説明

低周波近傍電磁界検出センサ、および遊技機

【課題】低周波近傍電磁界の接近により生じる近接スイッチの誤動作を抑制する。
【解決手段】高周波発振回路211は、高周波発振回路221と酷似した帯域の高周波信号を発振し、コイルL1は、低周波近傍電磁界の接近を電圧の誘起により検出し、コイルL1とコンデンサC1とからなるLC共振回路201は、遊技球検出部2のコイルL2とコンデンサC2とからなる共振回路202の共振周波数と、酷似した周波数となるように共振周波数が設定され、シールド部材21が、コイルL1の一部を開口し、感度調整抵抗R1により、高周波発振回路211のコンダクタンスを、LC共振回路201より大きくして、低周波近傍電磁界照射なしの場合、高周波発振回路211の発振を停止させ、照射ありの場合、発振させ、弁別回路212は、高周波発振回路211の発振を検出する。本発明は、遊技機に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波近傍電磁界検出センサ、および遊技機に関し、特に、遊技機に設けられた遊技球の通過を検出する近接スイッチに誤動作を生じさせる低周波近傍電磁界を、近接スイッチが誤動作する前のタイミングで検出できるようにした低周波近傍電磁界検出センサ、および遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機では、遊技球を検出する遊技球検出スイッチが複数搭載されており、遊技球が主要な入賞口、およびゲートを通過した場合、検出信号を制御回路に出力する。
【0003】
この遊技球検出スイッチにおける主流は、直流2線式の近接スイッチである。直流2線式の近接スイッチは、2線式の開放、または閉塞動作の形態で動作することにより、有接点スイッチと同じイメージで使用することができ、さらに、金属球を非接触で検出するため、耐久性に優れるといった優位性が評価されていることから、他原理を用いた遊技球検出スイッチより多用されている。
【0004】
しかしながら、近接スイッチは、電子回路により構成されていることから、この電子回路であるという構成により生じる弱点を突く不正行為が発覚したことが過去にはあった。 例えば、遊技者が不正目的で、トランシーバや携帯電話をパチンコ遊技機に故意に接近させることにより、電波をパチンコ遊技機に対して照射し、遊技球検出スイッチが、電波により機能障害に陥り、賞球のカウントが不正に操作されてしまうことがあった。
【0005】
そこで、前述の機能障害発生以前に電波を検出する技術として、電波センサをパチンコ遊技機毎に設置し、プリント基板のパターンにてアンテナを形成し、フェライトコアで磁束集中を図ることで、所望感度を確保することにより、遊技盤面に向けて照射された不正電波を検出するが、携帯電話の発信電波などでは検出動作を停止させるべく、LC直列共振回路にて不感帯域を設定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−222959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近の研究により、パチンコ遊技機の金属部分に重畳している、比較的低周波の交流ノイズにより、遊技球検出スイッチが、機能障害を起こす事象が認識されている。この交流ノイズは、遊技球検出スイッチに設けられたLC共振回路の共振周波数近傍の帯域で顕著となり、自然発生したノイズ帯域のマッチングの問題となる。一般的にLC共振回路の共振周波数は、500khz乃至1.2Mhzに設定されるが、この共振周波数の帯域は、電波帯域より低い低周波近傍電磁界領域の帯域に属する。実際、上述した従来の電波センサの検出帯域は、50Mhz乃至2Ghzであり、帯域不一致による検出もれが生じる恐れがあった。
【0008】
また、遊技球検出スイッチの低周波近傍電磁界の反応領域と、従来の電波センサの検出領域が必ずしも一致せず、監視漏れが発生する恐れがあった。より詳細には、遊技球検出スイッチの貫通コイルが有する指向性に起因するものであり、貫通口鉛直方向に高感度であっても、側面方向は不感領域になる場合があった。従って、遊技球検出方向では感度不足となる一方で、検出不要な方向から発生した、携帯電話など、悪意のない電磁波を検知するなどして、トラブルが発生してしまう恐れがあった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、パチンコ遊技機内部に発生する低周波近傍電磁界によって、遊技球検出スイッチに機能障害が生じる前のタイミングで、低周波近傍電磁界を検出できるようにすることにより、低周波近傍電磁界を適切に監視できるようにし、遊技球検出スイッチの機能障害を抑制できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の低周波近傍電磁界検出センサは、パチンコ遊技機に搭載され、第1の高周波発振回路を備えた、遊技球を検出する近接スイッチと併用される低周波近傍電磁界検出センサであって、前記第1の高周波発振回路と酷似した帯域の高周波信号を発振する第2の高周波発振回路と、低周波近傍電磁界の到来を電圧の誘起により検出するコイルと、前記コイルを含み、前記近接スイッチの共振周波数と、酷似した周波数となるように共振周波数が設定されたLC共振回路と、前記コイル面の一部を包囲し、かつ、前記一部と異なる他の一部を開口したシールド部材と、前記第2の高周波発振回路の発振状態を設定する発振停止手段と、前記第2の高周波発振回路の発振を検出する発振検出手段とを含み、前記発振停止手段は、前記低周波近傍電磁界が照射されていない場合、前記第2の高周波発振回路の発振を停止し、前記低周波近傍電磁界が照射されている場合、前記第2の高周波発振回路を発振させる。
【0011】
前記シールド部材の開口方向により、前記低周波近傍電磁界検出センサの検出指向性を設定すると共に、開口部の大きさによって、前記低周波近傍電磁界検出センサの検出領域を設定することにより、前記低周波近傍電磁界検出センサの検出領域は、前記遊技球を検出する近接スイッチの、前記低周波近傍電磁界による誤動作が生じる領域を包含するようにさせることができる。
【0012】
前記LC共振回路には、前記遊技球を検出する近接スイッチが有する、LC 共振回路のコイルの誘導成分よりも大きなコイル、および、前記遊技球を検出する近接スイッチが有するコンデンサよりも容量成分の小さなコンデンサを含ませるようにすると共に、前記LC共振回路のコイルおよびコンデンサによる共振周波数は、前記遊技球を検出する近接スイッチが有するLC共振回路のコイルおよびコンデンサによる共振周波数と酷似するよう設定されるようにすることができる。
【0013】
前記発振停止手段には、前記第2の高周波発振回路を発振停止とさせるように負性コンダクタンスを設定させるようにすることができ、感度調整抵抗器の定数設定により負性コンダクタンスを設定させるようにすることができる。
【0014】
前記発振停止手段には、前記コイルの検出領域に、金属塊を固定設置することにより、前記高周波発振回路を発振停止とさせるように負性コンダクタンスを設定させるようにすることができる。
【0015】
本発明の遊技機は、請求項1乃至5のいずれかに記載の低周波近傍電磁界検出センサと、前記遊技球を検出する近接スイッチとを含ませるようにすることができる。
【0016】
低周波近傍電磁界検出センサが近傍電磁波の到来を検知した際、その出力信号に基づいて、検出判定結果を遊技機内部、もしくは遊技機外部に報知する報知手段をさらに含ませるようにすることができる。
【0017】
前記低周波近傍電磁界検出センサは、前記遊技機の盤面に配置された、金属部材、もしくは金属メッキが施された構造物近傍に配置されるようにすることができる。
【0018】
前記遊技球を検出する近接スイッチには、遊技球の通過検知を行なう第1の貫通口を含ませるようにすることができ、前記近傍電磁界検出センサには、前記第1の貫通口と略同形状の第2の貫通口を含ませるようにすることができ、前記第1の貫通口、および前記第2の貫通口は、それぞれの中心線が同軸上に配置されるようにすることができる。
【0019】
本発明の一側面の低周波近傍電磁界検出センサとは、例えば、異常検出部であり、パチンコ遊技機に搭載される近接スイッチとは、例えば、遊技球検出部の近接スイッチであり、第1の高周波発振回路とは、例えば、遊技球検出部の高周波発振回路であり、前記第1の高周波発振回路と酷似した帯域の高周波信号を発振する第2の高周波発振回路とは、例えば、異常検出部の高周波発振回路であり、低周波近傍電磁界の到来を電圧の誘起により検出するコイルとは、異常検出部のコイルであり、前記コイルを含み、前記近接スイッチの共振周波数と、酷似した周波数となるように共振周波数が設定されたLC共振回路とは、異常検出部のコイルとコンデンサとからなるLC共振回路であり、前記コイル面の一部を包囲し、かつ、前記一部と異なる他の一部を開口したシールド部材とは、例えば、異常検出部のシールド部材であり、前記第2の高周波発振回路の発振状態を設定する発振停止手段とは、例えば、異常検出部の高周波発振回路のコンダクタンスを調整する調整抵抗であり、前記第2の高周波発振回路の発振を検出する発振検出手段とは、例えば、弁別回路であり、前記発振停止手段である調整抵抗により、前記低周波近傍電磁界が照射されていない場合、前記第2の高周波発振回路の発振を停止し、前記低周波近傍電磁界が照射されている場合、前記第2の高周波発振回路を発振させる。
【0020】
このような構成により、近接スイッチに低周波近傍電磁界が到来する際、シールド部材の構成により、近接スイッチが低周波近傍電磁界により影響を受ける範囲を包含するように低周波近傍電磁界検出領域を設定することが可能となり、さらに、発振停止手段である調整抵抗の抵抗値を設定することにより、低周波近傍電磁界が照射されていない場合、異常検出部における高周波発振回路の発振を停止し、低周波近傍電磁界が照射されている場合、異常検出部における高周波発振回路を発振させるようにすることにより、高周波発振回路の発振を検出することで、近接スイッチに低周波近傍電磁界による誤動作が生じる前のタイミングにおいて、近接スイッチに低周波近傍電磁界が影響していることを検出することが可能となる。
【0021】
結果として、低周波近傍磁界の影響により、遊技球検出スイッチである近接スイッチが誤動作する前のタイミングにおいて、低周波近傍電磁界の到来を検出した段階で、近接スイッチにおける低周波近傍電磁界の到来により生じる誤動作を抑制することが可能となり、遊技機に対する不正を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、近接スイッチに到来する低周波近傍電磁界を適切に監視することが可能になると共に、低周波近傍電磁界の接近により生じる近接スイッチの誤動作を抑制することが可能となり、遊技機に対する不正を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した低周波近傍電磁界センサからなる異常検出部を備えたパチンコ遊技機の構成例を説明する図である。
【図2】図1の異常検出部の構成例を説明する図である。
【図3】図1の遊技球検出部および異常検出部の構成例を説明する側面断面図である。
【図4】遊技球検出部および異常検出部の構成例を説明するブロック図である。
【図5】遊技球検出部および異常検出部に対して低周波近傍電磁界により影響を受ける範囲を説明する図である。
【図6】異常検出処理を説明するフローチャートである。
【図7】異常検出部のその他の構成例を説明する図である。
【図8】異常検出部のその他の構成例を説明する図である。
【図9】遊技球検出部および異常検出部を一体の構成とした遊技球検出スイッチの構成例を示す図である。
【図10】図9のコイルスプールの構成例を示す図である。
【図11】図9の遊技球検出部および異常検出部のコンダクタンスの設定例を示す図である。
【図12】図9の遊技球検出スイッチの動作を説明する図である。
【図13】図9の遊技球検出スイッチの動作を説明する図である。
【図14】遊技球検出部および異常検出部を一体の構成とした遊技球検出スイッチのその他の構成例を示す図である。
【図15】図14の遊技球検出スイッチの動作を説明する図である。
【図16】図9のコイルスプールのその他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、発明の詳細な説明に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、発明の詳細な説明に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の詳細な説明中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0025】
すなわち、本発明の一側面の低周波近傍電磁界検出センサ(例えば、図4の異常検出部2)は、パチンコ遊技機に搭載され、第1の高周波発振回路(例えば、図4の高周波発振回路221)を備えた、遊技球を検出する近接スイッチ(例えば、図4の遊技球検出部2)と併用される低周波近傍電磁界検出センサであって、前記第1の高周波発振回路と酷似した帯域の高周波信号を発振する第2の高周波発振回路(例えば、図4の高周波発振回路211)と、低周波近傍電磁界の到来を電圧の誘起により検出するコイル(例えば、図4のコイルL1)と、前記コイルを含み、前記近接スイッチの共振周波数と、酷似した周波数となるように共振周波数が設定されたLC共振回路(例えば、図4のLC共振回路201)と、前記コイル面の一部を包囲し、かつ、前記一部と異なる他の一部を開口したシールド部材(例えば、図4のシールド部材21)と、前記第2の高周波発振回路の発振状態を設定する発振停止手段(例えば、図4の感度調整抵抗R1)と、前記第2の高周波発振回路の発振を検出する発振検出手段(例えば、図4の弁別回路212)とを含み、前記発振停止手段は、前記低周波近傍電磁界が照射されていない場合、前記第2の高周波発振回路の発振を停止し、前記低周波近傍電磁界が照射されている場合、前記第2の高周波発振回路を発振させる。
【0026】
前記LC共振回路には、前記遊技球を検出する近接スイッチが有する、LC 共振回路のコイル(例えば、図4のコイルL2)の誘導成分よりも大きなコイル(例えば、図4のコイルL1)、および、前記遊技球を検出する近接スイッチが有するコンデンサ(例えば、図4のコンデンサC2)よりも容量成分の小さなコンデンサ(例えば、図4のコンデンサC1)を含ませるようにすると共に、前記LC共振回路のコイルおよびコンデンサによる共振周波数は、前記遊技球を検出する近接スイッチが有するLC共振回路のコイルおよびコンデンサによる共振周波数と酷似するよう設定されるようにすることができる。
【0027】
前記発振停止手段(例えば、図4の感度調整抵抗R1)には、前記第2の高周波発振回路を発振停止とさせるように負性コンダクタンスを設定させるようにすることができ、感度調整抵抗器の定数設定により負性コンダクタンスを設定させるようにすることができる。
【0028】
前記発振停止手段には、前記コイルの検出領域に、金属塊(例えば、図7の金属塊501)を固定設置することにより、前記高周波発振回路を発振停止とさせるように負性コンダクタンスを設定させるようにすることができる。
【0029】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(遊技球検出部および異常検出部の貫通口を同軸に配置する例)
2.第2の実施の形態(遊技球検出部および異常検出部を別途配置する例)
3.第3の実施の形態(遊技球検出部および異常検出部を一体構造とした遊技球検出スイッチの例)
4.第4の実施の形態(ダイオードによるコイルの相互干渉対策の例)
5.第5の実施の形態(シールド部材によるコイルの相互干渉対策の例)
【0030】
<1.第1の実施の形態>
[本発明を適用した低周波近傍電磁界センサからなる異常検出部を備えたパチンコ遊技機の一実施の形態の構成例]
図1は、本発明を適用した低周波近傍電磁界センサからなる異常検出部を備えたパチンコ遊技機における遊技球の通過を検出する部位の構成例を示している。すなわち、図1の遊技球3は、例えば、いわゆるチューリップと称されているチャッカなどに投入されたり、払い出されるなど、計数が必要とされる。
【0031】
遊技球検出部2は、遊技球3と略同径の貫通口2aが設けられている。また、異常検出部1は、遊技球検出部2の貫通口2aと同軸上に、略同径の貫通口1aが設けられている。
【0032】
図中の最上部の遊技球3が、遊技球検出部2の貫通口2aを通過すると、遊技球検出部2は、遊技球3の通過を検出し、対応する信号を出力する。また、遊技球3は、遊技球検出部2の貫通口2aを通過すると、異常検出部1の貫通口1aを通過する。異常検出部1は、貫通口1aを設けているが、遊技球3を通過させるのみであり、遊技球3の通過は検出しない。異常検出部1は、低周波近傍電磁界の到来を検出し、これを検出すると、対応する信号を出力する。
【0033】
[遊技球検出部および異常検出部の構成例]
次に、図2,図3を参照して、異常検出部1の貫通口1aの周辺の構成例について説明する。
【0034】
図2で示されるように、貫通口1aは、具体的には、円筒状のコイルスプール11により構成されている。図2,図3で示されるように、コイルスプール11は、外側側面の外周方向に溝が設けられており、その溝に沿って銅線が複数回環状に巻き付けられることにより、コイルL1が埋め込まれた構造となっている。シールド部材21は、異常検出部1の本体底部に設けられ、環状であって、かつ、上方に、略コイルスプールと同幅の環状の溝が設けられた構造とされており、この溝にコイルスプール11を嵌め込むことにより、コイルL1を包囲し、電磁界を遮蔽する。より詳細には、シールド部材21の溝は、コイルスプール11の円筒状底部と略同径、かつ、同形であり、コイルスプール11の円筒状底部が、シールド部材21の溝に嵌まり込む構造となっている。
【0035】
また、図2には図示されていないが、遊技球検出部2の貫通口2aの周辺の構造についても、基本的には、貫通口1aの周辺の構造と同様に構成されている。すなわち、貫通口2aの周辺の構成は、コイルスプール11、シールド部材21、およびコイルL1に代えて、コイルスプール111、シールド部材121、およびコイルL2が設けられている。ただし、シールド部材121は、シールド部材21に比べて、円筒状外側側面の高さが高く、コイルL2を外周側から略上部まで囲い込む構成となっており、コイルL2のコイル巻き線の軸方向に対して開口部が小さくなるように構成されている。換言すれば、シールド部材21は、シールド部材121よりも高さ方向に対して低い位置までしか設けられておらず、コイルL1の外周側の露出部分が広く、開口部が大きくなるように構成されている。また、コイルL1は、コイルL2に対して、巻き線の巻き数が多い構造とされている。
【0036】
図3で示されるように、異常検出部1のコイルスプール11の図中右方向には、基板31上に信号処理部32が設けられている。また、同様に、遊技球検出部2のコイルスプール111の図中右方向には、基板131上に、信号処理部132が設けられている。信号処理部32は、コイルL1により誘起される電圧に基づいて、低周波近傍電磁界の到来を検出し、検出結果に対応する信号を制御部301(図4)に供給する。信号処理部132は、コイルL2により誘起される電圧に基づいて、遊技球の通過を検出し、検出結果に対応する信号を制御部301(図4)に供給する。
【0037】
[異常検出部および遊技球検出部により実現される機能構成例]
次に、図4を参照して、異常検出部1および遊技球検出部2により実現される機能について説明する。
【0038】
異常検出部1は、アンテナとして機能するコイルL1、および信号処理部32より構成されている。信号処理部32は、コンデンサC1、高周波発振回路211、弁別回路212、および出力回路213より構成されており、コイルL1の信号に基づいて、低周波近傍電磁界を検出し、検出結果を制御部301に供給する。より詳細には、コンデンサC1は、その両端がコイルL1と並列接続され、さらに、上位電圧となる端部は、高周波発振回路211に接続され、下位電圧となる端部は接地されている。また、高周波発振回路211は、電源より電力供給を受けると共に接地されており、さらに、感度調整抵抗R1を介して接地されており、発振出力を弁別回路212に出力する。弁別回路212は、電源より電力供給を受けると共に接地されており、高周波発振回路211より供給される発振出力と所定の閾値とを比較し、比較結果を出力回路213に供給する。出力回路213は、電源より電力供給を受けると共に接地されており、弁別回路212の比較結果に基づいて、低周波近傍電磁界を検出し、検出結果を信号V1として制御部301に出力する。
【0039】
尚、高周波発振回路211は、通常状態において発振停止状態に設定されており、低周波近傍電磁界にコイルL1が晒されたときにのみ発振状態に移行するように設定されている。より詳細には、LC共振回路201のコンダクタンスgL1と、高周波発振回路211のコンダクタンスgi1とは、ナイキストの発振条件に基づいて、以下の式(1)の場合、高周波発振回路211は発振停止状態となり、式(2)の場合、高周波発振回路211は常時発振状態となる。
【0040】
gL1>gi1
・・・(1)
【0041】
gL1<gi1
・・・(2)
【0042】
そこで、感度調整抵抗R1の抵抗値の調整により、高周波発振回路211のコンダクタンスgi1が、LC共振回路201のコンダクタンスgL1よりも小さくなるように、すなわち、感度調整抵抗R1を大きめに設定し、高周波発振回路211のコンダクタンスgi1を小さめに設定する。この結果、上述した式(1)の関係が維持できるように構成されるので、低周波近傍電磁界にコイルL1が晒されていない状態においては、高周波発振回路211が発振停止状態となる。このとき、高周波発振回路211は発振動作を行っていないため、弁別回路212には、閾値よりも小さな値が供給されることになるので、弁別回路212は、発振動作がなされていないことを示す信号を出力回路213に供給する。結果として、出力回路213は、低周波近傍電磁界に晒されていないことを示す信号を制御部301に出力する。
【0043】
一方、コイルL1は、低周波近傍電磁界に晒されることにより、正弦波電圧を誘起する。このとき、LC共振回路201の共振点近傍においては、コンダクタンスgL1が下降し、上述した式(1)の状態から式(2)の状態に移行するので、高周波発振回路211は、定常発振を開始し、発振出力を弁別回路212に出力する。このとき、弁別回路212には、閾値よりも大きな値が供給されることになるので、弁別回路212は、発振動作がなされていることを示す信号を出力回路213に供給する。結果として、出力回路213は、低周波近傍電磁界に晒されていることを示す信号を制御部301に出力する。
【0044】
また、遊技球検出部2は、異常検出部1と略同様に構成されており、コイルL2、および信号処理部132より構成されている。信号処理部132は、コンデンサC2、高周波発振回路221、弁別回路222、および出力回路223より構成されており、コイルL2の信号に基づいて、遊技球3の通過を検出し、検出結果を制御部301に供給する。より詳細には、コンデンサC2は、その両端がコイルL2と並列接続され、さらに、上位電圧となる端部は、高周波発振回路221に接続され、下位電圧となる端部は接地されている。また、高周波発振回路221は、電源より電力供給を受けると共に接地されており、さらに、感度調整抵抗R2を介して接地されており、発振出力を弁別回路222に出力する。弁別回路222は、電源より電力供給を受けると共に接地されており、高周波発振回路221より供給される発振出力と所定の閾値とを比較し、比較結果を出力回路223に供給する。出力回路223は、電源より電力供給を受けると共に接地されており、弁別回路222の比較結果に基づいて、遊技球3の通過を検出し、検出結果を信号V2として制御部301に出力する。
【0045】
尚、高周波発振回路221は、遊技球3が通過状態において発振停止状態に設定されており、遊技球3が通過していないときにのみ発振状態に移行するように設定されている。より詳細には、LC共振回路202のコンダクタンスgL2と、高周波発振回路221のコンダクタンスgi2とは、ナイキストの発振条件に基づいて、以下の式(3)の場合、高周波発振回路221は発振停止状態となり、式(4)の場合、高周波発振回路221は常時発振状態となる。
【0046】
gL2>gi2
・・・(3)
【0047】
gL2<gi2
・・・(4)
【0048】
そこで、感度調整抵抗R2の抵抗値の調整により、高周波発振回路221のコンダクタンスgi2が、LC共振回路202のコンダクタンスgL2よりも小さくなるように、すなわち、感度調整抵抗R2を小さめに設定し、高周波発振回路221のコンダクタンスgi2を大きめに設定する。この結果、上述した式(4)の関係が維持できるように構成されるので、遊技球3が通過していない状態においては、高周波発振回路221が常時発振状態となる。このとき、高周波発振回路221は発振動作を行っているので、弁別回路222には、閾値よりも大きな値が供給されることになり、弁別回路222は、発振動作がなされていることを示す信号を出力回路223に供給する。結果として、出力回路223は、遊技球3が通過していないことを示す信号を制御部301に出力する。
【0049】
一方、コイルL2は、遊技球3が通過されることにより、コンダクタンスgL2が上昇し、上述した式(4)の状態から式(3)の状態に移行するので、高周波発振回路221は、発振を停止し、発振出力を弁別回路222に出力する。このとき、弁別回路212には、閾値よりも小さな値が供給されることになるので、弁別回路222は、発振動作がなされていないことを示す信号を出力回路213に供給する。結果として、出力回路213は、遊技球3が通過していないことを示す信号を制御部301に出力する。
【0050】
また、コイルL1の巻き数は、コイルL2の巻き数よりも多い巻き数となっているが、LC共振回路201,202の共振周波数を統一するため、コンデンサC2の静電容量は、コンデンサC1よりも小さく設定されており、以下の式(5)の関係を満たす関係となっている。
【0051】
L1×C1=L2×C2
・・・(5)
【0052】
ここで、L1,L2は、それぞれコイルL1,L2のインダクタンスであり、C1,C2は、コンデンサC1,C2のそれぞれの静電容量である。結果として、LC共振回路201,202の共振周波数が相互に酷似した値に設定されるため、遊技球検出部2に影響する誘導電磁波と同帯域の誘導電磁波に対して確実に異常を検出できる他、本来、遊技球検出部2に影響しない電波については、確実に非検出とすることができるため、他の要因による異常状態を誤検出し難い構成とすることができる。
【0053】
さらに、シールド部材21,121は、図3,図4で示されるように、シールド部材21によりコイルL1を遮蔽している領域よりも、シールド部材121によりコイルL2を遮蔽している領域の方が広く設定されている。また、シールド部材21,121により遮蔽されていない領域は、貫通口1a,2aが同軸に設けられている点からも、その指向性が共通となるように設定されている。尚、図4において、点線の矢印は、外界の電磁界の到来方向を示している。
【0054】
このような構成により、コイルL1の方が、コイルL2よりも巻き数が多く、かつ、コイルL1のシールド部材21による開口部の方が、コイルL2のシールド部材121による開口部よりも広く設定されているため、図5で示されるように、異常検出部1により低周波近傍電磁界を検出可能な範囲Z2−1,Z2−2は、遊技球検出部2の低周波近傍電磁界により影響を受ける範囲Z1−1,Z1−2を、完全に包含するように、構成することができ、異常検出部1の感度を遊技球検出部2よりも高めることが可能となる。
【0055】
尚、図5は、異常検出部1および遊技球検出部2を上下に配置し、それを側面方向から見たときの、異常検出部1により低周波近傍電磁界を検出可能な、一点鎖線で示された範囲Z2−1,Z2−2、および遊技球検出部2が低周波近傍電磁界により影響を受ける、点線で示された範囲Z1−1,Z1−2を示す図である。ここで、図5において、図中上方の範囲Z1−1,Z2−1がいずれも、範囲Z1−2,Z2−2よりも大きな範囲となっているのは、シールド部材21,121がいずれも上方に対して開口部が広く設定されているためである。また、異常検出部1により低周波近傍電磁界を検出可能な範囲Z2−1,Z2−2と、遊技球検出部2が低周波近傍電磁界により影響を受ける範囲Z1−1,Z1−2とが、略相似形に構成され、さらに、同軸に構成されているのは、シールド部材21,121の開口部の指向性が統一されており、その開口部の大きさのみが異なるからである。
【0056】
結果として、異常検出部1は、遊技球検出部2が低周波近傍電磁界による影響を受ける前のタイミングで、低周波近傍電磁界を検出することが可能となるので、遊技球検出部2による誤動作が生じる前のタイミングで、低周波近傍電磁界による影響を考慮した対応を取ることが可能となり、低周波近傍電磁界を用いた不正行為を未然に抑制することが可能となる。
【0057】
[異常検出処理]
次に、図6のフローチャートを参照して、異常検出処理について説明する。
【0058】
ステップS1において、弁別回路212は、高周波発振回路211の発振出力の振幅が所定値よりも大きいか否かを判定する。すなわち、低周波近傍電磁界がコイルL1に影響していない場合、正弦波電圧を誘起しないため、LC共振回路201による共振作用が生じず、高周波発振回路211が発振出力をしない。このため、高周波発振回路211の発振出力の振幅が所定値よりも大きくならないので、ステップS1の処理が繰り返される。このとき、弁別回路212は、出力回路213に、例えば、接地電位のLow信号を出力している状態となる。結果として、この間、出力回路213は、制御部301に対して低周波近傍電磁界を検出していないことを示す信号V1として、例えば、接地電位と同値のLow信号を出力する。
【0059】
一方、ステップS1において、低周波近傍電磁界がコイルL1に影響している場合、正弦波電圧を誘起することになるため、LC共振回路201による共振作用が生じるため、高周波発振回路211が発振出力を開始する。このため、高周波発振回路211の発振出力の振幅が所定値よりも大きくなるので、処理は、ステップS2に進む。
【0060】
ステップS2において、弁別回路212は、所定値よりも高い振幅を検出し、異常状態である、低周波近傍電磁界が検出されていることを示す信号V1として、例えば、電源電圧と同値のHi信号を出力回路213に供給する。
【0061】
ステップS3において、出力回路213は、制御部301に対して異常状態である低周波近傍電磁界を検出している状態であることを示す信号として、例えば、電源電位のHi信号を出力する。
【0062】
ステップS11において、制御部301は、異常検出部1より異常が検出されていることを示す信号V1が供給されてきているか否かを判定し、異常を示す信号が供給されてくるまで、その処理を繰り返す。
【0063】
そして、ステップS11において、例えば、ステップS3の処理により、異常状態である、低周波近傍電磁界が検出されていることを示す信号V1が供給されてきた場合、ステップS12において、制御部301は、遊技球検出部2より供給されてくる信号V2を、全て無効な信号に固定する。すなわち、低周波近傍電磁界が検出されている状態における遊技球検出部2における動作は、例えば、悪意を持った第三者により低周波近傍電磁界が発生されている異常動作であるものとみなし、その間に遊技球検出部2より出力されてくる信号V2を無効な信号であるものとして扱う。または、制御部301は、遊技球検出部2より出力されてくる信号V2に対応付けて、それらが低周波近傍電磁界が検出された条件下で供給されてきた信号であることを識別できるように記録し、後に、異常状態における遊技球検出結果であることを確認できる情報を記録する。
【0064】
ステップS13において、制御部301は、図4における発報部301aを制御して、LCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示機能や、スピーカなどの音声出力機能などを備えた発報出力部302より、画像、または音声により遊技機内部、または、遊技機外部に対して、低周波近傍電磁界が検出されていることを示す情報を提示する。
【0065】
以上の処理により、遊技球検出部2に対して影響する可能性の高い低周波近傍電磁界を、遊技球検出部2に対して影響する前のタイミングにおいて検出することが可能となる。また、低周波近傍電磁界が検出されると、低周波近傍電磁界による異常が発生したことが報知されると共に、低周波近傍電磁界による影響を受けている、または、今後影響を受ける可能性の高い遊技球検出部2の遊技球の検出結果に対して、信頼度が低い検出結果であることを記録させたり、または、検出結果を無視するといった対策をとることが可能となり、低周波近傍電磁界を用いた不正行為を抑制することが可能となる。
【0066】
<2.第2の実施の形態>
[遊技球検出部および異常検出部を別途配置する構成例]
以上においては、遊技球検出部2の貫通口2aと同様に、異常検出部1においても貫通口1aを設けて、遊技球3を通過させる構成例について説明してきたが、例えば、図7で示されるように、異常検出部1の貫通口1aに対して、貫通口1aと略同径の金属塊501を挿入し、LC共振回路201のコンダクタンスgL1を強制的に大きくし、ナイキストの発振条件における上述した式(1)を満たすことにより、低周波近傍電磁界に晒されていない条件において、高周波発振回路211を発振停止状態に設定するようにしてもよい。
【0067】
このようにする場合、異常検出部1には、貫通口1aがなくなるので、遊技球3を通過させることができない構成となる。そこで、このような場合、例えば、図8で示されるように、遊技球検出部2の真横であって、異常を検出可能な範囲が、遊技球検出部2の低周波近傍電磁界による影響を受ける範囲を包含することができる位置、または、略包含することができる位置に、異常検出部1を配置するようにしてもよい。
【0068】
また、遊技機盤面上には、金属製の遊技球の発射レール、フレームグランド、または、装飾用の金属メッキが施された成形品などが存在するため、低周波近傍電磁界が照射されると、照射ポイントにおいて渦電流が発生し、2次電磁波が発生する。そこで、これらの2次電磁波が検出できるように異常検出部1を配置するようにすることで、検出範囲をさらに拡大させることが可能となり、より確実に低周波近傍電磁界を検出することが可能となるので、不正行為を抑制することが可能となる。
【0069】
<3.第3の実施の形態>
[遊技球検出部および異常検出部を一体構造にする構成例]
以上においては、異常検出部1および遊技球検出部2をそれぞれ別体として構成し、それらを組み合わせて利用する例について説明してきたが、それらを一体とした構造とし、コイルスプールを共用にするようにしてもよい。
【0070】
図9は、異常検出部1および遊技球検出部2を一体構造とした遊技球検出スイッチの構成例を示している。尚、図9の遊技球検出スイッチ401において、図4における異常検出部1、および遊技球検出部2と同一の機能を備えた構成については、同一の符号を付しており、その説明は適宜省略するものとする。すなわち、図9の遊技球検出スイッチ401において、図4の異常検出部1、および遊技球検出部2と異なる点は、共振回路201,202に代えて、共振回路411,412が設けられており、シールド部材21,121が取り除かれている点である。尚、環境変化対策など、シールド部材が必要となることもあるが、本構成例でのシールド部材の装着例については、図16を参照して後述する。
【0071】
共振回路411,412は、それぞれコイルL11およびコンデンサC11、並びに、コイルL12,およびコンデンサC12より構成されている。また、図10で示されるように、コイルL11,L12は、いずれも共用のコイルスプール421に巻き付けられている。コイルスプール421は、図1における貫通口1a,2aと略同径の貫通口421aを備えており、遊技球3を通過させる。
【0072】
コイルL11,L12およびコンデンサC11,C12の構造および機能については、コイルL1,L2およびコンデンサC1,C2と同一であるが、インダクタンスおよび静電容量、並びに、対応する発振回路211,221のそれぞれの感度調整抵抗R1,R2の設定方法が異なる。
【0073】
すなわち、共振回路411,412のコンダクタンスgL1,gL2と、遊技球3と貫通口421aの貫通面の距離dとの関係は、いずれも図11の曲線gLで示される関係となる。
【0074】
図11で示されるように、共振回路411,412のコンダクタンスgL1,gL2は、距離dが小さく、貫通口421aに接近するに従って大きくなり、距離dが大きく、離れるに従って小さくなる。そこで、異常検出部1においては、感度調整抵抗R1の抵抗値を大きめに設定し、発振回路211のコンダクタンスgi1を小さくして、遊技球3と貫通面との距離に関わらず、式(1)が維持され、発振回路211が、発振停止状態にされるように設定する。
【0075】
一方、遊技球検出部2においては、感度調整抵抗R2の抵抗値を小さめに設定し、遊技球と貫通面との距離が所定値d1となるとき、式(3)と式(4)とが切り替わって、発振回路221が、発振停止状態と常時発振状態とが切り替わるように設定する。
【0076】
この結果、例えば、低周波近傍電磁界に晒されていない場合、遊技球検出部2の共振回路411の入力電圧Vxは、遊技球3の貫通口421aの通過の有無により、図12の最上段で示されるように変化する。すなわち、遊技球3が通過しない時刻t0乃至t1,t2乃至t3、およびt4以降においては、上述した式(4)の状態が維持されて常時発振状態となる。このため、弁別回路222における弁別電圧を、入力電圧Vxの波高値と0V電圧の中間電位である電圧V12に設定すれば、弁別電圧より低くなるとき(図12においては電圧V12が負側に設定されている)、弁別回路222は、対応するHiの弁別結果を出力する。これに応じて、出力回路223は、信号V2を遊技球3が通過していないことを示すHiの信号として出力する。
【0077】
逆に、遊技球3が通過する時刻t1乃至t2,t3乃至t4においては、上述した式(3)の状態が維持されて発振停止状態となる。このため、図12の上から2段目で示されるように、弁別電位である電圧V12より低くならないため、弁別回路222は、対応するLowの弁別結果を出力する。これに応じて、出力回路223は、信号V2を遊技球3が通過していることを示すLowの信号として出力する。
【0078】
このとき、異常検出部1においては、コイルL12が、コイルL11の誘起電圧に起因する微弱な相互干渉波を発振するため、図12の3段目で示されるように、発振回路211の入力電圧Vyが、入力電圧Vxに略同期して、高周波信号を発生する。しかしながら、この波高値は、小さいので、この波高値よりも絶対値において大きな電圧V11を弁別回路212の弁別閾値として設定することにより、弁別回路212は、いずれにおいても低周波近傍電磁界の発生がないことを示すLowの信号を出力する。これに応じて、図12の4段目で示されるように、いずれのタイミングにおいても、出力回路213は、信号V1を低周波近傍電磁界の発生がないことを示すLowの信号として出力する。
【0079】
一方、低周波近傍電磁界が発生した場合、遊技球検出部2の発振回路221の入力電圧Vxは、図13の最上段で示されるような波形となる。すなわち、時刻t0乃至t13におけるように、低周波近傍電磁界が発生していないときには、図12における波形と同様に振舞う。しかしながら、時刻t13以降で示されるように、低周波近傍電磁界が発生すると、入力電圧Vxは、低周波近傍電磁界の共振に伴い遊技球3が通過していない時刻t13乃至t14、および時刻t15乃至t16において発振回路221の電源電圧にまで波高値が上昇する。このとき、遊技球3が通過するときの電圧Vxの振る舞いは、若干振幅低下は見られるものの、ある程度の波高を維持する。結果として、低周波近傍電磁界が発生した時刻t13以降においては、遊技球3の通過の有無に関わらず、弁別閾値である電圧V12よりも低い信号が出力される状態となるため、出力回路223は、遊技球3が通過していないことを示すHiの信号を信号V2として出力する。
【0080】
このとき、異常検出部1においては、低周波近傍電磁界が発生するまでの時刻t13までのタイミングでは、発振回路211の入力電圧Vyは、図13の3段目で示されるように、図12における場合と同様に振る舞う。しかしながら、低周波近傍電磁界が発生する時刻t13以降においては、低周波近傍電磁界に起因する共振に伴って波高値が発振回路211の電源電圧にまで上昇しその状態が維持され続ける。このため、弁別閾値である電圧V11よりも低い信号が出力される状態となるため、図13の4段目で示されるように、時刻t13以降において、出力回路213は、信号V1を低周波近傍電磁界の発生があることを示すHiの信号を出力する。
【0081】
この結果、制御部301は、信号V1に基づいて、低周波近傍電磁界の発生を認識することができる。すなわち、図13の2段目における時刻t14乃至t15で示されるように、遊技球3の通過があっても、時刻t13乃至t14、およびt15以降で示されるように遊技球3の通過がなくても、信号V2がHiとなっており、いずれにおいても遊技球3の通過がないものとして誤動作が生じることとなる(図中の誤動作領域参照)。しかしながら、制御部301は、信号V1がHiであることにより低周波近傍電磁界の発生を検出するため、誤検出を防止することが可能となる。すなわち、信号V1がHiであり、低周波近傍電磁界の発生が検出された場合、信号V2については、遊技球3の通過の有無に関わらず無効とすることで、遊技球3の通過の誤検出を防止することができる。
【0082】
尚、図12,図13(以降の図15を含む)においては、最上段が、発振回路221の入力電圧Vxの波形を示しており、2段目が出力回路223の出力信号である信号V2の波形を示している。また、図12,図13においては、3段目が、発振回路211の入力電圧Vyの波形を示しており、最下段である4段目が出力回路213の出力信号である信号V1の波形を示している。さらに、最上段および3段目の波形における縦縞状に描かれている範囲については、横軸の時間方向に対して十分に高周波の波形となることを示しており、縦縞状の波形については、その外形が発振波高の包絡線となるように表示されている。
【0083】
<4.第4の実施の形態>
[遊技球検出部および異常検出部を一体構造にする場合にダイオードを付加する構成例]
以上においては、遊技球検出部および異常検出部を一体構造にする場合について説明してきたが、この場合、コイルL11,L12が共用のコイルスプール421に設けられることにより、相互干渉による影響が発生する。すなわち、図12,図13の3段目で示される遊技球3の通過がないタイミングにおける、異常検出部1の発振回路211の入力電圧Vyの波形は、コイルL12の誘起電圧に起因して発生するコイルL11の干渉波である。このため、弁別閾値電圧である電圧V11を下回る波高値が干渉により発生すると、異常検出部1は、誤動作する恐れがある。
【0084】
そこで、異常検出部1における発振回路211の入力電圧Vyの基準電圧をダイオードにより異常検出部1による弁別回路212の弁別閾値である電圧V11より上位電位となるようにシフトさせることで干渉波の影響を防止するようにしてもよい。
【0085】
図14は、異常検出部1の発振回路211の前段にダイオードD1を設けるようにして、干渉波の影響を防止するようにした遊技球検出スイッチ401の構成例を示している。図14の遊技球検出スイッチ401においては、図9の遊技球検出スイッチ401と同一の機能を備えた構成については、同一の符号を付しており、その説明は適宜省略するものとする。すなわち、図14の遊技球検出スイッチ401において、図9の遊技球検出スイッチ401と異なる点は、発振回路211の前段にダイオードD1を設けた点である。
【0086】
ダイオードD1のカソードは、コイルL11の一方の端部、およびコンデンサC11の一方の端部に接続されており、アノードは、入力電圧Vyとして発振回路211に接続されている。
【0087】
このような構成により、例えば、図15の3段目で示されるように、異常検出部1の発振回路211の入力電圧Vyは、ダイオードD1の順方向電位Vd分だけ弁別回路212の弁別閾値である電圧V11より離れるようにシフトされる。これにより、時刻t0乃至t31、およびt32乃至t33で示されるように、低周波近傍電磁界に晒されること無く、遊技球3の通過がない場合に、コイルL11,L12の相互干渉波の波高値が電圧V11を下回り難い構成とすることができる。
【0088】
結果として、異常検出部1が相互干渉波による誤動作を防止することが可能となる。尚、図15において、最上段、2段目、および4段目の波形は、図13における場合と同一の波形となる。また、ダイオードの構成は図14で示されるように1段のみならず、多段の構成とすることにより、さらに弁別閾値から上位電位となるようにシフトさせることで、さらに相互干渉の影響を低減できるようにしても良い。
【0089】
<5.第5の実施の形態>
[遊技球検出部および異常検出部を一体構造にする場合にシールド部材を付加する構成例]
以上においては、ダイオードにより相互干渉波による影響を低減させる例について説明してきたが、コイルL11,L12間の相互干渉波そのものを低減させるようにして、相互干渉波による誤動作を防止させるようにしてもよい。
【0090】
図16は、遊技球検出部2のコイルL12をシールド部材で囲み込むようにしたコイルスプールの構成例を示している。
【0091】
すなわち、コイルスプール421に代えて、コイルスプール453を設け、コイルL11,L12を共用化した上で、シールド部材451により上からコイルL12の部位が隠れるように囲い込む。さらに、コイルスプール453のコイルL11,L12の間に溝453aを設け、双方のコイルの間にシールド部材452を嵌め込んで、コイルL12をシールド部材451,452により囲い込み、干渉波が漏れ難い構成とする。
【0092】
このような構成により、コイルL12により生じる誘起電圧によるコイルL11への相互干渉の影響を低減することが可能となり、コイルL11,L12の相互干渉による誤動作を防止させるようにすることができる。
【0093】
尚、図16の上部は、コイルスプール453付近の側面断面図であり、下部は、コイルスプール453付近の分解斜視図である。
【0094】
以上の如く、本発明によれば、パチンコ遊技機内部に発生する低周波近傍電磁界によって、遊技球検出スイッチに機能障害が生じる前のタイミングで、低周波近傍電磁界を検出することができるので、低周波近傍電磁界の適切な監視を可能にすると共に、遊技球検出スイッチの機能障害を適切に抑制することが可能となる。
【0095】
尚、本明細書において、フローチャートを構成する各ステップの処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【符号の説明】
【0096】
1 異常検出部
2 遊技球検出部
3 遊技球
11 コイルスプール
21 シールド部材
31 基板
32 信号処理部
111 コイルスプール
121 シールド部材
131 基板
132 信号処理部
201,202 共振回路
211 高周波発振回路
212 弁別回路
213 出力回路
221 高周波発振回路
222 弁別回路
223 出力回路
301 制御部
L1,L2 コイル
C1,C2 コンデンサ
R1,R2 感度調整抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ遊技機に搭載され、第1の高周波発振回路を備えた、遊技球を検出する近接スイッチと併用される低周波近傍電磁界検出センサであって、
前記第1の高周波発振回路と酷似した帯域の高周波信号を発振する第2の高周波発振回路と、
低周波近傍電磁界の到来を電圧の誘起により検出するコイルと、
前記コイルを含み、前記近接スイッチの共振周波数と、酷似した周波数となるように共振周波数が設定されたLC共振回路と、
前記コイル面の一部を包囲し、かつ、前記一部と異なる他の一部を開口したシールド部材と、
前記第2の高周波発振回路の発振状態を設定する発振停止手段と、
前記第2の高周波発振回路の発振を検出する発振検出手段と
を含み、
前記発振停止手段は、
前記低周波近傍電磁界が照射されていない場合、前記第2の高周波発振回路の発振を停止し、
前記低周波近傍電磁界が照射されている場合、前記第2の高周波発振回路を発振させる
低周波近傍電磁界検出センサ。
【請求項2】
前記シールド部材の開口方向により、前記低周波近傍電磁界検出センサの検出指向性を設定すると共に、開口部の大きさによって、前記低周波近傍電磁界検出センサの検出領域を設定することにより、前記低周波近傍電磁界検出センサの検出領域は、前記遊技球を検出する近接スイッチの、前記低周波近傍電磁界による誤動作が生じる領域を包含する
請求項1に記載の低周波近傍電磁界検出センサ。
【請求項3】
前記LC共振回路は、
前記遊技球を検出する近接スイッチが有する、LC 共振回路のコイルの誘導成分よりも大きなコイル、および、前記遊技球を検出する近接スイッチが有するコンデンサよりも容量成分の小さなコンデンサを含むと共に、
前記LC共振回路のコイルおよびコンデンサによる共振周波数は、前記遊技球を検出する近接スイッチが有するLC共振回路のコイルおよびコンデンサによる共振周波数と酷似するよう設定されている
請求項1または2に記載の低周波近傍電磁界検出センサ。
【請求項4】
前記発振停止手段は、
前記第2の高周波発振回路を発振停止とさせるように負性コンダクタンスを設定するものであり、
感度調整抵抗器の定数設定により負性コンダクタンスを設定する
請求項1乃至3のいずれかに記載の低周波近傍電磁界検出センサ。
【請求項5】
前記発振停止手段は、
前記コイルの検出領域に、金属塊を固定設置することにより、前記高周波発振回路を発振停止とさせるように負性コンダクタンスを設定するものである
請求項1乃至3のいずれかに記載の低周波近傍電磁界検出センサ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の低周波近傍電磁界検出センサと、前記遊技球を検出する近接スイッチとを含む遊技機。
【請求項7】
低周波近傍電磁界検出センサが近傍電磁波の到来を検知した際、その出力信号に基づいて、検出判定結果を遊技機内部、もしくは遊技機外部に報知する報知手段をさらに含む
請求項6に記載の遊技機。
【請求項8】
前記低周波近傍電磁界検出センサが、前記遊技機の盤面に配置された、金属部材、もしくは金属メッキが施された構造物近傍に配置される
請求項6または7に記載の遊技機。
【請求項9】
前記遊技球を検出する近接スイッチは、遊技球の通過検知を行なう第1の貫通口を含み、
前記近傍電磁界検出センサは、前記第1の貫通口と略同形状の第2の貫通口を含み、
前記第1の貫通口、および前記第2の貫通口は、それぞれの中心線が同軸上に配置される
請求項6乃至8のいずれかに記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−268418(P2010−268418A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199240(P2009−199240)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】