説明

低分子量セルロース混合エステル並びにそれらのコーティング組成物中の低粘度結合剤及び改質剤としての使用

【課題】広い範囲の有機溶媒に溶解し、多くの樹脂と混和性の結合剤樹脂及びレオロジー改質剤としてコーティング及びインクに有用な低分子量で低重合度のセルロース混合エステルの提供。
【解決手段】約0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、約0.80〜約1.40のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び約1.20〜約2.34のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有する約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全置換度:
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度、約1,000〜約5,600の数平均分子量、約1,500〜約10,000の重量平均分子量、約1.2〜約3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース化学分野、更に詳しくは、低粘度結合剤樹脂及びレオロジー改質剤としてコーティング及びインク組成物において有用である低分子量セルロース混合エステルに属する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステルは、多くのプラスチック、フィルム、コーティング及び繊維用途において有用な価値あるポリマーである。セルロースエステル(CEs)は、一般的に、希釈剤及び製品溶媒として対応するカルボン酸を用いて、セルロースの、望ましいエステル基又は複数の基に対応する無水物又は複数の無水物との反応により合成される。これらのエステル基の一部は、後に加水分解されて部分エステル化製品を得る。これらの部分置換セルロースエステルは、大きな商業的価値を有し、それらの共樹脂とのより大きな溶解性及び混和性(トリエステルに比較して)及びヒドロキシル基含量(架橋を容易にするための)が高く評価されるコーティングにおいて用途を見出す。
【0003】
適するセルロースエステルを得る上で重要な態様は、伝統的に、エステル化工程の間分子量を保持することであった。分子量の損失は不良プラスチック特性及び脆いフィルムに関係するが、望ましい目標は可撓性フィルムである。従って、適するクロロホルム溶解性(トリアセテート)セルロースエステルを得るために、アセチル化工程がセルロースの有意な分解、又は分子量の低下をもたらしてはならないことは、昔から認識されてきた。例えば、特許文献1参照。
【0004】
これらの早期のトリアセテートエステルが、アセテート基の部分加水分解によって改質して、アセトン溶解性酢酸セルロースを得ることができることが見出された時に、加水分解の間、適する分子量を保持することは重要であった。例えば特許文献2参照。部分エステル加水分解の間、反応ブレンド中に存在する塩酸量が、酢酸セルロースの加水分解又は崩壊を避けるために、注意深く制御しなければならないことは、早くも1930年代に認識されていた。例えば特許文献3参照。
【0005】
同様に、特許文献4には、触媒の高温度又は高濃度などの厳しい条件下での加水分解がセルロースの分解を引き起こし、得られる製品がそれらの低強度のせいで商業用用途に適さないことが報告された。エステル化触媒としての塩化亜鉛の使用に関する特許文献5は、利点として、工程がセルロースの崩壊速度を最小化することに言及した。特許文献6は、極く低い重合度のセルロースエステルに大して関心が示されてこなかったことを認めた。つい最近、セルロースエステルの加水分解速度が、温度、触媒濃度により、及びそれほどでないにせよ水の量により、制御されること、及びより高い水の量が加水分解速度をわずかに増大させ、「分解を最小化することを助ける」ことが確認された。非特許文献1参照。
【0006】
コーティング組成物中に用いられる場合に、従来型のセルロースエステルは、改善された硬度、改善されたアルミニウムフレーク配向性、高透明度、高光沢、指触乾燥時間の低減、改善されたフロー及びレベリング、改善された再溶解耐性、クレーターの低下及びブロッキングの低下を含む多くの利点を提供する。しかし、従来型のセルロースエステルの性能特性は粘度増加を伴い、これは用いられる溶媒レベルを増大させることにより相殺されなければならない。コーティング組成物中のVOCレベルに対する最近の関心により、有機溶媒の添加なしで、穏やかな粘度増加のみを伴うだけで従来型のセルロースエステルの利点を提供するセルロースエステル製品に対する必要性が残ったままである。コーティング組成物中に組み込まれる場合に過度の粘度増加なしで、従来型のセルロースエステルの性能特性を提供するセルロースエステルを提供することは、明確に技術上の進歩であるであろう。
【0007】
エステル化及び部分加水分解の間、セルロースエステルの分子量を保持することは、昔から適する製品を得る上で重要であるとみなされてきたが、それにも拘わらず、時折、低分子量セルロースエステルの文献での言及が存在してきた。
【0008】
例えば特許文献7には、3フッ化ホウ素などの触媒により3酢酸セルロースの分子量を低下させ、得られる2官能性低分子量3酢酸セルロースを、次に、線状ブロックコポリマーを製造するために用いるための方法が開示されている。この開示は、3酢酸塩の2−、3−及び6−位でのエステル置換を保持する重要性、即ち、そこでセルロースの実質的にすべてのヒドロキシル基がエステル化され、その結果、線状ブロックコポリマーの形成に必要なヒドロキシル官能基が優先的にポリマー鎖の末端上にのみ現れることを強調している。
【0009】
特許文献8には、ハロゲン化水素がセルロース誘導体の分子量を下げるために用いられる工程が開示されている。実施例には、粘度低下により証明されるように、塩化水素と反応して分子量を下げたメチルセルロース粉末及びメチル−ヒドロキシプロピルセルロースが記載されている。
【0010】
特許文献6には、可塑剤として、及び発泡プラスチック製造用の制御因子として、有用である、約4〜約20の平均重合度及び低レベルのヒドロキシルを有するトリプロピオン酸オリゴ糖が記載されている。トリプロピオン酸オリゴ糖は、酸触媒の存在下でプロピオン酸セルロースを分解させることにより製造される。特許権者は、セルロースエステルの低粘度オリゴ糖エステルへの分解を防止する方法を提供することが技術上の目的であってきたことを認めている。
【0011】
特許文献9には、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂から選択されるフィルム形成性樹脂成分、1.0〜15.0重量%顔料、及び2.0%〜50.0重量%のセルロースエステル材料を包含するベースコート組成物が記載されている。特許文献9には、セルロースエステル材料に対する溶液粘度0.05〜0.005秒、アセチル含量10.0〜15.0重量%、プロピオニル含量0.1〜0.8重量%、ブチリル含量36.0〜40.0重量%及び遊離ヒドロキシル含量1.0〜2.0重量%が示されている。しかし、特許文献9の実施例は、25℃でフェノール/テトラクロロエタン(PM95)の60/40(重量/重量)溶液中での測定で、こうしたエステルに対する約0.25〜約0.30dL/gのインヘレント粘度(IV)にほぼ等しい溶液粘度0.01を有するセルロースエステルを用いている。我々は、IV値とGPC分子量値間には強い相関があるが、約0.01未満の溶液粘度はIV値及びGPC分子量値との相関が低いことを見出してきた。
【0012】
特許文献10には、セルロースポリマーを、適切なカルボン酸溶媒中でトリフルオロ酢酸、鉱酸及びアシル又はアリール無水物により処理し、続く任意のその場(in situ)加水分解による、低分子量、高ヒドロキシルセルロースエステル製造のための方法が記載されている。開示により得られるセルロースエステルは、約0.01x105(約1,000)〜約1.0x105(約100,000)の範囲にある数平均分子量(Mn)、及びフェノール/テトラクロロエタンの重量で60/40溶液100ml中の0.25グラム試料に対して25℃温度での測定で、IV(インヘレント粘度)約0.2〜約0.6を有すると言われている。
【0013】
特許文献11には、酸触媒の存在下で、3又はそれ以上の炭素原子の飽和又は不飽和有機酸(プロピオニル又はそれ以上)により酢酸セルロースを加熱して、得られる酢酸を反応ブレンドから除去することにより低分子量セルロース混合有機酸エステルを得ることを含む、低分子量セルロース混合有機酸エステル製造のための方法が記載されている。この方法に対する出発原料は酢酸セルロースである。
【0014】
同じ発明者による別の特許文献、特許文献12には、カチオン交換樹脂の存在下で、30℃を超える温度で飽和又は不飽和有機酸により酢酸セルロースを加熱し、得られるエステルが出発原料よりも低い分子量を有することを含む、低分子量セルロース有機酸エステル製造のための方法が開示されている。この開示方法に対する出発原料は酢酸セルロースである。
【0015】
これらの文献は、両方とも、低分子量混合セルロースエステルを教示している。この方法は出発原料として酢酸セルロースを用いると共に、セルロース主鎖を加水分解しながらエステル交換を行い、導入される高次の混合エステルの量は比較的低くある。
【0016】
特許文献13には、酢酸セルロース、ジエポキシ化合物及び光カチオン重合触媒を含む紫外線硬化性セルロース系コーティング組成物が開示されている。これらの組成物において有用な酢酸セルロースは、1,500〜5,000の数平均分子量を有する低分子量酢酸セルロースであり、3酢酸セルロースから加水分解により製造される。この開示により、ヒドロキシル基の置換度は、1未満のヒドロキシル値が最終コーティング組成物中での不十分な架橋をもたらすと言われるので1〜3でなければならない。
【0017】
アンヒドログルコース単位の逐次添加によってオリゴ糖を製造しようとする努力がなされてきたが、これらの方法は、コーティング用途に適するセルロース誘導体をもたらすとは信じられていない。更に、こうした方法のコストは高くつくものであるであろう。例えば、非特許文献2参照。また、非特許文献3参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第1,683,347号明細書
【特許文献2】米国特許第1,652,573号明細書
【特許文献3】米国特許第1,878,954号明細書
【特許文献4】米国特許第2,129,052号明細書
【特許文献5】米国特許第2,801,239号明細書
【特許文献6】米国特許第3,518,249号明細書
【特許文献7】米国特許第3,386,932号明細書
【特許文献8】米国特許第3,391,135号明細書
【特許文献9】米国特許第4,532,177号明細書
【特許文献10】国際出願公開第WO91/16356号
【特許文献11】特開昭51−119089号公報
【特許文献12】特開昭51−119088号公報
【特許文献13】米国特許第6,303,670号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Ed.,vol.5,496〜529頁,509(1993),John Wiley & Sons,New York,New York
【非特許文献2】Nishimura,T.;Nakatsubo,F.“Chemical Synthesis of Cellulose Derivatives by a Convergent Synthetic Method and Several of Their Properties,”Cellulose,1997,4,109.
【非特許文献3】Kawada,T.;Nakatsubo,F.;Umezawa,T.;Murakami,K.;Sakuno,T.“Synthetic Studies of Cellulose XII:First Chemical Synthesis of Cellooctaose Acetate,”Mokuzai Gakkaishi 1994,40(7),738.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者らは、意外にも、従来型の分子量エステルの性能特性を提供するために必要な性質に欠けると思われていた比較的低い分子量のセルロース混合エステルが、過度の粘度増加なしで、及びセルロースエステルを含有する高固形物コーティングの製造においてこれまで必要であった高レベルの溶媒なしでコーティング組成物中に組み込むことができることを見出した。また驚くことに、得られるコーティングの性質は、コーティング組成物を適用し、硬化させる時に、従来型の分子量エステルを用いて製造されるものに概ね匹敵するものである。
【0021】
本発明による種々のエステルは、改善された多様な有機溶媒中への溶解度、種々の共樹脂(co−resins)との混和性及び融解温度への長期暴露後の適する融解安定性を示す。本発明エステルの更なる利点は以下に述べられる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によるセルロース混合エステルは、分子量が低く、高い最大置換度を有する(高度に置換性である)と共に、脆いフィルムの形成などの、一般的に低分子量セルロースエステルに関連する欠点の全くない高固形分、低粘度コーティング組成物を提供する。1又はそれ以上の樹脂と組合せてコーティング添加物として用いる場合に、本発明エステルは、それら自体で過度に組成物粘度を増大させず、望ましい粘度を保持するために、有機溶媒レベルの望ましくない増加などの一般的にそれらの使用に関連する欠点なしで従来型のセルロースエステルの利点を提供する。
【0023】
これらの新規セルロース混合エステルは、完全エステル化又は部分加水分解化形態におけるセルロース主鎖上に、アンヒドログルコース単位当り高い最大置換度(DS)を有し、一般に、約0.70未満のヒドロキシル基に対するDS(<0.70DSヒドロキシル)を有する。本発明のセルロースエステルに対するアンヒドログルコース単位当りの最大置換度は約3.08〜約3.50である。これらの新規混合エステルは、広範囲の有機溶媒中に可溶であり、コーティング配合者に対して溶媒選択の広い許容範囲を可能とする。それらは、高固形分コーティングの溶液及びスプレー粘度両方に最小限の影響しか与えない。これらの材料は、他のコーティング樹脂と混合する場合に優れた混和性を示し、それによって、従来型セルロースエステルがなすよりも広い範囲のコーティング樹脂により透明なフィルムを生成する。
【0024】
加えて、本発明の新規セルロース混合エステルは、主要成分として高固形分又は低VOCコーティング組成物中に用いることができ、それによって、用いられる樹脂の量を低減するか、又は排除する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明及び従来型のセルロースエステルによるセルロースエステルの溶液に対する濃度の関数としての対数粘度(log viscosity)をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明及びその中に含まれる実施例を参照することにより更に容易に理解することが可能である。
【0027】
発明の本物質組成物及び方法を開示し、説明する前に、本発明が、特記のない限り特定の合成法又は特定の配合物に限定されず、従って、開示内容から変わることが可能であることを理解されたい。また、用いる専門用語は特定の実施形態のみを説明する目的のためだけにあり、本発明の範囲を限定するようには意図されていないことを理解されたい。
【0028】
単数形(「a」、[an]及び「the」)は、文脈が明確に他を指し示さない限り複数の対象物を包含する。
【0029】
任意的な又は任意的には、後に記載される事象又は状況が起こることが可能であるか、又は可能でないことを意味する。記載は、事象又は状況が起こる例及びそれが起こらない例を包含する。
【0030】
範囲は、本明細書において、およそ一つの特定値から及び/又はおよそ別の特定値までとして表すことが可能である。こうした範囲が表される場合に、別の実施形態が一つの特定値から及び/又は他の特定値までであることを理解されたい。
【0031】
特許又は公報を参照する、この明細書全体を通して、それらの文献の全体の開示内容は、本発明が関係する最新技術を更に十分に説明するために、この明細書中に引用
として組み込まれるように意図されている。
【0032】
開示内容全体を通して用いるCABは、酢酸酪酸セルロースを意味し、CAPは酢酸プロピオン酸セルロースを意味し、CAは酢酸セルロースを意味し、CMCABは酢酸酪酸カルボキシメチルセルロースを意味し、CMCAPは酢酸プロピオン酸カルボキシメチルセルロースを意味し、CMCAは酢酸カルボキシメチルセルロースを意味し、そしてHS−CABは、高い最大置換度、低重合度、低極限粘度数(intrinsic viscosity)(IV)及び低分子量を有する、本発明による創意に富む高固形分酢酸酪酸セルロースを意味する。
【0033】
別途示されない限り、HS−CAB−55は、別途注記のない限り実施例3に沿って製造される、高い最大置換度、低重合度、低IV、低分子量及び高ブチリル含量(高ブチリル、即ち約52〜約55重量%)を有する本発明の高固形分酢酸酪酸セルロースを指し、HS−CAB−46は、別途注記のない限り実施例21〜22に沿って製造される、高い最大置換度、低重合度、低IV、低分子量及び中から高ブチリル含量(高中ブチリル、即ち約43〜約51重量%)を有する本発明の高固形分酢酸酪酸セルロースを指し、HS−CAB−38は、別途注記のない限り実施例1に沿って製造される、高い最大置換度、低重合度、低IV、低分子量及び中ブチリル含量(中ブチリル、即ち約35〜約42重量%)を有する本発明の高固形分酢酸酪酸セルロースを指し、HS−CAB−36は、別途注記のない限り実施例2に沿って製造される、高い最大置換度、低重合度、低IV、低分子量及び低中ブチリル含量(低中ブチリル、即ち約30〜約38重量%)を有する本発明の高固形物酢酸酪酸セルロースを指し、HS−CAB−17は、別途注記のない限り実施例9〜13に沿って製造される、高い最大置換度、低重合度、低IV、低分子量及び低ブチリル含量(低ブチリル、即ち約17〜約24重量%)を有する本発明の酢酸酪酸セルロースを指し、HS−CAB−20は、同様に、別途注記のない限り実施例9〜13に沿って製造され、本明細書全体を通して用いられるHS−CAB−17に同等と考えられる、高い最大置換度、低重合度、低IV、低分子量及び低ブチリル基含量(低ブチリル、即ち約17〜約24重量%)を有する本発明の酢酸酪酸セルロースを指し、HS−CAPは、高い最大置換度、低重合度、低IV及び低分子量を有する本発明の高固形分酢酸プロピオン酸セルロースを意味し、そしてHS−CAP−54は、別途注記のない限り実施例52に沿って製造される、高い最大置換度、低重合度、低IV及び低分子量及び高プロピオニル含量(高プロピオニル、即ち約49〜約56重量%)を有する本発明の高固形分酢酸プロピオン酸セルロースを意味する。
【0034】
一つの実施形態において、本発明は、約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度を有すると共に、以下の置換を有するセルロース混合エステルに関する:約0.70以下のヒドロキシル基のアンヒドログルコース単位当りの置換度;約0.80〜約1.40のC3〜C4エステル基のアンヒドログルコース単位当りの置換度、及び約1.20〜約2.34のアセチル基のアンヒドログルコース単位当りの置換度。この実施形態により、本発明の混合エステルは、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度、約1,000〜約5,600の数平均分子量(Mn)、約1,500〜約10,000の重量平均分子量(Mw)及び約1.2〜約3.5の多分散度を示す。種々の実施形態において、本発明のエステルは、ブチリルもしくはプロピオニル、又はこれら二つのブレンドを含むことが可能である。
【0035】
種々の代替態様において、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は、約0.05〜約0.70であることが可能であり、インヘレント粘度は、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.12dL/gであることが可能であるか、又は数平均分子量(Mn)は、約1,500〜約5,000であることが可能である。一部の実施形態において、好ましい多分散度は1.2〜2.5、好ましいインヘレント粘度は0.07〜0.11dL/g、又は好ましい数平均分子量(Mn)は約1,000〜約4,000であることが可能である。一部の他の実施形態において、好ましいインヘレント粘度は約0.07〜約0.11dL/g又は好ましい数平均分子量(Mn)は約1,000〜4,000であることが可能である。
【0036】
更なる実施形態において、本発明は、約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度を有すると共に、以下の置換:約0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度;約1.40〜約2.45のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、及び0.20〜約0.80のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有するセルロース混合エステルに関する。この実施形態により、本発明の混合エステルは、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度、約1,000〜約5,600の数平均分子量(Mn)、約1,500〜約10,000の重量平均分子量(Mw)及び約1.2〜約3.5の多分散度を示す。種々の実施形態において、本エステルは、ブチリルもしくはプロピオニル、又はこれら二つのブレンドを含むことが可能である。
【0037】
種々の代替実施形態において、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は、約0.05〜約0.70であることが可能であり、インヘレント粘度は、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.12dL/gであることが可能であるか又は数平均分子量(Mn)は約1,500〜約5,000であることが可能である。一部の実施形態において、好ましい多分散度は1.2〜2.5、好ましいインヘレント粘度は0.07〜0.11dL/g又は好ましい数平均分子量(Mn)は約1,000〜約4,000であることが可能である。一部の他の実施形態において、好ましいインヘレント粘度は約0.07〜約0.11dL/g及び好ましい数平均分子量(Mn)は約1,000〜4,000であることが可能である。
【0038】
なお別の実施形態において、本発明は、約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度を有すると共に、以下の置換:約0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度;約2.11〜約2.91のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び0.10〜約0.50のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有するセルロース混合エステルに関する。この実施形態により、本発明の混合エステルは、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度、約1,000〜約5,600の数平均分子量(Mn)、約1,500〜約10,000の重量平均分子量(Mw)及び約1.2〜約3.5の多分散度を示すことが可能である。種々の実施形態において、本エステルは、ブチリルもしくはプロピオニル又はこれら二つのブレンドを含むことが可能である。
【0039】
種々の代替態様において、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は約0.05〜約0.70であることが可能であり、インヘレント粘度は、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.12dL/gであることが可能であるか、又は数平均分子量(Mn)は約1,500〜約5,000であることが可能である。一部の実施形態において、好ましい多分散度は1.2〜2.5、好ましいインヘレント粘度は0.07〜0.11dL/g、そして好ましい数平均分子量(Mn)は約1,000〜約4,000であることが可能である。一部の他の実施形態において、好ましいインヘレント粘度は約0.07〜約0.11dL/g、そして好ましい数平均分子量(Mn)は約1,000〜4,000であることが可能である。
【0040】
従って、本発明は、例えば、結合剤成分及びコーティング組成物中の添加剤として有用である一部のセルロースの混合エステルを提供する。本発明のエステルは、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で(以下に更に規定されるように)、約0.05〜約0.15dL/g又は約0.07〜約0.11dL/gのインヘレント粘度、及び約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの最大置換度並びに約2.38〜約3.50の、有機エステル、例えば1〜12個の炭素原子を有するもの、好ましくはC2〜C4アルキルエステル、更に好ましくは飽和C2〜C4アルキルエステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有することが可能である。以下に記載するように、これらの樹脂は、特に、コーティング及びインク配合物において有用である。それらは、本明細書の実施例において実証されるように、広範囲の溶媒及び溶媒ブレンド中に可溶であり、それらを特に注文コーティング配合物向きとする。本セルロースエステルは、メチルセルロース又はメチル−ヒドロキシプロピルセルロースエステルなどのヒドロキシアルキルセルロースエステルなどのアルキルセルロースエステルであることが可能である。しかし、一部の実施形態において、セルロースエステルは、別途改質されないエステルである、即ち、セルロースは、酸化化学を介して得られるエーテル官能基又はカルボキシル官能基でなく、有機エステル官能基の添加によってのみ改質される。一部の特定の新規エステルは好ましく、更に、本発明の追加実施形態として提供される。
【0041】
なお別の実施形態において、約3.08〜約3.50の最大置換度、約0.01〜約0.70のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、約0.8〜約3.50のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、約0.05〜約2.00のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有すると共に、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度を有するセルロース混合エステルが提供される。種々の代替実施形態において、インヘレント粘度は約0.07〜約0.11dL/gであり、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は0.10〜0.70であり、C3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は1.10〜3.25であるか、又はアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は0.05〜0.90であることが可能である。この実施形態による種々のエステルは、広範囲の溶媒及び溶媒ブレンド中への溶解性を示す。
【0042】
別の実施形態において、約3.08〜約3.50の最大置換度、約0.01〜約0.70のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、約0.8〜約3.50のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、約0.05〜約2.00のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有すると共に、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度を有するセルロース混合エステルが提供される。種々の代替実施形態において、インヘレント粘度は約0.07〜約0.11dL/gであり、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は約0であり、C3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は2.60〜3.40であるか、又はアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は0.10〜0.90であることが可能である。これらの実施形態による種々のエステルは、広範囲の溶媒及び溶媒ブレンド中への溶解性を示す。
【0043】
本発明の別の実施形態において、約3.08〜約3.50の最大置換度並びに約0.01〜約0.70のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び約0.80〜約3.44のブチリルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び約0.05〜約2.00のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有すると共に、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度を有する酢酸酪酸セルロースが提供される。種々の代替実施形態において、インヘレント粘度は0.07〜0.11dL/gであり、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は0.10〜0.70であり、ブチリルは1.10〜3.25、又はアセチルは0.10〜0.90であることが可能である。この実施形態による種々のエステルは、広範囲の溶媒及び溶媒ブレンド中への溶解性を示す。
【0044】
更なる実施形態として、約0.01〜約0.70のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び約0.80〜約3.44のプロピオニルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び約0.05〜約2.00のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有すると共に、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度を有する酢酸プロピオン酸セルロースが提供される。種々の代替実施形態において、インヘレント粘度は0.07〜0.11dL/gであり、ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は0.10〜0.70であり、プロピオニルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は1.10〜3.25であるか、又はアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度は0.10〜0.70であることが可能である。この実施形態による種々のエステルは、広範囲の溶媒及び溶媒ブレンド中への溶解性を示す。
【0045】
セルロースの各種グレード及び供給源は、利用可能であり、本発明により有用であると共に、中でもコットンリンター、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、コーン繊維及び他の農業供給源並びにバクテリアセルロースから選択することができる。本発明のセルロースエステルを製造するために用いられるセルロースの供給源は、適する特性を有する製品を提供する上で重要である。溶解グレードセルロースが本発明のセルロースエステルを製造するための出発原料として用いられることは、一般に好ましい。溶解グレードセルロースが94%を超えるα−セルロース含量を有することは、更に好ましい。当業者は、また、各種供給源からのセルロースの使用が、セルロース反応性のあらゆる差を補償するために、反応条件(例えば温度、触媒添加量、時間)に対する修正を必要とすることが可能であることを認識されたい。
【0046】
一部の実施形態において、セルロース源がこのように天然セルロースであること、及びセルロース源がセルロースエーテル、例えばアルキルセルロースなどの改質セルロースでないことは好ましい。同様に、一部の実施形態において、セルロース出発原料がカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、又は酸官能基を有するいかなるセルロース誘導体でもないことは好ましい。これらのセルロース誘導体は、記載したばかりの天然誘導セルロースよりも高価であり、多くのケースにおいて、コーティング配合物中、特にかなりの量の有機溶媒を含有するものの中で本発明のエステルに較べてより適さないエステルをもたらす。また、結果として、本発明による創意に富むエステルの一部が約5以下の、又は約1以下の酸価を有することになる。カルボキシル官能基を含有する適するセルロースエステルは、これと共に出願された同時係属中の出願において別途追及されている。
【0047】
本発明のセルロースエステルは多段法により製造することが可能である。この方法において、セルロースは、水活性化され、次いで酢酸などのアルカン酸(alkanoic acid)との溶媒交換を介する水置換、次いで高次のアルカン酸(プロピオン酸又は酪酸)による処理を経て、適切なアルカン酸により濡れたセルロース活性体を生成する。次に、セルロース活性体は、硫酸などの強酸触媒の存在下で望ましい無水物により処理されて、従来型のエステルよりも低い分子量を有する本質的に完全置換のセルロースエステルを生成する。水及びアルカン酸からなる溶液は、結合硫黄のセルロース主鎖からの除去を可能とするように、緩やかに無水「ドープ」溶液に添加される。最終添加は、水和点を通しての緩い移行が、反応媒体中での低い水濃度及び高い温度(過剰無水物との水反応からの発熱の結果として)の時期を与えることを可能とする。これは、結合硫黄のセルロース主鎖からの加水分解にとって重要である。この生成物は、次に、硫酸を用いて加水分解されて部分置換セルロースエステルを提供する。加水分解は、有機溶媒中のゲルなし溶液を提供するため、及びコーティング用途における他樹脂とのより良い混和性を提供するために重要である。加水分解中に暴露されるヒドロキシル基も、また、多くのコーティング用途における重要な架橋部位である。
【0048】
次に、エステル化又は加水分解反応が、水及び酢酸などのアルカン酸中に溶解したアルカリ又はアルカリ土類金属アルカン酸塩、例えば酢酸マグネシウムの化学量論的量の添加により完結した後に、硫酸は中和される。強酸触媒の中和は、最終製品の最適熱及び加水分解安定性にとって重要である。
【0049】
最終的に、セルロースエステルの完全置換又は部分加水分解形態のいずれかは、最終中和「ドープ」を等体積の酢酸で希釈し、次いで希釈「ドープ」をその重量の約20〜30倍の水体積中に沈殿させて、残留有機酸及び無機塩を効果的に除去するために脱イオン水により容易に洗浄することができる粒子を生成することにより単離される。多くのケースにおいて、かなり粘着性の沈殿物が初期に形成される。沈殿物は、沈殿液体を新鮮水と交換し、沈殿物を放置して保持することにより硬化することができる。硬化沈殿物は、次に、容易に洗浄し、必要に応じてすり砕くことができる。
【0050】
セルロースエステル組成物のキーになる記述語は、種々のエステル基の置換レベル(即ち、置換度又は重量%が通常用いられ、本明細書の他の部分において詳細に検討される)、ヒドロキシル基のレベル並びにIV、粘度及びGPCデータから推測することができるポリマー主鎖のサイズである。こうして製造される本発明のセルロース混合エステルの得られる組成物に影響を与える鍵になる要因は、無水酢酸レベル、酢酸レベル、酪酸(又はプロピオン酸)無水物レベル、酪酸(又はプロピオン酸)レベル、水レベル、セルロースレベル、触媒タイプ、触媒レベル、時間及び温度である。当業者は、より高い触媒添加量、より高い温度及び/又はエステル化中のより長い反応時間が、従来型のエステルよりも低い分子量を有する本発明のセルロースエステルを製造するために用いられることを理解するであろう。
【0051】
従って、本発明の更なる態様として、本発明のセルロースエステルは多段法により製造することが可能である。本発明による方法において、セルロースは、水活性化され、次いで酢酸などのアルカン酸との溶媒交換を介する水置換、次いで高次のアルカン酸(例えばプロピオン酸又は酪酸)による溶媒交換を経て、適切なアルカン酸により濡れたセルロース活性体を生成する。この点に関して、我々は、出発セルロースが94〜99%のアルファ含量、好ましくは約95〜98%のアルファセルロース含量を有することが重要であることを見出してきた。高アルファ含量は、それから製造される最終製品の品質にとって重要である。我々は、低アルファセルロースパルプが有機溶媒中の不良溶解性を招き、結果として不良配合物をもたらすことを見出してきた。
【0052】
次に、活性化セルロースは、硫酸などの強酸触媒の存在下で望ましい無水物と反応して、従来型のエステルよりも低い分子量を有する完全置換のセルロースエステルを生成する。水及びアルカン酸又はアルカン酸ブレンドを含有する溶液は、結合硫黄のセルロース主鎖からの除去を可能とするように緩やかに無水「ドープ」溶液に添加される。最終添加は、水和点を通しての緩い移行が、反応媒体中での低い水濃度及び高い温度(過剰無水物との水反応からの発熱の結果として)の時期を与えることを可能とする。これは、結合硫黄のセルロース主鎖からの加水分解にとって重要である。この生成物は、次に、硫酸を用いて加水分解されて部分置換セルロースエステルを提供する。加水分解は、有機溶媒中のゲルなしの溶液を提供するため、そしてコーティング用途における他樹脂とのより良い混和性を提供するために、重要である。
【0053】
次に、エステル化又は加水分解反応が、水及び酢酸などのアルカン酸中に溶解したアルカリ又はアルカリ土類金属アルカン酸塩、例えば酢酸マグネシウムの化学量論的量の添加により完結した後に、硫酸は中和される。強酸触媒の中和は、最終製品の最適熱及び加水分解安定性にとって重要である。
【0054】
最終的に、セルロースエステルの完全置換又は部分加水分解形態のいずれかは、最終中和「ドープ」を等体積の酢酸で希釈し、次いで希釈「ドープ」をその重量の約20〜30倍の水体積中に沈殿させて、残留有機酸及び無機塩を効果的に除去するために脱イオン水により容易に洗浄することができる粒子を生成することにより単離される。多くのケースにおいて、かなり粘着性の沈殿物が初期に形成される。沈殿物は、沈殿液体を新鮮水と交換し、放置して沈殿物を保持することにより硬化させることができる。硬化沈殿物は、次に、容易に洗浄し、必要に応じてすり砕くことができる。
【0055】
本明細書の開示内容に照らして、当業者は、本明細書の開示内容の実施例において更に実証されるように、記載したばかりのプロセスパラメータの中で、より高い触媒添加量、より高い温度及び/又はエステル化中のより長い反応時間が、従来型のセルロースエステルよりも低い分子量を有する本発明のセルロースエステルを得るために用いられることを容易に理解するであろう。
【0056】
本発明によるセルロースエステルは、約1,500〜約10,000又は約2,000〜約8,500のGPC測定での重量平均分子量、Mw;約1,500〜約6,000のGPC測定での数平均分子量、Mn;並びに約1.2〜約7又は約1.2〜約3.5又は約1.2〜約2.5の、Mw/Mnで定義される多分散度を有する。
【0057】
本明細書において時折HS−CAB’sと記載される、本発明によるセルロース混合エステルは、多種多様の共樹脂との混和性を示す。混和性は、2又はそれ以上の樹脂の、一緒に混合される場合に、コーティング組成物として有用な安定した均質ブレンドを形成する能力として定義される。例えば約38重量%のブチリルを有するHS−CAB(本明細書において時折HS−CAB−38として記載される)は、CAB−551−0.01(約55重量%のブチリルを含有する酢酸酪酸セルロース、イーストマン ケミカル(Eastman Chemical Company)から市販されている)などの市販のより高いブチリル含量の試料に等しいか、それ以上の、イーストマンのアクリラマック(Acrylamac)2328、アクゾ・ノベル(Akzo Nobel)のマイクロゲル(Microgel)、イーストマンのデュラマック(Duramac)2314、バイエル(Bayer)のデスモジュール(Desmodur)3300、ローディア(Rhodia)のXIDT及びバイエルのデスモジュールILとの混和性を示す。一部の例において、約38重量%のブチリル又は約55重量%のブチリルを有する本発明のセルロース混合エステルは、多くの従来型分子量のセルロースエステルと混和性のないアクリル樹脂と、1:1エステル対樹脂添加量で混和性となる。こうした劇的な混和性の変動は、配合者が、さもなければ混和性目的のためより高いブチリルのCABを必要とすることが可能であろう用途において、中ブチリルエステル(約38重量%)を用いることを可能とする。
【0058】
高ブチリルエステルの代わりに、中ブチリルエステルを用いることができることの利点は、ブチリルレベル及びアセチルレベルを除いてすべての特性、即ちヒドロキシル値及び分子量が一定のままである場合に、中ブチリルCABが、その高ブチリル対応物よりも高いTgを有することである。高ブチリルエステルに対して中ブチリルエステルを用いることの別の利点は、中ブチリル市販エステルが、多くの場合、それらの高ブチリル対応物よりも特定溶媒及び溶媒ブレンド中に溶解し難いことである。この同じ傾向は、一般に、中ブチリルHS−CAB’sを等分子量及びヒドロキシル基含量の高ブチリルHS−CAB’sと比較する場合に観察される。理論により縛られることなく、我々は、観察される中ブチリル基と高ブチリル基エステル間の溶解度差が、一つには、下塗りにトップコートを適用する場合に、本発明のエステルの一部により見られる改善された再溶解耐性に起因することを信じる。我々は、改善されると共にまた差別化された混和性と併せた改善混和性の組合せが、コーティング配合化学者に対して価値ある長所であることを信じる。
【0059】
従って、より高いブチリル含量を有する従来型のセルロースエステルは、更に溶解性である傾向があり、より低いブチリル基レベルを有するそれらの対応物よりも低いTgを有する。溶解度増加の一つの結果は、得られるコーティングの再溶解耐性がマイナスの影響を受けることである。CAB−551−0.01などの従来型の高ブチリルセルロースエステルの主要利点の一つは、CAB−381−0.1などの中ブチリルエステルと比較する場合に、多くの共樹脂とのその溶解度の増加である。驚くことに、我々は、本発明による創意に富む中ブチリルエステル(HS−CAB−38)が、類似の溶解度を示しながら、CAB−551−0.01などの従来型分子量の高ブチリルセルロースエステルよりも共樹脂とのより良い混和性を有することを見出した。結果として、コーティング配合者は、より高いブチリル含量を有する従来型のエステルに一般的な再溶解耐性を提供しながら、従来型のCAB’sの添加により与えられる粘度増加を許容することができないベースコート配合物中に本発明の創意に富むエステルを用いることができる。
【0060】
前述のように、本発明の混合エステルは、同様に、一部のシステムにおいて、予想以上の再溶解耐性を実証する。これは、本発明の混合エステルが従来型のセルロース混合エステルよりも低い分子量を有するので驚くことである。一般には、代わりに、分子量の低下により再溶解耐性の低下を見ることを期待するであろう。結果として、コーティング配合者は、必要な再溶解耐性を提供しながら、従来型のCAB’sの添加により与えられる粘度増加を許容することができないベースコート配合物中に本発明の創意に富むエステルを用いることができる。
【0061】
また実施例から明らかなように、本発明によるセルロースエステルは、融解温度への長期暴露後も優れた融解安定性を有する。2本ロールミルを用いて顔料粉砕物を製造する上で本発明によるHS−CABsが用いられる場合に、約100℃〜約120℃の融解温度への長期暴露(少なくとも30分)後でさえも、分解のせいでの変色は全く見られなかった。融解安定性は、黄変、不良融解安定性の一般的な結果が、多くの場合、プラスチック用途において用いられるセルロース誘導体の有害特性であるので、プラスチック用途において用いられるセルロースエステル用の重要な特性である。
【0062】
更に、本発明のエステルは、本明細書において更に記載されるように、より明確に定義された融点を示し、それらを明確に定義された融点が必要である用途に特に適するものとする。理論により縛られようとはしないが、我々はこれを従来型のエステルよりも低い多分散度値の結果であると考える。
【0063】
伝統的に、セルロースエステルは最大置換度3.0を有すると考えられる。3.0のDSは、セルロース中に誘導体化することができる3.0個の反応性ヒドロキシル基があることを示す。天然セルロースは、700〜2,000の重合度を有する大きな多糖類であり、従って、最大DSが3.0であるという想定はほぼ正しい。しかし、重合度が下がるにつれて、多糖類主鎖の末端基は相対的により重要になる。本発明によるエステルにおいて、最大DSのこの変化は、一部の溶媒中の溶解度及び一部のコーティング樹脂との混和性を変えることによりエステルの性能に影響を与える。
【0064】
表Iは種々の重合度でのDSMaxを与える。数学的に、最大DS3.00を有するために、重合度401が必要とされる。表に示すように、DPの低下と共に起こるDSMaxの増加は緩く、大体において最大DS3.00を想定することは許容可能である。しかし、一旦DPが十分に低く、例えば、DP21であると、次には、すべての計算に対して異なる最大DSを用いることが適切となる。
【0065】
【表1】

【0066】
本発明は、従って、高い最大置換度及び低い重合度を有するセルロースエステルを提供する。
【0067】
既述のように、高い最大置換度及び低い重合度を有する本明細書に記載の本発明エステルは、意外にも、一段と高い重合度を有する従来型のセルロースエステルに類似のレオロジー性能を示す。こうした低重合度を有するHS−CABがこうしたレオロジー性能を示すであろうことは、全く驚くべきことである。
【0068】
いかなる理論によっても縛られることなく、我々は、本発明によるセルロースエステルがヒドロキシル基のかなり不規則な置換パターンを示すことを信じる。我々は、ヒドロキシル基のこの不規則な置換パターンが、エステル基の加水分解の前に分子量低減段階を行うことにより達成されることを信じる。従来技術法の低分子量セルロースエステル製品は、一般に、特に、非還元性末端のC−4及び還元性末端のC−1(RT−1)で非不規則置換パターンを示す。従来技術の製品は、一般に、C−4でヒドロキシル基、及び方法が加水分解か又はアセトリシス反応のどちらであるかに応じて、C−1(RT−1)でヒドロキシル又はエステルのいずれかを有する。
【0069】
スキーム1に示される広く受け入れられている機構は、読者が上の説明をイメージ化することを支援することが可能である。スキーム1に示される提案機構は、高重合度での多糖類の反応を表現し、C4及びRT1での基の性質は生じる開裂の量により影響を受ける。対象の二つの炭素、C4及びRT1での置換は、より多くのグリコシド結合が開裂するにつれて大きなレベルに増大する。スキーム1は一つだけのグリコシド結合が開裂されることを示し、その結果、ただ一つのC4及び一つのRT1部位が従来技術により生成される製品により示される置換パターンを有する。より多くの部位が開裂されるにつれて、C4及びRT1での置換パターンの影響は一層重要になってくる。
【0070】
本発明の製品を製造するために用いられる方法は、反応ブレンドがまだ無水である間(即ち加水分解前)に、ほぼ望ましい重合度を有する完全エステル化セルロースエステルをもたらす。結果として、本発明製品の製造の間のエステル加水分解は、全体セルロース主鎖を通して、ヒドロキシル基の本質的に不規則な分配を作り出すことが信じられる。この信念は、一つには、本発明によるエステルにより示される独特の溶解度プロフィールに基づく。当業者は、動力学的に制御された条件下で、加水分解が一部の部位で選択的に起こる(例えばC6≫C2>C3)ことを理解するであろう。本発明において行われる加水分解法は、セルロース主鎖全体を通してヒドロキシル官能基の更に不規則な分配をもたらすと信じられる熱力学制御下(即ち平衡条件下)で行われる。
【0071】
スキーム1:グリコシド結合の加水分解及びアセトリシス用の提案機構
【化1】

【0072】
13C−NMRの検討は、本発明のエステル(HS−CAB’s)が、加水分解の間に分子量が低下する方法により製造されるものとは異なる置換パターンを有することを示唆する。以下の化学構造は、置換パターンの違いが生じると信じられる領域を強調する。
【0073】
【化2】

【0074】
本発明のセルロース混合エステルは、顔料を分散するための熱及び/又は剪断によりセルロースエステルと顔料を混合することにより、顔料分散液における有用性を有する。このように、顔料はコーティング配合物及びプラスチック中に容易に分散することができ、それによって、顔料の最低限の量を用いながら高い着色化力及び良好な透明性を提供する。こうした顔料分散液は、従来型のセルロースエステルに代わる本発明のセルロースエステルの使用により改善することができる。従来型のセルロースエステルと同様に、本発明のセルロース混合エステルは、顔料分散液に、目に見えて改善された湿潤化特性を付与する。約20:80〜50:50の顔料:エステル重量比でのセルロースのC2〜C4エステルと顔料のブレンドを製造することが可能である。これらの分散液は、2本ロールミルを用いて、又はボールミル、高速衝撃ミルもしくはサンドミルなどで製造することができる。本発明の高DSMax、低DPセルロースエステルは、従来型のセルロースエステルに対して、それらが粘度に与える影響が少なく、従って、用いようとするより高い結合剤(樹脂)添加量を有する配合物を可能とすることでの利点を有する。
【0075】
従って、本発明は、約20〜約77重量%の顔料、及び、対応して、約33〜80重量%の、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度及び約0.8〜約3.5のC2〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有するセルロースのC2〜C4エステルを含む顔料分散液を提供する。
【0076】
本発明のエステルは、それらがレオロジー改質剤及び/又は改善されたアルミフレークの配向性及び改善された硬度を提供する結合剤成分として用いられる、ラッカー又はエナメルタイプコーティングのいずれの中にも容易に配合される。それらは、多様な基材、とりわけ金属及び木材に対して、無色透明、高光沢の保護被覆を提供することができる。
【0077】
更なる利点は、例えばプラスチック又はコーティングで用いる顔料を製造するために用いる場合に、本発明のエステルにより示される融解安定性の増加に関係する。本発明のHS−CABsは、多分従来型のCAB’sに対してHS−CAB’sのより締まった多分散性のせいで、市販CAB’sよりもシャープな融解範囲を有する。HS−CAB’sは顔料と混合して顔料分散液を生成することができる。顔料分散液は、スラリー法を含む多くの経路及び押出しにより製造することができる。改善された融解安定性は、セルロース誘導体の黄変を減少させるか又は排除するので押出機適用において有利である。
【0078】
本発明のセルロースエステル、とりわけ上述の高DSMax、低DP酢酸酪酸セルロース及び高DSMax、低DP酢酸プロピオン酸セルロースは、多くの従来型セルロースエステル(酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース又は酢酸酪酸セルロース)に対して、改善された溶解度及び混和性(即ちフィルム透明度)特性を示す。
【0079】
例えばCAB−381−0.1(テネシー州、キングスポートのイーストマン ケミカルから市販されている)などの従来型中ブチリルセルロースエステルは、例えば比較例31及び実施例49において実証されているように、イーストマンC−11ケトン(飽和及び不飽和、直鎖及び環状ケトンのブレンド)、イーストマンDIBK(ジイソブチルケトン)、PP(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、イーストマンEP溶媒(エチレングリコールモノプロピルエーテル)、イーストマンEB溶媒(エチレングリコールモノブチルエーテル)、メタノール、テクソル(Tecsol)C溶媒、95%(変性剤(denaturant)としてメタノール、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルを有する、水5%含有エタノール)、トルエン、又は90/10イソプロピルアルコール/水ブレンド中には容易に溶解しない。対照的に、本発明の(実施例28及び実施例49に実証されているように)HS−CAB−38sの一部などの一部の創意に富むエステルは、それぞれの上述の溶媒又は溶媒系中に溶解する。本明細書全体を通して用いる用語「溶解する」とは、我々は、特記のない限り、望ましい溶媒中にセルロースエステルの10%(重量/重量)ブレンドを製造する場合に透明な溶液が得られることを意味する。
【0080】
別の例として、CAB−551−0.01(イーストマン ケミカルから市販されている)などの従来型高ブチリルセルロースエステルは、比較例32及び実施例49において実証されているように、メタノール、テクソルC溶媒、95%、トルエン(エステルゲル)又は90/10イソプロピルアルコール/水ブレンド中には容易に溶解しない。対照的に、高ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−55’s)の一部などの一部の本発明のエステルは、実施例29及び実施例49の本発明のエステルの一部において実証されているように、それぞれの上述の溶媒又は溶媒系中に溶解する。
【0081】
同様に、CAB−171−15S(イーストマン ケミカルから市販されている)などの従来型低ブチリルセルロースエステルは、比較例33において実証されているように、イーストマンPM溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)中には容易に溶解せず、イーストマンPMアセテート(プロピレングリコール酢酸メチル)及びイーストマンDM溶媒(ジエチレングリコールメチルエーテル)中にはほんの部分的に溶解するだけである。対照的に、低ブチリルセルロースエステル、HS−CAB−17s及びHS−CAB−20sの一部などの一部の本発明のエステルは、実施例30及び実施例49に実証されているように、それぞれのこれら溶媒又は溶媒系中に溶解する。
【0082】
従来型分子量エステルと同様に、アセチル/ブチリル比及びヒドロキシル含量などの、HS−CAB’sの溶解度に影響を与えるブチリル含量以外の重要因子があることを認識することは重要である。これはとりわけ実施例49に見ることができ、そこではヒドロキシル及びアセテートの変動レベルが類似のブチリル含量を有するエステルの溶解度に影響を及ぼす。これらのエステル置換は、当業者によって、所定の溶媒中の望ましい溶解度及び所定の樹脂との望ましい混和性を得るために、本明細書の開示内容に照らして変えることが可能である。我々は、本発明のエステルが、類似のヒドロキシル及びアセテート基レベルで、従来型分子量を有するようなエステルと比較して、溶解度の増加を明確に示すことに注目する。
【0083】
実施例において実証されるように、本発明のエステルは、水又は芳香族炭化水素による希釈を許容しながら、ケトン、エステル、アルコール、グリコールエーテル及びグリコールエーテルエステルを含む一般的なコーティング溶媒の大部分の部類中に溶解する。
【0084】
本発明のエステルが中で溶解性を示す一般的な溶媒の例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルプロピルケトン、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−エトキシプロピオン酸エチル、エタノール、メタノールイソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルジエチレングリコールエチルエーテル、イーストマンPMアセテート(プロピレングリコール酢酸メチル)、イーストマンEBアセテート(エチレングリコール酢酸ブチル)、イーストマンPM溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、イーストマンDM溶媒(ジエチレングリコールメチルエーテル)、イーストマンPB溶媒(プロピレングリコールモノブチルエーテル)、イーストマンDE溶媒(ジエチレングリコールエチルエーテル)、イーストマンPP溶媒(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、イーストマンEP溶媒(エチレングリコールモノプロピルエーテル)、イーストマンEB溶媒(エチレングリコールモノブチルエーテル)、イーストマン95%テクソルC(変性剤としてメタノール、MIBK及び酢酸エチルを有する、水5%含有エタノール)、N−メチルピロリドン、イーストマンEEP溶媒(3−エトキシプロピオン酸エチル)及び一般的にコーティング組成物中に用いられる他の揮発性の不活性溶媒が挙げられる。例えば、本発明のエステルの有機溶液は、エステル部当り溶媒1〜1000部を添加することにより製造することができる;エステル部当り溶媒1.5〜9部が好ましい。
【0085】
本発明のエステルは、多くの場合に従来型分子量エステルのものとは実質的に異なる有機溶液の粘度を示す。従って、本明細書の開示内容の実施例34において、HS−CAB−38(試料4、表IV)及びHS−CAB−55(試料5、表IV)の粘度は、溶媒として酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンドを用いて、類似のブチリル含量の、最も低い粘度の市販のセルロースエステルCAB−381−0.1及びCAB−551−0.01に匹敵する。図1は各測定濃度での相対粘度(relative viscosity)の代表的な比較を示す。対数粘度(log viscosity)対濃度プロットは、各エステルに対して平行であって、各エステルが、エステルの分子量が低くなるほど同じ挙動を表すには濃度がより高くなることを除いて、濃度と共に類似の指数関数的粘度上昇を有することを示す。追加のブルックフィールド粘度データは、実施例34の表VIAに提供される。本発明のエステルが同じ濃度で従来型エステルよりも低い粘度を示すので、それらは目標粘度でより高いエステル含量を有するコーティング配合物を可能とする。
【0086】
従って、CAB−551−0.01(イーストマン ケミカルから市販されている)などの一部の従来型高ブチリルセルロースエステルは、実施例34の表VIAに実証されるように、50重量%溶液として10,000センチポアズ(酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中)を超える粘度を示す。対照的に、類似のブチリル含量を有する一部の本発明のエステル(HS−CAB−55)は、50重量%溶液で200センチポアズ未満の同じ溶液の粘度を示す。
【0087】
同様に、CAB−381−0.1(テネシー州、キングスポートのイーストマン ケミカルから市販されている)などの従来型中ブチリルセルロースエステルは、実施例34に実証されるように、50重量%溶液として500,000センチポアズ(酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中)を超える粘度を示す。対照的に、類似のブチリル基含量を有する一部の本発明のエステル(HS−CAB−38)は、50重量%溶液で500センチポアズ未満の同じ溶液の粘度を示す。
【0088】
更に、HS−CAB−17などの一部の本発明の低ブチリルセルロースエステルは、実施例34の表VIAに見ることができるように、酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中の50重量%溶液として、6,000センチポアズを全く超えない粘度を示し、他は3,000センチポアズを全く超えない。
【0089】
更に、本発明のエステルは、比較的硬いポリマー、即ち約12ヌープ(knoop)硬度単位(KHU)であり、高いガラス転移温度を有する。それらは、コーティング硬度を改善するため、並びに滑り、垂れ抵抗性及び傷抵抗性などの特性を改善するために他樹脂に添加することができる。更に強靭性を改善するために、メラミン又はイソシアネートなどの架橋剤は、これらのエステル又は他の樹脂と反応するように添加することが可能である。
【0090】
本発明のエステルは、遊離ヒドロキシル基を有することが可能であり、従って、メラミン及びイソシアネートなどの架橋剤と併せて用いることが可能である。こうしたメラミンは、好ましくは、式中、RがC1〜C4アルキル基、好ましくはメチル基である複数の−N(CH2OR)2官能基を有する化合物である。一般に、メラミン架橋剤は、式中、Rが独立にC1〜C4アルキル基である以下の式で表される化合物から選択することが可能である:
【0091】
【化3】

【0092】
この関連で、好ましい架橋剤には、ヘキサメトキシメチルアミン、テトラメトキシメチルベンゾ−グアナミン、テトラメトキシメチル尿素及び混合ブトキシ/メトキシ置換メラミンなどが挙げられる。最も好ましいメラミン架橋剤は、ヘキサメトキシメチラミンである。
【0093】
一般的なイソシアネート架橋剤及び樹脂には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)及びトルエンジイソシアネートが挙げられる。
【0094】
本発明のセルロースエステルは、高固形分コーティング配合物用の有効なフロー添加剤である。高固形分コーティング配合物への本発明によるセルロースエステルの添加は、一般に、硬化/乾燥の際のフィルムにおける表面欠陥の排除をもたらす(即ちピンホール及びミカン肌の排除)。高DSMax、低DPセルロースエステルが従来型セルロースエステルに対して有する明確な利点は、高固形分コーティング配合物に添加される場合に、本発明のエステルが溶液及び/又はスプレー粘度に対して最小限の影響しか与えないことである。固形物%は上げることができ、従って、配合物のVOCを下げることができる。従来型セルロースエステルは、フロー添加剤としてこれらの同じ用途において用いることができるが、しかし、固形物の低下は、一般に、どうしても従来型セルロースエステルの追加を伴うものとなる。即ち、溶媒レベルは、望ましい粘度を保持するために増大させなければならない。
【0095】
本発明は、従って、また、本発明によるセルロース混合エステルを含有するコーティング組成物に関する。用語「コーティング組成物」にはプライマー、ベースコート、クリヤーコート及びインクが挙げられるがそれらに限定されないことは、当業者により理解されるであろう。
【0096】
従って、本発明は、
(a)25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度及び約1.5〜約3.50のC2〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度を有するセルロースのC2〜C4混合エステルの、組成物の全体重量(a)及び(b)に対して、約0.1〜約50重量%、
(b)ポリエステル樹脂、ポリエステル−アミド樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択される樹脂の、組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜92重量%並びに
(c)溶媒、好ましくは有機溶媒又は溶媒ブレンド、
を含むコーティング組成物を提供する(全体重量(a)及び(b)は、全体重量(a)、(b)、及び(c)の約5〜95重量%である)。
【0097】
本発明の組成物中で、全体重量(a)、(b)及び(c)は勿論100%に等しい。
【0098】
以下のもの:フロー添加剤、平滑添加剤、湿潤剤及び分散剤、消泡剤、接着促進剤、滑り補助剤、皮張り防止剤、UV安定剤、殺生剤、殺ウドンコ病菌剤、殺菌剤及び顔料などを含む追加の添加剤が前述の組成物中に用いることができることは認識される。
【0099】
本発明の混合セルロースエステルは、また、水系コーティング組成物中に用いることが可能である。例えば、本発明のエステルは、有機溶媒中に溶解し、アミン又は界面活性剤のいずれかにより処理し、水中に分散することが可能である。こうした溶媒の例には、2−ブタノン、メチルアミルケトン、メタノール、エタノール、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられるが、それらに限定するものではない。水中への本発明のセルロースエステルの分散は、アミン又は界面活性剤の添加により容易になる。典型的なアミンには、アンモニア、ピペリジン、4−エチルモルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン及びジメチルアミノエタノールが挙げられるがそれらに限定するものではない。界面活性剤には、エアゾール(Aerosol)OT及び以下に並べられるものなどの技術上公知の他の界面活性剤が挙げられるがそれらに限定するものではない。
【0100】
分散剤及び界面活性剤の例には、ビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、イソデシルスルホコハク酸2ナトリウム、スルホコハク酸の2ナトリウムエトキシル化アルコール半エステル、アルキルアミドポリエトキシスルホコハク酸2ナトリウム、4ナトリウムN−(1,2−ジカルボキシ−エチル)−N−オクスタデシルスルホサクシナメート、2ナトリウムN−オクタスルホサクシナメート、硫酸化エトキシル化ノニルフェノール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどが挙げられる。
【0101】
或いは、本発明のセルロースエステルは、分散性を支援するために、1又はそれ以上の共樹脂(co−resin)と組合せることが可能である。こうした実施形態の分散されたコーティング組成物中の適する水性溶媒の量は、全体コーティング組成物の約50〜約90重量%又は約75〜約90重量%であることが可能である。
【0102】
従って、本発明の更なる態様として、
(a)25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度を示し、本明細書における他の箇所で定義される置換を有するセルロースのC2〜C4エステルの、全体重量(a)及び(b)に対して、約0.1〜約50重量%(C2〜C4エステルはアンモニア又はアミンにより部分的に中和されている)、
(b)ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリウレタン樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される混和性の水溶性又は水分散性樹脂の、全体重量(a)及び(b)に対して、少なくとも50重量%、
(c)水、並びに
(d)有機溶媒、
を含む水系コーティング組成物が提供される(全体重量(a)及び(b)は全体組成物の5〜50重量%の間であり、有機溶媒は組成物全体重量の20重量%未満を含む)。
【0103】
一般に、コーティング組成物は、一般的に主要成分としての少なくとも一つの樹脂、添加剤としての架橋剤及びセルロース混合エステルを含む。伝統的なセルロース混合エステルの使用が、多くの場合、それらの使用に付随して起こることができる配合物粘度の有意な増加のせいで、添加物水準(セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して典型的に<30重量%)に限定することを留意することは重要である。典型的には、この粘度増加は、かなりな量の溶媒を、コーティング組成物に対する目標適用粘度を達成するために、配合物に追加することを必要とする。特定用途に応じて、この必要な溶媒追加は、適用されたコーティング組成物の揮発性有機化合物(VOC)の望ましくない増加をもたらすことができる。しかし、本発明のセルロース混合エステルは、それらの低下分子量及び結果としてのそれらの低下溶液粘度のせいで、最終コーティング配合物のVOC量の実質的な増加を必要とせずに、コーティング組成物中の主要成分として容易に用いることができる。従って、本発明の別の実施形態において、少なくとも一つのセルロース混合エステル、少なくとも一つの架橋剤及び任意的な少なくとも一つの樹脂を含むコーティング組成物が提供され、前記セルロース混合エステルは、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、約51重量%〜約100重量%の範囲の量にある。セルロース混合エステル及び架橋剤は、前に開示された任意の化合物であることができる。好ましくは、セルロース混合エステルは酢酸酪酸セルロースである。好ましくは、架橋剤はポリイソシアネート又はメラミンである。
【0104】
樹脂はコーティング組成物で用いる技術上公知の任意の樹脂であることができる。こうした樹脂の例には、ポリエステル樹脂、ポリエステル−アミド樹脂、本明細書において開示されるもの以外のセルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂及びそれらのブレンドが挙げられるがそれらに限定するものではない。
【0105】
本発明の別の実施形態において、一つのコーティング組成物が提供される。コーティング組成物は、少なくとも一つのセルロース混合エステル、少なくとも一つの架橋剤、少なくとも一つの溶媒、及び任意的に少なくとも一つの樹脂を含み、前記セルロース混合エステルは、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、約51重量%〜約100重量%の範囲の量にある。セルロース混合エステル、架橋剤及び溶媒は、そのようなものとして前に開示されたあらゆる化合物であることができる。好ましくは、セルロース混合エステルは酢酸酪酸セルロースである。好ましくは、架橋剤はポリイソシアネート又はメラミンである。
【0106】
別の実施形態において、セルロース混合エステル及び樹脂の量は混合セルロースエステル、溶媒及び樹脂の全体重量の約5重量%〜約95重量%である。
溶媒は有機溶媒又は溶媒ブレンドであることができる。
【0107】
架橋剤の量は、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、約5重量%〜約40重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%の範囲にある。
【0108】
樹脂の量は、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、約0重量%〜約49重量%、好ましくは約10重量%〜約40重量%の範囲にあることができる。
【0109】
本発明の更なる態様として、上記組成物は、更に、1又はそれ以上のコーティング添加剤を含む。こうした添加剤は、一般に、組成物全体重量に対して、約0.1〜15重量%の範囲で存在する。こうしたコーティング添加剤には、シリコーン、フルオロカーボン又はセルロース誘導体などの平滑剤、レオロジー調整剤及びフロー調整剤;つや消し剤;顔料湿潤剤及び分散剤;界面活性剤;紫外線(UV)吸収剤;UV光安定剤;着色顔料;消泡剤及び泡止め剤;沈降防止剤、流れ止め剤及び賦形剤;皮張り防止剤;色むら防止剤及び色浮き防止剤;殺菌剤及び殺ウドンコ病菌剤;腐食防止剤;増粘剤;又は融合助剤(coalescing agent)が挙げられる。
【0110】
追加のコーティング添加剤の特定例は、the National Paint & Coatings Association,1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.20005により刊行されたRaw Materials Index中に見出すことができる。
【0111】
つや消し剤の例には、W.R.グレース(W.R.Grace & Company)のダビソン・ケミカル・ディビジョン(Davison Chemical Division)から商品名SYLOID(登録商標)で市販されている合成シリカ、ハーキュールズ(Hercules Inc.)から商品名HERCOFLAT(登録商標)で市販されているポリプロピレン、J.M.ヒューバー(J.M.Huber Corporation)から商品名ZEOLEX(登録商標)で市販されている合成シリケート及びポリエチレンが挙げられる。
【0112】
分散剤及び界面活性剤の例には、ビス(トリデシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、イソデシルスルホコハク酸2ナトリウム、スルホコハク酸の2ナトリウムエトキシル化アルコール半エステル、アルキルアミドポリエトキシスルホコハク酸2ナトリウム、4ナトリウムN−(1,2−ジカルボキシ−エチル)−N−オクスタデシルスルホサクシナメート、2ナトリウムN−オクタスルホサクシナメート、硫酸化エトキシル化ノニルフェノール及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどが挙げられる。
【0113】
粘度、懸濁及びフロー調整剤の例には、ポリアミノアミドリン酸塩、ポリアミンアミドの高分子量カルボン酸塩及び不飽和脂肪酸のアルキルアミン塩が挙げられ、すべてはBYKケミー(Chemie)U.S.Aから商品名ANTI TERRA(登録商標)で市販されている。更なる例には、ポリシロキサン コポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、疎水的改質ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリエチレンオキシドが挙げられる。
【0114】
いくつかのメーカー独自の泡止め剤は、例えばバックマン ラボラトリーズ(Buckman Laboratories Inc.)の商品名BRUBREAK、BYKケミーU.S.A.のBYK(登録商標)商品名、ヘンケル(Henkel Corp.)/コーティング ケミカルズ(Coating Chemicals)のFOAMASTER(登録商標)及びNOPCO(登録商標)商品名、アッシュランド ケミカル(Ashland Chemical Company)のドリュー・インダストリアル・ディビジョン(Drew Industrial Division)のDREWPLUS(登録商標)商品名、トロイ・ケミカル(Troy Chemical Corporation)のTROYKYD(登録商標)商品名及びユニオン カーバイド(Union Carbide Corporation)のSAGTM(登録商標)商品名で市販されている。
【0115】
殺菌剤、殺ウドンコ病菌剤及び殺生剤の例には、4,4−ジメチルオキサゾリジン、3,4,4−トリメチル−オキサゾリジン、改質メタホウ酸バリウム、N−ヒドロキシ−メチル−N−メチルジチオカルバミン酸カリウム、2−(チオシアノ−メチルチオ)ベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、アダマンタン、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、デヒドロ酢酸、ナフテン酸銅、オクチル酸銅、有機ヒ素、トリブチル酸化スズ、ナフテン酸亜鉛及び8−キノリナート銅が挙げられる。
【0116】
UV吸収剤及びUV光安定剤の例には、アメリカン・サイアナミド(American Cyanamide Company)から商品名サイアソーブ(Cyasorb)UVで、及びチバ・ガイギー(Ciba Geigy)から商品名TINUVINで市販されている置換ベンゾフェノン、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン及びヒンダードベンゾエート及びジエチル−3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン及びレゾルシノールモノベンゾエートが挙げられる。
【0117】
本発明による被覆物品を製造するために、本発明のセルロースエステルを含有する配合コーティング組成物を基材に適用し、放置して乾燥する。基材は、例えば木材、プラスチック、アルミニウム又は鋼などの金属、段ボール、ガラス、酢酸酪酸セルロース敷布及び、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、テレフタル酸ポリエチレンなどのポリエステル、アクリル敷布を含む種々のブレンド並びに他の固体基材であることができる。
【0118】
本発明によるコーティング組成物で用いるために適する顔料は、表面被覆技術の当業者に周知の一般的な有機及び無機の顔料、特に米国繊維化学者・色彩技術者協会に関連する染色師・色彩技術者協会により出版された、Colour Index,3dEd.,2dRev.,1982により記載されているものである。例には、CIピグメント・ホワイト(Pigment White)6(2酸化チタン)、CIピグメント・レッド(Red)101(弁柄)、CIピグメント・イエロー(Yellow)42、CIピグメント・ブルー(Blue)15、15:1、15:2、15:3、15:4(銅フタロシアニン)、CIピグメント・レッド49:1及びCIピグメント・レッド57:1が挙げられるがこれらに限定するものではない。
【0119】
本発明において記載される従来型の酢酸酪酸セルロースは、テネシー州、キングスポートのイーストマン ケミカルからの以下の市販試料であった:CAB−171−15、CAB−381−0.1、CAB−381−0.5、CAB−381−20、CAB−551−0.01及びCAB−551−0.2。市販のCMCAB試料は、イーストマン ケミカルからの以下のものであった:CMCAB−641−0.5及びCMCAB−641−0.2。
【0120】
以下の市販コーティング樹脂、コーティング中に用いられるものの代表例は、本発明のエステルの広く多様なコーティング樹脂との混和性を実証するために用いた:デスモジュールHLは、酢酸ブチル中60%溶液としてバイエルから入手した。イーストマンのポリマック(Polymac)HS220−2010(ポリエステル)、イーストマンのデュラマック(Duramac)HS2706(アルキド樹脂)、イーストマンのポリマックHS5776(ポリエステル)、イーストマンのアクリラマック(Acrylamac)232−1700(アクリル樹脂)、バーサミド(Versamide)750(ポリアミド)、ユーカー(UCAR)のVYHD(ポリ塩化ビニル/アセテート)、イーストマンのデュラマック207−2706(TOFA短油性アルキド樹脂)、イーストマンのデュラマック5205(ココナッツ中油性アルキド樹脂)、サイテック(Cytec)のサイメル(Cymel)303(HMMメラミン樹脂)、サイテックのビートル(Beetle)65(尿素−ホルムアルデヒド)、バイエルのデス(Des)N3300(ポリイソシアネート)、デュポン(DuPont)のエポン(Epon)1001F(エポキシ樹脂)、バイエルのデスモジュールN75BA(脂肪族ポリイソシアネート)、アクティケム(Actichem)のサイノキュア(Cynocure)851S(アクリル樹脂)、ローム&ハース(Rohm & Haas)のアクリロイド(Acryloid)AT954(アクリル樹脂)、R&HのアクリロイドB−44(アクリル樹脂)、R&Hのパラロイド(Paraloid)A−21(アクリルラッカー)、デュポンのエルバサイト(ELVACITE)2008(アクリルラッカー)、ポリマックHS220−2010(ポリエステル)、サイテックのビートル65(尿素−ホルムアルデヒド)、UCのCK−2103(フェノール樹脂)、ローム&ハースのパラロイドWR97(アクリルラッカー)、R&HのアクリロイドAU608X(アクリル樹脂)、バーサミド(VERSAMID)750(ポリアミド樹脂)、イーストマンのデュラマック207−2706(アルキド樹脂)、イーストマンのデュラマック5205(アルキド樹脂)、デュラマック51−5135(アルキド樹脂)、デュラマック207−1405(アルキド樹脂)、デュポンのエルバサイト2044(メタクリル酸エチル)、バイエルのデスN3300(高分子イソシアネート)、イーストマンのリアクトール(Reactol)175(アクリルポリオール)、アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)のマイクロゲル(Microgel)(熱硬化性アクリル樹脂)、イーストマンのデュラマック1205(アルキド樹脂)、イーストマンのデュラマック2706(アルキド樹脂)、イーストマンのデュラマック2314(アルキド樹脂)、レジメン(Resimene)CE−7103(メラミン樹脂)、レジメン755(メラミン樹脂)、デスモフェン(Desmophen)1800(ポリエステル)、バイエルのデスモジュール3300(イソシアネート)、シェル(Shell)のエポン(Epon)1001F(エポキシ樹脂)、ダウ(Dow)のDER542(エポキシ樹脂)、ローディア(Rhodia)のXIDT(イソシアネート)、バイエルのデスモジュールIL(イソシアネート)、イーストマンのカーバマック(Carbamac)HS4372(ポリウレタン)、UCCのユーカー(UCAR)VYHD(塩化ビニル/酢酸ビニル)、ユーカーVMCH(塩化ビニル/酢酸ビニル)、デュポンのLVAX40(塩化ビニル/酢酸ビニル)及びヘンクル(Henkle)のベラスミド(Verasmid)750(ポリアミド)。
【0121】
本明細書開示内容において、以下の用語は特定の意味を有する:
「割り込む(strike−in)」は透明コーティング中の溶媒により引き起こされるベースコートの再溶解を意味し、一般的に、ベースコートの顔料/金属フレークの色むら又は濁りをもたらす。
「高固形分コーティング」は配合物中に従来型のコーティングよりも高い固形物%を有するコーティングであり、これは、一般的に、60%以上の固形物%レベルを有するコーティング配合物を意味する。
「中固形分コーティング」は配合物中に低固形分コーティングよりも高い固形物%を有するコーティングであり、これは、典型的には、40%〜60%間の固形物%レベルを有するコーティング配合物を意味する。
【0122】
「低固形分コーティング」は配合物中に低い固形物%を有するコーティングであり、これは、一般的に、40%未満の固形物%レベルを有するコーティング配合物を意味する。
「光沢(gloss)」は、鏡様反射の相対量及び性質を説明するために用いられる主観的な用語である。
「ミカン肌(orange peel)」はミカンの皮の生地に類似のコーティング表面の外見である。
【0123】
「表面欠陥(surface defect)」はコーティング外見に悪影響を及ぼすコーティング表面上のあらゆる異常であり、例えば、ピンホール、クレーター及びミカン肌が挙げられる。
「ピンホール」(「ピンホーリング」)は、コーティング全体を通して延びると共に、一般に刺し跡態様を有するコーティング中の小さな細孔様のひびを特徴とするフィルム表面欠陥である。
「クレーター」はコーティングフィルムにおいて、しばしば、それらの中心部で材料の落ち込み又はバンド及び隆起した円形縁を有する小さなボール形の窪みである。
【0124】
「クレーター化」は乾燥後も存続する小さなボール形の窪みの、液状コーティングフィルム中の形成である。
「指触乾燥時間」は適用と非粘着時間間の間隔(即ち、コーティングが乾いたと感じるまでの必要な時間量)である。
「還元性末端(reducing terminus)」はC1で結合される他の糖を全く持たない2糖、3糖、オリゴ糖又は多糖類の末端糖を意味する。C1はヒドロキシル基又はエステル基のいずれかにより官能化することができる。
【0125】
「非還元性末端(non−reducing terminus)」はC4で結合される他の糖を全く持たない2糖、3糖、オリゴ糖又は多糖類の末端糖を意味する。C4はヒドロキシル基又はエステル基のいずれかにより官能化することができる。
「アセトリシス(acetolysis)」は水の不存在下での、そして触媒及び、酢酸に限定するものではないがそれを含むカルボン酸、の存在下でのグリコシド結合の開裂を意味する。
「加水分解」は水及び触媒の存在下でのグリコシド結合の開裂を意味する。
【0126】
「加水分解」は、また、セルロース主鎖上に遊離ヒドロキシル基を発生させるための、水及び触媒の存在下でのセルロースエステルのエステル結合の開裂を意味する。
「トラベル(travel)」はメタリックコーティングフィルムなどの視覚呈色性材料の視角が垂直角度からすれすれの入射角度まで変わる際の色の変化を意味する。時にはフロップ又はフリップ−フロップと呼ばれる。
「フロップ(flop)」は、そこで、二つの異なる塗装パネルが、所定の角度で見る時に、良好に色が釣り合っているように見えるが、しかし、全ての他の角度では違って見えることを意味する。
【0127】
「ダブルラビング(double rub)」は被覆表面上での一つの完全な往復動として溶媒で飽和した布をこする行為である。
「マンドレル曲げ」は、表面コーティングの可撓性及び接着性を測定するための試験であり、それがマンドレル周りの被覆金属パネルの曲げを含むのでそう呼ばれる。[ASTM手順D−522から適応される]
【0128】
定義の一部は、本明細書において参考のため包含されるCoatings Encyclopedic Dictionary,ed.LeSota,S.;1995,Federation of Societies for Coatings Technology,Blue Bell,PAから適応した。
【0129】
実施例において、及び明細書全体を通して用いられる、MEKはメチルエチルケトンを意味し、MPKはメチルプロピルケトンを意味し、MAKはメチルアミルケトンを意味し、PMアセテート又はイーストマンPMアセテートはプロピレングリコール酢酸メチルを意味し、EBアセテート又はイーストマンEBアセテートはエチレングリコール酢酸ブチルを意味し、PM又はイーストマンPMはプロピレングリコールモノメチルエーテルを意味し、DM又はイーストマンDMはジエチレングリコールメチルエーテルを意味し、PB又はイーストマンPBはプロピレングリコールモノブチルエーテルを意味し、DE又はイーストマンDEはジエチレングリコールエチルエーテルを意味し、PP又はイーストマンPPはプロピレングリコールモノプロピルエーテルを意味し、EP溶媒又はイーストマンEP溶媒はエチレングリコールモノプロピルエーテルを意味し、EB溶媒又はイーストマンEB溶媒はエチレングリコールモノブチルエーテルを意味し、テクソルC、95%は、水5%との変性剤としてのメタノール、MIBK及び酢酸エチルを有するエタノールを意味し、NMPはn−メチルピロリドンを意味し、そしてEEP溶媒又はイーストマンEEP溶媒は3−エトキシプロピオン酸エチルを意味する。
【0130】
1HNMR結果は400MHzで操作するJEOLモデルGX−400NMR分光計を用いて得られる。試料管サイズは5mmである。試料温度は80℃であり、パルス遅延時間は5秒、各実験に対して64走査を得る。化学シフトは、内部基準としての残留DMSOでのテトラメチルシランからのppmで報告する。残留DMSOの化学シフトは2.49ppmに設定される。
【0131】
任意のカルボキシ(C1〜C3)アルキルセルロースエステルに対して、カルボキシル(C1〜C3)アルキル基のメチレンがセルロース主鎖の環プロトンから分離することができず、NMRによる絶対DS測定を困難にするので、アセチル、プロピオニル及びブチリルを測定するために、NMRでなくGC法を用いる。DS値は酸価をカルボキシメチル%に変換することにより計算し、これをアセチル、プロピオニル及びブチリルのGC重量%と併せて用いる。
【0132】
アセチル、プロピオニル及びブチリルの重量%は加水分解GC法により測定する。この方法において、エステル約1gを秤量し、秤量瓶に入れ、105℃で少なくとも30分間にわたり真空オーブン中で乾燥する。次に、試料0.500±0.001gを秤量し250mL三角フラスコ中に入れる。このフラスコに2000mLピリジン中、9.16gのイソ吉草酸、99%溶液50mLを添加する。このブレンドを加熱して約10分間にわたり還流し、その後、イソプロパノール性水酸化カリウム溶液30mLを添加する。このブレンドを約10分間にわたり還流で加熱する。ブレンドを放置して20分間にわたり攪拌しながら冷却し、次に、濃塩酸3mLを添加する。ブレンドを5分間にわたり攪拌し、次に、放置して5分間にわたり安定させる。約3mLの溶液を遠心分離管に移し、約5分間にわたり遠心分離を行う。液体を、1μmFFAP相での25MX0.53mm石英ガラスカラムによりGC(スプリット注入及び水素炎イオン化検出器)で分析する。
【0133】
アシル基重量%は以下のように計算する。式中:
i=I(アシル基)濃度
i=成分Iに対する相対レスポンスファクタ
s=イソ吉草酸に対する相対レスポンスファクタ
i=成分Iの面積
s=イソ吉草酸の面積
R=(イソ吉草酸のグラム)/(試料グラム)
i=((Fi*Ai)/(Fs*As))*R*100
このGC法は、NMRと併せて用いてアセチル、プロピオニル及びブチリルの重量%を決定すると共に、用いる方法が示される。
【0134】
我々は、置換重量%が、以下により、置換度(DS)値に変換することが可能であることに注目する:
ブチリル重量%は以下の式を用いて計算する:
Bu重量%=(DSBu*MWBu)/((DSAc*MWAcKet)+(
DSBu*MWBuKet)+MWanhydroglu
アセチル重量%は以下の式を用いて計算する:
Ac重量%=(DSAc*MWAc)/((DSAc*MWAcKet)+(
DSBu*MWBuKet)+MWanhydroglu
ヒドロキシル重量%は以下の式を用いて計算する:
OH重量%=(DSMax−DSAc−DSBu)*MWOH/((DSAc*MWAcKet)+(DSBu*MWBuKet)+MWanhydroglu
【0135】
特記のない限り:
DSAc1H−NMRにより測定されるブチリルの置換度
DSBu1H−NMRにより測定されるブチリルの置換度
MWAc=アセチルエステルの分子量、(C23O=43.045)
MWBu=ブチリルエステルの分子量、(C47O=71.095)
MWOH=ヒドロキシルの分子量、(OH=17.007)
MWAcKet=一つの水素原子を差し引いたアセチルエステルの分子量、(C22O=42.037)
MWBuKet=一つの水素原子を差し引いたアセチルエステルの分子量、(C46O=70.091)
MWanhydroglu=アンヒドログルコース単位の分子量、(C6105=162.141) DSMax=最大置換度(DSMaxはすべての計算値に対して3.22であると想定されるが、更に正確には、重合度を測定するべきであり、計算で用いられるDSMaxは適切に調整されるべきである)。計算を簡単にするために、DSMax3.22を想定する。いくつかの完全エステル化状態に単離されたHS−CAB試料に対するヒドロキシル基重量%のマイナス値により証明されるように、3.22は完全に正確というわけではない。
【0136】
プロピオニル基重量%は、プロピオニルプロトンにより生じるピークがブチリルプロトンにより生じるものと重なるので、1H−NMRにより得られるDSデータから測定することができない。結果として、常に、ピークが対象エステル(即ち、CABの場合にブチリルエステル又はCAPの場合にプロピオニルエステル)により生じることが想定される。
【0137】
我々は、本発明のセルロース混合エステル及び従来型のセルロースエステルの置換度(DS)を測定するために二つの方法の一つを用いる。
【0138】
方法1は、NMRスペクトルを分析し、集積アルキルエステルプロトンのピーク面積をセルロース主鎖プロトンのピーク面積と比較することによりアセチル及びブチリルの置換度を決定する。この方法により、アセチルは、ブチリル又はプロピオニルなどの高次のエステル基と識別することができるが、しかし、ブチリルはプロピオニルと識別することができない。結果として、すべての高次エステルのピークが用いられる無水物に応じて、ブチリル又はプロピオニルのいずれかから来ることを想定しなければならない。これは、酪酸無水物が反応物質である場合にCAB’s中のプロピオニル基のレベルがほぼゼロであるので、酢酸酪酸セルロースに対する合理的な想定である。別の問題は、この方法では、1H−NMRがヒドロキシル基の置換度を示さないことである。ヒドロキシル基の置換度を測定するための公認の方法は差によるものである、即ち、最大置換度を想定し、その数からアセチル及びブチリル基の置換度を差し引くことである。結果は以下の式1に見られるヒドロキシル基の置換度である。
式1:DSMax−DSBu−DSAc=DSOH
【0139】
従来型分子量セルロースエステルに対するエステル置換は容易に計算される。それらはより高い置換度を有するので、DSMaxが3.0であることは認められる。本発明による創意に富む混合エステルに対して、最大置換度は3.0を超えると共に、曲線のより急勾配な部分上にある、即ち、DPの小さな変化が従来型エステルに見られるよりもDSMaxに大きな影響を与える。結果として、DSMax及び最終的にはDSOHの正確な測定値を得るために、最初に重合度を測定し(分子量に基づき)、その情報を用いてDSMaxを決定することが好ましい。この適用全体を通して、DSMaxはこの目的のために3.22に等しいと想定される。これは、9に等しいアンヒドログルコース単位の重合度により得られるであろう合理的な数である。あいにく、DSMax=3.22はすべてのHS−CAB試料に対して正確な想定ではなく、一部のケースにおいて(実施例9〜27参照)、DSOH計算値はゼロ未満となるであろう。我々は、従って、時折、下位の値を省略しながら、本発明によるセルロース混合エステルの上位のヒドロキシル含量を記載する。
【0140】
方法2は、GC(アセチル、プロピオニル及びブチリル)及び滴定(ヒドロキシル)により測定される重量%データを用い、DS値はこれらのデータから計算する。この方法の使用に伴う不確実性は、DS計算値がGC及び滴定試験方法の正確度及び精度に依存することである。結果として、この方法が置換度を決定するために用いられる場合の一部のケースにおいて、DSMax計算値は3.0未満である。
【0141】
我々は、本発明のエステルをどうにかしてできるだけ完全に説明するために、本出願書において、一部の事例で、両方の重量%及び置換度を提供している。特記のない限り、DS結果はNMRデータからであり、アセチル、プロピオニル及びブチリルの重量%はガスクロマトグラフィー分析からであり、ヒドロキシル重量%値は滴定データからである。
【0142】
あらゆるカルボキシ(C1〜C3)アルキルセルロースエステルの酸価は、以下のような滴定により測定する。カルボキシ(C1〜C3)アルキルセルロースエステルの正確に秤量された部分試料(0.5〜1.0g)は、ピリジン50mLと混合し、攪拌する。このブレンドに、アセトン40mLを添加し、次いで攪拌する。最後に、水20mLを添加し、ブレンドを再度攪拌する。このブレンドを、ガラス/組合せ電極を用いて水中0.1N水酸化ナトリウムにより滴定する。ピリジン50mL、アセトン40mL及び水20mLからなるブランクも、また、滴定する。酸価は、以下のように計算する。式中:
Ep=試料の終点に達するためのNaOH溶液mL
B=ブランクの終点に達するためのNaOH溶液mL
N=水酸化ナトリウム溶液の規定度
Wt.=滴定カルボキシ(C1〜C3)アルキルセルロースエステルの重量
酸価(KOHmg/試料g)=((Ep−B)*N*56.1)/Wt.
【0143】
IV試験法
特記のない限り、本明細書において記載するセルロースエステルのインヘレント粘度(IV)は、毛細管粘度計中の既知のポリマー濃度溶液のフロー時間及び溶媒ブランクのフロー時間を測定し、次にIVを計算することにより決定する。
【0144】
IVは以下の式により定義される:
【数1】

【0145】
式中:(n)=ポリマー濃度0.50g/溶媒100mL、25℃でのインヘレント粘度 ln=自然対数
s=試料フロー時間
0=溶媒ブランクフロー時間
C=溶媒100mL当りグラムでのポリマー濃度=0.50
【0146】
試料を、溶媒(本明細書において「PM95」とも記載される、フェノール60%及び1,1,2,2−テトラクロロエタン40重量%)100mL当り0.50gの濃度に製造する。試料(0.25g)を秤量し、攪拌棒を含有する細菌培養管中に入れる。フェノール60%及び1,1,2,2−テトラクロロエタン40重量%(本明細書において「PM95」とも記載される)50.0mLを添加する。本ブレンドを加熱器中に置き、攪拌しながら(300rpm)125℃に加熱する(目標温度に達するまで7分、125℃で15分間保持)。試料を放置して、室温(25℃)に冷却し、次に、濾過し、粘度計(モデルAVS500−ニューヨーク州、ヨンカーズのショット アメリカ、ガラス&サイエンティフィック プロダクツ(Schott America,Glass & Scientific Products,Inc.))中に置く。IVを上記式により計算する。
【0147】
溶液粘度測定
この方法が粘度及び推定により分子量を測定するために文献中で用いられてきているので、数個の溶液粘度値を本明細書に提供する。しかし、我々は、本発明の低分子量エステルの溶液粘度測定値が、上述のインヘレント粘度測定値におけるよりは、意義が少ないことに注目する。我々は、従って、溶液粘度測定値を、分子量を推測する好ましい方法としてではなく、比較目的用のみに提供する。特記のない限り、溶液粘度値をASTM−D817に従って測定する。
【0148】
分子量測定用のGPC法
セルロースエステル及びカルボキシ(C1〜C3)アルキルセルロースエステル試料の分子量分布を、以下に一覧する二つの方法の一つを用いて、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定する。
【0149】
方法1、THF:溶媒としてTHFを用いてGPCにより試験しようとする指示されたセルロースエステル試料の分子量分布を、流量1ml/分でBHTにより安定化されたバーディック アンド ジャックソン(Burdick and Jackson)のGPCグレードTHF中、室温で測定する。すべての他試料を、以下の方法2に記載するように、溶媒としてNMPでGPCを用いて測定する。試料溶液を、トルエン10μlをそれに流量標識として添加するTHF10ml中でのポリマー約50mgの溶解により製造する。直列の5μmガード(Guard)、ミックスド(Mixed)−C(登録商標)及びオリゴポア(Oligopore)(登録商標)カラムからなるポリマー ラボラトリーズ(Polymer Laboratories)のPLゲル(PLgel)(登録商標)カラムセット上に各溶液50μlを注入するために、カラム自動試料採取器を用いる。溶出性ポリマーを、30℃で保持する検出器セルを用いる示差屈折計法により検出する。検出器信号を、ポリマー ラボラトリーズのキャリバー(Caliber)(登録商標)データ収集システムにより記録し、クロマトグラムをイーストマン ケミカルで開発されたソフトウェアにより集積する。校正曲線を、266〜3,200,000g/モル分子量を有する18のほぼ単分散のポリスチレン標準品のセット及び162g/モルの1−フェニルヘキサンにより決定する。分子量分布及び平均値を、等価ポリスチレン値としてか、又は以下のパラメータ:
PS=0.0128 aPS=0.712
CE=0.00757 aCE=0.842
を有する国際校正手順によって校正される真の分子量としてかのいずれかで報告する。
【0150】
方法2、NMP:特記のないすべての試料の分子量分布を、以下のように、溶媒としてNMPを用いてGPCにより測定する。セルロースエステル試料の分子量分布を、流量0.8ml/分でベーカー(Baker)氷酢酸1重量%を有するバーディック アンド ジャクソンのN−メチルピロリドン中、40℃でゲル透過クロマトグラフィーにより測定する。試料溶液を、トルエン10μlをそれに流量標識として添加するNMP10ml中でのポリマー約25mgの溶解により製造する。10μmガード、ミックスド−B(登録商標)カラムからなるポリマー ラボラトリーズのPLゲル(登録商標)カラムセット上に各溶液20μlを注入するために、カラム自動試料採取器を用いる。溶出性ポリマーを、40℃で保持する検出器セルを用いる示差屈折計法により検出する。検出器信号を、ポリマー ラボラトリーズのキャリバー(登録商標)データ収集システムにより記録し、クロマトグラムをイーストマン ケミカルで開発されたソフトウエアにより集積する。校正曲線を、580〜3,200,000g/モル分子量を有する18のほぼ単分散のポリスチレン標準品のセットにより決定する。分子量分布及び平均値を、等価のポリスチレン値として報告する。
【0151】
本発明は、更に、以下の好ましい実施形態の実施例により説明することができるが、これらの実施例は、単に説明目的のためだけに包含されるものであり、特記のない限り本発明の範囲を限定しようと意図されていないことを理解されたい。
【実施例】
【0152】
実施例1:本発明による中ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−38)の製造
少なくとも94%のα−セルロース含量を有する針葉樹パルプの溶解グレードとして提供されるセルロース(80g)を、20分を超えて水(約1000mL)中に漬け、次に、焼結ガラス漏斗で濾過して水を除去することにより活性化した。水で濡れたセルロースを酢酸(約2000mL)で洗浄することにより残留水を除去した。次に、酢酸で濡れたセルロースを酪酸(約2000mL)により洗浄した。2L反応ケトルに酪酸で濡れた活性化セルロース(311.67g)を充填した。酪酸(145.8g)をケトルに添加した。ブレンドを15℃に冷却した。無水酪酸(225.9g)、無水酢酸(96.8g)及び硫酸(3.42g)のブレンドを15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを84.2℃に加熱し、11.5時間にわたり攪拌した。水(150g)と酢酸(105g)のブレンドを緩やかに透明な「ドープ」に添加した。ブレンドを65℃で7.5時間にわたり攪拌した。酢酸(HOAc)(5.25g)中に溶解したMg(OAc)4(4.5g)とNaOAc(1.7g)及び水(19g)の添加により、触媒を中和した。中和ドープを、約50℃でグラスウールカバーの粗い焼結ガラス漏斗を通して濾過した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。濾過液体をデカント分離し、新鮮脱イオン水を添加し、次に、沈殿物を放置して数時間にわたり新鮮水中に保持することは、沈殿物を硬くした。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥して、最終製品95gを得た。製品は以下の性質を有した:DSBu=1.92、DSAc=0.98、Mn=3012、Mw=5296、多分散度=1.758、IV(PM95)=0.077、S=38.2ppm、Mg=12.9ppm、Na=9.7ppm[計算結果:Bu重量%=40.40%、Ac重量%=12.48%、OH重量%=1.61%]。
【0153】
実施例2:本発明による中ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−38)の製造
少なくとも94%のα−セルロース含量を有する針葉樹パルプの溶解グレードとして提供されるセルロース(80g)を、少なくとも20分間にわたり水(約1000mL)中に漬け、次に、焼結ガラス漏斗で濾過して水を除去することにより活性化した。水で濡れたセルロースを酢酸(約2000mL)で洗浄することにより残留水を除去した。次に、酢酸で濡れたセルロースを酪酸(約2000mL)により洗浄した。2L反応ケトルに酪酸で濡れた活性化セルロース(415g)を充填した。酪酸(46.6g)をケトルに添加した。ブレンドを15℃に冷却した。無水酪酸(246.4g)、無水酢酸(98.8g)及び硫酸(3.42g)のブレンドを15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを78.3℃に加熱し、11.2時間にわたり攪拌した。水(156g)と酢酸(109g)のブレンドを緩やかに透明な「ドープ」に添加した。ブレンドを65℃で7.5時間にわたり攪拌した。HOAc(5.25g)中に溶解したMg(OAc)4(4.5g)とNaOAc(1.7g)及び水(19g)の添加により、触媒を中和した。中和ドープを、約50℃でグラスウールカバーの粗いガラス焼結漏斗を通して濾過した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。濾過液体をデカント分離し、新鮮脱イオン水を添加し、次に、沈殿物を放置して数時間にわたり新鮮水中に保持することは、沈殿物を硬くした。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥して、最終製品132gを得た。製品は以下の性質を有した:DSBu=1.78、DSAc=1.04、Mn=4448、Mw=9691、多分散度=2.179、IV(PM95)=0.121、S=81.2ppm、Mg=37.1ppm、Na=23.3ppm[計算結果:Bu重量%=38.28%、Ac重量%=13.54%、OH重量%=2.06%]。
【0154】
実施例3:本発明による高ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−55)の製造
少なくとも94%のα−セルロース含量を有する針葉樹パルプの溶解グレードとして提供されるセルロース(80g)を、少なくとも20分間にわたり水(約1000mL)中に漬け、次に、焼結ガラス漏斗で濾過して水を除去することにより活性化した。水で濡れたセルロースを酢酸(約2000mL)で洗浄することにより残留水を除去した。次に、酢酸で濡れたセルロースを酪酸(約2000mL)により洗浄した。2L反応ケトルに酪酸で濡れた活性化セルロース(390.33g)を充填した。酪酸(70.3g)をケトルに添加した。ブレンドを15℃に冷却した。無水酪酸(396.1g)、無水酢酸(0g)及び硫酸(3.24g)のブレンドを15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを87.4℃に加熱し、11.0時間にわたり攪拌した。水(164g)と酢酸(115g)のブレンドを緩やかに透明な「ドープ」に添加した。ブレンドを65℃で23時間にわたり攪拌した。HOAc(5.25g)中に溶解したMg(OAc)4(4.3g)とNaOAc(1.6g)及び水(19g)の添加により、触媒を中和した。中和ドープを、約50℃でグラスウールカバーの粗いガラス焼結漏斗を通して濾過した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。濾過液体をデカント分離し、新鮮脱イオン水を添加し、次に、沈殿物を放置して数時間にわたり新鮮水中に保持することは、沈殿物を硬くした。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥して、最終製品110gを得た。製品は以下の性質を有した:DSBu=2.66、DSAc=0.09、Mn=3492、Mw=6170、多分散度=1.767、IV(PM95)=0.086、S=44ppm、Mg=7.7ppm、Na=6.9ppm[計算結果:Bu重量%=53.67%、Ac重量%=1.10%、OH重量%=2.27%]。
【0155】
実施例4:本発明による高ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−55)の製造
少なくとも94%のα−セルロース含量を有する針葉樹パルプの溶解グレードとして提供されるセルロース(80g)を、少なくとも20分間にわたり水(約1000mL)中に漬け、次に、焼結ガラス漏斗で濾過して水を除去することにより活性化した。水で濡れたセルロースを酢酸(約2000mL)で洗浄することにより残留水を除去した。次に、酢酸で濡れたセルロースを酪酸(約2000mL)により洗浄した。2L反応ケトルに酪酸で濡れた活性化セルロース(346.0g)を充填した。酪酸(112.8g)をケトルに添加した。ブレンドを15℃に冷却した。無水酪酸(399.0g)、無水酢酸(0g)及び硫酸(3.24g)のブレンドを15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを82.6℃に加熱し、11.0時間にわたり攪拌した。水(164g)と酢酸(115g)のブレンドを緩やかに透明な「ドープ」に添加した。ブレンドを65℃で23時間にわたり攪拌した。HOAc(5.25g)中に溶解したMg(OAc)4(4.3g)とNaOAc(1.6g)及び水(19g)の添加により、触媒を中和した。中和ドープを、約50℃でグラスウールカバーの粗いガラス焼結漏斗を通して濾過した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。濾過液体をデカント分離し、新鮮脱イオン水を添加し、次に、沈殿物を放置して数時間にわたり新鮮水中に保持することは、沈殿物を硬くした。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥して、最終製品136gを得た。製品は以下の性質を有した:DSBu=2.62、DSAc=0.05、Mn=4137、Mw=8715、多分散度=2.106、IV(PM95)=0.111、S=174.1、Mg=79.5、Na=65.1[計算結果:Bu重量%=53.55%、Ac重量%=0.62%、OH重量%=2.69%]。
【0156】
実施例5:本発明による完全エステル化、低ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−17)の製造
2L反応ケトルに、実施例1により製造された酪酸で濡れた水活性化セルロース(457.14g)を充填した。酪酸(18.10g)及び酢酸(55.58g)をケトルに添加した。ブレンドを0℃に冷却した。無水酪酸(572.00g)、無水酢酸(145.60g)及び硫酸(5.28g)のブレンドを−15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを62.8℃に加熱し、24時間にわたり攪拌した。HOAc(500g)中に溶解したMg(OAc)4(42.29g)及び水(500g)の添加により、触媒を中和した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥した。製品は以下の性質を有した:DSBu=1.07、DSAc=2.22、DSMax=3.29、Mn=5575、Mw=10969、多分散度=1.97、IV(PM95)=0.122[計算結果:Bu重量%=23.02%、Ac重量%=28.92%、OH重量%=−0.36%]。
【0157】
実施例6:本発明による完全エステル化、低ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−17)の製造
2L反応ケトルに、(実施例1により製造された)酪酸で濡れた水活性化セルロース(457.14g)を充填した。酪酸(18.10g)及び酢酸(55.58g)をケトルに添加した。ブレンドを0℃に冷却した。無水酪酸(572.00g)、無水酢酸(145.60g)及び硫酸(5.28g)のブレンドを−15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを79.4℃に加熱し、21.2時間にわたり攪拌した。HOAc(500g)中に溶解したMg(OAc)4(42.29g)及び水(500g)の添加により、触媒を中和した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。沈殿物を約15時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥した。製品は以下の性質を有した:DSBu=1.13、DSAc=2.34、DSMax=3.47、Mn=2837、Mw=4401、多分散度=1.55、IV(PM95)=0.062[計算結果:Bu重量%=23.65%、Ac重量%=29.65%、OH重量%=−1.25%]。
【0158】
実施例7:本発明による完全エステル化、中ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−38)の製造
2L反応ケトルに、実施例1により製造された酪酸で濡れた水活性化セルロース(163.00g)を充填した。酪酸(13.70g)をケトルに添加した。ブレンドを0℃に冷却した。無水酪酸(196.90g)、無水酢酸(71.69g)及び硫酸(2.64g)のブレンドを−15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを71.1℃に加熱し、2時間にわたり攪拌した。HOAc(500g)中に溶解したMg(OAc)4(42.29g)及び水(500g)の添加により、触媒を中和した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥した。製品は以下の性質を有した:DSBu=1.91、DSAc=1.43、DSMax=3.34、Mn=4031、Mw=10343、多分散度=2.57、IV(PM95)=0.089[計算結果:Bu重量%=38.13%、Ac重量%=17.28%、OH重量%=−0.57%]。
【0159】
実施例8:本発明による完全エステル化、高ブチリルセルロースエステル(HS−CAB−55)の製造
2L反応ケトルに、実施例1により製造された酪酸で濡れた水活性化セルロース(338.70g)を充填した。酪酸(22.78g)をケトルに添加した。ブレンドを0℃に冷却した。無水酪酸(614.41g)、無水酢酸(0.61g)及び硫酸(5.28g)のブレンドを−15℃に冷却し、次に、反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを79.4℃に加熱し、5時間にわたり攪拌した。HOAc(500g)中に溶解したMg(OAc)4(42.29g)及び水(500g)の添加により、触媒を中和した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。沈殿物を少なくとも4時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥した。製品は以下の性質を有した:DSBu=3.18、DSAc=0.04、DSMax=3.22、Mn=5113、Mw=11977、多分散度=2.34、IV(PM95)=0.111[計算結果:Bu重量%=58.47%、Ac重量%=0.45%、OH重量%=0.00%]。
【0160】
実施例9〜27:HS−CAB試料
実施例9〜27により、様々な組成の追加HS−CAB’sを製造し、評価する。評価した試料を、前述の実施例1〜8からのデータと併せて表II〜IIIに記載すると共に、一般的に本明細書の他の箇所で、及び実施例1〜8において記載されるように製造する。
【0161】
【表2】

【0162】
【表3】

【0163】
1ブチリル基重量%は以下の式を用いて計算される:
Bu重量%=(DSBu*MWBu)/((DSAc*MWAcKet)+(DSBu*MWBuKet)+MWanhydroglu
2アセチル基重量%は以下の式を用いて計算される:
Ac重量%=(DSAc*MWAc)/((DSAc*MWAcKet)+(DSBu*MWBuKet)+MWanhydroglu
3DSPrは、プロピオニルプロトンにより生じるピークがブチリルプロトンにより生じるものと重なるので、1H−NMRにより得られるDSデータからのブチリルと識別することができない。結果として、ピークが対象エステル(即ちCABの場合にブチリルエステル又はCAPの場合にプロピオニルエステル)により生じることが想定される。
4ヒドロキシル重量%は以下の式を用いて計算される:
OH重量%=(DSMax−DSAc−DSBu)*MWOH/((DSAc*MWAcKet)+(DSBu*MWBuKet)+MWanhydroglu
5DSOHは以下の式を用いて計算される:
DSOH=DSMax−DSAc−DSBu
6これらのGPC結果は、溶媒としてTHFではなくNMPを用いて得られる。これら二つの方法間には偏りがあり、NMP結果はTHFのそれらより高くなる傾向がある。
DSAc1H−NMRにより測定されるブチリルの置換度
DSBu1H−NMRにより測定されるブチリルの置換度
MWAc=アセチルエステルの分子量、(C23O=43.045)
MWBu=ブチリルエステルの分子量、(C47O=71.095)
MWOH=ヒドロキシルの分子量、(OH=17.007)
MWAcKet=一つの水素原子を差し引いたアセチルエステルの分子量、(C22O=42.037)
MWBuKet=一つの水素原子を差し引いたアセチルエステルの分子量、(C46O=70.091)
MWanhydroglu=アンヒドログルコース単位の分子量、(C6105=162.141)DSMax=最大置換度(DSMaxはすべての計算値に対して3.22であると想定されるが、更に正確には、重合度を測定し、計算で用いるDSMaxを適切に調整することができるであろう)。計算を簡単にするために、DSMax3.22を想定する。いくつかの完全エステル化状態に単離されたHS−CAB試料に対するヒドロキシル重量%のマイナス値により証明されるように、3.22は完全に正確というわけではない。
NA=収集データからは利用できない
NM=測定されなかった
【0164】
実施例28〜30及び比較例31〜33
HS−CAB試料及び市販のCAB試料(イーストマン ケミカルから市販されている)は、表IVに記されるように、約22℃(72°F)(室温)、10重量%で多様な溶媒及び溶媒ブレンド中に溶解する(表V及びVIを参照すること)。試料を、溶解度に対して目視で調べ、溶解性−透明(9)、溶解性−わずかな靄(7)、ゲル(5)、部分的に溶解性(3)及び不溶解性(1)としてランク付けする。本発明のセルロースエステルは、類似のアセチル/ブチリル基含量の従来型の市販セルロースエステル(例えば、すべてテネシー州、キングスポートのイーストマン ケミカルから市販されているCAB−381−0.1、CAB−551−0.01及びCAB−171−15)よりも、一部の溶媒中で明らかに溶解性が高く、特に、以下の溶媒:トルエン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イーストマンEB、イーストマンEP、PB、PP、DIBK、C−11ケトン、EBアセテート、PMアセテート及び酢酸n−ブチルに対するHS CAB−38及びHS CAB17タイプエステルがそうである。
【0165】
【表4】

【0166】
* 溶媒としてTHFを用いるGPCにより計算される
** 溶媒としてNMPを用いるGPCにより計算される
(注)3試料(試料4〜6)は、それぞれ、実施例1、3及び4によりなされる多数ランのブレンドである
MEK=メチルエチルケトン、MPK=メチルプロピルケトン、MAK=メチルアミルケトン、PMアセテート=プロピレングリコール酢酸メチル、EBアセテート=エチレングリコール酢酸ブチル、PM=プロピレングリコールモノメチルエーテル、DM=ジエチレングリコールメチルエーテル、PB=プロピレングリコール・モノブチルエーテル、DE=エチレングリコールエチルエーテル、PP=プロピレングリコールモノプロピルエーテル、イーストマンEP溶媒=エチレングリコールモノプロピルエーテル、イーストマンBP溶媒=エチレングリコールモノブチルエーテル、95%テクソルC=変性剤としてメタノール、MIBK及び酢酸エチルを有するエタノールと水5%、NMP=n−メチルピロリドン、イーストマンEEP溶媒=3−エトキシプロピオン酸エチル
【0167】
【表5】

【0168】
【表6】

【0169】
実施例34:粘度検討
HS−CAB−38(試料4、表IV)及びHS−CAB−55(試料5、表IV)の粘度を、濃度の関数としてのブルックフィールド粘度を用い、溶媒として重量で90/10ブレンドの酢酸n−ブチル/キシレンを用いて、匹敵するブチリル基含量の、最低粘度の市販セルロースエステル、CAB−381−0.1及びCAB−551−0.01と比較する。図1は各測定濃度での相対粘度を示す。いかに対数粘度対濃度プロットが各エステルに対して平行であるかに留意すること。これは、各エステルが、エステルの分子量が低くなるほど、同じ挙動を示す濃度はより高くなることを除いて、濃度による類似の指数関数的粘度上昇を有することを示す。本発明のエステルが同じ濃度で従来型のエステルよりも低い粘度を示すので、それらは目標粘度でより高いエステル含量を有するコーティング配合物を可能とする。
【0170】
追加のブルックフィールド粘度データを表VIAに提供する。評価されるHS−CAB’sは、酢酸n−ブチル/キシレン(重量で9:1)中、種々の固形物レベルで溶解する。
【0171】
【表7】

HS−CAB−55(EMT02−117)は65、67、69、及び70%でゲル化する
HS−CAB−55(EMT02−128)は70%でゲル化する
HS−CAB−17(EMT02−084)は70%でゲル化する
HS−CAB−17(EMT02−085)は60%及び70%でゲル化する
HS−CAB−38(EMT02−121)は70%で極めて粘性が高い
HS−CAB−38(EMT02−122)は70%で極めて粘性が高い
HS−CAB−17(EMT02−084)は60%で極めて粘性が高い
* ブレンドはゲル化する
** 材料が部分的に不溶解性であるので測定されない
【0172】
実施例35〜40及び比較例41〜46:HS CAB/樹脂ブレンドの粘度及び従来型のCAB/樹脂ブレンドとの比較
HS−CAB−38(試料1、表IV)及びHS−CAB−55(試料2、表IV)の、市販樹脂(デュラマックHS2706、ポリマックHS5776及びアクリラマック232−1700)とのブレンド(固形物20%及び40%レベルでのCAB対樹脂1:1)を製造し、ブルックフィールド粘度計を用いて溶液粘度を測定する。CAB−381−0.1及びCAB−551−0.01の、市販樹脂(デュラマックHS2706、ポリマックHS5776及びアクリラマック232−1700)との比較ブレンド(固形物20%レベルでのCAB対樹脂1:1)を製造し、ブルックフィールド粘度計を用いて溶液粘度を測定する。結果を表VIIに示す。HS−CAB’sは溶液又はスプレーの粘度にはほとんど影響を及ぼさず、従って、従来型のエステルよりも一段と高いレベルで添加することができる。この結果は系中の不揮発性成分%の増加をもたらす。
【0173】
【表8】

【0174】
実施例47:HS−CAB’sの種々のコーティング樹脂との混和性
酢酸n−ブチル/MEK/MPK/EEP/MAK(35/20/20/15/10)ブレンド中、固形物10%で、1/9、1/3、1/1及び3/1のセルロース誘導体対変性樹脂の比率を用いて溶液を製造する。フィルムを10ミル厚でガラス上に成型する。フィルムを放置して24時間にわたり空気乾燥する。得られるフィルムを、フィルム透明度について良好な室内光の下で視覚評価を行う(表VIII及びIX)。HS−CAB−55(試料2、表IV)及びHS−CAB−38(試料1、表IV)は、試験したほとんどの樹脂:アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン型樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂との良好な混和性、及びビニル類及びポリアミド中での限定された混和性を有する。HS−CAB−17s(試料3、表IV)は、HS−CAB−55及びHS−CAB−38よりも混和性は低いが、それでも、限定された量では試験された樹脂と共に用いることができる。
【0175】
この実施例は、本発明のセルロース混合エステルの多様なコーティング樹脂との混和性を示す。
【0176】
表VIII.混和性検討
フィルム混和性、MEK/MPK/MAK/EEP/n−BuOAc(20/20/10/15/35)の溶媒ブレンドの10%溶液からの10ミル厚から成型された1ミルフィルム
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【表9】

【0177】
【表10】

【0178】
実施例48:HS−CAB混和性
4種の溶媒ブレンド、溶媒1(MEK/PMAc/EEP、5/4/1)、溶媒2(MEK/キシレン/EEP、5/4/1)、溶媒3(MEK/PMAc/トルエン、1/1/2)、溶媒4(PMAc/EtOH/n−BuOH、2/1/1)中の一つに、固形物10%で、1/1のセルロース誘導体対変性樹脂の比率を用いて溶液を製造する。フィルムを10ミル厚でガラス上に成型する。フィルムを放置して24時間にわたり空気乾燥する。得られるフィルムについて、良好な室内光の下でフィルム透明度の視覚評価を行い、結果を表X〜XVIに示す。
【0179】
【表11】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
* 実施例1〜8において前述した式を用いて計算される
【0180】
【表12】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【0181】
【表13】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【0182】
【表14】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【0183】
【表15】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【0184】
【表16】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【0185】
【表17】

溶媒1=MEK/PMAc/EEP 5/4/1
溶媒2=MEK/キシレン/EEP 5/4/1
溶媒3=MEK/PMAc/トルエン 1/1/2
溶媒4=PMAc/EtOH/n−BuOH 2/1/1
0=透明、靄なし;1=明るい光中のみでの極めてわずかな靄;3=室内でのわずかな靄;5=半透明;7=半透明及び不混和性領域;9=靄がかかり不混和性;10=不透明
【0186】
実施例49:種々のHS−CAB’sの溶解度
表II〜III(実施例1〜27)中に記載されるHS−CAB’sを溶媒及び溶媒ブレンド(溶媒1.8g中エステル0.2g)で処理して、CAB’s及び従来型CAB’s(CAB−381−0.1及びCAB−551−0.01)の10重量%溶液を製造する。試料を一夜にわたりローラー上に置き、それらを放置して溶液となす。試料をローラーから除去し、各溶媒又は溶媒ブレンド中の各HS−CABの溶解度を以下の基準により決定する:
1=不溶解性;3=部分的に溶解性;5=ゲル;7=溶解性、靄がかり;9=溶解性、透明。溶解度検討の結果を表XVII〜XIXに示す。
【0187】
【表18】

【0188】
【表19】

【0189】
【表20】

【0190】
【表21】

【0191】
【表22】

【0192】
【表23】

【0193】
実施例50
本発明のHS−CAB−17及びHS−CAB−38エステルを、インク又はコーティング用の顔料粉砕性ビヒクルとして評価する。8個の練り顔料及び8個のインク配合物を表XXに記載するように製造する。従来型のCABグレードに較べて、本発明のHS−CABの着色(色の濃さ)は等しいか又はより良好である。
【0194】
【表24】

【0195】
実施例51:HS−CAB’sの改善された融解安定性
ガラス転移温度(Tg)89℃、融解温度120℃を有する本発明のHS−CAB−38を、予熱した2ロール水平ミル(80℃)上に置く。HS−CAB粉末はロールに付着し、HS−CABが軟化し流れ始めるまで温度を次第に上げてゆく(約100℃)。この材料が良好な熱安定性を有するように見えることは注目される。ミル上でのほぼ30分後でも、CABは黄変していない。
【0196】
実施例52:HS−CAP−48:高プロピオニル、低DP CAP
酪酸洗浄をプロピオン酸洗浄に置き換えることを除いて、実施例1により製造したプロピオン酸で濡れた活性化セルロース(全体311.77g、ドライセルロース160g)を、2L反応ケトルに充填した。プロピオン酸(262.5g)と酢酸(5.22g)をケトルに添加した。ブレンドを−10℃に冷却した。無水プロピオン酸(757.69g)と硫酸(5.44g)のブレンドを−30℃に冷却し、次に反応ケトルに添加した。ブレンドを室温で1時間にわたり攪拌した。次に、ブレンドを70℃に加熱した。室温保持約1時間後に、硫酸(5.44g)を透明ドープに添加した。次に、ブレンドを70℃で攪拌し、3時間52分間にわたり攪拌した。水(182.5g)と酢酸(498.4g)のブレンドを緩やかに透明「ドープ」に添加した。ブレンドを70℃で24時間にわたり攪拌した。HOAc(475g)中に溶解したMg(OAc)4(14.1g)及び水(195g)の添加により、触媒を中和した。中和したドープを、約50℃でグラスウールカバーの粗いガラス焼結漏斗を通して濾過した。急速混合により透明な中和ドープを水20〜30ボリューム中に注ぐことにより、生成物を沈殿させた。濾過液体をデカント分離し、新鮮脱イオン水を添加し、次に、沈殿物を放置して数時間にわたり新鮮水中に保持することは、沈殿物を硬くした。沈殿物を少なくとも2時間にわたり大規模に脱イオン水で洗浄した。生成物を約50℃で一夜にわたり真空オーブン中で乾燥した。製品は以下の性質を有した:DSPr=1.75、DSAc=0.22、Mn=3887、Mw=7036、多分散度=1.81、IV(PM95)=0.086。
【0197】
実施例53:HS−CAB−38を有するコーティング配合物及び評価
透明コーティング配合物を表XXI〜XXIIに従って製造し、得られるコーティングを評価して、HS−CAB−38(試料4、表IV)の指触乾燥時間、硬度進展及び光沢に及ぼす各種レベルの影響を測定する。
【0198】
【表25】

【0199】
【表26】

(1)3−エトキシプロピオン酸エチル
サイノキュア851S: OH4.5%含量
【0200】
指触乾燥時間
1:1のOH:NCO化学量論及び18〜20秒のDIN4粘度でのコーティングを製造する(表XXI〜XXII)。CAB0%の、及びHS−CABsにより置換されたヒドロキシ官能性アクリル樹脂の、2%、4%及び8%を有するコーティングを製造する。各コーティングを、55psi空気圧でのデビルビス(DeVilbiss)JGA545スプレーガンを用いてケメタル・ゴールド・シール(Chemetall Gold Seal)、高リン酸亜鉛1.0mm鋼パネルに吹き付け適用する。45μmを含む乾燥フィルム厚さの範囲が得られるように、各試験比に対して3パネルを被覆する。指触乾燥時間を指紋採取試験により(ASTM D1640セクション7.4.2に従って)評価する。
【0201】
【表27】

指触乾燥時間の結果を表XXIIIに示す。最短の指触乾燥時間は、HS−CAB−38(表IV、試料4)のレベルが上がるにつれて達成される。
【0202】
硬度の進展
各パネルを、また、硬度進展についてケーニッヒ振子硬度評価により評価する。試験を24時間後に行い、24時間毎に168時間まで続ける。パネルをこの時間帯23℃で保存する。
【0203】
【表28】

ケーニッヒ振子硬度結果を表XXIVに示す。24時間後及び7日間の試験期間の終わりで、各コーティングセットのHS−CAB−38含量は、ケーニッヒ振子硬度にほとんど影響を与えない。
【0204】
実施例54:自動車用モノコート配合物中のフロー添加剤としてのHS−CABs:一般的な配合物
固形物70%及びフォードカップ#4粘度18秒で吹き付けできる、混成アクリルイソシアネートポリエステル系を用いる白色顔料化高固形物コーティングを作成する(表XXV及びXXVI)。トロノックス(TRONOX)CR828(二酸化チタン顔料)、ローム&ハースAU608X(アクリルポリオール)及びシャーウイン・ウィリアムズ(Sherwin−Williams)US−2溶媒(コーティング用シンナー)からなる超高固形物マスターバッチを、高剪断下で一緒に混合する。これに、CAB、BYK(登録商標)325又は両方の組合せを、OH/CNバランスを保持するために用いられるイソシアネート部分(バイエルデスモジュール(Desmodur)N3300)及びバイエルデスモフェン(Desmophen)800(ポリエステルポリオール)と併せて添加する。イソシアネート添加前に、同じ固形物でのブルックフィールド粘度を測定する。イソシアネート添加後、フォードカップ#4粘度18〜20秒へのシャーウイン・ウィリアムズUS−2シンナーの添加によりスプレー粘度を調整し、デビルビス空気補助吹き付け器を用いて35ポンドの圧力で吹き付ける。各配合物の二つのパネルに吹き付ける。室温での40分間の気化分離の後、パネルをオーブン中、82℃(180°F)で30分間にわたり焼く。いずれかのパネルを試験する前に、焼いたパネルを、7日間にわたり、24℃(70°F)、相対湿度50%の一定温度−湿度室内に水平に置いた。
【0205】
【表29】

【0206】
顔料分散液を、粒径がヘグマンゲージ上<0.1ミクロンになるまでアイガー高速分散器中で混合する。これは、300rpmで5分間にわたり混合し溶液を放置して冷却することを5回繰り返すことにより達成される。
【0207】
【表30】

【0208】
各コーティングタイプ(表XXVI−列A、B、C、E)及び中心点の同型物(配合物26−Dコーティング)を二つのパネルに吹き付ける。試料の鉛筆硬度1、振子ロッカー硬度(ケーニッヒ)2、ツーコン硬度(ヌープ)、ミカン肌、平滑度、導波管測定による光沢度(長波及び短波)、20度及び60度での光沢度3、画像の明瞭度(DOI)4、実験固形物、ブルックフィールド粘度5、フォードカップ粘度、MEKダブルラビング6、厚さ7、テープ剥離試験8、及びピンホール及びクレーターの目視検査について試験を行う。
【0209】
1ASTM規格D3363−00、“Standard Test Method for film hardness by pencil test.”
2ASTM規格D4366−95、“Standard Test Method for hardness of Organic Coatings by Pendulum Damping Tests.”
3ASTM規格D523−89(1999)、“Standard Test Method for Specular Gloss.”
4ASTM規格D5767−95(1999)、“Standard Test Methods for Instrumental Measurement of Distinctness−of−Image Gloss of Coating Surfaces.”
5ASTM規格D2196、“Test Methods for Rheological Properties of Non−Newtonian Materials by Rotational(Brookfield)Viscometer.”
6ASTM規格5402、“Practice of Assessing the Solvent Resistance of Organic Coatings Using Solvent Rubs.”
7ASTM規格D1186、“Test Method for Nondestructive Measurement of Dry film thickness of Nonmagnetic Coating Applied to a Ferrous Base.”
8ASTM規格D3359、“Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test.”
【0210】
HS−CAB−55(試料5、表IV)及びHS−CAB−38(試料4、表IV)は、なお一段と高い適用固形物で、CAB−381−0.1及びCAB−551−0.01と同じクレーター耐性、マウンド耐性及びピンホール耐性特質を提供する。セルロースエステルを含有しないすべてのパネルは、ピンホール又はクレーターを有する。HS−CAB−55及びHS−CAB−38は、基材に対するコーティングの接着性に害を与えない。更に、HS−CAB−38及びHS−CAB−55は、どの試料も他より有意に悪いことが見出されないことから、ツーコン硬度に害を与えるものではない。20及び60度鏡面光沢度は、HS−CAB−38又はHS−CAB−55の添加により害されない。CAB−381−0.1の添加は、すべての他の試料に較べる場合に、20度光沢値に害を与える。短波ウェーブスキャン測定による光沢度は、HS−CAB−38及びHS−CAB−55が最も滑らかな試料であることを示す。それらは標準セルロースエステルよりもかなり良好であるが、それでも固形物は一段と高くある。
【0211】
実施例55〜59.顔料化熱可塑性自動車用ベースコート
HS−CAB−17(試料3、表IV)及びHS−CAB−38(試料1、表IV)は、自動車コーティングに有用な高固形物ベースコート中の金属フレーク制御剤として評価される。5配合物を表XXVIIに記載されるように製造する。配合物を、より高い固形物用に適応改良した吹き付け技術を用いて金属パネル上に吹き付ける。配合物は、実施例55と同じ固形物レベル(即ち69%)を得るためにキシレン/n−BuOAcにより薄められる。実施例55はHS−CAB−17を含有し、実施例56はHS−CAB−38を含有し、例57(比較用)は対照例であり、金属フレーク制御剤を全く含有せず、実施例58及び59はマイクロゲル金属フレーク制御剤R−1623−M3を含有する。
【0212】
【表31】

9MEK中固形物60%、バッチEMT02−085
10MEK中固形物60%、バッチEMT02−113
11固形物69%で吹き付ける場合
【0213】
外見優は、通常用いられる固形分52%重量の対照品に較べて固形分69重量%の固形物レベルで達成される。実施例55は、優れた外見及びOEMクリアからの良好な抵抗性を示す。コーティングは、また、良好なトラベル又はフロップを示す。実施例57〜59の外見は、固形物69%で吹き付ける場合に不良である。実施例56の外見は可である。
【0214】
更なる薄めは、良好な外見が得られるまで、対照配合物及びマイクロゲルを含有する配合物によりなされる。例えば、実施例57用の固形物の量は、実施例55と類似の外見を得るためには52.4である。
【0215】
一旦ほぼ同じ外見を有するベースコートを製造すると、次に、各パネルの半分に、市販の2成分ウレタン透明コーティング、デュポンOEM TSAを吹き付け、121℃(250°F)で20分間にわたり焼く。各硬化パネルに対するフロップ/トラベルを測定する(表XXVIII参照)。実施例55(HS−CAB−17)は、良好な外見及びトラベルを有し、実施例59(CAB又はマイクロゲルなし)は、固形物52.4%に下げる場合に、良好な外見及び並みのトラベルを有し、そして実施例59(HS−CAB−38)は、並みの外見及び不良トラベルを有し、ベースコートのトップコート溶媒による「割り込み」があることを示す。
【0216】
【表32】

【0217】
実施例60:ウレタン透明コーティング配合物中の低分子量CAB’s
新規のCAB/アクリル/ウレタン配合物を、おおまかに二つのイーストマン資料(E−321&TT−96−SOL−2A)の組合せに基づき作成する。この新規配合物の目的は、CAB−551−0.01が添加される場合に、改善されたフロー特性及びアクリルイソシアネート配合物のより速い指触乾燥時間を示すことである。次に、HS−CABが粘度に対して大きく影響を及ぼすことなく類似の改善を与えるかどうかを決定する。
【0218】
以下の配合物を製造する:
【表33】

配合物定数
固形分58.8重量% アクリル樹脂/CAB/イソシアネート樹脂比率55/20/25
溶媒41.2重量% 酢酸n−ブチル71.5%、アセトン28.5%
イソシアネート樹脂/ポリオール比率1.2/1
DBTDL触媒レベル0.01%は固形物に対するものである
【0219】
実施例61〜66:尿素ホルムアルデヒドコーティング中のHS−CAB−38の評価
4種のレベルでのHS−CAB(試料4、表IV)を含有する一連の配合物、CAB−381−0.1及びCABなしを、表XXXに記載されるように製造する。表XXXはCAB−381−0.1に対して固形物22.3%及び残りに対して固形物24.3%での系の粘度を示す。HS−CAB−38の使用は、CAB−381−0.1対照を用いる配合物のそれの約1/10及びCABなし対照のそれの1/3の粘度を有する配合物を与える。HS−CAB−38試料は、固形物レベル40%、対照品のそれのほぼ2倍で適用される。
【0220】
試料を吹き付け適用し、評価前に1週間にわたり放置して硬化させる。すべての試料は、MEKダブルラビング200を超えて耐薬品性試験に合格する。
【0221】
進退両方の衝撃の結果を表XXXVIに一覧する。前進衝撃は、アクリルポリオール対HS−CAB−38比率の初期の変化により落ちるが、しかし、後の変化によっては変わらない。後退衝撃はすべてのケースにおいて注目すべき差異を伴わず不良である。
【0222】
表XXXIは、また、各実施例に対する60°光沢値を一覧する。光沢値は、高レベルのHS−CAB−38であってさえも感知できるほどには下がらない。一つの例外は、AU608X対HS−CAB−38の比率25:45である。この試料は、9点より低い所までの値を生じる。
【0223】
クロスハッチ接着性はすべての試料で100%保持される。
【0224】
この評価において、すべての比率におけるHS−CAB−38試料はCAB−381−0.1がなすよりも高い硬度値を生じる。
【0225】
【表34】

【0226】
【表35】

【0227】
実施例67:ポリイソシアネート架橋のための試料製造
デュポン12375Sリフィニッシュ・レデューサー(Refinish Reducer)を、表XXXIIに示される配合物量に従い16オンスジャーに添加した。これに続き、ポリエステル樹脂(ポリマック220−2010)及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL触媒)を添加し、コールズ型混合機により攪拌した。次に、HS−CAB−55(バッチEMT02−131)を秤量し、高速攪拌を保持しながら緩やかに攪拌溶液に添加した(以下のパート1)。これをHS−CABが溶液中に存在するまで継続した。次に、HS−CAB及びポリエステル樹脂両方の中に含有されるヒドロキシル基に対して1.1:1イソシアネート/ヒドロキシル基モル比のためのデスモジュールN−75ヘキサメチレン・ジイソシアネート(パート2)の化学量論的量を、攪拌下のパート1に添加してブレンドを生成した。アセトン(15重量%)をブレンドに添加して透明コーティング組成物を製造した。
【0228】
パート1の粘度は約27〜28秒であり、パート1及びパート2の粘度は約35〜36秒であった。透明コーティング組成物の粘度は約16〜17秒であった。粘度はASTM・D−1200により#4フォード粘度カップで測定した。
【0229】
【表36】

【0230】
試験結果
硬度
透明コーティング組成物を、10ミルの濡れたドローダウンカップを用いて透明ガラス板上に下ろした。フィルムを放置して周囲条件で乾燥し、ツーコン(登録商標)硬度を、ツーコン微小硬度試験機を用いて測定した。読みはヌープで与えられ、表XXXIIIに示される。硬度を24時間、72時間及び1週間後に測定した。
【0231】
表XXXIII
時間 硬度(ヌープ)
24時間 8.0
72時間 8.7
1週間 10.9
【0232】
光沢
光沢をノバ−グロス・マルチアングル(Nova−Gloss Multi−Angle)光沢計(フロリダ州、ポンパノビーチに位置するポールN.ガードナー(Paul N.Gardner Company)から入手)を用いて測定した:20°光沢値(吹き付け24時間後)87.5
【0233】
バッファリング又は研磨能力
手順:4”×12”鋼パネルを洗浄し、市販のリフィニッシュベースコート(デュポンのクロマベース・シルバー(ChromaBase Silver)C9339K)を、製造業者の仕様書に従って0.8ミル厚のドライフィルムに吹き付け適用した。ビンク(Bink)の#7吸引フィードガンを吹き付け適用に用いた。パネルを放置して1時間にわたり乾燥し、実施例67の実験用透明コーティング組成物を、同じタイプのスプレーガンにより吹き付け適用して1.8〜2.2ミル厚のドライフィルムを得た。研磨の前に、周囲条件での空気乾燥1週間を与えた。ノバ−グロス・マルチアングル光沢計を用いて光沢値を測定した。
【0234】
2000グリットの湿式又は乾式サンドペーパーを用いて各パネルの水研ぎを行った。研いだ後に、パネルを3Mのパーフェクト−イットIIIラビングコンパウンド(Perfect−it III Rubbing Compound)を用いて30秒間にわたり機械的に研磨した。研ぎ車を変え、3Mのパーフェクト−イットIIIフィニッシンググレーズ(Perfect−it III Finishing Glaze)を、製造業者の指示書に従って再度30秒間にわたり研磨した。光沢値を再測定し、パネルの「サンド」跡又は研ぎ車跡を検査した。
【0235】
結果は:24時間硬化後の水研ぎ/研磨−渦又はサンド跡なしで容易に研磨される;研磨前の20°光沢値−87.5;研磨後の20°光沢値−84.2であった。
【0236】
実施例68:メラミン架橋による透明コーティング組成物
以下の実施例は、メラミン硬化コーティング配合物中の唯一のポリオールとしての本発明の低分子量セルロース混合エステルの有用性を実証する。HS−CAB−55の二つのバッチを選択し、それぞれを酸硬化メラミン透明コーティングの唯一のポリオール成分として配合した。コーティング配合物を、鋼パネルに吹き付け適用し、140℃で30分間にわたり硬化させ、硬化の2時間内に耐溶媒性(MEKダブルラビング)及びツーコン硬度試験を行った。
【0237】
試料配合物
【表37】

1 プロピオン酸n−プロピル/プロピオン酸n−ブチルの50/50ブレンド中の固形物50%溶液
【0238】
【表38】

【0239】
実施例67及び68に対する市販材料タイプ及び製造業者
アロマティック100:エクソン モービル ケミカル(Exxon Mobil Chemical)により供給される芳香族溶媒
サイメル327:サイテック インダストリーズ(Cytec Industries Inc.)により供給されるメラミン樹脂
DBTL:エア プロダクツ(Air Products Inc.)により供給されるジブチル錫ジラウレート
デスモジュールN−75:バイエル(Bayer Corporation)により供給されるヘキサメチレン・イソシアネート
デュポン12375S:デュポン(Dupont Inc.)により供給される市販のリフィニッシュ・レデューサー
EMT02−131:イーストマン ケミカル(Eastman Chemical Company)により供給されるアセチル2.9%、ブチリル49.5%、ヒドロキシル3.3%の組成物、及びTg99℃を有する低分子量セルロースエステル
HS−CAB55:高固形分CABプロ
イルガノックス1010:チバ(Ciba Corp.)により供給される色安定剤
ナキュア2530:キング(King Industries)により供給される封鎖酸触媒
ポリマック220−2010(75%):RSM(レゾリューション スペシャルティー マテリアルズ(Resolution Specialty Materials))により供給される飽和ポリエステル
PTSA:キング(King Industries)により供給されるパラトルエンスルホン酸
【0240】
図面及び明細書において、本発明の典型的な好ましい実施形態を開示してきたが、中で専門用語が使われるが、それらは限定目的のためでなく、一般的な説明用のみの意味合いで用いられ、発明の範囲は特許請求の範囲に記載の通りである。
【0241】
なお以下に本発明及びその関連態様を記載する。
1.以下の特性:
約0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、
約0.80〜約1.40のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び
約1.20〜約2.34のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度
の置換を有する約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全置換度:
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/
重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度;
約1,000〜約5,600の数平均分子量(Mn);
約1,500〜約10,000の重量平均分子量(Mw);並びに
約1.2〜約3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル。
2.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがプロピレングリコールモノメチルエーテル中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様1に記載のセルロース混合エステル。
3.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがプロピレングリコール酢酸メチル中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様1に記載のセルロース混合エステル。
4.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがジエチレングリコールメチルエーテル中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様1に記載のセルロース混合エステル。
5.C3〜C4エステルがプロピオニルを含む態様1に記載のセルロース混合エステル。
6.ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度が約0.05〜約0.70である態様1に記載のセルロース混合エステル。
7.インヘレント粘度が、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.12dL/gである態様1に記載のセルロース混合エステル。
8.数平均分子量(Mn)が約1,500〜約5,000である態様1に記載のセルロース混合エステル。
9.多分散度が1.2〜2.5である態様1に記載のセルロース混合エステル。
10.インヘレント粘度が0.07〜0.11dL/gである態様1に記載のセルロース混合エステル。
11.数平均分子量(Mn)が約1,000〜約4,000である態様1に記載のセルロース混合エステル。
12.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルが酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中の50重量%溶液として6,000センチポアズ以下の粘度を示す態様1に記載のセルロース混合エステル。
13.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルが酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中の50重量%溶液として3,000センチポアズ以下の粘度を示す態様1に記載のセルロース混合エステル。
14.以下の特性:
約0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、
約1.40〜約2.45のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び
約0.20〜約0.80のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度;
の置換を有する約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度:
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/
重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度;
約1,000〜約5,600の数平均分子量(Mn);
約1,500〜約10,000の重量平均分子量(Mw);並びに
約1.2〜約3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル。
15.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがC−11ケトン中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
16.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがジイソブチルケトン中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
17.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがプロピレングリコールモノプロピルエーテル中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
18.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがエチレングリコールモノプロピルエーテル中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
19.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがエチレングリコールモノブチルエーテル中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
20.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがメタノール中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
21.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルが変性剤としてメタノール、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルを含む、水5%含有エタノール中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
22.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがトルエン中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
23.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがイソプロピルアルコール/水90/10重量ブレンド中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様14に記載のセルロース混合エステル。
24.C3〜C4エステルがプロピオニルを含む態様14に記載のセルロース混合エステル。
25.ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度が約0.05〜約0.70である態様14に記載のセルロース混合エステル。
26.インヘレント粘度が、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.12dL/gである態様14に記載のセルロース混合エステル。
27.数平均分子量(Mn)が約1,500〜約5,000である態様14に記載のセルロース混合エステル。
28.多分散度が1.2〜2.5である態様14に記載のセルロース混合エステル。
29.インヘレント粘度が0.07〜0.11dL/gである態様14に記載のセルロース混合エステル。
30.数平均分子量(Mn)が約1,000〜約4,000である態様14に記載のセルロース混合エステル。
31.C3〜C4エステル基がブチリル基を含むと共に、セルロース混合エステルが酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中50重量%溶液として約500センチポアズ以下の粘度を示す、態様14に記載のセルロース混合エステル。
32.以下の特性:
約0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、
約2.11〜約2.91のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び
約0.10〜約0.50のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度
の置換を有する約3.08〜約3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/
重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.15dL/gのインヘレント粘度;
約1,000〜約5,600の数平均分子量(Mn);
約1,500〜約10,000の重量平均分子量(Mw);並びに
約1.2〜約3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル。
33.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがメタノール中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様32に記載のセルロース混合エステル。
34.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルが、変性剤としてメタノール、メチルイソブチルケトン及び酢酸エチルを含む、水5%含有エタノール中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様32に記載のセルロース混合エステル。
35.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがトルエン中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様32に記載のセルロース混合エステル。
36.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルがイソプロピルアルコール/水の90/10(重量で)ブレンド中の10重量%ブレンドとして透明溶液を形成する態様32に記載のセルロース混合エステル。
37.C3〜C4エステルがプロピオニルを含む態様32に記載のセルロース混合エステル。
38.ヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度が約0.05〜約0.70である態様32に記載のセルロース混合エステル。
39.インヘレント粘度が、25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/重量)溶液中での測定で、約0.05〜約0.12dL/gである態様32に記載のセルロース混合エステル。
40.数平均分子量(Mn)が約1,500〜約5,000である態様32に記載のセルロース混合エステル。
41.多分散度が1.2〜2.5である態様32に記載のセルロース混合エステル。
42.インヘレント粘度が0.07〜0.11dL/gである態様32に記載のセルロース混合エステル。
43.数平均分子量(Mn)が約1,000〜約4,000である態様32に記載のセルロース混合エステル。
44.C3〜C4エステルがブチリルを含み、セルロース混合エステルが酢酸n−ブチル/キシレンの90/10重量ブレンド中の50重量%溶液として約200センチポアズ以下の粘度を示す態様32に記載のセルロース混合エステル。
45.a)態様1に記載のセルロース混合エステル、
b)1又はそれ以上のコーティング樹脂及び
c)1又はそれ以上の溶媒
を含むコーティング組成物。
46.a)態様14に記載のセルロース混合エステル、
b)1又はそれ以上のコーティング樹脂及び
c)1又はそれ以上の溶媒
を含むコーティング組成物。
47.a)態様32に記載のセルロース混合エステル、
b)1又はそれ以上のコーティング樹脂及び
c)1又はそれ以上の溶媒
を含むコーティング組成物。
48.a)態様1に記載のセルロースエステルの、コーティング組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜約50重量%、
b)ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂の、組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜50重量%並びに
c)少なくとも一つの溶媒
を含んでなり、前記全体重量(a)及び(b)が全体重量(a)、(b)及び(c)の約5〜約85重量%であるコーティング組成物。
49.平滑剤、レオロジー調整剤及びフロー調整剤;つや消し剤;顔料湿潤剤及び分散剤;界面活性剤;紫外線(UV)吸収剤;UV光安定剤;着色顔料;消泡剤及び泡止め剤;沈降防止剤、流れ止め剤及び賦形剤;皮張り防止剤;色むら防止剤及び色浮き防止剤;殺菌剤及び殺ウドンコ病菌剤;腐食防止剤;増粘剤;又は融合助剤からなる群から選択される1又はそれ以上のコーティング添加剤、組成物全体重量に対して約0.1〜約15重量%を更に含む態様48に記載のコーティング組成物。
50.a)態様14に記載のセルロース混合エステルの、コーティング組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜約50重量%、
b)ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂の、組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜50重量%並びに
c)少なくとも一つの溶媒
を含んでなり、前記全体重量(a)及び(b)が全体重量(a)、(b)及び(c)の約5〜約85重量%であるコーティング組成物。
51.平滑剤、レオロジー調整剤及びフロー調整剤;つや消し剤;顔料湿潤剤及び分散剤;界面活性剤;紫外線(UV)吸収剤;UV光安定剤;着色顔料;消泡剤及び泡止め剤;沈降防止剤、流れ止め剤及び賦形剤;皮張り防止剤;色むら防止剤及び色浮き防止剤;殺菌剤及び殺ウドンコ病菌剤;腐食防止剤;増粘剤;又は融合助剤からなる群から選択される1又はそれ以上のコーティング添加剤の、組成物全体重量に対して約0.1〜約15重量%を更に含む態様50に記載のコーティング組成物。
52.1又はそれ以上の充填剤及び/又は顔料を更に含む態様51に記載のコーティング組成物。
53.顔料がアルミニウム又はマイカを含む態様51に記載のコーティング組成物。
54.態様51に記載の組成物により被覆される造形又は成形部材。
55.a)態様32に記載のセルロース混合エステルの、コーティング組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜約50重量%、
b)ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂の、組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜50重量%並びに
c)少なくとも一つの溶媒、
を含んでなり、前記全体重量(a)及び(b)が全体重量(a)、(b)、及び(c)の約5〜約85重量%であるコーティング組成物。
56.a)態様56に記載のセルロース混合エステルの、コーティング組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜約50重量%、
b)ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂の、組成物の全体重量(a)及び(b)に対して約0.1〜50重量%並びに
c)少なくとも一つの溶媒
を含んでなり、前記全体重量(a)及び(b)が全体重量(a)、(b)、及び(c)の約5〜約85重量%であるコーティング組成物。
57.約20〜約50重量%の顔料及び
約50〜約80重量%の態様14に記載のセルロース混合エステル
を含んでなる顔料分散液。
58.顔料がアルミナ又はマイカを含む態様57に記載の顔料分散液。
59.態様14に記載のセルロース混合エステルを含有する放射線硬化性コーティング。
60.態様14に記載のセルロース混合エステルを含む粉末コーティング。
61.態様14に記載のセルロース混合エステルを含むインク組成物。
62.態様51に記載の組成物により被覆されたプラスチック材料。
63.態様51に記載の組成物により被覆された金属。
64.態様51に記載の組成物により被覆された木材表面。
65.態様51に記載の組成物により被覆された紙。
66.1又はそれ以上の溶媒が水を含む態様45に記載のコーティング組成物。
67.1又はそれ以上の溶媒が水を含む態様46に記載のコーティング組成物。
68.1又はそれ以上の溶媒が水を含む態様47に記載のコーティング組成物。
69.態様1、14又は32に記載の前記セルロース混合エステル、少なくとも一つの架橋剤、少なくとも一つの溶媒及び任意的に少なくとも一つの樹脂を含んでなり、前記セルロース混合エステルが、前記セルロース混合エステル及び前記樹脂の全体重量に対して、約51重量%〜約100重量%範囲の量にあるコーティング組成物。
70.前記セルロース混合エステルが酢酸酪酸セルロースである態様69に記載のコーティング組成物。
71.前記架橋剤がポリイソシアネート又はメラミンである態様69に記載のコーティング組成物。
72.前記樹脂がポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ここに開示されたもの以外のセルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂及びそれらのブレンドからなる群から選択される態様69に記載のコーティング組成物。
73.前記セルロース混合エステル及び樹脂が、混合セルロースエステル、溶媒、及び樹脂の全体重量の約5重量%〜約95重量%である態様69に記載のコーティング組成物。
74.前記溶媒が有機溶媒又は溶媒ブレンドである態様69に記載のコーティング組成物。
75.架橋剤の量が、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、約5重量%〜約40重量%の範囲にある態様69に記載のコーティング組成物。
76.樹脂の量が、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、約0重量%〜約49重量%の範囲にある態様69に記載のコーティング組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)以下の特性:
0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、
0.80〜1.40のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び
1.20〜2.34のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度
の置換を有する3.08〜3.50のアンヒドログルコース単位当りの全置換度:
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/
重量)溶液中での測定で、0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度;
1,000〜5,600の数平均分子量(Mn);
1,500〜10,000の重量平均分子量(Mw);並びに
1.2〜3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル;
b)以下の特性:
0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、
1.40〜2.45のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び
0.20〜0.80のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度;
の置換を有する3.08〜3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度:
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/
重量)溶液中での測定で、0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度;
1,000〜5,600の数平均分子量(Mn);
1,500〜10,000の重量平均分子量(Mw);並びに
1.2〜3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル並びに
c)以下の特性:
0.70以下のヒドロキシルのアンヒドログルコース単位当りの置換度、
2.11〜2.91のC3〜C4エステルのアンヒドログルコース単位当りの置換度及び
0.10〜0.50のアセチルのアンヒドログルコース単位当りの置換度
の置換を有する3.08〜3.50のアンヒドログルコース単位当りの全体置換度;
25℃でフェノール/テトラクロロエタンの60/40(重量/
重量)溶液中での測定で、0.05〜0.15dL/gのインヘレント粘度;
1,000〜5,600の数平均分子量(Mn);
1,500〜10,000の重量平均分子量(Mw);並びに
1.2〜3.5の多分散度
を有するセルロース混合エステル
からなる群から選ばれたセルロース混合エステル、少なくとも一つの架橋剤、少なくとも一つの溶媒及び任意的な少なくとも一つの樹脂を含んでなり前記セルロース混合エステルが前記セルロース混合エステル及び樹脂
の合計量の51〜100重量%の量で含まれるコーティング組成物。
【請求項2】
前記セルロース混合エステルが酢酸酪酸セルロースである請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記架橋剤がポリイソシアネート又はメラミンである請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記樹脂がポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ここに開示されたもの以外のセルロースエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルポリマー樹脂、ポリイソシアネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂及びそれらのブレンドからなる群から選択される請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記セルロース混合エステル及び樹脂が、混合セルロースエステル、溶媒、及び樹脂の全体重量の5〜95重量%である請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記溶媒が有機溶媒又は溶媒ブレンドである請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
架橋剤の量が、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、5〜40重量%の範囲にある請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
樹脂の量が、セルロース混合エステル及び樹脂の全体重量に対して、0〜49重量%の範囲にある請求項1に記載のコーティング組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−207227(P2012−207227A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152258(P2012−152258)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2008−509026(P2008−509026)の分割
【原出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】