説明

低収縮且つ低応力の歯科用組成物

【課題】主に歯科用複合材に使用して、低硬化収縮及び低硬化応力をもたらし得る組成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】重合性基として、少なくとも1つの(メタ)アクリレートを有する重合性環状オリゴマーを含む組成物の製造方法において、該製造方法は、(A)該少なくとも1つの(メタ)アクリレートを含む、反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体と;第一級ジオール、第二級アミン又は二価酸を含むカップリング剤とまたは(B)活性化カップリング剤と;反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体との縮合反応を介して、該重合性環状オリゴマーを製造することを含むことを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、主に歯科用複合体に使用して、低硬化収縮及び低硬化応力をもたらし得る組成物に関する。より詳細には、本発明は、大環状の幾何学的形状を特徴とする新たな樹脂を製造する方法を含む。加えて、本発明はまた、かさ高い環状の単重合性基を特徴とする別の樹脂希釈剤を製造する方法を含む。したがって、当然、低収縮及び低応力を特徴とする、大環状オリゴマーと、かさ高い希釈剤とを含有する樹脂組成物、及び樹脂/充填剤組成物も含まれる。重合性大環状オリゴマー特有の構造幾何学的形状は、その低収縮性を確定する。つまり、かさ高い希釈剤特有のこの構造的組み合わせによって、低応力を伴う低収縮を可能にする。このような樹脂組成物の用途は、樹脂セメント、結合剤、ライナー等の歯科用複合体又は修復歯科における他の用途に限定されないであろう。本発明は、低収縮及び低応力を修復歯科と同様に重要とする他のあらゆる分野へと拡張され得る。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
硬化性材料の重合収縮とは、硬化物質が生じる前の重合時の寸法的収縮であるとみなされる。重合時の共有結合形成は、モノマー分子同士を通常のファンデルワールス距離よりも近接させる。このことが重合収縮の原因であり、また重合応力の原因でもある。当然、応力の蓄積は、材料がどのように硬化されるか、すなわち重合動態に基づく。
【0003】
硬化性樹脂の化学構造によって、任意の硬化物質に関するほとんど全ての特性面が或る程度確定される。そのため、硬化を促進させるプロセス又は技術を伴う。形成は、主に、組成物を調整することによる個々の成分と許容可能な特性とのバランスに関するプロセスである。なお、全ての構成成分を統合するプロセスは、形成段階中に含まれていなければならない。硬化光強度及び硬化時間等の重合プロセス時に関する他の発生(emerging)パラメータ、並びに硬化方式は確実に、収縮、応力及び機械特性のような重合に関する何らかの特性に影響を与えるであろう。本発明では、組成物形成の部分しか包含していない。より詳細には、本発明は、新たな樹脂の開発、それによる複合体の形成に関する。
【0004】
分子量を増大すれば、ポリマー鎖の移動度が制限されるため、拡散が速度制御因子となるということは既知である。加えて、架橋系における移動度のこのような制限は、直鎖系と比べてより早く現れると考えられる。このことは、余剰反応により重合応力が増大することを意味する。応力の発生及び進展を制御する様々な方法が存在する:
1.重合速度を制限;
・安定ラジカルのような特定の速度制御機構を導入;
・重合帯域で生じる応力が隣接する非重合帯域に移行することができ、且つ部分重合技法のような安全策を得る、異なる重合帯域を生成;
・異なる重合基を使用;
・マクロモノマーを使用して初期段階でその反応性を制限;
2.重合転化を制限;
3.架橋密度を制限;
【0005】
歯科用修復複合体における重合収縮及び重合応力を低減させるために、化学的なアプローチに関して、上記のアプローチの全てを考慮している。さらに、充填剤が複合体全体の60〜90%を構成するため、充填剤の観点で重大な発展が存在する。充填剤の使用量を増大すると、機械的強度が増大し、且つ重合収縮が低減する。さらにまた、化学組成物等の充填剤の性質、例えば、粒径及びサイズ分布、表面特性、シラン化度等はまた、機械的強度と収縮とのバランスに関する強大な影響を示す。
【0006】
重合収縮が小さい程、また硬化応力が小さい程、歯の修復における臨床的な成功確率が高くなることが示唆されたため、低収縮歯科用複合体に対する要求が増大している。しかしながら、このような相関関係は常に当てはまるものではなく、この提言は注意すべき事項に過ぎない。歯科用材料及び臨床応用技法に関するこのような提言は、しばしば実験室試験に基づくことが知られている。しかしながら、実験室試験が異なる方法に基づいていれば、この提言は何ら意味を成さないであろう。より詳細には、歯科用材料に関する収縮及び応力を評価する標準的な方法が存在しない場合、特定の歯科用材料又は製品に関して何らかの提言に疑問が生じることは、驚ろくべきことではない。臨床作業(これは未だに敏感な反応手法であり、全ての臨床医が正しく行っているわけではない)が適切でなければ、低収縮は、低応力及びほとんど失敗しないことを必ず保障するものではない。ほんの一例を挙げると、新たな低収縮樹脂が低収縮複合体を形成するが、形成及び他の関連技術によっても低収縮生成物を生成することができるため、低収縮生成物を確実にするものではない。別の状況では、優れた論文又は特許は低収縮樹脂しか指しておらず、それで終わってしまっている。同様の論理は、低収縮又は全く収縮のない複合体を用いた歯の修復に適用することができ、これは修復を成功させるための基本であるが、高度な訓練を受けた臨床医が行う必要があるため、成功を保障するものではない。
【0007】
重合収縮の測定は、収縮と応力との間の信頼できる相関関係を確立するのに重要であるため、低収縮材料の開発の際に欠くことができない。重合収縮の測定はまた、歯科用材料の研究者であるいずれの臨床医にとっても低収縮複合体の公平な評価に役立つ。残念ながら、樹脂又は複合体に関する重合収縮を試験し得る標準的な方法は存在しない。本実験室では水銀膨張計及びガスピクノメータを使用して、樹脂及び複合体の重合収縮を評価する。
【0008】
重合収縮及び重合応力を制限する2つの異なるアプローチである化学的アプローチ及び技術的アプローチが存在する。例えば光硬化性歯科用複合体に関して、化学的アプローチには、新たな硬化基、新たな構造フレーム、新たな光開始剤、新たな反応動態、樹脂と充填剤との間の新たな界面相互作用に関する新たなカップリング剤、及び新たな充填剤等が含まれ、技術的アプローチには、新たな硬化光源、新たな硬化エネルギー、新たな硬化方式、窩洞を作製する新たな技法、窩洞を充填する新たな技法等が含まれる。これらのプロセスの全ては、収縮及び応力、並びにそれらの進展を確定し、修復の失敗に直接関係すると考えられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重合収縮及び重合応力を制限する化学的アプローチを伴う。より詳細には、本発明は、新たな樹脂及びその組成物の開発に関する。このため、本発明において、重合性大環状オリゴマー等の重合性の単一網目を生成する一般的な方法が提供され、このネットから、三次元網目構造が、(メタ)アクリレートの直接重合をあまり介すことなく生じるであろう。ここで、全体の状況(picture)は、明確であり、まず、歯窩洞の外側に単一ネットとして重合性大環状オリゴマーを予め構築しておき、次に、反応を制限して、充填された窩洞の内側で単一ネットを組立ててネットワークとすることである。この新たなアプローチの結果として、反応基を制限したために全体の収縮は低減される。しかしながら、環状性質により、架橋密度が容易に発展するため、必要な機械特性が著しく損なわれることはないであろう。加えて、かさ高い側鎖を有する新たなモノ(メタ)アクリレートは、機械的強度、重合収縮及び収縮応力に関するより良好なバランスをもたらす樹脂系を生成する大環状樹脂と組み合わせられた。最終的に、機械的強度及びまた取り扱い特性を確定する適切なガラス充填剤組成物も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
環状オリゴマー及び大環状オリゴマー対重合性大環状オリゴマー
GEの研究者が、環状カーボネートオリゴマーを製造する新たなアプローチを開発したため、様々な大環状オリゴマーが十分に調査される。例えば、米国特許第4,644,053号において、単一大環状化合物を合成する方法が開示されている。これにより、カーボネート、エステル、アミド、エーテル、イミド、スルフィド等を含む様々な大環状オリゴマーが製造されている。しかしながら、高温での開環反応が、これらの大環状オリゴマーの高分子量ポリマーへの転化を伴っていなければならない。開環しなければ、いずれの大環状オリゴマーもさらに重合することはできないであろう。
【0011】
単官能性樹脂、二官能性樹脂又は多官能性樹脂からデンドリマーまでの多くの光重合性樹脂が開発されているが、重合性基を有する大環状オリゴマーは報告されていない。米国特許第5,047,261号は、メタクリレートとの迅速な共重合のための5員環カーボネート基を含有する組成物を開示している。
【0012】
米国特許第5,962,703号は、ノルボネイル(norboneyl)基又はノルボナジエニル(norbonadienl)基を有する官能化二環式メタクリレートを開示している。米国特許第5,792,821号は、様々なメタクリレートが環状デキストリン(CD)に結合した重合性のCD(cyclidextrin)誘導体を開示している。より最近では、米国特許第6,043,361号が、重合性環状アリルスルフィド(sufides)が低収縮材料に使用されることを開示している。これらの環状に関連のある新たな樹脂は全て、本発明の範囲では除外される小さい環状サイズに限定されている。
【0013】
環形成反応は好ましくは高希釈条件で行われる。しかしながら、高希釈条件の効果は、商業発展において高希釈条件の可能性のある用途に限定されてしまう。幸い、この問題を解決する擬似高希釈技術が開発された。この技法は、本明細書中で、重合性大環状オリゴマーを製造するのに使用される。より詳細には、フリーラジカル重合性大環状オリゴマーが、擬似高希釈条件下で、反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体と、様々なカップリング剤との縮合反応を介して製造される。このような方法により、様々な大環状オリゴマーが、カーボネート、エステル、シロキサン、リン酸塩及び誘導体等(and et al derivatives)を与える任意の結合を介して形成される。他方で、通常、予備結合されたメタクリレート基のいずれの早期重合も避けるために、カップリングモノマーによる環形成のための緩和な反応を確実にするよう、縮合基を活性化しなければならない。一般的な反応スキームは、以下のように例示される。
【0014】
【化1】

A:任意の芳香族化合物若しくは脂肪族化合物又はその組み合わせの部位;
B:エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、カーボネート、ウレタン及び尿素等の任意の連結;
X:ヒドロキシル、カルボキシル等の任意の反応性基
Z:(メタ)アクリレート、ビニル、ビニルエーテル及びエポキシ等の重合性基
R:任意の芳香族化合物若しくは脂肪族化合物又はその組み合わせ
Y:アシル化(acylidied)、アシルアミド、ギ酸化(formated)、カルボナミド等の任意の活性基;
D:任意の芳香族化合物若しくは脂肪族化合物又はその組み合わせの部位;
【0015】
反応性モノマーは、合成することもできるし、市販もされている。第一級重合性基を含有していなくてもよいが、カップリング剤は、結果として得られる大環状オリゴマーの形成を保証する少なくとも1つのこのような重合性基を有して、さらにフリーラジカル重合性でなければならない。
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
BisGMAは、歯科用樹脂に広範に用いられるものの1つであり、2つのフリーラジカル重合性基、メタクリレート及び2つのヒドロキシル基を含有している。このため、BisGMAは重合性大環状オリゴマーの理想的な候補となるが、BisGMA異性体の存在がこのアプローチをより複雑にするであろう。スキームIIに示されるように、カルボニルジイミダゾール(CDI、1)を使用すると、BisGMA(2)中の第二級アルコールと選択的に反応し、活性化BisGMA、DIZ−BisGMA(3)を得た。これを単離して、DIZ−BisGMAの化学構造は、FITR及びNMRにより完全に断定した。Davis他による最近の報告によれば、CDI及びその中間体は驚くべきことに、様々な規定の分子配列形成が制御されていれば、同じ種類の第一級、第二級、第三級官能基に対する特異性を示すことができる[1〜5]。本発明において、本発明者らの概念は、CDIの同一の化学作用を使用すること、及びフリーラジカル重合性ジオールであるBisGMA中の2つの第二級ヒドロキシル基を選択的に活性化することである。さらにまた、結果として得られる前駆体であるDIZ−BisGMAを生成し、スキームIIIに示されるように、擬似高希釈条件下で様々な第一級ジオールと反応させて、複数の重合性メタクリレート基を有する大環状カーボネートオリゴマーを生成した。2つの反応物は、環状生成物の好ましい形成を保証するために、添加を緩徐且つ正確に制御する2つの液体ポンプを介して高希釈条件の系内に装入された。実際には、環状生成物が反応系内に蓄積されるため、最終濃度は、従来の高希釈条件(0.001M)よりかなり大きい0.02Mに達する可能性がある。しかしながら、この手法の重要な点は、供給を制御することによって反応物の低い初期濃度を維持することである。このため、この手法は、擬似高希釈(PHD)法と称される。以下の実施例は、様々な前駆体、大環状オリゴマー、新たな環状希釈剤、及びそれゆえ複合体を製造する詳細な手法を提示するであろう。
【実施例】
【0019】
〔実施例1〕
34.4gのDCIを、機械式攪拌器、冷却器及び窒素導入口を備えた1リットルの3つ口丸底フラスコ中に装入した。その後、200mlの塩化メチレンを加えてスラリーを形成した。140mlのBisGMA溶液(塩化メチレン中)をフラスコに導入すると、反応系は直ちに透明になった。反応を室温でさらに4時間行った後、これをメスフラスコに移した。さらに溶媒を加えて、最終容量を、次の大環状反応工程に必要な量である500mlにした。副生成物は次の環形成プロセス時にも生成し、また環形成に有害でもないため、この時点で前駆体から副生成物を単離する必要はない。試料は、FTIR分析用に最終溶液から取ることができる。通常、BisGMA中では、OH結合が全体的に消失することが望ましく、新たなカルボニルピークは、1,718〜1,720cm−1から1,765cm−1へとシフトした。前駆体を単離及び精製すれば、収量が得られる。
【0020】
〔実施例2〕
機械式攪拌器、冷却器及び二股液体導入口を備える4リットルの3つ口丸底フラスコをセットした。2つの液体導入口の管(arms)を、2つの反応物を500mlずつ反応容器内に速度を制御して送り出す2つの別個の液体ポンプに接続した。500mlの前駆体を1つの反応物として上記と同様に調製し、さらに500mlのTetraEG溶液(19.5g)(塩化メチレン中)を第2の反応物として調製した。その後、40.0gの炭酸カリウム、4.0gのテトラブチルアンモニウム臭化物、0.05gのBHT、及び2,000mlの塩化メチレンを反応容器内に室温で加えた。次に、2つの溶液を反応系内に1時間当たり80mlの速度で送り始めた。溶液全てを、約6〜6.5時間で系内に装入した。その後、反応をさらに10〜12時間続けた後、ろ過していずれの固体も取り除いた。溶媒部分を蒸発により取り除き(stripped off)、得られた溶液を希酸、塩基及び中性の水で数回抽出すると、生成物を精製することができる。続いて、抽出溶液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を全て取り除いた。透明で淡黄色のビスコース樹脂が得られる。FTIR分析により、1,740cm−1にシフトが戻ったカルボニルピーク、及び3,500〜3,800cm−1における少ないOH吸収によって環状カーボネートの形成が確認され、このため、ヒドロキシル末端基が全く存在しないか又は少なくともほとんど存在しないことを示唆する。また、NMR分析及びGPC分析により、環状構造の形成が裏付けられる。生成物は、異なるサイズを有する大環状オリゴマーの混合物であり、少量の直鎖状誘導体も明らかに存在する。大環状カーボネートオリゴマーの総収量は、95%より大きい値をとり得る。
【0021】
〔実施例3〜15〕
実施例2に示されるこの一般的な合成プロセスに従って、TetraEGの代わりに、種々のジオールを調査して、様々な大環状カーボネートオリゴマーを調製した。
【0022】
〔実施例16〕
実施例1に例示されるのと同様であるが、新たな反応性ジメタクリレートであるIPADMAをBisGMAの代わりに使用して、様々な活性化前駆体を形成し、これにより、新たな大環状カーボネートを調製した。
【0023】
〔実施例17〕
実施例1に例示されるのと同様であるが、リン酸三塩化物をBisGMAとの反応に使用して、活性化リン酸塩を生じさせ、次に、これを使用して重合性基を有する大環状リン酸塩(phonate)を形成した。
【0024】
〔実施例18〕
3.0gのDMAP及び98.2gのTCDCOHを、250mlのTHF及び250mlの塩化メチレン中に溶解した。次に、90mlのTEAをこの溶液中に加えた後、それを0〜5℃の氷浴中にセットした、機械式攪拌器、冷却器及び200mlの添加用(addition:滴下)漏斗を備えた1リットルの3つ口丸底フラスコに移した。その後、93.2gのMAA(塩化メチレン100ml中)を添加用漏斗に加えた。反応系中にMAA溶液の2〜3時間の滴下を開始した。反応温度を0〜5℃付近に維持した。MAA溶液を全て反応系中に装入した後、反応をさらに3〜4時間続けた。得られた反応溶液を希酸、塩基及び中性の溶液で抽出し、それを乾燥し、さらに蒸発による除去を行い(stripped)、透明な無色の液体を得た。この液体は、ジメタクリレートとモノメタクリレートとの混合物である。TCDCDMAとTCDCMAとの比率は、1:5〜1:2であり、より好ましくは1:3である。FTIR分析により、実際の比率を確認することができる。新たなカルボニルピークは、MAA中で1,778〜1,810cm−1から1,765cm−1へとシフトした。収量は、このTCDCMA/TCDCDMA混合物に関する。
【0025】
〔実施例19〕
実施例2に例示されるのと同様であるが、最終的に混合物を取り出す前(final strip mixture)に、TCDCMA/TCDCDMA混合物を、得られた大環状オリゴマー溶液中に加えることで、プロセスを改良した。この環状樹脂と希釈樹脂との重量比率は、約2:1に維持されていなければならない。これにより、溶媒の除去及び樹脂の安定性の増大が容易になるであろう。この樹脂混合物の粘度は、25℃で150〜200Pa・sの値をとることができる。
【0026】
〔実施例20〕
実施例19に例示されるのと同様であるが、得られた樹脂混合物をさらに10〜15%(wt/wt)のTCDCA(Aldrich)と配合することで、低収縮複合体のための適切な樹脂混合物を得る。この粘度は、25℃で50〜75Ps・sの範囲をとる。
【0027】
〔実施例21〕
CQ、EDAB、BHT及び他の必要な添加剤を上記の樹脂混合物と適宜混合した。
【0028】
〔実施例22〕
3つの異なるサイズ分布を有するガラス充填剤混合物を、60/20/20又はそれ以上、好ましくは55/30/15(媒体/粗粒子/微粒子)の比率で事前に混合した。
【0029】
〔実施例23〕
18〜20%の上述の樹脂混合物及び80〜82%のBAFG充填剤混合物から複合体ペーストを生成した。この重合収縮は、膨張計で1.10〜30%、ガスピクノメータで0.80〜1.20%の範囲であった。このペーストは凝縮可能であり、1,000g/mmの充填指数を有して優れた充填性を示した。ペーストは、2.1mmコンピューレ(compule)から99N(10kgf)の一般的な押出力で容易に押し出すことができる。ペーストは、300Mpaの圧縮強度、7,400Mpaの圧縮弾性率、110〜120Mpaの曲げ強度等の全体の機械的強度を調節し、曲げ弾性率は、9,900〜10,000MPaである。400Kサイクルの局部的磨耗指数は0.05である。最も重要な特徴は、750〜850ueのペーストの低硬化歪であり(id)、これはTPHの複合体(1,647)又はSureFilの複合体(1,865)の約半分である。
【0030】
〔比較例1〕
SureFilにより提供されるような同様の複合ペーストが、18〜20%の従来のNCOモノマー及び80〜81%のBAFG充填剤混合物から生成される。この複合ペーストは、膨張計で2.30〜2.20%、又はガスピクノメータで2.50%の重合収縮を有し、これは現在の実験的な複合体よりも100%超大きい。SureFilの複合ペーストは、800g/mmの充填指数を有している。複合ペーストはまた、340Mpaの圧縮強度、140Mpaの曲げ強度及び1,200Mpaの曲げ弾性率等の優れた機械特性を有する。400Kサイクルの局部的磨耗指数は0.02という低い値を示す。しかしながら、その硬化歪は1,865ueであり、これは実験的な複合体よりも130%大きい。このため、重合応力は、SureFilの複合ペーストでは2倍となることを意味する。
【0031】
〔比較例2〕
TPH Spectrumにより提供されるような別の複合ペーストは、22〜23%の従来のNCOモノマー及び77〜78%のBABG充填剤混合物から生成される。この複合ペーストは、膨張計で2.60〜2.80%、又はガスピクノメータで2.90%の重合収縮を有し、これは現在の実験的な複合体よりも100%超大きい。TPH Spectrumの複合ペーストは、充填可能な材料ではなく、さらに、380Mpaの圧縮強度、130Mpaの曲げ強度及び1,100Mpaの曲げ弾性率等の優れた機械特性を有する。400Kサイクルの局部的磨耗指数は0.06である。硬化歪は1,650ueであり、これは実験的な複合体よりも110%大きい。
【0032】
〔比較例3〕
別の複合ペーストは、実験的な複合体IIで示されるような、21〜22%の異なる従来の樹脂混合物、及び少量のナノ充填剤を含有する78%超のBABG充填剤混合物をベースとしている。この複合ペーストは、膨張計で1.60%、又はガスピクノメータで2.10%の重合収縮を有し、これは少なくとも、現在の実験的な複合体よりも50%大きい。複合ペーストは、あまり充填可能な材料ではなく、充填指数は650しかない。それでも、複合ペーストは、320Mpaの圧縮強度、110Mpaの曲げ強度及び9,000Mpaの曲げ弾性率等の良好な全体の機械的強度を示す。しかしながら、この硬化歪は1,120ueであり、これは現在の実験的な複合体よりも40%大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基として、少なくとも1つの(メタ)アクリレートを有する重合性環状オリゴマーを含む組成物の製造方法において、
該製造方法は、
(A)該少なくとも1つの(メタ)アクリレートを含む、反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体と;第一級ジオール、第二級アミン又は二価酸を含むカップリング剤と
または
(B)活性化カップリング剤と;反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体と
の縮合反応を介して、該重合性環状オリゴマーを製造することを含むことを特徴とする製造方法
【請求項2】
前記(A)又は(B)の反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体が、液体、結晶性固体、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記重合性環状オリゴマーは、下記構造式(1)で示される化合物である、請求項1または2に記載の製造方法。
【化1】

【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法で製造される組成物において、
該組成物は
(i)前記重合性環状オリゴマーを少なくとも30〜70モル%含有し、重合収縮の制御を実現する、または
(ii)希釈剤として、置換基を有するモノメタクリレートを少なくとも10〜30モル%含有し、重合応力の制御を実現する
ことを特徴とする組成物。
【請求項5】
前記組成物は修復歯科に使用することを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
修復歯科に用いる少なくとも1つの重合性基を有するフリーラジカル重合性環状オリゴマーの製造方法において、
該製造方法は
(i)反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体の結合基を下記のスキームで活性化させること、および
【化2】

YはAr、シクロヘキシル
XはO、COO
(ii)活性化された該反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体とカーボネート、エステル、シロキサン、またはリン酸塩の結合をもたらすカップリング剤との縮合反応を介して、フリーラジカル重合性環状オリゴマーを製造すること
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
前記前駆体が、液体、結晶性固体、またはそれらの組み合わせである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記カップリング剤が、第一級ジオール、第二級アミン又は二価酸である、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
修復歯科に用いる少なくとも1つの重合性基を有するフリーラジカル重合性環状オリゴマーにおいて、
該フリーラジカル重合性環状オリゴマーは、請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法で製造されることを特徴とするフリーラジカル重合性環状オリゴマー。
【請求項10】
修復歯科に用いる少なくとも1つの重合性基を有するフリーラジカル重合性環状オリゴマーの製造方法において、
該製造方法は
(i)反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体の結合基を下記のスキームで活性化させること、および
【化3】

(ii)活性化された該反応性で且つフリーラジカル重合性の前駆体とカーボネート、エステル、シロキサン、またはリン酸塩の結合をもたらすカップリング剤との縮合反応を介して、フリーラジカル重合性環状オリゴマーを製造すること
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記前駆体が、液体、結晶性固体、またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記カップリング剤が、第一級ジオール、第二級アミン又は二価酸である、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
修復歯科に用いる少なくとも1つの重合性基を有するフリーラジカル重合性環状オリゴマーにおいて、
該フリーラジカル重合性環状オリゴマーは、請求項10〜12のいずれか一項に記載の製造方法で製造されることを特徴とするフリーラジカル重合性環状オリゴマー。
【請求項14】
前記フリーラジカル重合性環状オリゴマーは修復歯科用の組成物の製造に使用することを特徴とする、請求項9または13に記載のフリーラジカル重合性環状オリゴマー。

【公開番号】特開2013−10763(P2013−10763A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171776(P2012−171776)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2007−516691(P2007−516691)の分割
【原出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】