説明

低保守コーティング

【課題】耐久性、光物性に優れ、信頼性の高い生産工程により、清浄性/保守特性の優れたガラスコーティングおよびその方法を提供する。
【解決手段】 前記コーティングは、2つのフィルム:シリカ(例えば、二酸化ケイ素)を含む第1のフィルムおよびチタニア(例えば、二酸化チタン)を含む第2のフィルムを含む。好ましくは、両フィルムは、特定の厚み範囲内で提供される。また、そのようなコーティングの堆積方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスシートおよびその他の基材のための薄膜コーティングを提供する。更に詳しくは、本発明は、シリカのような、薄膜ベース層上に堆積された、チタニアのような、薄い光触媒フィルムを含む薄いフィルムコーティングを提供する。また、本発明は、そのようなコーティングをガラスシートおよびその他の基材上に堆積させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
長年の間、二酸化チタンが光触媒として用いることができることが知られている。自己浄化機能を持つ光触媒コーティングの提供に関して相当量の研究がなされている。自己浄化光触媒窓コーティングの研究は、特に、調査の活発な分野である。そのようなコーティングは、一般的に、二酸化チタンを含む窓ガラスにより実行される。これらのコーティングは、一般に、二酸化チタンの比較的厚い層および/または高レベルの光活性を達成するために設計された特殊な下層システムによって供給される。厚い二酸化チタン層は、あいにく、高レベルの可視反射を引き起こし、鏡のような外観を生じさせる。この高い可視反射は、窓上のごみの外観を誇張する傾向にある。さらに、既知の下層システムは、一般に、許容できる光活性レベルを達成するための下層フィルムのために特殊な物質および結晶構造を用いなければならないことを悟らせる。その上、多くの光触媒コーティングは、許容できるレベルの光活性を達成するためのフィルムの堆積の間若しくは後に加熱が必要であることを悟らせる。
【0003】
また、既知の光触媒コーティングは、窓に用いられるコーティングの適用に理想的な機能より低い機能を持つ傾向にある。上記のとおり、多くの既知の光触媒コーティングの可視反射は、許容できないほど高い。さらに、これらのコーティングの反射色は、理想的でない傾向にある。その上、いくつかのこれらのコーティングは、高い光活性レベルを促進するために大きな表面積を持つよう設計されるため、特に高い表面粗さを持つ。これらの粗いコーティングは、あいにく、非常に磨耗に対して傷つきやすい。また、それらは、それらの高い表面粗さのために、ごみおよびその他の汚染物が付着することおよび頑固に留まることに特に影響されやすい。最終的に、多くの最近の光触媒コーティング(例えば、光活性を最大にするために用いられる複合下層システム)において、これらのコーティングが一番の表面コーティングに要求される耐用寿命(例えば、時間をかけすぎた実地の耐久性)を示すのか不明である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、異例の耐久性、光物性、信頼性の高い生産工程、および驚くべき清浄性/保守特性を生じる低保守コーティングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態において、本発明は、ガラスシート上の低保守コーティングを提供する。前記低保守コーティングは、前記ガラスシートの第1の主表面上に直接に位置する第1のフィルムおよび前記第1のフィルム上に直接に位置する第2のフィルムを含む。本発明の種々の実施形態において、前記第1のフィルムは、約300オングストローム未満、好ましくは約150オングストローム未満、より好ましくは約70オングストローム〜約120オングストロームの範囲の厚みを有するベースフィルム(例えば、シリカ)を含む。本発明の種々の実施形態における前記第2のフィルムは、約300オングストローム未満、好ましくは約150オングストローム未満、より好ましくは約30オングストローム〜約120オングストロームの厚みを有する薄い光触媒フィルム(例えば、チタニア)を含む。
【0006】
その他の実施形態において、本発明は、低保守コーティングの堆積方法を提供する。前記方法は、ガラスシートの第1の主表面上に直接に第1のフィルムを堆積することおよび前記第1のフィルム上に直接に第2のフィルムを堆積することによりガラスシート上に低保守コーティングを堆積することを含む。本発明のある実施形態において、前記第1のフィルムは、シリカを含み、それは約70オングストローム〜約120オングストロームの範囲の厚みに堆積される。前記第2のフィルムは、チタニアを含み、それは約30オングストローム〜約120オングストロームの範囲の厚みに堆積される。いくつかのこられの実施形態において、前記両フィルムは、好ましくは前記基材が低温(例えば、約250℃未満、好ましくは、200℃未満)に保持されている間に、スパッタリングにより堆積される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の詳細な説明は図面を参照しながら読まれるものであり、図面においては、別の図面中の同様の要素には、同様の参照番号が付されている。図面は、一定の率で縮尺する必要のないものであり、選択された実施形態を表してはいるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者であれば、ここに示された実施例が、利用可能で且つ本発明の範囲内である、多くの好適な代替手段を有していることを認めるであろう。
【0008】
特定の実施形態においては、本発明は、低保守コーティング40を備えた基材10を提供する。種々の基材が、本発明における使用に好適である。好ましくは、前記基材10は、通常若しくは概ね向かい合った第1の主表面12および第2の主表面14を有するシート状基材である。多くの実施形態において、前記基材は、透明材料のシート(即ち、透明なシート)である。しかしながら、前記基材は、透明である必要はない。しかしながら、多くの応用において、前記基材は、ガラスまたは透明プラスチックのような、透明の(若しくは少なくとも半透明の)材料を含む。例えば、前記基材10は、好ましい実施形態において、ガラスシート(例えば、窓板)である。種々の既知のガラス種を用いることができ、ソーダ石灰ガラスが好ましい。
【0009】
本発明においては、様々なサイズの基材を使用することができる。一般に、大面積の基材が使用される。特定の実施形態は、少なくとも約.5メートル、好ましくは、少なくとも約1メートル、おそらく更に好ましくは、少なくとも約1.5メートル(例えば、約2メートル〜約4メートルの範囲)、およびいくつかの場合においては、少なくとも約3メートルの幅を持つ基材10を含む。
【0010】
本発明においては、様々な厚みの基材を使用することができる。一般に、約1〜5mmの厚みを持つ基材(例えば、ガラスシート)が使用される。特定の実施形態は、約2.3mm〜約4.8mmの範囲、おそらく更に好ましくは、約2.5mm〜約4.8mmの範囲の厚みを持つ基材10を含む。いくつかの場合においては、約3mmの厚みを持つガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)のシートが使用される。
【0011】
特定の実施形態において、本発明は、低保守コーティング40を備えた基材10を提供する。前記コーティング40は、好ましくは、前記基材10の主表面12を覆って(例えば、完全に覆って)堆積される。前記低保守コーティング40は、2つのフィルム:(1)前記基材10の主表面12を覆って堆積された第1のフィルム30;および(2)前記第1のフィルム30を覆って堆積された第2のフィルム50を含む。
【0012】
本発明の種々の実施形態において、前記第1のフィルム30は、シリカ(例えば、二酸化ケイ素)のようなベースフィルムを含み、好ましくは、前記基材10上に直接(例えば、前記基材の主表面12上に直接)堆積される。このフィルムは、好ましくは、二酸化ケイ素からなる、若しくは、実質的に二酸化ケイ素からなる。しかしながら、前記第1のフィルム30における前記シリカは、前記フィルム30中で酸化される、アルミニウムのような、少量の導電性物質を含むことができる。例えば、このフィルム30は、少量のアルミニウム若しくはターゲットの導電性を高める別の金属を含むケイ素含有ターゲットのスパッタリングにより堆積することができる。前記第1のフィルム30(全体の厚みが実質的にシリカからなる)は、好ましくは、約300オングストローム未満、より好ましくは、約150オングストローム未満(例えば、約40オングストローム〜約150オングストロームの範囲)、さらに好ましくは、約70オングストロームおよび約120オングストロームの物理的厚みを持つ(例えば、堆積される)。これらの驚くべき小さな厚みは、前記本発明のコーティングの異例の特性の配列を驚くほどに容易にする。
【0013】
前記コーティング40は、チタニアのような、光触媒フィルムを含む第2のフィルム50を含み、好ましくは、前記第1のフィルム30上に直接堆積される。本発明の実施形態において、チタン、鉄、銀、銅、タングステン、アルミニウム、亜鉛、ストロンチウム、パラジウム、金、白金、ニッケル、コバルトおよびそれらの組合せの酸化物に含まれる1種若しくはそれより多くの種類の光触媒物質が使用されるが、これに限定されない。好ましい実施形態において、このフィルム50は、二酸化チタンからなる、若しくは、実質的に二酸化チタンからなる。しかしながら、いくつかの実施形態においては、前記第2のフィルム50は、亜当量チタン酸化物(TiOx、ここでxは2未満)からなる、若しくは、実質的に亜当量チタン酸化物からなる。前記第2のフィルム50(全体の厚みが実質的にチタニアからなる)は、好ましくは、約300オングストローム未満、より好ましくは、約150オングストローム未満(例えば、約30オングストローム〜約150オングストロームの範囲)、さらに好ましくは、約30オングストローム〜約120オングストロームの物理的厚みを持つ(例えば、堆積される)。前記第2のフィルム50がこれらの驚くべき小さな厚みで提供されたとき、特に、実質的に二酸化チタンからなり、前記の厚みで実質的に二酸化ケイ素からなる第1のフィルムとの組合せで提供されたときに、予期しない保守特性(ごみおよび他の汚染物の限界量の引き受けおよび前記コーティング上に積もったそれらの汚染物の容易な除去の提供に関する異例の特性を含む)を提供し、同時に、予期しない低可視反射、中性色、および予期しない耐久性を達成することを見出した。さらに、好ましい実施形態において、前記第2のフィルムは、低温で堆積されたスパッタフィルム(例えば、前記基材が約250℃未満、好ましくは、200℃未満に保持されたスパッタ堆積)であり、特に驚くべきは、この特徴のスパッタフィルムがそのような予期しない低保守特性を示すことである。
【0014】
ある特定の実施形態は、実質的にシリカ(例えば、SiO2)からなる第1のフィルム30上に約70オングストローム〜約120オングストロームの範囲の厚みで直接堆積された第1の主表面12を持つ基材10(例えば、ガラスシート)を提供し、ここで、実質的にチタニア(例えば、TiO2)からなる第2のフィルム50は、前記第1のフィルム30上に約30オングストローム〜約300オングストロームの範囲の厚みで直接堆積される。この特徴のいくつかの好ましい実施形態において、前記第1のフィルム30は、約70オングストローム〜約120オングストロームの範囲、おそらく最適には約100オングストロームの厚みを持ち、前記第2のフィルム50は、約30オングストローム〜約120オングストロームの範囲、おそらく最適には約100オングストロームの厚みを持つ。
【0015】
さらに好ましい実施形態において、前記第2のフィルム50の厚みは、100オングストローム未満(最適には約80オングストローム未満)であるが約30オングストロームより大きく、前記第1のフィルム30は、約300オングストローム未満(最適には約100オングストローム未満)であるが約30オングストロームより大きな厚みを持つ。この特徴のいくつかの場合において、前記第1のフィルムは実質的にシリカからなり、前記第2のフィルムは実質的にチタニアからなる。
【0016】
前記本発明のコーティング40において、前記第2のフィルム50は、好ましくは、前記コーティングの最も外側のフィルムである。本技術における一般通念は、特に、前記第2のフィルム50が、特に前記基材が低温で保持された場合のスパッタフィルムである実施形態において、前記本発明のコーティング40の薄さは、好ましい自己清浄特性を与えるための十分な光活性を持たないことを暗示させるだろう。しかしながら、驚くことに、本発明のコーティングは、通常の生産過程の間に窓上に蓄積された特有の汚染物のない窓(例えば、一体構造の窓板若しくはIGユニット)を保つのに信じられないほど有効である。本発明のコーティングは、また、異例の光物性および耐久性を持つと同時に、有益な水の薄膜化機能(water−sheeting properties)を示す。
【0017】
図3に、2つのコーティング:前記基材の前記第1の表面12上の低保守コーティング40および前記基材の前記第2の表面14上の低放射率コーティング80が設けられた基材10を示す。選択的に、絶縁ガラスユニットにおいて、前記低放射率コーティング80は、前記絶縁ガラスユニットの第3の表面(前記第3の表面は、前記第2の前記表面と考えられる、例えば、内向きの、前記絶縁ガラスユニットの前記窓板の間の空間に露出された窓板)上に配置される。前記低放射率コーティング80は、任意である。設けられるときには、いかなる好ましい低放射率コーティングも用いることができる。低放射率コーティングの適当な例は、米国特許出願第09/728,435号、発明の名称「耐曇り性透明フィルム積層体(Haze−Resistant Transparent Film Stacks)」に記載されており、ここにその教示の全てを引用して組み入れる。
【0018】
図2に示すとおり、前記低保守コーティング40は、窓の前記“第1の”表面上にあることが好ましい。これは、前記基材10(ガラス板であってもよい)が窓枠95(例えば、建造物99の外壁98における)上に取り付けられた窓板である図2に例示する実施形態から判断することができる。いくつかの適用において、そのような窓の前記被覆された第1の表面(すなわち、その上に前記コーティング40が設けられた前記表面12)は、屋外環境(例えば、そのような窓の前記コーティング40が周期的に雨と接触しているような)に露出されている。他の実施形態において、前記低保守コーティング40は、前記同じ窓の前記第1の表面上の前記低保守コーティング40に加えて、任意に、窓の前記“第4の”表面(例えば、二重窓ユニットの前記#4表面)に適用される。さらに、一体構造の窓において、前記低保守コーティング40は、前記#1表面のみの上、前記#2表面のみの上、若しくは前記#1および#2表面双方の上に設けることができる。
【0019】
また、本発明は、コーテッド基材の製造方法を提供する。これらの方法は、基材10上への低保守コーティング40を堆積すること(すなわち、上述のいくつかの実施形態のそれぞれのフィルム30、50を堆積すること)を含む。上述のとおり、前記低保守コーティングは、2つのフィルムを含む。これらのフィルム30、50は、種々のよく知られたコーティング技術により堆積させることができる。いくつかの特定の好ましい実施形態において、前記コーティング40(若しくは少なくとも前記第2のフィルム50)は、好ましくは低温で(例えば、前記基材10が約250℃以下、より好ましくは200℃以下に保持されている間に)、スパッタリングにより堆積される。しかしながら、化学気相堆積(chemical vapor deposition;CVD)、プラズマ増速化学気相堆積(plasma enhanced chemical vapor deposition)、および熱分解堆積(pyrolytic deposition)などの、他のコーティング技術を用いることもできる。前記コーティング40の種々の実施形態が記述され、本発明の方法は、いかなる薄膜堆積法によるいかなる前記記述されたコーティング実施形態の堆積をも含み、要求されないが、少なくとも前記第2のフィルム50および好ましくは前記コーティング40全体が好ましくはスパッタリングによる。
【0020】
スパッタリングは、当該技術において周知である。図3は、マグネトロンスパッタリングチャンバー200の一例を示す。マグネトロンスパッタリングチャンバーおよび関連装置は、様々な供給元(例えば、レイボルト アンド ビーオーシー コーティング テクノロジー(Leybold and BOC Coating Technology))から商業的に入手可能である。有用なマグネトロンスパッタリング法および装置は、チャピン(Chapin)に与えられた米国特許第4,166,018号に記載されており、ここにその教示の全てを引用して組み入れる。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明は、いくつかの上述のコーティング実施形態のそれぞれのフィルムの前記基材上へのスパッタ堆積によるコーテッド基材の製造方法を提供する。好ましくは、前記コーティング40の前記スパッタリング(若しくは少なくとも前記第2のフィルム50のスパッタリング)は、約250℃未満、より好ましくは約200℃未満の温度に基材が保持されている(例えば、前記基材を加熱しない)間に実行される。
【0022】
本発明の好ましい方法において、前記低保守コーティング40は、マルチチャンバースパッタリングラインで基材10に塗布される。スパッタリングラインは、当該技術において周知である。一般的なスパッタリングラインは、各チャンバーにおいて離間した輸送ローラー210上を水平に運ぶことによって、シート状基材10を1つのチャンバーから次へと通過させるように、配列し、結合させた、一連のスパッタリングチャンバーを含む(前記ローラーは、前記スパッタリングラインを通り抜ける基材の行程Pの連続パスを形成する)。前記基材は、一般に、毎分約100〜500インチの範囲の速度で運ばれる。
【0023】
ある特定の方法において、前記基材10は、前記スパッタリンラインの入口に配置され、所望の被覆ゾーンに運ばれる。この被覆ゾーンは、前記第1のフィルム30を堆積するように調整された3つの陰極が設けられている。より詳細には、3つの陰極それぞれは、ケイ素スパッタリングターゲットを含む。この被覆ゾーンにおける前記ケイ素ターゲットは、酸化雰囲気下でスパッタリングされて、前記基材の前記第1の主表面12上に直接二酸化ケイ素フィルムを堆積させる。この酸化雰囲気は、実質的に酸素からなる(例えば、約100%のO2)。約38kWの電力が前記第1の陰極に供給され、同時に約38kWの電力が前記第2の陰極に供給され、約38kWの電力が前記第3の陰極に供給される。前記基材10は、二酸化ケイ素フィルムが約100オングストロームの厚みで供給されるような、前述の電力レベルでのそれぞれのこれらのターゲットのスパッタリングの間、毎分約200インチの速度でこれら3つのターゲットの全ての下方を運ばれる。上述のとおり、それぞれのケイ素ターゲットは、いくらかのアルミニウム若しくは前記ターゲットの導電性を高めるための他の物質を含んでもよい。
【0024】
このようなコーテッド基材は、それから後続の被覆ゾーンへと運ばれる。このゾーンにおいては、3つの陰極が前記第2のフィルム50を堆積するために用いられる。これら3つの陰極のそれぞれは、チタンスパッタリングターゲットを含む。この被覆ゾーンにおける前記チタンターゲットは、酸化雰囲気下でスパッタリングされて、前記第1のフィルム30上に直接二酸化チタンフィルムを堆積させる。この酸化雰囲気は、実質的に酸素からなる。選択的に、この雰囲気はAr/O2を含む。約43kWの電力が前記第1の陰極に供給され、約43kWの電力が前記第2の陰極に供給され、約43kWの電力が前記第3の陰極に供給される。前記基材10は、二酸化チタンフィルムが約100オングストロームの厚みで供給されるような、前述の電力レベルでのそれぞれのこれらのターゲットのスパッタリングの間、毎分約200インチの速度でこれら3つのターゲットの全ての下方を運ばれる。この二酸化チタンは、本実施形態において前記コーティング40の最も外側の部分を形成する(かつ露出される)。
【0025】
記述した本方法において、前記基材10の前記第2の主表面14は、予め、若しくは直後に、任意の低放射率コーティング80で被覆されることが好ましい。例えば、前記第1のフィルム30および前記第2のフィルム50の堆積に用いるための前述の被覆ゾーンは、前記任意の低放射率コーティング80を適用する場合における比較的多数の先行するスパッタ−ダウン(sputter−down)被覆ゾーンを含むスパッタリングラインの終わり近くに位置するスパッタ−アップ(sputter−up)被覆ゾーンとすることができる。特に有用なスパッタ−アップ/スパッタ−ダウン(sputter−up/sputter−down)方法および装置は、米国特許出願第09/868,542号に開示されており、ここに、これらの教示の全てを引用して組み入れる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態を記述してきたが、本発明の精神および添付クレームの範囲を逸脱することなく、数多くの変更、応用および改良が可能であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の特定の実施形態に係る低保守コーティングを備えた基材の模式的な断面図である。
【図2】図2は、本発明の特定の実施形態に係る低保守コーティングを備え、建築物の外壁に取り付けられた窓板の透視図である。
【図3】図3は、本発明の特定の方法において有用性を有するスパッタリングチャンバーの模式的な側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシート上の低保守コーティングであって、前記コーティングは、前記ガラスシートの第1の主表面上に直接配置される第1のフィルムおよび前記第1のフィルム上に直接配置される第2のフィルムを含み、前記第1のフィルムは、ベースフィルムを含み、且つ、約300オングストローム未満の厚みを持ち、前記第2のフィルムは、光触媒フィルムを含み、且つ、約300オングストローム未満の厚みを持つ低保守コーティング。
【請求項2】
前記ベースフィルムが、シリカである請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項3】
前記光触媒フィルムが、チタニアである請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項4】
前記第1のフィルムの厚みが、約70オングストローム〜約120オングストロームの範囲である請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項5】
前記第2のフィルムの厚みが、約30オングストローム〜約120オングストロームの範囲である請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項6】
前記ガラスシートが、窓枠に取り付けられた窓板であって、前記被覆された第1の主表面が屋外環境に露出されている請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項7】
前記被覆された第1の主表面が、周期的に雨と接触する請求項2記載の低保守コーティング。
【請求項8】
前記第1のフィルムが、実質的にシリカからなり、且つ、前記第2のフィルムが、実質的にチタニアからなる請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項9】
前記シリカが、二酸化ケイ素であり、且つ、前記チタニアが、二酸化チタン若しくは亜当量チタン酸化物である請求項8記載の低保守コーティング。
【請求項10】
前記第1および第2のフィルムが、ともにスパッタ膜である請求項1記載の低保守コーティング。
【請求項11】
ガラスシート上に低保守コーティングを堆積する方法を含む低保守コーティングの堆積方法であって、第1のフィルムは、前記ガラスシートの第1の主表面上に直接配置され、第2のフィルムは、前記第1のフィルム上に直接配置され、前記第1のフィルムは、ベースフィルムを含み、且つ、約300オングストローム未満の厚みを持ち、前記第2のフィルムは、光触媒フィルムを含み、且つ、約300オングストローム未満の厚みを持つ低保守コーティングの堆積方法。
【請求項12】
前記ベースフィルムが、シリカである請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記光触媒性フィルムが、チタニアである請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記第1のフィルムの厚みが、約70オングストローム〜約120オングストロームの範囲である請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記第2のフィルムの厚みが、約30オングストローム〜約120オングストロームの範囲である請求項11記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記ガラスシートが取り付けられた窓枠を含み、前記被覆された第1の主表面が、屋外環境に露出され、且つ、周期的に雨と接触する請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記第1のフィルムが、実質的にシリカからなるフィルムとして堆積され、且つ、前記第2のフィルムが、実質的にチタニアからなるフィルムとして堆積される請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記シリカが、二酸化ケイ素として堆積され、且つ、前記チタニアが、二酸化チタン若しくは亜当量チタン酸化物として堆積される請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記第1および第2のフィルムが、ともにスパッタリングにより堆積される請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記スパッタリングが、前記ガラスシートを200℃未満の温度に保持している間に実行される請求項19記載の方法。
【請求項21】
ガラスシート上の低保守コーティングであって、前記コーティングは、前記ガラスシートの第1の主表面上に直接配置される第1のフィルムおよび前記第1のフィルム上に直接配置される第2のフィルムを含み、前記第1のフィルムは、実質的にシリカからなり、且つ、約30オングストローム〜約300オングストローム未満の範囲の厚みを持ち、前記第2のフィルムは、実質的にチタニアからなり、且つ、約100オングストローム未満であるが約30オングストロームより大きい厚みを持つ低保守コーティング。
【請求項22】
前記第1のフィルムが、約100オングストローム未満の厚みを持つ請求項21記載の低保守コーティング。
【請求項23】
前記第2のフィルムが、約80オングストローム未満の厚みを持つ請求項21記載の低保守コーティング。
【請求項24】
前記第1のフィルムが、約100オングストローム未満の厚みを持つ請求項23記載の低保守コーティング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−36631(P2006−36631A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203130(P2005−203130)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】