説明

低価格、低透過性多層管状物

【課題】低価格、低透過性多層管状物を提供する。
【解決手段】第1の層(12)と第2の層(14)と、第1の層(12)と第2の層(14)との間に挿入された中間層(16)とにより構成される多層管状物(10)である。第1の層(12)は、ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこの種の物質からなる混合物のような溶融処理可能な第1の熱可塑性物質を含んでいる。第2の層(14)は、第1の層に使用される溶融処理可能な熱可塑性物質とは化学的に異なる溶融処理可能な第2の熱可塑性物質を含んでいる。中間層(16)は、本質的に溶融処理可能な第1の熱可塑性物質と第2の熱可塑性物質を含む固化溶融処理可能な熱可塑性液で形成され、第1の熱可塑性物質と第2の熱可塑性物質が本質的に不均質状態に互いに相対的に分布され別々に認識できる要素として存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内部に流体を搬送するための管状物に関する。より詳細には、本発明は、有機化合物による透過に抵抗を示すポリマ管状物に関する。本発明は、また自動車内で使用するために適合された管状物に関する。より詳細には、本発明は、自動車の燃料管または蒸気回収管のような、炭化水素流体を伝送するために使用することができる多層管状物に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の流体処理状況において、耐久性のあるポリマ管状物が必要とされている。管を通って搬送される流体の特性および/または配備される管の置かれる外部環境に依存して、例えば炭化水素のような種々の有機化合物に対する低透過性を呈するポリマ管も必要である。
【0003】
ポリマ管が有利に使用できる1つの領域は、自動車内である。単一層燃料ラインおよびポリアミドのような合成材料の蒸気帰還ラインが、過去において要求され、使用されてきた。この種の材料を使用する燃料ラインは、一般的に少なくとも数メートルの長さを有している。一旦設置されたラインは、動作する間、収縮、伸張、使用中にさらされる圧力などによって物質的に変化しないことが重要である。
【0004】
管状物を透過するために炭化水素の放出に対して本質的に不浸透性となるように使用されるラインがますます重要になってきている。将来の米連邦政府およびアメリカ合衆国規則は、この種のラインを透過するために許容可能な炭化水素放出における制限を定着させることが予想される。例えば、種々の環境基準が自動車の総不活性炭化水素放出に対する最高基準を指示している。カリフォルニア州法典(California Code of Regulations)の第1の3編1976条に概説されているように、蒸発放出試験法によって算出される24時間周期当り2g/m基準またはそれ以下が、1991年9月26日に提案された修正を求められている。所望の自動車総放出基準を達成するために、24時間周期当り0.5g/m以下の燃料ラインおよび蒸気ラインのための炭化水素透過基準が、必要とされている。最終的に、燃料ラインは、本質的に不浸透性として使用され、酸化剤のような燃料および表面活性剤だけでなく、エタノールおよびメタノールのような添加物内で現れる腐食物質と相互作用することも重要な点である。
【0005】
種々のタイプの管状物がこれらの関連事項に対して提示されてきている。概して、これに関して最も成功しているのは、共有押出し成型多層管状物である。成功している管状物構造は、一般的に外部環境に対して耐性のある物質により構成された比較的厚い外層を有している。最内側層はより薄く、また、外層に対して有機物質の放散をブロックする能力のあるものとして選定された材料により構成される。一般的にブロックされた材料は、脂肪性炭化水素、アルコールおよび燃料混合物内にある他の物質のような有機化合物である。内層として厳選される材料は、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン11およびナイロン12のようなポリアミドである。
【0006】
管を通って搬送される流体内のアルコールおよび芳香族物質は、脂肪性混合物とは異なる率で管壁を通って放散する。管状物内の流体の成分内で発生する変化は、管状物内の物質の溶融閾値を変化させ、従って例えば、またナイロン11およびナイロン12のような管状物材料のモノマおよびオリゴマを液体に溶解する。燃料ポンプから取り出すことのできる銅イオンの存在が、溶解したモノマおよびオリゴマの結晶化の結晶化沈殿を加速する。結晶化沈殿がフィルタおよび燃料インジェクタをブロックするとともに、燃料ポンプまたはキャリブレータフロートの進行を制限するように吸収し、さらに燃料ポンプの限界制御面上に集積する。
【0007】
ブラウンホーファによる米国特許第5,076,329号において、5層燃料ラインが提案されており、このラインは、ナイロン11またはナイロン12で形成された厚い外層と、ナイロン6の厚い中間層と、ポリエチレンまたはポリプロピレンで形成された中間層と外層間に接着された薄い中間接着層で構成されている。管の内部は、両者間で入れ換えられたエチレン−ビニルアルコールコポリマで形成された薄い中間溶剤ブロッキング層を伴うナイロン6の内層である。内部流体含有面内にナイロン6を使用することは、ナイロン11またはナイロン12で発生するモノマおよびオリゴマ溶解の少なくとも一部を無くすように設計されている。
【0008】
ブラウンホーファによる米国特許第5,038,833号において、3層燃料ラインが提案され、このラインにおいて、管は、ナイロン11またはナイロン12の共有押出し成型外層と、エチレン−ビニルアルコールコポリマで形成された中間アルコールバリア壁と、ナイロン11またはナイロン12のようなポリアミドで形成された内部水ブロッキング壁を有して形成されている。ドイツ特許第4006870号において、燃料ラインが提案されており、中間溶剤バリア層がポリアミドエラストマのブレンドと別々にまたは組み合わせて使用された不変移ナイロン6.6で形成されている。内層は、またポリアミド、好ましくは変移または不変移ナイロン6で構成される。外層は、ナイロン6またはナイロン12で構成される。
【0009】
アルコール媒体に対して耐性を示すように設計された別の管状物は、英国特許出願公開第2204376号に開示されており、この製造された管は、アルコール抵抗性ポリオレフィン、プロピレンのコポリマおよびマレイン酸で共有押出し成型されたナイロン6または6.6および/またはナイロン11または12のようなポリアミドからなる厚い外層を有している。
【0010】
これまで、異なるポリマ層間で充分な積層特性を得ることは極めて困難であった。従って、これまでに提案された多層管状物構造は、全て、その多層のほとんどまたは全てにポリアミドをベースとした物質が使用されている。一般的に使用されている物質は、ポリアミドに対して高い親和性を示すポリオレフィンをベースとしたポリマである。多数の有効溶剤抵抗性化学剤が存在するが、この分野におけるその使用は、制限された伸張特性、強度およびナイロン11および12との適合性のために制限される。
【0011】
従って、有機物質の浸透に耐え、これを回避するか低下でき、自動車に使用できる管状物材料に改良を提供することが望ましい。さらに、その中を搬送される液体の要素と本質的に不活性である管状物材料を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、炭化水素を包含する流体を搬送するための多層管状物に関する。本発明は、自動車システムに使用して、燃料ライン、蒸気帰還ラインまたは蒸気改修管に見られるような流体を搬送することができる。本発明の多層管状物は、炭化水素を含有する流体に対する露呈を長くすることができる内面を有する内層を備える。この内層は、本質的に押出し成型可能な溶融処理可能な熱可塑性物質からなる。本発明は、別の熱可塑性外層と少なくとも1つの中間層をさらに備える。中間層は、固化熱可塑性溶液または固化懸濁液により構成される。その少なくとも1つの熱可塑性化合物が第2の分離熱可塑性物質からなるマトリクス内に連続し、かつ、分離して分布された要素として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の他の適用例は、本発明を実行することを意図した最良の形態の以下の説明を添付図面を参照して読んだときに、当業者には明白となろう。
この説明は、添付図面を参照して行なわれる。複数の図において同じ符号は、同じ部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、多層管10であって、内層または第1の層14、少なくとも1つの中間層または第2の層16、および少なくとも1つの外層または第3層12を含んでいる。本発明の管状物10は、好ましくは、適切な共有押出し成型処理で任意の熱可塑性物質を共有押出し成型によって製造する。管状物10は、適切な長さに共有押出し成型するか、または連続長さに共有押出し成型して、続く任意の適用に合うように切断する。本発明の管状物10は、典型的に50mmまでの外径を有している。しかし、燃料ラインおよび蒸気改修システムのような適用例において、63.5mm(2.5インチ)までの外径が好ましい。本発明の管状物は、燃料管および蒸気管のような自動車への適用が特に有効である。
【0015】
管状物10は、所望の適切な壁厚を有している。しかし、ここで説明するこのような自動車システムにおいて、0.5mmと2.5mm間の壁厚が一般的に使用されるが、約0.8mmないし約1.5mmの壁厚が好ましく、さらに約0.8mmと約1.25mmの間の壁厚が最も好ましい。本発明の範囲内では、種々の熱可塑性物質からなる複数の上層を有する管状材料を調製できるが、本発明の管状物10は、一般的に接着層を含めて最大5層である。好ましい実施形態において、管状物10は、3、4、または5層の共有押出し成型層を有している。
【0016】
本発明の管状物10は、自動車に使用するような種々の流体処理適用例への使用に適している材料であって、外層12を備える。この外層12は、外部環境と非反応であり、種々の衝撃、振動疲労、温度変化、通常の操作状況で露呈される種々の腐食性または減成化合物に対する露呈に耐えることができる。本発明に使用するのに適した物質は、特定する管状物適用例に関連する環境の苛酷さに耐えうる、任意の溶融処理加工可能な押出し成型熱可塑性物質からなる。理想的には、熱可塑性物質は、紫外線劣化、熱の極端な変化およびガソリンおよびその添加物に対する露呈に対して抵抗性がある。ここで適切なのは、選択された物質は、塩化亜鉛に露呈されるような環境上の障害に対する抵抗と、エンジンオイルおよびブレーキ流体のような物質との接触による劣化に対する抵抗を呈する。
【0017】
自動車への適用において、外層12だけでなくこれに接着される内層が、約−40℃ないし約125℃の間の屋外作動温度範囲、好ましくは、−20℃ないし120℃の範囲での使用に適している。管状物10の種々の層は、互いに一体的に積層され、管状物の寿命を通して積層剥離に対して抵抗力がある。従って、形成された管状物10は、抗張力が25N/mmもあり、またブレーキの伸張値が少なくとも150%である。管状物10は、破裂強度が23℃で20バールである。本発明の多層管状物10は、ブレーキ流体、エンジンオイルおよびガソリン中に見られるような過酸化物に対する露呈に充分な抵抗性がある。多層管状物10は、約−40℃以下の温度で少なくとも2フット−ポンドの耐衝撃能力を有する。本発明に関して使用される自動車の管状物に対する衝撃抵抗を決定する方法は、SAEJ2260(1996年11月改定)、7.6条である。
【0018】
本発明の多層管状物10は、内部接触層14、外方向層12および内部接触層14と外方向層12間に挿入された中間層16を有している。これらの層12、14、16は、互いに対して半径方向に向けられている。図1に示したように、三つの層は、互いに接触している。別の構成として、付加的な層がこれらの積層された層間に挿入されることもある。多層管状部10が、積層された層の内側で半径方向および/または積層された層の外側で半径方向に付加的な層を含むことも、本発明の範囲内である。
【0019】
本発明の多層管状物10の基本的構造は、対向面に2つの熱可塑性層が接着された中間層を備える。2つのそれぞれの接着層の熱可塑性物質は、化学的に異なる熱可塑性物質からなる。ここで使用するように、用語「化学的に異なる物質」は、概して類似の溶融処理範囲内で溶融可能な2つ以上の溶融処理可能物質として定義される。ここで使用されるように、用語「概して類似の溶融処理範囲」は、2つの物質の成型を許容するのに使用される物体の溶融処理温度を効果的に包含する温度範囲を意味している。好ましくは、共有押出し処理において、本発明の範囲内にある化学的に異なる熱可塑性物質は、2つ以上の物質であって、溶融処理されたときに、種々の物質間に相当な混合または化学的相互作用を呈しない、すなわち、種々の物質が混合物を示すが、主要物質内の小さい物質の個別ローカル化領域を維持することである。好ましくは、化学的に異なる物質は、以前押出し成型溶融処理に対して実質上両立できないと考えられていた物質である。
【0020】
図1に示したように、多層管状物10は、外層12の内面に接着された内層14を有している。この外層12は、溶融処理可能押出し成型可能熱可塑性物質からなり、外部環境障害と管状物10の寿命の低下に対する適切な抵抗を示す。自動車への適用において、外層12に使用された物質は、一般的に紫外線劣化、熱による極度の変化、塩化亜鉛のような環境障害に対する露呈、さらにエンジンオイルおよびブレーキ流体との接触による劣化に対して抵抗性を呈する。
【0021】
前記外層12に使用される熱可塑性物質は、12炭素ブロックポリアミド、11炭素ブロックポリアミド、6炭素ブロックポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択されるのが好ましい。本発明に使用するのに適した熱可塑性エラストマには、SANTOPRENE、KRATONおよびSARLINKからなるグループの中の少なくとも1つを含んでいる。SANTOPRENE(登録商標)は、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,Missouri)のAES社(Advanced Elastmer Systems)から市販されている熱可塑性ゴムである。KRATON(登録商標)は、テキサス州ヒューストン(Houston,Texas)のシェル化学株式会社(Shell Chemical Co.)から市販されているスチレン−エチレン/ブタジエン−スチレンブロックコポリマにより構成される熱可塑性ゴムである。SARLINKは、マサチューセッツ州レミンスター(Leominster,Massachusetts)のノヴァコア化学(Novacor Chemicals)から市販されているオイル抵抗性熱可塑性物質である。
【0022】
外層14を構成する物質は、その無調整状態で存在するものもあれば、種々の可塑剤、難燃剤等で調整されたものもある。厳選された熱可塑性物質は、ブレーキにおける伸張値が少なくとも150%であり、また衝撃に対する耐久能力が約−40℃以下の温度において少なくとも2フット−ポンドである。
【0023】
前記内層に使用される熱可塑性物質は、外層に使用された熱可塑性物質とは化学的に異なる熱可塑性物質である。一般的に、厳選された物質は、管状物壁を通る管内部から周囲環境に搬送される流体の、芳香族化合物および/または脂肪族化合物の相当な浸透を阻止する方式で炭化水素バリアとして作用することのできる、溶融処理可能な熱可塑性物質である。
【0024】
好ましい実施形態において、第1の実施形態の内層14に使用される熱可塑性物質は、炭化水素バリアとして作用し、ガソリンの芳香族化合物および脂肪族化合物の管状物10の外層12への浸透、従って周囲環境への相当な浸透を阻止することができる。内層14のために適した熱可塑性物質は、管状物内を搬送されるガソリンまたは他の流体に対してこれらの抵抗性となることが理解できる。内層14に使用される物質のバリア特性が、管状物内部への浸透に対する抵抗性を提供することによりこのような状況を保証することも理解できる。厳選された好ましい物質は、必要とされる浸透抵抗特性を提供するとともに、外層12に使用された物質と化学的に異なる物質である。自動車への適用例において、厳選物質は、カリフォルニア州法典の第1の3編1976条、1991年9月26日補正に概説された方法によって決定されたように、24時間間隔当り0.5g/m以下の不活性炭化水素浸透率を伴う管状物構造を提供する物質である。
【0025】
ここで説明するように、内層14に使用された熱可塑性物質は、フッ素樹脂物質が好ましい。厳選されたフッ素樹脂物質は、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマおよびこれらの混合物、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、ポリクロロトリフルオロエチレンおよびビニリデンフッ化物およびクロロトリフルオロエタンおよびこれらの混合物の少なくとも1つから選択された適切なフッ素含有ポリマを伴うエチレンテトラフルオロエチレンの少なくとも1つを含むグループからのフッ素樹脂のグラフトコポリマのうち少なくとも1つを含むグループから選択されるのが好ましい。本発明の燃料および蒸気管状物実施形態において、フッ素樹脂物質は、好ましくは、少なくとも1つのポリビニリデンフッ化物、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマを含んでいる。
【0026】
好ましい実施形態において、燃料接点内層14の最小壁厚は、所望の浸透抵抗性を達成するのに充分であるのが好ましい。概して、内層14は、多層管状物10の総壁厚の約50%と約60%を備える外層12の厚みを伴う外層12よりも薄い。好ましくは、内壁14の厚みは、約0.01mmないし約0.2mmであり、より好ましくは、約0.05mmないし0.2mmの厚みであり、最も好ましくは、約0.05mmないし約0.17mmの厚みである。
【0027】
内層のために厳選されたポリビニデンフッ化物(PVDF)物質は、クロロジフルオロエタンの熱的脱ハロゲン化から誘導されたポリビニリデンフッ素樹脂である。適切な物質は、種々の商標名で種々の企業から市販されている。
厳選されたテトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)は、溶融温度が270℃ないし約560℃の間であり、また比重が1.7である。ここで使用されたエチレンテトラフルオロエチレンコポリマは、テトラフルオロエチレンによるエチレンの共重合化から誘導されるのが好ましい。好ましいポリマ化物質は、独占物質の少量を伴う総ポリマ重量の約40%ないし約70%のエチレン誘導含有量と、約30%ないし約60%のテトラフルオロエチレン含有量を有している。適切な物質は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)のE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I duPont de Nemours,Co.)から商標名「TEFZEL」で市販されている。
【0028】
ポリクロロトリフルオロエチレンポリマ物質およびポリビニルフッ化物ポリマ物質は、種々の企業から市販されている。中間層16は、外層12を内層14に接着して両者間に固定積層接着を形成する。中間層16は、一般的に内層と外層間の接着を促進および/またはこれを容易にするのに充分な厚さを有しており、また任意に浸透抵抗に寄与する。中間層は、内層14の厚さ以下であるのが好ましい。中間接着層16は、内層14と外層12間に本質的に均一接着を可能にするのに充分な厚みであるのが好ましい。概して、中間接着層は、外層よりも薄く、また総壁厚の約10%ないし50%で構成することができる。第1の実施形態において、接着層16は、約0.01mmないし約0.25mmであり、厚さは、約0.05mmないし約0.20mmが好ましい。
【0029】
好ましい実施形態において、図1に示すように、中間層16は、外層12と内層14間に挿入される。中間層16は、それぞれ内層14と外層12がこの中間層16の関連面と各々接触する2つの対向面を有している。
これまでの説明は、管状物10内を搬送される流体に近接するか、これと接触する内側バリア層の位置付けに向けられていたが、管状物10の置かれる特定使用に依存して熱可塑性層の半径方向順が反転されるものは、この特定発明の範囲内にある。従って、適切な状況において、バリア層は、外方向に向けられ外部から内部への浸透を最少にする。
【0030】
本発明において、中間層は、2つの化学的に異なる熱可塑性層間に挿入され、1つの層は、ポリアミドと熱可塑性エラストマの少なくとも1つを含むグループから選択された熱可塑性物質からなり、またもう1つの層は、これまでに概説したように熱可塑性バリア物質からなる。
【0031】
中間層16は、溶融処理可能な熱可塑性物質からなり、これに内層14と外層12が接着される。本発明において、中間層16に使用される熱可塑性物質は、
a.約10重量%ないし約90重量%の、外層12に使用された少なくとも1つの熱可塑性物質と、
b.約10重量%ないし約90重量%の、内層14に使用された少なくとも1つの熱可塑性物質と、
を備える。
【0032】
ここで使用するように、用語「アロイ」は、厳選された2つ以上の熱可塑性物質を含む固化流体として定義され、その少なくとも1つの熱可塑性物質が少なくとも1つの他の熱可塑性物質内に分散されて分散マトリクスを形成している。固化流体は、分散マトリクスが配備された固化溶液の形態か、または分散マトリクスが配備された固化懸濁液の形態をなす。いかなる理論にも縛られずに、それぞれの熱可塑性成分の化学的非類似性が第2の成分に対して、また第2の成分の存在に対して1つの成分の単独、かつ、それ自体のはっきりした位置付けに寄与するものと思われる。このような位置付けは、主要成分内の少ない成分のはっきりした同一のものと確認できる蓄積を維持するようにして発生する。このような限定できる濃度は、均一混合または適用できる化学的接着の欠落を示す方式で存在する。
【0033】
好ましい実施形態において、中間層16の熱可塑性アロイは、ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択された、溶融処理可能な熱可塑性物質の約10重量%ないし約90重量%、およびポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択された、前述した溶融処理可能な熱可塑性物質とは、化学的に非類似である溶融処理可能な熱可塑性物質の約10重量%ないし約90重量%を含む。ここで使用される適切な化学的非類似物質は、熱可塑性物質が、ポリアミドおよび熱可塑性エラストマの少なくとも1つを含んでいるグループから選択された熱可塑性物質と化学的混合または接着に対する抵抗性を示す、所有特性または諸特性を有している。この物質は、主要化合物物質内で個別の局部化物体を形成するか、または物質内でこのような局部化物体の個別の形成に寄与する。
【0034】
ポリアミドおよび/または熱可塑性エラストマと組み合わせて使用される溶融処理可能な熱可塑性物質は、ハロゲン化溶融処理可能な熱可塑性物質が好ましく、より詳細には、基本的にこれに関連する少なくとも1つのハロゲンを有する溶融処理可能な熱可塑性物質である。
【0035】
ハロゲン化成分は、塩素およびフッ素の少なくとも1つを含有しているのが好ましい。好ましい実施形態において、ハロゲン化熱可塑性物質は、フッ素樹脂である。厳選されたフッ素樹脂には、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマ、およびポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、ポリクロロトリフルオロエチレンからなるグループから選択されたフッ素樹脂のグラフトコポリマおよび適切なフッ素含有ポリマを伴うエチレンテトラフルオロエチレンのうち少なくとも1つが含まれる。適切なフッ素含有ポリマは、ビニリデンフッ化物およびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも1つであるのが好ましい。厳選されたフッ素樹脂物質は、好ましくは、ポリビニリデンフッ化物およびエチレンテトラフルオロエチレンの少なくとも1つである。
【0036】
ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択された熱可塑性物質は、外層12に使用された熱可塑性物質と類似であるか、これと両立可能な物質が好ましい。この熱可塑性物質は、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド11、ポリアミド12からなるグループの少なくとも1つ、およびポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド11の少なくとも1つから選択されたポリアミド、および最も好ましくは、ポリアミド12を伴うKRATON、SARLINK、SANTOPRENEおよびVICHEMが好ましい。
【0037】
好ましくは、中間層16の熱可塑性物質は、フッ素樹脂の約60重量%ないし約80重量%、およびポリアミドの約40重量%ないし約20重量%、フッ素樹脂の約65重量%ないし約75重量%、および最も好ましくは、ポリアミドの約35重量%ないし約25重量%を含む。
【0038】
中間層16の熱可塑性物質は、溶融状態に処理され、フッ素樹脂とポリアミドを融合する。融合物質は、多層管状物10の他の層を形成するのに使用される物質と共に共有押出し成型される。中間層16に使用される熱可塑性物質は、隣接する層に使用される熱可塑性物質と親和力を呈し、また管状物の有効寿命のための接着を可能にし、促進する。
【0039】
いかなる理論にも縛られずに、部分的には親和力は、固化熱可塑性溶液内で証明される僅かな不均質分散現象のためであると考えられる。本発明の管状物を製造する方法における熱可塑性融合物の溶融処理は、物質を構成する共有押出し成型層に近接する少量成分のより高い濃度を伴う共有押出し層の厚みに亘る分散勾配を含んでいると思われる。これとは逆に、少量成分のより低い濃度域は、他の対向共有押出し成型層に近接して配備される。
【0040】
全く意外なことに、固化溶液は、その主要成分内で一般的に固有である相当な性能特性を維持し、一方で厳選された化学的に異なる熱可塑性物質に対するポリマ物質の親和性が増大することがわかった。
本発明の多層管状物10は、大まかに説明すると、ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択された溶融処理可能な熱可塑性物質から本質的になる第1の層と、第1の層に使用された物質とは化学的に異なる溶融処理可能な熱可塑性物質から本質的になる第2の層と、第1の層の熱可塑性物質と第2の層の熱可塑性物質から本質的になる溶融処理可能な熱可塑性アロイ物質から本質的になる第1のおよび第2の層との中間の層を備え、アロイがその中に配備された第2の熱可塑性物質を伴う第1の層の少なくとも1つの熱可塑性物質の固化熱可塑性溶液である。好ましくは、第2の熱可塑性物質は、第1の層の少なくとも1つの熱可塑性物質とは化学的に異なる。
【0041】
第1の、第2のおよび中間層のラジアル順は、管状物機能に適し、順応するものである。図1に示したように第1の実施形態は、外方向に積層されるポリアミド/TPO層を有する管状物10を示しており、中間層がこれら両者間に挿入される逆の順となる層順も本発明の範囲内にある。
【0042】
本発明による管状物10の形態の変形例を図2に示す。この形態において、5層管状物が提示され、ここでは、半径方向最内側層14が前述したタイプのポリアミド/TPO熱可塑性物質からなる。図2に示したように、この物質は、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6.6およびポリアミド6からなるグループから選択されるのが好ましい。
【0043】
第2の実施形態の内層14に使用される熱可塑性物質は、調整されていてもよく、または無調整でもよい。調整されていれば、この物質は、当業者に容易に知られているように種々の可塑剤を含むことが予想される。好ましい実施形態において、ポリアミドは、17可塑剤成分重量%までを含み、約1%ないし約13%の量が好ましい。
【0044】
第2の実施形態の内層14は、強度および化学的抵抗性を多層管状物に持たせるのに充分な厚みを有する。詳しく説明すると、内層14は、脂肪族および芳香族炭化水素分子の浸透を邪魔するとともに、これらの分子の厚い外層への移動を妨げるのに充分な厚さである。本発明において、内層は、厚い外層12の壁厚よりも薄い。好ましい実施形態において、内層は、外層の壁厚の約10%ないし25%の壁厚を有している。好ましくは、約0.05mmないし約0.4mm未満が好ましく、壁厚は、約0.1mmないし約0.3mmが好ましい。
【0045】
第2の実施形態において、管状物10は、内層14の半径方向外方に配備されたバリア層20をさらに含んでいる。このバリア層20は、内層14の構造および成分とは化学的に異なるのが好ましい。バリア層20は、燃料抵抗、浸透抵抗、化学的抵抗性熱可塑性物質であって、押出し成型の通常範囲で溶融処理可能である。バリア層20を備える熱可塑性物質は、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマの少なくとも1つ、ビニリデンフッ化物およびクロロトリフルオロエチレンのコポリマのようなフッ素含有ポリマを伴う先行物質のグラフトコポリマのグループから選択されるフッ素樹脂物質が好ましい。フッ素樹脂物質は、ポリビニリデンフッ化物、またはエチレンテトラフルオロエチレンコポリマの少なくとも1つを含んでいるのが好ましい。
【0046】
中間層18が、内層14とバリア層20の間に挿入されるとともに、これらと共に共有押出し成型され、またそれ自体と2つのそれぞれの層間に適切な均一接合を達成することが可能である。中間層18は、図1に関してこれまでに説明した熱可塑性アロイからなり、またそれぞれ、内層14とバリア層20間に本質的に安定した接続を可能にするのに充分な厚さである。概して、中間接着層18は、他のそれよりも外側にある層よりも薄くすることができ、また総壁厚の約10%ないし約50%の間で構成することができる。図2に示したように、中間接着層18の厚さは、約0.01mmないし0.25mmであり、約0.05mmないし約0.20mmの厚みが好ましい。
【0047】
図2の5層形態も、好ましくは、ポリアミドおよび熱可塑性エラストマの少なくとも1つを含む溶融処理可能な熱可塑性物質からなる外方向に向けられた外層12を含んでいる。好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド11およびポリアミド12の少なくとも1つである。好ましい熱可塑性エラストマは、KRATON、SANTOPRENEおよびSARLINKのような物質のうち少なくとも1つが好ましい。内層14および外層12は、必要によりまたは所望に応じて同じでもよく、または異なってもよい。好ましい実施形態において、ナイロン6のようなポリアミドが使用される。
【0048】
外層12とバリア層20との間に、付加的な中間層22が挿入される。この中間層22は、ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択された熱可塑性物質を含む溶融処理可能アロイからなる。付加的中間層22に使用される熱可塑性アロイは、これまでに定義した物質からなることが理解できる。付加的中間層に使用される熱可塑性アロイは、中間層18に使用されるものと同じとすることができ、あるいは本発明の定義内で構成上変えることもできる。より詳しく説明すると、外層12の機能的必要条件および構成上の詳細を満たすようにすることができる。
【0049】
図3に示すように、内層または第1の層14は、中間層18によってバリア層、即ち、第2の層20に接続されている。このバリア層20は、浸透抵抗性、化学的抵抗性、燃料抵抗性、非ポリアミド熱可塑性物質が好ましく、これは、押出し成型の通常範囲で、すなわち、約175℃ないし約250℃で溶融処理可能である。好ましくは、バリア層14を備える熱可塑性物質は、フッ素樹脂であって、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、エチレンテトラフルオロエチレン(ETPE)およびこれらの混合物からなるグループから選択される。この物質は、ビニリデンフッ化物およびクロロトリフルオロエチレンのコポリマのようなフッ化物含有ポリマとともに先行物質のグラフトコポリマとすることもできる。使用される適切な物質は、約60重量%のポリビニリデンフッ化物ないし約80重量%のポリビニリデンフッ化物を含んでいる。このように形成された物質は、約200℃ないし約220℃の溶融点と、約210℃と約230℃との間のモールド温度を有している。
【0050】
図3に示した第3実施形態において、内層14は、熱の極度変化に抵抗を示し、エンジンオイルおよびブレーキ流体に見られるような化学成分へ露呈される溶融処理可能押出し成型可能熱可塑性物質を備える。厳選された熱可塑性物質は、好ましくは、12炭素ブロックポリアミド、11炭素ポリアミド、6炭素ブロックポリアミド、6.6炭素ブロックポリアミドおよび熱可塑性エラストマの少なくとも1つを含むグループの熱可塑性物質である。第3実施形態の内層のための好ましい物質は、ナイロン6のような6炭素ブロックポリアミドである。
【0051】
2つの異なる物質の有効な積層を達成するために、第3実施形態の管状物10は、内層14とバリア層20間に挿入された少なくとも1つの中間層18をも含んでいる。この中間層18は、内層14とバリア層20と共に共有押出し成型され、かつ、この中間層と2つの各層間の適切な均質結合を達成することが可能である。中間層18に使用される熱可塑性物質は、これまでに開示したような熱可塑性アロイである。
【0052】
図3に示した構造の外層12は、概してバリア層20の内層14よりも厚みが厚くなっている。この外層12は、多層管状物10の総壁厚の約50%ないし約60%である。外層12は、極度の熱変化、紫外線劣化、塩化亜鉛に対する露呈、およびエンジンオイルおよびブレーキ流体に対する露呈を含む外部環境に耐え得る物質からなる。第3実施形態において、外層12に好ましい物質は、ナイロン12のような12炭素ブロックポリアミドである。図3に示すように、バリア層は、外層12に使用されたナイロン12物質と親和性を提供するように特に形成され、このバリア層とナイロン12層との直接接着を容易にする溶融処理可能フルオロポリマである。適切な物質は、種々の製造者から市販されている。1つのこの種の物質は、熱可塑性ポリビニリデン2フッ化物(PVDF)である。厳選された物質は、これに対して化学的に融合された適切な接着増進グループを有している。適切なナイロン12物質は、種々の製造者から市販されている。適切に使用可能な他の物質には、1−プロペン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1,1−ジフルオロエタンポリマからなる物質のような物質が含まれる。その溶融点は、155℃ないし160℃である。その比重は、23℃で1.77ないし1.79である。半透明で無臭である。
【0053】
ある観点において、この種の物質は、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフッ化物コポリマ、CAS No.9011−17−0として存在している。溶融点は、約155℃ないし160℃である。これは、水に溶解しない。無臭の半透明ペレットを呈している。これは、300℃以下で安定している。
【0054】
使用できる他の物質には、20ないし40%のビニリデンフッ化物−クロロトリフルオロエチレンコポリマ、20ないし40%のポリビニリデンフッ化物と20ないし40%のナイロン12を含むような、ナイロン−ビニリデンフッ化物−クロロトリフルオロエチレンコポリマが含まれる。ナイロン、ビニリデンフッ化物、クロロトリフルオロエチレンのそれぞれ40/30/30からなる成分において、物質は、23℃で1.45の比重、173℃の溶融点、220゜Fのモールド温度を有している。この物質は、400%以上のブレーキで伸度と400Kgf/cmの伸張力を有している。
【0055】
エチレンテトラフルオロエチレンフルオロポリマのような物質は、一般的にASTM方式DTA D3418によって決定される255℃ないし280℃のような融点を有している。この種の物質の比重は、ASTM方式 D792によって決定される1.70ないし1.72の間である。−65゜Fにおける物質の衝撃強度は、ASTM方式 D256によって決定されるように、2.0ft−lbs/inchないし3.5ft−lbs/inchであり、一般的に切り欠きアイゾッド衝撃強度と呼ばれている。ASTM方式 D2240によって決定される硬度デュローメータは、典型的にD70である。73゜Fにおける伸張度は、5,500psiないし7,000psiである。ブレーキにおける最大伸張度は、ASTM方式D638によって決定される等級によって一般的に150%ないし300%である。
【0056】
図3に示したように、バリア層20は、本発明の最終管状物10に対する炭化水素浸透率が24時間間隔で約0.5g/m未満を達成するのに適した厚みが維持される。バリア層20は、外層12の約10%ないし約20%の厚みを有しているのが好ましい。好ましくは、バリア層20の厚みは、約0.15mmないし約0.25mmであり、約0.18mmないし約0.22mmの厚みが好ましい。
【0057】
第1の実施形態において、中間層16は、内層14と外層12間で本質的に均一な接着を可能にするのに充分な厚さである。概して、中間接着層16は、他の2つの層よりも薄くすることができ、また多層管状物10の総壁厚の約10%ないし約20%の間で構成することができる。好ましい実施形態において、中間接着層16の厚さは、約0.01mmないし約0.2mmであり、約0.05mmないし約0.2mmの厚さが好ましく、また約0.05mmないし約0.15mmの厚さが最も好ましい。
【0058】
第2のおよび第3実施形態において、バリア層20と接着層18、22は、燃料の管状物10への浸透を阻止するのに必要とする最小厚みを維持することが好ましい。一般的に、接着層18、22は、他の層よりも薄くすることができ、また管状物10の総壁厚の約10%ないし約20%の間で構成することができる。好ましい実施形態において、中間接着層の厚さは、約0.01mmないし約0.2mmであり、約0.05mmないし約0.2mmの厚さが好ましく、また約0.05mmないし約0.15mmの厚さが最も好ましい。
【0059】
実施形態の各々において、外層12は、本発明の多層管状物10の適切な強度と耐久性を提供するのに充分な壁厚を有している。概して、自動車を包含する適用例において、外層12は、総壁厚の約50%ないし約70%を備える。一般的に、外層12は、約0.6mmないし約0.9mmの壁厚であり、約0.7mmないし約0.8mmの壁厚が好ましく、また約0.7mmないし約0.75mmの壁厚が最も好ましい。第3実施形態において、外層12のナイロン12は、約0.5mmないし約0.8mmの壁厚が好ましく、また約0.6mmないし約0.75mmの範囲が好ましい。これまでに説明したように、物質は、従来の共有押出し成型方法によって、任意の所望の連続する長さに押出し成型される。
【0060】
次に、種々の実例、上述した市販の化合物を示す。これらは、図示目的のための適切な化合物の例であることを理解すべきである。従って、他の適切な化合物が意図され、また本発明の範囲内にあることをさらに理解しなければならない。
ミズーリ州セントルイス(St.Louis,Missouri)のAES社(Advanced Elastmer Systems,L.P.)から市販されているSANTOPRENE(登録商標)は、熱可塑性ゴムFRグレードである。熱可塑性ゴムとは別に、アンチモニ3酸化物難燃剤も含み、また炭素ブロック、CAS No.1333−86−4を含めることもできる。SANTOPRENE(登録商標)熱可塑性ゴムは、強い酸化化学物質と反応し、また、425゜F以上の温度でアセチル樹脂とも反応し、アセチル樹脂の分解を生成するとともに、分解生成物としてホルムアルデヒドを生成する。ハロゲン化ポリマおよびフェノール樹脂は、処理温度でSANTOPRENE(登録商標)熱可塑性ゴムと接触されたときに、分解が加速される。SANTOPRENE(登録商標)の物理特性は、僅かにゴムに似た匂いを含んでおり、またその外観は、黒色または無着色の(着色可能な)ペレットである。これは、500゜Fで熱的に安定である。引火温度は、方式ASTM−D1929−77によって650゜Fよりも高く、また同じ方式による自己引火温度は、700゜F以上である。一般的な比重は、0.90ないし1.28である。この物質は、本発明に適した種々の硬度を有しているが、好ましい実施形態において、80ショアA硬度を有するSANTOPRENE(登録商標)熱可塑性ゴムが利用される。SANTOPRENE(登録商標)熱可塑性ゴムは、ネオプレーンのような従来の熱硬化性ゴムと等価な流体およびオイル抵抗を提供するように設計されている。オイルに対するSANTOPRENE(登録商標)ゴムのグレード抵抗性は、ゴムのためのSAE J200/ASTM D2000標準分類システムによって分類することができる。
【0061】
テキサス州ヒューストン(Houston,Texas)のシェル化学株式会社(Shell Chemical Co.)から市販されているKRATON(登録商標)は、0.90ないし1.90の比重と15Aないし60Dの硬度を有している熱可塑性ゴムである。伸張強度は、2,500psi以下である。伸張力は、750%以下であり、また引き裂き強度は、750pli(130kN/m)以下である。フレックス標準は、750ないし100,000psiである。稼動温度は、−70℃ないし150℃である。オゾン抵抗性は、優れている。UV抵抗性は、優れており、流体抵抗は、かなり優れており、またフレーム抵抗性は、かなり優れている。
【0062】
SARLINKは、マサチューセッツ州レミンスター(Leominster,Massachusetts)のノヴァコア化学(Novacor Chemicals)から市販されている熱可塑性エラストマである。比重は、1.13ないし1.22の範囲である。100%における標準は、260ないし570psiの範囲である。伸張力は、780ないし2,060psiの範囲である。最終の伸張度は、約345ないし395%の範囲である。引き裂き強度は、約81ないし約196pliの範囲である。張力設定は、約4ないし6%の範囲である。このエラストマは、酸とアルカリ、水溶液、有機溶剤、石油および燃料、自動変速、パワステアリング等のような自動車流体および工業流体に対して優れた流体抵抗を有している。このエラストマは、ハイドロリックブレーキ、リチウムグリース、不凍液等のような自動車流体に対してかなりの流体抵抗を示し、また有機溶剤に対する抵抗性が低い。SARLINK製品は、少々刺激臭を伴う固形の黒色ペレット物質である。これは、20℃で水に溶解しない。
【0063】
好ましい実施形態において、本発明の形態および構成を詳細に説明したが、開示した実施形態は、修正可能であることは当業者にとって明白であろう。従ってこれまでの説明は、これに限定するものではなく例示として考えるべきであり、また本発明の真実の範囲は、特許請求の範囲に規定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による3層を有する多層管状物の断面図である。
【図2】本発明による5層を有する多層管状物の断面図である。
【図3】本発明による4層を有する多層管状物の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融処理可能な第1の熱可塑性物質により構成され、この溶融処理可能な第1の熱可塑性物質は、ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択される第1の層と、
溶融処理可能な第2の熱可塑性物質により構成され、この溶融処理可能な第2の熱可塑性物質は、前記溶融処理可能な第1の熱可塑性物質とは化学的に異なる第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層間に挿入され、本質的に前記溶融処理可能な第1の熱可塑性物質と前記第2の熱可塑性物質からなる固化溶融処理可能な熱可塑性液で構成され、前記第1の熱可塑性物質と前記第2の熱可塑性物質が本質的に不均質状態に互いに相対的に分布され別々に認識できる要素として存在する中間層と、
を具備する、多層管状物。
【請求項2】
前記溶融処理可能な第1の熱可塑性物質のポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド11、ポリアミド12およびこれらの混合物からなるグループから選択される、請求項1に記載の多層管状物。
【請求項3】
前記溶融処理可能な第2の熱可塑性物質は、フッ素樹脂である、請求項2に記載の多層管状物。
【請求項4】
前記フッ素樹脂は、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマおよびこれらの混合物からなるグループから選択される、請求項3に記載の多層管状物。
【請求項5】
前記熱可塑性物質は、エチレンテトラフロオロエチレンコポリマ、ポリビニリデンフッ化物、ポリビニルフッ化物およびこれらの混合物からなるグループから選択される、請求項4に記載の多層管状物。
【請求項6】
前記中間層に使用される熱可塑性物質は、本質的に、
約10重量%ないし約90重量%のフッ化物と、
約10重量%ないし約90重量%のポリアミドからなる、請求項3に記載の多層管状物。
【請求項7】
前記フッ素樹脂は、約60重量%ないし約70重量%であり、前記ポリアミドは、約30重量%ないし約40重量%である、請求項6に記載の多層管状物。
【請求項8】
前記ポリアミド熱可塑性物質は、不均質状態で局部化領域の前記中間層のフッ素樹脂内に分布される、請求項7に記載の多層管状物。
【請求項9】
前記局部化ポリアミド領域は、前記中間層の半径方向厚みにわたって濃度勾配を呈し、また大きいポリアミド濃度の領域が前記第1の層近傍にある、請求項8に記載の多層管状物。
【請求項10】
溶融処理可能な第1の熱可塑性物質により構成され、この溶融処理可能な第1の熱可塑性物質は、ポリアミド、熱可塑性エラストマおよびこれらの混合物からなるグループから選択される第1の層と、
溶融処理可能な第2の熱可塑性物質により構成され、この第2の熱可塑性物質は、前記溶融処理可能な第1の熱可塑性物質とは化学的に異なり、またポリテトラフルオロエチレン、過フッ化エチレン−プロピレン、過フルオロアルコキシフルオロカーボン樹脂、テトラフルオロエチレンー過フルオロビニルエーテル、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマ、ポリビニリデンフッ化物(PVDF)、ポリビニリデンフッ化物によってコポリマ化されたビニリデンジフルオライドとクロロトリフルオロエタンのポリビニルフッ化物コポリマ、ポリビニルフッ化物でコポリマ化されたビニリデンジフルオライドとクロロトリフルオロエタンのコポリマ、ポリフルオロエチレン、ビニリデンフッ化物およびクロロトリフルオロエタンのコポリマのようなフッ化物含有ポリマを有するグラフトコポリマ、ビニルフッ化物およびクロロトリフルオロエチレンのコポリマおよびこれらの混合物からなるグループから選択される第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層間に挿入され、本質的に前記溶融処理可能な第1の熱可塑性物質と前記溶融処理可能な第2の熱可塑性物質からなる固化溶融処理可能な熱可塑性液で構成され、前記第1の熱可塑性物質と前記第2の熱可塑性物質とは、本質的に不均質状態に互いに相対的に分布され別々に認識できる要素として存在する中間層と、
を具備する、多層管状物。
【請求項11】
前記第2の層は、ポリビニリデンフッ化物、エチレンテトラフルオロエチレンおよびこれらの混合物からなるグループから選択されるフルオロポリマ物質で形成される、請求項10に記載の多層管状物。
【請求項12】
前記第1の層は、12炭素ブロックポリアミド、11炭素ブロックポリアミド、6炭素ブロックポリアミドおよびこれらの混合物からなるグループから選択される物質で形成される、請求項10に記載の多層管状物。
【請求項13】
前記第1の層は、6炭素ブロックポリアミドである、請求項12に記載の多層管状物。
【請求項14】
前記中間層の前記溶融処理可能な熱可塑性物質は、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライドおよびこれらの混合物からなるグループから選択される約65重量%ないし約75重量%のフッ素樹脂と、
ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12およびこれらの混合物からなるグループから選択される約25重量%ないし約35重量%のポリアミドと、
を備える、請求項13に記載の多層管状物。
【請求項15】
前記ポリアミド熱可塑性物質は、不均質状態で局部化領域の中間層のフッ素樹脂内に分布される、請求項14に記載の多層管状物。
【請求項16】
前記局部化ポリアミド領域は、中間層の半径方向厚みにわたって濃度勾配を呈し、また大きいポリアミド濃度の領域が、前記第1の層近傍にある、請求項15に記載の多層管状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513051(P2006−513051A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−509046(P2004−509046)
【出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/017033
【国際公開番号】WO2003/101720
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(596029797)アイティーティー・マニュファクチャリング・エンタープライジズ・インコーポレーテッド (34)
【Fターム(参考)】