説明

低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒

【課題】低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒を提供する。
【解決手段】高表面積の高融点の酸化物の担体材料上の白金からなる白金成分と、少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵成分を1種又は数種の高融点の酸化物の担体材料上に含有する少なくとも1種の窒素酸化物材料とを有する、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒において、それぞれ前記白金の半分は強い塩基性の担体材料上に設けられ、かつ他の半分は低い塩基性の担体材料上に設けられていて、前記窒素酸化物吸蔵触媒はさらに、酸化セリウム又はセリウム−ジルコニウム混合酸化物又は希土類でドープされた酸化セリウム又はこれらの組合せを、前記触媒活性成分の全体量に対して少なくとも5質量%含有することを特徴とする、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒により解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒の製造方法及び低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物吸蔵触媒は、主にリーン運転される内燃機関の排気ガス中に含まれる窒素酸化物の除去のために使用される。この作動様式はSAEの刊行物SAE 950809に詳細に記載されている。前記窒素酸化物吸蔵触媒の浄化作用は、エンジンのリーン運転期間に窒素酸化物を吸蔵触媒の吸蔵材料により主に硝酸塩の形で吸蔵し、エンジンのそれに引き続くリッチ運転期間に前記の予め生成された硝酸塩を分解し、再び放出された窒素酸化物を吸蔵触媒で還元性排気ガス成分と反応させて、窒素と二酸化炭素と水とにすることに基づいている。主にリーン運転される内燃機関には、シリンダ中で成層混合気形成する直噴型ガソリンエンジンの他に、特にディーゼルエンジンも属する。
【0003】
窒素酸化物吸蔵触媒は、たいていはセラミック又は金属からなる不活性なキャリアボディに被覆の形に設けられている触媒材料からなる。
【0004】
この窒素酸化物吸蔵触媒の触媒材料は、少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵材料及び1種の触媒活性成分を含有する。前記窒素酸化物吸蔵材料は、他方で、担体材料上に高分散する形で堆積している本来の窒素酸化物吸蔵成分からなる。
【0005】
吸蔵成分として、主に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の塩基性酸化物が使用され、前記塩基性酸化物が二酸化窒素と反応して相応する硝酸塩が生成される。これらの材料は空気中で大部分が炭酸塩又は水酸化物の形で存在することは公知である。これらの化合物は、同様に窒素酸化物の吸蔵のために適している。従って、本発明の範囲内で、塩基性の吸蔵酸化物について言及する場合、相応する炭酸塩及び水酸化物も含まれる。
【0006】
前記吸蔵成分のための適当な担体材料は、10m2/gを越える高い表面積を有する熱安定性の金属酸化物であり、これは前記吸蔵成分の高分散性の堆積を可能にする。例えば酸化セリウム及びセリウム含有混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、マグネシウム−アルミニウム混合酸化物、希土類及びいくつかの三元酸化物が適している。
【0007】
前記窒素酸化物吸蔵触媒の触媒材料中に含まれる触媒活性成分は、リーン排気ガス中に含まれる有害ガスの一酸化炭素及び炭化水素を二酸化炭素と水に変換するという課題を有する。さらに前記触媒活性成分は、排気ガス中に含まれる一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するために利用され、それにより前記二酸化窒素は塩基性吸蔵材料と反応して硝酸塩になることができる。このために、大抵は白金族の貴金属、特に白金が使用され、この白金は前記吸蔵成分とは別に別個の担体材料に堆積させる。この白金族金属用の担体材料として、窒素酸化物吸蔵触媒中で頻繁に高表面積の酸化物が使用され、前記酸化物は明らかな塩基性度を有することができる。
【0008】
例えば、出願人のEP 1 317 953 A1は、窒素酸化物吸蔵成分の他に酸化活性成分、例えば白金を担体材料上に含有する窒素酸化物吸蔵触媒を記載している。前記明細書に記載された窒素酸化物吸蔵触媒の、温度ウィンドウの幅、吸蔵効率及び劣化安定性に関する優れた特性は、主に白金用に使用された均一なMg/Al混合酸化物からなる担体材料に起因し、前記混合酸化物は、Mg/Al混合酸化物の全質量に対して1〜40質量%の濃度で酸化マグネシウムを含有し、かつ更なる有利な実施態様の場合に、さらに酸化セリウム又は酸化プラセオジムでドープされていてもよい。出願人のWO 2005/092481は、前記EP 1 317 953 A1に記載されたものとは窒素酸化物吸蔵材料の改善により異なる他の窒素酸化物吸蔵触媒を記載している。
【0009】
EP 1 016 448 B1はリーン排気ガスの浄化のための触媒を記載していて、前記触媒はアルカリ土類金属酸化物と酸化アルミニウムとからなる複合材料担体酸化物と、その上に設けられた白金構造層とを有し、その際、前記白金クラスターはアルカリ土類金属酸化物からなる基材中に均質に分散されている。
【0010】
EP 1 321 186 B1は、触媒活性貴金属、例えば白金が、酸化物の担体材料上に又はNOx吸着剤上に直接設けられていてもよい窒素酸化物吸蔵触媒を記載している。
【0011】
このような窒素酸化物吸蔵触媒をディーゼル車中の排気ガス後処理のために使用する場合、いわゆる低硫黄ディーゼル燃料でさえ、最大で50ppmの、ガソリンのほぼ5倍の残留硫黄を有することに注意しなければならない。前記残留硫黄は大抵は有機硫黄化合物の形で存在し、エンジンの燃焼室中で主に二酸化硫黄SO2に変換され、この二酸化硫黄は次いで排気ガスと共に窒素酸化物吸蔵触媒に達する。窒素酸化物についての吸蔵メカニズムと類似して、SO2は触媒活性成分により酸化されてSO3になり、次いで相応する硫酸塩を生成しながら窒素酸化物吸蔵材料中に吸蔵される。吸蔵材料中への窒素酸化物及び硫黄酸化物の吸蔵量が増すと共に、前記材料の吸蔵能力は低下する。窒素酸化物の吸蔵により生成された硝酸塩は、前記排気ガスを短期間リッチにすることより、窒素酸化物NOxに分解することができ、還元剤として一酸化炭素、水素及び炭化水素を使用することで水及び二酸化炭素の生成下で窒素に還元される。前記硫黄酸化物の吸蔵により生成された硫酸塩は、相応する硝酸塩よりも熱安定性であるため、硫黄酸化物のこの吸蔵により通常の運転条件で前記窒素酸化物吸蔵触媒の被毒が生じ、この被毒は還元性排気ガス雰囲気でも一般に高温、つまり600℃を上回る温度で初めて可逆である。これは、例えばEP 1 304 156 A1に記載されているようないわゆる「硫黄許容性」窒素酸化物吸蔵触媒についても当てはまる。このような触媒の脱硫のために一般に600℃より高い排気ガス温度を生成させ、交互に還元性の及び軽度な酸化性の排気ガス条件が調節される。このような脱硫工程は数分を必要とし、かつ頻繁に前記エンジンのフルロードに近い運転で可能であるだけである。
【0012】
US 2005/0164879 A1は、硫黄酸化物を吸収する被覆を、窒素酸化物を吸収する被覆及び/又は三元触媒被覆の前方又はその上に有する多層触媒を記載している。浄化されるべき前記排気ガスは、窒素酸化物を吸蔵する被覆又は三元触媒被覆と接触する前に、まず硫黄酸化物を吸収する層を通過しなければならない。この場合、前記硫黄酸化物は前記排気ガスから選択的かつ可逆的に、硫黄酸化物を吸収する被覆により収容され、後方に配置された窒素酸化物吸蔵材料の硫黄被毒が抑制又は軽減される。
【0013】
排気ガス浄化装置を窒素酸化物吸蔵触媒の他にエンジンに近いディーゼル酸化触媒及びディーゼル粒子フィルタを有するディーゼル車の場合には、エンジン近傍で前記ディーゼル粒子フィルタを前記ディーゼル酸化触媒の直後に配置することが有利であるため、前記窒素酸化物吸蔵触媒を前記ディーゼル粒子フィルタの下流側で前記車両のアンダーボディ領域に収納しなければならない。それにより、例えばディーゼル粒子フィルタ再生の間にすす発火温度の達成を容易にすることができる。ディーゼル車の場合の前記窒素酸化物吸蔵触媒のNOx再生のためのリッチ運転は一般に燃料の後噴射により行われるため、このような装置は、NOx再生期間の開始時に未燃焼の燃料の酸化により生じることがある窒素酸化物触媒の発熱が回避されるという利点を有する。もちろん、このような装置中では、従来の窒素酸化物吸蔵触媒の脱硫のために必要となる600℃よりも高い温度を生じさせることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP 1 317 953 A1
【特許文献2】WO 2005/092481
【特許文献3】EP 1 016 448 B1
【特許文献4】EP 1 321 186 B1
【特許文献5】EP 1 304 156 A1
【特許文献6】US 2005/0164879 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は、1種の白金成分及び少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵材料を含有し、前記白金成分は高表面積の高融点の酸化物の担体材料A上の白金からなりかつ前記窒素酸化物吸蔵材料は1種以上の高融点の酸化物担体材料上の少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵成分を有する窒素酸化物吸蔵触媒の脱硫温度を低下させることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、前記の先行技術による窒素酸化物吸蔵触媒の配合から出発して、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒を製造する方法により解決される。前記方法は、使用される白金量の少なくとも三分の一を高融点の、高表面積の酸化物の担体材料Bに設け、その際、前記担体材料Bは前記担体材料Aよりも塩基性が低いことを特徴とする。それにより、白金の化学的環境(chemische Umgebung)の塩基性度は全体として低下する。
【0017】
前記方法の有利な実施態様の場合に、白金の使用される量の半分を、低い塩基性の担体材料Bに設ける。
【0018】
この対策により窒素酸化物吸蔵材料を変えなくても前記白金の化学的環境の塩基性度の低下により改善された脱硫挙動が生じることは、従来の窒素酸化物吸蔵触媒の脱硫温度を低下させるための出願人の集中的な最適化作業の意外な結果である。学問的理由付けの教示に基づくことを要求せずに、前記の観察された効果は次に記載の作用メカニズムに基づくと予想される:
エンジンの燃焼室中で生成される二酸化硫黄SO2が前記窒素酸化物吸蔵触媒の表面に出会う場合に、この二酸化硫黄はリーン雰囲気中ではまず白金によりSO3に酸化される。白金反応中心で反応を起こさせるために、前記の酸性の有害ガスを塩基性成分に吸着させ、Pt反応中心にまで送らなければならない。このSO2の吸着は、窒素酸化物吸蔵材料で直接行うか又は白金の塩基性の担体酸化物で行うことができる。いずれの場合でも、前記の塩基性の担体材料はSO2分子を白金の反応中心にまで輸送する場合に固定する役割を担っている。その箇所でSO2からSO3への酸化が行われる。このSO3は、また、白金での前記吸着箇所から完全に脱着されずに、場合により塩基性の白金担体触媒を介して窒素酸化物吸蔵成分に「輸送され」、相応する硫酸塩を生成しながら前記窒素酸化物吸蔵成分により吸蔵される。
【0019】
図1は、バリウムに基づく窒素酸化物吸蔵成分を有する窒素酸化物吸蔵触媒の例についての仮定的な吸蔵工程を示す。
【0020】
白金の塩基性担体材料の大部分を、低い塩基性の担体材料に置き換えた場合には、これは恐らく、一方でSO2の吸着率は低下され、他方で硫黄酸化物のPt反応中心までへの並びに窒素酸化物吸蔵成分までへの輸送プロセスは、硫黄酸化物に対する表面での「固定効果」が低下させられることにより妨げられる結果となる。そのため、排気ガス中の全体のSO2割合はもはやSO3に酸化されないか又は「輸送」されない。排気ガス中に残留するSO2の窒素酸化物吸蔵材料中での吸蔵により、結果として亜硫酸塩を生じさせ、この亜硫酸塩はリッチ期間において硫酸塩よりも容易に硫化物に還元することができる。典型的な窒素酸化物吸蔵成分の亜硫酸塩及び硫化物は、一般に熱力学的に、SO3の吸蔵から生じる硫酸塩よりも安定性が低く、適度な温度で再び分解することができる。その結果、前記触媒の脱硫温度は低下される。
【0021】
図2は、白金の化学的環境の低減された塩基性度の際のバリウムに基づく窒素酸化物吸蔵成分の使用のために例示する仮定的な吸蔵工程を図示する。この場合、引かれた線は、恐らく主に生じる硫黄酸化物の反応経路を示す。
【0022】
白金の化学的環境の塩基性度の低下は、もしかすると白金でのSO2酸化速度を低下させ、前記触媒の表面での硫黄酸化物の輸送プロセスを妨げ、前記されたように前記触媒の脱硫温度を低下させる。
【0023】
低い塩基性の第2の担体材料に、使用された白金量の少なくとも三分の一、有利に半分を担持させることは、場合により窒素酸化物吸蔵効果に影響を及ぼすことがある。従って、前記の低い塩基性の担体材料Bが、塩基性の担体材料Aと比べて不足量で使用され、その際、低い塩基性の担体材料Bの必要量を、前記脱硫温度を低下させるべき目標温度に合わせる場合は、本発明の有利な実施態様に属する。有利に、担体材料A:Bの比は1.5:1〜5:1の範囲内にある。
【0024】
白金の化学的環境の塩基性度を低下させるために使用される担体材料の種類に応じて、前記措置が白金分散物の容易な不安定化を引き起こし、それによる前記窒素酸化物吸蔵効率の容易な損失が350℃までの低い温度範囲で生じる。しかしながら、この350℃までの低い温度範囲での吸蔵効率は前記の適用のためにディーゼル車の場合に特に重要であるため、場合により適切な措置により補わなければならない。
【0025】
前記方法の有利な実施態様の場合には、生じた新規の窒素酸化物吸蔵触媒調製物の化学的環境の塩基性度の低下により、従って、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム混合酸化物又は希土類でドープされた酸化セリウム又はこれらの組合せを、十分な量で、つまり前記触媒活性成分の全体量に対して少なくとも5質量%で添加する。酸化セリウムは、一方で、150℃〜300℃の温度範囲で窒素酸化物貯蔵能力を提供し、他方で、前記温度範囲で前記材料に特有の酸素貯蔵能力により、有効な窒素酸化物貯蔵のための前提条件であるNOをNO2に酸化するプロセスにおいて支援的に影響を及ぼすことができるため、酸化セリウム成分の十分な量での添加は、低温吸蔵効率の少なくとも維持、場合により改善を生じさせる。この酸化セリウムがリーン条件下でこの温度範囲で硫黄酸化物を吸蔵することができるという事実は、出願人の経験によれば、相応する窒素酸化物吸蔵触媒の脱硫特性に不利に作用することはない、それというのも、生じる硫酸セリウム(III)はリッチ期間において還元性の条件下で既に適度な温度で再び分解することができるためである。
【0026】
この記載された方法は、全ての窒素酸化物吸蔵触媒に適用できる技術的教示であり、前記窒素酸化物吸蔵触媒は、高表面積の高融点の酸化物の担体材料上の白金からなる白金成分と、1種以上の高融点の酸化物の担体材料上の少なくとも1種の窒素酸化物貯蔵成分とを有することを特徴とする。記載された先行技術による窒素酸化物吸蔵触媒から出発して、前記の方法の適用によりその有利な実施態様の場合に、それぞれ白金の半分が強い塩基性の担体材料上に設けられていて、かつ他の半分が、低い塩基性の担体材料上に設けられていることを特徴とする、低下された脱硫温度を有する改善された窒素酸化物吸蔵触媒が得られる。さらに、この改善された窒素酸化物吸蔵触媒は、酸化セリウム又はセリウム−ジルコニウム混合酸化物又は希土類でドープされた酸化セリウム又はこれらの組合せを、前記触媒活性成分の全体量に対して少なくとも5質量%含有する。
【0027】
出願人のEP 1 317 953 A1に記載された触媒調製物から出発して、白金の半分が均一なMg/Al混合酸化物上に設けられていて、その際、前記酸化マグネシウムはMg/Al混合酸化物の全質量に対して5〜28質量%、特に10〜25質量%の濃度で存在する、前記窒素酸化物吸蔵触媒の特に有利なバリエーションが得られる。このような均一なMg/Al混合酸化物は、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム又は酸化ネオジム又はこれらの混合物のグループから選択される希土類酸化物で被覆されている場合に、特に窒素酸化物吸蔵触媒での白金担体材料として使用するために優れた特性を示す。「均一な混合酸化物(homogenes Mischoxids)」の概念の定義に関して、有利な材料バリエーション、技術的背景及びそれに基づく先行技術の説明は、引用された出願明細書EP 1 317 953 A1を参照する。
【0028】
白金のための強い塩基性の出発担体材料として、EP 1 317 953 A1に記載されたような均一なMg/Al混合酸化物が提供される場合に、低下された脱硫温度を有する有利な触媒は、白金の半分を高表面積の熱安定性の酸化アルミニウム上に担持させることにより得られる。特に有利な実施態様の場合に、前記酸化アルミニウムは、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム又は酸化ネオジム又はこれらの組合せからなるグループから選択される希土類酸化物で被覆されている。この形で被覆された酸化アルミニウムバリエーションも、一般に、前記の均質なMg/Al混合酸化物よりもなお低い塩基性度を示す、それというのも酸化アルミニウムの両性の特徴が優勢であるためである。例えば、典型的なMg/Al混合酸化物は、水中の懸濁液において9〜10のpH値を示すが、全質量に対して10〜20質量%の希土類酸化物で被覆された酸化アルミニウムは、水中の懸濁液において7〜8のpH値を有する。
【0029】
本発明による触媒のための窒素酸化物吸蔵成分として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属又はこれらの混合物の酸化物、炭酸塩又は水酸化物を使用することができる。この成分のための担体材料として、方法において生じる温度よりも融点が高い熱安定性の金属酸化物が適している。この金属酸化物は、有利に、酸化セリウム、セリウムの混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、Mg/Al混合酸化物の全質量に対して5〜28質量%の酸化マグネシウムを有する均一なMg/Al混合酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化サマリウム、酸化ネオジム及びマンガン酸ランタン又はこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0030】
特に窒素酸化物吸蔵成分としてストロンチウム又はバリウムの使用が有利であり、前記窒素酸化物吸蔵成分は酸化セリウム又はセリウムの混合酸化物からなる担体材料上に固定されている。窒素酸化物吸蔵成分のための担体として特に適しているのは、セリウムの混合酸化物、特に、前記混合酸化物の全質量に対して1〜25質量%の酸化ジルコニウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物である。この混合酸化物は、付加的に、前記吸蔵材料の全質量に対して0.5〜90質量%のジルコニウム、ケイ素、スカンジウム、イットリウム、ランタン及び希土類金属又はこれらの混合物からなるグループからの元素の少なくとも1種の酸化物でドープされていてもよい。セリウム/ジルコニウム混合酸化物のドープは、セリウム/ジルコニウム混合酸化物及び酸化ランタン及び/又は酸化プラセオジムの全質量に対して0.5〜10質量%の酸化ランタン及び/又は酸化プラセオジムで行われる。
【0031】
白金の他に、本発明による窒素酸化物吸蔵触媒は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、金又はこれらの組合せのグループから選択される他の貴金属を含有することもできる。特に良好な窒素酸化物吸蔵効率は、白金の他にパラジウム又はロジウムが前記均一なMg/Al混合酸化物上に及び/又は酸化アルミニウム上に設けられている場合に達成することができる、それというのも前記貴金属の相互の合金により熱による焼結に対する前記の分散物の安定化が生じるためである。
【0032】
NOx再生期間の間に脱着される窒素酸化物のできる限り完全な還元を達成するために、前記触媒に、ロジウム又はパラジウムが堆積されている他の担体材料を添加することがさらに有利である。この場合でも、特に活性の、場合により安定化された酸化アルミニウムが適している。
【0033】
前記方法の適用により調製された窒素酸化物吸蔵触媒は、その有利な実施態様の場合に、セラミック又は金属からなる不活性なキャリアボディに設けられる。自動車に適用するためのキャリアボディとして、セラミック又は金属からなる貫流式ハニカムボディが特に適している。特にディーゼル車に使用するために、コーディエライト又は炭化ケイ素からなるウォールフローフィルタの使用も可能である。
【0034】
本発明を、次に、いくつかの実施例及び図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来のバリウムに基づく窒素酸化物吸蔵触媒の場合のリーン期間の間の硫黄酸化物の吸蔵を示す。
【図2】本発明によるバリウムに基づく窒素酸化物吸蔵触媒の場合のリーン期間の間の硫黄酸化物の吸蔵を示す。
【図3】NOx吸蔵効率を測定を示す。
【図4】触媒体積1リットルあたり硫黄1gの負荷による本発明による触媒K1及び比較触媒VK1及びVK2からの累積された全硫黄排出量を示す。
【図5】触媒体積1リットルあたり硫黄1gの負荷による本発明による触媒K1から硫黄排出量に関するSO2及びH2Sの割合を示す。
【図6】16時間にわたり750℃での熱水劣化後の本発明による触媒K1及び比較触媒VK1及びVK2のNOx吸蔵効率を示す。
【図7】触媒体積1リットルあたり硫黄1gの負荷による本発明による方法の適用により製造された触媒K2及び比較触媒VK3からの累積された全硫黄排出量を示す。
【図8】24時間にわたり750℃での空気中での人工的劣化による、本発明による方法の適用により製造された触媒K2及び比較触媒VK3のNOx吸蔵効率を示す。
【実施例】
【0036】
吸蔵効率の測定:
次の実施例及び比較例で触媒を製造し、排気ガス温度に依存する窒素酸化物についてのその吸蔵効率を決定した。この調査の主眼は製造された触媒の熱による劣化安定性の測定にあるので、前記触媒を測定の前に人工的劣化にさらした。本発明による触媒K1及び比較触媒VK1及びVK2について、熱水劣化条件を選択した。前記触媒を750℃で16時間、窒素中で酸素10体積%及び水蒸気10体積%からなる雰囲気にさらした。これとは異なり、本発明による触媒K2及び比較触媒VK3は750℃で24時間空気中に貯蔵した。
【0037】
触媒の吸蔵効率は、その性能を評価するための最も重要な特性パラメータである。これは、リーンバーンエンジンの排気ガスからの窒素酸化物の除去に関する効率を記載する。
【0038】
この触媒のNOx吸蔵効率をモデルガス装置で測定した。このために前記吸蔵触媒をいわゆるリッチ/リーン−サイクルにさらした、つまり、前記触媒にリーン排気ガス及びリッチ排気ガスを交互に貫流させた。リーン排気ガス組成は、酸素を供給し、同時に一酸化炭素及び水素の供給を中断することにより調節した。リッチ排気ガス組成は、反対の手順により作製した。
【0039】
リーン期間内に前記窒素酸化物はそれぞれの触媒に吸蔵された。リッチ期間内に、前記窒素酸化物を再び脱着させ、触媒によりモデル排気ガスの還元成分の一酸化炭素、水素及び炭化水素と反応して窒素、二酸化炭素及び水になった。
【0040】
図3は、理想化された方法でのこの状況を示す。この測定の間に、前記排気ガスは一酸化窒素(NO)について500vppm(体積ppm)の一定の濃度を有する。吸蔵触媒中に導入される窒素酸化物濃度(NOxイン)は、図3中で破線により示した。前記吸蔵触媒の後方の窒素酸化物濃度(NOxアウト)は、最初はゼロである、それというのも、新しい吸蔵触媒は理想的な場合に排気ガス中に含まれる全ての窒素酸化物を結合するためである。時間の経過と共に、前記吸蔵触媒は窒素酸化物で負荷され、その吸蔵能力は低下する。それにより、次第に窒素酸化物は吸蔵触媒に結合しなくなるため、前記触媒の後方で窒素酸化物濃度の増加が測定され、前記窒素酸化物濃度は前記吸蔵触媒の窒素酸化物による完全な飽和後には入口濃度と同じになるはずである。従って、所定の時間後(図3では80秒後)に、前記吸蔵触媒の再生を開始しなければならない。この再生は、約10秒間、排気ガスをリッチにすることにより行われる。それにより吸蔵された窒素酸化物は脱着され、理想的な場合に吸蔵触媒で完全に変換されるため、再生時間の間に前記吸蔵触媒の後方で窒素酸化物は測定できない。その後で、再びリーン排気ガスに切り替え、窒素酸化物の吸蔵を新たに開始する。
【0041】
前記吸蔵触媒の瞬間的な吸蔵効率は、次の関係として定義される
【数1】

【0042】
図3から明らかなように、この効率は時間に依存する。従って、前記吸蔵触媒の評価のために、それぞれの吸蔵期間にわたり積み重なった吸蔵効率Sを決定した:
【数2】

【0043】
この吸蔵効率Sは、従って材料定数ではなく、選択されたリッチ/リーン−サイクルのパラメータに依存する。
【0044】
前記窒素酸化物吸蔵効率を温度の関数として測定するために、前記触媒をまずモデル排気ガス条件下で600℃に加熱した。その後に、前記排気ガス温度をリッチ/リーン−サイクルの実施の間に連続的に600℃から150℃までの7℃/minの温度勾配で低下させた。測定点での窒素酸化物吸蔵効率をそれぞれのリッチ/リーン−サイクルについて測定し、この期間で進行する勾配部分の平均温度に割り当てた。
【0045】
次の表中には、前記吸蔵効率の測定のための試験条件がまとめられている。
【0046】
表1:排気ガス組成
【表1】

【0047】
表2:リッチ/リーン−サイクルのプロセスパラメータ
【表2】

【0048】
図6及び8には、次に記載する比較例及び実施例からの窒素酸化物吸蔵触媒についての、前記方式で測定された排気ガス温度に依存する吸蔵効率がプロットされている。
【0049】
脱硫挙動についての調査
窒素酸化物に関する吸蔵効率の他に、次の実施例及び比較例に記載された触媒の脱硫挙動をモデルガス装置中で調査した。このために、それぞれ試験すべき触媒を、表1に記載された組成にSO2 100ppmを加え、かつ50000l/hの体積流を有するモデルガス中で300℃で処理した。この硫黄添加は、前記触媒に導通される硫黄量(硫黄として計算する)が触媒体積1リットルあたり1グラムになると同時にSO2供給の停止により終了された。前記触媒を、表1に記載された組成を有するモデルガス中で、7.5℃/minの加熱速度で、リッチ/リーン−サイクルで800℃に加熱し、その際、リッチ期間の長さは15秒であり、リーン期間の長さは5秒であった。前記加熱期間の間に、触媒後方でのガスの硫化水素含有量及び二酸化硫黄含有量を適切な分析により決定した。この値から、脱着された硫黄含有成分の割合及び搬出された硫黄の全体量を、触媒体積に対して累積された硫黄質量として計算した。有意な量のCOSの形成は、調査された触媒のいずれでも観察できなかった。
【0050】
比較例1:
先行技術による窒素酸化物吸蔵触媒VK1をEP 1 317 953 A1に従って製造した。このために、まず硝酸セリウムを用いる含浸及び引き続くか焼により、Mg/Al混合酸化物を酸化セリウムでドープした。生じた担体材料中に、酸化物の成分は相互に次の質量比で存在した:
Al23:MgO:CeO2=72:18:10
この出来上がった材料は、BET表面積105m2/gを有していた。水中の前記材料の懸濁液の場合に、9.6のpH値が確認された。
【0051】
前記材料114gを、水溶性の塩素不含の白金前駆体の水溶液で含浸し、乾燥し、500℃で空気中でか焼することで、出来上がった粉末は白金3.5gを含有していた。
【0052】
窒素酸化物吸蔵材料の製造のために、酸化セリウム86質量%を有する安定化されたセリウム−ジルコニウム混合酸化物125gを酢酸バリウムで含浸させ、引き続き500℃で2時間か焼した。この出来上がった吸蔵材料は、酸化物として計算して、バリウム25gを含有していた。
【0053】
この2つの出来上がった粉末を水中に懸濁させ、粉砕し、浸漬法を用いて、1平方センチメートルあたり62個のセルを有しかつ1リットルの体積を有するコーディエライトからなる市販のハニカム体に適用した。このように被覆したハニカム体を乾燥庫中で120℃で乾燥した。引き続き、前記被覆されたハニカム体を500℃で2時間か焼した。
【0054】
実施例1:
本発明による触媒K1の製造のために、比較例1に記載された方法で、Mg/Al混合酸化物90g/l上の白金1.75gを有する白金成分を製造した。
【0055】
低い塩基性の白金成分の製造のために、担体材料として、BET表面積100m2/gを有する高多孔性の、酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウムを使用し、この水中の懸濁液は7.6のpH値を生じた。前記材料34gを、水溶性の塩素不含の白金前駆体の水溶液で含浸し、乾燥し、500℃で空気中でか焼することで、出来上がった粉末は白金1.75gを含有していた。
【0056】
吸蔵材料は、比較例1に記載されたのと同様に製造した。
【0057】
これを、前記の両方の白金成分と、酸化セリウム86質量%を含有する被覆されていない安定化されたセリウム−ジルコニウム混合酸化物40gと一緒に水中に懸濁させ、粉砕し、浸漬法を用いて、1平方センチメートルあたり62個のセルを有しかつ1リットルの体積を有するコーディエライトからなる市販のハニカム体に適用した。このように被覆したハニカム体を乾燥庫中で120℃で乾燥した。引き続き、前記被覆されたハニカム体を500℃で2時間か焼した。
【0058】
比較例2:
比較例1に記載された方法に応じて、白金成分中で、前記Mg/Al混合酸化物の代わりに、本発明による実施例1からの低い塩基性の高多孔性の酸化アルミニウムを含有する他の比較触媒VK2を製造した。
【0059】
こうして製造された白金3.5gを含有する白金成分を、比較例1及び実施例1に記載された吸蔵材料及び酸化セリウム86質量%を含有する被覆されていない安定化されたセリウム−ジルコニウム混合酸化物70gと一緒に水中に懸濁させ、粉砕し、浸漬法を用いて、1平方センチメートルあたり62個のセルを有しかつ1リットルの体積を有するコーディエライトからなる市販のハニカム体に適用した。このように被覆したハニカム体を乾燥庫中で120℃で乾燥した。引き続き、前記被覆されたハニカム体を500℃で2時間か焼した。
【0060】
この本発明による触媒1と比較し触媒VK1及びVK2を、既に前記したプロセスによりリーンガス雰囲気中で触媒体積1リットルあたり硫黄1グラムで負荷した。引き続き、これらの触媒をリッチ/リーン−サイクルの下で800℃を超えて加熱した。この脱着される硫黄含有ガス成分を、触媒の後方で適切な分析で測定した。
【0061】
図4は、温度の関数としての、3つの触媒の観察された累積された硫黄搬出量を示す。強い塩基性の白金成分だけを含有するEP 1 317 953 A1により製造された触媒VK1の場合に、硫黄搬出は600℃を超えて初めて始まる。800℃の最大温度によるここで選択された脱硫方法によって、先行するリーン期間において前記触媒により吸収された硫黄は完全には脱着及び搬出することができない。これとは異なり、低い塩基性の白金成分だけを含有する比較例VK2の場合に、硫黄搬出は既に500℃を下回る温度で始まり、全体の調査された温度範囲にわたり続く。この試験期間にわたり、明らかにVK1の場合よりも高い累積された硫黄搬出が達成される。本発明による触媒K1の場合には、前記硫黄搬出は、550℃で、比較触媒VK2の場合よりも僅かに高い温度で初めて開始する。先行技術により製造された触媒VK1と比較して、この脱硫温度はしかしながら十分に100℃ほど低下している。さらに、この曲線の推移及び前記試験の完了時に達成された搬出された硫黄量は、前記硫黄が前記触媒中では、他の両方の触媒の場合と同じ程度に強固に結合されておらず、前記触媒は従って比較的低い温度で最も完全に脱硫させることができることを示す。
【0062】
図5は、前記脱硫手順の間に放出された二酸化硫黄及び硫化水素の割合を示す。不快な臭いがする毒性のガスの硫化水素の割合は、全体の温度範囲にわたりきわめて少ない。この脱着される硫黄は主にSO2として測定された。これは、前記適用の要求に相当する。
【0063】
脱硫温度を低下させるために行われた本発明による変更が、窒素酸化物貯蔵能力に不利に影響を与えないことを証明するために、触媒K1、VK1及びVK2を人工的な水熱劣化にさらした。このために、前記触媒を750℃の温度で16時間、窒素中で酸素10体積%及び水蒸気10体積%からなる雰囲気にさらした。窒素吸蔵能力の引き続く測定の結果は図6に示されている。
【0064】
VK1(白抜きの四角)及びVK2(黒塗りの三角)の窒素酸化物吸蔵効率の比較は、VK1からなる白金成分の強い塩基性の担体酸化物を、VK2で低い塩基性の酸化アルミニウムに完全に置き換えることにより、劣化後の窒素酸化物吸蔵効率の明らかな損失が生じる。これは、劣化安定性に関する損失と同じ意味である。本発明による触媒K1は、それに対して水熱劣化の後できわめて良好な窒素酸化物吸蔵作用(黒丸)を示す。特に、300℃までの温度範囲(これはディーゼル車のアンダーボディ領域中に適用するために特に重要である)で、図4及び5に示された脱硫挙動の改善は、VK1と比較して、劣化後の窒素酸化物貯蔵効率の明らかな改善を伴う。
【0065】
脱硫温度を低下させるための適用された方法が吸蔵材料とは無関係に機能することを示すために、他の比較触媒と、他の本発明による触媒とを他の窒素吸蔵材料を用いて製造した。
【0066】
比較例3:
窒素酸化物吸蔵材料の製造のために、酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム125gを酢酸バリウムで含浸させ、引き続き500℃で2時間か焼した。この出来上がった吸蔵材料は、酸化物として計算して、バリウム25gを含有していた。
【0067】
この吸蔵材料の使用下で、他の全ての点でVK1に相応する比較触媒VK3を製造した。
【0068】
実施例2:
本発明による触媒K2を、実施例1に記載された触媒に相応して製造し、その際、前記吸蔵材料を、比較例3において使用された吸蔵材料に置き換えた。
【0069】
両方の触媒に、まず新たに製造された状態で、既に前記した方法によりリーンガス雰囲気中で300℃で触媒体積1リットルあたり硫黄1gを負荷し、引き続き、リッチ雰囲気を15秒間にわたり維持しかつリーン期間は5秒の長さを有するリッチ/リーン−サイクルで、800℃に加熱することにより脱硫した。図7は、本発明による方法の適用により生じた触媒K2及びそれに属する今までの先行技術に相当する比較触媒VK3についての搬出された硫黄の全体量を温度の関数として示す。
【0070】
この場合でも、本発明による方法の適用により、比較触媒VK3の場合に650℃を上回る脱硫温度を、550℃(K2)に十分に100℃ほど低下させることができた。
【0071】
図8には、さらに、空気中で750℃で24時間にわたる人工的な劣化の後の前記触媒K2(黒塗りの三角)及びVK3(白抜きの丸)窒素酸化物吸蔵効率が示されている。両方の触媒の最大の窒素酸化物吸蔵効率は、340〜380℃の温度範囲において、80.5%(K2)又は81.5%(VK3)である。350℃までの低温領域における窒素酸化物吸蔵効率の改善(これはK2について観察されかつ前記したように前記触媒のディーゼル車での適応目的のために特に重要である)は、被覆されていない安定化されたセリウム−ジルコニウム混合酸化物(実施例1からのK1も参照)の添加に起因する。
【0072】
従って、白金成分と、少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵材料とを有する窒素酸化物吸蔵触媒の脱硫温度を低下させる本発明による方法は、使用した窒素酸化物吸蔵材料とは無関係に白金の化学的環境の塩基性度の低下により機能することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高表面積の高融点の酸化物の担体材料A上の白金からなる白金成分と、少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵成分を1種又は数種の高融点の酸化物の担体材料上に含有する少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵材料とを有する先行技術による窒素酸化物吸蔵触媒の配合から出発して、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒を製造する方法において、前記の使用された白金量の少なくとも三分の一を、高融点の高表面積の酸化物の担体材料B上に設け、その際、担体材料Bは担体材料Aよりも塩基性が低いことにより、前記白金の化学的環境の塩基性度を低下させることを特徴とする、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒の製造方法。
【請求項2】
使用された白金量の半分を担体材料B上に設けることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
担体材料A対担体材料Bの質量比が、1.5:1〜5:1の範囲内にあることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記窒素酸化物吸蔵触媒に、酸化セリウム又はセリウム−ジルコニウム混合酸化物又は希土類でドープされた酸化セリウム又はこれらの組合せを、前記触媒活性成分の全体量に対して少なくとも5質量%添加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
高表面積の高融点の酸化物の担体材料上の白金からなる白金成分と、少なくとも1種の窒素酸化物吸蔵成分を1種又は数種の高融点の酸化物の担体材料上に含有する少なくとも1種の窒素酸化物材料とを有する、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒において、それぞれ前記白金の半分は強い塩基性の担体材料上に設けられ、かつ他の半分はより低い塩基性の担体材料上に設けられていて、前記窒素酸化物吸蔵触媒はさらに、酸化セリウム又はセリウム−ジルコニウム混合酸化物又は希土類でドープされた酸化セリウム又はこれらの組合せを、前記触媒活性成分の全体量に対して少なくとも5質量%含有することを特徴とする、低下された脱硫温度を有する窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項6】
前記白金の半分は、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとからなる均一なMg/Al混合酸化物上に設けられていて、その際、前記酸化マグネシウムは、前記Mg/Al混合酸化物の全質量に対して5〜28質量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項5記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項7】
前記白金の半分は、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとからなる均一なMg/Al混合酸化物上に設けられていて、その際、前記酸化マグネシウムは、前記Mg/Al混合酸化物の全質量に対して5〜28質量%の濃度で存在し、かつ前記白金の他の半分は高表面積の熱安定性の酸化アルミニウム上に設けられていることを特徴とする、請求項6記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項8】
白金の半分が設けられている前記の均一なMg/Al混合酸化物は、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム又は酸化ネオジム又はこれらの組合せのグループから選択される希土類酸化物で被覆されていることを特徴とする、請求項6又は7記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項9】
均一なMg/Al混合酸化物中の酸化マグネシウムは、前記混合酸化物の全質量に対して10〜25質量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項10】
前記白金の他の半分が設けられている前記の高表面積の熱安定性の酸化アルミニウムは、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム又は酸化ネオジム又はこれらの組合せのグループから選択される希土類酸化物で被覆されていることを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項11】
前記窒素酸化物吸蔵成分は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属又はこれらの混合物からなるグループから選択される元素の酸化物、炭酸塩又は水酸化物であることを特徴とする、請求項5から10までのいずれか1項記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項12】
窒素酸化物吸蔵成分のための担体材料は1種又は数種の熱安定性の金属酸化物からなることを特徴とする、請求項11記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項13】
前記窒素酸化物吸蔵成分用の担体材料として使用される熱安定性の高融点の金属酸化物は、酸化セリウム、セリウムの混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、Mg/Al混合酸化物の全質量に対して5〜28質量%の酸化マグネシウムを有する均一なMg/Al混合酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、マンガン酸ランタン又はこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項12記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項14】
前記窒素酸化物吸蔵成分は、ストロンチウム又はバリウムの酸化物、炭酸塩又は水酸化物であり、前記成分は酸化セリウム又はセリウムの混合酸化物からなる担体材料に固定されていることを特徴とする、請求項13記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項15】
前記窒素酸化物吸蔵成分用の担体材料として、セリウムの混合酸化物が存在し、前記混合酸化物は、前記吸蔵材料の全質量に対して、ジルコニウム、ケイ素、スカンジウム、イットリウム、ランタン及びランタノイド又はこれらの混合物からなるグループから選択される元素の少なくとも1種の酸化物0.5〜90質量%でドープされていることを特徴とする、請求項14記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項16】
前記窒素酸化物吸蔵成分用の担体材料として、前記混合酸化物の全質量に対して1〜25質量%の酸化ジルコニウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物を使用することを特徴とする、請求項15記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項17】
前記窒素酸化物吸蔵成分用の担体材料として使用されるセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、セリウム/ジルコニウム混合酸化物及び酸化ランタン及び/又は酸化プラセオジムの全質量に対して、酸化ランタン及び/又は酸化プラセオジム0.5〜10質量%でドープされていることを特徴とする、請求項16記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項18】
前記触媒は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、金又はこれらの組合せのグループから選択される他の貴金属を含有することを特徴とする、請求項5から10までのいずれか1項記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項19】
前記の均一なMg/Al混合酸化物上に、白金の他にパラジウム又はロジウムが設けられていることを特徴とすることを特徴とする、請求項18記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項20】
前記酸化アルミニウム上に、白金の他にパラジウム又はロジウムが設けられていることを特徴とすることを特徴とする、請求項18又は19記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項21】
前記触媒は他の担体材料として、パラジウム又はロジウムが堆積されている活性の場合により安定化された酸化アルミニウムを含有することを特徴とする、請求項18記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項22】
前記触媒はセラミック又は金属からなる不活性キャリアボディ上に被覆の形で設けられていることを特徴とする、請求項5記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項23】
前記キャリアボディはセラミックからなる貫流式ハニカムボディであることを特徴とする、請求項22記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項24】
前記キャリアボディは、コーディエライト又は炭化ケイ素からなるウォールフローフィルタであることを特徴とする、請求項22記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項25】
主にリーン運転される内燃機関の排気ガスの浄化のための、請求項5記載の触媒の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63438(P2013−63438A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−270486(P2012−270486)
【出願日】平成24年12月11日(2012.12.11)
【分割の表示】特願2009−530823(P2009−530823)の分割
【原出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】