説明

低分子又は中分子有機化合物からなるコーティング材料

【課題】高いエッチング耐性、高い溶剤溶解性、基板への高い密着性を併せ持った新規なコンセプトによる低分子又は中分子環状化合物からなるコーティング材料、それを用いたレジスト材料、及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】ジオール化合物とビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸化合物から誘導される新規な低分子又は中分子有機化合物よりなるコーティグ材料、レジスト材料及びそれを用いた微細パターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
真空紫外域の光透過性に優れる膜製造に有用なコーティング材料に関し、特には、フォトレジスト膜、反射防止膜、フォトレジスト膜に接して形成される膜の製造に有用なコーティング材料に関する。
【背景技術】
【0002】
193nmリソグラフィ技術による90nm微細加工デバイスの量産がすでに開始されている。今後、65nm、45nm、32nmと更なるデバイスの微細化、高密度化、高集積化が求められており、その微細加工へ向けたプロセス、および材料開発が急速に進展している。解像度65nm以下の微細化へ向けた問題点として、レジストのエッチング耐性、パターンのエッジが波打つラインエッジラフネス(LER)などが挙げられており、この課題を解決するために盛んに開発が行われている。エッチング耐性向上には、樹脂中に環状構造を多く導入することで改善が成されるとの報告例がある。またLERの発生メカニズムについては数多くの研究例が報告されているが未だはっきりとした原因はつかめておらず、現像液に対する溶解度のばらつきや低いエッチング耐性が原因と推測されている。
【0003】
193nmリソグラフィで用いられているレジスト用樹脂の一例として(メタ)アクリル酸エステル系の樹脂が用いられており、そこではエッチング耐性を向上させるためにエステル部位にアダンチル基、ノルボルネル基やコレステロール誘導体などの多環式構造を有する化合物を導入した報告例が発表されている。しかしながら、エッチング耐性を向上させるために、このような多環式構造を樹脂中に多く導入すると、溶剤溶解性、基盤との密着性、真空紫外領域でのエキシマレーザーに対する透過率などのレジスト材料に必要な他の物性低下が生じる。また、例え多環式構造を多く導入したとしても、254nmリソグラフィで用いられているヒドロキシスチレン系樹脂に比べエッチング耐性は悪く、更なるエッチング耐性の向上が求められている。一方、(メタ)アクリル酸エステル系の樹脂とは別のアプローチとしてポリマー主鎖に環状構造を有する樹脂についても検討が成されている。ポリマー主鎖にシクロペンタン環、シクロヘキサン環を含有させ、エッチング耐性の向上を図った例もあるが、溶剤溶解性、透過率、解像のコントラストなどの他物性とのバランスを図った場合、エッチング耐性の改善は成されていない。
【0004】
以上のようにレジスト材料として充分なエッチング耐性を有し、かつ透過率、密着性、溶剤溶解性などの他の必要物性を併せ持った新規な材料の創出が望まれていた。
【非特許文献1】Takuya Hagiwara, Yasuhide Kawaguchi, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 557(2003)
【非特許文献2】Francis Houlihan, Will Conley, Larry Rhodes, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 581(2003)
【非特許文献3】Shinichi Kanna, Sanjay Malik, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 595(2003)
【非特許文献4】Takashi Sasaki, Shigeo Irie, Toshiro Itani, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 17, 639(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、真空紫外域の光透過性に優れ、好ましくは高いエッチング耐性、溶剤への高い溶解性、基板への高い密着性を有する膜を製造するために有用なコーティング材料、特には、フォトレジスト用途に使用した場合、パターンのエッジが波打つラインエッジラフネス(LER)を改善可能な膜を製造するために有用なコーティング材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、パターンのエッジが波打つラインエッジラフネス(LER)の原因を検討した結果、レジスト膜として使用される樹脂の分子量が分布していることが原因であるとの知見を得た。そして、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のノルボルネン環などの多環構造を中心構造に有するテトラカルボン酸又はそのエステル体が前述課題を解決するのに好適であることを見出した。すなわち、コーティング材料に使用される分子量を低く高分子ではない領域とすることによって、フォトレジストに使用する場合のリソグラフィ特性を向上させ、また、環状構造によって高いエッチング耐性を有しせしめ、更にはArFエキシマレーザーの発振波長で使用する場合は、芳香族基を含有させないことで該レーザーの発振波長の193nm波長域で高い透明性を発現せしめることを見出した。そして、カルボン酸エステルの保護基を適切に選択することにより、基板への高い密着性、優れた成膜性、アルカリ現像特性、高度な溶剤溶解性などが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、一般式(1)で表される低分子又は中分子有機化合物からなるコーティング材料である。本発明のコーティング材料を形成する低分子または中分子有機化合物は、「通常の高分子化合物のようなラジカル重合などの高分子化反応により生成する繰り返し単位は含有せず、分子量的に見ても通常の高分子化合物の範疇には入らない」という点があり、この観点から従来とは全く異なるコンセプトからなるコーティング材料である。尚、本発明の一般式(1)で表される低分子又は中分子有機化合物からなるコーティング材料とは、コーティング材料が単一化合物を90〜100%、好ましくは、95〜100%、より好ましくは、98〜100%有するものとして扱われる。
【0008】
【化1】


【0009】
[式中、R1は単結合、メチレン、エチレン、又は酸素であって、R2は、水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基、スルホニルアミド基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでも良く、また、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ウレタン結合により同種または異種のRを連結してもよい。]
【0010】
また本発明は、少なくともR2の一つが、一般式(2)、又は(3)で表される基であることを好適とするコーティング材料である。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1、R2は、一般式(1)と同じ。R3は直鎖又は分岐や脂環構造を含んでも良いアルキレン基、R4は水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでもよい。)。
【0013】
さらに本発明は、少なくともRの一部が一般式(4)であることを好適とする上記のコーティング材料である。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R,Rは一般式(1)と同じ。R
【0016】
【化4】

【0017】
または環状構造を含む炭素数3〜15の有機基である。)。
【0018】
上記、R2またはR4の少なくとも一部にラクトン基、アルカリ可溶性基、酸の作用によってアルカリ可溶性基に返還する酸不安定基、ヘキサフルオロカルビノール基を導入することができる。
【0019】
さらに、本発明のコーティング材料を組成する上記有機化合物を真空紫外域、特にはArFエキシマレーザーから発振される光波長(197nm)と同一の波長域での光透過性に優れる膜、特には、フォトレジスト膜、反射防止膜、フォトレジスト膜に接して形成される膜として使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のコーティング材料を使用すれば、高いエッチング耐性、高い溶剤溶解性、基板への高い密着性、ラフネス改善を有するレジスト材料、反射防止材料、トップコート材料等が容易に提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、一般式(1)で表される低分子又は中分子有機化合物からなるコーティング材料である。
【0022】
【化5】

【0023】
式中、R1は単結合、メチレン、エチレン、又は酸素が採用される。よりエッチング耐性が必要な場合のR1としてはメチレン、エチレンが好ましく、より高度な密着性が必要な場合、酸素含有のオキシノルボルネン環が採用される。
【0024】
2は、水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基、スルホニルアミド基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでも良く、また、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ウレタン結合により同種または異種のRを連結してもよい。
【0025】
本発明のコーティング材料は、単一の化合物を主成分とするコーティング材料であることから、重合反応等で形成される高分子材料からなるコーティング材料の場合と比べて、コーティング材料中に大きな分子量分布がない。そのため、本発明のコーティング材料から形成される膜は、その膜体中の部分毎での溶解性、密着性等のバラツキが小さいものとなる。かくして、本発明のコーティング材料から形成される膜をレジストとして使用してパターンを形成した場合には、パターンのエッジが波打つラインエッジラフネスが改善されたものとすることができる。
【0026】
また、本発明でいう低分子とは分子量1000以下、中分子とは1000〜3000程度の分子量をいい、その中でも、分子量500〜2000程度の分子量が好適に用いられる。
【0027】
本発明のコーティング材料を形成する低分子または中分子有機化合物において、より低分子が求められる場合は、R2として低分子化合物を用いることが好適であり、成膜特性などの必要性から適度に分子量を高めることが優先される場合は、少なくともR2の一部に長鎖基、環状構造、およびその複合体が好ましい。
【0028】
その観点から分子量を増加させ、かつエッチング耐性を有するR2としては一般式(2)、(3)、(4)で表される基である構造をR2の一部に用いることが好適に採用される。すなわちR2の一部に、同種又は異種のR2を複数回有することもできる基である。
【0029】
【化6】

【0030】
式中、R1、R2は、一般式(1)と同じ。R3はメチレン、エチレン、又は脂環式アルキレン基、R4は水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでもよい。R
【0031】
【化7】

【0032】
または、炭素数3〜10の環状構造を有する3価の有機基である。)。かかる有機基としては、特に限定されないが、ベンゼントリイル、ナフタレントリイル、ビフェニルトリイル、トルエントリイル、キシレントリイル等の芳香族基、シクロプロパントリイル、シクロブタントリイル、シクロペンタントリイル、シクロヘキサントリイル、シクロヘプタントリイル、シクロオクタントリイル、シクロデカントリイル、シクロウンデカントリイル、ビシクロヘキサントリイル、アダマンタントリイル、メチルアダマンタントリイル、ノルボルナントリイル等の脂環式基を挙げることができる。これら3価の有機基において結合基の位置は任意である。例えば、ベンゼントリイルの場合、1,2,3−、1,2,4−、1,3,5−および1,2,5−ベンゼントリイルを含み、シクロヘキサントリイルの場合も同様に、1,2,3−、1,2,4−、1,3,5−および1,2,5−シクロヘキサントリイルを含む。これらの中で、ベンゼントリイル、シクロヘキサントリイル、ノルボルナントリイル等環構造として6員環ユニットを有するものが好ましく、シクロヘキサントリイル、ノルボルナントリイルが特に好ましい。
【0033】
次にR2を具体的に説明する。ここで使用できるR2は、水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基、スルホニルアミド基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでも良く、また、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ウレタン結合により同種または異種のRを連結してもよい。
【0034】
2を具体的に例示するならば、R2の一部にリソグラフィ機能を有した官能基を含有しても良く、その炭素数は炭素数0〜40の直鎖状、分岐状もしくは環状の脂肪族炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、1−メチルシクロへキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、ノルボルネル基、2−メチルノルボルネル基、アダマンチル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示でき、上記官能基の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。また、酸素原子を含むものとしてアルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基等を挙げることができ、アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基の鎖状のエーテルやテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテルが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。さらに、上記置換基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。これら保護基の目的としては、透明性、密着性、有機溶剤やアルカリ水溶液への溶解性、高いガラス転移温度、ハンダ耐熱性を目的とした架橋反応性、光酸発生剤によるポジ型感光性やエッチング耐性などの特徴を付与させることであり使い分けることが可能である。
【0035】
また溶剤溶解性をコントロールする目的として、一般式(5)、(6)
【0036】
【化8】

【0037】
に表されるヘキサフルオロカルビノール基やトリフルオロメタンスルホニルアミド基を含有するような化合物が挙げられる。このヘキサフルオロカルビノール基やトリフルオロメタンスルホニルアミド基は、一つのR2に複数含有させることも可能である。ここでR6は、水素、メチル、トリフルオロメチル基などが好適である。また、R7は、直鎖構造、分岐構造、環状構造、多環式構造、芳香族基である2価以上の炭化水素基である。また一部、または全ての水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、水酸基やカルボニル基やエーテル構造などのように酸素原子を含有していても使用することが可能である。好ましい炭素数としては2〜40が良好であり、製造時のハンドリングの容易さ、原料調達の容易さの観点から炭素数2〜15が好適に採用される。
【0038】
をカルボン酸誘導基に反応させ、一般式(1)の化合物を導く反応は、酸とアルコール、酸とエポキシ、酸とイソシアネート、酸とアミン、酸とオレフィンなどの様々な有機反応を用いることが可能であり、特に限定されない。
【0039】
次に一般式(1)の化合物の合成例として、一つの簡便な方法を説明する。この場合の中心となる原料化合物は以下のようなノルボルネンのテトラカルボン酸系化合物が使用される。当該原料化合物は次のようなテトラカルボン酸、酸クロライド、エステル体、又は酸無水物である。すなわち、
【0040】
【化9】

【0041】
などが原料として例示される。
【0042】
本発明では4つのカルボン酸の内、少なくとも一つ以上に反応させた化合物が好ましいが、2つのエステルのみを均一に生成させる目的には酸ニ無水物であるビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸無水物が好適である。その場合、例えばヒドロキシ基含有化合物やアミン含有化合物を反応させることで、一般式(7)、(8)のようなジハーフエステルやアミド酸が得られる。
【0043】
【化10】

【0044】
ここでR2は一般式(1)と同じである。本発明ではR2として一般式(2)、(3)、(4)の構造を好適に使用できる。
【0045】
【化11】

【0046】
式中、R1、R2は、一般式(1)と同じ。R3はメチレン、エチレン、又は脂環式アルキレン基、R4は水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでもよい。R
【0047】
【化12】

【0048】
または、環状構造を含む炭素数3〜15の3価の有機基である。
【0049】
一般式(2)を用いた一般式(7)は特に限定されないが、一例を示すと
【0050】
【化13】

【0051】
などの様々な構造が挙げられる。さらに一般式(13)、(14)、(15)、(16)などのラクトン構造やアダマンタン構造を有した化合物も挙げられる。なお、これらのラクトン、アダマンタンなどは一例であり、他の構造のラクトンやアダマンタンなども特に制限なく使用できる。
【0052】
【化14】

【0053】
またフルオロカルビノール基含有の例として、一般式(17)はヘキサフルオロカルビノールがRの中に2つ含有した例として好適に採用される。
【0054】
【化15】

【0055】
また、R2の分子サイズを長鎖にしたい場合、一般式(18)に示すアルキレン基をR2の一部に導入する例が使用できる。
【0056】
【化16】

【0057】
ここでn,mは独立に1〜20の整数が好ましい。
【0058】
また、一般式(4)の化合物の具体例としては、
【0059】
【化17】

【0060】
が挙げられる。一般式(19)の化合物を利用する場合、一分子中に6個のカルボン酸誘導基を導くことが可能になる。また当該反応をさらに活用し一般式(19)中のRに一般式(4)をさらに導くことで一分子中のカルボン酸誘導基を8、10、12,14,16,18,20個及びそれ以上に導くことが可能となり、中分子とすることができる。
【0061】
続いて、一般式(7)の合成反応について説明する。反応容器は特に限定されない。また、当該合成反応においては、有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、当該反応を阻害するような溶媒の使用は好ましくない。また不純物として水分が多く含有している場合は反応性に影響を及ぼすため脱水溶媒を使用することが好ましい。代表的なものとして酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの高極性溶媒などがある。またエーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、フッ素系などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は適宜変更されるが、−50〜300℃が好ましく、特に−10〜150℃が好ましい。
【0062】
当該反応を促進させる目的で種々の添加剤を加えても良い。添加剤としては特に限定されるものではないが、例として硫酸、塩酸、フッ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのプロトン酸化合物や、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化すず、塩化亜鉛、ジンクトリフラート、スカンジウムトリフラート、ランタノイドトリフラートなどのルイス酸化合物が使用できる。しかしながら、フォトレジスト材料として使用する場合、金属不純物による欠陥原因とな、そのことが致命的であることから、プロトン酸化合物を使用することがより好ましい。以上のような酸性化合物は、触媒量でも反応は加速されることから添加量は特に制限されないが、原料に対し0.001mol%〜1,000mol%が好ましい。後の酸除去のための洗浄の観点から0.1mol%〜50mol%がより好ましい。また塩基性化合物を添加することによっても同様に反応を加速させることが可能である。無機化合物、有機化合物共に制限なく使用できるが、例として水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、ピリジン、2,6−ルチジン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリオクチルアミンなどが挙げられる。金属不純物のコンタミネーションの観点から、有機系塩基化合物を使用することがより好ましい。添加量は特に制限されないが、原料に対して10mol%〜2,000mol%が好ましい。後の塩基の洗浄の観点から50mol%〜400mol%がより好ましい。
【0063】
続いて、本発明の使用方法について説明する。
【0064】
本発明の一般式(1)によるコーティング材料から形成された膜はフォトレジスト材料、反射防止膜、トップコート材料などのリソグラフィ関係の塗布膜として使用できる。
【0065】
前記リソグラフィで使用する光、電子線、などの活性エネルギー線には制限がないが、本発明のコーティング材料を形成する化合物の中心的なユニットであるノルボルネン環はArFエキシマレーザーの193nmで透明性が高いことから、ArFを中心として、KrFやFなどのエキシマレーザーを使用した各種用途に最適である。
【0066】
そして、一般式(1)の化合物を次にように選択することで、適用可能なフォトレジスト材料のタイプを選択できる。
a)酸により脱離する保護基(以下、酸不安定性基)を含有する基をRとして一般式(1)の化合物に含有させることで、酸不安定性基の作用により現像液に可溶性に変性するポジ型、
b)化学反応により極性変化又は架橋反応を起こすことが可能となるよう一般式(1)の化合物のR又はR中に水酸基又はカルボキシル基を持たせることでネガ型。
【0067】
ポジ型感光性材料として使用する場合、露光後にアルカリ水溶液への溶解性を発現させるための好ましい酸不安定性基を例示するならば、tert−ブチル基、1−メチルシクロへキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチルノルボルネル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基等の3級エステルを形成する保護基、及びアルコキシカルボニル基、アセタール基等が挙げられる。また、その官能基にフッ素原子を持つものは透明性を、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移点などの特徴をさらに付与させるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0068】
これら保護基の導入方法は公知の方法を用いればよく特に制限されない。例えば、塩化チオニル等によりカルボン酸基を酸クロリドへと変換した後に保護基に対応するアルコール等と反応させて保護基の導入を行う方法や水素化ナトリウム等の塩基を添加後、カルボン酸塩とした後に保護基に対応するハロゲン化物などと反応させて保護基の導入を行う方法が挙げられる。反応温度は保護基の電子密度状態、嵩高さなどによる反応性により適宜変更可能であるが、−50〜200℃が好ましく、−10〜100℃がより好ましい。また反応溶媒は、用いなくても良いが、反応の均一性、放熱の観点から用いることが好ましい。例として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの高極性溶媒などが挙げられる。またフロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。
【0069】
なお2種類以上の保護基を導入する場合は、同時に保護化反応を行っても逐次的に保護化反応を行ってもよい。一般的な酸不安定基としては前述した酸不安定基であり、酸によって切断される官能基である。このような溶解抑制剤を用いた高分子化合物は活性エネルギー線が照射される前にはアルカリ性水溶液に不溶もしくは難溶であって、活性エネルギー線を照射したことにより酸発生剤から発生した酸により加水分解されアルカリ性水溶液に対して溶解性を示すようになる。本発明のフォトレジスト用化合物は、前述の酸不安定基はもちろん、密着性向上のためのラクトン基、溶解性向上のためのフルオロカルビノール基やヒドロキシ基含有の基をRとして各種組み合わせて含有させることが好ましい。
【0070】
本発明のコーティング材料をリソグラフィ関係の塗布膜として使用する場合、コーティング材料に光酸発生剤を付加してもよい。該光酸発生剤は、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの酸発生剤の使用は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、コーティング材料100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0071】
本発明のコーティング材料をリソグラフィ用途として使用する方法としては、従来のリソグラフィ技術のレジストパターン形成方法が用いられる。好適に行うには、まずシリコンウェハーのような支持体上に、コーティング材料及び有機溶剤を有するコーティング溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、これに露光装置などにより、エキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。そして、前記の有機溶剤には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−ブタノール、乳酸エチルから選択される少なくとも1種が好適に使用される。
【0072】
本発明のコーティング材料から形成されるレジスト膜は、パターンのエッジが波打つラインエッジラフネス(LER)を改善可能なものである。従って、ラジカル重合などの高分子化反応により生成するフォトレジストポリマーと本発明のコーティング材料を混合することで、一般的に使用されているフォトレジストポリマーから形成されるレジスト膜のLERを改善させてもよい。
【0073】
さらには、本発明のコーティング材料から、レジストとして形成された膜を支持体とし、レジストとして形成された膜の上層、又はレジストとして形成された膜の下層に用いる半導体製造用反射防止材料を形成してもよい。後者の場合、シリコンウェハー又はその他の膜が形成されたシリコンウェハーが支持体となる。 これらの反射防止膜用途の場合、Rには酸不安定性基を必須成分としなくてもよいが、基材やフォトレジスト膜に密着させることが好ましい。加えて、本発明のコーティング材料から、液浸リソグラフィ用のトップコート材料を形成させてもよい。
【0074】
本発明のコーティング材料を支持体へ塗布するためには、本発明のコーティング材料を有機溶剤、又はアルカリ水溶液や水と有機溶剤の混合液に溶解させて使用することが好ましい。
【0075】
前記トップコート材料を形成する場合、使用できる有機溶剤としては、その溶剤が下層のレジスト膜を浸食したり、レジスト膜から添加剤等を抽出しにくいもので、スピンコートに適した沸点範囲、すなわち、沸点が70℃〜170℃程度のものが好適に選択される。
【0076】
具体的には下層のレジスト膜組成に依存するが、各種、炭化水素溶媒、アルコール、エーテル、エステル、フッ素系溶剤などが好ましい。好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカンや脂環類の炭化水素溶媒やブタノール(ノルマル、イソ体、ターシャリー)、メチルエチルカルビノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコールなどの炭化水素系アルコール類、さらに好ましくは部分的または全部がフッ素で置換された炭化水素系溶媒、フッ素系溶媒が好適に採用される。フッ素を用いることで本発明の高分子化合物を効果的に溶解させ、かつ下地のレジスト膜にダメージを与えないコーティングを行うことが可能となる。
【0077】
また本発明によれば、下層からの抽出物があった場合に、その影響を最小限にする目的で、酸発生剤、クエンチャーなどの添加剤を予めトップコート溶液に加えることが可能であり、特に、本発明に酸発生剤を加えた場合、液浸リソグラフィにおける下層レジストの解像性能を高める効果が発現する。
【0078】
さらに水の膨潤やしみ込みに対する影響を抑制するための疎水性添加剤、現像液への溶解性を促進させるための酸性添加剤などが好適に使用できる。
【0079】
本発明のコーティング材料から形成されるトップコート膜は、下層のレジストの種類に制限なく使用することができる。すなわち下層レジストが、ネガ型、ポジ型、複合型などの任意のレジストシステムであっても好適に使用でき、さらに、特に最近の半導体の微細化に対応した193nmのArFエキシマレーザーや157nmに代表される真空紫外領域のFレーザー、又は電子線やX線などの活性エネルギー線などの各種光源に依存することなく使用することができる。特に本発明のトップコートは液浸リソグラフィにおいて、好適に応用される。
【0080】
すなわち、液浸リソグラフィを用いたデバイス製造において本発明を使用する場合、まずシリコンウェハーや半導体製造基板のような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、その上面に本発明をスピンナーでトップコートし、乾燥後、水などに浸漬してレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射する。次いでこれを加熱後、第一の方法であるフォトレジストを侵さない剥離液を用いてトップコート層のみを剥がしてから、アルカリ現像液を用いてフォトレジスト現像を行うケース、及び第二の方法である現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理することで、一回の現像処理でトップコートを全溶解させると同時に露光部のフォトレジスト膜を溶解させ、一段現像にてレジストパターンのみを残す、2つの方法がある。第一の方法の場合は本発明の化合物は現像液に不溶であっても可溶であっても構わないが、第二の方法を選択する場合は、本発明の化合物を現像液に可溶するように設計、合成する必要がある。
【0081】
本発明のコーティング材料は有機溶媒に溶解したワニス状態、または粉末状態、フィルム状態、固体状態で使用に供することが可能である。ワニスで使用する場合は、ガラス、シリコンウェハー、金属、金属酸化物、セラミックス、樹脂などの支持体上にスピンコート、スプレーコート、フローコート、含浸コート、ハケ塗りなど通常用いられる方法で塗布することができる。
【実施例】
【0082】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
合成例1
【0083】
化合物24の合成
【0084】
【化18】

【0085】
1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物20(10.00g)、化合物21(13.05g)を1,2−ジクロロエタン(84.6ml)に室温中混合した。この混合液を氷水バスに浸し内温を5℃とした後、滴下漏斗に仕込んだトリエチルアミン(21.42g)を攪拌下55分間かけて滴下した。滴下終了後、氷水バスにて冷却下10分間攪拌した後、60℃までオイルバスで加熱して8時間攪拌した。反応液を放置冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を徐々に添加した。この混合液にジイソプロピルエーテル(350ml)を加え分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に、洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。更に真空ポンプを用い溶媒を充分に除去し化合物22の粗体(22.58g)を得た。
【0086】
続いて1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物22の粗体(22.58g)をテトラヒドロフラン(52.9ml)に室温下混合した。次に水素化ナトリウム(2.19g)を少量ずつ小分け添加し、全量添加後窒素雰囲気中室温下で30分間攪拌した。更にこの混合液に化合物23(18.97g)のテトラヒドロフラン(30.0ml)溶液を滴下漏斗を用いて50分間かけて添加し8時間攪拌した。この反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を徐々に添加後、更にこの混合液にジイソプロピルエーテル(350ml)を加え分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。続いて得られた化合物24の粗体(35.44g)にイソプロピルアルコール/n−ヘキサン(20g/180g)を加え、40℃に加熱溶解後室温に徐々に冷却し再結晶を行い化合物24(21.62g)を得た。
【0087】
合成例2
化合物29の合成
【0088】
【化18】

【0089】
1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物25(10.00g)、化合物26(20.15g)をキシレン(73.5ml)に室温中混合した。この混合液にp−トルエンスルホン酸(0.316g)を攪拌下添加した。続いてこの混合液を90℃までオイルバスで加熱して6時間攪拌した。反応液を放置冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を徐々に添加した。この混合液にジイソプロピルエーテル(200ml)を加え分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に、洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。更に真空ポンプを用い溶媒を充分に除去し化合物27の粗体(30.59g)を得た。
【0090】
続いて1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物27の粗体(30.59g)をテトラヒドロフラン(53.8ml)に室温下混合した。次に水素化ナトリウム(1.94g)を少量ずつ小分け添加し、全量添加後窒素雰囲気中室温下で30分間攪拌した。更にこの混合液に化合物28(7.64g)のテトラヒドロフラン(20.0ml)溶液を滴下漏斗を用いて30分間かけて添加し4時間攪拌した。この反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を徐々に添加後、更にジイソプロピルエーテル(200ml)を加え分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。続いて得られた化合物29の粗体(33.39g)にジイソプロピルエーテル/トルエン(20g/180g)を加え、40℃に加熱溶解後室温に徐々に冷却し再結晶を行い化合物24(23.72g)を得た。
【0091】
合成例3
化合物33の合成
【0092】
【化19】

【0093】
1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物20(10.00g)、化合物30(18.30g)をトルエン(64.7ml)に室温中混合した。この混合液を氷水バスに浸し内温を5℃とした後、滴下漏斗に仕込んだ2,6−ジメチルピリジン(9.53g)のトルエン(20.0ml)溶液を攪拌下35分間かけて滴下した。滴下終了後、氷水バスにて冷却下8分間攪拌した後、60℃までオイルバスで加熱して6時間攪拌した。反応液を放置冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液を徐々に添加した。この混合液にジイソプロピルエーテル(400ml)を加え分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に飽和塩化アンモニウム水溶液で1回、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に、洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。更に真空ポンプを用い溶媒を充分に除去し化合物31の粗体(41.01g)を得た。
【0094】
続いて1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物31(41.01g)、化合物32(26.85g)をトルエン(74.5ml)に室温中混合した。この混合液にp−トルエンスルホン酸(0.321g)を攪拌下添加した。続いてこの混合液を45℃までオイルバスで加熱して18時間攪拌した。反応液を放置冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を徐々に添加した。この混合液にジイソプロピルエーテル(300ml)を加え分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に、洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。続いて得られた化合物33の粗体(62.31g)にジイソプロピルエーテル/トルエン(30g/270g)を加え、50℃に加熱溶解後室温に徐々に冷却し再結晶を行い化合物33(45.33g)を得た。
【0095】
合成例4
化合物40の合成
【0096】
【化20】

【0097】
但し、R
【0098】
【化21】

【0099】
1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物20(10.00g)、モノオキシ二塩基性酸(リンゴ酸)を34(9.83g)をトルエン(64.7ml)に室温中混合した。この混合液を氷水バスに浸し内温を5℃とした後、滴下漏斗に仕込んだトリエチルアミン(8.57g)のトルエン(20.0ml)溶液を攪拌下40分間かけて滴下した。滴下終了後、氷水バスにて冷却下8分間攪拌した後、60℃までオイルバスで加熱して6時間攪拌した。反応液を放置冷却後、エヴァポレーターでトルエンを留去し、得られた残渣に5%水酸化カリウム水溶液を200ml加えた。攪拌下、室温で15時間攪拌した後、氷水バスに浸しながら1N塩酸を徐々に添加した。析出した結晶をろ過回収し、結晶を水で洗浄した。この結晶を真空ポンプを用い充分に乾燥し、化合物35の粗体(21.22g)を得た。
【0100】
続いて1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物35の粗体(20.01g)、塩化チオニル(200.0ml)を室温で混合した。更に攪拌下室温でN,N−ジメチルホルムアミド(2.0ml)を添加し、その後内温を70℃まで加熱し16時間攪拌した。(途中8時間の時点でN,N−ジメチルホルムアミド(2.0ml)を再添加した。)次に塩化チオニルを蒸留留去した後、得られた残渣にトルエン(500ml)を加え再度蒸留を行いトルエン、塩化チオニルの除去を行った。更に得られた残渣をソーダライムトラップを取り付けた真空ポンプを用いて乾燥し、化合物36の粗体(23.12g)を得た。
【0101】
続いて1Lの4口フラスコに窒素雰囲気下、化合物36の粗体(23.12g)、化合物37(18.75g)、化合物38(8.69g)、化合物39(16.48g)をトルエン(326.0ml)に室温中混合した。この混合液を氷水バスに浸し内温を5℃とした後、滴下漏斗に仕込んだ2,6−ジメチルピリジン(25.37g)のトルエン(50.0ml)溶液を攪拌下35分間かけて滴下した。滴下終了後、氷水バスにて冷却下8分間攪拌した後、40℃までオイルバスで加熱して12時間攪拌した。反応液を放置冷却後、析出した塩酸塩をろ別し得られたトルエン溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を徐々に添加した。この混合液にジイソプロピルエーテル(400ml)を加え、分液漏斗に移液し二層分離した。得られた有機層を更に飽和塩化アンモニウム水溶液で2回、水で1回、飽和食塩水で1回洗浄した。次に洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後にエヴァポレーターで溶媒を留去した。続いて得られた化合物40の粗体(45.12g)にジイソプロピルエーテル/トルエン(20g/480g)を加え、50℃に加熱溶解後室温に徐々に冷却し再結晶を行い化合物40−A(35.33g)を得た。
【0102】
次いで同様の方法で、化合物36の粗体(23.12g)、化合物37(28.13g)、化合物38(4.2g)、化合物39(18.1g)を用いて、化合物40−B(37.61g)を得た。
【0103】
実施例1
前記合成例1乃至4にて得られた化合物24、29、40−A、40−Bを選択し、4種類のコーティング材料とした。各コーティング材料をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶媒に、固形分が12%となるように溶解させた。こうして得られた溶液に、酸発生剤としてトリフェニルスルフォニウムトリフレート(みどり化学製、TPS105)を0.5%溶解し、レジストを得るためのコーティング溶液を4種類調製した。
【0104】
次いで、レジストを得るためのコーティング溶液を孔径0.02μmのメンブランフィルターでろ過した後、溶液をシリコンウェハー上にスピンコートし膜厚250nmのレジスト膜を得た。
【0105】
120℃でプリベークを行った後、フォトマスクを介して248nm紫外線での露光を行ったのち、130℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間現像した。この結果、露光部のみ現像液に溶解するポジ型挙動が確認され、同時にいずれのレジスト溶液からも高解像のパターン形状が得られ、基板への密着不良欠陥、成膜不良欠陥、現像欠陥もほとんど見られなかった。
【0106】
実施例2
合成例3で得られた化合物22、27、31、33をコーティング材料とし、各コーティング材料を2−オクタノール(10%)、ヘキシルアルコール(40%)、n−デカン(50%)の混合溶剤に固形分5重量%になるようにそれぞれ溶解させ、フォトレジスト工程に使用する4種類のトップコートを得るためのコーティング溶液を得た。溶解性は良好であり、2日後も析出などの変化は見られなかった。
【0107】
次いで、エチルアダマンタンメタクリレート/ヒドロキシアダマンタンメタクリレート/γブチロラクトンメタクリレートによる3成分共重合体をプロピレングリコールメチルアセテートに溶解した高分子溶液を、1500rpmで60秒間スピンコートし、110℃で60秒間乾燥し、約180nmの厚みのレジストポリマー膜を得た。
【0108】
次いで、フォトレジスト膜上に約45nmの厚みになるように本実施例のトップコートを得るためのコーティング溶液4種類をそれぞれスピンコートし、110℃で50秒間ベークしたところ、レジスト膜上に均一なトップコート膜が得られた。これらの2層膜を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に60秒間浸液したところ、上層のカバーコート膜のみがすみやかに溶解し、4種のトップコートのどの場合においても、元のフォトレジスト膜の45nm膜厚のみが残った。
【0109】
尚、前記3成分共重合体は以下の述べる参考合成例で得られたものある。
参考合成例
還流冷却器、撹拌子を備えた500mlのナス型フラスコに、エチルアダマンタンメタクリレート(EAD)30g、ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(HAD)32g、γブチロラクトンメタクリレート(GBL)14g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.5g、n-ドデシルメルカプタン0.3g、メチルエチルケトン250gを入れ、フラスコ内を窒素で置換した。これを75℃のオイルバスで加熱して20時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水/メタノール(9/1)1リットル中に投入して撹拌し、生成した沈殿を濾過して取り出した。次いで沈殿物をイソプロピルアルコールに溶解させ、再度、水/メタノール(9/1)1リットル中に投入して撹拌し、生成した沈殿を濾過して取り出した。60℃で24時間乾燥し、白色固体の高分子化合物54gを得た。GPC(標準ポリスチレン)から求めた重量平均分子量は12300であった。
【0110】
実施例3
合成例1乃至4で得られた化合物24、29、40−A、40−Bをコーティング材料とした。そして、各コーティング材料を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、固形分が14%となるように溶解させた。こうして得られた溶液に、酸発生剤としてトリフェニルスルフォニウムトリフレート(みどり化学製、TPS105)を0.5%溶解し、4種類のコーティング溶液を調製した。
【0111】
これらをフッ化カルシウム板(厚さ2mm)上にスピンコートし、膜厚100nmの膜を作成した。これらの膜を、分光光度計(分光計器株式会社製VU-201SS)を用い、光透過率を波長248nm、193nm、157nmにて測定した。結果を表1に示す。本実施例で得られた膜は、紫外域〜真空紫外域で高い光透過率を示した。
[表1]
――――――――――――――――――――――――――――――――――
透過率(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
248nm 193nm 157nm
――――――――――――――――――――――――――――――――――
化合物24から形成された膜 99 81 42
化合物29から形成された膜 99 83 49
化合物40−Aから形成された膜 99 85 52
化合物40−Bから形成された膜 99 86 54
――――――――――――――――――――――――――――――――――

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される低分子又は中分子有機化合物からなるコーティング材料。
【化1】


(式中、R1は単結合、メチレン、エチレン、又は酸素であって、R2は、水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基、スルホニルアミド基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでも良く、また、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、ウレタン結合により同種または異種のRを連結してもよい。)。
【請求項2】
少なくともR2の一つが、一般式(2)、又は(3)で表される基である請求項1記載のコーティング材料。
【化2】


(式中、R1、R2は、一般式(1)と同じ。R3は直鎖又は分岐や脂環構造を含んでも良いアルキレン基、R4は水素原子、または水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基を含有しても良い炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族基や脂肪族基を有する環状体及びそれらの複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子を含んでもよい。)。
【請求項3】
少なくともRの一部が一般式(4)である請求項1又は2に記載のコーティング材料。
【化3】


(式中、R,Rは一般式(1)と同じ。R
【化4】


または環状構造を含む炭素数3〜15の3価の有機基である。)
【請求項4】
又はRの少なくとも一部にラクトン基を有する請求項2記載のコーティング材料。
【請求項5】
又はRの少なくとも一部にアルカリ可溶性基を有する請求項2記載のコーティング材料。
【請求項6】
又はRの少なくとも一部に酸の作用によってアルカリ可溶性基に変換する酸不安定基を有する請求項2記載のコーティング材料。
【請求項7】
又はRの少なくとも一部にヘキサフルオロカルビノール基を有する請求項2記載のコーティング材料。
【請求項8】
一般式(1)で表される低分子又は中分子有機化合物の分子量が500〜2000であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコーティング材料。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のコーティング材料及び有機溶剤を有するコーティング溶液を支持体に塗布する工程を有することを特徴とする膜の製造方法。

【公開番号】特開2007−119727(P2007−119727A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218003(P2006−218003)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】