説明

低分子薬物含有ナノ粒子

【課題】 パッシブターゲッティング療法に使用しうる薬物封入ナノ粒子において、頻回投与に伴い薬理効果の低減や、副作用発現の見られない、ABC現象の誘発を抑制した低分子薬物含有ナノ粒子を提供すること
【解決手段】 陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、これを、
(a)ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、及び、
(b)(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体から選択される共重合体の一種、
と作用させることにより得られる陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物含有ナノ粒子に関し、さらに詳しくは患部ターゲッティング及び徐放性に優れ、かつ肝臓集積を低減し、血中滞留性を高めた陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子に関し、特に、頻回投与による薬物のステルス性が失われるABC現象の誘発を抑制したナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、薬物送達システム、すなわちドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)に基づく製剤(DDS製剤)の開発が積極的に行われてきており、最近のDDS製剤にあっては、アクティブターゲッティング療法における分子標的治療薬と、パッシブターゲッティング療法におけるナノテクノロジーによって薬剤を標的細胞に集積し易くした製剤がある。
このパッシブターゲッティング療法に利用されている物質としては、ポリエチレングリコール(以後、「PEG」と記す場合もある)が広く用いられている。
【0003】
例えば、タンパク質であるインターフェロンアルファ−2bの1箇所のアミノ酸残基に直接PEGを修飾したPEG化インターフェロン製剤(ペガシス(登録商標)、ペグイントロン(登録商標)など)や、薬物キャリアであるリポソームや高分子ミセルをPEGにより修飾した、PEG修飾リポソームを長期血中滞留性リポソームとして薬物キャリアにし、ドキソルビシンを封入した製剤(ドキシル(登録商標))などが臨床的に利用されている。
【0004】
PEGは、その骨格構造が単純であるため、柔軟性が高いものであり、また多くの水分子を水和できるという特性を有しており、PEGにより薬物粒子やキャリアを修飾することにより、粒子表層に重厚な水和層が形成される。この水和層により、血清タンパク質や細胞との相互作用が抑制され、その結果、薬物の血中(体内)滞留時間が大きく延伸されること(ステルス化:Stealth化)が知られている。
【0005】
このように、PEGにより修飾化した医薬品は、今後も新規製剤化技術において重要な一翼を担うと期待されており、現在も多くのものが臨床治験中である。しかしながら、近年PEGにより表面修飾したリポソームや高分子ミセルにおいて、その繰り返し投与(頻回投与)により薬物のステルス性が失われる現象(Accelerated Blood Clearance:ABC現象)が生じることが報告されてきている(非特許文献1、2)。
【0006】
このABC現象は、頻回投与に伴い薬理効果の低減や、予期せぬ副作用が誘導される可能性があることを意味している。したがって、今後このようなPEG化医薬品にあっては、適応疾患の種類や、薬物投与様式(投与量/投与回数/投与頻度)に制約が課せられることも予想され、この課題の克服が強く望まれている。
【0007】
ところで、ABC現象のメカニズムに関しては、その詳細が明らかにされていないのが現状である。一つの有力な仮説としては、PEG化医薬品が脾臓のB細胞を刺激して、抗PEG−IgMが産生されることでABC現象が誘導されることが述べられている(非特許文献3)。しかしながら、PEGの末端構造や、PEGの分子量を変化させてもABC現象の誘起に影響がなかったことからすれば、PEGを用いる限り本質的にABC現象を回避することは困難であると考えられる。
したがって、PEGに代わる、抗体産生を誘導しない新たな水溶性高分子化合物(いわゆる、ポストPEG化合物)を見出すことが、ABC現象の回避には必要であると思われる。
【0008】
これまで、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロイルモルフォリン(PAcM)、ポリグリセリン(PG)、ポリヒドロキシエチルアスパラギンなどを修飾剤として用いてリポソームやタンパク質にステルス性を付与できることが報告されている(非特許文献4〜8)。しかしながら、これらの高分子化合物により修飾させたナノ粒子については、ステルス性やABC現象に関する知見は未だ何もないのが現状である。
【0009】
本発明者等は、これまでにポリ乳酸、すなわち乳酸重合体(以後、「PLA」と記す場合もある)とポリエチレングリコールとを結合したPLA−PEGブロック共重合体のマイクロ粒子ないしナノ粒子に薬物を封入させた、患部ターゲッティング及び徐放性に優れ、かつ肝臓集積を低減し、血中滞留性を高めた陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子を提供してきている(特許文献1)。
そこで、PLA−PEGブロック共重合体におけるPEGに代えて、これら高分子化合物を用いてPLAと結合させたブロック共重合体を合成し、そのナノ粒子のステルス性とABC現象に関する検討を行うことで、パッシブターゲッティングが可能なポストPEG化粒子の検索を行った。
【0010】
その結果、PLAとの共重合体成分として、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロイルモルフォリン(PAcM))、及びポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)を用いて得られたPLAとのブロック共重合体のナノ粒子に薬物を封入した場合には、上記したABC現象が誘導されないことを新規に見出し、その結果本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開 WO2008/139804
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J. Pharmacol. Exp. Ther., 292(3): 1071-1079 (2000)
【非特許文献2】Int. J. Pharma., 255(1-2): 167-174 (2003)
【非特許文献3】J. Control Release, 112(1): 15-25 (2006)
【非特許文献4】Biomaterials, 25(16): 3259-3266 (2004)
【非特許文献5】Eur. J. Pharma. Biopharma., 48(2): 123-129 (1999)
【非特許文献6】J. Pharma. Sci., 84(9): 1049-1053 (1995)
【非特許文献7】Int. J. Pharma., 111: 103-107 (1994)
【非特許文献8】Biochem. Biophys. Acta, 1768(3): 737-743 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明は、パッシブターゲッティング療法に使用しうる薬物封入ナノ粒子において、頻回投与に伴い薬理効果の低減や、副作用発現の見られない、ABC現象の誘発を抑制した低分子薬物含有ナノ粒子を提供することを課題とする。
【0014】
かかる課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルフォリン、又はポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体を作用させることにより得られる陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子が、患部ターゲッティング及び徐放性に優れ、なおかつ肝臓集積を低減し、血中滞留性に優れ、特に徐放性に優れると共に、頻回投与によってもその効果の減少が見られない、ABC現象の誘発を抑制したものであることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0015】
特に本発明は、これまで使用されているポリエチレングリコール(PEG)に代えて、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロイルモルフォリン(PAcM))、又はポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)を用いてPLAと共重合させたブロック共重合体を使用することにより、ABC現象の誘発が抑制される点に特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明は、これまでに頻回投与により薬理効果の減少が認められるABC現象を誘発することなく、ステルス性に優れ、患部ターゲッティング及び徐放性に優れると共に、肝臓集積を低減することにより副作用を軽減し、さらに血中滞留性に優れた陰荷電基を持つ低分子薬物を含有するナノ粒子を提供する。
さらに本発明は、当該ナノ粒子を有効成分とする静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、噴霧剤などの非経口投与用製剤を提供する。
【0017】
より具体的には、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、これを、
(a)ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、及び、
(b)(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体から選択される共重合体の一種、
と作用させることにより得られる陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(2)さらに、塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする上記1に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(3)さらに界面活性剤を配合することからなる上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(4)粒子の直径が20〜300nm、好ましくは50〜200nmである上記1〜3のいずれかに記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(5)金属イオンが、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン又はコバルトイオンの1種又は2種以上である上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(6)陰荷電基を持つ低分子薬物が、前記金属イオンにより疎水化されるためのリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることを特徴とする上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(7)陰荷電基を持つ低分子薬物が、抗炎症性ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン又はその誘導体、抗微生物薬又は抗癌薬である上記1、2又は6に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(8)(b)の(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体の重量平均分子量が、2,000〜50,000である上記1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(9)塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである上記2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
【0018】
(10)界面活性剤が、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体から選択される1種又は2種以上のものである上記3に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子;
(11)上記1〜10に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子を有効成分とする非経口投与用製剤;
(12)製剤が静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤又は噴霧剤である上記11に記載の非経口投与用製剤;
(13)陰荷電基を持つ低分子薬物と金属イオンを溶媒中で混合して相互作用させ、この混合液中に、
(a)ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、及び、
(b)(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体から選択される共重合体の一種、
を加えて混合することを特徴とする上記1に記載された陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法;
(14)上記13の製造方法において、さらに塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする上記13に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法;
(15)塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである上記14に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法;
である。
【0019】
すなわち本発明は、陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、この疎水化された薬物を、(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体と作用させることによりナノ粒子に封入した陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子を作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、陰荷電基を持つ低分子薬物を患部ターゲッティングし、薬物の徐放性に優れ、さらに肝臓集積を低減することにより副作用を軽減し、さらにまた血中滞留性に優れており、特に徐放性において優れていると共に、ABC現象を抑制し、頻回投与によっても薬理効果の低減が認められず、ステルス性に優れたものである。
特に、従来から使用されているPEGに代えてPVP、PAcM或いはPDMAAを使用し、これとポリ乳酸との共重合体を使用することにより、ABC現象の誘発を抑制し、ステルス性に優れたものとなる点に本発明の特徴がある。
【0021】
したがって、これまで十分に達成されていなかった陰荷電基を持つ低分子薬物のターゲッティング及び持続的な徐放性を向上させ、さらに肝臓集積による副作用を軽減し、さらに血中濃度を持続向上させるナノ粒子を提供する点で、特に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例3の結果を示した図である。
【図2】実施例4の結果を示した図であり、対照としてのPEG修飾粒子の結果を示した。
【図3】実施例4の結果を示した図であり、本発明のPVP修飾粒子の結果を示した。
【図4】実施例5の結果を示した図であり、対照としてのPEG修飾粒子の結果を示した。Bは本発明のPVP修飾粒子の結果である。
【図5】実施例5の結果を示した図であり、本発明のPVP修飾粒子の結果を示した。
【図6】実施例6の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の態様である陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、この疎水化した薬物をポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、及び(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルフォリン、又はポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体[以下、これらブロック共重合体を、「ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体」と記す場合もある]と作用させることにより得られる。また、界面活性剤を配合してもよく、界面活性剤を配合することにより、生成したナノ粒子を安定化することができる。
【0024】
本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、ナノ粒子を形成するために使用する生分解性高分子として、L異性体であるポリL−乳酸又はポリ(L−乳酸/グリコール酸)共重合体を使用することも、また一つの特徴とする。
ポリ−L−乳酸はポリ−DL−乳酸に比し、有機溶媒への溶解性が異なり、また結晶性が高いことが知られている。本発明では、ポリ−L−乳酸を、(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体と共に混合しナノ粒子を形成させることにより、ポリ−L−乳酸の水相での結晶化を抑止し、安定に分散可能なナノ粒子を調製することができる。
ポリ−L−乳酸は、アセトンに不溶性であるため、その溶解性を上げるために、アセトン/ジオキサンあるいはアセトン/テトラヒドロフランの混合液を使用して、ナノ粒子を調製した。
【0025】
上記の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、界面活性剤を配合していてもよく、界面活性剤を配合することにより、生成したナノ粒子を安定化し、粒子間の凝集を抑止することができる。
【0026】
上記により提供される本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、噴霧剤などの非経口投与用製剤とすることにより、投与することができる。
【0027】
本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、以下のとおり作製することができる。
すなわち、陰荷電基を持つ低分子薬物と金属イオンを、有機溶媒又は含水有機溶媒の溶媒中で混合して疎水性薬物とし、この混合液中にポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、さらに(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体を加えて攪拌し、この溶液を水中に添加、拡散することにより調製することができる。
【0028】
また、ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、さらに(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体を溶媒に溶解した溶液と、陰荷電基を持つ低分子薬物の水溶液、及び金属イオン水溶液を同時に加えて混合しても同様のナノ粒子を調製することができる。
【0029】
本発明においては、(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体をナノ粒子の表面修飾剤として用いることで、ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体の水相における結晶化を抑制し、その結果、粒子の大きさが均一で安定なナノ粒子を得ることができる。
【0030】
使用される金属イオンとしては、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオンのいずれかであり、それらの水溶性金属塩の1種又は2種以上が使用される。そのなかでも好ましくは亜鉛イオン、鉄イオンであり、塩化亜鉛、塩化鉄などが好ましく使用できる。
【0031】
上記の反応に使用される溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒、あるいはこれらの含水溶媒であり、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0032】
陰荷電基を持つ低分子薬物は、上記の金属イオンと結合して疎水化され易いように分子内にリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることが好ましく、また分子量が1,000以下であることが好適である。
【0033】
そのような陰荷電基を持つ低分子薬物としては、種々の薬物を挙げることができるが、なかでも水溶性の抗炎症性ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン又はその誘導体、抗微生物薬、又は抗癌薬が好適であり、より具体的には、リン酸ベタメタゾン、リン酸デキサメタゾン、リン酸プレドニゾロン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸プレドニゾロン、コハク酸ヒドロコルチゾンなどの抗炎症性ステロイド;ロキソプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナック、フェンブフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬;プロスタグランジンE、プロスタグランジンE又はその誘導体;バンコマイシン、コハク酸クロラムフェニコール、ラタモキセフ、セフピロム、リン酸クリンダマイシン、カルモナムなどの抗微生物薬;ビンクリスチン、ビンブラスチンなどの抗癌薬などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルプロリドン等)ブロック共重合体は、ポリDL−乳酸(PDLLAということもある)、ポリD−乳酸(PDLAということもある)若しくはポリL−乳酸(PLLAということもある)(これらの重合体をブロックAという)と、ポリビニルピロリドン(PVP)ポリアクリロイルモルフォリン(PAcM))、又はポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)(これらをブロックBという)とを、ジイソプロピルカルボジイミド、エチレンジメチルアミノプロピルカルボジイミドなどの縮合剤のもとで反応させることにより、生成することができるが、市販されている同様のブロック共重合体を使用してもよい。
【0035】
(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルプロリドン等)ブロック共重合体の構成としては、A−Bタイプ、A−B−Aタイプ、B−A−Bタイプのいずれであっても本発明の目的を達成することができる。また、これらのブロック共重合体の重量平均分子量は2,000〜50,000であることが好ましい。
【0036】
また、本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体に対するポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体の混合比を高くすると、大きなナノ粒子が生成され、かつ薬物のナノ粒子への封入率が増加する傾向にある。
【0037】
本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子おいて、さらに塩基性低分子化合物を混合することにより薬物のナノ粒子への封入率が増加し、10%程度まで封入することができる。
このような塩基性低分子化合物としては(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン等を挙げることができ、好ましくは、2級又は3級アミン類であり、ジエタノールアミンが特に好ましい。
【0038】
かくして調製された陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子に界面活性剤を配合してもよく、界面活性剤を配合することにより、生成したナノ粒子を安定化し、かつ粒子間の凝集を抑制することができる。したがって、ナノ粒子を含有する製剤の製剤化工程にとって好ましいものとなる。
【0039】
使用される界面活性剤としては、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体等をあげることができ、これらの界面活性剤から選択される1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0040】
本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子にあっては、その粒子の直径は20〜300nmの範囲内であり、好ましくは50〜200nmであり、それぞれの薬物が目的とするターゲット患部に依存して、その粒子径を決定することができる。
例えば、薬物を関節炎、癌、閉塞性動脈硬化症などに使用する場合には、50〜200nmの粒径を有するナノ粒子を静脈注射することが好ましい。
【0041】
この粒径は、例えば、(ポリDL−、D−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン等)ブロック共重合体を溶解する溶媒、好ましくはアセトン又はジオキサンの量を調節することにより調整することができ、アセトン又はジオキサンの量を多くすることにより小さな粒径のナノ粒子が得られる。また、ナノ粒子の粒径が大きくなるほど薬物の封入率が高くなる傾向にある。
【0042】
かくして調製した本発明の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、ナノ粒子の溶液又は懸濁液を、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、フィルター濾過、ファイバー透析などの操作により適宜精製した後、凍結乾燥して取得、保存される。
【0043】
その際、凍結乾燥した製剤を再懸濁して投与できるようにするため安定化剤及び/又は分散化剤を加えて凍結乾燥されることが好ましく、そのような安定化剤、分散化剤としてはショ糖、トレハロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが好ましく使用される。
【0044】
本発明が提供する陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子は、静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤、噴霧剤などの非経口投与用製剤の医薬品として使用され、なかでも静脈注射用製剤とすることで、当該ナノ粒子の特性、効果をより良く発揮することができる。
【0045】
これらの非経口投与用製剤の調製に使用される基剤、その他の添加剤成分としては、製剤学的に許容され、使用されている各種基剤、成分を挙げることができる。具体的には、生理食塩水、単糖類、二糖類、糖アルコール類、多糖類などの糖類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどの高分子添加剤;イオン性又は非イオン性界面活性剤;などが剤型に応じて適宜選択され、使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例1:ブロック共重合体の合成
PLAとのブロック共重合体の相手として、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロイルモルフォリン(PAcM)、及びポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)を選択し、ブロックポリマー(すなわち、PVP−PLAブロック共重合体、PAcM−PLAブロック共重合体、及びPVP−PDMAAブロック共重合体)は、ラジカル重合により合成した。
PLA(多木化学社製、D,L−体、平均分子量:18,300)とアミノエタンチオール塩酸塩(和光純薬工業社製)を、ジイソプロピルカルボジイミド(Sigma社製)により縮合することで、末端チオール化PLAを合成した。
得られた末端チオール化PLA(300mg)を用い、反応開始剤のアゾビスイソブチロニトリル(10mg)、及び各モノマー(1100mg:ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、及びジメチルアクリルアミド)をジメチルホルムアミド1mL中に溶解し、70℃にて4時間反応させた。次いで反応物を水中に分散し、限外濾過により精製し、凍結乾燥することにより各ポリマーを得た。
【0048】
得られた各ポリマーの分子量及び組成は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びプロトンNMRにより解析した。各親水性鎖(PVP、PAcM、及びPDMAA)の平均分子量はおよそ30,000程度であり、ポリマー中に占める親水性鎖の割合は、およそ60〜70%であった。
【0049】
その結果を下記表1中に示した。
なお、PLAとポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロイルモルフォリン(PAcM)、及びポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)とのブロックポリマーを、以下、PVP−PLA、PAcM−PLA、及びPDMAA−PLAとそれぞれ表記する。
【0050】
【表1】

【0051】
Mw:重量平均分子量
Mn:数平均分子量
*1:何れもSECにより算出した親水性鎖(PVP、PAcM及びPDMAA)の分子量を示した。
【0052】
実施例2:ナノ粒子の調製
上記表1に示したブロック共重合体を用い、薬物としてプロスタグランジンE1(PGE1)を封入したナノ粒子を調製した。
25mgの表1に示した各ポリマー、25mgのPLA(L−体、分子量:17500)、10mgのプロスタグランジンE1(PGE1)、9.5mgのジエタノールアミンを、アセトン/ジオキサン混合液(混合比:7/3)1.5mLに溶解し、0.5Mの塩化第二鉄無水物のアセトン溶液30μLを添加した。この混合液を10分静置した後、攪拌子を用い1000rpmで攪拌している水中(25mL)に、一気に添加した。直ちに、2.5mLの0.5Mクエン酸ナトリウム水溶液と125μLの200mg/mLのポリソルベート80水溶液を添加し、限外濾過により精製・濃縮しナノ粒子を得た。
また、対照として特許文献1に記載の方法に準じて得た、ポリエチレングリコール(PEG)を用いたPEG−PLAブロック共重合体(PEG−PLA)を使用し、薬物としてプロスタグランジンE1(PGE1)を封入したナノ粒子を調製した。
【0053】
得られたナノ粒子の特性を、下記表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
粒子径及びゼータ電位は、Zetasizer Nano ZS (Malvern)により測定した。
PGE1量はHPLCにより測定した。
【0056】
表2中に示した結果から判明するように、各ブロック共重合体を用いて調製したナノ粒子にあっては、その粒子径は120〜130nm程度であった。
また、表面電位は、いずれのナノ粒子もわずかにマイナスの値を有していた。
プロスタグランジンE1(PGE1)の封入率(粒子全量中のPGE1重量比)は1%弱程度であった。これらの値は、PEG−PLAを用い調製したナノ粒子とほぼ同等の値であった。
以上の結果から、表1に示した各ポリマーを使用することによっても、PEG−PLAを使用して調製したPEG修飾ナノ粒子と同様に、PGE1を含有するナノ粒子を調製できることが明らかになった。
【0057】
実施例3:各ナノ粒子を投与した場合の薬物の血中滞留性評価
実施例2で得られた各ナノ粒子(以下、PVP修飾粒子、PAcM修飾粒子、PDMAA修飾粒子及びPEG修飾粒子と記す)の1,000μgを、Wister系ラット(雄性:6週齢)に尾静脈注射し、経時的にプロスタグランジンE1(PGE1)の血中濃度を、EIA法により測定した。
【0058】
その結果を図1に示した。
PGE1を単独で血中投与した場合には、投与後数分で血中から消失することが報告されているが、図中に示した結果からも判明するように、いずれの粒子においても、PGE1の血中滞留性の大幅な増大が認められた。PVP修飾粒子、PAcM修飾粒子およびPDMAA修飾粒子は、PEG修飾粒子ほど高くないが、ほぼ同程度の血中滞留性を示していた。
【0059】
実施例4:PVP修飾粒子及びPEG修飾粒子におけるABC現象の惹起
実施例2で得られたPVP修飾粒子(50μg或いは1,000μg)を、Wister系ラット(雄性:6週齢)に尾静脈注射し、一定のインターバル後、再びPVP修飾粒子(1,000μg)を尾静脈注射し、PGE1の血中濃度を測定した。
また、対照として、PEG修飾粒子を用い、同様に評価した。
【0060】
その結果を図2及び3に示した。
図中に示した結果からも判明するように、PEG修飾粒子の場合(図2)には、前投与なしに比べ、7日前にPEG修飾粒子を前投与(50μg或いは1,000μg)すると、2度目の投与時にはPGE1の血中濃度が激減することがわかった。
これは典型的なABC現象が惹起しているものといえる。
一方、本発明のPVP修飾粒子においては(図3)、3日、7日、14日前にPVP修飾粒子を前投与(50μg)した場合、或いは、7日前にPVP修飾粒子を前投与(1,000μg)した場合であっても、2度目の投与時にPGE1の大きな血中濃度の変化は認められず、ABC現象が惹起されなかった。
【0061】
実施例5:複数回投与時のPVP修飾粒子及びPEG修飾粒子におけるABC現象の惹起
実施例2で得られたPVP修飾粒子(50μg或いは1,000μg)をWister系ラット(雄性:6週齢)に1週間間隔で3度尾静脈注射し、3度目の投与から1週間後にPVP修飾粒子(1,000μg)を尾静脈注射し、PGE1の血中濃度を測定した。
また、対照としてPEG修飾粒子を用い、同様にしてPGE1の血中濃度を測定した。
【0062】
その結果を図4及び5に示した。
図中に示した結果からも判明するように、PEG修飾粒子の場合(図4)には、PGE1の血中濃度が前投与なしに比べ減少したことから、ABC現象が誘導されていることがわかる。
一方、本発明のPVP修飾粒子の場合(図5)には、いずれの投与量においても、ABC現象が惹起されていなかった。
【0063】
実施例6:PAcM修飾粒子及びPDMAA修飾粒子におけるABC現象の惹起
実施例2で得られたPAcM修飾粒子或いはPDMAA修飾粒子(各50μg)をWister系ラット(雄性:6週齢)に尾静脈注射し、7日後、再び同じ粒子(1,000μg)を尾静脈注射し、PGE1の血中濃度を測定した。
【0064】
その結果を図6に示した。
図中に示した結果からも判明するように、PAcM修飾粒子及びPDMAA修飾粒子のいずれの場合においても、前投与の有無に関わらずほぼ同じPGE1の血中滞留性を示していた。すなわち、これらの修飾粒子においても、ABC現象が惹起されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明が提供する低分子薬物含有ナノ粒子は、陰荷電基を持つ低分子薬物を患部ターゲッティングし、薬物の徐放性に優れ、さらに肝臓集積を低減することにより副作用を軽減し、さらにまた血中滞留性に優れており、特に徐放性において優れていると共に、ABC現象を抑制し、頻回投与によっても薬理効果の低減が認められず、ステルス性に優れたものである。
特に、従来から使用されているPEGに代えてPVP等を使用し、これとポリ乳酸との共重合体を使用することにより、ABC現象を抑制し、ステルス性に優れたものとなる点で、その産業上の利用性は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰荷電基を持つ低分子薬物を金属イオンにより疎水化し、これを、
(a)ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、及び、
(b)(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体から選択される共重合体の一種、
と作用させることにより得られる陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項2】
さらに、塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする請求項1に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項3】
さらに界面活性剤を配合することからなる請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項4】
粒子の直径が20〜300nm、好ましくは50〜200nmである請求項1〜3のいずれかに記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項5】
金属イオンが、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、ベリリウムイオン、マンガンイオン又はコバルトイオンの1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項6】
陰荷電基を持つ低分子薬物が、前記金属イオンにより疎水化されるためのリン酸基、硫酸基又はカルボキシル基を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項7】
陰荷電基を持つ低分子薬物が、抗炎症性ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジン又はその誘導体、抗微生物薬又は抗癌薬である請求項1、2又は6に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項8】
(b)の(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体の重量平均分子量が2,000〜50,000である請求項1又は2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項9】
塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである請求項2に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項10】
界面活性剤が、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(80)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステロールエステル、脂質−ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び脂肪酸−ポリエチレングリコール共重合体から選択される1種又は2種以上のものである請求項3に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子。
【請求項11】
請求項1〜10に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子を有効成分とする非経口投与用製剤。
【請求項12】
製剤が静脈注射用製剤、局所注射用製剤、点鼻剤、点眼剤、吸入剤又は噴霧剤である請求項11に記載の非経口投与用製剤。
【請求項13】
陰荷電基を持つ低分子薬物と金属イオンを溶媒中で混合して相互作用させ、この混合液中に、
(a)ポリDL−又はL−乳酸又はポリ(DL−又はL−乳酸/グリコール酸)共重合体、及び、
(b)(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリビニルピロリドン)ブロック共重合体、(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリアクリロイルモルフォリン)ブロック共重合体、及び(ポリDL−又はL−乳酸)/(ポリジメチルアクリルアミド)ブロック共重合体から選択される共重合体の一種、
を加えて混合することを特徴とする請求項1に記載された陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
請求項13の製造方法において、さらに塩基性低分子化合物を混合することを特徴とする請求項13に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
塩基性低分子化合物が、(ジメチルアミノ)ピリジン、ピリジン、ピペリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、ナフチルアミン、モルホリン、アマンタジン、アニリン、スペルミン、スペルミジン、ヘキサメチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、フェネチルアミン、ヒスタミン、ジアザビシクロオクタン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミンから選択される1種又は2種以上のものである請求項14に記載の陰荷電基を持つ低分子薬物含有ナノ粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84541(P2011−84541A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240796(P2009−240796)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(303010452)株式会社LTTバイオファーマ (27)
【Fターム(参考)】