説明

低分子量ヒアルロン酸の製造方法

【課題】簡便且つ低コストで収率が高く、またヒアルロン酸の着色も生じず、工業的な大量生産にも好適な低分子量化ヒアルロン酸の製造方法を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸粉末を、ヒアルロン酸粉末を溶解しない含水液媒体中に分散させた状態で、酸の存在下においてマイクロ波を照射することにより加水分解して低分子量化する。前記含水液媒体は、ヒアルロン酸粉末を溶解せず且つ水を溶解する有機溶媒と、水と、酸とを含む一液相であることが好適であり、前記有機溶媒はメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールから選ばれる少なくとも一つであることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低分子量ヒアルロン酸の製造方法、特に簡便で時間的、コスト的に有利であり、着色も生じない低分子量ヒアルロン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、化粧料、医薬品、食品などの分野において用いられており、その低分子量化技術としてはアルカリあるいは酸を用いて加水分解することが知られている(特許文献1〜2)。従来の方法は、ヒアルロン酸水溶液をアルカリあるいは酸で処理して低分子量化するものである。
【0003】
しかしながら、ヒアルロン酸は分子量が非常に大きく、水に溶解した場合には低濃度でも水溶液の粘弾性が非常に大きくなるため、工業的規模で水に溶解するには非常に時間と手間がかかり、また、ヒアルロン酸水溶液の濃度を高くできないという問題があった。また、ヒアルロン酸水溶液をアルカリや酸で処理して低分子量化した後は、CPCなどのカウンターイオンやアルコールを用いて水溶液から低分子量化ヒアルロン酸を沈殿させる必要があるため、工程が煩雑となり、収率も低く、コスト面でも不利であった。さらに、ヒアルロン酸水溶液をアルカリや酸で処理した場合にはヒアルロン酸が劣化して褐変することがあった。
【特許文献1】特開昭63−57602号公報
【特許文献2】特開平1−266102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、より簡便且つ低コストで収率が高く、またヒアルロン酸の着色も生じず、工業的な大量生産にも好適な低分子量化ヒアルロン酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、ヒアルロン酸粉末を溶解させずに、含水液媒体中に粉末のまま分散させた状態で、酸の存在下においてマイクロ波を照射して加水分解することにより低分子量化することができ、しかも着色も生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかる低分子量化ヒアルロン酸の製造方法は、ヒアルロン酸粉末を、ヒアルロン酸粉末を溶解しない含水液媒体中に分散させた状態で、酸の存在下においてマイクロ波を照射することにより加水分解して低分子量化することを特徴とする。
本発明の方法において、前記含水液媒体が、ヒアルロン酸粉末を溶解せず且つ水を溶解する有機溶媒と、水と、酸と、を含む一液相であることが好適である。
また、本発明の方法において、前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールから選ばれる少なくとも一つであることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、含水液媒体中にヒアルロン酸粉末を溶解させずに粉末のまま分散させた状態で、酸存在下においてマイクロ波を照射することにより低分子量化するため、従来のヒアルロン酸水溶液を用いた低分子量化方法におけるヒアルロン酸溶解工程及び沈殿工程を省略することができ、収率も高く、時間的、コスト的に非常に有利である。特に、マイクロ波照射は短時間での低分子量化に有効である。また、本発明の方法によれば低分子量ヒアルロン酸の着色も生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の方法は、ヒアルロン酸粉末を含水液媒体中に溶解させずに粉末のまま分散させた状態で、酸の存在下においてマイクロ波を照射することにより加水分解して低分子量化するものである。加水分解後は、固液分離して得られた粉末を洗浄、乾燥すれば低分子量化されたヒアルロン酸粉末が得られる。
【0009】
ヒアルロン酸は、鶏冠のトサカなどの生体組織からの抽出、あるいは微生物を用いた培養などにより工業的に生産されており、その塩(ナトリウム塩など)も市販されている。本発明においては、含水液媒体中で溶解せずに粉末状態で分散し得る限りにおいてヒアルロン酸あるいはその塩を用いることができる。本発明においては、これをヒアルロン酸粉末という。
【0010】
ヒアルロン酸粉末を分散させて低分子量化処理を行う含水液媒体としては、ヒアルロン酸粉末を溶解せず、水と、酸と、を含む一液相からなる液媒体を用いる。具体的には、ヒアルロン酸粉末を溶解せず且つ水を溶解する有機溶媒を主体とし、水と、酸と、を含む液媒体を用いることができる。
なお、本発明においてヒアルロン酸粉末を溶解しないとは、ヒアルロン酸粉末の溶解度が0.1g/L(25℃)以下であることを意味するものとする。
【0011】
ヒアルロン酸粉末を溶解せず且つ水を溶解する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルホルムアミド等のアミド類などが挙げられるが、コストや使用性、安全性等を考慮すれば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好適である。
【0012】
液媒体には、ヒアルロン酸粉末を加水分解して低分子量化するための水を含む。また、水は、後述する酸を液媒体中に均一に溶解する役割も果たす。ただし、水の量が多すぎると液媒体中にヒアルロン酸粉末が溶解し、系が増粘したり処理中にヒアルロン酸が劣化することがあるので好ましくない。また、水が有機溶媒に溶解せずに分離して2液相となった場合には効率が悪く、また、水相にヒアルロン酸粉末が溶解してしまい、系が増粘したりヒアルロン酸の劣化を招くこともある。
【0013】
よって、含水液媒体中の水の含有量の上限は、ヒアルロン酸粉末が溶解せず、且つ含水液媒体が一液相となる量とすることができる。有機溶媒としてメタノールやエタノール、プロパノール、イソプロパノールなどヒアルロン酸粉末が溶解しないものを用いることが重要である。例えば、エタノールを用いても、含水液媒体中における水の含有量が多いとヒアルロン酸粉末が溶解・膨潤し、液媒体中において粉末状態で攪拌することが困難となるなど操作性が著しく低下する場合がある。加熱や低分子量化による溶解度上昇も考慮すれば、液媒体中における水の含有量は10容量%以下とすることが好適である。なお、酢酸ナトリウムや塩化ナトリウム等の塩析剤を含水媒体中に添加する場合にはこの限りではない。
また、液媒体中における水の含有量は1容量%以上、さらには5容量%以上とすることが好適である。
【0014】
含水液媒体には、ヒアルロン酸の加水分解を速やかに進行させる触媒として酸を溶解させる。酸としては特に限定されず、従来からヒアルロン酸の低分子量化に使用されているものを用いることができる。例えば、酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸等が挙げられる。
【0015】
含水液媒体中における酸の濃度は、0.01〜2N、好ましくは0.03〜0.5Nである。濃度が小さすぎると加水分解がほとんど進行せず時間がかかりすぎる。一方、濃度を過剰に高くしてもそれに見合った効果は期待できず、かえって好ましくない反応を引き起こす懸念がある。
これらの酸は含水液媒体に均一に溶解していることが好ましい。分離している場合には効果が十分に発揮されないことがある。また、加水分解後の酸の除去が煩雑になる。
【0016】
本発明においては、ヒアルロン酸粉末が含水液媒体中で溶解せずに分散状態を維持する限りにおいて、ヒアルロン酸粉末、水、有機溶媒、酸の配合順序は制限されない。例えば、水及び有機溶媒を含む含水液媒体にヒアルロン酸粉末を分散してから酸(水溶液でもよい)を添加して、加水分解を行うことができる。あるいは含水液媒体中に酸を予め配合しておき、これにヒアルロン酸粉末を添加、分散して加水分解を行うこともできるが、これらに限定されるものではない。また、ヒアルロン酸粉末は予め有機溶媒に分散させて添加することもできる。
【0017】
本発明においては、このような酸含有ヒアルロン酸分散液にマイクロ波を照射する。マイクロ波を照射することにより、ヒアルロン酸の低分子量化を著しく促進することができ、分子量1万以下のヒアルロン酸でも効率よく得ることができる。このような効果は、酸の非存在下では十分に発揮されない。
本発明において、マイクロ波は波長約1cm〜1m(周波数約300MHz〜30GHzに相当)の電磁波を指し、代表的なものは2450MHz付近の電磁波である。マイクロ波の発振には、通常マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロンなどが用いられる。
マイクロ波の照射条件は、目的とする分子量に応じて適宜決定することができるが、例えば、約2450Hzのマイクロ波であれば、80W〜1200Wの出力で10秒〜2時間程度照射することができる。
【0018】
マイクロ波照射により分散液の温度が上昇することがある。また、追加的に加熱してもよい。反応温度としては、20〜100℃とすることができるが、好ましくは25〜100℃である。なお、温度上昇によりヒアルロン酸粉末ならびに低分子量化したヒアルロン酸粉末が含水液媒体中に溶解しないように留意する。例えば、水を減量したり、酢酸ナトリウムや塩化ナトリウムなどの塩析剤を含水液媒体中に溶解させておくなどすることができる。なお、同じ反応温度であってもマイクロ波照射下では非マイクロ波照射下に比べてより反応が促進される。
加水分解後は、遠心分離や濾過など公知の方法により固液分離し、得られた粉末を常法により洗浄、乾燥することにより、低分子量化されたヒアルロン酸粉末を得ることができる。
【0019】
従来のヒアルロン酸水溶液を加水分解する方法では、ヒアルロン酸が低濃度でも非常に高粘度となるため、水溶液の調製が非常に困難である。このため、処理に使用されるヒアルロン酸水溶液の濃度は通常1w/v%以下である。
これに対して、本発明の方法では、ヒアルロン酸粉末を溶解させずに粉末状態のまま液媒体中に分散させるので、液相の増粘が起こらない。分散液は、マグネティックスターラーや攪拌棒、振盪機などによる攪拌も非常に容易である。また、反応中においても液相の増粘は生じない。従って、高濃度のヒアルロン酸分散液を処理可能である。本発明においては、分散液中のヒアルロン酸粉末濃度は特に反応に支障のない限り制限されず、50w/v%の高濃度でも処理可能であるが、通常0.1〜30w/v%、好ましくは1〜25w/v%、さらに好ましくは2〜20w/v%である。
【0020】
また、本発明の方法によれば、従来非常に時間のかかっていたヒアルロン酸の溶解工程が不要である。また、加水分解処理後も低分子量化ヒアルロン酸が溶解せずに粉末のままであるので、従来のヒアルロン酸水溶液を用いた方法のようにCPCなどのカウンターイオンやアルコールで低分子量化ヒアルロン酸を沈殿させる必要がない。また、着色も生じない。従って、本発明の方法によれば、従来法に比べて非常に効率がよく、製造時間やコストを大幅に低減できる。
【0021】
本発明の方法においては、反応温度、反応時間、用いる原料の種類や濃度等により種々の分子量の低分子量ヒアルロン酸を得ることができる。よって、所望の分子量に応じてこれらを適宜決定すればよい。
【0022】
また、上記のように、本発明においては塩析剤を用いてもよく、これにより含水液媒体中の水含有量を多くしても、ヒアルロン酸粉末の含水液媒体への溶解を防ぎ、ヒアルロン酸の劣化を抑制することができる。このような塩析剤としては、含水液媒体に溶解することによってヒアルロン酸粉末あるいはその低分子量化物の水への溶解を抑制できるものであれば特に制限されない。例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0023】
例えば、エタノールを用いても、含水液媒体中における水の含有量が多いとヒアルロン酸粉末が溶解・膨潤し、液媒体中において粉末状態で攪拌することが困難となるなど操作性が著しく低下する場合がある。加熱や低分子量化による溶解度上昇も考慮すれば、塩析剤を用いなければ、含水液媒体中における水の含有量を10容量%以上とすることは困難であるが、酢酸ナトリウム等の塩析剤を含水液媒体中1.0w/v%以上含有する場合には、水の含有量は30容量%程度まで増量しても問題ない。同様に、メタノールを用いても、25℃においては塩析剤を用いなければ、含水液媒体中における水の含有量を20容量%以上とすることは困難であるが、酢酸ナトリウム等の塩析剤を含水液媒体中10w/v%以上含有する場合には、水の含有量は50容量%程度まで増量しても問題ない。
従って、塩析剤の使用により水使用量を増大でき、有機溶媒の使用量の低減が可能であるので、製造コストの点で非常に有利である。また、近年はグリーンケミストリーの観点から有機溶媒使用量の低減が強く望まれているところであり、この点においても優れている。
【0024】
塩析剤を用いる場合には、含水液媒体や塩析剤などにもよるが、含水液媒体中における水の含有量を10容量%以上、さらには20容量%以上とすることができる。
塩析剤は、含水液媒体中0.5w/v%以上、さらには1.0w/v%以上配合することが好適である。少なすぎると塩析剤の効果が充分に発揮されない。塩析剤は含水液媒体に対する飽和溶解度以下の濃度で使用可能であるが、多量に用いた場合には低分子量化ヒアルロン酸からの除去に時間がかかる場合がある。よって、塩析剤は含水液媒体中において20w/v%以下、さらには10w/v%以下とすることが好適である。
以下、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
試験例1
ヒアルロン酸(分子量120万)0.1gを、ガラス容器中、各種液媒体50mLに分散した。これを攪拌しながら、約100Wの出力でマイクロ波(約2450Hz)を30分間照射した。対照として、マイクロ波を照射せずに室温で30分間攪拌した。処理後、遠心分離により固液分離し、得られた粉末を90%エタノール、次いで99.5%エタノールで洗浄、乾燥した。
乾燥後、内因性粘度を測定し、Laurentらの定数(A Biochem.Biophys. Acta42, 476−485,1960)を用いて平均分子量に換算した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1のように、ヒアルロン酸粉末分散液に酸存在下でマイクロ波を照射することによって、ヒアルロン酸の低分子量化が著しく促進された。また、着色も認められなかった。酸の非存在下では、マイクロ波照射しても低分子量化の促進作用はほとんど認められなかった。
【0028】
試験例2 マイクロ波による加熱の影響
ヒアルロン酸(分子量120万)3gを、ガラス容器中、0.03N塩酸含有90%エタノール50mLに分散した分散液に、出力約100Wでマイクロ波(約2450Hz)を2時間照射し、分子量の変化を経時的に調べた。なお、マイクロ波照射により分散液は加熱されて約80℃の還流状態となったため、対照としてはマイクロ波を照射せずに80℃で2時間加熱還流した。処理後、試験例1と同様に固液分離、洗浄、乾燥し、分子量を測定した。結果を図1に示す。
図1からわかるように、何れの試験系においてもヒアルロン酸の分子量は処理時間とともに低下したが、マイクロ波を照射した場合には、加熱還流のみ(マイクロ波非照射)の場合に比べても分子量がより低くなった。また、着色も認められなかった。
【0029】
また、図2は、ヒアルロン酸(分子量120万)15gを、ガラス容器中、0.5N塩酸含有90%エタノール250mLに分散した分散液に、出力500Wでマイクロ波(約2450Hz)を30分照射し、分子量の変化を経時的に調べた結果である。マイクロ波照射により分散液は加熱されて約80℃の還流状態となったため、対照としてはマイクロ波を照射せずに80℃で30分加熱還流した。処理後は、試験例1と同様に固液分離、洗浄、乾燥した。分子量の測定は、Bull.Natl.Inst.HealthSci.,121,030−033,2003に従った。
図2においても、図1と同様に、何れの試験系においてもヒアルロン酸の分子量は処理時間とともに低下したが、マイクロ波を照射した場合には、加熱還流のみ(マイクロ波非照射)の場合に比べても分子量がより低くなった。また、着色も認められなかった。
これらのことから、ヒアルロン酸の低分子量化には、マイクロ波による加熱作用以外に、マイクロ波特有の何らかの低分子化作用が寄与しているものと考えられる。
【0030】
試験例3 酸濃度の影響
さらに、マイクロ波照射時の塩酸濃度を変えて調べた。
ヒアルロン酸(分子量120万)3gを、0.03N、0.1N又は0.5N塩酸含有90%エタノール50mLに分散した分散液に、出力約100Wでマイクロ波(約2450Hz)を2時間照射した。処理後、試験例1と同様に固液分離、洗浄、乾燥、分子量測定を行った。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、塩酸濃度が高くなるに従ってヒアルロン酸の分子量は小さくなり、0.5N塩酸含有90%エタノールでは約3,000にまで著しく低下した。また、何れの場合にも、着色は認められなかった。
【0031】
試験例4 マイクロ波出力の影響
ヒアルロン酸(分子量120万)30gを、ガラス容器中、0.5N塩酸含有90%エタノール500mLに分散した分散液に、出力200、500又は932Wでマイクロ波(約2450Hz)をそれぞれ45分照射し、分子量の変化を経時的に調べた。処理後、試験例1と同様に固液分離、洗浄、乾燥した。分子量の測定は、Bull.Natl.Inst.HealthSci.,121,030−033,2003に従った。結果を図4に示す。
図4からわかるように、何れの試験系においてもヒアルロン酸の分子量は処理時間とともに低下したが、マイクロ波の出力が大きいほどより早く分子量が低下した。また、全てのサンプルで着色も認められなかった。
このことから、ヒアルロン酸の低分子量化には、マイクロ波の出力が影響すると考えられる。
【0032】
以上のように、酸存在下でヒアルロン酸粉末分散液にマイクロ波照射することにより、非常に短時間で効率よくヒアルロン酸を低分子量化することができる。
分子量1万以下の低分子量ヒアルロン酸の製造には、通常ヒアルロニダーゼ等の酵素が用いられるが、酵素を使用する製造では手間やコストがかかり、また、反応後に酵素を除去することが困難である。
本発明の製造方法によれば、短時間の内に効率的に低分子量化でき、例えば分子量1万以下のヒアルロン酸でも、酵素を用いずに効率よく製造することができる。また、ヒアルロン酸を粉末状態で処理するので、非常に簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ヒアルロン酸分散液(媒体:0.03N塩酸含有90%エタノール)にマイクロ波照射(100W、2時間)あるいは加熱還流(80℃)した場合の、ヒアルロン酸分子量の経時的変化を示す図である。
【図2】ヒアルロン酸分散液(媒体:0.5N塩酸含有90%エタノール)にマイクロ波照射(500W、30分)あるいは加熱還流(80℃)した場合の、ヒアルロン酸分子量の経時的変化を示す図である。
【図3】ヒアルロン酸分散液の分散媒体(90%エタノール)中の塩酸濃度を変えてマイクロ波照射した場合の、得られたヒアルロン酸の分子量を比較した図である。
【図4】ヒアルロン酸分散液(媒体:0.5N塩酸含有90%エタノール)に出力を変えてマイクロ波照射した場合の、ヒアルロン酸分子量の経時的変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸粉末を、ヒアルロン酸粉末を溶解しない含水液媒体中に分散させた状態で、酸の存在下においてマイクロ波を照射することにより加水分解して低分子量化することを特徴とする低分子量ヒアルロン酸の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記含水液媒体が、ヒアルロン酸粉末を溶解せず且つ水を溶解する有機溶媒と、水と、酸と、を含む一液相であることを特徴とする低分子量ヒアルロン酸の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、前記有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする低分子量ヒアルロン酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−179710(P2008−179710A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14714(P2007−14714)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】