説明

低反射性材料

【課題】防曇性に優れた低反射性材料を提供する。
【解決手段】基材と、基材の表面上に形成された低屈折率材料層と、低屈折率材料層上に形成された表面層とを有し、前記表面層が式(I)で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端にアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射性材料に関する。さらに詳しくは、防曇性に優れた低反射性材料に関する。本発明の低反射性材料は、例えば、自動車や自動二輪車などのバックミラー、ディスプレイなどの表示装置、光学フィルター、太陽電池などの幅広い用途での使用が期待されるものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のバックミラーなどには、視認性を向上させるために低屈折率材料層を有する低反射性材料が用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、当該低反射性材料の表面は、親水性に劣るため、高湿度下で低反射性材料の表面に曇りが生じたり、水滴が低反射性材料の表面に付着したときには視認性が低下したりすることがある。
【0003】
基材に親水性を付与するポリマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸塩とアクリルアミドとの共重合体のグラフト側鎖に親水性アクリルアミドポリマーが用いられた親水性グラフトポリマーが知られている(例えば、特許文献5参照)。また、疎水性の樹脂基材の表面に容易に固着させることができる親水性層として、親水性シリカと酸化チタンとの混合物をフィルム基材に塗布し、乾燥させることによって得られた親水性層が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、前記親水性グラフトポリマーおよび前記親水性層は、いずれも、低反射性材料がもとも有している低反射性を損なうという欠点を有する。
【0004】
また、基材表面に防曇性を付与するために基材表面に界面活性剤を塗布することは、従来から広く行なわれている(例えば、特許文献7および特許文献8参照)。しかし、界面活性剤は、基材表面に水分が付着したときに水分に溶解するため、基材表面から離脱するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−099453号公報
【特許文献2】特開平11−072604号公報
【特許文献3】国際公開第2008/038714号パンフレット
【特許文献4】特表2008−517867号公報
【特許文献5】特開2002−308950号公報
【特許文献6】特開2006−231890号公報
【特許文献7】特開平02−016185号公報
【特許文献8】特開2003−238207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、低反射性材料が本来有している低反射性をほとんど低下させることなく、防曇性が付与された低反射性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 基材と、当該基材の表面上に形成された低屈折率材料層と、当該低屈折率材料層上に形成された表面層とを有し、前記表面層が、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は親水性基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、R6は炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
で表わされるアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで形成されていることを特徴とする低反射性材料、
〔2〕 式(I)において、R2が、水素原子、水酸基を少なくとも1個有する炭素数1〜4のアルキル基、片末端に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を有する炭素数1〜20のポリエチレングリコール基、片末端に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を有する炭素数1〜10のポリプロピレングリコール基、式(III):
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基、R9およびR10は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされる基、または式(IV):
【0014】
【化4】

(式中、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12およびR13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R14は有機基、X-は陰イオンを示す)
で表わされる基である前記〔1〕に記載の低反射性材料、
〔3〕 式(I)で表わされる繰り返し単位の数が1〜1000である前記〔1〕または〔2〕に記載の低反射性材料、
〔4〕 低屈折率材料層が、金属フッ化物微粒子、二酸化ケイ素微粒子または酸化スズ微粒子で形成されてなる前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の低反射性材料、ならびに
〔5〕 式(I):
【0015】
【化5】

(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は親水性基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II):
【0016】
【化6】

【0017】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、R6は炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
で表わされるアルコキシシリル基を有することを特徴とする低反射性材料用(メタ)アクリル系ポリマー
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低反射性材料が本来有している低反射性をほとんど低下させることなく、防曇性が付与された低反射性材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の低反射性材料は、前記したように、基材と、当該基材の表面上に形成された低屈折率材料層と、当該低屈折率材料層上に形成された表面層とを有し、前記表面層が、式(I):
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は親水性基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II):
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、R6は炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
で表わされるアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の低反射性材料は、表面層に前記(メタ)アクリル系ポリマーが用いられているので、低反射性材料が本来有している低反射性をほとんど低下させることなく、優れた防曇性を有する。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、低反射性材料用(メタ)アクリル系ポリマーとして有用である。
【0025】
本発明の低反射性材料に用いられる基材の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンに代表されるポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、尿素樹脂、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂、シリコーン樹脂、ガラス、セラミック、金属などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
基材の形状は、特に限定されず、例えば、フィルム、シート、プレート、ロッド、所定形状に成形された成形体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0027】
基材の表面上に形成される低屈折材料層には、反射防止効果を有するものが用いられる。低屈折材料層は、例えば、低屈折率を有する微粒子および樹脂バインダーを含有する低屈折材料を用いて形成することができる。
【0028】
低屈折率を有する微粒子の屈折率は、屈折率を十分に低くする観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下である。低屈折率を有する微粒子としては、例えば、金属フッ化物微粒子、二酸化ケイ素微粒子、酸化スズ微粒子などが挙げられる。金属フッ化物微粒子の材質としては、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。低屈折率を有する微粒子のなかでは、表面層との密着性を高める観点から、金属フッ化物微粒子が好ましく、フッ化マグネシウム微粒子がより好ましい。
【0029】
低屈折率を有する微粒子の形状としては、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、柱状、針状、板状、燐片状などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。低屈折率を有する微粒子の平均粒子径は、通常、分散安定性の観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上であり、透明性の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。なお、低屈折率を有する微粒子の平均粒子径は、レーザー回析粒度分布測定装置〔(株)島津製作所製、品番:SLDA7000〕で測定したときの値である。
【0030】
樹脂バインダーは、低屈折率を有する微粒子を均一に分散させることができ、成膜性および基材に対する密着性に優れているものが好ましい。樹脂バインダーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0031】
樹脂バインダーの量は、低屈折率を有する微粒子の分散安定性の観点から、低屈折率を有する微粒子100質量部あたり、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは30〜200質量部である。
【0032】
基材の表面上に低屈折材料層を形成させる方法としては、例えば、低屈折率を有する微粒子および樹脂バインダーと有機溶媒とを混合し、得られた混合物を基材の表面上に塗布する方法などが挙げられる。
【0033】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;ハロゲン化炭化水素化合物;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。有機溶媒は、通常、樹脂バインダーの種類に応じて適宜選択され、当該樹脂バインダーに適したものが用いられる。
【0034】
有機溶媒の量は、分散安定性および塗工性の観点から、前記混合物に含まれる固形分の含有率が5〜50質量%となるように調整することが好ましく、10〜40質量%となるように調整することがより好ましい。
【0035】
前記混合物を基材に塗布する方法としては、例えば、フローコート法、スプレーコート法、浸漬法、刷毛塗法、ロールコート法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
前記混合物を基材に塗布した後は、常法で乾燥させて前記混合物に含まれている有機溶媒を除去することにより、低屈折材料層を形成することができる。
【0037】
基材の表面上に形成される低屈折材料層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、反射防止性の観点から、10〜200nm程度であることが好ましい。
【0038】
以上のようにして、基材の表面上に低屈折材料層を形成させた後、当該低屈折材料層上に表面層を形成することにより、本発明の低反射性材料が得られる。
【0039】
表面層は、前記したように、式(I)で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II)で表わされるアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで形成される。
【0040】
式(I)で表わされる繰り返し単位において、R1は、水素原子またはメチル基である。
2は、親水性基である。R2としては、例えば、水素原子、水酸基を少なくとも1個有する炭素数1〜4のアルキル基、片末端に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を有する炭素数1〜20のポリエチレングリコール基、片末端に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を有する炭素数1〜10のポリプロピレングリコール基、式(III):
【0041】
【化9】

【0042】
(式中、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基、R9およびR10は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされる基、式(IV):
【0043】
【化10】

【0044】
(式中、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12およびR13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R14は有機基、X-は陰イオンを示す)
で表わされる基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの基のなかでは、塗膜強度を高める観点から、式(III)で表わされる基が好ましい。
【0045】
式(III)において、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基である。R7は、好ましくはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基またはイソプロピレン基であり、より好ましくはメチレン基またはエチレン基である。R8は、好ましくはメチレン基またはエチレン基である。R9およびR10は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
【0046】
式(IV)において、R11は、炭素数1〜4のアルキレン基である。R11は、好ましくはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基またはイソプロピレン基であり、より好ましくはメチレン基またはエチレン基である。R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。R14は、有機基である。有機基の具体例としては、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のカルボキシアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。X-は、陰イオンである。X-の好適な例としては、炭素数1〜4のアルキルクロライドイオン、アルキル基の炭素数が1〜4の1価のジアルキル硫酸イオン、炭素数6〜8のアリールクロライドイオン、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキル硫酸ハライド、ハロゲンイオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、重亜硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ハライドにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。前記ハロゲンイオンにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。X-のなかでは、炭素数1〜4のアルキルクロライドイオン、アルキル基の炭素数が1〜4の1価のジアルキル硫酸イオンおよび炭素数6〜8のアリールクロライドイオンが好ましい。
【0047】
基材表面に親水性を付与する観点から、式(I)で表わされる繰り返し単位の数の下限値は、好ましくは1以上、より好ましくは10以上であり、式(I)で表わされる繰り返し単位の数の上限値は、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。
【0048】
式(II)で表わされるアルコキシシリル基において、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基である。R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であるのは、表面層を低屈折材料層に化学的結合によって固定するためである。したがって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、R3、R4およびR5のうちの少なくとも2つの基が炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、R3、R4およびR5のいずれもが炭素数1〜4のアルコキシ基であることがさらに好ましい。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。炭素数1〜4のアルコキシ基のなかでは、メトキシ基およびエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
【0049】
式(II)で表わされるアルコキシシリル基において、R6は、炭素数1〜12のアルキレン基である。R6のなかでは、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基がより好ましい。
【0050】
式(II)で表わされるアルコキシシリル基は、(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも片末端に存在するが、(メタ)アクリル系ポリマーが有する性質を十分に発現させる観点から、(メタ)アクリル系ポリマーの片末端にのみ存在することが好ましい。式(II)で表わされるアルコキシシリル基が(メタ)アクリル系ポリマーの片末端にのみ存在する場合、その他方の末端には、(メタ)アクリル系ポリマーが有する性質を十分に発現させる観点から、例えば、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、重合開始剤の残基などの基が存在することが好ましい。
【0051】
式(I)で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II)で表わされるアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、式(V):
【0052】
【化11】

【0053】
(式中、R1およびR2は、前記と同じ)
で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを、式(VI):
【0054】
【化12】

【0055】
(式中、R3、R4、R5およびR6は、前記と同じ)
で表わされるアルコキシシリル基含有化合物の存在下で重合させることによって調製することができる。
【0056】
式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのメチルクロライド塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのジメチル硫酸塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのジエチル硫酸塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルクロライド塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのメチルクロライド塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのジメチル硫酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのジエチル硫酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのベンジルクロライド塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのメチルクロライド塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのジメチル硫酸塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのジエチル硫酸塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのベンジルクロライド塩、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのメチルクロライド塩、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのジメチル硫酸塩、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのジエチル硫酸塩、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルアミノエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの(メタ)アクリル系モノマーのなかでは、安価で容易に入手することができることから、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのメチルクロライド塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのジエチル硫酸塩などが好ましい。なお、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインは、例えば、特開平9−95474号公報、特開平9−95586号公報、特開平11−222470号公報などに記載されている方法により、高純度で容易に調製することができる。
【0057】
式(VI)で表わされるアルコキシシリル基含有化合物としては、例えば、1−チオプロピル−3−トリメトキシシラン、1−チオプロピル−3−トリエトキシシラン、1−チオプロピル−3−トリイソプロポキシシラン、1−チオプロピル−3−メチルジメトキシシラン、1−チオプロピル−3−メチルジエトキシシラン、1−チオプロピル−3−メチルジプロポキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコキシシリル基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
式(VI)で表わされるアルコキシシリル基含有化合物の量は、特に限定されないが、通常、重合に供されるモノマー全量100重量部あたり、0.01〜10重量部程度であることが好ましい。
【0059】
なお、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを他の重合性モノマーと併用してもよい。
【0060】
他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、スチレン、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の重合性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
式(VI)で表わされるアルコキシシリル基含有化合物の存在下で、式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを重合させる際には、重合開始剤を用いることが好ましい。
【0062】
重合開始剤としては、例えば、アゾイソブチロニトリル、アゾイソ酪酸メチル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾフェノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ベンゾケトン誘導体、フェニルチオエーテル誘導体、アジド誘導体、ジアゾ誘導体、ジスルフィド誘導体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを含む重合に供されるモノマー全量100重量部あたり0.01〜5重量部程度であることが好ましい。
【0064】
式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを重合させる方法としては、例えば、溶液重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを溶液重合法によって重合させる場合には、例えば、式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを溶媒に溶解させ、得られた溶液を攪拌しながら重合開始剤を添加することにより、重合させることができる。
【0065】
溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
溶媒の量は、通常、式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを含む重合に供されるモノマーを溶媒に溶解させることによって得られる溶液におけるモノマーの濃度が10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0067】
式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを重合させる際の重合温度、重合時間などの重合条件は、そのモノマーの種類およびその使用量、重合開始剤の種類およびその使用量などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0068】
式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーを重合させるときの雰囲気は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0069】
重合反応の終了や反応系内における未反応モノマーの有無は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析方法で確認することができる。
【0070】
以上のようにして式(V)で表わされる(メタ)アクリル系モノマーおよび必要により使用される他のモノマーを重合させることにより、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
【0071】
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの粘度平均分子量は、表面改質効果を十分に発現させる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは500以上であり、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの溶解性を高める観点から、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。なお、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの粘度平均分子量は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーなどによって測定することができる。
【0072】
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーは、溶媒に溶解させて用いることができる。溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、n−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
溶媒の量は、特に限定されないが、通常、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを溶媒に溶解させることによって得られる溶液におけるアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーの濃度が10〜80重量%程度となるように調整することが好ましい。
【0074】
表面層は、基材の低屈折率材料層上にアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーまたはその溶液を塗布することによって形成することができる。基材の低屈折率材料層上にアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーまたはその溶液を塗布する方法としては、例えば、フローコート法、スプレーコート法、浸漬法、刷毛塗法、ロールコート法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0075】
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーまたはその溶液を低屈折率材料層上に塗布する際の温度は、通常、常温であってもよく、加温であってもよい。アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーまたはその溶液の塗布量は、本発明の低反射性材料の用途などによって異なるので一概には決定することができないため、その用途などに応じて適宜調整することが好ましい。
【0076】
アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーまたはその溶液を低屈折率材料層上に塗布した後は、生産効率を高める観点から、基材を加熱することが好ましい。基材を加熱する際の温度は、その基材の耐熱温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、50〜150℃の範囲内で、その基材に適した温度を選択することが好ましい。
【0077】
以上のようにして、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーまたはその溶液を基材の表面上に形成されている低屈折率材料層上に塗布することにより、低屈折率材料層上に表面層が形成された低反射性材料を製造することができる。
【0078】
低反射性材料に形成されている表面層の厚さは、防曇性を高める観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、低反射性を高める観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。
【0079】
本発明の低反射性材料においては、低屈折率材料層上にアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーからなる表面層が形成されるので、親水性を基材に付与することができ、従来の界面活性剤を用いたときのように水分が付着したときに流失することを防止することができる。さらに、本発明の低反射性材料では、表面層の厚さが小さくても十分な防曇性が付与されることから、従来の親水性グラフトポリマーを用いた場合のように表面層の厚さを大きくする必要がないことから、表面層の厚さが大きくなることによって低反射性が損なわれることを防止することができる。
【実施例】
【0080】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
製造例1
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン〔大阪有機化学工業(株)製、商品名:GLBT〕32.31g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−803〕1.55gおよびエタノール146.20gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0082】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した後、アゾビスイソブチロニトリル1.83gを添加し、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、さらにコルベン内にアゾビスイソブチロニトリル0.37gを添加し、反応温度を70℃に保持しながら4時間熟成を行なうことにより、ポリマー溶液を得た。
【0083】
得られたポリマー溶液を水浴にて30℃に冷却し、エタノール182.76gで希釈することにより、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0084】
得られたアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は15000であった。
【0085】
製造例2
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン〔大阪有機化学工業(株)製、商品名:GLBT〕35.00g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−803〕3.27gおよびエタノール153.10gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0086】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した後、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを添加し、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、さらにコルベン内にアゾビスイソブチロニトリル0.38gを添加し、反応温度を70℃に保持しながら4時間熟成を行なうことにより、ポリマー溶液を得た。
【0087】
得られたポリマー溶液を水浴にて30℃に冷却し、エタノール191.37gで希釈することにより、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0088】
得られたアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は3000であった。
【0089】
製造例3
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン〔大阪有機化学工業(株)製、商品名:GLBT〕35.00g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−803〕0.75gおよびエタノール143.02gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0090】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した後、アゾビスイソブチロニトリル0.89gを添加し、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、さらにコルベン内にアゾビスイソブチロニトリル0.36gを添加し、反応温度を70℃に保持しながら4時間熟成を行なうことにより、ポリマー溶液を得た。
【0091】
得られたポリマー溶液を水浴にて30℃に冷却し、エタノール178.78gで希釈することにより、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0092】
得られたアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は5000であった。
【0093】
製造例4
窒素ガス導入管、コンデンサーおよび撹拌機を備えた500mL容のコルベンに、メトキシトリエチレングリコールアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製、品番:V−MTG〕30.00g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、商品名:KBM−803〕1.44gおよびエタノール125.68gを添加した。コルベン内を減圧することによって脱気した後、窒素ガスをコルベン内に導入して常圧に戻し、コルベン内の酸素ガスをできるだけ排除した。
【0094】
次に、コルベンに備え付けられている油浴により、コルベンの内容物を65℃まで加温した後、アゾビスイソブチロニトリル1.57gを添加し、コルベンの内容物の温度を70℃に保持しながら4時間熟成させた。その後、さらにコルベン内にアゾビスイソブチロニトリル0.31gを添加し、反応温度を70℃に保持しながら4時間熟成を行なうことにより、ポリマー溶液を得た。
【0095】
得られたポリマー溶液を水浴にて30℃に冷却し、エタノール157.10gで希釈することにより、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。
【0096】
得られたアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計〔(株)相互理化学硝子製作所製、品番:U−0327−26〕にて25℃で測定することにより、粘度平均分子量を求めたところ、その粘度平均分子量は5000であった。
【0097】
実施例1〜4
各製造例で得られたアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液を、低屈折率材料層を有する基材の当該低屈折率材料層上にフローコートし、余剰のアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー溶液をエタノールで洗浄することによって除去した後、この基材を温風乾燥機内に入れ、120℃の温度で30分間温風乾燥を行なうことにより、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで形成された表面層を有する低反射性材料を得た。なお、低屈折材料層を有する基材は、以下のようにして製造した。
【0098】
〔低屈折材料層を有する基材の製造〕
ガラスプレート(縦:100mm、横:100mm、厚さ:1mm)上に、フッ化マグネシウム微粒子(平均粒子径:10nm)1質量%を含有するエタノール溶液を塗布し、150℃で乾燥させることにより、低屈折材料層を有する基材を得た。得られた基材の低屈折材料層が形成されている面における屈折率を、屈折計〔(株)アタゴ製、商品名:デジタルアッベ屈折計DR−M2〕を用いて23℃の雰囲気中で測定波長590nmにて測定した。その結果、前記屈折率は、1.35であった。
【0099】
次に、前記で得られた低反射性材料の物性として、屈折率、防曇性、水との接触角、表面層の厚さおよび耐熱水性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1に示す。
【0100】
〔低反射性〕
低反射性材料の表面層における屈折率を、前記と同様に、屈折計〔(株)アタゴ製、商品名:デジタルアッベ屈折計DR−M2〕を用いて23℃の雰囲気中で測定波長590nmにて測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:折材料層が形成されている面における屈折率と低反射性材料の表面層における屈折率との差の絶対値が0.1未満
×:折材料層が形成されている面における屈折率と低反射性材料の表面層における屈折率との差の絶対値が0.1以上
【0101】
〔防曇性〕
低反射性材料を90℃の水蒸気中に5分間曝した。この低反射性材料の防曇性を目視で観察することにより、以下の評価基準に基づいて評価した。
(防曇性の評価基準)
○:低反射性材料に曇りの発生なし
×:低反射性材料に曇りの発生あり
【0102】
〔水との接触角〕
低反射性材料に水滴を滴下し、接触角計〔エルマ(株)製〕を用いて水との接触角を25℃の大気中で測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(防曇性の評価基準)
○:水との接触角が10度未満
×:水との接触角が10度以上
【0103】
〔表面層の厚さ〕
低反射性材料の表面層の厚さを、触針式段差計〔ケーエルエー・テンコール(株)製、品番:P−10〕を用いて測定した。
【0104】
〔耐熱水性〕
低反射性材料に水滴を滴下し、接触角計〔エルマ(株)製〕を用いて水との接触角を25℃の大気中で測定した。その後、この低反射性材料を80℃に加温されている熱水中に5時間浸漬することにより、耐熱水試験を行なった。次に、この熱水中から低反射性材料を取り出し、水で洗浄し、低反射性材料に付着している水をエアガンで乾燥させた後、低反射性材料に水滴を滴下し、接触角計〔エルマ(株)製〕を用いて水との接触角を25℃の大気中で測定し、耐熱水性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0105】
(評価基準)
○:耐熱水性試験前後の水に対する接触角の差の絶対値が10度未満
×:耐熱水性試験前後の水に対する接触角の差の絶対値が10度以上
【0106】
比較例1
ガラスプレート(縦:100mm、横:100mm、厚さ:1mm)上に、フッ化マグネシウム微粒子(平均粒子径:10nm)1質量%を含有するエタノール溶液を塗布し、150℃で乾燥させることにより、低屈折材料層を有する基材を得た。得られた低屈折材料層を有する基材を低反射性材料として用い、実施例1と同様にして、低反射性材料の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0107】
比較例2
1%ラウリン酸ナトリウム水溶液をガラスプレート上にフローコートし、このガラスプレートを温風乾燥機内に入れ、120℃の温度で30分間温風乾燥を行なうことにより、界面活性剤で処理された基板を得た。得られた基板を低反射性材料として用い、実施例1と同様にして、低反射性材料の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0108】
比較例3
1%ミリスチン酸ナトリウム水溶液をガラスプレート上にフローコートし、このガラスプレートを温風乾燥機内に入れ、120℃の温度で30分間温風乾燥を行なうことにより、界面活性剤で処理された基板を得た。得られた基板を低反射性材料として用い、実施例1と同様にして、低反射性材料の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0109】
比較例4
1%パルミチン酸ナトリウム水溶液をガラスプレート上にフローコートし、このガラスプレートを温風乾燥機内に入れ、120℃の温度で30分間温風乾燥を行なうことにより、界面活性剤で処理された基板を得た。得られた基板を低反射性材料として用い、実施例1と同様にして、低反射性材料の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示された結果から、各実施例で得られた低反射性材料は、各比較例で得られた低反射性材料と対比して、低反射性材料が本来有している低反射性をほとんど低下させることなく、防曇性に優れていることがわかる。さらに、各実施例で得られた低反射性材料は、耐熱水性にも優れていることから、耐熱性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の低反射性材料は、低反射性材料が本来有している低反射性をほとんど低下させることなく、防曇性に優れていることから、例えば、自動車や自動二輪車などのバックミラー、ディスプレイなどの表示装置、光学フィルター、太陽電池などの幅広い用途での使用が期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、当該基材の表面上に形成された低屈折率材料層と、当該低屈折率材料層上に形成された表面層とを有し、前記表面層が式(I):
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は親水性基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II):
【化2】

(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、R6は炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
で表わされるアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで形成されていることを特徴とする低反射性材料。
【請求項2】
式(I)において、R2が、水素原子、水酸基を少なくとも1個有する炭素数1〜4のアルキル基、片末端に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を有する炭素数1〜20のポリエチレングリコール基、片末端に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を有する炭素数1〜10のポリプロピレングリコール基、式(III):
【化3】

(式中、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキレン基、R9およびR10は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表わされる基、または式(IV):
【化4】

(式中、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12およびR13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R14は有機基、X-は陰イオンを示す)
で表わされる基である請求項1に記載の低反射性材料。
【請求項3】
式(I)で表わされる繰り返し単位の数が1〜1000である請求項1または2に記載の低反射性材料。
【請求項4】
低屈折率材料層が、金属フッ化物微粒子、二酸化ケイ素微粒子または酸化スズ微粒子で形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の低反射性材料。
【請求項5】
式(I):
【化5】

(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は親水性基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有し、少なくとも片末端に式(II):
【化6】

(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、R3、R4およびR5のうちの少なくとも1つの基は炭素数1〜4のアルコキシ基、R6は炭素数1〜12のアルキレン基を示す)
で表わされるアルコキシシリル基を有することを特徴とする低反射性材料用(メタ)アクリル系ポリマー。

【公開番号】特開2012−148436(P2012−148436A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7330(P2011−7330)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】