説明

低圧蒸気タービン及び低圧蒸気タービンを運転する方法

【課題】低い最終段出口速度から生じる逆流渦による損失の問題を克服することができる低圧蒸気タービン最終段が提供される。
【解決手段】最終段18が、ベーン列を形成するように周方向に分配された複数の定置のベーン14を有しており、各ベーンが、翼31を有しており、該翼31が、該翼31の基部38から先端20まで半径方向に延びたスパン36を備えており、かつ蒸気タービン10の回転するロータ17上に周方向に取り付けられかつ分配された複数のブレード12を有しており、かつ前記ピッチ26に対するベーンのど24の比として定義されるK比を有しており、各ベーンが、ベーン14のスパン36にわたってW字形のK分布を形成するように傾斜させられた前縁20を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、最終段の設計により、排気損失の問題を解決するように適応された低圧蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
低圧蒸気タービンの分野において、いまだ現在においても、タービン正味効率を高めるために、排気損失を低減することが望まれる。これを達成する1つの手段は、最終タービン段の効率を高めることである。
【0003】
http://www.powermag.com/issues/cover_stories/The-long-and-short-of-last-stage-blades_483_p3.html(2010年7月14日)に記載されているように、約190m/s(600ft/sec)の最終段出口速度よりも上では、低圧蒸気タービンにおける排気損失は、速度に対して二乗の関係で高まる。出口速度を減じることには全体的な利点があるようだが、約170m/s(550ft/sec)よりも低く減じられた場合、例えば、ブレード根元における逆渦(reverse vortices)の影響が高まることにより、正味効率が低下する。この結果は、さらに、K.Kavney他、"Steam turbine 34.5 Inch Low-Pressure Section Upgrades" GE Energy GER-4269(08/06)によって裏づけられており、その著者は、第7頁において、全体的な排気損失は、排気速度が約600ft/s(190m/s)である場合に最小になると結論づけている。
【0004】
欧州特許出願公開第1260674号明細書に記載されているように、タービン段は、概して、ブレード根元反動度に応じて、衝動段又は反動段として分類される。これに関して、ブレード根元反動度は、タービン段における全熱降下に対する動翼における熱降下(エンタルピの変化)の比として定義される。衝動ブレード段は、例えば、通常は0〜10%のブレード根元反動度を有するのに対し、反動ブレード段の場合、ブレード根元反動度は、約50%まで上昇する。通常、10%〜50%のブレード根元反動度を備えた段は、低反動タイプ段として分類される。特定の羽根根元反動度を達成する方法は、様々でありかつ公知であり、例えば、ブレードのリーン又はスイープを変更することによって達成することができる。
【0005】
段の設計に応じて、ブレード根元反動度は、全体的なブレード効率に影響する。例えば、米国特許出願公開第2004/0071544号明細書には、反動度の適応により効率を改良した衝動式段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1260674号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0071544号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】http://www.powermag.com/issues/cover_stories/The-long-and-short-of-last-stage-blades_483_p3.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低い最終段出口速度から生じる逆渦による損失の問題を克服することができる低圧蒸気タービン最終段が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この開示は、独立請求項の主体によってこの問題を解決しようとするものである。有利な実施の形態は従属請求項に提供されている。
【0010】
この開示は、各ベーンのスパンにわたってW字形のK分布を形成するように傾斜させられた前縁を有する最終段ベーンを備えた低圧蒸気タービンを提供するという一般的概念に基づく。この構成は、低い出口速度での効率的な運転のために最終段を適応させるための手段を提供する。
【0011】
態様において、最終段は、接線方向リーン角30と、子午面における後縁のチルト角32と、ベーンピッチ26とを含む、ベーン14及びブレード12mpパラメータの組合せにより低反動段として構成されてよい。衝動型ブレード配列と高い根元反動度との間の反動度構成、すなわち、>50%は、低い出口速度で運転しながら効率崩壊(efficiency collapse)を遅らせる別の手段を提供する。
【0012】
別の態様において、125m/s〜150m/sの低い出口速度で運転する方法が提供される。これは、各羽根のスパンにわたってW字形のK分布を形成しかつ好適には15%〜50%の最終段根元反動度を有する傾斜したベーン前縁を有する形成出口環状領域を備えた蒸気タービンによって蒸気量を調節することによって達成される。
【0013】
その他の態様は、さらに、直線的な後縁を備えたベーンを有してよい。
【0014】
本開示のその他の態様及び利点は、例として本発明の典型的な実施の形態を例示する添付の図面に関連した以下の説明から明らかになるであろう。
【0015】
例えば、本開示の実施の形態は、添付の図面に関連して以下により完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】典型的な低圧蒸気タービンの一部の断面図である。
【図2】図1の蒸気タービンの典型的な最終段ベーンの斜視図である。
【図3】図2の蒸気タービンの典型的なベーン列の2つの最終段ベーンの平面図である。
【図4】典型的なベーンのスパンにわたって提供されたK分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の典型的な実施の形態をここで図面を参照して説明する。図面において、全体を通じて同じ構成要素を示すために同じ参照符号が用いられている。以下の説明において、説明の目的で、開示の十分な理解を提供するために、多くの特定の詳細が示される。しかしながら、本開示は、これらの特定の詳細なしに実施されてよく、ここに開示される典型的な実施の形態に限定されない。
【0018】
図1は、典型的な低圧多段蒸気タービン10を示している。低圧蒸気タービン10の各段16は、ベーン列を形成するように内側ケーシング15に周方向に分配された複数の定置のベーン(静翼)14と、回転するロータ17に周方向で取り付けられかつロータ17上に分配された複数のブレード(動翼)12とを有している。低圧蒸気タービン10の最終段18から出る蒸気の圧力が、蒸気タービンを低圧蒸気タービン10として規定している。典型的には、定常状態条件において、低圧蒸気タービン10の最終段18出口圧力は、大気圧から低い真空までの範囲である。
【0019】
最終段18のすぐ下流において、内側ケーシング15は環(図示せず)を形成している。環の面積は、最終段18から出る蒸気の体積流量と共に、蒸気タービン10の出口速度を規定している。
【0020】
図2a及び図2bに示すように、各ベーン14は、前縁20とスパン36とを備えた翼(airfoil)31を有しており、スパン36は、翼31の基部38と先端34との間の半径方向延長範囲である。図3に示したように、ベーン14のうちの1つの後縁22から、隣接する羽根14の面まででみた、隣接し合うベーン14の間の距離は、スロート(throat)24を規定しているのに対し、2つの隣接するベーン14の前縁20の間の距離はピッチ26を規定している。ピッチに対するスロートの比はさらに、K値を規定している。
【0021】
典型的な実施の形態において、各ベーン14の前縁20は、図2b及び図4に示すように、ベーン14のスパン36にわたってW字形のK分布を形成するように、傾斜若しくは湾曲させられている。
【0022】
典型的な実施の形態において、傾斜したベーン14は、運転時に、好適には15%〜50%、最も好適には35%〜45%の根元反動度を有するように、構成されている。図2aに示されているように、典型的な実施の形態のベーン14において、後縁22は、子午面におけるチルト角32を有しており、図2bに示されているように、接線方向リーン角30を有している。典型的な実施の形態の根元反動度は、接線方向リーン角30と、子午面における後縁のチルト角32と、ベーンピッチ26とを含む、ベーン14及びブレード12のパラメータの組合せによって規定される。
【0023】
典型的な実施の形態において、接線方向リーン角30は、好適には16度〜25度、最も好適には約19度である。
【0024】
典型的な実施の形態において、チルト角32は、好適には3度〜13度、最も好適には約8度である。
【0025】
典型的な実施の形態において、図2bに示されているように、各ベーン14はさらに、スパン36にわたって、テーパする軸方向幅を有している。
【0026】
典型的な実施の形態において、各ベーン14はさらに、直線的な後縁22を有している。
【0027】
別の典型的な実施の形態は、前述の蒸気タービン10のいずれかの蒸気タービン10を運転する方法に関する。この方法は、125m/s〜150m/sの出口速度で運転するように最終段18の出口領域の面積を構成し、出口速度が125m/s〜150m/sとなるように蒸気タービン10を通じて供給流量を調節することを伴う。
【0028】
本発明をその他の特定の実施の形態において具体化することができることは、当業者によって認められるであろう。従って、ここに開示された実施の形態は、全ての観点から、例示的であり、限定されるものではないと考えられる。発明の範囲は、前記説明ではなく、添付の請求項によって示され、発明の意味及び範囲及び均等物に含まれる全ての変更が発明に包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0029】
10 低圧蒸気タービン、 12 ブレード、 14 ベーン、 15 内側ケーシング、 16 段、 17 ロータ、 18 最終段、 20 前縁、 22 後縁、 24 スロート、 26 ピッチ、 30 接線方向リーン角、 31 翼、 32 子午面におけるチルト角、 34 先端、 36 スパン、 38 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段低圧蒸気タービン(10)であって、最終段(18)が設けられており、該最終段(18)が、
ベーン列を形成するように周方向に分配された複数の定置のベーン(14)を有しており、各ベーンが、翼(31)を有しており、該翼(31)が、該翼(31)の基部(38)から先端(20)まで半径方向に延びたスパン(36)を備えており、かつ
蒸気タービン(10)の回転するロータ(17)上に周方向に取り付けられかつ分配された複数のブレード(12)を有しており、かつ
ピッチ(26)に対するベーンスロート(24)の比として定義されるK比を有している形式のものにおいて、
各ベーンが、ベーン(14)のスパン(36)にわたってW字形のK分布を形成するように傾斜若しくは湾曲させられた前縁(20)を有していることを特徴とする、多段低圧蒸気タービン(10)。
【請求項2】
前記最終段(18)が、運転時に、15%〜50%の根元反動度を有するように構成されている、請求項1記載の蒸気タービン(10)。
【請求項3】
前記根元反動度が、35%〜45%である、請求項2記載の蒸気タービン(10)。
【請求項4】
各ベーン(14)の翼(31)が、
接線方向リーン角(30)と、
子午面における後縁チルト角(32)とを有しており、
根元反動度が、リーン角(30)と、チルト角(32)と、ベーンピッチ(26)とを含むパラメータの組合せによって規定されている、請求項2又は3記載の蒸気タービン(10)。
【請求項5】
前記接線方向リーン角(30)が、16度〜25度である、請求項4記載の蒸気タービン(10)。
【請求項6】
前記接線方向リーン角(30)が、19度である、請求項5記載の蒸気タービン(10)。
【請求項7】
前記チルト角(32)が、3度〜13度である、請求項4記載の蒸気タービン(10)。
【請求項8】
前記チルト角(32)が、8度である、請求項7記載の蒸気タービン(10)。
【請求項9】
各ベーン(14)が、さらに、スパン(36)にわたって、テーパした軸方向幅を有している、請求項1又は8記載の蒸気タービン(10)。
【請求項10】
各ベーン(14)が、さらに、直線的な後縁(22)を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の蒸気タービン(10)。
【請求項11】
蒸気タービン(10)を運転する方法において、
請求項1から10までのいずれか1項記載の蒸気タービン(10)を提供し、
125m/s〜150m/sの出口速度で運転するために最終段(18)の出口領域の面積を構成し、
出口速度が125m/s〜150m/sになるように蒸気タービン(10)を通じて供給流量を調節することを特徴とする、蒸気タービン(10)を運転する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−31864(P2012−31864A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−166364(P2011−166364)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】