説明

低レベル放射性廃棄物の減容処理方法

【課題】従来の溶融処理方法に比べて、さらなる減容化が可能で、しかも減容処理も容易な低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法は、ガス化溶融炉10に低レベル放射性廃棄物Mを装入して塩素分を含む還元雰囲気下で低レベル放射性廃棄物Mを800℃以上2000℃未満で加熱することにより、ガス化した放射性塩化物を生成する工程と、ガス化溶融炉10から排出された放射性塩化物を含む可燃性ガスを冷却する工程と、前記可燃性ガスを除塵装置12に導入し、放射性塩化物を含む放射性飛灰Rを除塵装置12で捕集する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低レベル放射性廃棄物の減容処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日の午後、太平洋三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の海溝型地震(東北地方太平洋沖地震)が発生した。この巨大地震とその後に襲った大津波がきっかけとなって、福島県の太平洋岸に建設されている原子力発電所において多数の設備が損傷し、大量の放射性物質が大気中に放出された。これにより、放射能に汚染された瓦礫等の低レベル放射性廃棄物が大量に発生する事態に至っている。
【0003】
環境省が公表した「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」によれば、放射性物質に汚染されたおそれのある災害廃棄物であっても、安全に焼却処理を行うことが可能であり、焼却に伴って発生する主灰及び飛灰について安全な埋立処分が可能であるとされている。具体的には、放射性セシウム濃度(セシウム134とセシウム137の合計値)が8,000Bq/kg以下である主灰は一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋立処分が可能であること、放射性セシウム濃度が8,000Bq/kgを超え100,000Bq/kg以下の焼却灰は、1)隔離層の設置による埋立て、2)長期間の耐久性のある容器による埋立て、3)屋根付き処分場での埋立てのいずれかの方法により一般廃棄物最終処分場で埋立処分を行うこととされている。
【0004】
しかし、低レベル放射性廃棄物を焼却炉により焼却処理する方法では十分な減容効果が得られず、大量の放射性焼却灰を長期間に亘って管理しなければならない。そこで、特許文献1では、焼却処理後の放射性廃棄物(焼却灰)をマイクロ波を利用してレトルト内で溶融し、溶融した焼却灰をガラス形成材で覆って放射能を封じ込める技術が開示されている。
また、特許文献2には、不燃性放射性雑固体廃棄物と可燃性及び難燃性の放射性雑固体廃棄物とを分別した後、それぞれ溶融と酸化・分解に適するサイズと形態に前処理し、不燃性放射性雑固体廃棄物を一方の領域でプラズマ加熱により溶融し、可燃性及び難燃性の放射性雑固体廃棄物を他方の領域に溢流された溶融物上で酸化・分解し、次いで酸化・分解残渣と溶融物を一体にして排出し冷却固化して廃棄体を製作する技術が開示されている。
さらにまた、特許文献3には、有機物を含む放射性不燃性固体廃棄物を予加熱炉に装入し、付着した水分や有機物を金属の酸化抑制条件下で熱分解処理して除去したうえで、溶融炉で溶融処理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−148898号公報
【特許文献2】特開平9−90095号公報
【特許文献3】特開2005−164320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の溶融処理方法によれば、放射性廃棄物を溶融して固化体とするので、放射性焼却灰に比べて減容化を図ることができるが、放射性焼却灰に代わって放射性物質である固化体が大量に発生するため大幅な減容化は望めない。また、特許文献1〜3に記載された溶融処理方法の場合、溶融処理する前に、焼却処理や前処理あるいは予加熱処理などの前段処理が必要であり、固化体とするまでに手間が掛かるという問題もある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、従来の溶融処理方法に比べて、さらなる減容化が可能で、しかも減容処理も容易な低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法は、ガス化溶融炉に低レベル放射性廃棄物を装入して塩素分を含む還元雰囲気下で前記低レベル放射性廃棄物を800℃以上2000℃未満で加熱することにより、ガス化した放射性塩化物を生成する工程と、前記ガス化溶融炉から排出された前記放射性塩化物を含む可燃性ガスを冷却する工程と、前記可燃性ガスを除塵装置Aに導入し、前記放射性塩化物を含む放射性飛灰を該除塵装置Aで捕集する工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、第2の発明に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法は、ガス化溶融炉に低レベル放射性廃棄物を装入して塩素分を含む還元雰囲気下で前記低レベル放射性廃棄物を800℃以上2000℃未満で加熱することにより、ガス化した放射性塩化物を生成する工程と、前記ガス化溶融炉から排出された前記放射性塩化物を含む可燃性ガスを燃焼室で燃焼させる工程と、前記燃焼室から排出された前記放射性塩化物を含む排ガスを冷却する工程と、前記排ガスを除塵装置Bに導入し、前記放射性塩化物を含む放射性飛灰を該除塵装置Bで捕集する工程とを備えることを特徴としている。
【0010】
ただし、「低レベル放射性廃棄物」は、放射性セシウム濃度(セシウム134とセシウム137の合計値)が10000Bq/kg以下の放射性瓦礫等の廃棄物のことであり、放射能に汚染された土壌も含むものとする。
【0011】
低レベル放射性廃棄物を溶融しただけでは、溶融したスラグに放射性物質が残留するため、十分な減容化を図ることができない。そこで、本発明者等は、スラグに比べて容積の小さな飛灰を管理対象とする発想を得、放射性物質をスラグから飛灰に移行させることで大幅な減容化を図ることとした。具体的には、放射性物質と低レベル放射性廃棄物に含まれる塩素分とを反応させ、生成した放射性塩化物をガス化させることにより、溶融したスラグから放射性物質を分離する。
【0012】
低レベル放射性廃棄物に付着している放射性物質は反応性が高いため、塩素分を含む還元雰囲気下で低レベル放射性廃棄物を800℃以上に加熱することにより、塩素分と反応して放射性塩化物となる。塩化物は沸点が低いため、生成した放射性塩化物はガス化し、溶融スラグから分離される。ガス化した放射性塩化物は、冷却して凝集させ、放射性飛灰として除塵装置A、Bで捕集する。飛灰は主灰に比べて減容率が高いため、捕集した放射性飛灰をセメント固化することで、従来に比べて管理が容易になる。
なお、ガス化溶融炉における加熱温度が800℃未満の場合、放射性飛灰への移行が不十分となる一方、加熱温度を2000℃以上とすることは設備的に難しい。また、塩素分は、低レベル放射性廃棄物に含まれる塩素を活用する。
【0013】
また、第1、第2の発明に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法では、捕集された前記放射性飛灰を洗浄水で洗浄し、前記放射性塩化物が溶解している前記洗浄水を水処理することにより放射性物質を回収してもよい。
放射性塩化物は高い水溶性を有しているので、除塵装置A、Bにより捕集された放射性飛灰を洗浄水で洗浄することで、放射性飛灰に含まれる放射性塩化物が洗浄水に溶解する。この洗浄水を水処理することにより、放射性物質と可燃性ダスト(チャー)を分離回収することができる。回収した可燃性ダストは、燃料として再利用することができる。
【0014】
また、第2の発明に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法では、前記除塵装置Bを、直列配置された第1の濾過式集塵機と第2の濾過式集塵機で構成し、前記第1の濾過式集塵機で前記放射性塩化物からなる放射性飛灰を捕集した後、前記放射性塩化物が除去された前記排ガスに中和剤を添加し、前記第2の濾過式集塵機で非放射性飛灰を捕集するようにしてもよい。
【0015】
また、第1、第2の発明に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法では、放射能を有する粉塵の飛散を防止するため、前記低レベル放射性廃棄物の貯留エリア及び/又は前記放射性飛灰の貯留エリアを建屋で覆って該建屋内を負圧とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、塩素分を含む還元雰囲気下で低レベル放射性廃棄物を800℃以上2000℃未満で加熱することにより、低レベル放射性廃棄物に付着している放射性物質が、ガス化した塩化物に移行する。ガス化した放射性塩化物は、減容率の高い放射性飛灰として捕集する。これにより、従来の溶融処理方法に比べて、さらなる減容化が図られ、放射性物質の管理が容易になると共に、除染されたスラグを有効利用することができる。
また、本発明では、ガス化溶融炉を還元炉として使用するので、従来の溶融処理における前段処理が不要となり、容易に減容処理を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を説明するためのプロセスフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を説明するためのプロセスフロー図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を説明するためのプロセスフロー図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を説明するためのプロセスフロー図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を説明するためのプロセスフロー図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法を説明するためのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。なお、ある実施の形態を構成する要素が、それより前に示した実施の形態において既に説明されている場合、既出の要素と同じ符号を当該要素に付し、当該要素の説明を省略する。
【0019】
[第1の実施の形態]
図1を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法について説明する。還元炉として使用するガス化溶融炉10はシャフト式のガス化溶融炉とする。シャフト炉を使用することで、様々な形状の低レベル放射性廃棄物Mの処理が可能となるだけでなく、シャフト炉の底部に還元剤の層が形成されるので、より強力な還元作用を得ることができる。
【0020】
ガス化溶融炉10では、低レベル放射性廃棄物Mと共に還元剤としてのコークス及び石灰石が炉上部から投入され、乾燥、熱分解、燃焼、及び溶融の過程を経て生成したスラグSが炉底から排出される。低レベル放射性廃棄物Mと共に装入されたコークスは、炉下部に設けられた羽口から吹き込まれた酸素富化空気により高温燃焼し、炉下部に高温火格子を形成することにより、還元雰囲気の形成と低レベル放射性廃棄物Mの安定溶融に寄与している。酸素富化空気を利用することで高い温度を得ることができ、放射性塩化物の揮発率を高めることができる。
なお、コークスの投入量は、低レベル放射性廃棄物Mに対し1〜30質量%、より好ましくは4〜10質量%とし、低レベル放射性廃棄物Mの性状により調整する。
また、酸素富化空気の酸素濃度は28〜40%であることが好ましい。
【0021】
ガス化溶融炉10に装入した低レベル放射性廃棄物Mは、塩素分を含む還元雰囲気下で800℃以上2000℃未満で加熱される。これにより、低レベル放射性廃棄物Mに付着している放射性セシウム、放射性ヨウ素、放射性キセノンなどの放射性物質は、低レベル放射性廃棄物Mに含まれる塩素と化学反応をおこして放射性塩化物となる。放射性塩化物は沸点が低いためガス化し、溶融したスラグSから分離される。スラグSは放射能を帯びていない(管理レベル未満)ため有効利用が可能である。
【0022】
ガス化した放射性塩化物は、可燃性ダスト(チャー)及び熱分解ガス(CO、H、CH、CO等)と共に可燃性ガス(炉内ガス)としてガス化溶融炉10上部に設けられた配管11aから排出される。配管11aの途中には噴霧装置11が設置されており、ガス化溶融炉10から排出された放射性塩化物を含む可燃性ガスは、噴霧装置11によって800℃以下に冷却される。可燃性ガスを800℃以下に冷却することによって、ガス化した放射性塩化物が凝集する。
【0023】
噴霧装置11によって冷却された可燃性ガスは、サイクロン等の除塵装置A12に導入される。凝集した放射性塩化物は、除塵装置A12において、可燃性ダストと共に放射性飛灰Rとして捕集され、残部である非放射性可燃性ガスGは、除塵装置A12の後段に設置されている燃焼室(図示省略)に送給される。
除塵装置A12によって捕集された放射性飛灰Rはセメント固化し安定的に管理することができる。
【0024】
[第2の実施の形態]
図2を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法について説明する。第2の実施の形態では、除塵装置A12によって捕集された放射性飛灰Rを放射性物質Cと非放射性可燃性ダストDに分離する処理が加わる点が第1の実施の形態と異なる。
【0025】
除塵装置A12によって捕集された放射性飛灰Rは洗浄装置16に導入される。洗浄装置16では、放射性飛灰Rが洗浄水W1により洗浄される。放射性塩化物は高い水溶性を有するため、放射性飛灰Rを洗浄水W1で洗浄することにより、放射性飛灰Rに含まれる放射性塩化物は洗浄水W1に溶解し、非放射性可燃性ダストDと分離される。非放射性可燃性ダストDは燃料として利用することが可能であり、ガス化溶融炉10に戻して燃料として利用した場合、低レベル放射性廃棄物Mが濃縮されることもない。なお、放射性飛灰Rに対する洗浄水W1の量は、質量比で10〜50倍であることが好ましい。また、洗浄時のpHは5〜6であることが好ましい。
【0026】
放射性飛灰Rの洗浄に使用された洗浄水W1は水処理装置17に送られる。水処理装置17では、放射性塩化物が溶解している洗浄水W1を水処理して放射性物質Cとして回収する。水処理の方法としては、洗浄水W1を中和処理して複合塩とし、洗浄水W1への溶解度を低下させて凝集する方法や、キレートによって放射性物質Cを捕捉したうえで凝集沈殿させる方法、蒸発処理などを用いることができる。あるいは、活性炭やゼオライト等の吸着材を利用した回収も可能である。なお、中和処理後のpHは6〜8であることが好ましい。
水処理装置17によって回収された放射性物質Cはセメント固化し安定的に管理することができる。
また、水処理装置17によって除染された浄化水W2は、洗浄装置16において洗浄水W1として再利用することができる。
【0027】
[第3の実施の形態]
図3を用いて、本発明の第3の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法について説明する。第3の実施の形態では、第1及び第2の実施の形態と異なり、ガス化溶融炉10から排出された可燃性ガスは、噴霧装置11及び除塵装置A12を経由せず、燃焼室14に直接導入される。燃焼室14に導入された可燃性ガスの内、可燃性ダスト及び熱分解ガスが燃焼室14内において完全燃焼し、放射性塩化物を含む排ガスは燃焼室14から排出される。
【0028】
燃焼室14から排出された放射性塩化物を含む排ガスは、ボイラ15において熱回収されることにより冷却された後、濾過式集塵機等の除塵装置B13に導入される。排ガスに含まれる放射性塩化物は、除塵装置B13において放射性飛灰Rとして捕集され、残部である非放射性排ガスEは、除塵装置B13の後段に設置されている煙突(図示省略)から大気中に放出される。ボイラ15による熱回収によって発生した蒸気は、蒸気タービン発電機その他の熱源として利用される。
なお、ボイラ15の内部に付着した放射性飛灰Rは、槌打装置やスートブロワなどにより除去して回収する。
【0029】
[第4の実施の形態]
図4を用いて、本発明の第4の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法について説明する。第4の実施の形態では、第3の実施の形態における除塵装置B13によって捕集された放射性飛灰Rを放射性物質Cと非放射性飛灰Hに分離するため、除塵装置B13の後段に洗浄装置16と水処理装置17が設置されている。
洗浄装置16に導入された放射性飛灰Rは、洗浄装置16において洗浄水W1で洗浄され、非放射性飛灰Hが回収される。一方、洗浄水W1に溶解した放射性物質Cは、水処理装置17において回収される。
【0030】
[第5の実施の形態]
図5を用いて、本発明の第5の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法について説明する。第5の実施の形態では、第3の実施の形態における除塵装置B13が、直列配置された第1の濾過式集塵機18と第2の濾過式集塵機19から構成されている。
【0031】
燃焼室14から排出された放射性塩化物を含む排ガスは、ボイラ15において熱回収されることにより冷却された後、第1の濾過式集塵機18に導入される。その際、排ガス温度を80℃以上250℃以下とすることにより、濾過式集塵機18、19内における結露や濾布の焼損を抑制することができる。
第1の濾過式集塵機18において、放射性塩化物からなる放射性飛灰Tが排ガスから捕集され、放射性塩化物が除去された排ガスは、消石灰や苛性ソーダ等の中和剤Nが添加された後、第2の濾過式集塵機19に導入される。第2の濾過式集塵機19において、塩化カルシウム等が非放射性飛灰Hとして捕集され、残部である非放射性排ガスEは煙突から大気中に放出される。なお、第1の濾過式集塵機18に活性炭を吹き込むことで、放射性飛灰Tの捕集率を向上させることができる。
【0032】
[第6の実施の形態]
図6を用いて、本発明の第6の実施の形態に係る低レベル放射性廃棄物の減容処理方法について説明する。第6の実施の形態では、第3の実施の形態における低レベル放射性廃棄物Mの貯留エリアを建屋20で覆って気密にし、建屋20外から吸引換気することで建屋20内を負圧としている。
【0033】
吸引換気した気体は、燃焼空気としてガス化溶融炉10或いは燃焼室14に供給される。これにより、吸引換気した気体中の放射性粉塵を、廃棄物として処理された放射性飛灰R、Tと併せて回収することができる。また、吸引換気した気体の一部を、活性炭やゼオライト等の多孔質な吸着物質からなる吸着層21に送給することもできる。吸着層21において、放射能を有する粉塵が捕捉され、除染された気体が大気A中に放出される。
なお、使用した吸着物質は、セメント固化するか、あるいはガス化溶融炉10に投入することで安全に管理することができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、第6の実施の形態では、第3の実施の形態を例に採り、放射性粉塵の飛散防止技術について説明したが、他の実施の形態にも適用できることは言うまでもない。また、低レベル放射性廃棄物の貯留エリアのみでなく、放射性飛灰の貯留エリアを建屋で覆って該建屋内を負圧としても良い。
【符号の説明】
【0035】
10:ガス化溶融炉、11a:配管、11:噴霧装置、12:除塵装置A、13:除塵装置B、14:燃焼室、15:ボイラ、16:洗浄装置、17:水処理装置、18:第1の濾過式集塵機、19:第2の濾過式集塵機、20:建屋、21:吸着層、A:大気、C:放射性物質、D:非放射性可燃性ダスト、E:非放射性排ガス、G:非放射性可燃性ガス、H:非放射性飛灰、M:低レベル放射性廃棄物、N:中和剤、R、T:放射性飛灰、S:スラグ、W1:洗浄水、W2:浄化水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化溶融炉に低レベル放射性廃棄物を装入して塩素分を含む還元雰囲気下で前記低レベル放射性廃棄物を800℃以上2000℃未満で加熱することにより、ガス化した放射性塩化物を生成する工程と、前記ガス化溶融炉から排出された前記放射性塩化物を含む可燃性ガスを冷却する工程と、前記可燃性ガスを除塵装置Aに導入し、前記放射性塩化物を含む放射性飛灰を該除塵装置Aで捕集する工程とを備えることを特徴とする低レベル放射性廃棄物の減容処理方法。
【請求項2】
ガス化溶融炉に低レベル放射性廃棄物を装入して塩素分を含む還元雰囲気下で前記低レベル放射性廃棄物を800℃以上2000℃未満で加熱することにより、ガス化した放射性塩化物を生成する工程と、前記ガス化溶融炉から排出された前記放射性塩化物を含む可燃性ガスを燃焼室で燃焼させる工程と、前記燃焼室から排出された前記放射性塩化物を含む排ガスを冷却する工程と、前記排ガスを除塵装置Bに導入し、前記放射性塩化物を含む放射性飛灰を該除塵装置Bで捕集する工程とを備えることを特徴とする低レベル放射性廃棄物の減容処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の低レベル放射性廃棄物の減容処理方法において、捕集された前記放射性飛灰を洗浄水で洗浄し、前記放射性塩化物が溶解している前記洗浄水を水処理することにより放射性物質を回収することを特徴とする低レベル放射性廃棄物の減容処理方法。
【請求項4】
請求項2記載の低レベル放射性廃棄物の減容処理方法において、直列配置された第1の濾過式集塵機と第2の濾過式集塵機で前記除塵装置Bを構成し、前記第1の濾過式集塵機で前記放射性塩化物からなる放射性飛灰を捕集した後、前記放射性塩化物が除去された前記排ガスに中和剤を添加し、前記第2の濾過式集塵機で非放射性飛灰を捕集することを特徴とする低レベル放射性廃棄物の減容処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の低レベル放射性廃棄物の減容処理方法において、前記低レベル放射性廃棄物の貯留エリアを建屋で覆って該建屋内を負圧とすることを特徴とする低レベル放射性廃棄物の減容処理方法。
【請求項6】
請求項1、2、4のいずれか1項に記載の低レベル放射性廃棄物の減容処理方法において、前記放射性飛灰の貯留エリアを建屋で覆って該建屋内を負圧とすることを特徴とする低レベル放射性廃棄物の減容処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88323(P2013−88323A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230029(P2011−230029)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(306022513)新日鉄住金エンジニアリング株式会社 (897)