説明

低体温改善剤、低体温改善用組成物及び冷え性改善用組成物

【課題】低体温状態、例えば、生活リズムの変調が原因となる低体温状態を速やかに改善し、深部体温を上昇させる低体温改善剤及びこれを含有する低体温改善用組成物を提供する。
【解決手段】キヌア抽出物からなる低体温改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生活リズムの変調が原因となる低体温に対する改善剤及びこれを含有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトを始めとした恒温生物の体温は、例えば、朝食をとらない、夜型の生活、睡眠時間
の不規則や日中の身体活動不活発等の生活リズムの変調が原因となり低下する。体温の低下は、例えば、悪寒・不快感、創部感染、創傷治癒遅延、免疫力低下等の生理機能の低下を生じ、極端な体温の低下により死に至ることもある。従って、体温が種の正常な活動状態で決められている範囲を超えて低下した場合、体温を適正な範囲に回復させる必要があり、そのため、これまでに様々な体温上昇手段が開発されている。
【0003】
例えば、冷えた身体を温める手段としては、酢酸トコフェロール、高麗人参、ショウガ等の血流促進剤の摂取や手足のマッサージ等により血行を促進したり、温かい飲食物の摂取等の方法が挙げられる。また、辛味成分によるエネルギー代謝促進によって体温を上昇させる目的で、カプサイシンを有効成分とする飲料(特許文献1:特開2000−189121号公報参照)が提案されている。しかしながら、血流促進剤では体表面温度を上昇させることはできるが、深部体温を上昇させることはできず、体温低下の根本解決には至らない。また、暖かい飲食物の摂取は一過性の作用であり、持続性の面で問題がある。カプサイシンについては、唐辛子に含まれる辛味成分であり、多量のカプサイシン類を加えると辛味を強く感じるため、添加する量には制限がある。以上のことから、低体温状態を速やかに改善するものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−189121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、低体温状態、例えば、生活リズムの変調が原因となる低体温状態を速やかに改善し、深部体温を上昇させる低体温改善剤、ならびにこれを含有する低体温改善用組成物及び冷え性改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、キヌア抽出物に低体温改善効果、特に深部体温低下抑制効果があることを知見し、本発明をなすに至ったものである。従来、キヌア抽出物に上記効果があることは知られておらず、本発明者らの新知見である。
【0007】
従って、本発明は下記低体温改善剤及び低体温改善用組成物を提供する。
[1].キヌア抽出物からなる低体温改善剤。
[2].キヌア抽出物を有効成分として含有する低体温改善用組成物。
[3].キヌア抽出物を有効成分として含有する冷え性改善用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低体温状態、例えば、生活リズムの変調が原因となる低体温状態を速やかに改善し、深部体温を上昇させる低体温改善剤及び低体温改善用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における投与方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の低体温改善剤はキヌア抽出物からなるものであり、キヌア抽出物を低体温改善用途に用いるものである。キヌアは、アカザ科、アカザ属の植物である。
【0011】
キヌア抽出物としては特に限定されず、キヌアからの抽出物であればよく、植物抽出物としては、公知の抽出方法で得られたものを用いることができる。抽出部位は特に限定されず、各種植物の全草もしくは根茎部、樹皮部、果実部等の特定部位を用いることができ、特に種子を用いるのが好ましい。種子の場合には、脱穀、乾燥し粉砕して粉末として用いることができる。抽出方法は特に限定されず、溶媒抽出、水蒸気蒸留、超臨界抽出等の公知の抽出方法を採用することができる。例えば、溶媒抽出の場合、キヌアを生のまま、又は乾燥した後に適当な大きさに切断・加工し、抽出溶媒に浸漬、撹拌することによって得ることができる。抽出は必要に応じて加温してもよく、時間は適宜選定され、抽出pHは、極端な酸性又はアルカリ性でなければ特に制限はない。上記抽出方法に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。抽出溶媒としてはエタノール含有溶媒が好ましい。エタノール含有溶媒は、エタノールの他に、上記水、エタノール以外のアルコール類を含んでいてもよい。エタノール含有溶媒のエタノール濃度は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。このような95質量%以上エタノール含有溶媒抽出物が、顕著な低体温改善効果を示す。なお、抽出後ろ過を行い、適宜公知の精製を行ってもよい。キアヌ抽出物の形状は特に限定されず、上記処理により得られたものをそのまま、その希釈液、濃縮液等の液状、ペースト状、凍結乾燥等による乾燥粉末物等が挙げられる。
【0012】
低体温とは、個体差があるため数値範囲で特定することは難しいが、一般にラット等の場合は36.5〜37.5℃、ヒトの場合は35.0以上36.0℃未満をいう。
【0013】
キヌア抽出物(固形分)の投与量は、種別、年齢及び低体温の程度により適宜選定されるが、成人の体重1kgに対して、通常0.01〜100mg/kg、好ましくは0.1〜50mg/kgの範囲である。
【0014】
本発明の低体温改善剤は、一定の深部体温を持つ動物(恒温動物)に用いられ、特に哺乳類(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、サル、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ等)に用いることができる。
【0015】
本発明の低体温改善剤は、他の低体温改善剤を併用してもよい。また、特に生活リズムの変調が原因となる低体温の改善に効果的であり、特に深部体温低下抑制効果を示す。ここで、深部体温とは、体の深部(例えば、直腸、食道、心臓、脳等)の温度を意味し、通常は直腸温である。深部体温の測定は、例えばラットの場合、腹腔内の体温測定用カプセル(23mm長×8mm径、PDT−4000、MiniMitter社製)により行うことができる。また、ヒトの場合の測定は、腋下温、口腔(舌下)温、直腸温によることができる。
【0016】
キヌア抽出物は上記効果を有するため、キヌア抽出物の摂取により、低血圧、内臓機能低下(便秘・下痢)、免疫力低下、血行不良(冷え・肩こり・腰痛・関節痛)、睡眠障害、新陳代謝低下(肥満)、うつ等の予防又は改善効果が期待できる。
【0017】
本発明の低体温改善剤はそのままで用いることもできるが、これを含有する低体温改善用組成物として用いることもできる。また、キヌア抽出物の上記効果から、冷え性改善用組成物、肥満抑制用組成物、免疫賦活用組成物としても提供できる。さらに、低体温改善、冷え性改善、肥満抑制、免疫賦活のために用いられるものである旨の表示を付した製品とすることができる。組成物中のキヌア抽出物(固形分相当量)の含有量は特に限定されず、上記投与量(摂取量)に応じて適宜選定され、0.005〜50質量%、好ましくは0.01〜30質量%の範囲で適宜選定される。
【0018】
本発明の組成物には、各剤型に応じて、通常用いられる任意成分を配合することができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、その適量を配合することができる。
【0019】
任意成分としては、ビタミン、ミネラル、美肌成分、甘味剤、酸味剤、防腐剤、香料、色素等が挙げられる。
【0020】
ビタミンとしては、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、A、D、E、K、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ユビキノン及びこれらの誘導体等が挙げられる。この中でも、B1、B2、B6、B12、Cが好ましい。ビタミンの組成物中の適切な配合量は、各々栄養機能食品の栄養素の配合限度量に従うのが好ましい。
【0021】
ミネラルとしては、カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、カリウム、セレン、亜鉛等が挙げられる。最適な配合量は、栄養機能食品の栄養素の配合限度量に従うのが好ましい。ミネラルの組成物中の最適な含有量は、各々栄養機能食品の栄養素の配合限度量に従うのが好ましい。
【0022】
美肌成分としては、肌の保湿力を高めたり、肌の新陳代謝を向上させる成分を配合することができる。例えば、ヒアルロン酸、エラスチン、コエンザイムQ10、α−リポ酸、アロエ、セラミド、ローヤルゼリー、アスタキサンチン、アミノ酸類、グルコサミン、エラグ酸、補酵素等が挙げられる。
【0023】
甘味剤としては、白糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。酸味剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。
【0024】
例えば、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠等を含む)、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤の場合には、下記賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を配合することができる。
【0025】
賦形剤としては、セルロース及びその誘導体、スターチ及びその誘導体、糖類、糖アルコール類等が挙げられ、より具体的には、結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、エリスリトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。
【0026】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、デキストリン、デンプン、アルファー化デンプン等が挙げられる。
【0027】
崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等が挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、無水ケイ酸、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク等が挙げられる。
【0029】
固形剤の製造方法は特に限定されず、キヌア抽出物及び任意成分を混合し、上記混合物を、打錠機等で圧縮成型して錠剤を得ることができ、上記混合物を個包装することにより、顆粒剤を得ることができる。さらに、上記混合物を、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含有するカプセルに充填し、カプセル剤にすることができる。
【0030】
例えば、ドリンク剤(液剤)の場合は、増粘多糖類等を配合することができる。増粘多糖類としては、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードラン(β−1,3−グルカン)、ヒアルロン酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。液剤は、キヌア抽出物、任意成分及び水(残部)を混合して得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0032】
[調製例:キヌア抽出物の調製]
キヌア粉末(種子由来、大日本明治製糖株式会社製)60gをとり、エタノール(99.5%、和光純薬工業(株)製)600mLに浸漬し、室温で5日間抽出した。残渣をろ別して得られた抽出液を減圧濃縮し、乾燥物(固形分)3gを得た。
【0033】
[実施例1、比較例1,2]
投与方法を示す模式図を図1に示す。
ラット(SD系、オス、5週齢;日本SLC株式会社)の腹腔内に体温測定用カプセル(23mm長×8mm径、PDT−4000、MiniMitter社製)を埋め込み、21日間自由摂取により飼育して体温を測定した(自由摂取時体温:(1))(環境温度22℃±0.5℃、明暗サイクル:明期12時間、暗期12時間)。その後、休息期にあたる明期にのみ標準餌CE−2(日本クレア株式会社製)を摂取させ、暗期の食餌摂取を中止して35日間飼育し、低体温を誘導した(食餌制限時体温:(2))。次に、標準餌にキヌア抽出物(上記調製物)を0.05質量%添加(実施例1)、標準餌にカプサイシン(和光純薬工業(株)製)を0.02質量%添加(比較例1)、対照として標準餌のみ(比較例2)を、1日20g(キヌア抽出物は10mg、カプサイシンは4mgに相当する)45日間摂取させた。その後、10日間標準餌を自由摂取させ、体温を測定した(再自由摂取時体温:(3)、毎日測定)。なお、1群3匹にて実施した。
体温は上記腹腔内の体温測定用カプセルを用いて、暗期の深部体温を測定した。また、評価は、再自由摂取時体温:(3)を測定し、食事制限時体温:(2)が自由摂取時の体温:(1)まで回復する期間を評価した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1からも明らかなように、キヌア抽出物を投与した群は、体温の回復期間が短く、低体温からの回復を促進する効果が認められた。
【0036】
[実施例2]
下記組成のチュアブル錠を常法により得た。
組成
エリスリトール 85.0質量%
キヌア抽出物 1.0
バレイショデンプン 4.0
タルク 3.5
ステアリン酸マグネシウム 1.5
クエン酸 5.0
合計 100.0
【0037】
[実施例3]
下記組成のドリンク剤を常法により得た。
組成
ブドウ糖 1.5質量%
果糖 1.5
キヌア抽出物 0.01
塩化ナトリウム 0.03
ビタミンC 0.03
クエン酸 0.01
リンゴ酸 0.01
ヒアルロン酸 0.01
香料 0.01
水 残部
合計 100.00

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キヌア抽出物からなる低体温改善剤。
【請求項2】
キヌア抽出物を有効成分として含有する低体温改善用組成物。
【請求項3】
キヌア抽出物を有効成分として含有する冷え性改善用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−260848(P2010−260848A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61952(P2010−61952)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】