説明

低分子干渉RNAの改善された設計

本発明は、シード領域中での塩基対合と比較して、アンチセンス鎖(ガイド鎖)の3’末端およびセンス鎖(パッセンジャー鎖)の5’末端それぞれにおいて増加した熱力学的安定性を示す低分子干渉RNA分子に関する。本発明のsiRNAは、ターゲッティングされる遺伝子に対して増加したノックダウン活性を示し、RNAse、特に血清RNAseに対して改善された抵抗性を示す。本発明はまた、siRNA分子を産生する方法、本発明の改善されたsiRNA分子を使用する標的特異性のRNA干渉の方法、ならびに当該siRNA分子を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シード領域における塩基対合と比較して、アンチセンス鎖(ガイド鎖)の3’末端およびセンス鎖(パッセンジャー鎖)の5’末端それぞれにおいて増加した熱力学的安定性を示す低分子干渉RNA分子に関する。本発明のsiRNAは、ターゲッティングされる遺伝子に対して増加したノックダウン活性を示し、RNAse、特に血清RNAseに対して改善した抵抗性を示す。本発明はまた、siRNA分子の産生の方法、本発明の改善されたsiRNA分子を使用する標的特異性のRNA干渉の方法、および当該siRNA分子を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子二本鎖RNA(dsRNA)分子により媒介されるRNA干渉(RNAi)は、in vitroおよびin vivoの遺伝子サイレンシングのためのすでに確立された技術である(最近の総説については、例えば、Kimら、(2007) Nature Reviews Genetics 8、173-184およびそこで引用された参考文献を参照のこと)。
【0003】
siRNAは、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を導くトランスアクティブ(transactive)切断および分解によって、相補的RNA(特に、mRNAおよびウイルスRNA(例えば、ウイルスゲノムRNAまたはサブゲノムRNA))をターゲッティングする。
【0004】
欧州特許公報第1 407 044号は、各RNA鎖が19〜23ヌクレオチドの長さを有し、少なくとも1つの鎖が1〜3ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する単離されたdsRNA分子を記載しており、このRNA分子は標的特異性のRNA干渉が可能であることを記載している。
【0005】
提案された他のsiRNA分子は、19〜23塩基対の対応する分子であり、この二本鎖RNAは両側が平滑末端である。
【0006】
欧州出願公報第1 486 564号は、血清安定性の増加によって改善された効力を有する、RNA干渉が可能なdsRNA分子の特異的選択のための方法を記載しており、このdsRNAの一本鎖の配列は、dsRNAの各末端における最後の相補的ヌクレオチド対がG-Cであるか、または最後の4つの相補的ヌクレオチド対のうち少なくとも2つがG-C対であり、dsRNAが、第1の末端に1〜4の非対合ヌクレオチドのオーバーハングを有し、かつ第2の末端にオーバーハングを有さず、一本鎖オーバーハングが、最後の相補的ヌクレオチド対の直ぐ隣の非対合のヌクレオチドがプリン塩基を含むことを特徴とする、ように選択される。欧州出願公報第1 486 564号に記載の方法によって選択された全ての特異的dsRNA分子は、ガイド鎖に3’オーバーハングを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許公報第1 407 044号
【特許文献2】欧州出願公報第1 486 564号
【特許文献3】米国特許第4,458,066号
【特許文献4】国際出願公報2007/012329号
【特許文献5】国際出願公報2009/150156号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kimら、(2007) Nature Reviews Genetics 8、173-184
【非特許文献2】Narangら、(1979) Methods in Enzymology 68: 90
【非特許文献3】Braunら、(1979) Methods in Enzymology 68: 109
【非特許文献4】Beaucageら、(1981) Tetrahydron Letters 22: 1859
【非特許文献5】Milliganら、(1989) Methods Enzymol. 180、51-62
【非特許文献6】Ausubelら、(編) Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、USAの最新版
【非特許文献7】Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.、Easton、PA、USA)の最新版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底にある技術上の課題は、改善した遺伝子サイレンシング活性を示すsiRNA分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術上の課題の解決法は、特許請求の範囲に規定される本発明の実施形態によって提供される。
【0011】
特に、本発明は、siRNA分子のシード領域における塩基対合と比較して、パッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端それぞれにおいて増加した熱力学的安定性を有する、標的特異性のRNA干渉が可能な単離された二本鎖RNA分子を提供する。本発明のsiRNA分子の設計は、(i)ターゲッティングされる遺伝子に対するノックダウン効力を改善することおよび(ii)RNAseに対する抵抗性を増加させることによって、遺伝子サイレンシング活性の顕著な増加を導く。
【0012】
従って、本発明は特に、パッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端に少なくとも3つのG/C塩基対を有する、標的特異性のRNA干渉が可能な単離されたdsRNA分子を対象とする。好ましくは、本発明のRNA分子は、それぞれパッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端に、3〜10、即ち、3、4、5、6、7、8、9または10のG/C塩基対を有する。特に好ましくは、本発明のRNA分子は、パッセンジャー鎖が5’末端に3〜10、即ち、3、4、5、6、7、8、9または10のGヌクレオチドの配列を有し、ガイド鎖が3’末端に3〜10、即ち、3、4、5、6、7、8、9または10のCヌクレオチドの配列を有するか、その逆である(vice versa)、ことを特徴とする。最も好ましくは、本発明のRNA分子は、パッセンジャー鎖の5’末端に5つのGヌクレオチドの配列を有し、ガイド鎖の3’末端に5つのCヌクレオチドの配列を有するか、その逆である。
【0013】
従って、本発明に従う用語「標的特異性のRNA干渉が可能な単離された二本鎖RNA分子」は、それぞれ、一つの鎖(「センス」即ち「パッセンジャー」鎖)が標的RNA(例えば、ターゲッティングされる遺伝子のmRNAまたはウイルスのゲノムもしくはサブゲノムRNAなどのウイルスRNA)のヌクレオチド配列を反映し、センス即ちパッセンジャー鎖とRNA二重鎖を形成することが可能な第二の鎖(いわゆる「アンチセンス」即ち「ガイド」鎖)が、「センス」即ち「パッセンジャー」鎖およびターゲッティングされるRNAに対して本質的に相補的な配列を示す、二本鎖リボヌクレオチドを対象とする。siRNA分子を使用する翻訳後遺伝子サイレンシングの機構の間に、アンチセンス即ちガイド鎖のみがRISC複合体中に取り込まれる(パッセンジャー鎖がRISC複合体中に投入されることもあり得るが、この場合、標的RNAは認識されず、RNA干渉は開始されない)。ガイド鎖の5’末端の最初の10ヌクレオチドは、RISC複合体におけるmRNAの認識に必要なコア領域とみなすこともできるいわゆる「シード」領域を示す。従って、ガイド鎖のシード領域内の配列は、ターゲッティングされるmRNAの配列を100%まで反映することが好ましい。
【0014】
本発明のdsRNA分子は、パッセンジャー鎖に、1〜5ヌクレオチド、好ましくは1、2または3ヌクレオチドの3’オーバーハングを含み得る。従って、反対側の末端(即ち、パッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端によって形成される末端)では、本発明のdsRNA分子は平滑末端である(即ち、この末端にはオーバーハングが存在しない)。さらに、本発明のsiRNA分子は、それぞれパッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端のG/C塩基対配列を除き、かつ存在する場合にはパッセンジャー鎖の3’末端の任意選択のオーバーハングを除いて、10〜26、より好ましくは19〜22、特に好ましくは21のヌクレオチドの長さを有することが好ましい。
【0015】
本発明の二本鎖RNA分子の安定性は、以下の手段のうちの1つ以上によって増加され得る:
【0016】
存在する場合、パッセンジャー鎖の3’オーバーハングは、プリンヌクレオチド、特にアデノシンヌクレオチドまたはグアノシンヌクレオチドの選択によって安定化され得る。さらに、例えば、2’-デオキシチミジンによって3’オーバーハングでウリジンヌクレオチドを置換することによって、修飾されたアナログによって3’オーバーハングでピリミジンヌクレオチドを置換することも可能である。さらに、2’-ヒドロキシル基の非存在は、特に組織培養培地中での3’オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性を増加させる。
【0017】
さらに、RNA分子はまた、特にdsRNA形成領域内に、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドアナログを含み得る。
【0018】
天然に存在するヌクレオチドと比較したヌクレオチドアナログの化学的修飾は、リボース、リン酸および/または塩基部分に存在し得る。安定性が増加した分子に関して、特にRNA分解酵素に関して、骨格(即ち、リボースおよび/またはリン酸部分)における修飾が、特に好ましい。
【0019】
リボース修飾リボヌクレオチドの好ましい例は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2またはCNから選択される基によって2’-OH基が置換され、RがC1〜C6アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロがF、Cl、BrまたはIである、アナログである。用語「修飾されたリボヌクレオチド」はまた、いくつかの例では「デオキシヌクレオチド」とも呼ばれる場合がある2’-デオキシ誘導体をも含むことは、当業者に明らかである。2’-O-メチルアナログなどの2’-O-修飾アナログの例もまた、オフターゲットの効果を最小化するために、シード領域中、例えば、ガイド鎖の2位(その5’末端から数えて)に含まれ得る。
【0020】
前述のように、少なくとも1つの修飾されたリボヌクレオチドは、塩基部分に化学的修飾を有するアナログから選択され得る。このようなアナログの例には、5-アミノアリル-ウリジン、6-アザ-ウリジン、8-アザ-アデノシン、5-ブロモ-ウリジン、7-デアザ-アデノシン、7-デアザ-グアノシン、N6-メチル-アデノシン、5-メチル-シチジン、シュード-ウリジンおよび4-チオ-ウリジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
隣接するリボヌクレオチド間のリン酸エステル基が修飾された骨格修飾されたリボヌクレオチドの例は、ホスホチオアート(phosphothioate)基である。
【0022】
存在する場合、パッセンジャー鎖の3’オーバーハングはまた、分析適用、特に診断適用における検出のために標識化され得る。「標識」は、物理的、化学的および/または生物学的手段を介して問題のsiRNAの検出を可能にする任意の化学的実体であり得る。3’オーバーハングの1以上のヌクレオチドに連結または組み込まれた典型的な標識の例は、放射性標識、発色団およびフルオロフォア(例えば、フルオレセイン、TAMなど)である。
【0023】
G/C塩基対および任意選択で3’オーバーハングを除いたその一部の内側のパッセンジャー鎖の配列同一性は、所望の標的分子(即ち、ターゲッティングされるRNA)に対して少なくとも70%であることが好ましい。より好ましくは、同一性は、少なくとも85%であり、最も好ましくは100%である。同じく、これは、ガイド鎖中の配列の相補性が、所望の標的RNAに対して少なくとも70%、より好ましくは85%、最も好ましくは100%であることを意味する。特に、上で規定したガイド鎖のシード領域は、標的RNAに対して100%の相補性を有することが最も好ましい。
【0024】
典型的に、かつ特に好ましくは、本発明のsiRNA分子は、配列番号5/配列番号6、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24および配列番号25/配列番号26の配列対(パッセンジャー鎖/ガイド鎖)である。
【0025】
さらに、本発明の主題は、以下の段階を含む、上で規定した単離されたdsRNA分子を産生する方法に関する:
(a)その5’末端に少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列を有し、その3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを任意選択で有するパッセンジャー鎖(即ち、パッセンジャー鎖は、ガイド鎖よりも1〜5ヌクレオチド長い場合がある)、およびその3’末端に少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列を有するガイド鎖を調製する段階であって、パッセンジャー鎖の5’末端の少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列とガイド鎖の3’末端の少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列とが相補的である(即ち、パッセンジャー鎖の配列とガイド鎖の配列とは、パッセンジャー鎖の3’末端に1〜5ヌクレオチドの任意選択のオーバーハングを除いて、相補的である)、段階;
(b)パッセンジャー鎖の3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを任意選択で有する二本鎖RNA分子が形成される条件下で、パッセンジャー鎖とガイド鎖とを合わせる段階。
【0026】
本発明の二本鎖RNA分子の鎖は、化学的合成または酵素によって調製され得る。本発明の二本鎖RNA分子の鎖が化学的合成によって調製される場合、パッセンジャー鎖の5’末端の最後のヌクレオチドは、リボースの5’位に一リン酸を有する。本発明の二本鎖RNA分子の鎖が酵素的合成によって調製される場合、パッセンジャー鎖の5’末端の最後のヌクレオチドは、リボースの5’位に三リン酸を有する。従って本発明は、パッセンジャー鎖の5’末端ヌクレオチドのリボースの5’位に一リン酸基または三リン酸基のいずれかを有するdsRNA分子をも対象とする。
【0027】
化学的合成方法には、例えば、Narangら、(1979) Methods in Enzymology 68: 90によって記載されたホスホトリエステル法、Braunら、(1979) Methods in Enzymology 68: 109によって開示されたホスホジエステル法、Beaucageら、(1981) Tetrahydron Letters 22: 1859に開示されたジエチルホスホアミデート(diethylphosphoamidate)法、および米国特許第4,458,066号に開示された固体支持法が含まれ得る。
【0028】
本発明の二本鎖RNA分子の調製のための酵素的方法は、好ましくは、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRP)を使用する。RdRPの例は、カリシウイルスなどのウイルス(例えば、ノロウイルス、サポウイルス、ベシウイルス、ラゴウイルス)およびC型肝炎ウイルスなどに由来する対応する酵素である。カリシウイルスに関しては、国際出願公報2007/012329号を参照のこと。あるいは、本発明のsiRNA分子を調製する方法の段階(a)に規定した単一のRNA鎖は、合成DNAテンプレートから、またはそのプラスミドを増幅することが可能な組換え宿主細胞から調製され得るDNAプラスミドから、DNA依存性RNAポリメラーゼによって調製され得る。この点において有用なDNA依存性RNAポリメラーゼは、好ましくは、ファージ由来のRNAポリメラーゼ、例えば、T7、T3またはSP6 RNAポリメラーゼである(例えば、Milliganら、(1989) Methods Enzymol. 180、51-62を参照のこと)。
【0029】
特に、本発明に従う二本鎖RNA分子の大規模産生のためには、少量の所望のdsRNA分子が化学的合成方法によって最初に調製され(例は上記のとおり)、その後、好ましくは国際出願公報2007/012329号に開示されたカリシウイルスのRdRPを使用して、dsRNAが酵素的に増幅されることが好ましい。RdRP、特にカリシウイルス(Caliciviridae)科由来のRdRpを使用する、骨格修飾されたdsRNA分子の酵素的産生に関しては、国際出願公報2009/150156号を参照のこと。
【0030】
本発明の単離された二本鎖RNA分子は、特に、標的特異性のRNA干渉において使用するためのものである。従って、本発明のさらなる主題は、標的特異性のRNA干渉の方法であり、この方法は、真核細胞または真核生物を上に規定したとおり二本鎖RNA分子(または複数の二本鎖RNA分子)と接触させる段階を含み、この細胞または生物は、この二本鎖RNA分子のパッセンジャー鎖に対し少なくとも70%の配列同一性を有する標的RNA(例えば、この細胞もしくは生物により発現されるmRNA、またはウイルスのゲノムRNAもしくはサブゲノムRNAなどのウイルスRNA)を含む。パッセンジャー鎖と標的mRNAとの間の配列同一性の特に好ましい値は、上に規定したとおりである。
【0031】
好ましくは、二本鎖RNA分子は、細胞または生物中に導入される。細胞または生物中に本発明のsiRNAを導入する方法は、当業者に公知である。核酸、特にsiRNA分子を細胞/生物中に導入する方法のプロトコルは、例えば、Ausubelら、(編) Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、USAの最新版中に見出すことができる。
【0032】
本発明の二本鎖RNA分子は、医薬および/または診断ツール、ならびに基礎科学および応用科学における実験研究のための分子ツールとして使用するためのものである。
【0033】
医療目的には、本発明に従うRNA分子は、少なくとも1つの医薬上の担体、賦形剤および/または希釈剤と組み合わせて、医薬組成物中に含まれることが好ましい。本発明に関する医薬組成物のための製剤、およびその投与経路は、当業者に公知であり、ガイダンスはRemington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.、Easton、PA、USA)の最新版に見出され得る。
【0034】
RNA干渉分子の治療的使用のための重要な必要条件は、RNAseに対する分子の抵抗性にも関する。RNAseは、生きた生物中に普遍的(ubiquitary)に存在し、血清および他の体液中に特に豊富である。血清RNAseによるRNA干渉分子の分解は、今までのところ、特に静脈内投与に関して、これらの分子の広い治療適用を妨害する。この問題を解決するための1つのアプローチは、センス鎖およびまたはアンチセンス鎖におけるヌクレオチドの化学的修飾、通常2-O-CH3または3-フルオロ基の導入であった。RNAse抵抗性を増加させるにもかかわらず、このような化学的修飾はしばしば、遺伝子サイレンシング効率の減少を導く。
【0035】
本発明により、RNA干渉分子のセンス/アンチセンス鎖の新たな設計を介して、ヌクレオチド中に化学的修飾がなく、従って遺伝子サイレンシング効率を保持しながらも、RNAseに対する抵抗性が増加したsiRNAを提供することが可能となる。
【0036】
さらに、本発明は、dsRNAの検出のための少なくとも1つの手段と組み合わせて本発明のdsRNAを含む診断キットをも対象とする。この診断キットは、標識のための化学物質(例えば、放射性標識化実体、発色団またはフルオロフォア)および/または標識化された本発明のdsRNAの検出のための化学物質を含むことが好ましい。本発明に従うキットはまた、本明細書中で規定したとおりの1つ以上の予め標識したdsRNA(例えば、上に例示したような蛍光基で標識された3’オーバーハングを有するdsRNA)を含み得る。
【0037】
本発明のsiRNA分子は、疾患(細菌、ウイルスもしくは真菌などの感染性因子によって引き起こされる感染症、および腫瘍が含まれる)の治療において特に有用である。好ましくはウイルス疾患に対する対応する医薬組成物中に含まれる本発明のsiRNA分子に関して、siRNAは、ウイルス、好ましくはカリシウイルス科、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、ヘパシウイルス属(Hepaciviridae)およびアストロウイルス科(Astroviridae)からなる群より選択されるウイルスに対するものであることが好ましい。本発明のsiRNA分子と闘うのに好ましいカリシウイルス科には、ノロウイルス、サポウイルス、ラゴウイルスおよびベシウイルスが含まれる。従って、本発明のsiRNAの配列は、感染性因子または腫瘍の遺伝子の発現を減少、好ましくは消失させるために選択され得る。
【0038】
特に好ましい本発明のsiRNA分子は、ネコカリシウイルス(FCV)に対するものであり、配列番号5に従うセンス(=パッセンジャー)鎖および配列番号6に従うアンチセンス(=ガイド)鎖を有するsiRNAが含まれる。さらに好ましい本発明のsiRNAは、ヒトライノウイルス1B型(HRV 1B)に対するものであり、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24および配列番号25/配列番号26の配列対(パッセンジャー/ガイド鎖)が含まれる。
【0039】
本発明はまた、疾患、好ましくはウイルス(例は上に概説した)疾患または腫瘍疾患の治療方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の医薬組成物を、このような治療を必要とする、好ましくは哺乳動物、特にヒトの患者に投与する段階を含む。
【0040】
本発明はまた、上で規定した二本鎖RNA分子またはそれをコードするDNAでトランスフェクトまたは形質転換された真核細胞または非ヒト真核生物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、欧州特許公報第1 407 044号に開示された設計を有する先行技術のsiRNA(「Tuschl-siRNA」)および平滑末端siRNA(「Blunt-siRNA」)と比較した本発明のdsRNA(以下、「RiboxX-siRNA」ともいう)の設計の模式図である。19ヌクレオチドのヘテロポリマー配列を例として使用する。シード領域を四角で強調する。Tuschl-siRNAは、3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有する19〜25ヌクレオチド長を特徴とする。平滑末端siRNAは、いかなるオーバーハングも示さず、その長さは19ヌクレオチドから25ヌクレオチドで変動する。RiboxX-siRNA(好ましくは18〜26ヌクレオチド)は、アンチセンス鎖(ガイド鎖)の3’末端およびセンス鎖(パッセンジャー鎖)の5’末端に、好ましくは3〜10塩基対の長さのG/C-塩基対合を示す。パッセンジャー鎖の3’末端には、優先的には1〜5ヌクレオチドのオーバーハングが存在する可能性がある。本発明のsiRNAの設計は、アンチセンス鎖(ガイド鎖)の3’末端およびセンス鎖(パッセンジャー鎖)の5’末端において、シード領域(四角で強調した)中の塩基対合と比較して、より高い熱力学的安定性を提供する。この熱力学的安定性は次に、RISC複合体を介したより効率的なRiboxX-siRNAのプロセシングおよび引き続くアンチセンス鎖の投入を導く。
【図2】図2は、本発明に従うsiRNA(「RiboxX-siRNA」)の熱力学的安定性を欧州特許公報第1 407 044号に記載されたとおりの設計を有するsiRNA(「Tuschl-siRNA」)および平滑末端siRNA(「Blunt-siRNA」)と比較するための融点実験のグラフ表示を示す図である。19ヌクレオチドのヘテロポリマー配列を例として使用する。シード領域は四角で強調している。熱力学的安定性は、二本鎖RNA(dsRNA)の融点(Tm)によって評価する。Tmは、SYBR-GreenとのdsRNAのインキュベーションおよびLightCycler(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、Germany)によるTmの測定後に決定される。SYBR-Greenは、dsRNAに結合するが一本鎖(ss)RNAには結合しないインターカレート蛍光色素である。反応における温度が増加すると、dsRNA-HybridのTmに到達してdsRNAが融解して、SYBR-Greenを放出し、LightCyclerによって測定される蛍光が引き続いて減少する。微分方程式としての曲線の積分により、示されたとおり、ピークとしてのTmの正確な決定が可能となる。VC、ウイルスコントロール。
【図3】図3は、欧州特許公報第1 407 044号中で示唆されたとおりの設計を有する対応する先行技術のsiRNA(「Tuschl-siRNA」)と比較した、本発明に従うsiRNA(「RiboxX-siRNA」)のノックダウン活性の定性的評価のためのウエスタンブロット分析の写真を示す図である。19ヌクレオチドのヘテロポリマー配列を例として使用する。シード領域は四角で強調している。RiboxX-siRNAの活性は、感染のウイルスモデルで評価した。第一段階において、細胞単層(CRFK-Cell)を、感染の4時間前にsiRNAで、またはそれなしで処理した。次いで、ネコカリシウイルスのウイルス力価を使用して、細胞単層(CRFK-Cell)を感染させた。第二段階において、細胞性タンパク質およびウイルスタンパク質を精製し、ネコカリシウイルスのNS7-ポリメラーゼ遺伝子またはVP1-カプシド遺伝子に対する特異的抗体を用いたウエスタンブロット分析に使用した。(A)、Tuschl-siRNA(「T-siRNA」と略称する)での処理の際の、ネコカリシウイルスのNS7-ポリメラーゼ遺伝子およびVP1-カプシド遺伝子の発現のノックダウンのウエスタンブロット分析。(B)RiboxX-siRNAでの処理の際の、ネコカリシウイルスのNS7-ポリメラーゼ遺伝子およびVP1-カプシド遺伝子の発現のノックダウンのウエスタンブロット分析。
【図4】図4は、欧州特許公報第1 407 044号中に開示されたとおりの設計を有するsiRNA(「Tuschl-siRNA」)と比較した、本発明に従うsiRNA(「RiboxX-siRNA」)のノックダウン活性の定量的評価のための実験結果のグラフ表示を示す図である。19ヌクレオチドのヘテロポリマー配列を例として使用する。シード領域は四角で強調している。RiboxX-siRNAの活性は、感染のウイルスモデル(ネコカリシウイルス)で評価した。第一段階において、細胞単層(CRFK-Cell)を、感染の4時間前にsiRNAで、またはそれなしで処理した。次いで、ネコカリシウイルスのウイルス力価を使用して、示されたように、細胞単層(CRFK-Cell)を感染させた。第二段階において、細胞性RNAおよびウイルスRNAを抽出し、精製し、ウイルスゲノムの定量的リアルタイムPCRに使用した。ウイルスRNAの値は、ハウスキーピング遺伝子(ここではβ-アクチン)に対して標準化した。(A)感染した細胞単層を欧州特許公報第1 407 044号に従うsiRNA(「Tuschl-siRNA」)で処理したときの、定量的リアルタイムPCRによって示される、ウイルスゲノム発現の50%の減少。EC50(実験の50%においてウイルスRNAの発現をノックダウンする有効濃度)は2μMであると決定された。4回の独立した測定の平均値+/-SEMが示される。(B)感染した細胞単層をRiboxX-siRNAで処理したときの、定量的リアルタイムPCRによって示されるウイルスゲノム発現の用量依存的減少。4回の独立した測定の平均値+/-SEMが示される。VC、ウイルスコントロール。試験した本発明に従うsiRNAは、たった0.05μMのEC50値を示し、従って、先行技術(特に欧州特許公報第1 407 044号)に従う設計を有するsiRNAのEC50値の40分の1であった。
【図5】図5は、各siRNAについて同じ濃度の20nMを使用して、欧州特許公報第1 407 044号中に開示されたとおりの設計を有するsiRNA(「Tuschl-siRNA」)と比較した、本発明に従うさらなるsiRNA(「RiboxX-siRNA」)のノックダウン活性の評価のためのウエスタンブロット分析の写真を示す図である。19ヌクレオチドの5つの異なるヘテロポリマー配列を例として使用する(それぞれ、RxX-RNA-1〜-5およびT-RNA-1〜5)。本発明に従うsiRNAの活性は、感染のウイルスモデル(ヒトライノウイルス1B型、HRV1B)で評価した。(A)20nMのRiboxX-siRNA(RxX-siRNA-1〜RxX-siRNA-5)で処理したときの、VP1-カプシド遺伝子の発現のノックダウンのウエスタンブロット分析。細胞性遺伝子(β-アクチン)の発現がコントロールとして機能した。(B)、20nMの先行技術のsiRNA(T-siRNA-1〜T-siRNA-5)で処理したときの、HRV1BのVP1-カプシド遺伝子の発現のノックダウンのウエスタンブロット分析。細胞性遺伝子(β-アクチン)の発現がコントロールとして機能した。細胞コントロールは、ウイルスに感染していない細胞に関し、ウイルスコントロールは、ウイルス(0.05の感染多重度)に感染したがsiRNAで処理していない細胞に関する。マーカー:示されたとおりの分子量マーカー。
【図6】図6は、欧州特許公報第1 407 044号中で示唆されたとおりの設計を有する対応する先行技術のsiRNA(「Tuschl-siRNA」)と比較した、本発明に従うsiRNA(「RiboxX-siRNA」)の血清安定性の評価のための、エチジウムブロマイド染色後のポリアクリルアミドゲルの写真を示す図である。血清RNAseに対するsiRNAの抵抗性を評価するために、本発明に従う設計を示すsiRNA(RX-siRNA)または先行技術の設計を示すsiRNA(T-siRNA)を、ウシ胎仔血清(パネルA)またはマウス血清(パネルB)と共にインキュベートし、示された時点で停止させて、PAGEで分析した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0043】
(実施例)
(実施例1)
先行技術の設計と比較した本発明のdsRNAの配列
以下の実験(結果は図2〜4を参照のこと)で使用したsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の配列は以下のとおりであった:
「Tuschl-siRNA」即ち「T-siRNA」(比較上のsiRNA):
-センス(5’-3’方向):acucugagcuucgugcuuaTT(配列番号1)
-アンチセンス(5’-3’方向):uaagcacgaagcucagaguTT(配列番号2)
「blunt-siRNA」(比較上のsiRNA):
-センス(5’-3’方向):acucugagcuucgugcuua(配列番号3)
-アンチセンス(5’-3’方向):uaagcacgaagcucagagu(配列番号4)
「RiboxX-siRNA」(本発明のsiRNA):
-センス(5’-3’方向):GGGGGacucugagcuucgugcuua(配列番号5)
-アンチセンス(5’-3’方向):uaagcacgaagcucagaguCCCCC(配列番号6)。
【0044】
上記siRNAは、ウイルスゲノム中の29位〜47位に対応する、ネコカリシウイルスFCV/DD/2006/GE(GenBankアクセッション番号DQ424892)のウイルスゲノムの5’-UTR(非翻訳領域)をターゲッティングする。
【0045】
(実施例2)
先行技術のsiRNAと比較した、本発明に従うsiRNAの熱力学的安定性の増加
Tmの決定のために、実施例1で概説したそれぞれのセンスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖をアニーリングさせ、dsRNAをSYBRGreen(Invitrogen)と共にインキュベートした。総体積16μlのアニーリング反応は、4μlのセンスRNA(1μg/μl)および4μlのアンチセンスRNA(1μg/μl)、3μlのアニーリング緩衝液(Tris-Cl pH7.8、NaCl 150mM)、ならびに5μlのRNAseもDnaseも含まない水で構成されていた。反応を65℃で30分間インキュベートし、氷上で15分間冷却した。
【0046】
8マイクロリットルのそれぞれのアニールしたdsRNAを、25μlの総反応体積中で、2.5μlのSYBRGreen(invitrogen)および14.5μlのRNAseもDnaseも含まない水と共にインキュベートした。次いで、反応をLightCycler(ROCHE)で実行し、蛍光強度のリアルタイム測定を、37℃から95℃まで、F1チャネル下で実行した。次いで、蛍光曲線を、時間の関数として、蛍光の微分方程式として積分した(図2)。
【0047】
図2は、本発明に従うRNA(「RiboxX-siRNA」)が、先行技術のsiRNA(Blunt-siRNA:55.39℃;Tuschl-siRNA:62.08℃)と比較して、増加したTm(71.82℃)を示している。
【0048】
(実施例3)
本発明に従うsiRNAは、ウイルス活性をノックダウンする
細胞単層(CRFK-Cell、6ウェルプレート中で培養し、1ウェル当たり300,000細胞で播種した)を、感染の4時間前に、実施例1に示したsiRNA(T-siRNAおよびRiboxX-siRNA)で、またはそれなしで処理した。次いで、ネコカリシウイルスのウイルス力価(750〜1250TCID50/ml)を使用して、細胞単層(CRFK-Cell)を感染させた。第二段階において、細胞性タンパク質およびウイルスタンパク質を抽出し、精製した。従って、トランスフェクトした細胞からの上清の除去後、単層を、600μlの2xPPP-Bufferを添加することによって分解した。細胞溶解物をQIAShredder(Qiagen)中に回収し、13,000rpmで2分間遠心分離し、その後95℃で5分間、600μlのaqua destと共にインキュベートした。
【0049】
ウエスタンブロット分析のために、80μlの細胞溶解物をSDS-PAGEで分析し、Hybond-ECLニトロセルロースメンブレン上に移した。メンブレンを4℃で16時間、PBS/0.1% Tween 20および5%の脱脂粉乳と共にインキュベートし、一次抗体として目的のウサギポリクローナル抗体(抗NS7または抗VP1-カプシド)と共に、室温で2時間インキュベートした。PBS/0.1% Tween 20で3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼとカップリングした二次抗体を添加した。LAS-3000 BioImager(FujiFilm)上で、製造者の指示に従ってSuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用いて検出を実施した。
【0050】
(実施例4)
感染のウイルスモデルにおいて適用したとき、本発明のsiRNAは、先行技術のsiRNAよりも有効である
実施例1のT-siRNAおよびRiboxX-siRNAの抗ウイルス活性を、実施例3で使用した感染のウイルスモデルにおいて定量的に評価した。
【0051】
細胞単層(CRFK-Cell、6ウェルプレート中で培養し、1ウェル当たり300,000細胞で播種した)を、感染の4時間前に、それぞれT-siRNAまたはRiboxX-siRNAで、またはそれなしで処理した。次いで、ネコカリシウイルスのウイルス力価を使用して、それぞれ図4Aおよび4Bに示すとおり、細胞単層(CRFK-Cell)を感染させた。第二段階において、細胞性RNAおよびウイルスRNAをRNAeasy Miniキット(Qiagen)を使用して抽出し、精製し、ウイルスゲノムの定量的リアルタイムPCRに使用した。ウイルスRNAの値は、ハウスキーピング遺伝子(ここではβ-アクチン)に対して標準化した。定量的リアルタイムPCRは、逆転写段階とその後のポリメラーゼ連鎖反応で構成されていた。逆転写のために、標的RNAおよびβ-アクチンmRNAの両方を、オリゴ(dT)20を使用して転写した。逆転写反応ミックス(20μl)は、5μlのRNAテンプレート、4μlの5xSuperscript-Buffer、0.4mMの各dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP、1μMのオリゴ(dT)20、および1μlのSuperscript III(200U/μl、Invitrogen)、ならびに最終体積を20μlにするようなRNAseもDNAseも含まない水で構成されていた。逆転写は50℃で60分間実施した。
【0052】
ウイルスRNAの増幅のために、リアルタイムPCRアッセイをRoche LightCycler 1.5(Roche diagnostics)上で実施した。総体積20μlを有する反応は、4.8μlのMgCl2、2μlの各フォワードプライマーおよびリバースプライマー(5pmol/μl)、2μlのTaqManプローブ(2pmol/μl)、および2μlのRoche HotStart反応ミックス、ならびに最終体積を20μlにするようなRNAseもDNAseも含まない水で構成されていた。5マイクロリットルのテンプレートを各反応に添加した。PCRサイクル条件は、95℃で10分間のプレインキュベーション、61℃で5秒間のアニーリングおよび72℃で5秒間の伸長であった。伸長段階の最後に、蛍光シグナルを560nmおよび640nm(F1/F2)で測定した。実行を完了するために、毛細管を40℃に2分間冷却した。クロッシングポイントの値を各サンプルについて決定した。さらに、ハウスキーピング遺伝子β-アクチンに対して特異的なPCRを、内部コントロールとして実施した。同様に、各サンプルに対するクロッシングポイントの値を決定した。
【0053】
EC50値によって示されるように(図4を参照)、本発明のsiRNAは、先行技術に従う設計を有するsiRNAと比較して、この実験設定において40倍の高い効率を示す。
【0054】
(実施例5)
さらなる先行技術のsiRNAと比較した本発明のさらなるsiRNAの配列
以下の実験(結果については図5および図6を参照のこと)で使用したsiRNAのセンス(=パッセンジャー)鎖およびアンチセンス(=ガイド)鎖の配列は、以下の表に示すとおりであった:
【0055】
それぞれT-siRNAのパッセンジャー鎖(3末端の最後の2つのUUを除く)およびRxX-siRNAのパッセンジャー鎖(パッセンジャー鎖の5末端の最初の5つのGGGGGを除く)について、ヒトライノウイルス1B型ゲノム(GenBankアクセッション番号D00239)の配列中の対応するヌクレオチドを示す。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例6)
先行技術の設計を有するT-siRNA 1〜5と比較した、本発明に従うRiboxx siRNA 1〜5のノックダウン活性の増加
実施例5に従う配列を有するsiRNAを、ヒトライノウイルス1B型(HRV1B)を使用する感染のウイルスモデルにおいて、遺伝子ノックダウン効率について評価した。
【0058】
細胞単層(HeLa-Cell)を、感染の4時間前に、それぞれのsiRNA(20nM)で、またはそれなしで処理した。次いで、HRV 1Bのウイルス力価を使用して、細胞単層(HeLa-Cell)を感染させた。細胞性タンパク質およびウイルスタンパク質を精製し、ウイルスタンパク質(VP1-カプシドタンパク質)または細胞性タンパク質(β-アクチン)に対する特異的抗体を用いるウエスタンブロット分析に使用した。ウエスタンブロット分析のために、80μlの細胞溶解物をSDS-PAGEで分析し、Hybond-ECLニトロセルロースメンブレン上に移した。メンブレンを4℃で16時間、PBS/0.1% Tween 20および5%の脱脂粉乳と共にインキュベートし、一次抗体として目的のウサギポリクローナル抗体(抗β-アクチンまたは抗VP1)と共に室温で2時間インキュベートした。PBS/0.1% Tween 20で3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼとカップリングした二次抗体を添加した。LAS-3000 BioImager(FujiFilm)上で、製造者の指示に従ってSuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用いて検出を実施した。
【0059】
図5Aおよび5Bに示されるように、各siRNAについて同じ濃度の20nMを使用して、本発明に従うsiRNA(Riboxx-RNA 1〜5)は、ウイルスタンパク質の発現を効率的に遮断するが、先行技術の設計を有するsiRNAは、ウイルスタンパク質の発現を効率的にノックダウンしない。
【0060】
(実施例7)
本発明に従うsiRNAは、血清RNAseに対して増加した抵抗性を示す
血清RNAseに対するsiRNAの抵抗性を評価するために、本発明に従う設計を示すsiRNA(RxX-siRNA-3)または先行技術の設計を示すsiRNA(T-siRNA-3)を、ウシ胎仔血清またはマウス血清と共にインキュベートし、異なる時点で停止させ、PAGEで分析した。反応混合物(総体積50μl)は、80%のウシ胎仔血清(FCS)および20%のDMEM(v/v)中に3μMのsiRNAを含んでいた。この反応を37℃および900rpmでインキュベートし、5μlの反応を10分、1時間、2時間、4時間、6時間、24時間および48時間の時点で停止させ、その後20%のネイティブPAGEによって分析した。
【0061】
先行技術の設計を有するsiRNA(T-siRNA)は、FCS中でのインキュベーション後4時間で完全に分解し、一方で、本発明に従う設計を示すsiRNAは、FSCでのインキュベーションの48時間後の時点でもなお検出される(図6A)。マウス血清とのインキュベーションの場合、先行技術の設計を有するsiRNA(T-siRNA)は、マウス血清中でのインキュベーション後72時間で完全に分解し、一方で、本発明に従うsiRNAは、マウス血清とのインキュベーションの72時間後でもなお検出される(図6B)。
【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端に少なくとも3つのG/C塩基対を有する、標的特異的なRNA干渉が可能な単離された二本鎖RNA分子。
【請求項2】
パッセンジャー鎖の5’末端およびガイド鎖の3’末端に3〜10のG/C塩基対を有する、請求項1に記載のRNA分子。
【請求項3】
パッセンジャー鎖が5’末端に3〜10のGヌクレオチドの配列を有し、ガイド鎖が3’末端に3〜10のCヌクレオチドの配列を有するか、その逆である、請求項1または2に記載のRNA分子。
【請求項4】
パッセンジャー鎖が1〜5ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項5】
オーバーハングがフルオロフォアまたは発色団に連結されている、請求項4に記載のRNA分子。
【請求項6】
G/C配列および任意選択でパッセンジャー鎖の3’オーバーハングを除いたパッセンジャーおよびガイド鎖の長さが、10〜26ヌクレオチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項7】
パッセンジャー鎖の5’末端の末端ヌクレオチドが、リボースの5’位に一リン酸基を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項8】
パッセンジャー鎖の5’末端の末端ヌクレオチドが、リボースの5’位に三リン酸基を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項9】
(a)その5’末端に少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列を有し、その3’末端に1〜5ヌクレオチドのオーバーハングを任意選択で有するパッセンジャー鎖、ならびにその3’末端に少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列を有するガイド鎖を調製する段階であって、パッセンジャー鎖の5’末端の少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列とガイド鎖の3’末端の少なくとも3つのGおよび/またはCヌクレオチドの配列とが相補的である、段階;
(b)二本鎖RNA分子が形成される条件下で、パッセンジャー鎖とガイド鎖とを合わせる段階、
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の単離された二本鎖RNA分子を産生する方法。
【請求項10】
パッセンジャー鎖およびガイド鎖が化学的合成によって調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
パッセンジャー鎖およびガイド鎖が酵素によって調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
パッセンジャー鎖およびガイド鎖が、RNA依存性RNAポリメラーゼ、好ましくはカリシウイルス由来のRNA依存性RNAポリメラーゼによって調製される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
真核細胞または真核生物を請求項1から8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子と接触させる段階を含み、該細胞または生物が、該二本鎖RNA分子のパッセンジャー鎖に対し少なくとも70%の配列同一性を有するRNAを含む、標的特異的なRNA干渉の方法。
【請求項14】
二本鎖RNA分子が、細胞または生物中に導入される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
医薬、診断ツール、または基礎科学もしくは応用科学における実験研究のための分子ツールとして使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載のRNA分子。
【請求項16】
少なくとも1つの医薬上の担体、賦形剤および/または希釈剤と組み合わせて、請求項1から8のいずれか一項に記載のRNA分子を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか一項に記載のRNA分子またはそれをコードするDNA分子でトランスフェクトされた、真核細胞または非ヒト真核生物。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−518401(P2012−518401A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550606(P2011−550606)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052348
【国際公開番号】WO2010/097414
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509250010)リボックス・ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】