説明

低ノイズケーブル

【課題】より低ノイズのケーブルP1とする。
【解決手段】複数の絶縁心線11を撚り合わせ、その外周面に、半導電性テープ13を押え巻きした後、電気遮蔽層14を介在してシース15を形成した低ノイズケーブルP1である。その絶縁心線11の絶縁被覆11bは断面扇状をして、その各扇状絶縁被覆11bの側面11b’は相互に密着又は融着している。このように、各絶縁被覆11bが扇状で、その側面11b’が密着又は融着した構成であると、各絶縁心線が相互に間隙なくソリッド状となって動き難いため、震動が与えられても相互に動くことがなく、各絶縁心線の絶縁被覆間相互の摩擦による静電雑音電圧(ノイズ)は発生しない。半導電性テープ13の硬度を絶縁被覆11bの硬度より高くしたり、絶縁被覆11bの体積抵抗率を10^11〜10^13Ωcmとしたりすれば、よりノイズ発生は抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の絶縁心線を撚り合わせ、その外周面に電気遮蔽層を介在してシースを形成した低ノイズケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
震動を検出する加速度センサ等からその検出信号を導き出したり、震動が生じているところから各種の信号を導き出したりする場合、その導出ケーブルに各種の震動が生じ、その震動によって、信号にノイズが進入して信頼性が低下する。
一方、信号伝達ケーブルは複数の絶縁心線を介して撚り合わせ、その外周面にシースを形成したものである。このケーブルが震動すると、各絶縁心線の絶縁被覆間相互の摩擦による静電雑音電圧が発生し、その静電雑音電圧が絶縁心線の電気導体に入り込んで、ノイズとなる。
このため、そのようなノイズが生じない低ノイズ(耐ノイズ)のものが要求される。
【0003】
その低ノイズケーブルとして、図6に示すように、複数の絶縁心線1を介在2を介して撚り合わせ、その外周面に半導電性テープ3を押え巻きし、さらに、その外周面に電気遮蔽層4を介在してシース5を形成したものがある。
この低ノイズケーブルP2は、介在2の存在により、震動時の各絶縁心線1相互間の動きが規制され、その震動による各絶縁心線1の絶縁被覆間相互の摩擦による静電雑音電圧の発生を抑制する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種の技術が高度化する今日、信号伝達ケーブルにも、より正確に信号伝達し得るものが要求され、上記構成の低ノイズケーブルP2以上の性能(低ノイズ)を求められつつある。
【0005】
この発明は、上記の構成の低ノイズケーブルP2以上の低ノイズケーブルとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は、各絶縁心線間の相互の動きを従来に対してより規制すべく、その絶縁被覆を断面扇状として、その各絶縁心線の扇状絶縁被覆がケーブル中心周りにその各扇状絶縁被覆の側面が接して配置されているものとしたのである。
このような各絶縁心線の構成であると、各絶縁心線が相互に間隙なくソリッド状となって動き難い態様となる。このため、震動が与えられても相互に動くことがなく、各絶縁心線の絶縁被覆間相互の摩擦による静電雑音電圧は発生しない。
【0007】
この発明の構成は、複数の絶縁心線を撚り合わせ、その外周面に電気遮蔽層を介在してシースを形成した低ノイズケーブルにおいて、その絶縁心線の絶縁被覆を断面扇状にして、その各絶縁心線の扇状絶縁被覆がケーブル中心周りにその各扇状絶縁被覆の側面が接して配置されているとともにその外周面が上記シースで被覆されているものとする。
【0008】
この構成において、上記撚り合わされた複数の絶縁心線の外周面にテープを押え巻きし、その外周面に上記電気遮蔽層を介在してシースを形成した構成とすれば、そのテープを押え巻きすることにより、撚り合わされた複数の絶縁心線の外形の円状が確保されると共に、絶縁心線同士が強固に圧接して相互間の摩擦抵抗が大きくなる。このため、絶縁心線同士相互間の滑りが抑制されて各絶縁心線が動き難く、各絶縁心線の絶縁被覆間相互の摩擦による静電雑音電圧の発生がより抑制される。
そのテープには、導電性、半導電性、絶縁性のものをケーブルの使用目的・個所等に応じて適宜に選択する。
【0009】
このテープを押え巻きする構成においては、上記各絶縁心線の絶縁被覆がそのテープを押え巻きすることにより変形して断面扇状となるものとし得る。
この場合及びそうでない場合(絶縁被覆が予め断面扇状の場合)も含めて、上記テープの硬度を絶縁心線の絶縁被覆の硬度より高くしたものとすることができる。
このようにすれば、ケーブルに外部から衝撃が加わった時、硬いテープでその衝撃を受け止めることにより、その衝撃をテープ全域に拡散して単位面積当たりの衝撃を弱め、その弱まった衝撃を柔らかい絶縁被覆で緩衝するため、絶縁心線の導体には、その衝撃が伝わり難く、ノイズ発生は抑えられると考える。
【0010】
なお、テープによらず、撚り合わされた複数の絶縁心線の外周面に樹脂をシースとして、又はシースとは別に押出被覆することも考えられるが、その場合、その押出被覆樹脂は絶縁心線の絶縁被覆より硬いものを使用することとなる。一方、テープの押え巻きは巻回層の各テープの境目で容易に曲がるため、屈曲し易い。このため、押出被覆とテープの硬度を同じとした場合、前者の押出被覆に比べて、後者のテープ押え巻きの方がケーブルとしては可撓性が高いものとなる。可撓性がよいことは、ケーブル長手方向に衝撃を分散して低ノイズ性にも有効である。因みに、その押出被覆樹脂は、テープと同様に、導電性、半導電性、絶縁性のものをケーブルの使用目的・個所等に応じて適宜に選択する。
【0011】
上記の各構成において、上記各絶縁心線の絶縁被覆はその側面でもって相互に密着又は融着されている構成とすると良い。
各絶縁被覆が密着又は融着されておれば、各絶縁被覆相互間の移動も生じにくく、これにより、ノイズ発生は抑えられると考える。また、密着又は融着であれば、絶縁心線接続作業において、テープ押さえ巻きで圧接された絶縁心線同士を個々の心線に容易に分離することができる。その密着又は融着手段としては、押さえ巻きテープによる密着、加熱による融着等の種々の周知の手段を採用することができる。例えば、融着は、撚り合わされた複数の絶縁心線の外周面にテープを押え巻きし、その外周面に上記電気遮蔽層を介在してシースを被覆する際、シース押出被覆の熱で絶縁心線の絶縁被覆材の表面を一部軟化させて、絶縁被覆材同士を融着させる。
また、上記絶縁心線の絶縁被覆の体積抵抗率は、各絶縁被覆の相互間移動による摩擦に基づく静電気の発生を減少させる面から、できるだけ小さいことが望まれ、例えば、10^11〜10^13Ωcmとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に一実施形態を示し、この実施形態は図4に示す仕様に基づくものであって、4本(4C)の絶縁心線11・・を撚り合わせ、その外周面に半導電性テープ13を押え巻きし、さらにその周りに電気遮蔽層14を介在してシース15を形成したものである。
【0013】
その絶縁心線11の導体11aは、特公平2−46656号公報記載の「Fe、PZr、Inを適宜量含有する析出強化銅合金」を採用し、その絶縁被覆11b及びシース15は、塩化ビニール(PVC):100重量%、可塑剤(DOP他):90重量%、安定剤(Pb系):4重量%、充填材(重質炭酸カルシウム):50重量%、その他(着色剤、滑剤):少々の配合組成とした。
また、半導電性テープ13は、ナイロンクロス基布の両面に半導電性ブチルゴムを塗布・加硫したものであって、このテープ13の体積抵抗率は5×10^4Ωcm(90℃)であった。
さらに、上記絶縁心線11の絶縁被覆11bの硬度はショアD31、半導電性テープ13の硬度はショアD54として、半導電性テープ13の硬度を絶縁心線11の絶縁被覆11bの硬度より高くした。
【0014】
この硬度の絶縁被覆11bからなる絶縁心線11を図3に示すように撚り合わせ、その外周面に半導電性テープ13を横巻きによる押え巻きすることによって、図1に示すように、その各絶縁心線11の絶縁被覆11bを断面円状から断面扇状にして、その各扇状絶縁被覆11bがケーブル中心周りにその各扇状絶縁被覆11bの側面11b’のほぼ全域が接して配置されているものとした。
なお、図1においては、各絶縁被覆11b相互間および絶縁被覆11bと半導電性テープ13の間に空隙があるように記載しているが、これは、各絶縁被覆11bと半導電性テープ13の境界を明確にするためであって、実際には、各絶縁被覆11b相互間は融着し、絶縁被覆11bと半導電性テープ13の間は圧接状態である。
【0015】
この半導電性テープ13が押え巻きされて、各絶縁心線11の絶縁被覆11bが断面扇状となって撚り合わされたものの外周面に、電気遮蔽層14を介在してシース15を押出し被覆して形成し、この実施形態の低ノイズケーブルP1を得た。
その半導電性テープ13の押え巻き外周面にシース15を形成(被覆)する際、シース押出被覆の熱(シース押出温度を例えば160℃)で絶縁心線11の絶縁被覆11bの表面が一部軟化(PVC軟化温度:95℃)して、絶縁被覆11b、11b同士が融着した。
【0016】
この低ノイズケーブルP1の4m長を、図5(b)に示すように、オシロスコープCを組み込んだ検出回路に接続し、同図(a)に示すように、その低ノイズケーブルP1をその中程で折り返してその両端を手で掴み、鉄製テーブルTに10回、各回の速度が同じになるように叩きつけ、その各叩きつけ時のオシロスコープCに表示されたノイズ電圧のピークの絶対値を測定したところ、その10回の測定値の平均は「3mV」であった。
比較例として、図7に示す仕様の図6に示す従来の構成の低ノイズケーブルP2において、同様の試験を行ったところ、平均は「68mV」であった。なお、比較例の絶縁被覆1bはETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、半導電性テープ3はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とした。
【0017】
このことから、この実施形態のケーブルP1は、従来構成のケーブルP2に比べて、衝撃に対してノイズの生じにくい低ノイズのものであることが理解できる。
【0018】
なお、支障がない限りにおいて、各絶縁心線11の間の空隙に従来の介在2を適宜に介設することができる。
また、実施形態の4心ケーブルP1に限らず、2心、3心、5心、6心・・・の各ケーブルにおいても、この発明を採用することによって、低ノイズなものとすることができる。
さらに、絶縁心線11の絶縁被覆11b、テープ13、シース15等の材料も上記のものに限らず、例えば、テープ13を絶縁性のものなどとケーブルP1の使用目的・個所等において適宜に変更できることは言うまでもない。
【0019】
この発明に係る低ノイズケーブルP1は、衝撃によるノイズ発生が嫌われる種々のセンサ等からの信号ケーブルとして使用することができる。例えば、加速度センサからの信号ケーブルとして使用でき、その加速度センサは、圧電素子、動電素子、ひずみゲージ、半導体素子等を使用したものが一般的であり、自動車や電車のような乗り物をはじめ、パソコンやオーディオ機器などの電気製品やそこに使われる電子部品、産業機器、各種プラント、地盤と建築物、果ては人間自身の動きの測定用などに使用できる。
例えば、(1)鉄鋼、製紙、石油化学、発電所、セメント工場などの回転機械の振動監視とベアリングの劣化診断等の各種プラントの異常振動監視・設備診断、(2)自動車、航空機、船舶、ロケット、衛星からモータ、HDD、ファン、AV機器、携帯電話等の製品の振動特性研究と信頼性試験および出荷検査、(3)旋盤、研削盤、シリコンウエハ洗浄機のバランス修正等のアンバランス振動測定、(4)ビル、ダム、橋梁、鉄塔等の大型構造物の耐震性研究、(5)クリーンルーム、インテリジェントビル等の空調機の運転状態監視、(6)建設現場、道路交通、工場、地盤等の振動公害の調査、(7)プラントの保全、 省エネ対策等の配管やトラップのリーク検出、(8)輸送環境の調査、包装資材の合理化等の製品輸送時の振動・衝撃計測、(9)鉄道、自動車、航空機、農機、建機等の車輛の乗り心地研究、(10)スキー板、ラケット、ヘルメットの振動モード解析等のスポーツ用品の開発、(11)骨粗鬆症の診断、人体の動作モニター等の医療分野、(12)水道の漏水音検知、災害時の人命救助等の聴音器としての利用などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態の断面図
【図2】同実施形態の絶縁心線の絶縁被覆の寸法説明図
【図3】同実施形態の製作説明図
【図4】同実施形態の仕様説明図
【図5】同実施形態の性能試験説明図
【図6】従来例の断面図
【図7】同従来例の仕様説明図
【符号の説明】
【0021】
P1、P2 低ノイズケーブル
1、11 絶縁心線
11a 絶縁心線の導体
11b 絶縁心線の絶縁被覆
11b’ 絶縁被覆側面
2 介在
3、13 半導電性テープ
4、14 電気遮蔽層
5、15 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁心線(11)を撚り合わせ、その外周面に電気遮蔽層(14)を介在してシース(15)を形成した低ノイズケーブル(P1)において、
上記絶縁心線(11)の絶縁被覆(11b)を断面扇状にして、その各絶縁心線(11)の扇状絶縁被覆(11b)がケーブル中心周りにその各扇状絶縁被覆(11b)の側面(11b’)が接して配置されているとともにその外周面が上記シース(15)で被覆されていることを特徴とする低ノイズケーブル。
【請求項2】
上記撚り合わされた複数の絶縁心線(11)の外周面にテープ(13)を押え巻きし、その外周面に上記電気遮蔽層(14)を介在してシース(15)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の低ノイズケーブル。
【請求項3】
上記各絶縁心線(11)の絶縁被覆(11b)が上記テープ(13)を押え巻きすることにより変形して断面扇状となってケーブル中心周りにその各扇状絶縁被覆(11b)の側面(11b’)が接して配置されることを特徴とする請求項2に記載の低ノイズケーブル。
【請求項4】
上記テープ(13)の硬度を上記絶縁心線(11)の絶縁被覆(11b)の硬度より高くしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の低ノイズケーブル。
【請求項5】
上記各絶縁心線(11)の絶縁被覆(11b)はその側面(11b’)でもって相互に密着又は融着されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の低ノイズケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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