065】
しかし、本発明のいくつかの実施形態によれば、互いに逆の捩じれ性を有する2つのツイストPGを積層することによって、高回折効率(すなわち、約100%におよぶ回折効率)を得ることができる。両PG層の光学的特性は、(捩じれの方向を除けば)、実質的に同様または同一であるとよい。これによって、第2の層は、第1のツイスト構造の偏光効果を補償することができる。それ故、アクロマチック(広帯域)効果は、局部的リタデーションの補償として定性的に記述されてもよい。
【0066】
図4Aは、約0°から約90°の範囲の全体にわたって捩じれ角を変化させて、本発明のいくつかの実施形態による互いに逆の捩じれ性を有する2層ツイスト構造の回折特性を示すシミュレーション結果を示している。さらに具体的には、図4Aは、波形401,402,403,404,405によって、それぞれ、表わされているθtwist の種々の値0°、30°、60°、70°、90°に対して、正規化リタデーション(Δnd/λ)の関数として一次回折効率(Ση±1)を示している。最大帯域幅Δλ/λmax=34.3%は、図4Bにさらに示されているように、θtwist=70°のときに、得られている。さらに具体的には、図4Bのグレースケールレベルは、シミュレーションされた回折効率を示し、帯域幅Δλ/λcenter は、図示されている領域における最大値である。従って、従来のPGと比較して、最大回折帯域幅が約5倍に拡大されている。なお、回折帯域幅は、捩じれ角に対して鋭敏なので、帯域幅の性能を改良するには、θtwist の注意深い制御が重要である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、偏光ホログラフィと光配向技術との組合せを用いて、重合性液晶フィルムとして形成されている。材料および処理の最適化に基づいて、比較的高回折効率および/または比較的低散乱性をもたらす実質的に欠陥のないRMPGを作製することができる。図5A〜5Eに示されているように、重合性液晶PG501,502の作製は、以下のように行われるとよい。図5Aに示されているように、光配向材料の比較的薄い層515が、基板505上に被覆されることになる。いくつかの実施形態では、基板505は、ガラス基板のような透過基板または透明基板であるとよい。しかし、他の実施形態では、基板505は、反射基板であってもよい。図5Bに示されているように、基板505は、比較的小さい角度で照射される直交円偏光レーザからなるコヒーレントビーム509を用いて、露光またはパターンニングされ、これによって、実質的に一定の強度を有する偏光干渉パターン516を生じさせることになる。図5Cに示されているように、第1の捩じれ性を有する第1のRM層501が、光配向層515上に形成され、表面パターン516に従って配向されることになる。例えば、第1のRM混合物に、第1のキラルドーパントがドープされ、このドープされた第1のRM混合物が、光配向層上にスピンコーティングによって被覆され、第1のRM層501をもたらすようになっているとよい。図5Dに示されているように、第1のRM層501は、例えば、一面を覆う紫外線(UV)露光519によって、光重合され、構造化された大きな光学異方性を永続的に定着させるようになっている。図5Eに示されているように、逆の捩じれ性を有する第2のRM層502が、第1のRM層501上に形成されることになる。例えば、第2のRM混合物に、第2のキラルドーパントがドープされ、このドープされた第2のRM混合物が、第1のRM層501上にスピンコーティングによって被覆され、次いで、光重合され、第2のRM層502をもたらすようになっているとよい。第2のRM層502は、第1のRM層501と第2のRM層502との間の界面において、第1のRM層501の配向に基づいて配向されることになる。
【0068】
図5A〜5Eをさらに参照すると、いくつかの実施形態では、ROP−103(Rolic)のような線状光重合性ポリマー(LPP)が、光配向材料515として用いられているとよい。直交円偏光ビームのHdCdレーザ(325nm)を用いて、露光し、光配向層515上に、∧=8.5μmの周期を有する表面配向パターンを形成するとよい。光配向層の露光の後、第1のRMフィルム501および第2のRMフィルム502が、スピンコーティングによって、基板505上の光配向層515の上に堆積されるとよい。第1のRM層501は、少量(0.25%)のキラルドーパントCB15(Merck、右旋回)が添加されたRMS03−001(Merck、589nmにおけるΔn〜0.159)から構成された混合物であるとよく、第1のRM層501の厚みd1が半波長厚み(d=λ/2Δn)に達すると共に捩じれ角がθtwist=70°になるように、選択されているとよい。第2のRM層502は、第1のRM層501上に直接堆積されるとよく、少量(0.34%)の異なるキラルドーパントZLI−811(Merck、左旋回)がドープされたRMS03−001から構成され、同一厚みおよび逆の捩じれ状態が得られるようになっているとよい。従って、本発明のいくつかの実施形態による偏光回折格子の最終的な格子厚みは、2dであるとよい。何故なら、2つの層501,502が積層され、各々が約半波長厚みdを有しているからである。
【0069】
図6Aは、(波形610によって示されている)従来のPGおよび(波形620によって示されている)本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGの分光光度計によって測定された0次回折効率のスペクトル特性を示す実験結果をもたらしている。清浄なガラススライドの測定された透過率(すなわち、波形630によって示されている約100%の透過率)もプロットされている。このガラススライドの透過率は、PGと実質的に同様の条件下で測定されたものである。従来のPG(610’)および本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPG(620’)の0次回折効率から計算された推定回折効率
【数2】
のスペクトル特性が、図6Bにプロットされている。図3および図4A,4BのFDTDシミュレーション結果から予期されているように、回折帯域幅の著しい改良が、図6A,6Bに示されている。また、図6Bに示されている推定回折効率を確認するために、従来のPGおよび本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGの両方に対して、3つの波長の回折効率が、赤(633nm)レーザ、緑(532nm)レーザおよび青(473nm)レーザを用いて、測定されている。ここに用いられている「回折効率」は、ηm=1m/1REFとして定義されている。ただし、Imは、m次の透過/回折光の測定された強度であり、1REFは、ガラス基板の参考透過強度である。非コヒーレント散乱は、回折されたスペクトルを清浄なガラススライドと比較することによって、400nmを超える波長において、約2%以下と概略的に評価されている。
【0070】
従って、本発明のいくつかの実施形態による互いに逆の捩じれ性を有する少なくとも2つの層を備えるアクロマチックPGは、以下の回折特性、すなわち、3つの回折次数(0,±1)が存在する特性、一次回折光が直交円偏光をもたらす特性、および/または一次回折光が(ストークス・パラメータと正比例する)著しく偏光に鋭敏である特性を有している。加えて、入射する円偏光は、約100%におよぶ回折効率によって、一次回折光の1つを生じさせ、入射する直線偏光または非偏光入力は、約50%の回折効率によって、一次回折光の各々を生じさせることになる。
【0071】
他のLC回折格子(すなわち、ポリマ−壁LC回折格子および/またはHPDLC回折格子)と比較して、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、同程度またはそれ以上の実験的回折効率、および/または低非コヒーレント散乱をもたらすことができる。従って、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、可視光域のほぼ全域にわたって、厚い回折格子(ブラッグ回折格子)の高い回折効率をもたらすことができる。ディスプレイの光学素子として用いられるとき、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、他の光学的部品と一体化され、これによって、ディスプレイをより小型にし、かつより効率化することができる。これらの回折光学素子は、ビーム分割、偏光測定、などにも有用である。加えて、同様のアクロマチックPG設計を用いて、変調器用途向けの切換え可能なLC回折格子をもたらすことも可能である。さらに具体的には、2つのツイストPG層の1つを非反応性ネマチック液晶材料によって形成し、構造の全体を電極付きの基板間に配置することによって、切換え可能なLC回折格子をもたらすことができる。
【0072】
このように、本発明のいくつかの実施形態による互いに逆の捩じれ性を有する少なくとも2つの層を備えるアクロマチックPGは、広スペクトル域の全体にわたって比較的高い回折効率を達成することができ、これによって、ディスプレイ技術分野において、その特異な回折挙動に基づいて光をより効率的に制御する幅広い潜在的な用途を提供することができる。さらに具体的には、このような薄膜アクロマチックPGは、(広スペクトル帯域幅に用いられる場合)、従来の回折格子よりも、透過光の方向、強度および/または偏光状態に関して著しく多くの機能的な制御を提供することができ、かつ多くの遠隔検出用途において潜在的な利得をもたらすことができる。
【0073】
加えて、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、周知の薄膜技術および/または周知の液晶材料を用いて作製することが可能であり、これによって、例えば、偏光無依存性マイクロディスプレイ、例えば、携帯プロジェクションディスプレイ、消費者TV、リアルタイムホログラフィ、などに用いられる改良された空間光変調器素子を実現することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGは、所望の中心波長の約45%におよぶ波長域の全体にわたって高コントラスト変調を高めることができ、その結果として、従来の単一偏光回折格子と比較して、900%の改良をもたらすことができる。従って、ディスプレイ用途では、画像品質を著しく改良することができる。
【0074】
さらに、本発明のいくつかの実施形態によるアクロマチックPGを用いて、撮像偏光干渉計を提供することもできる。このPGは、3つの回折次数を生じ、一次光の各々は、偏光鋭敏性を有しているので、このPGと波長板を組み合わせることによって、互いに直交する偏光情報を2つの回折次数に分離することができる。従って、PGのこの偏光鋭敏性と波長分散性を組み合わせることによって、小型の分光偏光計をもたらすこともできる。例えば、各回折次数の強度を測定する代わりに、同じ偏光情報(すなわち、ストークス・パラメータ)を2つの実質的に同一のPGを通過する2つの回折ビームの干渉写真から取り出すことができる。さらに具体的には、第1のPGは、スペクトル画像を含むビームを2つの一次光に分離し、第2のPGは、これらのビームの方向を平行に変化させることができる。各回折ビームの偏光状態は、互いに直角に配列されたλ/2波長板を通過した後、同じ直線偏光に変換されることになる。2つの回折ビームを検出器が位置する同じ撮像面に集束させることによって、干渉パターンを得ることができる。
【0075】
本発明のさらに他の実施形態は、パッシブマトリックス式アドレッシング法を用いて、画素レベルで制御され得る切換え可能な液晶偏光回折格子(LCPG)を提供するものである。パッシブマトリックス式アドレッシングは、高コストのアクティブマトリックス式アドレッシングにおいて用いられているような個々の画素内に薄膜トランジスタ(TFT)を設ける必要性を低減および/または排除するために、列/行電圧平均化法を用いている。従って、パッシブマトリックス式アドレッシングは、(携帯電話およびPDAにおけるような)低電力および低コストが必要とされるLCDに用いられている。しかし、LCPGにおいてパッシブマトリックス式アドレッシングを実施するには、比較的急峻な電気−光学応答曲線が必要である。対照的に、従来のLCPG技術は、比較的良くない電気−光学的応答曲線を有し、その結果として、パッシブマトリックス式アドレッシングに用いられるのに適していない。従って、本発明のいくつかの実施形態は、(傾斜が)著しく急峻な電気−光学応答曲線を有する切換え可能なLCPGをもたらすものであり、これによって、パッシブアドレッシングされる列の数を、約1列から約100列以上に改良することができる。これは、スーパツイステッドネマチック(STN)構成に基づく従来の携帯電話用LCDに匹敵するものである。
【0076】
図7A〜7Dは、本発明のさらに他の実施形態によるLCPGを作製する方法およびこのように作製された装置を示す断面図である。図7Aを参照すると、比較的薄い配向層715a,715bが、それぞれ、第1の基板705および第2の基板710の上に形成されている。第1の基板705および/または第2の基板710は、ガラスのような透過材料または透明材料から形成されているとよい。各基板は、透明導電電極(図示せず)を備えていてもよい。図7Bにおいて、各基板上の配向層715a,715bは、各基板上に周期的配向状態をもたらすように、パターンニングされている。例えば、これらの配向層は、光重合性ポリマーを含む光配向層であるとよく、直交円偏光レーザビーム709a,709bを用いて、ホログラフィによってパターンニングされているとよい。図7Cに示されているように、第1の基板705aおよび第2の基板710bは、それぞれの配向層715a,715bの周期的配向状態が相対的位相角Φtだけオフセットされるように、組み合わされるようになっている。このようにして、図7Dに示されているように、所定の捩じれ性を有する液晶層725が、第1の基板と第2の基板との間のセルギャップ721内に形成されることになる。液晶層は、セルギャップ721の厚みdにわたって特定の捩じれ角Φcをもたらすようなキラル分子がドープされた単一ネマチックLC層であるとよい。換言すると、捩じれ角Φcは、液晶層の厚みdにわたって、局部的異方性パターンを連続的に変化させる位相ずれをもたらすことになる。また、液晶層725の分子は、光配向層の配向状態に基づいて、配向されている。従って、捩じれ角Φcが基板のオフセット角Φtと異なっているとき、弾性エネルギー歪が液晶層内に生じ、その結果、より非線形切換え挙動をもたらすことになる。STNディスプレイのように、これは、図8A〜8Eの例示的なシミュレーション結果にさらに示されているが、中間層チルト角を印加電圧の関数として計算することによって、定量化することができる。
【0077】
図8A〜8Eは、本発明のいくつかの実施形態によるLCPGの電気−光学応答を示している。図8A〜8Eに示されているように、捩じれ角Φcを基板オフセット角Φtに対して変化させると、比較的急峻な電気−光学応答が得られることになる。さらに具体的には、図8Aに示されているように、基準曲線(Φt=0°、Φc=0〜89°)は、パッシブアドレッシングに用いられるのに適していない。何故なら、比較的良好なコントラストをもたらすのは、約1列にすぎないからである。図8Bにさらに示されているように、(Φt=300°、Φc=240〜345°)設計の場合、曲線は、著しく急峻である。従って、100列を超える列をパッシブアドレシングすることができる。図8C,8Dは、Φt=240°,Φt=270°でΦcの値を変化させた場合の電気−光学応答を同様に示している。上記の評価に関連するさらなる詳細は、「Scheffer and Nehring, Annual Review of Material Science 27, 555-583 (1997)」および「Alt and Pleshko, IEEE Trans. Elec. Dev. ED-21, 146-155 (1974)」におけるSTNディスプレイアドレッシングの要約に見出される。これらの開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。
【0078】
図8Eは、比較するために、図8A,8B,8Cの電気−光学応答曲線を共通する一組の軸に沿って示している。具体的には、曲線805aは、Φt=0°、Φc=0°の場合における電気−光学応答を示している。同様に、曲線805bは、Φt=300°、Φc=240°の場合における電気−光学応答を示し、曲線805cは、Φt=240°、Φc=180°の場合における電気−光学応答を示している。従って、図8Eは、捩じれ角Φcおよび基板のオフセット角Φtの変化に基づいて、応答曲線が著しく急峻になることを示している。特に、応答曲線805bは、相対的位相角Φtが約300°以上であり、かつ捩じれ角Φcが約240°から約300°の間にある場合に得られる改良された切換え挙動をもたらす比較的急峻な傾斜を示している。さらに一般的に、いくつかの実施形態では、相対的位相角Φtは、約70°から約360°の間にあるとよく、捩じれ角Φcは、約70°から約360°の間にあるとよい。
【0079】
従って、本発明のいくつかの実施形態によるLCPGは、キラル歪および捩じれ構造を用いて、より非線形の電気−光学的応答曲線をもたらすことができる。それ故に、本発明のいくつかの実施形態によるLCPGは、より容易にオフ状態からオン状態に切り換えることができ、パッシブマトリックス式アドレッシング法を用いてより好ましく制御することが可能である。
【0080】
前述の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、本発明を限定すると解釈されるべきではない。本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を施すことが可能であることを容易に理解するだろう。例えば、図1A〜1Dおよび図7A〜7Dを参照して前述した構造は、それぞれ、1つまたは2つの基板の組合せにおいて非切換え可能LC材料および/または切換え可能なLC材料を用いて作製することができることを理解されたい。さらに、ここに述べた基板は、例えば、基板上の透明なインジウム−錫−酸化物(ITO)によってもたらされる1つまたは複数の電極を表面上に備えていてもよい。従って、このような修正の全ては、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。それ故、前述の説明は、本発明の単なる例示にすぎず、開示されている特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないこと、かつ開示されている実施形態の修正および他の実施形態は、本発明の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の第1の偏光回折格子層であって、前記第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、第1の偏光回折格子層と、
を備えていることを特徴とする偏光回折格子。
【請求項2】
前記第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転していることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項3】
前記第1の偏光回折格子層上の第2の偏光回折格子層であって、前記第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって前記第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、第2の偏光回折格子層
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項4】
前記第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転しており、前記第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、前記第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転している
ことを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項5】
前記第2の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが、前記第2の厚みにわたって、前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれと逆の連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第2の捩じれ角は、前記第1の捩じれ角と逆の角度になっていることを特徴とする請求項4に記載の偏光回折格子。
【請求項6】
前記第2の捩じれ角は、約70°であり、前記第1の捩じれ角は、約−70°であることを特徴とする請求項4に記載の偏光回折格子。
【請求項7】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の前記分子の前記それぞれの配向は、前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されていることを特徴とする請求項4に記載の偏光回折格子。
【請求項8】
前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第1のキラル液晶層から構成されており、前記第2の偏光回折格子層は、前記第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第2のキラル液晶層から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項9】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の少なくとも1つは、重合性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項10】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の他の1つは、非反応性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項9に記載の偏光回折格子。
【請求項11】
前記非反応性液晶層は、ネマチック液晶層から構成されていることを特徴とする請求項10に記載の偏光回折格子。
【請求項12】
前記基板は、透過基板から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項13】
前記基板は、反射基板から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項14】
前記第1の厚みは、前記偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項15】
第1の周期的配向状態を含む、前記基板上の第1の配向層
をさらに備えており、
前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の配向層上に位置しており、前記第1の偏光回折格子層の分子は、前記第1の配向層の前記第1の周期的配向状態に従って配向されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項16】
前記第1の偏光回折格子層上に、前記第1の配向層と向き合って位置する第2の周期的配向状態を含む第2の配向層
をさらに備えており、
前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の配向層と前記第2の配向層との間の非反応性液晶層から構成されており、前記非反応性液晶層は、前記厚みにわたって、前記第1の配向層の前記第1の周期的配向状態と前記第2の配向層の前記第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいることを特徴とする請求項15に記載の偏光回折格子。
【請求項17】
偏光回折格子を形成する方法であって、
基板を形成することと、
前記基板上に第1の偏光回折格子層を形成し、前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、ことと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記第1の偏光回折格子層を形成することは、
前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する分子を含む前記第1の偏光回折格子層を形成すること
を含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層を形成し、前記第2の偏光回折格子層は、前記第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって、前記第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、こと
をさらに含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
前記第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転するように、前記第1の偏光回折格子層を形成することと、
前記第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が前記第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転するように、前記第2の偏光回折格子層を形成することと、
を含んでいることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが、前記第2の厚みにわたって、前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれと逆の連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第2の捩じれ角は、前記第1の捩じれ角と逆の角度になっていることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の捩じれ角は、約+70°であり、前記第1の捩じれ角は、約―70°であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の前記分子の前記それぞれの配向が前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されるように、前記第2の偏光回折格子層を前記第1の偏光回折格子層上に形成すること
をさらに含んでいることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の偏光回折格子層を形成することは、第1の液晶層に前記第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでおり、前記第2の偏光回折格子層を形成することは、第2の液晶層に前記第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでいることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
基板上に第1の配向層を形成し、前記第1の配向層は、第1の周期的配向状態を有している、ことと、
前記第1の偏光回折格子層の分子が前記第1の周期的配向状態に従って配向されるように、前記第1の偏光回折格子層を前記第1の配向層上に直接形成することと、次いで、
前記第2の偏光回折格子層を前記第1の偏光回折格子層上に形成することと、
をさらに含んでいることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の偏光回折格子層が重合性液晶層から構成される請求項25に記載の方法であって、
前記重合性液晶層を前記第1の配向層上に光重合させた後、前記第2の偏光回折格子層を前記重合性液晶層上に形成すること
をさらに含んでいることを特徴とする方法。
【請求項27】
前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
第2の基板上に第2の配向層を形成し、前記第2の配向層は、第2の周期的配向状態を含んでいる、ことと、
前記第2の配向層を備える前記第2の基板を、前記第2の配向層と前記第1の配向層との間にギャップを形成するように、前記第1の偏光回折格子層に隣接して組み合わせることと、
前記第2の偏光回折格子層を前記ギャップ内に形成することと、
を含んでいることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の偏光回折格子層は、重合性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記基板は、透過基板から構成されていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記基板は、反射基板から構成されていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の偏光回折格子層を形成することは、前記第1の偏光回折格子層を、前記偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定された厚みに形成することを含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項33】
切換え可能な偏光回折格子であって、
第1の周期的配向状態を含む第1の基板と、
第2の周期的配向状態を含む第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶層であって、その両面間に定められる厚みにわたって、前記第1の周期的配向状態と前記第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる、液晶層と、
を備えていることを特徴とする切換え可能な偏光回折格子。
【請求項34】
前記第2の周期的配向状態は、前記第1の周期的配向状態に対して位相が異なっていることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項35】
前記液晶層は、その厚みにわたって前記捩じれ角だけ前記液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラルドーパントを含むネマチック液晶層から構成されていることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項36】
前記液晶分子は、前記第1の配向層との間の界面および前記第2の配向層との間の界面のそれぞれにおいて、前記第1の配向層の前記第1の配向状態または前記第2の配向層の前記第2の配向状態に従って配向されると共に、前記液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、前記液晶層の前記厚みにわたって前記捩じれ角だけ回転していることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項37】
前記位相角は、約70°から約360°の範囲内にあることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項38】
前記捩じれ角は、約70°から約360°の範囲内にあることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項39】
切換え可能な偏光回折格子を作製する方法であって、
第1の周期的配向状態を含む第1の基板を形成することと、
第2の周期的配向状態を含む第2の基板を形成することと、
前記第1の基板および前記第2の基板上に液晶層を形成し、前記液晶層は、その両面間に定められる厚みにわたって、前記第1の周期的配向状態と前記第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる、ことと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項40】
前記第1の基板および前記第2の基板を形成することは、
前記第1の基板上に第1の配向層を形成することと、
前記第1の配向層をパターンニングして、前記第1の配向層に前記第1の周期的配向状態を形成することと、
前記第2の基板上に第2の配向層を形成することと、
前記第2の配向層をパターンニングして、前記第1の周期的配向状態に対して位相を異ならせて前記第2の周期的配向状態を形成することと、
を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記液晶層は、ネマチック液晶層から構成されており、
前記液晶層を形成することは、
前記ネマチック液晶層に、その厚みにわたって前記捩じれ角だけ前記液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラル分子をドープすること
を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記液晶層を形成することは、
前記液晶層の前記分子が、前記第1の配向層と前記液晶層との間の界面および前記第2の配向層と前記液晶層との間の界面のそれぞれにおいて、前記第1の配向層の前記第1の配向状態または前記第2の配向層の前記第2の配向状態に従って配向されると共に、前記液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、前記液晶層の前記厚みにわたって前記捩じれ角だけ回転するように、前記液晶層を形成すること
を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記位相角は、約70°から約360の範囲内にあることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記捩じれ角は、約70°から約360の範囲内にあることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上の第1の偏光回折格子層であって、前記第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、第1の偏光回折格子層と、
を備えていることを特徴とする偏光回折格子。
【請求項2】
前記第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転していることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項3】
前記第1の偏光回折格子層上の第2の偏光回折格子層であって、前記第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって前記第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、第2の偏光回折格子層
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項4】
前記第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転しており、前記第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの相対的配向は、前記第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転している
ことを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項5】
前記第2の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが、前記第2の厚みにわたって、前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれと逆の連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第2の捩じれ角は、前記第1の捩じれ角と逆の角度になっていることを特徴とする請求項4に記載の偏光回折格子。
【請求項6】
前記第2の捩じれ角は、約70°であり、前記第1の捩じれ角は、約−70°であることを特徴とする請求項4に記載の偏光回折格子。
【請求項7】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の前記分子の前記それぞれの配向は、前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されていることを特徴とする請求項4に記載の偏光回折格子。
【請求項8】
前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第1のキラル液晶層から構成されており、前記第2の偏光回折格子層は、前記第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子を含む第2のキラル液晶層から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項9】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の少なくとも1つは、重合性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項10】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の他の1つは、非反応性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項9に記載の偏光回折格子。
【請求項11】
前記非反応性液晶層は、ネマチック液晶層から構成されていることを特徴とする請求項10に記載の偏光回折格子。
【請求項12】
前記基板は、透過基板から構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏光回折格子。
【請求項13】
前記基板は、反射基板から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項14】
前記第1の厚みは、前記偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項15】
第1の周期的配向状態を含む、前記基板上の第1の配向層
をさらに備えており、
前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の配向層上に位置しており、前記第1の偏光回折格子層の分子は、前記第1の配向層の前記第1の周期的配向状態に従って配向されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光回折格子。
【請求項16】
前記第1の偏光回折格子層上に、前記第1の配向層と向き合って位置する第2の周期的配向状態を含む第2の配向層
をさらに備えており、
前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の配向層と前記第2の配向層との間の非反応性液晶層から構成されており、前記非反応性液晶層は、前記厚みにわたって、前記第1の配向層の前記第1の周期的配向状態と前記第2の配向層の前記第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいることを特徴とする請求項15に記載の偏光回折格子。
【請求項17】
偏光回折格子を形成する方法であって、
基板を形成することと、
前記基板上に第1の偏光回折格子層を形成し、前記第1の偏光回折格子層は、前記第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚みにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、ことと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項18】
前記第1の偏光回折格子層を形成することは、
前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する分子を含む前記第1の偏光回折格子層を形成すること
を含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の偏光回折格子層上に第2の偏光回折格子層を形成し、前記第2の偏光回折格子層は、前記第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚みにわたって、前記第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、こと
をさらに含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
前記第1の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が前記第1の厚みにわたって第1の捩じれ角だけ回転するように、前記第1の偏光回折格子層を形成することと、
前記第2の偏光回折格子層の分子のそれぞれの配向が前記第2の厚みにわたって第2の捩じれ角だけ回転するように、前記第2の偏光回折格子層を形成することと、
を含んでいることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが、前記第2の厚みにわたって、前記第1の偏光回折格子層の局部的異方性パターンが前記第1の厚みにわたって連続的に変化する位相ずれと逆の連続的に変化する位相ずれを有するように、前記第2の捩じれ角は、前記第1の捩じれ角と逆の角度になっていることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の捩じれ角は、約+70°であり、前記第1の捩じれ角は、約―70°であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層の前記分子の前記それぞれの配向が前記第1の偏光回折格子層と前記第2の偏光回折格子層との間の界面に沿って整合されるように、前記第2の偏光回折格子層を前記第1の偏光回折格子層上に形成すること
をさらに含んでいることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の偏光回折格子層を形成することは、第1の液晶層に前記第1の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでおり、前記第2の偏光回折格子層を形成することは、第2の液晶層に前記第2の捩じれ性を有するキラル液晶分子をドープすることを含んでいることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の偏光回折格子層および前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
基板上に第1の配向層を形成し、前記第1の配向層は、第1の周期的配向状態を有している、ことと、
前記第1の偏光回折格子層の分子が前記第1の周期的配向状態に従って配向されるように、前記第1の偏光回折格子層を前記第1の配向層上に直接形成することと、次いで、
前記第2の偏光回折格子層を前記第1の偏光回折格子層上に形成することと、
をさらに含んでいることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の偏光回折格子層が重合性液晶層から構成される請求項25に記載の方法であって、
前記重合性液晶層を前記第1の配向層上に光重合させた後、前記第2の偏光回折格子層を前記重合性液晶層上に形成すること
をさらに含んでいることを特徴とする方法。
【請求項27】
前記第2の偏光回折格子層を形成することは、
第2の基板上に第2の配向層を形成し、前記第2の配向層は、第2の周期的配向状態を含んでいる、ことと、
前記第2の配向層を備える前記第2の基板を、前記第2の配向層と前記第1の配向層との間にギャップを形成するように、前記第1の偏光回折格子層に隣接して組み合わせることと、
前記第2の偏光回折格子層を前記ギャップ内に形成することと、
を含んでいることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の偏光回折格子層は、非反応性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の偏光回折格子層は、重合性液晶層から構成されていることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記基板は、透過基板から構成されていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記基板は、反射基板から構成されていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の偏光回折格子層を形成することは、前記第1の偏光回折格子層を、前記偏光回折格子の使用可能な波長域内の光の半波長リタデーションをもたらすように設定された厚みに形成することを含んでいることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項33】
切換え可能な偏光回折格子であって、
第1の周期的配向状態を含む第1の基板と、
第2の周期的配向状態を含む第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の液晶層であって、その両面間に定められる厚みにわたって、前記第1の周期的配向状態と前記第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる、液晶層と、
を備えていることを特徴とする切換え可能な偏光回折格子。
【請求項34】
前記第2の周期的配向状態は、前記第1の周期的配向状態に対して位相が異なっていることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項35】
前記液晶層は、その厚みにわたって前記捩じれ角だけ前記液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラルドーパントを含むネマチック液晶層から構成されていることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項36】
前記液晶分子は、前記第1の配向層との間の界面および前記第2の配向層との間の界面のそれぞれにおいて、前記第1の配向層の前記第1の配向状態または前記第2の配向層の前記第2の配向状態に従って配向されると共に、前記液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、前記液晶層の前記厚みにわたって前記捩じれ角だけ回転していることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項37】
前記位相角は、約70°から約360°の範囲内にあることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項38】
前記捩じれ角は、約70°から約360°の範囲内にあることを特徴とする請求項33に記載の切換え可能な偏光回折格子。
【請求項39】
切換え可能な偏光回折格子を作製する方法であって、
第1の周期的配向状態を含む第1の基板を形成することと、
第2の周期的配向状態を含む第2の基板を形成することと、
前記第1の基板および前記第2の基板上に液晶層を形成し、前記液晶層は、その両面間に定められる厚みにわたって、前記第1の周期的配向状態と前記第2の周期的配向状態との間の相対的位相角と異なる捩じれ角だけ回転しているそれぞれの相対的配向を有する液晶分子を含んでいる、ことと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項40】
前記第1の基板および前記第2の基板を形成することは、
前記第1の基板上に第1の配向層を形成することと、
前記第1の配向層をパターンニングして、前記第1の配向層に前記第1の周期的配向状態を形成することと、
前記第2の基板上に第2の配向層を形成することと、
前記第2の配向層をパターンニングして、前記第1の周期的配向状態に対して位相を異ならせて前記第2の周期的配向状態を形成することと、
を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記液晶層は、ネマチック液晶層から構成されており、
前記液晶層を形成することは、
前記ネマチック液晶層に、その厚みにわたって前記捩じれ角だけ前記液晶層の分子構造を捩じるように設定された捩じれ性を有するキラル分子をドープすること
を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記液晶層を形成することは、
前記液晶層の前記分子が、前記第1の配向層と前記液晶層との間の界面および前記第2の配向層と前記液晶層との間の界面のそれぞれにおいて、前記第1の配向層の前記第1の配向状態または前記第2の配向層の前記第2の配向状態に従って配向されると共に、前記液晶層が弾性エネルギー歪を含むように、前記液晶層の前記厚みにわたって前記捩じれ角だけ回転するように、前記液晶層を形成すること
を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記位相角は、約70°から約360の範囲内にあることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記捩じれ角は、約70°から約360の範囲内にあることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【公表番号】特表2010−525394(P2010−525394A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504072(P2010−504072)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/004888
【国際公開番号】WO2008/130555
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508290987)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/004888
【国際公開番号】WO2008/130555
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508290987)ノース・キャロライナ・ステイト・ユニヴァーシティ (7)
【Fターム(参考)】
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