説明

低分子量キトサンの製造方法

【課題】遺伝子導入用キャリアーとして、安全性と導入効率に優れ、その遺伝子導入活性にバラつきが少ない低分子量キトサンを、再現性良く製造する方法を提供する。
【解決手段】キチンを原料とし、(1)強アルカリを用いた脱アセチル化工程と、(2)エンドトキシンフリー水による洗浄工程と、(3)過酸化水素を用いた低分子量化工程とを経ることにより低分子量キトサンを得る。本発明においては、前記低分子量キトサンの重量平均分子量(Mw)が45〜60kDaであり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2〜4であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子導入用キャリアーとして用いられる低分子量キトサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の目覚ましい遺伝子工学の進歩によって、多くの遺伝病やガンなどの原因遺伝子が同定、単離されてきている。そしてそれら病気の原因となる遺伝子の異常がDNAレベルで明らかにされたことで、その異常な遺伝子を正常に戻すことによりその病気を治療するという遺伝子治療が考えられるようになってきた。
【0003】
現在、実用化されている遺伝子治療法は大きくわけて2つある。1つは、先天性免疫不全症や先天性代謝異常症などの先天的な遺伝病において、その欠損した遺伝子を外部から導入して補うという治療法であり、もう1つはガン細胞やAIDSなどのような細胞やウイルスをターゲットにして、それらの増殖を抑制したり、死滅させるための遺伝子を導入する治療法である。上記どちらの治療法においても、目的とする遺伝子を細胞内に導入し、発現させることが重要であることが知られている。
【0004】
しかしながら、遺伝子と細胞膜は共にアニオン性を示し、電気的に反発してしまうため、遺伝子を単独で直接細胞内に導入することは非常に困難である。また、遺伝子導入用キャリアーとして、ウイルスベクターやカチオン性リポソーム、脂質、ポリマーなど、様々な物質が検討されてきたが、安全性や導入効率などの面で問題があり、実用化の妨げとなっている。
【0005】
そこで、安全性と導入効率に優れた遺伝子導入用キャリアーとしてキトサンを用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、0.1〜1.0dl/g程度の固有粘度(30℃、0.2N酢酸+0.1N酢酸ナトリウム溶液)の低分子量キトサンが、遺伝子導入用キャリアーとして適当であることが記載されている。また、特許文献2には、1.0dl/g以上の固有粘度(30℃、0.2N酢酸+0.1N酢酸ナトリウム溶液)のキトサンを遺伝子導入用キャリアーとして用いることが記載されている。また、非特許文献1には15kDa、52kDa、75kDaのキトサンが細胞内への高い遺伝子導入活性を有し、100kDa以上のキトサンでは遺伝子導入活性がなかったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−198782号公報
【特許文献2】特開2000−157270号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】佐藤智典ら「アミノ化多糖を用いた遺伝子の細胞内導入と発現活性」バイオ・高分子シンポジウム講演要旨集、Vol.8、p79−80(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キトサンを用いた遺伝子導入用キャリアーについては、従来、キトサンの分子量と細胞内への遺伝子導入活性との相関についての検討が数多くなされてきたが、同程度に低分子量化されたキトサンであっても遺伝子導入活性にバラつきがあり、十分な再現性が得られないという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、遺伝子導入用キャリアーとして、安全性と導入効率に優れ、その遺伝子導入活性にバラつきが少ない低分子量キトサンを、再現性良く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究した結果、低分子量キトサンの調製にあたり特定の工程を採用することにより、遺伝子導入活性にバラつきが少ない低分子量キトサンが、再現性良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の低分子量キトサンの製造方法は、遺伝子導入用キャリアーとして用いられる低分子量キトサンの製造方法であって、キチンを原料とし、
(1)強アルカリを用いた脱アセチル化工程と、
(2)エンドトキシンフリー水による洗浄工程と、
(3)過酸化水素を用いた低分子量化工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明においては、前記低分子量キトサンの重量平均分子量(Mw)が45〜60kDaであり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2〜4であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遺伝子導入用キャリアーとして、安全性と導入効率に優れ、その遺伝子導入活性にバラつきが少ない低分子量キトサンを、再現性良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
キトサンは、主にエビやカニなどの甲殻類の甲羅に含まれるキチン(N−アセチル−D−グルコサミンがβ−1,4結合した多糖)のアセトアミド基を脱アセチル化して得られる多糖類である。脱アセチル化して生じるアミノ基がイオン化しているため、発熱物質であるエンドトキシンと強く結合する性質を有している。また、キトサンにエンドトキシンが一度結合すると、それを除去することは困難である。このような性質を利用して、キトサンをエンドトキシン吸着体として利用することなども報告されている(特開2007−145743号公報)。ここで、エンドトキシンとは、グラム陰性菌の細胞外膜に存在する内毒素であり、その構成成分はリポ多糖であり、人体内に混入した場合は、発熱、炎症、アナフィラキシーなどの毒作用が惹起される可能性があることから、医薬品類や医療用具などにおいては適正な汚染管理が求められている。
【0015】
本発明の低分子量キトサンの製造方法は、キトサンを低分子量化して低分子量キトサンを得るものであるが、市販のキトサンや、キトサンとして調製され保存されているものなどを原料にすると、既にエンドトキシンが混入しているおそれがあり、また、あやまってエンドトキシンが混入してしまうおそれもあるので、遺伝子導入用キャリアーとしての安全性の観点や、遺伝子導入効率の観点からも、そのようなキトサン素材を用いずに、キチンを原料とする。
【0016】
本発明の低分子量キトサンの製造方法においては、下記の工程により、キチンから低分子量キトサンを得る。
【0017】
(1)強アルカリを用いた脱アセチル化工程
脱アセチル化のための強アルカリとしては、苛性ソーダが好ましく例示される。例えば、16〜20N程度の苛性ソーダ水溶液を湯浴等で60〜100℃程度に加熱して、この苛性ソーダ水溶液1kgに対して、キチン1〜200g程度を投入し、撹拌しながら1〜8時間程度保温する。これにより、キチンが脱アセチル化度70〜95%程度のキトサンとなる。
【0018】
なお、強アルカリを用いた脱アセチル化工程は、上記の態様に限られるものではなく、原料のキチンを強アルカリで処理することにより、脱アセチル化度70〜95%程度のキトサンとなる工程であれば、本発明に適用できる。
【0019】
(2)エンドトキシンフリー水による洗浄工程
エンドトキシンフリー水とは、エンドトキシンを実質的に含まない水であり、具体的には、エンドトキシン濃度が0.25(EU/g)以下、好ましくは、0.01(EU/g)以下の水である。このようなエンドトキシンフリー水は、限外ろ過膜(UF膜)などで調製することができる。また、市販のエンドトキシンフリー水を用いてもよい。
【0020】
エンドトキシンを測定する方法としては、日本薬局方に収載されているカブトガニ血球抽出物由来成分を利用したリムルステストをはじめ、鶏胚致死試験、ウサギ発熱性試験、ガスマススペクトル、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ等が挙げられる。市販のエンドトキシン測定用キットを用いてもよい。
【0021】
本発明の低分子量キトサンの製造方法においては、エンドトキシンフリー水による洗浄工程を、上記に説明した強アルカリを用いた脱アセチル化工程の結果得られたキトサンに対して行うか、又は、下記に説明する過酸化水素を用いた低分子量化工程の結果得られた低分子量キトサンに対して行うか、又は、それらのいずれに対しても行う。本発明においては、強アルカリを用いた脱アセチル化工程の結果得られたキトサンと、過酸化水素を用いた低分子量化工程の結果得られた低分子量キトサンとのいずれに対しても行うことが好ましい。
【0022】
洗浄は、強アルカリを用いた脱アセチル化工程の結果得られたキトサン、又は、過酸化水素を用いた低分子量化工程の結果得られた低分子量キトサンに、エンドトキシンフリー水を添加して、固液分離するという操作を、洗浄水のpHが9程度以下になるまで繰り返すことにより行う。固液分離は、42メッシュ(開口355μm)〜330メッシュ(開口45μm)程度の篩で行うことが、作業性がよいので好ましい。
【0023】
なお、エンドトキシンフリー水による洗浄工程は、上記の態様に限られるものではなく、洗浄することにより、強アルカリを用いた脱アセチル化工程や、過酸化水素を用いた低分子量化工程で用いられたアルカリを除去する工程であれば、本発明に適用できる。
【0024】
また、洗浄後のキトサン又は低分子量キトサンは、エタノールに分散・固液分離して脱水後、真空乾燥を行うことが好ましい。これによれば、乾燥工程でのキトサンの結着を防ぎ、乾燥後の粉砕工程を省略できる。
【0025】
(3)過酸化水素を用いた低分子量化工程
過酸化水素を用いた低分子量化のための溶媒としては、苛性ソーダ水溶液とエンドトキシンフリー水を混合して調製した、0.1〜3N程度の苛性ソーダ水溶液を用いることができる。この苛性ソーダ水溶液を湯浴等で60〜90℃程度に加熱して、その1kgに対して、上記(1)の強アルカリを用いた脱アセチル化工程の結果得られたキトサンを40〜100g程度を投入し、更に30〜100ml程度の10〜30%過酸化水素水を加え、撹拌しながら0.1〜2 時間程度保温する。これにより、重量平均分子量(Mw)が15〜75kDa程度である低分子量キトサンとなる。
【0026】
なお、過酸化水素を用いた低分子量化工程は、上記の態様に限られるものではなく、キトサンを過酸化水素で処理することにより、重量平均分子量(Mw)が15〜75kDa程度である低分子量キトサンとなる工程であれば、本発明に適用できる。
【0027】
本発明においては、上記工程を経ることにより得られる低分子量キトサンの重量平均分子量(Mw)が45〜60kDaであり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2〜4であることがより好ましく、上記低分子量キトサンの重量平均分子量(Mw)が45〜60kDaであり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2.5〜3.8であることが更に好ましい。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、プルランを標準物質とし、サイズ排除クロマトグラフィーで測定することができる。
【0028】
本発明の製造方法によって得られた低分子量キトサンは、これをエンドトキシンフリー水に分散した後、塩酸でpH5.0程度に調整して溶解した後、0.1N苛性ソーダでpH6.5程度に調整後、凍結乾燥を行い、低分子量キトサン粉末とすることが好ましい。
これによれば、水、中性の緩衝液に容易に溶解するキトサン塩とすることができる。また、塩酸以外の各種無機酸、有機酸も塩酸の代わりに用いることができる。
【0029】
本発明の製造方法によって得られた低分子量キトサンの品質は、常法に従い、ルシフェラーゼ等のタンパク質を発現させるためのプラスミドを、適当な培養細胞に遺伝子導入し、その発現効率を求めることによって確認することができる。
【0030】
その導入の際、プラスミド−低分子量キトサン複合体の形成は、両者の溶液を0〜50℃で10分〜24時間、好ましくは20〜30℃で1〜4時間混合することにより得ることができる。この時の両者の混合の比率は、プラスミド1塩基:低分子量キトサン中のグルコサミン単位=1:2〜1:20とすることが好ましく、1:5〜1:10とすることがより好ましい。なお、両者の溶媒としては、滅菌された超純水、緩衝液等が好ましく用いられる。
【0031】
本発明の製造方法によって得られた低分子量キトサンの品質は、そのエンドトキシン濃度によっても確認することができる。エンドトキシン濃度としては、0〜1000(EU/g)であることが好ましく、0〜100(EU/g)であることがより好ましい。
【実施例】
【0032】
以下に例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。なお、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0033】
<実施例1>
カニ殻由来のキチンを原料として、下記工程により、低分子量キトサンの調製を行った。
【0034】
(1)脱アセチル化工程
48%苛性ソーダ1kgを湯浴で加熱して80±2℃とし、キチンTCL(甲陽ケミカル株式会社製)100gを投入し、撹拌しながら80±2℃で4時間保温した。
【0035】
(2)洗浄工程 その1
脱アセチル化したキチン(キトサン)をエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)で洗浄した後、330メッシュ(開口45μm)で固液分離を行い、洗浄水のpHが9以下になるまで同じ操作を繰り返した。水洗浄後のキトサンは、1Lのエタノールに分散・固液分離して脱水後、真空乾燥を行い、84.3gのキトサンを得た。
【0036】
(3)低分子化工程
洗浄したキトサン80g、エンドトキシンフリー水1,120ml、48%苛性ソーダ11.2gを混合し、湯浴で加熱して80±3℃とする。次いで64mlの30%過酸化水素水を加え、80±3℃で1時間保温した。
【0037】
(4)洗浄工程 その2
低分子化したキトサンをエンドトキシンフリー水で洗浄した後、330メッシュで固液分離を行い、洗浄水のpHが9以下になるまで同じ操作を繰り返した。水洗浄後のキトサンは、1Lのエタノールに分散・固液分離して脱水後、真空乾燥を行い、64.0gの低分子量キトサンを得た。
【0038】
(5)粉末化工程
洗浄した低分子量キトサン10gを90mlのエンドトキシンフリー水に分散した後、塩酸でpH5.0に調整して溶解した。更に0.1N苛性ソーダでpH6.5に調整後、凍結乾燥を行い、10.2gの低分子量キトサン粉末を得た。
【0039】
<比較例1>
カニ殻由来のキトサンを原料として、ゲル濾過分画法による下記の方法で、低分子量キトサンの調製を行った。
【0040】
キトサンLL(焼津水産化学工業社製)1gを、450mlの水に分散し、1N塩酸50mlを加えて溶解した。この液に、0.25 gの塩化ナトリウムを添加、溶解後1.0μmのメンブレンフィルターでろ過し、キトサン溶液とした。
【0041】
上記キトサン溶液25mlを、移動相で平衡化したゲルろ過カラム(Toyopearl HW-55F(東ソー株式会社製)φ40×1000mm、移動相:0.5%塩化ナトリウムを含む0.1N塩酸)に供し、分画を行った。
【0042】
得られた各画分に対しHPLCによる分子量分析を行い、ピークトップ分子量が、40〜60kDaとなっている画分を回収し、透析チューブ(シームレスセルロースチューブ、MWCO12,000〜16,000、和光純薬工業株式会社製)に入れ、水に対して透析し脱塩した。得られた脱塩液を凍結乾燥し粉末とした。
【0043】
<比較例2>
比較例1と同じ方法で、製造バッチの異なる低分子量キトサン粉末を調製した。
【0044】
<試験例1> 低分子量キトサン粉末の分子量測定
0.45μmの分析カラムは、TSKgel G4000PWXL(東ソー社製)とTSKgel G3000PWXL(東ソー社製)を連結し使用した。移動相は、50 mMの塩化ナトリウムを含む50mM酢酸を用い、流量0.8ml/minで分析した。また、カラム温度は40℃とし、示差屈折計で検出し、試料の分子量を測定した。
重量平均分子量、数平均分子量は常法に従い、保持時間15分から25分までのキトサンのピークについて計算を行った。
【0045】
その結果を、まとめて下記表1に示す。
【0046】
<試験例2> 低分子量キトサン粉末の遺伝子導入活性測定
実施例1、比較例1、及び比較例2の低分子量キトサン粉末について、下記方法で遺伝子導入活性の測定を行った。
【0047】
(1)24穴plateへの細胞の接着
70%コンフルエントの細胞(COS7細胞)をトリプシン処理によってはがし、DMEM FBS(+)培地に懸濁した。細胞懸濁液50μlを取り、これにトリパンブルー50μlを加えて染色した。染色した細胞の数をヘモサイトメーターによって測定し、懸濁液の濃度を求めた。24穴プレートの各ウェルにDMEM FBS(+)培地0.5mlを加えて 8×104個の細胞を播き、24時間培養して細胞を接着させた。
【0048】
(2)キトサン溶液、及びプラスミド溶液の調製
3.03mg/mlになるようにキトサンを精秤し、予め1NのHClでpH6.5に調整したPBS(−)を所定量加え、37℃、120rpmで一晩振盪した。これを0.22μmのメンブレンフィルターで濾過滅菌してキトサン溶液を調製した。プラスミド溶液は、ルシフェラーゼ遺伝子のプラスミドを純水で、1mg/mlの濃度となるように調製した。
【0049】
(3)トランスフェクション
所定量のプラスミド溶液及びキトサン溶液をそれぞれpH6.5に調整した10mM MOPS PBS(−)溶液で希釈して15分間以上インキュベートし、プラスミド溶液とキトサン溶液をN/P比(キトサンのアミノ基とプラスミドのリン酸基との比)が5となるように混合してさらに15分間インキュベートすることによりプラスミド/キトサン複合体溶液を調製した。
【0050】
細胞が接着した24穴プレートから培地を除去し、DMEM pH6.5 FBS(+)培地450μl、複合体溶液50μlを加えてトランスフェクションさせた。トランスフェクションは1サンプルあたり3wellずつ行った。4時間後培地を吸い取り、DMEM FBS(+)培地を0.5 ml加えて24時間培養した。
【0051】
(4)測定
24穴プレートの培地を吸い取り、PBS(−)で3回洗浄した後、細胞溶解用溶液「Cell culture lysis reagent」(Promega社製)100μlを加えて細胞を溶解させた。溶液をよくピペッティングし、ウェル毎にエッペンドルフチューブに回収した。これを4℃、12000rpmで5分間遠心分離した。ルシフェリン溶液(Promega社製)100μlと上清20μlを測定用チューブに入れて軽く混合し、ルミノメーター(TD−20/20 Luminometer、TURNER DESIGNS)で測定を行った。
【0052】
(5)補正
なお、ルシフェラーゼ発現活性の結果を細胞固有のタンパク質量で補正するため、ルシフェラーゼアッセイに用いた細胞溶解液のタンパク量をプロテインアッセイ(Lowry法)によって測定して、前記ルミノメーターでの測定値をその値で除した値を用いて遺伝子導入活性を求めた。
【0053】
遺伝子導入活性の結果を、まとめて下記表1に示す。なお、遺伝子導入活性は、比較例2を100%としてその相対活性として示した。
【0054】
<試験例3> 低分子量キトサン粉末のエンドトキシン測定
標準品はエンドトキシン標準品CSE−Lセット(生化学バイオビジネス株式会社製)を用いた。試料は、注射用水(大塚製薬社製)に溶解し適宜希釈したものを使用した。試薬はエンドスペシーES−24S(生化学バイオビジネス株式会社製)セットとトキシカラーDIA−MPセット(生化学バイオビジネス株式会社製)を使用し、エンドトキシンを定量した。
【0055】
その結果を、まとめて下記表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
以上から、比較例1、2では、エンドトキシンが顕著に混入していた。これは、キトサンを原料にしたことが原因であると考えられた。それに対し、実施例1では、エンドトキシンがほとんど検出されずに、エンドトキシンフリーの状態を保っていた。また、比較例1ではMw/Mnの値が4を超え、また、比較例2ではMwの値が60kDaを超えており、実施例1が示すほどの遺伝子導入活性は得られなかった。これは、キトサンの分子量が所定の重量平均分子量の範囲でそろっているためにプラスミドと安定な複合体を形成し、細胞に取り込まれやすくなったことが一因として考えられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子導入用キャリアーとして用いられる低分子量キトサンの製造方法であって、キチンを原料とし、
(1)強アルカリを用いた脱アセチル化工程と、
(2)エンドトキシンフリー水による洗浄工程と、
(3)過酸化水素を用いた低分子量化工程と、
を含むことを特徴とする低分子量キトサンの製造方法。
【請求項2】
前記低分子量キトサンの重量平均分子量(Mw)が45〜60kDaであり、かつ数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2〜4である請求項1記載の低分子量キトサンの製造方法。

【公開番号】特開2011−236264(P2011−236264A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106330(P2010−106330)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】