説明

低塩化ナトリウム濃度を有する免疫原性組成物

抗原を含み、且つ塩化ナトリウム濃度又はイオン強度が100mM未満である免疫原性組成物と、それらの医学での使用とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク抗原を含み、且つ、100mM以下の塩化ナトリウム濃度を有する免疫原性組成物に関する。また、本発明は、抗原又は抗原製剤を含み、そして更に、1種もしくは複数種の免疫刺激剤を含む前記免疫原性組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク抗原の製剤は、確実に免疫原性を維持するために、極めて重要である。免疫刺激剤は、任意の所与の抗原に対する免疫応答を改善するために使用されることがある。しかしながら、ワクチン又は免疫原性組成物中へアジュバントを含有させることは、成分の調製の複雑性ならびにワクチン組成物の分配及び製剤化の複雑性を増大させる。調剤者は、アジュバント成分ならびに抗原成分のそれぞれの調製を考慮しなければならない。特に、抗原成分とアジュバント成分との適合性を考慮すべきである。それは、特に、凍結乾燥抗原又は抗原製剤がアジュバント製剤と一緒に再構成されることが意図される場合である。係る場合では、アジュバント製剤のバッファが、抗原又は抗原製剤に適していて、且つ、抗原の免疫原性又は溶解性がアジュバントから影響を受けないことが重要である。
【0003】
タンパク抗原PRAME及びNY−ESO−1(それぞれ、米国特許第5830753号及び米国特許第5804381号に記載されている)又はそれらの断片若しくは誘導体は、癌の治療に関して潜在的な利点を有するタンパク抗原である。
【発明の概要】
【0004】
本発明者は、PRAME及びNY−ESO−1のようないくつかの抗原は、塩化ナトリウムなどのような塩による飽和によって溶液からタンパク質が沈殿すると定義できる「塩析」として知られている現象に特に敏感であることを見出した。本発明者は、これらの抗原は、150mMもの低い塩化ナトリウム濃度で凝集し沈殿することを見出した。
【0005】
従って、一つの実施態様では、抗原又は抗原製剤は、5mM超、10mM超、15mM超、20mM超、30mM超、40mM超、50mM超、60mM超、70mM超、80mM超、90mM超、又は100mM超の塩化ナトリウム(NaCl)濃度を含むか又はイオン強度を有する溶液中に溶解後に、沈殿、凝固、又は凝集する任意の抗原である。
【0006】
本発明は、PRAME又はNY−ESO−1を含む免疫原性組成物を提供し、そしてその場合、前記組成物における塩化ナトリウムの濃度は100mM未満である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】QS21の溶解活性曲線を示している図である。
【図2】異なるASA製剤における各3D−MPL同族体の%を示している図である。
【図3】PRAME/CpGの凍結乾燥のために使用される凍結・乾燥サイクルを示している図である。
【図4】ASA(150mMのNaCl)及びASA(ソルビトール)中で再構成されたPRAMEとNYESO−1の画像による比較を示している図である。
【図5】実験1において異なるアジュバント組成物と一緒に配合されたPRAME/CpGで免疫されたマウスの体液性応答を示しているグラフである。
【図6】実験1において異なるアジュバント組成物と一緒に配合されたPRAME/CpGで免疫されたマウスの腫瘍防御を示しているグラフである。
【図7】実験2においてASA(150mMのNaCl)、ASA(ソルビトール)、又は液体製剤ASAと一緒に配合されたPRAME/CpGで免疫されたマウスの体液性応答を示しているグラフである。
【図8】実験2においてASA(150mMのNaCl)、ASA(ソルビトール)、又は液体製剤ASAと一緒に配合されたPRAME/CpGで免疫されたマウスのCD4+応答を示しているグラフである。
【図9】実験2においてASA(150mMのNaCl)、ASA(ソルビトール)、又は液体製剤ASAと一緒に配合されたPRAME/CpGで免疫されたマウスの腫瘍防御を示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、本明細書記載の抗原を含む免疫原性組成物を提供し、塩化ナトリウムの濃度は100mM未満である。特に、本発明は、抗原を含む免疫原性組成物を提供し、塩化ナトリウムの濃度は、約100mM未満であり、例えば約90mM未満、約80mM未満、約70mM未満、約60mM未満、約50mM未満、約40mM未満、約30mM未満、約20mM未満、又は約15mM未満である。特定の実施態様では、免疫原性組成物中の塩化ナトリウムの濃度は、10mM未満又は5mM以下である。更なる特定の実施態様では、免疫原性組成物は、塩化ナトリウムを実質的に含有していない。実質的に含有していないとは、塩化ナトリウムの濃度が、0mMか又は殆ど0mMに近いという意味である。
【0009】
当業者は、公知の技術及びキットを使用して、ナトリウムイオン(Na)及び塩化物イオン(Cl)の両方の濃度を容易に検査できる。例えば、ナトリウムは、Biosupplyから市販されているSodium Enzymatic Assay Kit(カタログ番号:BQ011EAEL)のようなキットを使用して測定できる。塩化物は、Biosupplyから市販されているChloride Enzymatic Assay Kit(カタログ番号:BQ006EAEL)のようなキットを使用して測定できる。
【0010】
本発明の更なる実施態様では、本明細書記載の抗原を含む免疫原性組成物を提供し、そしてその場合、イオン強度は、100mM未満であり、例えば90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、又は15mM未満である。特定の実施態様では、免疫原性組成物のイオン強度は、10mM未満又は5mM以下である。更なる特定の実施態様では、免疫原性組成物は、0mMか又は殆どゼロに近いイオン強度(すなわち、1、2、3mM)を有する。
【0011】
本発明のアジュバント又は免疫原性組成物のイオン強度は、当業者に公知の技術を使用して、例えば導電率計を使用して、測定できる。
【0012】
従って、一つの実施態様では、抗原又は抗原製剤は、塩化ナトリウム(NaCl)濃度を含む溶液中に溶解後に、又は、前記溶液のイオン強度が、5mM超、10mM超、15mM超、20mM超、30mM超、40mM超、50mM超、60mM超、70mM超、80mM超、90mM超、又は100mMを超えている溶液中に溶解後に、沈殿、凝固、又は凝集する任意の抗原である。当業者は、前記溶液中に抗原を溶解させることによって且つ/又は混合することによって、抗原が、この定義を満たすかどうかを決定できる。この定義を満たさない抗原は、溶解され且つ/又は混合されてから24時間後に、依然として溶液中に存在する。すなわち液体は沈殿が無く依然として明澄である。100mMの塩化ナトリウム濃度を含む溶液中に溶解後に、沈殿、凝固、又は凝集する抗原は、24時間又はそれに満たない時間後に、溶液の曇りによって、沈殿していることを確認できる抗原である。更に、視覚的に確認できない凝集は、SEC−HPLCを含むが、これに限定されない、当業者に公知の方法を使用して観察し得る。
【0013】
一つの実施態様では、抗原を含む免疫原性組成物を提供し、そしてその場合、塩化ナトリウムの濃度は、100mM未満であり、例えば約90mM未満、約80mM未満、約70mM未満、約60mM未満、約50mM未満、約40mM未満、約30mM未満、約20mM未満、約15mM未満、約10mM未満、又は約5mM未満であり、そして、前記抗原は、PRAME(DAGEとしても公知である)、又はその断片若しくは誘導体である。
【0014】
本発明の更なる実施態様では、抗原を含む免疫原性組成物を提供する。その場合、前記組成物のイオン強度は、100mM未満であり、例えば90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、又は15mM未満であり、そして、前記抗原は、PRAME(DAGEとしても公知である)、又はその断片若しくは誘導体である。特定の実施態様では、免疫原性組成物のイオン強度は、10mM未満又は5mM以下であり、その場合、前記抗原は、PRAME又はその断片若しくは誘導体である。
【0015】
前記抗原及びその調製は、米国特許第5,830,753号に記載されている。PRAMEは、アクセッション番号:U65011.1、BC022008.1、AK129783.1、BC014974.2、CR608334.1、AF025440.1、CR591755.1、BC039731.1、CR623010.1、CR611321.1、CR618501.1、CR604772.1、CR456549.1、及びCR620272.1で、Annotated Human Gene Database H−InvDBにおいて見出される。
【0016】
PRAME抗原を含む融合タンパク質を用いることもできる。PRAME又はその断片若しくは誘導体は、任意に異種融合パートナーとの融合タンパク質の形態で、使用し得る。特に、PRAME抗原は、B型インフルエンザ菌に由来するDタンパク質(Haemophilus influenzae B protein D)との又はその一部分との又はその誘導体との融合タンパク質の形態で、好適に使用され得る。好適に使用され得るDタンパク質の一部分は、分泌配列又はシグナル配列を含んでいない。好適には、前記融合パートナータンパク質は、融合タンパク質配列のN末端基に又はN末端基内にアミノ酸Met−Asp−Proを含み、そして、前記融合パートナータンパク質は、Dタンパク質の分泌配列又はシグナル配列を含んでいない。例えば、融合パートナータンパク質は、おおよそ又は正確には、17〜127アミノ酸、18〜127アミノ酸、19〜127アミノ酸、又は20〜127アミノ酸のDタンパク質を含み得るか又はから成り得る。Dタンパク質を有する融合タンパク質を主成分とする好適なPRAME抗原は、その内容が参照により本明細書に完全に組み込まれる国際公開第WO2008/087102号に記載されている。
【0017】
一つの実施態様では、抗原を含む免疫原性組成物を提供し、そしてその場合、塩化ナトリウムの濃度は、100mM未満であり、例えば約90mM未満、約80mM未満、約70mM未満、約60mM未満、約50mM未満、約40mM未満、約30mM未満、約20 mM未満、約15mM未満、約10mM未満、又は約5mM未満であり、そして、前記抗原は、NY−ESO−1、又はその断片若しくは誘導体である。
【0018】
本発明の更なる実施態様では、抗原を含む免疫原性組成物を提供し、そしてその場合、前記組成物のイオン強度は、100mM未満であり、例えば90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、又は15mM未満であり、そして、前記抗原は、NY−ESO−1、又はその断片若しくは誘導体である。特定の実施態様では、免疫原性組成物のイオン強度は、10mM未満であるか又は5mM以下であり、そして、抗原は、NY−ESO−1、又はその断片若しくは誘導体である。
【0019】
完全長又は断片又は誘導体であり得るNY−ESO−1は、任意に異種融合パートナーとの融合タンパク質の形態で、使用し得る。NY−ESO−1は、その内容が参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5804381号に記載されている。タンパク質NY−ESO−1は、長さは約180アミノ酸であり、次の3つの領域から構成されていると説明できる:(a)約1〜70アミノ酸のN末端領域、(b)約71〜134アミノ酸の中央領域、及び(c)約135〜180アミノ酸のC末端領域。NY−ESO−1は、融合タンパク質として、例えば、LAGE−1又はその断片との融合タンパク質として使用し得る。参照により本明細書にその内容が完全に組み込まれる国際公開第WO2008/089074号を参照されたい。NY−ESO−1の断片を使用する場合、これらは、好適には、1個又は複数個のMHCクラス1エピトープ又はMHCクラス2エピトープを、例えばA31、DR1、DR2、DR4、DR7、DP4、B35、B51、Cw3、Cw6、及びA2として公知の前記エピトープを含む(国際公開第WO2008/089074号を参照されたい)。
【0020】
NaClそれ自体に対して敏感ではないが、本発明に従って使用し得る更なる抗原は、MAGE抗原、例えばMAGE−3ファミリーのMAGE抗原、例えばMAGE−A3である。MAGE−3抗原は、例えば、NY−ESO−1と組み合わせて配合するのに適していると記載されてきた。参照により本明細書にその内容が完全に組み込まれる国際公開第WO2005/105139号を参照されたい。
【0021】
MAGE−A3のようなMAGE抗原は、そのままで、又は誘導体の形態で、例えば、化学的に修飾された誘導体の形態で且つ/又は異種融合パートナーとの融合タンパク質の形態で使用し得る。例えば、MAGE抗原は、例えばカルボキサミド基又はカルボキシメチル基によって誘導体化されてきた遊離チオールを生成するジスルフィド架橋を低減させた状態で含み得る。参照により本明細書にその内容が完全に組み込まれる国際公開第WO99/40188号を参照されたい。特に、MAGE抗原は、B型インフルエンザ菌に由来するDタンパク質又はその一部分又はその誘導体との融合タンパク質の形態で、好適に使用され得る。例えば、Dタンパク質の約1/3又はDタンパク質のN末端100〜110アミノ酸を、融合パートナーとして使用し得る。国際公開第WO99/40188を参照されたい。
【0022】
更なる実施態様では、抗原又は抗原性組成物は、本明細書記載の抗原のいずれかの誘導体であり得る。本明細書で使用される用語「誘導体」とは、その天然形態と比較して修飾された抗原を指す。本発明の誘導体は、天然抗原と十分に類似しており、抗原特性を保持し、天然抗原に対して引き起こされる免疫応答を可能にする能力を維持している。所与の誘導体が生じるかどうかに関わらず、そのような免疫応答は、ELISA又はフローサイトメトリーなどの好適な免疫学的アッセイにより測定できる。
【0023】
本明細書で使用される用語「断片」とは、少なくとも1個のエピトープ、例えば、CTLエピトープ、典型的には、少なくとも8アミノ酸のペプチドを含む腫瘍関連抗原の断片又は前記抗原の誘導体を指している。少なくとも8、例えば、8〜10アミノ酸長又は最大で20、50、60、70、100、150若しくは200のアミノ酸長の断片は、その断片が抗原性を示す限り、すなわち、主要なエピトープ(例えば、CTLエピトープ)が前記断片により保持され、そして前記断片が天然の腫瘍関連抗原と交差反応する免疫応答を誘導できる限り、本発明の範囲内にあると考えられる。断片の例は、長さ8〜10、10〜20、20〜50、50〜60、60〜70、70〜100、100〜150、150〜200アミノ酸の残基であり得る(これらの範囲内の任意の値を含む)。
【0024】
免疫原性組成物は、1種若しくは複数種の更なる抗原を含み得る。
【0025】
非経口投与にとって、溶液は、細胞の変形又は溶解を回避するために、生理的に等張であるべきである(すなわち、薬学的に許容可能な浸透圧重量モル濃度を有するべきである)ことは公知である。「等張性剤」とは、生理的に許容され、且つ、製剤(例えば本発明の免疫原性組成物)に対して適当な張性を付与して製剤と接触している細胞膜全体にわたる水の純流動を防止する化合物である。
【0026】
一般的に、塩化ナトリウム(NaCl)は、等張性剤として使用される。本発明者は、特定の抗原が、本明細書記載の本発明の免疫原性組成物を等張にするための別の手段であって、溶液中に高濃度の塩を含む時に溶液中のタンパク質が凝集又は凝固するプロセスである「塩析」に対して特に敏感であることを示している。
【0027】
特定の実施態様では、非イオン性等張性剤を更に含む免疫原性組成物を提供する。免疫原性組成物で使用するための適当な非イオン性等張性剤は、ヒトでの使用に適している必要があり、且つ、抗原性組成物中の抗原と適合性である必要があり、そして更に免疫刺激剤(1種若しくは複数種)のような他の成分とも適合性である必要がある。
【0028】
本発明の一つの実施態様では、好適な非イオン性等張性剤は、ポリオール、糖(特にスクロース、フルクトース、デキストロース、若しくはグルコース)、又はアミノ酸、例えばグリシンである。一つの実施態様では、ポリオールは、糖アルコール、特にC3〜C6糖アルコールである。糖アルコールの例としては、グリセリン、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、及びイジトールが挙げられる。この実施態様の特定の例では、適切な非イオン性等張性剤は、ソルビトールである。本発明の特定の実施態様では、本発明組成物における非イオン性等張性剤は、スクロース又はソルビトールである。
【0029】
一つの実施態様では、免疫原性組成物中のポリオールの好適な濃度は、約3〜約15%(w/v)、特に約3〜約10%(w/v)、例えば約3〜約7%(w/v)、例えば約4〜約6%(w/v)である。この実施態様の特定の例では、ポリオールは、ソルビトールである。
【0030】
本発明の特定の実施態様では、免疫原性組成物は、1種又は複数種の免疫刺激剤を含む。
【0031】
一つの実施態様では、この免疫刺激剤は、サポニンであり得る。本発明の使用に適するサポニンは、Quil A及びその誘導体である。Quil Aは、南米の木Quillaja Saponaria Molinaから単離されるサポニン製剤であり、Dalsgaard ら によって、アジュバント活性を有すると1974年にはじめて記載された("Saponin adjuvants", Archiv. fuer die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243−254)。Quil A、例えばQS7及びQS21(QA7及びQA21としても公知である)と関連のある毒性を有していないアジュバント活性を保持しているQuil Aの精製断片を、HPLCで単離した(欧州特許第0 362 278号)。QS−21は、Quillaja Saponaria Molinaの樹皮から誘導される天然サポニンであり、そしてそれは、CD8+細胞障害性T細胞(CTL)、Th1細胞、及び優勢なIgG2a抗体応答を誘導する。QS21は、本発明の文脈において好適なサポニンである。
【0032】
本発明の好適な形態では、免疫原性組成物中のサポニンアジュバントは、saponaria molina quil Aの誘導体、好ましくはQuil A、例えばQS−17又はQS−21、好適にはQS−21の免疫学的に活性な断片である。
【0033】
特定の実施態様では、QS21は、外因性ステロール、例えばコレステロールによってクエンチされる、より反応源性が低いQS21組成物として提供される。外因性コレステロールによってQS21がクエンチされる反応源性が更に低い組成物のいくつかの特定の形態が、存在する。特定の実施態様では、サポニン/ステロールは、リポソーム構造の形態である(国際公開第WO96/33739号、実施例1)。その実施態様では、リポソームは、好適には室温で非晶質である中性脂質、例えば、ホスファチジルコリン、例えば卵黄ホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、又はジラウリルホスファチジルコリンを好適に含む。リポソームは、飽和脂質から成るリポソームのためのリポソーム−QS21構造の安定性を増加させる荷電脂質(charged lipid)も含み得る。これらの場合、荷電脂質の量は、好適には1〜20%w/w、好ましくは5〜10%である。リン脂質に対するステロールの比率は、1〜50%(モル/モル)、好適には20〜25%である。
【0034】
適当なステロールとしては、β−シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、エルゴカルシフェロール、及びコレステロールが挙げられる。一つの特定の実施態様では、免疫原性組成物は、ステロールとしてコレステロールを含む。これらのステロールは、当業において公知であり、例えば、コレステロールは、動物脂肪中に見出される天然ステロールとしてMerck Index, 第11版,第341頁に開示されている。
【0035】
活性サポニン断片がQS21である場合、QS21対ステロールの比は:典型的には1:100〜1:1で(w/w)、好適には1:10〜1:1(w/w)、そして好ましくは1:5〜1:1(w/w)のオーダーである。好適には、過剰なステロールが存在し、Q21:ステロールの比は、少なくとも1:2(w/w)である。一つの実施態様では、QS21:ステロールの比は、1:5(w/w)である。ステロールは、好適にはコレステロールである。
【0036】
別の実施態様では、免疫原性組成物は、Toll様受容体4(TLR4)アゴニストである免疫刺激剤を含む。「TLRアゴニスト」とは、直接リガンドとして、又は内因性若しくは外因性リガンドの生成を介して間接的に、TLRシグナリング経路を介してシグナル応答を引き起こすことができる成分を意味している(Sabroeら、JI 2003 p1630−5)。TLR4アゴニストは、TLR−4シグナリング経路を介してシグナル応答を引き起こすことができる。TLR4アゴニストの好適な例は、リポポリサッカライド、好適にはリピドAの無毒性誘導体、特にモノホスホリルリピドA、又は更に特に3−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)である。
【0037】
3D−MPLは、GlaxoSmithKline Biologicals N.A.によりMPLの名称で販売されており、本明細書全体においてMPL又は3D−MPLと称する。例えば、米国特許第4,436,727号、第4,877,611号、第4,866,034号、及び第4,912,094号を参照されたい。3D−MPLは、主にIFN−g(Th1)表現型を有するCD4+ T細胞性応答を促進する。3D−MPLは、英国特許第GB2220211A号に開示された方法に従って製造できる。化学的には、3D−MPLは、3、4、5、又は6位がアシル化された鎖を有する3−脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。本発明の組成物では、小粒子3D−MPLを使用して免疫原性組成物を調製し得る。小粒子3D−MPLは、0.22μmフィルターを通して濾過滅菌できる粒子径を有する。そのような調製物は、国際公開第WO94/21292号に記載されている。好ましくは、粉末状の3D−MPLを使用して、本発明の免疫原性組成物を調製する。
【0038】
使用できる他のTLR4アゴニストは、アルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)、例えば国際公開第WO98/50399号又は米国特許第6,303,347号(AGPの調製法も開示されている)で開示されているAGP、好適にはRC527又はRC529又は米国特許第6,764,840号に開示されているAGPの薬学的に許容可能な塩である。TLR4アゴニストであるAGPもあれば、TLR4アンタゴニストであるAGPもある。両方とも、免疫刺激剤として有用であると考えられる。
【0039】
他の適当なTLR−4アゴニストは、国際公開第WO2003/011223号及び国際公開第WO2003/099195号に記載されており、例えば国際公開第WO2003/011223号の4〜5ページ又は国際公開第WO2003/099195号の3〜4ページに化合物I、化合物II、及び化合物IIIとして開示されており、そして、特に、ER803022、ER803058、ER803732、ER804053、ER804057m、ER804058、ER804059、ER804442、ER804680、及びER804764として国際公開第WO2003/011223号で開示されている。例えば、1つの適当なTLR−4アゴニストは、ER804057である。
【0040】
特定の実施態様では、免疫原性組成物は、サポニン及びTLR4アゴニストの両方を含む。特定の例では、免疫原性組成物は、QS21及び3D−MPLを含む。
【0041】
例えばリポポリサッカライド、例えば3D−MPLなどのようなTLR−4アゴニストは、免疫原性組成物のヒト1用量当たり1〜100μgの量で使用できる。3D−MPLは、約50μgのレベルで、例えば、40〜60μg、好適には45〜55μg、又は49〜51μg、又は50μgのレベルで使用し得る。更なる実施態様では、免疫原性組成物のヒト用量は、約25μgのレベルで、例えば20〜30μg、好適には21〜29μg、又は22〜28μg、又は28〜27μg、又は24〜26μg、又は25μgのレベルで、3D−MPLを含む。
【0042】
QS21などのようなサポニンは、免疫原性組成物のヒト1用量当たり1〜100μgの量で使用できる。QS21は、約50μgのレベルで、例えば、40〜60μg、好適には45〜55μg、又は49〜51μg、又は50μgのレベルで使用し得る。更なる実施態様では、免疫原性組成物のヒト用量は、約25μgのレベルで、例えば20〜30μg、好適には21〜29μg、又は22〜28μg、又は28〜27μg、又は24〜26μg、又は25μgのレベルで、QS21を含む。
【0043】
TLR4アゴニスト及びサポニンの両方が免疫原性組成物中に存在する場合、TLR4アゴニスト対サポニンの重量比は、好適には1:5〜5:1、好適には1:1である。例えば、3D−MPLが50μg又は25μgの量で存在する場合、好適には、QS21も、免疫原性組成物のヒト1用量当たりそれぞれ50μg又は25μgの量で存在し得る。
【0044】
一つの実施態様では、免疫刺激剤は、例えば国際公開第WO2008/142133号に記載されているように、TLR9アゴニストである。特定の例では、前記TLR9アゴニストは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドであり、特に、非メチル化CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドである。前記オリゴヌクレオチドは、公知であり、例えば国際公開第WO96/02555号、国際公開第WO99/33488号及び米国特許第5,865,462号に記載されている。本明細書記載の免疫原性組成物で使用するための好適なTLR9アゴニストは、CpG含有オリゴヌクレオチドであり、少なくとも3つ、好適には少なくとも6つ以上のヌクレオチドによって分離された2つ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを任意に含む。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチドと、それに続くグアニンヌクレオチドを含む。
【0045】
一実施形態においては、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間結合は、ホスホロジチオエート、又はおそらくホスホロチオエート結合であるが、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドなどの、ホスホジエステル及び他のヌクレオチド間結合を用いることもできる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又はホスホロジチオエートを製造する方法は、米国特許第5,666,153号、第5,278,302号、及びWO95/26204に記載されている。様々なヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチド、例えば、混合ホスホロチオエートホスホジエステルが企図される。オリゴヌクレオチドを安定化する他のヌクレオチド間結合を使用し得る。
【0046】
本明細書記載の免疫原性組成物に含有させるのに適するCpGオリゴヌクレオチドの例は、次の配列を有する。一つの実施態様では、これらの配列は、ホスホロチオエート修飾ヌクレオチド間結合を含む:
オリゴ1(配列番号1):TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT(CpG 1826)
オリゴ2(配列番号2):TCT CCC AGC GTG CGC CAT(CpG 1758)
オリゴ3(配列番号3):ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4(配列番号4):TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT(CpG 2006)
オリゴ5(配列番号5):TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT(CpG 1668)
代替的なCpGオリゴヌクレオチドは、それらがその中に重要でない欠失又は付加を有する上記配列を含んでいてもよい。
【0047】
一つの実施態様では、免疫刺激剤はトコールである。トコールは、当業において公知であり、欧州特許第EP0382271号に記載されている。特定の実施態様では、トコールは、α−トコフェロール又はその誘導体であり、例えばα−トコフェロールスクシネート(ビタミンEスクシネートとしても公知)である。
【0048】
本発明は、以下の工程を含む、本発明の免疫原性組成物を作る方法も提供する:
a.任意に本明細書記載の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと一緒に、本明細書記載の抗原を凍結乾燥する工程;及び
b.水性アジュバント組成物によって工程a)の凍結乾燥組成物を再構成する工程。
【0049】
その場合、NaClの濃度又は水性アジュバント組成物のイオン強度は、100mM未満、90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、15mM未満、又は10mM未満である。
【0050】
特定の実施態様では、凍結乾燥抗原は、10mM超、20mM超、30mM超、40mM超、50mM超、60mM超、70mM超、80mM超、90mM超、又は100mM超の、塩化ナトリウム濃度を含む溶液中に又はイオン強度を有する溶液中に溶解後に、沈殿、凝固、又は凝集する任意の抗原である。更なる実施態様では、凍結乾燥抗原は、PRAME又はNY−ESO−1の群から選択される。
【0051】
一つの実施態様では、工程b)のアジュバント組成物(上記)は、本明細書記載のサポニン及び/又はTLR−4アゴニスト、例えばQS21及び/又は3D−MPLを含む。更なる実施態様では、サポニン及び/又はTLR4アゴニストは、リポソーム製剤中に存在する。一つの実施態様では、アジュバント組成物は、リポソーム製剤の形態でTLR4アゴニスト及びサポニンを含み、そして更に、本明細書記載の非イオン性等張性剤を含む。
【0052】
特に、本発明のアジュバント組成物は、ソルビトールを含み得る。
【0053】
本発明の更なる実施態様では:
a.任意にCpGと一緒に共凍結乾燥された凍結乾燥抗原;及び
b.NaCl濃度又はイオン強度が100mM未満、90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、15mM未満、又は10mM未満である水性アジュバント組成物
を含むキットを提供する。
【0054】
本発明の特定の実施態様では、本明細書記載のキット中の抗原は、PRAME又はNY−ESO−1、及びそれらの断片且つ/又は誘導体を含む。
【0055】
代替実施態様では、CpGが抗原と一緒に共凍結乾燥されないキットを提供する。CpGは、水性アジュバント組成物と混合してもよいか、又は、水性形態若しくは凍結乾燥形態で別々のバイアルに入れておいてもよい。
【0056】
本発明のキットで使用される水性アジュバントは、本明細書で規定されるアジュバント組成物のいずれかであり得る。本発明の特定の実施態様では、水性アジュバント組成物は、リポソームの形態でTLR4アゴニスト及び/又はサポニンを含む。特定の実施態様では、TLR4アゴニストは3D−MPLであり、サポニンはQS21である。本発明で使用される水性アジュバントは、等張性剤、例えばソルビトールなどのようなポリオールを含んでいてもよい。
【0057】
本発明は、更に、癌の免疫療法治療で使用するために、本明細書記載の免疫原性組成物を提供する。
【0058】
この実施態様の具体例では、本発明は、前立腺、胸部、結腸直腸、肺、膵臓、腎臓、卵巣、又は黒色腫の癌から成る群より選択される1種以上の癌の免疫療法治療で使用するために、本明細書記載の免疫原性組成物を提供する。
【0059】
本発明は、更に、本明細書記載の免疫原性組成物の有効量を個人(個体)に提供する工程を含む、必要な個人(個体)における癌の治療法又は予防法を提供する。
【0060】
この実施態様の具体例では、本発明は、前立腺、胸部、結腸直腸、肺、膵臓、腎臓、卵巣、又は黒色腫の癌から成る群より選択される癌の治療法又は予防法を提供する。
【実施例】
【0061】
以下の非限定な実施例によって本発明を更に説明する。
【0062】
実施例1:アジュバント組成物ASA(ソルビトール)の調製
リポソーム製剤の形態で3−脱アシル化MPL及びQS21を含むアジュバント組成物を調製した。それは以下のようにして調製した。
【0063】
A.リポソームの調製法:
有機溶媒中、脂質(例えば、合成ホスファチジルコリン)、コレステロール、及び3―O脱アシル化MPLの混合物を、真空下で乾燥させた。次いで、水溶液(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水[100mM NaCl、20mM リン酸塩 pH6.1])を添加し、全ての脂質が懸濁液になるまで、容器を撹拌した。次いで、その懸濁液を、高剪断ミキサーでプレホモジナイズし、そして、DLSで測定した場合にリポソームサイズがおおよそ90nm+/−10nmに低下するまで、高圧ホモジナイズした。次いで、リポソームを濾過滅菌した。
【0064】
B.ASA製剤:
工程1:濃縮リポソームの希釈
Na/Kリン酸塩バッファ100mM pH6.1を、注射用水に加えて10倍に希釈し、リン酸塩バッファ濃度を最終製剤において10mMにした。次いで、注射用水(WFI)中30%(w/v)ソルビトール溶液を加えて、最終製剤において4.7%の濃度にし、そしてそれを、室温で、15〜45分間撹拌した。
【0065】
次いで、濃縮リポソーム(それぞれ40mg/ml、10mg/ml、及び2mg/mlのDOPC、コレステロール、及びMPLで作られている)を混合物に加えて、最終製剤におけるMPLの濃度を100μg/mlにした。
【0066】
続いて、その混合物を、室温で、15〜45分間、撹拌した。
【0067】
工程2:QS21の添加
蠕動ポンプを使用して、QS21バルク貯蔵品(200mlを、室温で24時間又は4℃で2日で解凍した)を、200ml/分の速度で、磁気撹拌しながら、希釈リポソームに加えて、最終製剤における濃度を100μg/mlにした。その混合物を、15〜45分間、撹拌した。
【0068】
最終的なASA製剤は、1ml当たりMPLを100μg及びQS21を100μg含んでいた。
【0069】
工程3:6.1+/−0.3であるようにpHをチェックした。
【0070】
工程4:濾過滅菌
濾過滅菌法は、PALL Corporationから市販されているポリエーテルスルフォン(PES)フィルターによって、400ml/分の一定速度で行った。
【0071】
工程5:+2℃〜+8℃で貯蔵
リポソーム製剤の形態で3−O−脱アシル化MPL及びQS21を含み、且つソルビトール(ASA(ソルビトール)と呼ぶ)を含有するアジュバント組成物を得た。次いで、それを4℃で貯蔵した。
【0072】
実施例2:アジュバント組成物ASA(150mMのNaCl)の調製
A.リポソームの調製法:
有機溶媒中、脂質(例えば、合成ホスファチジルコリン)、コレステロール、及び3−脱アシル化MPL(3D−MPL)の混合物を、真空下で乾燥させた。次いで、リン酸塩緩衝生理食塩水を加え、全ての脂質が懸濁液になるまで、容器を撹拌した。次いで、その懸濁液WAsを、高剪断ミキサーでプレホモジナイズし、そして、DLSで測定した場合にリポソームサイズがおおよそ90nm+/−10nmに低下するまで、高圧ホモジナイズした。次いで、リポソームを、0.22μmのPES膜で濾過滅菌した。
【0073】
B.ASA製剤:
工程1:濃縮リポソームの希釈
Na/Kリン酸塩バッファ100mM pH6.45及びNaCl 1.5Mを、注射用水に加えて10倍に希釈し、最終製剤においてリン酸塩濃度を10mM及びNaCl濃度を150mMにした。この混合物を、室温で5分間、攪拌した。次いで、濃縮リポソーム(それぞれ40mg/ml、10mg/ml、及び2mg/mlのDOPC、コレステロール、及びMPLで作られている)を混合物に加えて、最終製剤におけるMPLの濃度を100μg/mlにした。続いて、その混合物を、室温で、5〜15分間、撹拌した。
【0074】
工程2:QS21の添加
QS21バルク貯蔵品(200mlを、室温で24時間又は4℃で2日で解凍した)を、磁気撹拌しながら、希釈リポソームに加えて、最終製剤における濃度を100μg/mlにした。その混合物を、室温で撹拌した。
【0075】
工程3:6.1+/−0.1であるようにpHをチェックした。
【0076】
工程4:濾過滅菌
濾過滅菌法は、PALL Corporationから市販されているポリエーテルスルフォン(PES)フィルターによって行った。
【0077】
工程5:+2℃〜+8℃での貯蔵
ASAの最終組成物は、1ml当たり、2mgのDOPC、500μgのコレステロール、100μgの3−O脱アシル化MPL、100μgのQS21であった。
【0078】
実施例3:QS21溶解活性
QS21は、赤血球(RBC)を溶解することが知られている。150mMのNaClを含む等価なアジュバント組成物(ASA(150mMのNaCl))に関して認められるのと同じ方法で確実にQS21溶解活性をクエンチするために、実施例1で調製したASA(ソルビトール)アジュバント組成物を試験した。
【0079】
QS21溶解活性は、ニワトリ赤血球(RBC)を使用する溶血作用分析で測定した。RBCを、4℃で550gで遠心分離した。上清を除去した。ペレットを注意深くPBSバッファ中に再懸濁させて、初期の体積にした。同じ操作を、上精が赤くならなくなるまで繰り返した(一般的に3回)。直ちに使用しない場合、ペレットは、4℃で最大3〜4日間貯蔵した(使用する日には再び洗浄した)。又は、同じ日に使用する場合は、バッファで約10倍に希釈した。
【0080】
QS21用量範囲曲線を、ASAバッファで(試験したASAサンプルの後には塩バッファで又はソルビトールバッファで)用事作製し、そして、アジュバントサンプル(500μl又は900μlのASAを意味する50μg又は90μg当量のQS21を含む)を調製した。最終体積は、(試験されるサンプルのバッファの役割としてソルビトールを含む又は含まない)十分なバッファによって、標準とサンプルを900μlに調整した。その蛋白光に起因して、ASAは、光学密度(OD)に干渉する。そこで、ASA「ブランク」を調製し、そしてそれらのODを、ASA試験サンプルのODから減じた。それらのブランクは、サンプルにおいて試験される体積と同じASA体積と一致するが、バッファで1mlに調整した。RBCは、これらのブランクには加えなかった。次いで、標準及びサンプルを、室温で、30分間、RBC(900μlの標準及びサンプルに100μlの希釈RBCを加えた)と一緒にインキュベートした。次いで、サンプルを、900gで5分間、遠心分離した。540nmにおける光学密度を、遠心分離後に測定した。
【0081】
溶解活性の測定は、限度試験によって実施した。
【0082】
1.検出限界(LOD)は、ODを導くQS21の最低濃度と定義した:
− ベースレベル(OD>0.1)に比べて高い
− ODのバッファ(「0μg」QS21)に比べて約3倍高い
− 曲線の上昇部分において
− 各試験について測定した。
【0083】
2.アジュバントサンプルに関するODがODLODに比べて大きい場合、QS21溶解活性は、アジュバントサンプルにおいて陽性であるように保たれた。
【0084】
QS21曲線の例:
【表1】

【0085】
*50μg当量のQS21を試験した。150mMの塩化ナトリウムバッファ。
【0086】
このアッセイにおける検出限界は、0.9μg QS21であり、0.12のODである。
【0087】
150mMの塩化ナトリウムを含むアジュバント組成物におけるQS21のクエンチングは、試験された50μg当量のQS21に関して98.2%を超えていると評価された。試験された90μg当量の場合、判定は、99%を超えている。
【0088】
次いで、QS21クエンチングを、ソルビトールと、わずか5mMの塩化ナトリウムとを含む等価なアジュバント組成物と比較した。データは、4℃でASAを貯蔵した後又は安定性を促進させた後に(37℃で7日)、得た。ソルビトール中ASAに関しては、QS21標準曲線を、ソルビトール含有バッファにおいて得た。
【表2】

【0089】
*90μg当量のQS21を試験した以外は、50μg当量のQS21を試験した。
【0090】
QS21は、低濃度の塩化ナトリウムバッファで十分にクエンチされた。
【0091】
実施例4:MPL同族体
化学的には、3D−MPLは、4、5又は6位がアシル化された鎖を有する3−脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。各異なる3D−MPL分子は、同族体と呼ぶ。同族体組成は、一定のままであり、同族体割合間のシフトはないことが重要である。使用されるいかなるバッファも、アジュバント組成物を作るために使用される濃縮リポソーム中における組成と同族体組成を同じにできることも重要である。
【0092】
図2に示してあるように、同族体組成を、3D−MPL濃縮リポソーム(濃縮リポソームLIP07−217、図2の第1カラム)、150mMのNaClバッファ中3D−MPLリポソームとQS21とを含むアジュバント組成物(アジュバント150mMのNaCl、又はASA(150mMのNaCl)、第2カラム)、及びソルビトールと5mMのNaClバッファ中3D−MPLリポソームとQS21とを含むアジュバント組成物(アジュバントソルビトール、又はASA(ソルビトール)、カラム3〜7)において、検討した。
【0093】
調製後0日のASA(ソルビトール)アジュバントと、時間の経過に伴う漸進的な変化が起こらないことを保証するために調製してから37℃に維持した7日後のASA(ソルビトール)アジュバントとの2つのロットにおいても、同族体組成を検討した(図2の最後の4つのカラムを参照されたい)。
【0094】
濃縮リポソーム又はASA(ソルビトール)サンプルにおけるMPLのテトラ−、ペンタ−、及びヘキサ−アシル化同族体の相対的な分配を、IP−HPLC−Fluo検出(ARD)で測定した。標準及びサンプルの両方を、ダンシルヒドラジンによって誘導体化し、二糖骨格上にFluo活性発色団を導入する。誘導体化したサンプルを、イオン対試薬としてテトラブチルアンモニウム水酸化物(TBAOH)を使用しているC18逆相カラムで分析した。同数の脂肪族アシル基を含む同族体を、異なる基(テトラアシル、ペンタアシル、及びヘキサアシル)で溶出させた。同族体の分配は、各基のピーク面積を、すべてのMPL同族体の総ピーク面積と比較することによって、推論される。
【0095】
図2は、各同族体のパーセントを示している。同族体組成の有意差は、アジュバントバッファ間ではなんら見出せず、そして同族体組成は、ソルビトールバッファでは、時間が経過しても一定であった。
【0096】
実施例5:実施例6及び7で使用する組成物の調製
5.1 CpG(CpG 2006を、すべての実施例で使用する)を有するPRAMEの調製
5.1.1 実施例6及び実施例7で使用する、ASA(150mmのNaCl)と一緒にCpGを有するPRAMEの調製
実験1及び実験2
30%(w/v)のスクロース溶液(注射用水中で調製した)を、注射用水に加え、5%のスクロース濃度にした。次いで、トリス−HClバッファ100mM pH9.5を加えて、トリスバッファ濃度を75mMにした。次いで、ホウ酸塩バッファ100mM pH9.8を加えて、ホウ酸塩バッファ濃度を5mMにした。10%(w/v)のPoloxamer188 溶液(注射用水中で調製した)を注射用水に加えて、0.313%の濃度にした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、約20mg/ml濃度の(注射用水中)CpG溶液を加えて、最終製剤において、1050μg/mlの濃度にした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、PRAME抗原を加えて、タンパク質濃度を1250μg/mlにした。その混合物を、室温で15分間、磁気撹拌した(150回転/分)。pHをチェックした(9.51)。得られた混合物を、3mlのガラスバイアルの中に0.5mlだけ入れ、次いで凍結乾燥させた。
【0097】
図3は、PRAMEに関して使用した凍結乾燥サイクルを例示している(所要時間=40時間)。
【0098】
実施例2で調製した150mMのNaClを含む水性アジュバント組成物625μlで、得られた凍結乾燥ケーキを再構成した。その凍結乾燥ケーキは、16mMのトリス、4mMのホウ酸塩、4%のスクロース、0.24%のPoloxamer 188、840μg/mlのCpG、及び1000μg/mlのPRAMEから成る最終組成物による再構成の後、適正な抗原/アジュバント比を有する1.25倍過剰の抗原用量を含んでいた。
【0099】
5.1.2 実施例7の実験1における「液体製剤」(70mMのNaCl)のための、CpGを有するPRAMEの調製
濃縮アジュバント製剤
10倍濃縮されたpH6.1のPBS modを、注射用水に加えて10倍に希釈し、最終製剤において1倍濃縮バッファにした。リポソームと、400μg/mlに予備希釈されたQS21から作られた予備混合溶液を、別々に調製した。そのプレミックスを、室温で、15分間、磁気混合した。プリミックスで使用した濃縮リポソームは、40mg/mlのDOPC、10mg/mlのコレステロール、及び2mg/mlの3−脱アシル化MPLで作られている。そのプリミックスを、PBSに加えて、最終製剤において、MPL濃度を200μg/ml及びQS21濃度を200μg/mlにした。その混合物を、室温で、15〜30分間、磁気撹拌した。次いで、約23mg/mlでCpGを加えて、最終濃度を1680μg/mlにした。その混合物を、室温で、15〜30分間、磁気撹拌した。6.1+/−0.1であるようにpHをチェックした。ASを、0.22μmのPESフィルターで濾過し、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0100】
最終製剤
25%のスクロース、25mM pH9.8のホウ酸塩、及び10%のLutrolを、WFIに加えて、それぞれ、最終製剤において、9.25%、5mM、及び0.24%とした。2倍濃縮 AS+CpG製剤を加えて、最終製剤では1倍濃縮にした。混合物を室温で5分間攪拌した。スクロース3.15%とホウ酸塩5mM中PRAME抗原を加え、そしてその混合物を室温で5分間撹拌した。
【0101】
5.1.3 実施例7の実験2における「液体製剤」のための、CpGを有するPRAMEの調製
濃縮アジュバント製剤
液体製剤用のASAを、以下のようにして調製した。リン酸塩バッファ1M(pH6.1、100倍希釈する場合)を、磁気撹拌しながら、WFIに加えて、濃縮リポソームにおける50mMのリン酸塩濃度を考慮しながら、最終濃度を45mMにした。次いで、ソルビトール35%を、最終的には21.15%の濃度にした。その混合物に対して、40mg/mlのDOPC、10mg/mlのコレステロール、及び2mg/mlの3−脱アシル化MPLで作られた濃縮リポソームを加えて、最終MPL濃度を450μg/mlにした。QS21バルク(5000μg/ml程度で)を加えて、QS21の最終濃度を450μg/mlにした。混合物を室温で15分間撹拌する。pHをチェックし、pH6.1+/−0.1に調整した。このASAの最終濃度は、それぞれ、MPLが450μg/ml、QS21が450μg/ml、リン酸塩が45mM、NaClが22.5mM、ソルビトールが21.15%であった。
【0102】
最終製剤
30%(w/v)のスクロース溶液(注射用水中で調製した)を、注射用水に加えて、最終製剤におけるスクロース濃度を4%にした。次いで、トリス−HClバッファ1M pH9.0を加えて、最終製剤におけるトリスバッファ濃度を16mMにした。次いで、ホウ酸塩バッファ100mM pH9.8を加えて、最終製剤におけるホウ酸塩バッファ濃度を4mMにした。次いで、10%(w/v)のPoloxamer188 溶液(注射用水中で調製した)を加えて、最終製剤における濃度を0.24%にした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、約20mg/ml濃度の(注射用水中)CpG溶液を加えて、最終製剤における濃度を840μg/mlにした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、PRAME抗原バッファ(ホウ酸塩5mM − スクロース3.15% pH 9.8)を加えて、PRAME抗原濃度を1000μg/mlに調整した。次いで、PRAME抗原を加えて、最終製剤においてタンパク質濃度を8μg/mlにした。その混合物を、室温で15分間、磁気撹拌した(150回転/分)。ソルビトール中4.5倍濃縮ASを加えて、MPL及びQS21の最終濃度を100μg/mlにした。pHはをチェックした(+/−8.0)。
【0103】
5.1.4 実施例7の実験1におけるASA(ソルビトール)及びASA(スクロース)のための、CpGを有するPRAMEの調製
30%(w/v)のスクロース溶液(注射用水中で調製した)を、注射用水に加えて、製剤におけるスクロース濃度を5%にし、次いで、ホウ酸塩バッファ100mM pH9.8を加えて、この製剤におけるホウ酸塩バッファ濃度を5mMにし、次いで、トリス−HClバッファ1M pH9.0を加えて、20倍希釈し、この製剤におけるトリスバッファ濃度を5mMにした。次いで、10%(w/v)のPoloxamer188 溶液(注射用水中で調製した)を加えて、製剤における濃度を0.3%にした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、約20mg/ml濃度の(注射用水中)CpG溶液を加えて、製剤における濃度を1050μg/mlにした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、PRAME抗原を加えて、最終製剤においてタンパク質濃度を1250μg/mlにした。その混合物を、室温で15分間、磁気撹拌した(150回転/分)。pHを9.4に調整した。得られた混合物を、3mlのガラスバイアルの中に0.5mlだけ入れ、次いで、凍結乾燥させた。
【0104】
ASA(ソルビトール)を、実施例1に記載したようにして調製したが、以下の点がわずかに異なる:すなわち、ソルビトール濃度は4.6%であり、そしてQS21を、希釈した濃縮リポソームに添加する前に、400μg/mlに予備希釈した。
【0105】
ASA(スクロース)を、実施例1に記載したようにして調製したが、以下の点が異なる:すなわち、ソルビトールの代わりにスクロースを使用し(30%w/vスクロース溶液の原液を使用し、そして最終的なスクロース濃度は8.3%である)、そしてQS21を、希釈された濃縮リポソームに添加する前に、400μg/mlに予備希釈した。
【0106】
その得られた凍結乾燥ケーキを、625μlの水性アジュバント組成物で再構成した。最終組成物は、4mMのトリス、4mMのホウ酸塩、4%のスクロース、0.24%のPoloxamer 188、840μg/mlのCpG、及び1000μg/mlのPRAMEを含んでいた。
【0107】
5.1.5 実施例7の実験2におけるASA(ソルビトール)のための、CpGを有するPRAMEの調製
30%(w/v)のスクロース溶液(注射用水中で調製した)を、注射用水に加えて、製剤におけるスクロース濃度を5%にした。次いで、トリス−HClバッファ1M pH9.0を加えて、50倍に希釈し、この製剤におけるトリスバッファ濃度を20mMにした。次いで、ホウ酸塩バッファ100mM pH9.8を加えて、20倍に希釈し、この最終製剤におけるホウ酸塩バッファ濃度を5mMにした。次いで、10%(w/v)のPoloxamer188 溶液(注射用水中で調製した)を加えて、製剤における濃度を0.3%にした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、約20mg/ml濃度の(注射用水中)CpG溶液を加えて、製剤における濃度を1050μg/mlにした。その混合物を、室温で5分間、磁気撹拌した(150回転/分)。次いで、PRAME抗原を加えて、最終製剤においてタンパク質濃度を1250μg/mlにした。その混合物を、室温で15分間、磁気撹拌した(150回転/分)。pHは9.1に調整した。得られた混合物を、3mlのガラスバイアルの中に0.5mlだけ入れ、次いで、凍結乾燥させた。
【0108】
ASAソルビトールを、実施例1記載のようにして調製した。その得られた凍結乾燥ケーキを、625μlの水性アジュバント組成物で再構成した。最終組成物は、16mMのトリス、4mMのホウ酸塩、4%のスクロース、0.24%のPoloxamer 188、840μg/mlのCpG、及び1000μg/mlのPRAMEを含んでいた。
【0109】
5.2 CpGを有するNY−ESO1の調製
5.2.1 実施例6における、CpGを有するNY−ESO1の調製
Na/Kリン酸塩バッファ200mM pH 6.3を、磁気撹拌しながら、注射用水に加えて20倍に希釈して、最終製剤において12.5mMにした。次いで、その混合物に対して、以下の賦形剤を、以下の順序で加えた:すなわち、10%w/vのモノチオグリセロールを最終的に0.3125%に、5%w/vのPoloxamer188を0.0625%に、25%のスクロースを最終的に5%に、そして287mMのL−アルギニンベースを6.25mMにする。次いで、この混合物に対して約20mg/mlのCpGバルクを加えて、最終製剤において1050μg/mlの濃度にした。その混合物を、室温で、磁気撹拌(約150回転/分)しながら、10分間保持した。pHを、チェックし、7.1+/−0.3であるようにした。磁気撹拌を増加させて渦巻きを起こした。次いで、NY−ESO1を加えて、最終濃度を750μg/mlにした。次いで、磁気撹拌を約150回転/分まで低下させ、混合物を室温で5分間撹拌した。アリコートを採取して、最終的なpH(それは、7.02でなければならない)をチェックした。次いで、最終バルクを凍結乾燥した。
【0110】
得られた凍結乾燥ケーキを、625μlのASAバッファ(150mMのNaCl及びソルビトール)で、再構成した。
【0111】
実施例6.バッファとしてソルビトールを含むアジュバント組成物における「塩析」の防止
図4は、塩濃度を5mMに低減し且つアジュバント組成物中にソルビトールを含有させると、(それぞれ実施例5.1.1及び5.2.1で調製された)免疫原性組成物におけるPRAME及びNY−ESO−1の両方の「塩析」が防止されることを示している。図4において:
1.ASA 150mM NaClバッファにおいて再構成されたPRAME抗原。
2.ASAソルビトールバッファにおいて再構成されたPRAME抗原。
3.ASA 150mM NaClバッファにおいて再構成されたNYESO−1抗原。
4.ASAソルビトールバッファにおいて再構成されたNYESO−1抗原。
【0112】
図4は、ASA(150mMのNaCl)及びASA(ソルビトール)において再構成されたPRAMEとNYESO−1の画像による比較である。以上のように、ASA(150mMのNaCl)において再構成されたPRAMEは、ASA(ソルビトール)において再構成されたPRAMEと比較して、濁っているように見える。同様に、ASA(150mMのNaCl)において再構成されたNY−ESOは、ASA(ソルビトール)において再構成されたNY−ESO抗原と比較して、濁っているように見える。
【0113】
実施例7 In vivoマウスモデル
実験1:
6〜8週齢の20匹の雌のCB6F1マウス(C57BL/6とBalb/Cマウスとの雑種)から成る7つの群を、ヒト用量の1/10に相当するASA+CpGの一定用量(5μgのMPL、5μgのQS21、及び42μgのCpG7909を含む50μL)中に配合したPRAMEタンパク質の筋注(二週間ごとに、左右の腓腹筋中に交互に注射)で2回免疫した。下記のように、最後の免疫化から14日後に、マウスの4つの群(各群n=8)に対して、10e5 CT26−PRAME腫瘍細胞を皮下に接種した。マウスの7つの群は:
−第1群:バッファ
−第2群:PRAMEタンパク質が沈殿する「典型的な」ASA(150mMのNaCl)中に再懸濁させた共凍結乾燥されたPRAME + CpG
−第3群:ASA(スクロース)中に再懸濁させた共凍結乾燥されたPRAME+CpG
−第4群:ASA(スクロース − 25℃で48時間インキュベーション)中に再懸濁させた共凍結乾燥されたPRAME+CpG
−第5群:ASA(ソルビトール)中に再懸濁させた共凍結乾燥PRAME+CpG
−第6群:PRAME+ASA − 70mMのNaCl+CpGを含む「液体」製剤
−第7群:PRAME+ASA − 70mMのNaCl+CpG(+poloxamer)を含む「液体」製剤
であった。
【0114】
最後の免疫化から7日後に、サイトカインを分泌するT細胞の能力による細胞性応答を分析した(3匹のマウスのn=4群)。
【0115】
すべてのマウスは、ASA+CpGアジュバント系(5μgのMPL、5μgのQS21、及び42μgのCpG)のヒト用量の1/10中0.4μgのPRAMEを受容した。
【0116】
結果:
腫瘍成長
1群当たり、表面(mm)(+標準偏差(SD))によって測定された、時間経過に対する平均腫瘍成長が、図6に示してある。PRAMEを配合したASA(150mMのNaCl)+CpG、及びASA液体製剤中PRAMEは、PRAME ASA(ソルビトール)+CpGに比べて、腫瘍防御がより低い(腫瘍成長がより大きい)。
【0117】
細胞性応答(2回目の免疫化の7日後 − 1群処理当たり3匹のマウスから成るn=4群):
PRAME ASA−CpG腫瘍抗原によるマウスの免疫化の後にIFNγ及びTNFαのようなサイトカインを産生できるCD4及びCD8T細胞の頻度を使用して、機能的な細胞性応答を誘導する異なる製剤の能力を示す。第2免疫化の7日後に、サイトカイン(IFNγ及びTNFα)を産生するCD4及びCD8T細胞のパーセンテージを、免疫マウスの脾臓細胞に関する細胞内サイトカイン染色(ICS)によって測定した。
【0118】
図5には、IFNγ及びTNFαを産生するCD4の%(平均+/―標準偏差)が示してある。
【0119】
この実験では、測定可能なCD8反応は、見出されなかった。
【0120】
ASA(150mMのNaCl)+CpGに配合されたPRAMEタンパク質は、沈殿することが示され、また、ASA(ソルビト−ル)+CpG中に配合されたPRAMEと比較して、より低い特異的なT細胞応答を誘導する。同様に良好なPRAME特異的CD4応答は、PRAMEタンパク質を、ASA(ソルビトール)+CpG中に、また、及びASA「液体」製剤(70mMのNaCl)+CpG中に配合する時に得られた(統計的に差はない)。体液性免疫応答も試験したが、2つの注射後のデータは解釈できなかった。
【0121】
実験2:
6〜8週齢の24匹の雌のCB6F1マウス(C57BL/6とBalb/Cマウスとの雑種)から成る4つの群を、ヒト用量の1/10に相当するASA+CpGの一定用量(5μgのMPL、5μgのQS21、及び42μgのCpG7909を含む50μL)中に配合したPRAMEタンパク質の筋注(二週間ごとに、左右の腓腹筋中に交互に注射)で4回免疫した。下記のように、最後の免疫化から14日後に、マウスの4つの群(各群n=12)に対して、10e5 CT26−PRAME腫瘍細胞を皮下に接種した。マウスの4つの群は:
−第1群:バッファ
−第2群:PRAMEタンパク質が沈殿する「典型的な」ASA(150mMのNaCl)中に再懸濁させた共凍結乾燥されたPRAME + CpG
−第3群:ASA(ソルビトール)中に再懸濁させた共凍結乾燥されたPRAME+CpG
−第4群:PRAME+ASA − 「液体」製剤+CpG(+poloxamer)
であった。
【0122】
最後の免疫化の14日後に、免疫応答を、以下の通りに異なる読み出しを使用して分析した:
−体液性応答(n=12)
−サイトカインを分泌するT細胞の能力による細胞性応答(3匹のマウスから成るn=4群)
−腫瘍接種に対する防御効果(n=12)。
【0123】
すべてのマウスは、ASA+CpGアジュバント系(5μgのMPL、5μgのQS21、及び42μgのCpG)のヒト用量の1/10中0.4μgのPRAMEを受容した。
【0124】
結果:
腫瘍成長
1群当たりの、表面(mm)(+SD)によって測定された時間経過に対する平均腫瘍成長を、図9に示してある。PRAME配合ASA(150mMのNaCl)+CpGは、PRAME ASA(ソルビトール)+CpGに比べて、より低い腫瘍防御(より大きい腫瘍成長)を誘導する。同様な防御は、PRAME ASA(ソルビトール)+CpGと、ASA液体製剤+CpG中PRAMEとに関しても観察された。
【0125】
サンプル分析:体液性応答:
後述するように、マウス血清(n=12)を、4回の免疫化の最後から14日後に、PRAME特異的抗体の存在に関して、ELISAによって試験した。抗体応答(総Ig)を、被覆抗原として精製組換えPRAMEタンパク質を使用するELISAによって、評価した。免疫動物からの血清を、PRAME特異的抗体の存在に関して分析した。4回の免疫化後に得られた標準力価の幾何平均(n=12匹のマウス)+/−95%信頼区間が、図7に示してある。典型的なASA(150mMのNaCl)を含むPRAME/ASA+CpGは、非常に小さい抗体応答を誘導し、一方、ASA(ソルビトール)を含むPRAME/ASA+CpGは、非常に高い抗体力価を誘導する。この応答は、液体製剤ASAによって誘導される応答と同様である。
【0126】
細胞性応答(4回目の免疫化から14日後 − 1群処理当たり3匹のマウスから成るn=4群):
PRAME ASA−CpG腫瘍抗原によるマウスの免疫化の後にIFNγ及びTNFαのようなサイトカインを産生できるCD4及びCD8T細胞の頻度を使用して、機能的な細胞性応答を誘導する異なる製剤の能力を示す。4回目の免疫化から14日後に、サイトカイン(IFNγ及びTNFα)を産生するCD4及びCD8T細胞のパーセンテージを、免疫マウスの脾臓細胞に関する細胞内サイトカイン染色(ICS)によって測定した。
【0127】
図8には、IFNγ及びTNFαを産生するCD4の%(平均+/―標準偏差)が示してある。p値は、0.05より大幅に低く、第2群と、第3群及び第4群との間の有意差を証明している。
【0128】
この実験では、測定可能なCD8反応は、見出されなかった。
【0129】
ASA(150mMのNaCl)+CpGに配合されたPRAMEタンパク質は、沈殿することが示され、また、ASA(ソルビトール)+CpGに配合されたPRAMEと比較して、統計的により低い特異的なT細胞応答を誘導する。対照的に、同様に良好なPRAME特異的CD4応答は、PRAMEタンパク質を、ASA(ソルビトール)+CpG中に、また、ASA「液体」製剤+CpG中に配合する時に得られた。
【0130】
方法
CT26−PRAME腫瘍モデル及び腫瘍成長
CT26−PRAME細胞系は、PRAMEのcDNAをコードする哺乳類細胞発現プラスミドpCDNA3(カリフォルニア州カールズバッドにあるInvitrogen社製)をCT26結腸癌細胞系に形質導入することによって、発生させた。G418(200μg/ml)による選択及び限界希釈クローニングにより、定量的リアルタイムPCRによって測定されるPRAME(CT26−PRAME)を発現するクローンを得た(10e−3 PRAME mRNAコピー/ヒト腫瘍によるPRAME発現レベルの範囲内にあるマウスβアクチンのコピー)。
【0131】
CT26 PRAME細胞は、10%ウシ胎仔血清、1%L−グルタミン、1%ペニシリン−ステプトマイシン、1%非必須アミノ酸、1%ピルピン酸ナトリウム、及び0.1%β−メルカプトエタノールを有するRPMI培地において、5%COの存在下で37℃で、in vitroで培養した。細胞を、トリプシン処理し、無血清培地で2度洗浄し、そして、200μlのRPMI培養液の中に入れて注射剤とし、上記したようにPRAMEで最後に免疫した14日後に、4つの群のCB6F1マウスの右側腹部の皮下に注入した。個々の腫瘍成長を、週2回測定した。各腫瘍の2つの主直径の積を時間の経過とともに記録し、そして、そのデータを、動物の各群における平均腫瘍表面(mm)として示す。
【0132】
サンプル分析:体液性応答
血清を添加する前に、イムノプレートを、4℃で一晩、PRAME抗原で被覆した。37℃で90分間、血清と反応させた後、マウス免疫グロブリンに対するビオチン化ウサギ完全抗体を、37℃で90分間、加えた。抗原抗体複合体は、37℃で30分間、ストレプトアビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体と一緒にインキュベートすることによって、可視化された。次いで、この複合体は、室温で10分間、テトラメチルベンジジン(TMB)を添加することによって、可視化され、そして、その反応を0.2MのHSOで停止させた。光学密度は、450nmで記録した。
【0133】
サンプル分析法:細胞性応答(IFNg/TNFa産生)
CD4及びCD8T細胞によるIFNg及びTNFa産生は、PRAMEタンパク質配列全体をカバーするオーバーラップしている15merペプチドのプールで2時間刺激した後、免疫マウス(1群当たり3匹のマウスから成る4つの群)の脾臓細胞に関して細胞内サイトカイン染色(ICS)を使用してフローサイトメトリー(Becton Dickinsonから入手されるLSR2)で測定した。
【0134】
T細胞の刺激
−PRAME配列全体をカバーする、11アミノ酸だけオーバーラップしている123種の15merペプチドのプールによって、免疫動物の脾臓細胞を再刺激した。前記ペプチド(1μg/ml/ペプチド)を、2μg/mlの抗CD49d及び2μg/mlの抗CD28を含む、最終体積200μlのRPMI 5%FCS中で、96穴プレート(U)において37℃で2時間、10+6個のT細胞(脾臓細胞)と混合する。
−培養の後、50μlのブレフェルジン(1/1000)を、RPMI 5%FCS中に加えた。
【0135】
細胞内の染色
・CD4/CD8染色:
−細胞を、96穴プレート(円錐形ウェル)に移した。
−4℃で5分間、1000回転/分で遠心分離
−250μlのFACSバッファ(PBS1%FCS)で洗浄
−細胞のペレットを、4℃で10分間、50μlのFACSバッファ中2.4G2 1/50を使用してインキュベートした。
−50μlのFACSバッファ中Master mix CD4−PE(希釈Mab:1/200)及びCD8PerCP(希釈 Mab:1/200)を、4℃で30分間にわたって添加した。
−FACSバッファ(1200回転/分 − 10分間)中での洗浄。
【0136】
・細胞の透過処理:
−4℃で20分間にわたって200μlのcytoFix−cytoPerm溶液を使用して、ペレットをインキュベートした。
−permWASHで1回洗浄し(1200回転/分−10分間)そのpermWASH溶液を10倍に濃縮し、滅菌水で希釈する。
【0137】
・IFNγ及びTNFα細胞内染色:
−50μlのpermWASH1x溶液中Mix IFNγ APC(希釈Mab:1/50)及びTNFα FITC(希釈Mab:1/50)を使用して、4℃で2時間、ペレットをインキュベートした。
−permWASH 1X (1200回転/分 − 10分間)で洗浄
−ペレットを、FACSバッファ中に再懸濁させた。
−FACS分析。
【0138】
Brefeldin (Gologi Plug):BD カタログ番号555029
Cytofix/cytoperm:Pharmingen (BD) カタログ番号 554722
Perm/washバッファ:Pharmingen(BD) カタログ番号 554723
ラット抗マウスCD49d 精製NA LE:BD カタログ番号 553154
ラット抗マウスCD28 精製NA LE:BD カタログ番号 553295
ラット抗マウスCD8a perCp:BD カタログ番号553036
ラット抗マウスCD4 PE:BD カタログ番号556616
ラット抗マウスIFNγ APC:BD カタログ番号554413
ラット抗マウスTNFα FITC:BD カタログ番号554418
抗マウスCD16/CD32 (2.4G2) Becton Dickinson カタログ番号553142(0.5mg/ml)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原を含む免疫原性組成物であって、塩化ナトリウム濃度又は前記組成物のイオン強度が100mM未満である、前記免疫原性組成物。
【請求項2】
前記抗原又は抗原製剤が、5mM超、10mM超、15mM超、20mM超、30mM超、40mM超、50mM超、60mM超、70mM超、80mM超、90mM超、又は100mM超の塩化ナトリウム濃度を含むか又はイオン強度を有する溶液中に溶解後に、沈殿、凝固、又は凝集する任意の抗原である、請求項1記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記塩化ナトリウム濃度が100mM未満であり、前記抗原がPRAME又はその断片若しくは誘導体である、請求項1又は2記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記塩化ナトリウム濃度が100mM未満であり、前記抗原がNY−ESO−1又はその断片若しくは誘導体である、請求項1又は2記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記塩化ナトリウム濃度又はイオン強度が、約100mM未満、約90mM未満、約80mM未満、約70mM未満、約60mM未満、約50mM未満、約40mM未満、約30mM未満、約20mM未満、又は約15mM未満である、請求項1〜4のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記塩化ナトリウム濃度又はイオン強度が10mM未満である、請求項5記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記塩化ナトリウム濃度又はイオン強度が5mM未満である、請求項6記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
実質的に塩化ナトリウムを含まない、請求項7記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
非イオン性等張性剤を更に含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記非イオン性等張性剤がポリオールである、請求項9記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記ポリオールがソルビトールである、請求項10記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記ソルビトールの濃度が約3%〜約15%(w/v)である、請求項11記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記ソルビトールの濃度が約4%〜約10%(w/v)である、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
約5mMの塩化ナトリウム及び5%〜6%w/vのソルビトールを含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
1種又は複数種の免疫刺激剤を含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記免疫刺激剤がサポニン及び/又はTLR−4アゴニストである、請求項15記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
1種又は複数種の前記免疫刺激剤がリポソームの形態である、請求項16記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記サポニンがQuilA又はその誘導体である、請求項16又は17記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記QuilA誘導体がQS21である、請求項18記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記TLR−4アゴニストが3D−MPLである、請求項16〜19のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
CpGオリゴヌクレオチドを更に含む、請求項16〜20のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
医学で使用するための、請求項1〜21のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
癌の治療で使用するための、請求項1〜21のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
癌を治療するための医薬の製造における、請求項1〜21のいずれか1項記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項25】
a.任意に免疫刺激性オリゴヌクレオチドと一緒に、抗原を凍結乾燥する工程;及び、
b.工程a)の前記凍結乾燥組成物を、NaCl濃度又はイオン強度が100mM未満、90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、15mM未満、又は10mM未満である水性アジュバント組成物によって再構成する工程、
を含む、請求項1〜22のいずれか1項記載の免疫原性組成物を製造する方法。
【請求項26】
a.任意にCpGと一緒に共凍結乾燥された凍結乾燥抗原;及び、
b.NaCl濃度又はイオン強度が100mM未満、90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、15mM未満、又は10mM未満である水性アジュバント組成物、
を含むキット。
【請求項27】
前記水性アジュバント組成物が、TLR−4アゴニスト、及びリポソーム製剤中のサポニン、及び非イオン性等張性剤を含む、請求項25記載の方法又は請求項26記載のキット。
【請求項28】
前記非イオン性等張性剤がソルビトールである、請求項27記載の方法又はキット。
【請求項29】
前記ソルビトールの濃度が、約3%〜15%(w/v)、約4%〜10%(w/v)、又は約5%〜6%(w/v)である、請求項28記載の方法又はキット。
【請求項30】
前記サポニンがQS21である、請求項27又は28記載の方法又はキット。
【請求項31】
前記TLR−4アゴニストが3D−MPLである、請求項27〜30のいずれか1項記載の方法又はキット。
【請求項32】
前記水性アジュバント組成物における前記NaCl濃度が約5mMである、請求項25〜31のいずれか1項記載の方法又はキット。
【請求項33】
前記抗原が、ある濃度の塩化ナトリウムを含む溶液、又はイオン強度が10mM超、20mM超、30mM超、40mM超、50mM超、60mM超、70mM超、80mM超、90mM超もしくは100mM超である溶液中に溶解後に沈殿、凝固、又は凝集する、請求項25〜32のいずれか1項記載の方法又はキット。
【請求項34】
前記抗原がPRAME又はNY−ESO−1から選択される、請求項25〜33のいずれか1項記載の方法又はキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−529465(P2012−529465A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514448(P2012−514448)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058018
【国際公開番号】WO2010/142686
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】