説明

低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物、および、有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】湿式成膜法により成膜可能な結晶化しにくい有機EL材料を提供する。
【解決手段】下式[1]で表される化合物からなる低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。式[1]


(式中、Aはカルバゾリル基を表し、R1〜R9は芳香族炭化水素基などを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子と略記)の有機層を塗布などの湿式成膜法で形成する際に用いられる材料に関する。さらに詳しくは、有機EL素子に用いた場合、当該材料をスピンコート法やキャスト法、インクジェット法等の湿式成膜法による成膜が可能であり、かつ優れた性能(高いガラス転移温度、高い発光効率、低電圧駆動、高色純度、長寿命)を発揮し、特に青色発光材料に好適に用いることができる有機EL素子用材料、有機EL素子用インキ組成物、および、有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有機電界発光素子)の開発が行われている。有
機薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。湿式成膜法は真空プ
ロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能をもった複数の材
料を混合して入れることが容易である等の利点があり、有機薄膜層を湿式成膜法により成膜した有機EL素子が報告されている(特許文献1参照)。
る。
【0003】
また、公知の発光性低分子材料は難溶性のものが多く、通常、真空蒸着により発光層を形成している。ところが、真空蒸着法はプロセスが複雑であり、大型の蒸着装置が必要になる等多くの欠点が存在する。発光性低分子材料は、発光性高分子材料に比べ、カラムクロマトグラフィー等の公知の技術で高純度に精製できる長所がある。従って、低分子材料では、混入する不純物の影響が少ないため、より高い発光性能を有する発光材料となる可能性がある。
【0004】
このように、発光層を高品質とし、有機EL素子の発光効率の向上や長寿命化を実現できることが推認されることから、低分子材料を湿式成膜により、簡便に成膜することが要望されている。
【0005】
有機EL素子の発光層を形成するインキ組成物の技術に関して、有機溶媒に関してはすでに報告されている。(特許文献2参照)
【0006】
また、塗布膜形成用に用いられる有機EL素子用低分子発光性インク組成物としては、例えば、アントラセン誘導体が報告されている。(特許文献3、4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/037836号パンフレット
【特許文献2】特開2003−308969号公報
【特許文献3】特開2004−224766号公報
【特許文献4】国際公開第06/070712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、湿式成膜法で形成される低分子材料からなる層を有する有機EL素子において、低分子材料からなる層(以下、低分子有機層という場合がある。)が結晶化しにくく、高い発光効率、低電圧駆動、高い色純度、長寿命、耐熱性などの優れた特性を有する有機EL素子用材料および有機EL素子を提供することを課題とする。また、本発明の他の課題は、有機発光素子を構成する層を製膜するのに適した低分子材料の溶解性が高く、湿式プロセスでの薄膜形成が容易な有機EL素子用インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記一般式[1]で表される化合物からなる低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
【0011】
一般式[1]
【化1】

【0012】
(式中、Aは、下記一般式[2]で表されるカルバゾリル基を表し、
1〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。)
【0013】
一般式[2]
【化2】

【0014】
(式中、Ar1は置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、または、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、
10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。)
【0015】
また、本発明は、R5が、下記一般式[3]で表される置換もしくは未置換のフェニル基である上記化合物からなる低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料に関する。
【0016】
一般式[3]
【化3】

(式中、R17〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表し、R17〜R21は、それぞれ隣り合う置換基同士で環を形成しても良い。)
【0017】
また、本発明は、上記低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料および溶剤を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、一対の電極間に発光層を含む複数層の有機層を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機層の少なくとも一層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物を湿式成膜法により形成されてなる層である有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0019】
また、本発明は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機層を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が、上記有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物を湿式成膜法により形成されてなる層である有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0020】
また、本発明は、発光層が更にリン光発光材料を含んでなる上記有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機EL素子用材料は、非常に高い耐熱性を有しかつ、溶媒への溶解性に優れる。この有機EL素子用材料を用いることにより、湿式成膜法によって、結晶化しにくく、熱安定性に優れ、発光特性にも優れた膜を形成することができる。また、本発明による有機EL素子用材料として用いた有機EL素子は、低い電圧で駆動し、かつ、長寿命であるため、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや平面発光体として好適に使用することができ、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類や照明等の光源、表示板、標識灯等への応用が可能であり、その技術的価値は大きいものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
【0023】
一般式[1]におけるR1〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。
【0024】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0025】
ここで、1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜18の1価の脂肪族炭化水素基を指し、そのようなものとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基が挙げられる。
【0026】
また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基といった炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0027】
また、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、1−オクタデセニル基といった炭素数2〜18のアルケニル基が挙げられる。
【0028】
また、アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−オクチニル基、1−デシニル基、1−オクタデシニル基といった炭素数2〜18のアルキニル基が挙げられる。
【0029】
また、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基といった炭素数3〜18のシクロアルキル基が挙げられる。
【0030】
さらに、1価の芳香族炭化水素基としては、1価の単環、縮合環、環集合炭化水素基が挙げられる。ここで、1価の単環芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、p−クメニル基、メシチル基等の炭素数6〜18の1価の単環芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0031】
また、1価の縮合環炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、2−アンスリル基、5−アンスリル基、1−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−アセナフチル基、2−アズレニル基、1−ピレニル基、2−トリフェニレル基等の炭素数10〜18の1価の縮合環炭化水素基が挙げられる。
【0032】
また、1価の環集合炭化水素基としては、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基等の炭素数12〜18の1価の環集合炭化水素基が挙げられる。
【0033】
また、1価の脂肪族複素環基としては、2−ピラゾリノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、2−モルホリニル基といった炭素数3〜18の1価の脂肪族複素環基が挙げられる。
【0034】
また、1価の芳香族複素環基としては、トリアゾリル基、3−オキサジアゾリル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−ピロ−リル基、2−ピロ−リル基、3−ピロ−リル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、2−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、3−ピラゾリル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、N−インドリル基、N−カルバゾリル基、N−アクリジニル基、2−チオフェニル基、3−チオフェニル基、ビピリジル基、フェナントロリル基といった炭素数2〜18の1価の芳香族複素環基が挙げられる。
【0035】
また、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基といった炭素数1〜8のアルコキシル基が挙げられる。
【0036】
また、アリ−ルオキシ基としては、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基といった炭素数6〜14のアリ−ルオキシ基が挙げられる。
【0037】
また、アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基といった炭素数1〜8のアルキルチオ基が挙げられる。
【0038】
また、アリ−ルチオ基としては、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、4−tert−ブチルフェニルチオ基といった炭素数6〜14のアリ−ルチオ基が挙げられる。
【0039】
また、置換アミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ビス(m−トリル)アミノ基、N,N−ビス(p−トリル)アミノ基、N,N−ビス(p−ビフェニリル)アミノ基、ビス[4−(4−メチル)ビフェニリル]アミノ基、N−α−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−β−ナフチル−N−フェニルアミノ基等の炭素数2〜26の置換アミノ基が挙げられる。
【0040】
また、アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、アニソイル基、シンナモイル基等の炭素数2〜14のアシル基が挙げられる。
【0041】
また、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の炭素数2〜14のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0042】
また、アリ−ルオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等の炭素数2〜14のアリ−ルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0043】
また、アルキルスルホニル基としては、メシル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基等の炭素数2〜14のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0044】
また、アリ−ルスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等の炭素数2〜14のアリ−ルスルホニル基が挙げられる。
【0045】
これらR1〜R9における、1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基は、さらに他の置換基によって置換されていても良い。そのような置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリ−ルスルホニル基等が挙げられる。これらの置環基の例としては、前述のものが挙げられる。
【0046】
一般式[2]におけるR10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、および、アリ−ルスルホニル基を表す。
【0047】
一般式[2]中のR10〜R16における、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、および、アリ−ルスルホニル基は、それぞれ、R1〜R9におけるハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、および、アリ−ルスルホニル基と同義である。
【0048】
一般式[2]におけるAr1は置換もしくは未置換の炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基、または、置換もしくは未置換の炭素数2〜18の1価の芳香族複素環基を表す。ここでいう1価の芳香族炭化水素基、および、1価の芳香族複素環基は、R1〜R9における1価の芳香族炭化水素基、および、1価の芳香族複素環基と同義である。
【0049】
一般式[1]におけるR5として好ましいものは、置換もしくは未置換の炭素数10〜18の1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、さらに好ましくは、一般式[3]で表される置換もしくは未置換のフェニル基が挙げられる。
【0050】
溶解性及び非晶質性をさらに向上させる観点から、一般式[1]におけるR2として好ましいものは、置換もしくは未置換の炭素数1〜18の1価の脂肪族炭化水素基または、一般式[3]で表される置換もしくは未置換のフェニル基が挙げられ、さらに好ましくは、一般式[3]で表される置換もしくは未置換のフェニル基の置換基としては、置換基を有してもよいアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの低級アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0051】
一般式[3]におけるR17〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、もしくは、1価の有機残基を表す。
【0052】
ここで、R17〜R21におけるハロゲン原子、および、1価の有機残基はR1〜R9におけるハロゲン原子、および、1価の有機残基と同義である。
【0053】
また、R17〜R21は、それぞれ隣り合う置換基同士で環を形成しても良く、その具体例としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、2−アンスリル基、5−アンスリル基、1−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−アセナフチル基が挙げられる。
【0054】
一般式[2]中のR10〜R16として、好ましいものとしては、水素原子、1価の脂肪族炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、さらに好ましいものは、水素原子、1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、特に好ましいものは、水素原子が挙げられる。
【0055】
尚、本発明における、湿式成膜法とは、塗布法、インクジェット法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコーター法、湿漬塗布法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、LB法等などにより、組成物を塗布して成膜するものである。
【0056】
以上、本発明の本発明の一般式[1]で表されるN−カルバゾリル基を有する有機EL素子用材料は低分子材料であって、その分子量は、4000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2700以下、特に好ましくは1800以下であり、また通常300以上、好ましくは450以上、より好ましくは550以上である。分子量が上限を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる場合があり、また分子量が下限を下回ると、ガラス転移温度及び、融点、などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれる可能性がある。
【0057】
本発明の低分子塗布型有機EL素子用材料の代表例を、以下の表1に示すが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
【0058】
表1
【表1】

【0059】
【表1】

【0060】
【表1】

【0061】
【表1】

【0062】
【表1】

【0063】
【表1】

【0064】
【表1】

【0065】
【表1】

【0066】
【表1】

【0067】
【表1】

【0068】
【表1】

【0069】
本発明の有機EL素子用材料は、種々の用途に用いることができる。たとえば、増感効果、発熱効果、発色効果、退色効果、蓄光効果、相変化効果、光電変換効果、光磁気効果、光触媒効果、光変調効果、光記録効果、ラジカル発生効果等の機能を発現する材料として、あるいは逆にこれらの効果を受けて発光機能を有する材料としても用いることができる。より具体的には、発光材料、光電変換材料、光記録材料、画像形成材料、フォトクロミック材料、有機EL材料、光導電材料、二色性材料、ラジカル発生材料、酸発生材料、塩基発生材料、蓄光材料、非線形光学材料、第2高調波発生材料、第3高調波発生材料、感光材料、光吸収材料、近赤外吸収材料、フォトケミカルホールバーニング材料、光センシング材料、光マーキング材料、光化学治療用増感材料、光相変化記録材料、光焼結記録材料、光磁気記録材料、光線力学療法用色素等が挙げられる。
【0070】
これらあげた種々の用途のうち、特に好ましくは、有機EL素子用材料として用いられる。
【0071】
有機EL素子用材料として用いる場合には、高純度の材料が要求されるが、本発明のカルバゾリル基を有する化合物は、昇華精製法や再結晶法、再沈殿法、ゾーンメルティング法、カラム精製法、吸着法など、あるいはこれら方法を組み合わせて行うことができる。これら精製法の中でも再結晶法によるのが好ましい。昇華性を有する化合物においては、昇華精製法によることが好ましい。昇華精製においては、目的化合物が昇華する温度より低温で昇華ボートを維持し、昇華する不純物を予め除去する方法を採用するのが好ましい。また昇華物を採集する部分に温度勾配を施し、昇華物が不純物と目的物に分散するようにするのが望ましい。以上のような昇華精製は不純物を分離するような精製であり、本発明に適用しうるものである。
【0072】
次に、有機EL素子用インキ組成物について説明する。
【0073】
本実施の形態が適用される有機EL素子用インキ組成物は、少なくとも本発明の有機EL素子用材料と溶剤を含有する。
【0074】
上記、有機EL素子用インキ組成物に含まれる溶剤としては種々の溶剤が適用可能であり、特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン;メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル等が挙げられる。
【0075】
これらのうち、水の溶解度が低い点、容易には変質しない点で、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0076】
また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0077】
有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中の水分の存在は、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
【0078】
また、湿式成膜時における組成物からの溶剤蒸発による、成膜安定性の低下を低減するためには、有機EL素子用組成物の溶剤として、沸点が100℃以上、好ましくは沸点が150℃以上、より好ましくは沸点が200℃以上の溶剤を用いることが効果的である。
【0079】
本発明の有機EL素子用インキ組成物は、発光材料が低分子材料であって、湿式成膜法によりこの発光材料を含有する層が形成される有機EL発光素子に用いられることが好ましい。
【0080】
本発明の有機EL素子用組成物は、主に、発光材料を含有させ、発光層を形成するために用いられるが、正孔輸送層などの他の層に用いてもよい。
【0081】
本発明においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により発光層に本発明のインク組成物に、他の公知の発光材料を含有させても良く、また、本発明の組成物を湿式成膜法により成膜した発光層に、他の公知の発光材料を含む発光層を積層しても良い。尚、この場合、他の公知の発光材料を含む発光層は真空蒸着法等の乾式法で形成してもよい。
【0082】
一般に有機EL素子は透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で、平滑な基板が好ましい。
【0083】
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
【0084】
本発明の有機EL素子用インキ組成物は、本発明の有機EL素子用材料の含有量が0.5wt%以上であることが好ましい。通常、有機EL素子の発光層膜厚は10〜100nmであるが、一般的には50nm以上の場合が多い。50nmよりも薄い膜厚になると発光性能の低下や大幅な色調のずれ等の不具合を生じてしまう。50nm以上の膜厚を容易に形成するには0.5wt%以上の溶液濃度であることが好ましい。0.5wt%よりも濃度が低い場合は厚膜形成が困難となる。
【0085】
本発明の有機EL素子用インク組成物には、上述した有機EL素子用材料と溶剤の他に、必要に応じて公知の添加剤を添加してもよい。
【0086】
本発明の有機EL素子用発光性インキ組成物は、公知の湿式成膜法、例えば、塗布法、インクジェット法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコーター法、湿漬塗布法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、LB法等により成膜できる。
【0087】
ここで、本発明の有機EL素子用インキ組成物を用いて作成することができる有機EL素子について詳細に説明する。
【0088】
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層または多層の有機層を形成した素子から構成されるが、ここで、一層型有機EL素子とは、陽極と陰極との間に発光層のみからなる素子を指す。一方、多層型有機EL素子とは、発光層の他に、発光層への正孔や電子の注入を容易にしたり、発光層内での正孔と電子との再結合を円滑に行わせたりすることを目的として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子注入層などを積層させたものを指す。また、発光層と陽極との間で発光層に隣接して存在し、発光層と陽極、又は発光層と、正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ層であるインターレイヤー層を挿入しても良い。したがって、多層型有機EL素子の代表的な素子構成としては、(1)陽極/正孔注入層/発光層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極、(5)陽極/正孔注入層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(7)陽極/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(8)陽極/発光層/電子注入層/陰極等(9)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/陰極、(10)陽極/正孔注入層/インターレイヤー層/発光層/電子注入層/陰極、(11)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/電子注入層/陰極、の多層構成で積層した素子構成が考えられる。
【0089】
また、上述した各有機層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良く、いくつかの層が繰り返し積層されていても良い。そのような例として、近年、光取り出し効率の向上を目的に、上述の多層型有機EL素子の一部の層を多層化する「マルチ・フォトン・エミッション」と呼ばれる素子構成が提案されている。これは例えば、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/電子輸送性発光層/電子注入層/電荷発生層/発光ユニット/陰極から構成される有機EL素子に於いて、電荷発生層と発光ユニットの部分を複数層積層するといった方法が挙げられる。
【0090】
本発明の有機EL素子用材料は、上述したいかなる層に用いても構わないが、特に青色発光素子を作成する際の発光層材料として好適に用いることができる。また、本発明の有機EL素子用材料は、単一の化合物での使用はもちろんのこと、2種類以上の化合物を組み合わせて、すなわち混合、積層するなどして使用することが可能である。さらに、上述した発光層において、他の材料と共に用いても構わない。
【0091】
正孔注入層には、発光層に対して優れた正孔注入効果を示し、かつ陽極界面との密着性と薄膜形成性に優れた正孔注入層を形成できる正孔注入材料が用いられる。また、このような材料を多層積層させ、正孔注入効果の高い材料と正孔輸送効果の高い材料とを多層積層させた場合、それぞれに用いる材料を正孔注入材料、正孔輸送材料と呼ぶことがある。本発明の有機EL素子用材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも好適に使用することができる。これら正孔注入材料や正孔輸送材料は、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい必要がある。このような正孔注入層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば104 〜106 V/cmの電界印加時に、少なくとも10-6cm2 /V・秒であるものが好ましい。本発明の有機EL素子用材料と混合して使用することができる、他の正孔注入材料および正孔輸送材料としては、上記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
【0092】
このような正孔注入材料や正孔輸送材料としては、具体的には、例えばトリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスルフォン酸(PEDOT・PSS)等をあげることができる。
【0093】
正孔注入材料や正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物(特開昭63−2956965号公報)、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)を用いることもできる。例えば、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等や、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等をあげることができる。また、正孔注入材料として銅フタロシアニンや水素フタロシアニン等のフタロシアニン誘導体も挙げられる。さらに、その他、芳香族ジメチリデン系化合物、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料や正孔輸送材料として使用することができる。
【0094】
さらに、正孔注入層に使用できる材料としては、酸化モリブデン(MnOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化ルテニウム(RuOx)、酸化銅(CuOx)、酸化タングステン(WOx)、酸化イリジウム(IrOx)などの無機酸化物もあげられる。
【0095】
芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−ビフェニリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン等があげられ、これらは正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも使用することができる。
【0096】
正孔注入材料として、特に好ましい例を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
また、本発明の有機EL素子用材料と共に用いることが出来る正孔輸送材料としては、下記表3に示す化合物も挙げられる。


【0099】
【表3】

【0100】
上に説明した正孔注入層を形成するには、上述の化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化する。正孔注入層の膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
【0101】
インターレイヤー層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の芳香族アミンを含むポリマーが例示される。また、インターレイヤー層の成膜方法は、高分子量の材料を用いる場合には、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0102】
溶液からのインターレイヤー層の成膜には、公知の湿式成膜法、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
【0103】
インターレイヤー層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。
【0104】
一方、電子注入層には、発光層に対して優れた電子注入効果を示し、かつ陰極界面との密着性と薄膜形成性に優れた電子注入層を形成できる電子注入材料が用いられる。そのような電子注入材料の例としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、カルシウムアセチルアセトナート、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、セシウム等の金属をバソフェナントロリンにドープした無機/有機複合材料(高分子学会予稿集,第50巻,4号,660頁,2001年発行)や、第50回応用物理学関連連合講演会講演予稿集、No.3、1402頁、2003年発行記載のBCP、TPP、T5MPyTZ等も電子注入材料の例として挙げられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陰極からの電子を注入できて、電子を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
【0105】
上記電子注入材料の中で好ましいものとしては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。本発明に使用可能な好ましい金属錯体化合物としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体が好適である。8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)クロロアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、5−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物が挙げられる。
【0106】
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体があげられ、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5 −フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert− ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0107】
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、特に好ましいオキサジアゾール誘導体の具体例を表4に示す。
【0108】
【表4】

【0109】
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、特に好ましいトリアゾール誘導体の具体例を表5に示す。表5中、Phは、フェニル基を表わす。
【0110】
【表5】

【0111】
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、特に好ましいシロール誘導体としての具体例を、表6に示す。
【0112】
【表6】

【0113】
さらに、正孔阻止層には、発光層を経由した正孔が電子注入層に達するのを防ぎ、薄膜形成性に優れた層を形成できる正孔阻止材料が用いられる。そのような正孔阻止材料の例としては、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物や、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等の含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。
【0114】
本発明の有機EL素子の発光層としては、以下の機能を併せ持つものが好適である。
注入機能;電界印加時に陽極または正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極または電子注入層より電子を注入することができる機能
輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさには、違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよい。
【0115】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層として好適に用いることが出来る。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層中のホスト材料又はドーパント材料として使用し、他の化合物と組み合わせて発光層を形成することができる。
【0116】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いて、青色から緑色の発光を得るために、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物を用いることができる。これら化合物の具体例としては、例えば特開昭59−194393号公報に開示されている化合物をあげることができる。さらに他の有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(1971)628〜637頁および640頁に列挙されている。
【0117】
前記金属キレート化オキシノイド化合物としては、例えば、特開昭63−295695号公報に開示されている化合物を用いることができる。その代表例としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体や、ジリチウムエピントリジオン等が好適な化合物としてあげることができる。
【0118】
また、前記スチリルベンゼン系化合物としては、例えば、欧州特許第0319881号明細書や欧州特許第0373582号明細書に開示されているものを用いることができる。そして、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も、発光層の材料として用いることができる。このほか、欧州特許第0387715号明細書に開示されているポリフェニル系化合物も発光層の材料として用いることができる。
【0119】
さらに、上述した蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物およびスチリルベンゼン系化合物等以外に、例えば12−フタロペリノン(J. Appl. Phys.,第27巻,L713(1988年))、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(以上Appl. Phys. Lett.,第56巻,L799(1990年))、ナフタルイミド誘導体(特開平2−305886号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報、または第38回応用物理学関係連合講演会で浜田らによって開示されたオキサジアゾール誘導体)、アルダジン誘導体(特開平2−220393号公報)、ピラジリン誘導体(特開平2−220394号公報)、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、ピロロピロール誘導体(特開平2−296891号公報)、スチリルアミン誘導体(Appl. Phys. Lett., 第56巻,L799(1990年)、クマリン系化合物(特開平2−191694号公報)、国際特許公報WO90/13148やAppl. Phys. Lett.,vol58,18,P1982(1991)に記載されているような高分子化合物、9,9',10,10’−テトラフェニル−2,2’−ビアントラセン、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)誘導体、ポリフルオレン誘導体やそれら共重合体等、例えば、下記一般式[6]〜一般式[8]の構造をもつものが挙げられる。
【0120】
一般式[4]
【化4】

【0121】
(式中、Rx1およびRX2は、それぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基を、n1は、3〜100の整数を表す。)
【0122】
一般式[5]
【化5】

【0123】
(式中、Rx3およびRX4は、それぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基を、n2およびn3は、それぞれ独立に、3〜100の整数を表す。)
【0124】
一般式[6]
【化6】

【0125】
(式中、RX5およびRX6は、それぞれ独立に、1価の脂肪族炭化水素基を、n4およびn5は、それぞれ独立に、3〜100の整数を表す。Phはフェニル基を表す。)
【0126】
また、特開平5−258862号公報等に記載されている一般式(Rs−Q)2 −Al−O−L3(式中、L3はフェニル部分を含んでなる炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−L3はフェノラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子を示し、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個を上回り結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を示す〕で表される化合物も挙げられる。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0127】
白色の発光を得る場合の発光層としては特に制限はないが、下記のものを用いることができる。
有機EL積層構造体の各層のエネルギー準位を規定し、トンネル注入を利用して発光させるもの(欧州特許第0390551号公報)。
同じくトンネル注入を利用する素子で実施例として白色発光素子が記載されているもの(特開平3−230584号公報)。
二層構造の発光層が記載されているもの(特開平2−220390号公報および特開平2−216790号公報)。
発光層を複数に分割してそれぞれ発光波長の異なる材料で構成されたもの(特開平4−51491号公報)。
青色発光体(蛍光ピーク380〜480nm)と緑色発光体(480〜580nm)とを積層させ、さらに赤色蛍光体を含有させた構成のもの(特開平6−207170号公報)。
青色発光層が青色蛍光色素を含有し、緑色発光層が赤色蛍光色素を含有した領域を有し、さらに緑色蛍光体を含有する構成のもの(特開平7−142169号公報)。
これらの中では、上記の構成のものが特に好ましい。
【0128】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、リン光発光材料を用いることもできる。この場合、本発明の化合物は発光層中のホスト材料として用いることができる。ここでいうリン光発光材料とは、励起三重項状態から基底状態へ遷移する際に発光する化合物を意味する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子に使用できるリン光発光材料は、例えば有機金属錯体があげられ、ここで金属原子は通常、遷移金属であり、好ましくは周期では第5周期または第6周期、族では6族から11族、さらに好ましくは8族から11族の元素が対象となる。具体的にはイリジウム、白金や銅などである。また、配位子としては2−フェニルピリジンや2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジンなどがあり、これらの配位子上の炭素原子が金属と直接結合しているのが特徴である。別の例としてはポルフィリンまたはテトラアザポルフィリン環錯体などがあり、中心金属としては白金などが挙げられる。例えば、下記に示す公知の化合物がリン光発光材料として好適に用いられる(ただし、Phはフェニル基を表す)。
【0129】
【化7】

【0130】
【化8】

【0131】
さらに、本発明の有機EL素子の陽極に使用される材料は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO、SnO2 、ZnO等の導電性材料が挙げられる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることができる。この陽極は、上記発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくなるような特性を有していることが望ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下としてあるものが好ましい。さらに、陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0132】
また、本発明の有機EL素子の陰極に使用される材料は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0133】
本発明の有機EL素子を作製する方法については、上記の材料および方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、および必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0134】
この有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、その透光性については、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上、好ましくは90%以上であるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
【0135】
これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板が挙げられる。
【0136】
本発明の有機EL素子の各層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム照射、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、もしくはスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかの方法を適用することができる。また、特表2002−534782や、S.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているLITI(Laser Induced Thermal Imaging、レーザー熱転写)法や、印刷(オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷)、インクジェット等の方法を適用することもできる。
【0137】
また、有機EL素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、樹脂等により素子全体を被覆や封止を施したりしても良い。特に素子全体を被覆や封止する際には、光によって硬化する光硬化性樹脂が好適に使用される。
【0138】
本発明の有機EL素子に印加する電流は通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子破壊しない範囲内であれば特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
【0139】
本発明の有機EL素子の駆動方法は、パッシブマトリクス法のみならず、アクティブマトリックス法での駆動も可能である。また、本発明の有機EL素子から光を取り出す方法としては、陽極側から光を取り出すボトム・エミッションという方法のみならず、陰極側から光を取り出すトップ・エミッションという方法にも適用可能である。これらの方法や技術は、城戸淳二著、「有機ELのすべて」、日本実業出版社(2003年発行)に記載されている。
【0140】
本発明の有機EL素子のフルカラー化方式の主な方式としては、3色塗り分け方式、色変換方式、カラーフィルター方式が挙げられる。3色塗り分け方式では、シャドウマスクを使った蒸着法や、インクジェット法や印刷法が挙げられる。また、特表2002−534782や、S.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているレーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI法ともいわれる)も用いることができる。色変換方式では、青色発光の発光層を使って、蛍光色素を分散した色変換(CCM)層を通して、青色より長波長の緑色と赤色に変換する方法である。カラーフィルター方式では、白色発光の有機EL素子を使って、液晶用カラーフィルターを通して3原色の光を取り出す方法であるが、これら3原色に加えて、一部白色光をそのまま取り出して発光に利用することで、素子全体の発光効率をあげることもできる。
【0141】
さらに、本発明の有機EL素子は、マイクロキャビティ構造を採用しても構わない。これは、有機EL素子は、発光層が陽極と陰極との間に挟持された構造であり、発光した光は陽極と陰極との間で多重干渉を生じるが、陽極及び陰極の反射率、透過率などの光学的な特性と、これらに挟持された有機層の膜厚とを適当に選ぶことにより、多重干渉効果を積極的に利用し、素子より取り出される発光波長を制御するという技術である。これにより、発光色度を改善することも可能となる。この多重干渉効果のメカニズムについては、J.Yamada等によるAM−LCD Digest of Technical Papers,OD−2,p.77〜80(2002)に記載されている。
【0142】
以上述べたように、本発明のカルバゾリル基を有する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機EL素子は、低い駆動電圧で長時間の青色発光を得ることが可能である。故に、本有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや各種の平面発光体として、さらには、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が考えられる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0144】
まず、本発明の有機EL素子用材料の合成例を示す。
【0145】
合成例1
化合物(1)の合成方法
【0146】
反応1〜反応4に従って化合物(1)を合成した。
【0147】
反応1
【化9】

【0148】
以下、反応1を参照しながら合成方法を説明する。窒素雰囲気下、−78℃にて、テトラヒドロフラン(100ml)中、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール(I)9.63g(0.03mol)と、n−ブチルリチウム(1.52Mヘキサン溶液)33mlを反応させ、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールの3位をリチオ化した。2時間攪拌した後、−78℃にて、ほう酸トリメチル10.39g(0.1mol)をゆっくりと滴下し、同温度で2時間攪拌、さらに室温にて3時間攪拌を行った。その後、反応生成物に、1%塩酸水溶液200mlを加え、30分攪拌したのち、1%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出、乾燥、エバポレーターにより濃縮し、8.65gの9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸(II)を得た。
【0149】
反応2
【化10】

【0150】
以下、反応2を参照しながら合成方法を説明する。窒素雰囲気下、(III)を10.38g(0.04mol)、(IV)10.0g(0.05mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.3g、炭酸カリウム(2M水溶液)50g、テトラヒドロフラン50gを4つ口フラスコに加え、5時間加熱還流した。その後、反応液をメタノール400ml中に注入し、析出した固体を濾取し、熱真空乾燥させて、粗生成物として(V)が12g得られ、さらに、得られた粗成生物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0151】
反応3
【化11】

【0152】
以下、反応3を参照しながら合成方法を説明する。窒素雰囲気下、(V)を10g(0.033mol)、四塩化炭素130mlを三ッ口フラスコ中に加え、滴下ロートを用いて、臭素5.8g(0.033mol)、四塩化炭素10mlをゆっくり滴下する。
滴下終了後、室温にて1時間攪拌を行い、その後、チオ硫酸ナトリウム水溶液で反応を終了させる。その後、有機層を中和し、水洗を行い、エバポレーターにて溶媒を除いた。得られた黄色の粉末をトルエンにて再結晶することにより、化合物(VI)を9.5g得た。
【0153】
反応4
【化12】

【0154】
以下、反応4を参照しながら合成方法を説明する。窒素雰囲気下、(VI)を4.09g(0.01mol)、(II)3.00g(0.012mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.3g、炭酸カリウム(2M水溶液)50g、テトラヒドロフラン50gを4つ口フラスコに加え、5時間加熱還流した。その後、反応液をメタノール400ml中に注入し、析出した固体を濾取し、熱真空乾燥させて、粗生成物として(化合物(1))が3.20g得られた。得られた粗成生物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに昇華精製を行った。化合物(1)は、マススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)、 1H‐NMR、および13C‐NMR(日本電子製、ECX−400P)によって同定した。化合物(1)のUVスペクトル、蛍光(PL)スペクトルを、それぞれ図1〜図2示す。尚、UVスペクトルは、日立分光(株)製光度計(U−3500),蛍光(PL)スペクトルは、日本分光(株)製蛍光分光光度計(FP−6500)により測定した。
【0155】
尚、化合物(1)の合成に使用した3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール(I)は、WO2007/43484記載の方法に従って合成したものを用いた。4−ビフェニルボロン酸(II)、9−ブロモアントラセン(III)は、市販の試薬を用いた。
【0156】
合成例2〜30
合成方法は、以下に示す反応5〜反応10を組み合わせて、表1中の化合物を合成した。
【0157】
反応5
【化13】

【0158】
22〜R26は本発明の化合物を合成するのに必要な置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、1価の有機残基を表す。合成方法としては、常法に従い、窒素気流下、−78℃において、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール誘導体(VII)にn-ブチルリチウム(n-BuLi)を反応させてリチオ化し、生成したLi誘導体に、B(OMe)3を反応させて、目的とするボロン酸誘導(VIII)体を合成した。
【0159】
反応6
【化14】

【0160】
1〜R9は本発明の化合物を合成するのに必要な置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、1価の有機残基を表す。R22〜R26は前述のものと同義である。合成方法としては、9−ブロモアントラセン誘導体(IX)に、カルバゾール誘導体(VIII)を当量反応させる以外は合成例1と同様の操作をすることで目的化合物が得られる。
【0161】
反応7
【化15】

【0162】
10〜R16は、本発明の化合物を合成するのに必要な置換基であり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、もしくは1価の有機残基を表わす。Ar1は、前述のものと同義である。合成方法としては、合成例1の(III)のかわりに対応する9−ブロモアントラセン誘導体(IX)を、(II)のかわりに対応するカルバゾール誘導体(XI)を当量反応させる以外は、合成例1と同様の操作をすることで目的化合物(XII)が得られた。
【0163】
反応8
【化16】

【0164】
17〜R21は前述のものと同義である。合成方法としては、実施例1の(III)のかわりに対応する9−ブロモアントラセン誘導体(XIII)を、(II)のかわりに対応するベンゼン誘導体(XIV)を当量反応させる以外は、実施例1と同様の操作をすることで目的化合物(XV)が得られた。
【0165】
反応9
【化17】

【0166】
17〜R21は、本発明の化合物を合成するのに必要な置換基である。合成方法としては、実施例1の(IV)のかわりに対応するアントラセン誘導体(XIX)を用い、臭素もしくはNBSを用いて、常法に従い、臭素化を行なった。
【0167】
反応10
【化18】

【0168】
15〜R21は、本発明の化合物を合成するのに必要な置換基であり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、もしくは1価の有機残基を表わす。Ar1は、前述のものと同義である。合成方法としては、実施例1の(III)のかわりに対応する9−ブロモアントラセン誘導体(XX)を、(II)のかわりに対応するカルバゾール誘導体(XXI)を当量反応させる以外は、実施例1と同様の操作をすることで目的化合物(XXII)が得られた。
【0169】
以上の反応1〜反応10を組み合わせて得られた本発明の化合物の構造については、マススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)にて同定した。結果を表7に示す。尚、化合物番号は表1のものと同様である。
【0170】
【表7】


【0171】
【表7】

【0172】
以下、本発明の有機EL素子用インキ組成物について、下記実施例により説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0173】
実施例51
化合物(1)の溶解度測定
【0174】
この本発明の化合物(1)のトルエンへの溶解度を調べ、その結果を表8に示した。表1に示すが如く、化合物(1)はトルエンに対して成膜に十分必要な溶解性を示した。
【0175】
実施例52〜100
化合物(1)のかわりに、表1中に示す化合物を用いてトルエンへの溶解度を調べた、その結果を表8に示す。
【0176】
比較例1
以下に示す化合物(A)を用いてトルエンへの溶解度を調べた。その結果を表8に示す。
【0177】
【化19】

【0178】
【表8】

【0179】
【表8】



【0180】
以下、本発明の化合物を有機EL素子用材料として用いた有機EL素子について下記実施例により説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例においては、特に断りのない限り、混合比は全て重量比を示す。蒸着(真空蒸着)は10-6Torrの真空中にて、基板の加熱や冷却といった温度制御はしない条件下で行った。スピンコートは溶媒種や目標の膜厚に合わせて、500rpm〜2500rpmの間の回転速度で1分間の回転動作をさせた。また、素子の発光特性は、発光素子面積2mm×2mmの有機EL素子を用いて特性を測定した。
【0181】
実施例101
洗浄したITO電極付きガラス板上に、表3のHTM5を真空蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を得た。次いで、本発明の表1中の化合物(1)のトルエン溶液(濃度:2wt%)をスピンコートし、その後70℃の減圧下で1時間乾燥させることで膜厚50nmの発光層を得た。さらに、トリス(8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウム錯体(Alq3)を真空蒸着して膜厚20nmの電子注入層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでアルミニウム(Al)を150nm蒸着して電極を形成し、有機EL素子を得た。この素子を6Vに駆動させた際の色度は、CIE(x,y)=(0.14,0.04)の青色発光であった。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表9に示す。
【0182】
実施例102〜126
化合物(1)のかわりに、表1中に示す化合物を用いて発光層を作成した以外は実施例101と同様に素子を作成した。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度15mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表9に示す。
【0183】
比較例2
上記に示した化合物(A)を用いて発光層を作成した以外は実施例101と同様に素子を作成した。この素子を6Vに駆動させた際の色度は、CIE(x,y)=(0.08,0.03)の青色発光であった。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度と半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表9に示す。
【0184】
【表9】


【0185】
表9から明らかなように、本発明の化合物はいずれも、比較例2で作成した素子よりも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
【0186】
実施例127
表2のHIM3をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚70nmの正孔注入層をITO電極付きガラス板上に形成した。次に、表1の化合物(1)と化合物(B)とを 5:100の重量比でキシレンに溶解させて1.5重量%の溶液を作製し、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚40nmの発光層を形成した。さらに表4の化合物EX5をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚20nmの電子注入層を形成した。その上に、酸化リチウム(Li2O)を1nm、さらにAlを100nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子を、直流10Vで駆動させた際の外部量子効率は4.6%を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度13.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表10に示す。
【0187】
【化20】

【0188】
実施例128〜152
化合物(1)の代わりに表10中の化合物を用いた以外は、実施例127と同様に素子を作成した。これらの素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率がいずれも4%以上を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表10に示す。
【0189】
比較例3
化合物(1)の代わりに、化合物(A)を用いた以外は実施例127と同様に素子を作成した。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表10に示す。
【0190】
表10
【表10】

【0191】
表10から明らかなように、本発明の化合物はいずれも、比較例3で作成した素子よりも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
【0192】
実施例153
表2のHIM4をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚70nmの正孔注入層をITO電極付きガラス板上に形成した。次に、表1の化合物(1)と化合物(C)とを 3:100の重量比でクロロホルムに溶解させて3重量%の溶液を作製し、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚40nmの発光層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚20nmの電子注入層を形成した。その上に、フッ化リチウム(LiF)を1nm、さらにAlを100nm蒸着して陰極を形成し有機EL素子を得た。この素子を、直流10Vで駆動させた際の外部量子効率は4.6%を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度13.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表11に示す。
【0193】
【化21】

【0194】
実施例154〜165
化合物(1)の代わりに表11中の化合物を用いた以外は、実施例153と同様に素子を作成した。これらの素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率がいずれも4%以上を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表11に示す。
【0195】
表11
【表11】

【0196】
表11から明らかなように、本発明の化合物はいずれも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
【0197】
実施例166
洗浄したITO電極付きガラス板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck社製、商品名:CLEVIOS P CH8000)をスピンコート法にて成膜し、膜厚80nmの正孔注入層を得た。次に、化合物(B)と化合物(1)とを100:3の重量比でイソプロピルアルコールに溶解させて1重量%の溶液を作製し、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚30nmの発光層を形成した。さらに化合物(D)をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚30nmの電子注入層を形成した。その上に、酸化リチウム(Li2O)を1nm、さらにAlを100nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率は3.7%を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表12に示す。
【0198】
【化22】

【0199】
実施例167〜186
化合物(1)のかわりに表10中の化合物を用いた以外は、実施例166と同様に素子を作成した。これら素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率はいずれも3%以上を示し、また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表12に示す。
【0200】
比較例4
化合物(1)のかわりに化合物(A)を用いた以外は、実施例166と同様に素子を作成した。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表12に示す。
【0201】
表12
【表12】

【0202】
表12から明らかなように、本発明の化合物はいずれも、比較例4で作成した素子よりも、長寿命で高い輝度が得られた。
【0203】
実施例187
洗浄したITO電極付きガラス板上に、表3のHTM7を真空蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を得た。次いで、本発明の表1中の化合物(2)をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚60nmの電子輸送性発光層を得た。その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでAlを200nm蒸着して電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子は、8Vにて発光輝度2200(cd/m2)の青色発光を示した。
【0204】
実施例188
ITO電極付きガラス板上に、HIM2を蒸着して膜厚65nmの正孔注入層を形成した。次に、表1の化合物(2)と化合物(E)とを100:3の重量比でアセトンに溶解させて1重量%の溶液を作製し、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚45nmの発光層を形成した。さらに、表6のES2を蒸着して膜厚20nmの電子輸送層を形成した。その上に、さらに、Alq3を真空蒸着して膜厚10nmの電子注入層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでAlを200nm蒸着して電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命は1000時間以上あった。
【0205】
【化23】

【0206】
実施例189
ITO電極付きガラス板上に、化合物(5)をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚膜厚65nmの正孔注入層を形成した。次に、化合物(B)を蒸着し45nmの発光層を形成した。さらに、Alq3を真空蒸着して膜厚20nmの電子輸送層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでAlを200nm蒸着して電極を形成して、有機EL素子を得た。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命は1000時間以上あった。
【0207】
実施例190
洗浄したITO電極付きガラス板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck社製、商品名:CLEVIOS P CH8000)をスピンコート法にて成膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、化合物(27)を3%および電子輸送材料(化合物(F))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度750cd/m2の青色発光が得られた。
【0208】
【化24】

【0209】
実施例191
洗浄したITO電極付きガラス板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck社製、商品名:CLEVIOS P AI4083)をスピンコート法にて成膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、化合物(40)を3%および電子輸送材料(化合物(G))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度640cd/m2の青色発光が得られた。
【0210】
【化25】

【0211】
実施例192
ITO電極付きガラス板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck社製、商品名:CLEVIOS P AI4083)をスピンコートし65nmの正孔注入層を得た。次に、化合物(H)をキシレンに0.5重量%の濃度で溶解させ、得られたキシレン溶液を用いてスピンコート法により10nmのインターレイヤー層を形成した。続いて、表1中の化合物(1)をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコート法により60nmの発光層を得た。さらにAlq3を蒸着して膜厚20nmの電子注入層を形成した。その上に、酸化リチウム(Li2O)を1nm、さらにAlを100nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子を、直流10Vで駆動させた際の外部量子効率は4.6%、最大発光輝度710cd/m2の青色発光が得られた。
【0212】
ここで、化合物(H)とは、下記式で表される2つの繰り返し単位が、50:50のモル比で構成されてなるランダム共重合体である。
【0213】
【化26】




【0214】
(式中、nは、3〜500の整数を表す。)
【0215】
実施例193
高分子材料(シグマ・アルドリッチ社製 製品番号:ADS254BE)をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコートにより膜厚65nmの正孔注入層をITO付きガラス基板上に得た。次に、表1中の化合物(1)をトルエンに2重量%の濃度で溶解させ、得られた溶液を用いてスピンコート法により60nmの発光層を得た。さらにAlq3を蒸着して膜厚20nmの電子注入層を形成した。その上に、酸化リチウム(Li2O)を1nm、さらにAlを100nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度640cd/m2の青色発光が得られた。
【0216】
以上のように、本発明で示された有機EL素子用材料を用いることにより、高い性能のEL素子が作成できる。比較化合物に対して格段に高い性能が発揮されることは明らかであり、有機EL素子の高い発光効率、低駆動電圧化、長寿命化、高色純度な青色発光が達成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される化合物からなる低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
一般式[1]
【化1】

(式中、Aは、下記一般式[2]で表されるカルバゾリル基を表し、
1〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。)
一般式[2]
【化2】

(式中、Ar1は置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、または、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基を表し、
10〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表す。)
【請求項2】
5が、下記一般式[3]で表される置換もしくは未置換のフェニル基である請求項1記載の低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
一般式[3]
【化3】

(式中、R17〜R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の1価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の1価の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、置換アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、または、アリ−ルスルホニル基を表し、R17〜R21は、それぞれ隣り合う置換基同士で環を形成しても良い。)
【請求項3】
請求項1または2に記載の低分子塗布型有機エレクトロルミネッセンス素子用材料および溶剤を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物
【請求項4】
一対の電極間に発光層を含む複数層の有機層を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機層の少なくとも一層が、請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物を湿式成膜法により形成されてなる層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機層を形成してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層が、請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用インキ組成物を湿式成膜法により形成されてなる層である有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
発光層が更にリン光発光材料を含んでなる請求項4または5記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2011−12190(P2011−12190A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158316(P2009−158316)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】