説明

低価格、オンライン腐食モニターおよび高性能腐食プローブ

【課題】工業プロセスをモニターするための装置、方法、およびシステムを提供する。
【解決手段】特定の冶金を有するプローブモジュール(3)に繋がれたコントローラーモジュール(2)、および、コントローラーモジュール(2)のために特定の抵抗値を見極め、プローブ(3)の冶金を識別できるレジスターモジュール(36)を有する装置およびシステムを提供する。冶金材料の種類を識別する抵抗を測定できるレジスター装置も提供される。提供される装置およびシステムは低価格であり、携帯可能であり、電気的に安全であり、熟練していない作業者による設置および作動が容易であり、デスクトップおよび携帯用の両方のコンピューター化された装置に接続可能であり、工業プロセスのリアルタイムモニタリングが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に工業プロセス用の装置、方法、および、システムに関する。特に、本発明は腐食性の工業プロセスをモニターするための装置、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の工業プロセスが腐食性の副産物を生産することは一般的に当然知られている。このような腐食性副産物は、たびたび工業機器を腐食させたり、生産コストを増大させたり、生産の遅れを引き起こしたりする。従って、腐食をモニタリングは、上記のような工程の混乱を軽減する有用な手段である。
【0003】
現在では、一般的な工業プロセス用オンライン腐食モニター装置は比較的高価であり、使いづらい。このような腐食モニター装置は、大きくて複雑なモニター部品を有することが多く、持ち運びができず、工業プロセスをモニターするには恒久的に固定されなければならない。また、このような装置は大きく、複雑で扱いにくいので、据え付けて効果的に稼動させることは、熟練した者にとっても、熟練していない者にとっても困難であろう。
【0004】
現在入手可能な腐食モニター装置は、データを保存して、後に他のコンピューター化された装置にダウンロードできることが一般的に知られている。しかし、このような腐食装置はリアルタイムの腐食モニタリングを供給する能力に欠け、ラップトップや手のひらサイズのコンピューターなどのより持ち運びがしやすいコンピューター化された装置と交信する能力に欠けることが多い。
【0005】
現在入手可能な腐食モニター装置に伴うその他の問題としては、このような装置の廃棄が容易ではないことである。一部の腐食モニター装置は交換可能な部品を提供しているが、多くが誤作動をし、とても高価なことが多い。
【0006】
現在入手可能な多くのモニター装置は防水性や防水壁を有していないので、上記の廃棄問題はますます悪化する可能性がある。このように、湿気や、その他の環境要素に曝されることで、このような装置の多くの内部部品は害される。従って、少なくとも一部の現在入手可能な腐食モニター装置の寿命、機能整合性、およびモニタリングの信頼性は著しく低下する。これらの環境による有害な影響は、これらの装置の稼動および整備経費を著しく増大させる。
【0007】
少なくとも一部の従来の腐食モニター装置に伴う更なる問題は、相当数の不正確な読み取りである。多くの場合、この誤りはモニター装置が、腐食度合いを測定するために装置に利用されている冶金材料の種類を識別する能力がないことから発生する。
【0008】
例えば、ほとんどの腐食モニター装置では、工業プロセスの腐食度合いを測定するために、特定の冶金を有する電極プローブを用いている。腐食度合いは、用いられる特定の種類の金属プローブ電極に基づく工業プロセスの腐食性に基づいて測定される。もし、プローブの冶金が変化、またはモニター装置によって測定できないと、後に原因を調べて修正されなくてはならない不正確な読みが頻繁に相当数発生する。このような読み違いを修正するためには、更なる稼動経費を招く。
【0009】
それゆえ、工業プロセスをモニターするための、改良された装置、方法、および、システムが望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、工業プロセスをモニターするための、改良された装置、方法、および、システムに関するものである。特に、本発明は工業的な腐食性冷却水処理プロセスをモニターする、改良された装置、方法、および、システムに関する。
【0011】
このために、本発明はコントローラーモジュールと、コントローラーモジュールと交信可能なプローブモジュールと、コントローラーモジュールと交信可能なレジスターモジュールと、を有する装置において、レジスターモジュールがコントローラーモジュールに対して、プローブモジュールを識別可能な装置を提供する。
【0012】
また、本発明はコントローラーモジュールと、少なくとも1つの冶金プローブ電極を有しコントローラーモジュールと交信可能なプローブモジュールと、コントローラーモジュールと交信可能な抵抗値を有するレジスターモジュールと、を有する腐食モニターシステムにおいて、コントローラーモジュールに対して、前記抵抗値がプローブ電極の冶金を識別する腐食モニターシステムを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、コントローラーモジュールと、コントローラーモジュールと交信可能なプローブモジュールと、コントローラーモジュールと交信可能なレジスターモジュールと、を有する腐食モニター装置を提供し;前記プローブモジュールを溶液内に設置し;コントローラーモジュールを介して電流によりプローブモジュールとレジスターモジュールとを帯電させ;帯電されたレジスターモジュールの抵抗値に基づいて、コントローラーモジュールによりプローブモジュールの種類を識別し;プローブモジュールが識別された後に腐食度合いをコントローラーモジュールにより測定する工程を有する腐食度合いを測定する方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、電極と、前記電極を識別する抵抗値を有するレジスターとを有するプローブ装置を提供する。
【0015】
本発明の更なる特徴および利点は、発明の詳細な説明および図において説明されており、それらから明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、腐食性の工業プロセスをモニターするための装置、方法、および、システムに関するものである。特に、本発明は工業的な冷却水処理システムの腐食をモニターするための装置、方法、および、システムに関する。
【0017】
同一の数字は同一の部分を指す図を参照すると、図1は、透視図により本発明のモニター装置1の1態様を例証する。例証された態様においては、モニター装置1は2つの主要構成部品を有する。図1に見られるように、これらの主要構成部品はコントローラーモジュール2と、ケーブル30を介して互いに交信可能なプローブモジュール3と、を有する。
【0018】
特に、コントローラーモジュール2に注目すると、前記モジュールは更に、サーキットボード8、表示装置12、および、電源14を有するコントローラーボディー10を有する。サーキットボード8は更に、マイクロコントローラー16と交信可能である。サーキットボード8は、電源14から電線24を介して電力を供給されており、サーキットボード8はその電力をマイクロコントローラー16、および、コンダクター対20,22に分配する。
【0019】
また、工業プロセスが本発明のモニター装置1によりモニターされるに際し、他のコンピューター化された装置に後にダウンロードするために、マイクロコントローラー16によりデータが収集されて保存される。そのような情報をマイクロコントローラー16からコンピューター化された装置にダウンロードするには、サーキットボード8から伸びるデータケーブル18が用いられる。
【0020】
更に、サーキットボード8に電流が供給されると、サーキットボード8へ繋がり、サーキットボード8から伸びるコンダクター対20,22に分配される。その電流は次に、図1のようにコンダクター対20,22を覆うことによりコントローラーモジュール2とプローブモジュール3との間の交信を可能にするケーブル30を介してプローブモジュール3、および、その内部構成部品に供給される。
【0021】
モニター装置1のコントローラーボディー10はどのような材料から製造されてもよいが、腐食性物質や環境の影響などの工業的な複合物に耐え得るプラスチック材料が好ましい。本発明の好ましい態様においては、コントローラーボディー10は、屋内および屋外の環境要素と共に、腐食に耐え得るプラスチック材料からできている。
【0022】
本発明の利点は、モニター装置1は、好ましくは工業プロセスやその環境において見られる過酷な要素に耐え得る材料で製造されていることである。そのようにすることにより、本発明は上記の影響による中断や不正確な読み取りがない工業プロセスモニター装置を提供することができる。
【0023】
このように、電源14がモニター装置1内の複数の構成部品に電流を供給し、本発明の理念に沿うように装置を作動させるために必要な種々の方法やレベルで利用されることは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。
【0024】
本発明の好ましい1態様においては、電源14は電池である。それにより、モニター装置1はコンセントの近くの一箇所に恒久的に設置されなくてもよい。電池式にすることにより、適正に作動させるために他のコンセントに繋がなくてはならない従来のモニター装置とは異なり、モニター装置1はより小型で、携帯可能であり、電気ショックによる災害の危険がないという利点を有する。
【0025】
電源14用に好適に用いられる電池の種類としては、これらに限定されるものではないが、アルカリ電池、リチウム電池、亜鉛空気電池、充電式ニッケル―カドミウム電池、および、充電式ニッケル―水素電池などが挙げられる。広く市販されており、低価格なことからアルカリ電池が最も好ましい。
【0026】
本発明のマイクロコントローラー16は、ソフトウェア技術に見られるいかなる従来のマイクロコントローラーでもよい。好ましくは、マイクロコントローラー16は、32.768キロヘルツウォッチクリスタルの使用に際して履行時間が早く、消費電力が低い68ピン、16ビットRISCマイクロチップ等のミックスドシグナルのマイクロコントローラーである。また、マイクロコントローラー16が本発明のモニタリング、表示、データ交信理念を達成するために、液晶表示ドライバー、AD変換器、タイマー、および、デジタルI/Oピンの配列を有することも好ましい。
【0027】
本発明のマイクロコントローラー16は、不揮発性メモリ(EEPROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)等の一般的にマイクロコントローラーに付随するメモリ保存装置を利用して、収集されたデータの保存も可能である。更に、マイクロコントローラー16は、データケーブル18を用いて情報をダウンロードすることにより、保存されたデータを他のコンピューター化された装置やインターネットベースの装置に提供することができる。
【0028】
データケーブル18は、コントローラーモジュール2と、従来のデスクトップや携帯用のコンピューター化された装置との間の交信を可能にすることができる。データケーブル18はいかなる既製のコミュニケーションポートでもよく、これらには限定されないが、平行接続、直列接続、光学接続ファイヤライン接続、アナログピン接続、それらの派生的なもの、および、それらの組み合わせ等が挙げられることは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。
【0029】
本発明の利点は、モニター装置1が種々のコンピューター化された装置やインターネットベースの装置に接続が可能なことである。このように、本発明のモニター装置1は、データケーブル18を介してデスクトップのコンピューター化された装置、ラップトップや手のひらサイズコンピューター等の携帯用装置、および、LANネットワークのようなインターネットベースの装置に接続可能である。
【0030】
このようにすることにより、本発明のモニター装置1は、その装置が作動中のコンピューターやインターネットに接続されている場合、瞬時に最新の情報を産業消費者に提供することができる。このようなオンライン機能は、特に、繊細であり、継続的にモニターされなければならない工業プロセスのより綿密なモニタリングを可能にする。本発明は、多くの従来のモニター装置と異なり、オンライン方式により工業プロセスのリアルタイムのモニタリングを可能にする。
【0031】
また、モニター装置1に携帯用やデスクトップのコンピューター化された装置との相互交流機能を付与することにより、本発明は産業消費者により保存された情報を簡単にダウンロードする種々の方法を提供する。このように、本発明のモニター装置は、全てではないかもしれないが、従来のほとんどのコンピューター化されたシステムやネットワークと交信可能であることから、工業において幅広い方法で用いることが可能である。
【0032】
情報を表示するために、サーキットボード8と連結されたマイクロコントローラー16は、表示装置12と交信可能である。表示装置12は、好ましくは、種々の数字、文字、記号を表示できる液晶表示装置である。例えば、本発明の好ましい1態様においては、表示装置12はエラーコードを示し表示する「E」の文字のようなテキスト文字と共に、小数点を含む.00〜99の範囲の数字を表示可能である。
【0033】
本発明の追加的な利点は、表示装置12を介した情報のリアルタイム表示を通じて提供される。単なるマイクロコントローラー16からの、サーキットボード8やデータカーブル18を介した保存された情報のダウンロードというよりはむしろ、モニター装置1の使用者は表示装置12をその時々の情報を得るために利用できる。
【0034】
コントローラーモジュール2をケーブル30を介してプローブモジュール3に繋げるために、モニター装置1にはケーブル接続口26が設けてある。(図1)ケーブル接続口26は、ケーブル30がコントローラーモジュール2からプローブモジュール3およびその種々の内部構成部品への、コンダクター対20,22を介した交信を可能にするように、ケーブルコネクター28用の接続口を提供する。このように、ケーブル接続口26が、本発明のモニター装置1に2つの機能を提供することは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。このようにすることにより、ケーブル接続口26はモニター装置1に必要な接続口の数を減らし、その低価格、携帯性、小型化を促進する。
【0035】
ケーブル30は、コンダクター対20,22のような電線やケーブルを覆うことができるいかなる材料からできていてもよい。好ましくは、ケーブル30は、工業的および環境的な影響に耐え得るプラスチックのような付加材料によりコーティングされている絶縁材料である。
【0036】
プローブモジュール3に関しては、プローブモジュールは、エポキシ34を有するプローブモジュールボディー32を有する。コンダクター対20,22、レジスターモジュール36、プローブ電極38対の一端を含むケーブル30がエポキシ34に埋め込まれている。(図1)
図1のように、コンダクター対20はプローブボディー32およびエポキシ34の中のケーブル30から、プローブ電極38へ伸びる。このようにすることにより、電源14からサーキットボード8へ供給された電流は、サーキットボード8からコンダクター対20を介してプローブ電極38へ分配される。一方、コンダクター対22は、プローブボディー32およびエポキシ34の中のケーブル30からレジスターモジュール36へ伸び、コンダクター対22は、電源14から電力を供給されているサーキットボード8から電力を供給される。
【0037】
コンダクター対20、22、レジスターモジュール36、プローブ電極38を含むケーブル30は、特に湿気などの屋内および屋外の要素へ曝されないように、エポキシ34へ埋め込まれている。これらのプローブモジュール3の内部構成部品をエポキシ34に埋め込むことにより、混乱させる環境的な影響は減少または除去されるので、このモジュールは他の従来のモニター装置がすでに達成しているよりもはるかに正確な工業プロセスの測定が可能になる。
【0038】
例えば、図1に示すようにエポキシ34にプローブ電極38を埋め込むことにより、それらのプローブ電極は互いに離れたところに位置し、コンダクター対22への接続口において水を含む物質への接触を防止する。これは、言い換えると、プローブ電極38がショートすることを減少または防止する。このようなプローブ電極38のショートを除去することは、マイクロコントローラー16による電極からの不正確な電圧の読みを大幅に減少または除去する。
【0039】
また、エポキシ34にプローブ電極38を埋め込むことにより、割れ目や孔食などの局部腐食現象もまた大幅に減少または除去される。このような耐食性は、プローブ電極38のみならずモニター装置1の稼動寿命を向上させる。
【0040】
プローブモジュール3は、工業的のみならず環境的な影響に耐え得るいかなる適する材料から製造されてもよい。プローブモジュール3の好ましい態様においては、プローブボディー32はガロライト(Garolite)からできている。ガロライトは、とても強く、腐食性物質に対し化学的な耐久性があるエポキシ繊維積層体であり、水を吸収せず、エポキシポッティング物質と強く結合する。しかし、プローブボディー32はポリ塩化ビニール等の水に対して化学的に耐久性があり、しかもエポキシと化学的に結合するいかなる材料から製造されてもよいことは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。
【0041】
プローブモジュール3の耐水性を向上させるために、プローブボディー32は更にエポキシ34を含む。工業プロセスにおける使用に適し、環境的な圧力に耐え得るいかなる従来のエポキシ材料を利用することができる。プローブモジュール3にエポキシ34を用いることは、コンダクター対20、22、ケーブル30、レジスターモジュール36、およびプローブ電極38の一端の周りに、プローブボディー32との耐水および耐候のシールを提供する。
【0042】
そのようなシールを形成することにより、それらの構成部品を保護性を高めることができる。その寿命が大幅に伸びるので、それらの保護性は本発明の交換費用を減少させる。
【0043】
図1中のレジスターモジュール36は、現在入手可能ないかなるレジスターでもよい。
その電流に対するインピーダンスが容易に計測できるように、レジスターモジュール36は小型であり、安定であり、低価格であることが好ましい。本発明の好ましい1態様においては、レジスターモジュール36は1%公差と100ppm/℃係数を有する金属フィルムレジスターである。
【0044】
マイクロコントローラー16の制御のもとで、電源14からの電流はコンダクター対22によりレジスターモジュール36へ送られる。その電流に対するレジスターモジュール36の抵抗は、マイクロコントローラー16により計測されモニターされる。
【0045】
そのようにすることにより、従来のモニター装置と異なり、本発明のモニター装置は、識別機能を提供する。レジスターモジュール36を電流が通過する際に、マイクロコントローラー16が抵抗値を測定する。その抵抗値に基づいて、マイクロコントローラー16はコントローラーモジュール2に対してプローブモジュール3の種類を識別することが可能になる。
【0046】
より具体的には、マイクロコントローラー16はプローブモジュール3のプローブ電極38の種類を識別可能である。プローブ電極38を構成する材料の種類を識別するために、モニター装置1は特定のレジスターモジュール36を利用しているのでそのような識別が可能になる。
【0047】
例えば、プローブ電極38が銅のような特定の種類の冶金を有する場合は、銅のプローブ電極のみを識別するために、モニター装置1の1態様において1100オームのインピーダンス値を有するレジスターモジュール36が特に用いられる。このようにすることにより、マイクロコントローラー16がレジスターモジュール36からの1100オームの抵抗値を測定するたびに、そのマイクロコントローラーはプローブ電極38を銅電極と識別することが可能になる。
【0048】
プローブ電極を利用する従来のモニター装置と異なり、本発明は工業プロセスの様々な形式で用いられる種々の電極を識別する方法を提供する。プローブモジュール3のレジスターモジュール36を用いてコントローラーモジュール2のマイクロコントローラー16に対して自己を識別することができるので、基本的には、プローブ電極38は「高性能」プローブとして機能する。
【0049】
コントローラーモジュール2が、異なる態様のプローブモジュール3や異なる形式のプローブ電極38と共に使用されると、コントローラーモジュール2は自分が繋がれている、種々の工業プロセスにおいて用いられるプローブモジュールの種類を瞬時に効率的に識別することができる。また、コントローラーモジュール2はプローブモジュール3のプローブ電極38を識別できるので、コントローラーモジュール2は工業プロセスのより正確なモニターが可能になる。
【0050】
例えば、モニター装置1は、プローブモジュール3に設置されたそれぞれの種類の冶金プローブ電極38に対し異なって作用する腐食性工業プロセスのモニターに用いることができる。レジスターモジュール36を介して冶金プローブ電極38の種類を識別することにより、一旦プローブ電極38の冶金特性が推定されると、それに基づいてコントローラーモジュール2は腐食性の測定を調整することができる。
【0051】
プローブの識別ができないので、従来のモニター装置は本発明のモニター装置1よりも正確性が劣る。従って、本発明は工業プロセスのモニターの正確性を従来よりもはるかに増大させる。
【0052】
本発明のプローブ電極38は、工業プロセスをモニターするために用いられる従来のいかなるモニター材料から成ってもよい。プローブ電極38は、これらに限定はされないが、銅、ニッケル、銅とニッケルの合金、スチール、アドミラルティー黄銅、それらの誘導体、および、それらの組み合わせを含む冶金材料からできていることが好ましい。
【0053】
さらに、工業プロセスのモニターをする装置をグレードアップさせ、単純化させるために、従来のモニター装置と共にプローブモジュール3とレジスターモジュール36とをそれぞれ別に用いることができることは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。
【0054】
本発明の更なる態様においては、プローブ装置が設けられている。その装置は、電極と、電極を識別する抵抗値を有するレジスターを有する。プローブ装置の電極は、銅、ニッケル、銅とニッケルの合金、スチール、アドミラルティー黄銅、それらの誘導体、および、それらの組み合わせから成る群から選択される材料からなる。プローブ装置は携帯可能であり、電池式であることが好ましい。
【0055】
本発明のモニター装置は、一旦本発明の理念が理解されると、数々の態様の選択肢を取れることは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。
【0056】
本発明のモニター装置1は、従来技術のモニター装置よりも数々の利点を提供する。モニター装置1のコントローラーモジュール2やプローブモジュール3が携帯可能であるように、モニター装置1は大型ではない構成部品から構成される。更に、モニター装置1の小型性に加え、本発明の全ての構成部品は小型である。
【0057】
さらに、小型化され、電池式であることから、本発明のモニター装置1の製造費用は低価格である。このように、本発明は、現在入手可能なモニター装置よりもはるかに安い、携帯可能な、しかも精度の高いモニター装置を提供する。
【0058】
また、本発明のモニター装置1は、組み立ておよび使用が容易であるように設計されていることは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。この装置は、熟練していない者にも簡単かつ電気的に安全に設置して操作できるように構成されている。
【0059】
モニター装置1を設置するには、熟練していない作業者は単にコントローラーモジュール2を適切な場所に位置するだけでよく、フローイングサンプル40の近傍に取り付け、ケーブル30のコネクター28をコントローラーモジュール2の接続口26に繋げることによりプローブモジュール3をコントローラーモジュール2に繋ぎ、フローイングサンプル40の中に電極38が完全に浸かるようにプローブモジュール3をフローイングサンプル40に接触させてもよい。モニター装置1は好ましくは電池式なので、一旦電池が取り付けられれば、装置は常に作動中である。
【0060】
装置の取り付け全体は単純であり、作業者は本発明のモニター装置1を作動させるために、プログラミング、ボタンの操作、作業手順、キャリブレーション、または、補助電源を繋げるなどを更に行う必要がない。更に、モニター装置1は電池式なので、熟練していない作業者が継続的に装置を点けたり消したりしなくてよく、設置および作動の単純性を更に向上させる。
【0061】
設置および作動が簡単なので、本発明は、作業者によりモニターされる工業プロセスの方式を大幅に単純化する。このような単純さは、複雑で設置および作動が厄介な現在入手可能なモニター装置と比べた利点を提供する。
【0062】
作動に際し、本発明のモニター装置1は、種々の工業プロセスをモニターするために用いることができる。モニター装置1は、それらに限定はされないが、腐食、導電性、温度、局部腐食現象、孔が開く傾向、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを含む工程等のモニターに用いることができる。本発明のモニター装置1は、工業プロセス中に発生する腐食のモニターに用いられることが好ましい。本発明のモニター装置1は、冷却水工業処理システムの腐食モニターに用いられることがより好ましい。
【0063】
本発明のその他の態様においては、腐食度合いを測定する方法が提供される。その方法は、コントローラーモジュール2と、前記コントローラーモジュール2と交信可能なプローブモジュール3と、前記コントローラーモジュールに対しプローブモジュールを識別可能なレジスターモジュールと、を有するモニター装置1等の腐食モニター装置を提供する工程を有する。
【0064】
プローブモジュール3は、プローブ電極38が完全に溶液に浸かるように試料溶液40中に位置される。そして、プローブモジュール3においては、レジスターモジュール36はコントローラーモジュール2を介して電流により帯電される。そして、帯電されたレジスターモジュールの抵抗値に基づいてコントローラーモジュール2によりプローブモジュール3の識別がされる。最後に、プローブモジュール3が識別された後、公知の公式に基づいて腐食度合いがコントローラーモジュール2により測定される。
【0065】
この方法の好ましい1態様においては、本発明のモニター装置1は、電線24を介してサーキットボード8に繋がり、マイクロコントローラー16およびコンダクター対20、22に分配される電源14を介して電流を供給する。それにより、電流はコンダクター対20を介してプローブ電極38へ流れ、試料溶液40への連続なサーキットを形成する。
【0066】
マイクロコントローラー16は、レジスターモジュール36の抵抗値またはインピーダンスに基づいてプローブ電極38の冶金を判断することができる。一旦プローブ電極38が識別されてしまえば、資料溶液40中の電極の腐食度合いは、よく知られた直線偏光抵抗式を用いて割り出される。
【0067】
腐食金属の直線偏光抵抗は、電極の腐食ポテンシャルにおける、電流密度に対するポテンシャルの傾きであり、腐食電流や腐食度合いに反比例する。腐食度合いは、シンプルな係数を用いて、直線偏光抵抗の測定値から計算することができる。
【0068】
更に、溶液抵抗、つまり、プローブ電極38間の試料40の電気抵抗も明らかにされなければならない。多くの場合、それは測定された全抵抗の大部分を占め、腐食度合いに関する正確な直線偏光抵抗値を得るために、差し引く必要がある。溶液抵抗は、冶金とは係わりなく、試料の構成物及ぶ温度によって異なる。
【0069】
より定量的には、水性試料中の電極と同等なサーキットは、平行に繋がれたレジスターおよびキャパシターである。抵抗は、ダブルレイヤーと呼ばれる金属と液体との接触面の特性による偏光抵抗RP、および、キャパシターCPである。
【0070】
例えば、プローブ電極38対は、試料溶液40の溶液抵抗RSと直列に繋がれた2つのRPCPエレメントにより表すことができる。従って、全直流抵抗Rtotは、Rtot=Rs+2Rpの式で表すことができる。
【0071】
2つの抵抗は、次に本発明のモニター装置1により直接測定される。それらの抵抗はRtotおよびRSであり、それらの差からRPが得られる。腐食度合いは、mpy=k/RPの式から計算され、mpyはミル/年(mils per year)であり、kは技術的に知られているプローブ電極38の冶金固有の比例定数である。
【0072】
RtotおよびRSを知るには、2つのプローブ電極38逆配置(inverting configuration)のOPアンプのフィードバックループに挿入される。プローブ電極38の1つは電源14の接地電位に維持され、他のプローブ電極38は、そのプローブ電極の通る電流が、OPアンプの入力ノード(input node)に注入されたものと大きさが同じになるようにOPアンプの出力により駆動される。入力電力iと出力電圧vを知ることにより、抵抗はR=v/iで計算される。
【0073】
従って、腐食度合いを計測するには、全抵抗Rtotを計測するために直流電流idcがプローブ電極38に加えられる。両方のプローブ電極38のCPが充電されると、出力電圧はRtot×idcの値に近づく。プローブ電極38の分極を防止するために、帯電電圧は25mV以内に維持され、両極のステップが用いられる。プローブ電極38に小さな試験電流を送ることにより、次にRtotを推測する。結果の電圧変更およびインピーダンスはマイクロコントローラー16によりモニターされる。その結果に基づいて、25mVに適正な電流が算出される。
【0074】
次に、プローブ電極38にV0の電圧をもたらすゼロ電流を加え、その後に電流idcを加える。それは約+25mV(V1)の変化をもたらす。次に、−25mV(V2)の変化をもたらす電流が加えられ、その後V3をもたらす他のゼロ電流ステップを行う。このような順番で電流を加えることにより、Rtotは4つのデータからRtot=(2V1−V0+V3−2V2)/4idcの式を用いて計算することができる。
【0075】
+/−40mVの変化をさせるために、1.3kHzの方形波の十分な電流増幅を加えることによる同様の手法がRSを見極めるために用いられる。これにより、ダブルレイヤーキャパシタンスは、両方のプローブ電極38をショートさせるわずかなインピーダンスを効果的に加える。従って、増幅電圧変化の最大振幅はRS×ipkになる。RS=V/ipk。一旦RSが計測されると、それはRtotおよびRPから引かれて、腐食度合いが計算される。RPは、RP=1/2(Rtot−RS)として見い出され、腐食度合い=k/RPである。
【0076】
本発明のモニター装置1の腐食測定機能は多くのオペレーションから成ることは、この技術に精通する者によって高く評価されるであろう。例えば、モニター装置1は、最初に電源14の電池の読みを受け取り、マイクロコントローラー16を介してアナログ電源を点け、プローブ電極をサーキットに繋げ、上記のように腐食測定を行う。
【0077】
従って、この方法は、熟練していない作業者が追加のキャリブレーション、プログラミング、およびモニター工程を行うことなく腐食度合いを計算するので、本発明の方法は熟練していない作業者のための簡略化された腐食度合いを計測する方式を提供する。これらの全ての工程は、この方法に用いられる統一されたモニター装置によりなされる。
【0078】
本発明の更なる態様においては、腐食モニターシステムが提供される。前記腐食モニターシステムは、図1に見られるように、コントローラーモジュール2と、少なくとも1つの冶金プローブ電極38を有し前記コントローラーモジュール2と交信可能なプローブモジュール3と、前記コントローラーモジュール2と交信可能な抵抗値を有するレジスターモジュールと、を有する腐食モニターシステムにおいて、前記コントローラーモジュール2に対して、前記抵抗値が前記プローブ電極38の冶金の種類を識別する。
【0079】
このシステムは、コントローラーモジュール2と交信可能な表示装置12をさらに有してもよい。さらに、このシステムのコントローラーモジュール2は、腐食度合いを計測し、腐食度合いデータを保存することができる。
【0080】
このシステムも、コントローラーモジュール2を介してデスクトップや携帯用のコンピューター化された装置と交信可能である。システムは、電池式であり、携帯可能であることが好ましい。
【0081】
本発明のシステムは、低価格であり、設置および作動が容易であり、かつ、保存されたデータだけでなく、リアルタイムのデータを供給する種々のコンピューター化された装置と繋げることができる単動装置を工業プロセス消費者に提供する。また、本発明のモニター装置1のようなシステムは低価格な材料からできており、小型であるので、使われていたシステム全体を大きな費用を伴うことなく廃棄できる。従来のモニター装置やシステムにはこのような廃棄性はない。
【0082】
従って、本発明の装置、方法、およびシステムは、現在入手可能なモニター装置よりも正確な、簡略化された腐食度合いを測定する方式を提供する。また、本発明の装置、方法、および、システムは、従来技術の装置においては達成できなかった、小型、携帯可能、電池式、オンライン、廃棄可能、および、低価格な方法で提供する。
【0083】
ここに説明されている好ましい態様への種々の変更や改良は、この技術に精通する者には明白であることを理解されなければならない。そのような変更や改良は本発明の精神および範囲を逸脱することなく、それの意図した利点を損なうことなくなされうる。従って、そのような変更や改良は、添付された請求の範囲に含まれることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の装置の1実施態様を例証する透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラーモジュールと;
前記コントローラーモジュールと交信可能なプローブモジュールと;
前記コントローラーモジュールと交信可能なレジスターモジュール;とを有する装置において、前記レジスターモジュールが、前記コントローラーモジュールに対して前記プローブモジュールの種類を識別可能な装置。
【請求項2】
前記プローブモジュールが少なくとも2つの冶金プローブ電極を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レジスターモジュールが、前記コントローラーモジュールに対して前記プローブ電極冶金の種類を識別する抵抗値を有することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が更に、前記コントローラーモジュールと交信可能な表示装置を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が携帯可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が電池式であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が腐食モニター装置であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラーモジュールが更に、腐食度合いを測定可能なマイクロコントローラーを有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記マイクロコントローラーが、腐食度合いのデータの供給、および、保存可能であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラーモジュールが、デスクトップや携帯可能なコンピューター化された装置と交信可能であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
コントローラーモジュールと;
少なくとも1つの冶金プローブ電極を有し前記コントローラーモジュールと交信可能なプローブモジュールと;
前記コントローラーモジュールと交信可能な抵抗値を有するレジスターモジュールと;を有する腐食モニターシステムにおいて、前記コントローラーモジュールに対して、前記抵抗値が前記プローブ電極を構成する材料の種類を識別することを特徴とする腐食モニターシステム。
【請求項12】
前記システムが更に、前記コントローラーモジュールと交信可能な表示装置を有することを特徴とする請求項11に記載の腐食モニターシステム。
【請求項13】
前記コントローラーモジュールが、腐食度合いの測定、および、腐食度合いのデータの保存が可能であることを特徴とする請求項11に記載の腐食モニターシステム。
【請求項14】
前記コントローラーモジュールが、デスクトップや携帯可能なコンピューター化された装置と交信可能であることを特徴とする請求項13に記載の腐食モニターシステム。
【請求項15】
前記システムが携帯可能であることを特徴とする請求項11に記載の腐食モニターシステム。
【請求項16】
前記システムが電池式であることを特徴とする請求項11に記載の腐食モニターシステム。
【請求項17】
コントローラーモジュールと、前記コントローラーモジュールと交信可能なプローブモジュールと、前記コントローラーモジュールと交信可能なレジスターモジュールと、を有する腐食モニター装置を提供し;
前記プローブモジュールを溶液内に設置し;
前記コントローラーモジュールを介して電流により前記レジスターモジュールを帯電させ;
帯電された前記レジスターモジュールの抵抗値に基づいて、前記コントローラーモジュールにより前記プローブモジュールの種類を識別し;
前記プローブモジュールが識別された後に腐食度合いを前記コントローラーモジュールにより測定する;
工程を有する腐食度合いを測定する方法。
【請求項18】
電極と;
前記電極を識別する抵抗値を有するレジスターと;
を有するプローブ装置。
【請求項19】
前記電極が、銅、ニッケル、銅とニッケルの合金、スチール、アドミラルティー黄銅、それらの誘導体、および、それらの化合物からなる群から選択された材料で構成されていることを特徴とする請求項18に記載のプローブ装置。
【請求項20】
前記装置が携帯可能であることを特徴とする請求項18に記載のプローブ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−180727(P2008−180727A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54693(P2008−54693)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【分割の表示】特願2002−556239(P2002−556239)の分割
【原出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(502383410)ナルコ カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】NALCO COMPANY
【住所又は居所原語表記】1601 W.Diehl Road,Naperville,IL 60563−1198,United States of America
【Fターム(参考)】