説明

低屈折率を有するデンドリマー化合物、その製造方法、およびその合成原料化合物

【課題】低屈折率を有するデンドリマー化合物、その製造方法、およびその合成原料化合物を提供する。
【解決手段】1,3−プロパンジオール、ペンタエリスリトール、またはパーフルオロアルカン二酸ペンタエリスリトールエステルの各水酸基をY−Rf−C(O)−残基でエステル化したポリエステル化合物、またはその溶媒和物。ここで、Rfは、各出現において同一または異なり、−(CFn2−、または−(CFO)−(CO)−(CO)−(Cs−(式中、sが1のとき、(Csは、O−CO側の末端にのみ存在する。)を表し、Yは、各出現において同一または異なり、水素原子、フッ素原子、または2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折率を有するデンドリマー化合物、その製造方法、およびその合成原料化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでにも、低屈折率を有する部材を製造するために用いられる材料の、多くの報告がある。しかしながら、これらの材料を、低屈折率を示す膜(またはフィルム)の製造に用いる場合には、いくつかの問題がある。
低屈折率化の方法は、材料の構造設計によるものと、分子構造の設計によるものに大別できるが、材料の構造設計による低屈折率化を行った例として、特許文献1では、中空構造を有する微粒子が提案されている。
しかし、このような微粒子には、次のような問題点:(1)微粒子であるので、凝集しやすい点、(2)分子分散できない点、(3)中空構造を有するので、強度が低い点、(4)球形であるため膜の最表面に露出した場合に曲面を形成し、これによって、膜の表面が汚れやすく、かつ、傷つきやすくなる点、が存在する。これらの理由から、このような微粒子は、実用的な強度を持つ膜の作製するには、不向きである。
一方、分子構造の設計によって低屈折率化を行った例として、分子内にフッ素原子を導入した多くの例が存在する。フッ素を分子中に多く含む化合物(特に、ポリマー)は、低屈折率を有することが知られており、このような含フッ素ポリマーは、その低屈折率性によって、実際に、優れた光学材料として利用されている。このようなフッ素化合物の優れた特性は、以下に述べるフッ素原子およびC−F結合の性質に由来すると考えられている。すなわち、フッ素は水素に次いで原子半径が小さな原子であり、原子半径が小さい割に質量が大きいこと、さらにはフッ素の電気陰性度が高いという特徴を持っている。これらのフッ素原子の性質によって、C−F結合は結合エネルギーが高く安定であり、また外界誘起されにくい低い分極率(動的分極率)を示す。この、動的分極率が低いことにより屈折率が低下する。一方、フッ素化合物は、優れた撥水・撥油性、非粘着性を有する。この優れた性質から、含フッ素ポリマーは、衣服の撥水もしくは撥油処理または防汚処理、フライパンなどの非粘着加工などに利用されている。しかし、この含フッ素ポリマーの優れた性質は、低屈折率を示す膜(またはフィルム)の製造においては、成形性の悪さ、汎用溶剤への溶解性の低さ、他の材料への相溶性の低さ、密着性の低さ、膜強度が弱い等の問題を生じる。
含フッ素ポリマーから形成される高分子膜の技術としては、多官能含フッ素エポキシ樹脂や多官能含フッ素アクリル樹脂による、架橋構造による高分子膜があり、他の材料への相溶性、密着性、膜強度等はある程度改善できても、これらは原理的に高分子中のフッ素含有率を高くすることができないので、十分な低屈折率を得ることが困難である
一方、低屈折率および密着性等を有する含フッ素ポリマーとして、例えば、特許文献2では、下記一般式(1)で表わされるモノマー単位を含むことを特徴とする含フッ素オキセタン共重合体が提案されている。
【化1】

[一般式(1)中、置換基Rは、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基であり、置換基Rfは、式C2n−1、式C2nHまたは式C2n+1(それぞれの式中のnは2〜12の整数である。)で表される一価の含フッ素基であり、繰り返し数mは、1〜10の整数である。]
また、低屈折率および有機溶媒溶解性等を有する含フッ素ポリマーとして、例えば、特許文献3には、一般式[1]
【化2】

で表される含フッ素重合性単量体(一般式[1]中、aは、1〜4の整数を表す。)で表される含フッ素重合性単量体を用いて重合した高分子化合物が提案されている。
しかし、これらの含フッ素ポリマーもまた、フッ素含有率が高くないので、十分な低屈折性は期待できないと考えられる。
一方、含フッ素化合物として、特許文献4には、CFCOO(CHOCOCF(式中、pは2以上10以下の自然数である。)
が、開示されている。
また、非特許文献1には、
【化3】

開示されている。
また、非特許文献2には、(CCOOCHCが開示されている。
また、非特許文献3には、(HCCOOCHCが開示されている。
また、非特許文献4には、(C13COOCHCが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−213366号公報
【特許文献2】特開2001−106779号公報
【特許文献3】特開2007−119504号公報
【特許文献4】特開2005−268094号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ロシアン・ジャーナル・オブ・アプライド・ケミストリー(Russian Journal of Applied Chemistry),2006年,Vol.79,No.5,pp.861−864
【非特許文献2】ザ・ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー(The Journal of Physical Chemistry),1961年,pp.1885−1886
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society),1958年,80(23),pp.6442−6446
【非特許文献4】ロシアン・ジャーナル・オブ・ジェネラル・ケミストリー(Russian Journal of General Chemistry),2006年,Vol.76,No.1,pp.1795−1800
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた低屈折率を有し、かつフィルムを形成可能な含フッ素化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の3つの条件:
(条件1)フッ素含有率が高い;
(条件2)3次元的に嵩高い構造を有する;および
(条件3)密着性や相溶性など材料としての使いやすさを求めるために、末端にダイポールを発現する密着性基を有する;
を兼ね備えた分子によって、前記の課題を解決できると考え、鋭意検討の結果、これらを満たす化合物として、特定のデンドリマー構造を有するフッ素化合物を創案し、更なる研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]に記載の化合物等を提供する物である。
[1]

【化4】

[式中、
Rfは、各出現において同一または異なって、
(1)−(CFn2
(式中、n2は、各出現において同一または異なって、1〜20の整数を表す。)
、または
(2)−(CFO)−(CO)−(CO)−(Cs
(式中、p、q、およびrは、それぞれ、各出現において同一または異なって、0〜15の整数を表し、sは、0または1を表し、p、q、およびrのうち少なくとも1つは0ではなく、かつp、q、およびrの和は1〜30の整数である。また、sが1のとき、(Csは、O−CO側の末端にのみ存在する。)
を表し、
Yは、各出現において同一または異なって、
(1)水素原子、
(2)フッ素原子、または
(3)2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基を表し、
n1は、1〜20の整数を表す。

で表される化合物
(但し、
【化5】

(C13COOCHC、
(CCOOCHC、
(HCCOOCHC、および
CFCOO(CHOCOCF(式中、pは2以上10以下の自然数である。)を除く。)
、またはその溶媒和物。
[2]
Yが、いずれも、水素原子である
前記[1]に記載の化合物。
[3]
Yが、いずれも、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である
前記[1]に記載の化合物。
[4]
Yが、
(1)式
【化6】

(式中、
a1、Ra2、およびRa3は、同一または異なって、
1)水素原子、
2)アルキル基、
3)ペルフルオロアルキル基、
4)ヒドロキシ基で置換されたアルキル基、または
5)保護されたヒドロキシ基で置換されたアルキル基
を表す。)
で表される基、
(2)式
【化7】

(式中、
b1、およびRb2は、同一または異なって、
水素原子、または
炭素数1〜10の炭化水素基を表し、および
b3は、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される基、および
(3)式
【化8】

(式中、
Rcは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される基、
(4)式
【化9】

(式中、
d1は、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基、または保護されていてもよいヒドロキシ基を表し、
ORd2、およびORd3は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rd2、およびRd3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(5)式
−CRe1=CRe2 (e)
(式中、
e1およびRe2は、同一または異なって、水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す。)
で表される基、
(6)式
【化10】

(式中、
Rf1は、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基、を表し、
ORf2、およびORf3は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rf2、およびRf3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(7)式
【化11】

(式中、
ORg1、ORg2は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rg2、およびRg3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(8)式
【化12】

(式中、
ここでORh1、ORh2、およびORh3は同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rh1、Rh2、およびRh3から選択される2個または3個が連結して2価の基を形成していてもよい。)
から選択される
前記[3]に記載の化合物。
[5]
n1が、6であり、および
Rfが、−(CF−である
前記[1]〜前記[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6]
工程1:前記[3]または前記[4]に記載の化合物を、

【化13】

[式中、
Xは、
ヒドロキシ基またはハロゲン原子を表し、および
その他の記号は、
前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させることを含む方法によって製造される含フッ素デンドリマー化合物。
[7]
前記[3]または前記[4]に記載の化合物を、

【化14】

[式中、
Xは、ヒドロキシ基またはハロゲン原子を表し、および
Yが、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基であり、
その他の記号は、
前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させること、および
工程2:工程1の反応で生じた化合物を、式
【化15】

[式中の記号は、前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させること、
を含む方法によって製造される
含フッ素デンドリマー化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、優れた低屈折率を有し、かつフィルムを形成可能である。
また、本発明の化合物は、優れた成形性、汎用溶剤への優れた溶解性、他の材料への優れた相溶性、および優れた密着性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、前記[1]に記載の本発明の化合物を詳細に説明する。
本明細書中、特に断りのない限り、「ヒドロキシ基の保護基」としては、tert−ブチル(t−Bu)基、およびtert−ブトキシカルボニル(Boc)基などのt−ブチルエーテル系の保護基;ベンジルオキシカルボニル(Z)基、およびベンジル(Bn)基などのベンジルエーテル系の保護基;メトキシメチル(MOM)基、および2−メトキシエトキシメチル(MEM)基などのアルコキシエーテル系の保護基;2−テトラヒドロピラニル(THP)基、p−メトキシベンジル(p−MeOBn)基、トリメチルシリル(TMS)基、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、およびtert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基などのシリルエーテル系の保護基などが挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「炭素数1〜10の炭化水素基」としては例えば、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、およびこれらの組み合わせ(例、アラルキル基)であって、炭素数1〜10(好ましくは、炭素数1〜8)のものが挙げられる。なかでも、合成の容易さの観点から、好ましくは1である。
本明細書中、特に断りのない限り、、「炭素数1〜10のアルキル基」は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基等が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「炭素数2〜11のアルコキシメチル基」は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよく、その例としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシメチル基、およびブトキシメチル基等が挙げられる。
【0010】
まず、式(Ia)、式(Ib)、および式(Ic)中の各記号を説明する。
【0011】
Rfは、各出現において同一または異なって、
(1)−(CFn2
(式中、n2は、各出現において同一または異なって、1〜20の整数を表す。)
、または
(2)−(CFO)−(CO)−(CO)−(Cs
(式中、p、q、およびrは、それぞれ、各出現において同一または異なって、0〜15の整数を表し、sは、0または1を表し、p、q、およびrのうち少なくとも1つは0ではなく、かつp、q、およびrの和は1〜30の整数である。また、sが1のとき、(Csは、O−CO側の末端にのみ存在する。)を表す。
ここで、当業者に明らかなように、「(2)−(CFO)−(CO)−(CO)−(Cs−」は、ポリマーに慣用の表記方法に従うものであり、当該式は、(CFO)、(CFCFO)、および(CO)が、任意の順序で連結していることを表す。すなわち、(CFO)、(CFCFO)、および(CO)は、それぞれランダムに存在してもよく、およびブロックを形成してもよい。ただし、前記のとおり、sが1のとき、(Csは、O−CO側の末端にのみ存在する。
【0012】
各式中において、Rfは、各出現において同一であっても、異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0013】
n2は、フッ素含有率および低屈折率の観点からは、より大きい数が好ましく(例えば、好ましくは2以上、より好ましくは4以上)、一方、溶解性、相溶性といった材料としての加工の容易さの観点からは、より小さい数が好ましい(例えば、好ましくは12以下、より好ましくは6以下)。両者の好ましいバランスの観点から、n2は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは、4〜6であり、特に好ましくは6である。
p、q、rはいずれも、フッ素含有率および低屈折率の観点からは、より大きい数が好ましいが、一方、溶解性、相溶性といった材料としての加工の容易さの観点からは、より小さい数が好ましい。両者の好ましいバランスの観点から、p、q、rは、好ましくは0〜15であり、より好ましくは、0〜3である。
p、q、およびrの和は、フッ素含有率および低屈折率の観点からは、より大きい数が好ましいが、一方、溶解性、相溶性といった材料としての加工の容易さの観点からは、より小さい数が好ましい(例えば、好ましくは30以下、より好ましくは3以下)。両者の好ましいバランスの観点から、p、q、およびrの和は、好ましくは1〜30であり、より好ましくは、1〜3である。
【0014】
Yは、各出現において同一または異なって、
(1)水素原子、
(2)フッ素原子、または
(3)2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基を表す。
Yは、各出現において同一であっても、異なっていてもよいが、相溶性、溶解性といった製膜加工時の相溶性の観点から好ましくは、いずれも、水素原子である。また、Yは、フッ素含有率および低屈折率の観点から好ましくは、いずれも、フッ素原子である。
また、後記で詳細に説明するように、Yが、いずれも、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である場合、当該化合物を原料化合物として、より高い世代のデンドリマー化合物(樹状化合物)を合成することができる。
【0015】
Yで表される「2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基」として、具体的に好ましくは、例えば、
【化16】

(式中、
a1、Ra2、およびRa3は、同一または異なって、
1)水素原子、
2)アルキル基、
3)ペルフルオロアルキル基、
4)ヒドロキシ基で置換されたアルキル基、または
5)保護されたヒドロキシ基で置換されたアルキル基
を表す。)
で表される基、
(2)式
【化17】

(式中、
b1、およびRb2は、同一または異なって、
水素原子、または
炭素数1〜10の炭化水素基を表し、および
b3は、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される基、および
(3)式
【化18】

(式中、
は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される基、
(4)式
【化19】

(式中、
d1は、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基、または保護されていてもよいヒドロキシ基を表し、
ORd2、およびORd3は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rd2、およびRd3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(5)式
−CRe1=CRe2 (e)
(式中、
e1およびRe2は、同一または異なって、水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す。)
で表される基、
(6)式
【化20】

(式中、
Rf1は、炭素数1〜10のアルキル基、またはヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表し、
ORf2、およびORf3は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rf2、およびRf3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(7)式
【化21】

(式中、
ORg1、ORg2は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rg2、およびRg3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、および
(8)式
【化22】

(式中、
ここでORh1、ORh2、およびORh3は同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rh1、Rh2、およびRh3から選択される2個または3個が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基が挙げられる。
【0016】
a1、Ra2、およびRa3で表される、「アルキル基」、「ヒドロキシ基で置換されたアルキル基」、および「保護されたヒドロキシ基で置換されたアルキル基」における「アルキル基(またはアルキル部)」としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。当該「炭素数1〜20のアルキル基」は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよいが、入手の容易さの観点から、好ましくは直鎖状である。当該「炭素数1〜20のアルキル基」の炭素数は、入手の容易さと低屈折材料としての機能の観点から、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8である。
【0017】
a1、Ra2、およびRa3は、高世代のデンドリマーへの展開が可能であって低屈折材料として高機能が期待できる観点から、好ましくはヒドロキシ基で置換されたアルキル基、または保護されたヒドロキシ基で置換されたアルキル基である。なかでも、高世代のデンドリマーへの展開が可能である観点から、好ましくは保護されたヒドロキシ基で置換されたアルキル基である。
【0018】
a1、Ra2、およびRa3で表される「ペルフルオロアルキル基」としては、例えば、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が好ましい。当該「ペルフルオロアルキル基」は、直鎖状であっても、分枝状であってもよいが、原料入手の観点から、好ましくは直鎖状である。
【0019】
上記式(d)中、Rd2、およびRd3が連結して形成する「2価の基」としては、上記で説明した「炭素数1〜10のアルキル基」から水素原子が1個除かれて形成される2価の基が挙げられる。
【0020】
上記式(f)中、Rf2、およびRf3が連結して形成する「2価の基」としては、上記で説明した「炭素数1〜10のアルキル基」から水素原子が1個除かれて形成される2価の基が挙げられる。
【0021】
上記式(g)中、Rg1、およびRg2が連結して形成する「2価の基」としては、上記で説明した「炭素数1〜10のアルキル基」から水素原子が1個除かれて形成される2価の基が挙げられる。
【0022】
上記式(h)中、Rh1、Rh2、およびRh3から選択される2個が連結して形成する「2価の基」としては、上記で説明した「炭素数1〜10のアルキル基」から水素原子が1個除かれて形成される2価の基が挙げられる。
また、Rh1、Rh2、およびRh3が連結して形成する「3価の基」としては、上記で説明した「炭素数1〜10のアルキル基」から水素原子が2個除かれて形成される3価の基が挙げられる。
【0023】
n1は、低揮発性と製膜性および低屈折率の観点からは、より大きい数が好ましく(例えば、好ましくは2以上、より好ましくは4以上)、一方、低揮発性と製膜性および低屈折率の観点からは、より小さい数が好ましい(例えば、好ましくは12以下、より好ましくは6以下)。両者の好ましいバランスの観点から、n2は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは、4〜6であり、特に好ましくは6である。
【0024】
式(Ia)、式(Ib)、および式(Ic)で表される化合物としては、
n1が、6であり、および
Rfが、−(CF−である
化合物が好ましい。
【0025】
式(Ia)、式(Ib)、および式(Ic)で表される化合物は、溶媒和物を形成していてもよい。
【0026】
次に、式(Ia)、式(Ib)、および式(Ic)で表される化合物の製造方法を説明する。本明細書中、式(Ia)で表される化合物またはその溶媒和物を単に化合物(Ia)と称する場合がある。また、その他の般式で表される化合物も、これと同様にして、例えば、化合物(Ib)のように、略称する場合がある。原料化合物は、特に述べない限り、市販されているものを容易に入手でき、また、自体公知の方法またはこれらに準じた方法に従って製造することもできる。これらの化合物は、塩または溶媒和物を形成していてもよい。各工程で得られた化合物は反応液のままか粗製物として次の反応に用いることもできるが、所望により、公知の単離・精製法(例、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィ)に従って反応混合物から単離してもよい。
【0027】
[式(Ia)で表される化合物の製造方法]
化合物(Ia)は、例えば、以下に説明する方法、またはこれに準じた方法により、製造することができる。
化合物(Ia)は、

【化23】

[式中の記号は、前記と同意義を表す。]で表される化合物(化合物(II’))を1,3−プロパンジオールと反応させることにより製造することができる。
化合物(II’)等の化合物(II)は、市販品にて入手するか、公知の方法を用いて製造することができる。
1,3−プロパンジオールの使用量は、化合物(II’)の1モルに対して、通常0.1モル〜0.5モル、好ましくは0.3モル〜0.5モルである。
反応温度は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃である。
反応時間は通常0.1時間〜24時間、好ましくは1時間〜10時間である。
このようにして得られた化合物(Ia)は、所望により、公知の単離・精製法(例、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィ)により、単離・精製することができる。
【0028】
[式(Ib)で表される化合物の製造方法]
化合物(Ib)は、例えば、以下に説明する方法、またはこれに準じた方法により、製造することができる。
化合物(Ib)は、化合物(II’)を2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1,3−プロパンジオールと反応させることにより製造することができる。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1,3−プロパンジオールの使用量は、化合物(II’)の1モルに対して、通常0.01モル〜0.3モル、好ましくは0.1モル〜0.25モルである。
反応温度は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃である。
反応時間は通常0.1時間〜24時間、好ましくは1時間〜10時間である。
このようにして得られた化合物(Ib)は、所望により、公知の単離・精製法(例、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィ)により、単離・精製することができる。
【0029】
[式(Ic)で表される化合物の製造方法]
化合物(Ic)は、例えば、以下の反応式に示す方法、またはこれに準じた方法により、製造することができる。
【化24】

【0030】
(工程1)
化合物(IV)は、化合物(II’)を化合物(III)(化合物名:2−ヒドロキシメチル−2−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−プロパン−1,3−ジオール)と反応させることにより製造することができる。
化合物(III)の使用量は、化合物(II’)の1モルに対して、通常0.01モル〜0.4モル、好ましくは0.1モル〜0.3モルである。
反応温度は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃である。
反応時間は通常0.1時間〜24時間、好ましくは1時間〜10時間である。
【0031】
(工程2)
化合物(V)は、化合物(IV)から、p−メトキシベンジル基を除去することによって、製造することができる。p−メトキシベンジル基の除去は、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)等の酸化剤の使用などの、公知の脱保護方法によって行えばよい。
【0032】
(工程3)
化合物(Ic)は、化合物(V)を化合物(VI)と反応させることにより製造することができる。
化合物(VI)の使用量は、化合物(V)の1モルに対して、通常0.1モル〜0.5モル、好ましくは0.3モル〜0.5モルである。
反応温度は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−20℃〜100℃である。
反応時間は通常0.1時間〜48時間、好ましくは1時間〜24時間である。
【0033】
このようにして得られた化合物(Ic)は、所望により、公知の単離・精製法(例、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィ)により、単離・精製することができる。
【0034】
[より高い世代のデンドリマー化合物の製造方法]
化合物(Ia)、化合物(Ib)、および化合物(Ic)において、それぞれ、Yが、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である場合、当該化合物(以下、それぞれ、化合物(Ia)、化合物(Ib)、および化合物(Ic)と称する場合がある。)を原料化合物として、より高い世代のデンドリマー化合物(樹状化合物)を合成することができる。ここで、化合物(Ia)、化合物(Ib)、および化合物(Ic)よりも一世代高い世代のデンドリマー化合物を、それぞれ、化合物(Ia’)、化合物(Ib’)、および化合物(Ic’)と称する。
化合物(Ia’)、化合物(Ib’)、および化合物(Ic’)は、具体的には、

【化25】

[式中、
Rfは、各出現において同一または異なって、
(1)−(CFn2
(式中、n2は、各出現において同一または異なって、1〜20の整数を表す。)
、または
(2)−(CFO)−(CO)−(CO)−(Cs
(式中、p、q、およびrは、それぞれ、各出現において同一または異なって、0〜15の整数を表し、sは、0または1を表し、p、q、およびrのうち少なくとも1つは0ではなく、かつp、q、およびrの和は1〜30の整数である。また、sが1のとき、(Csは、O−CO側の末端にのみ存在する。)
を表し、
Yは、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基を表し、
n1は、1〜20の整数を表す。]
で表される化合物(すなわち、化合物(Ia)、化合物(Ib)、または化合物(Ic))、またはその溶媒和物を、

【化26】

[式中、
Xは、
ヒドロキシ基またはハロゲン原子を表し、および
その他の記号は、
前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させることによって製造できる。
【0035】
以下に、より高い世代の、本発明のデンドリマー化合物の合成方法を一例を示す。以下にそのスキームを示す。
【化27】

スキーム中の式中、Yはヒドロキシ基の保護基であり、nは、1〜30であり、mは1〜20である。
【0036】
(工程1)
化合物(VII)とテトラフルオロオキセタン(TFO)を塩基存在下に反応させると、オクセタンが開環して化合物(VIII)を与える。ここで用いる塩基とは、得られる酸フロリドを安定に存在させるために、フッ素アニオンが用いられる。好ましくはセシウムフロリド、カリウムフロリド、アンモニムフロリドであり、特にセシウムフロリドが目的物の収率が良好であって望ましく用いられる。反応温度は−100℃〜100℃程度で実施されるが、−20℃〜50℃が好ましい。
【0037】
(工程2)
さらに化合物(VIII)とヘキサフルオロプロペンオキシド(HFPO)とを同様な塩基条件で反応させると、HFPOが開環重合した化合物(IX)が得られる。ここで生成物から蒸留により、上記のn数の分画を単離して次の工程に進む。なおここで用いられる塩基は、工程1で用いられたフッ素塩類が好ましく用いられる。反応温度は−100℃〜100℃程度で実施されるが、−20℃〜50℃が好ましい。
(工程3)
化合物(IX)とヒドロキシ基のひとつを保護したテトラオール(化合物(X))とを塩基条件下、非プロチックな不活性溶媒中反応させると、エステル化が進行して化合物(XI)が得られる。ここで用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンなどが好ましい。反応温度は−100℃〜100℃程度で実施されるが、−20℃〜50℃が好ましい。なお化合物(X)に用いられる保護基Yとしては、選択的な脱保護の観点から、Z基、Bn基、MeOBn基のような耐酸性の高いものが好ましく用いられる。またここで用いられる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジンのようなアミン類が好ましく用いられる。
【0038】
(工程4)
化合物(XI)の保護基Yの脱保護を行い、化合物(XII)を得る。ここで脱保護の条件は、Z基およびBn基ではパラジウムあるいは白金などの貴金属触媒のもと、水素化反応により行う。一方で、MeOBn基においてはDDQ等による酸化反応によって行われる。反応温度は、0℃〜100℃程度、好ましくは0℃〜25℃程度で行われる。
【0039】
(工程5)
化合物(XII)のアセタール基の脱保護を行い、次にここで得られた8つのヒドロキシ基とペルフルオロアルキルカルボン酸ハライド(当該化合物は、式(II)で表される化合物の一例である。)と塩基性条件下にエステル化反応を行うと、目的物である化合物(XIII)が得られる。アセタールの脱保護反応は、希塩酸を滴下したアルコール或いはTHF−水系の溶媒中で、0℃〜100℃程度、好ましくは0℃〜25℃程度で行われる。またエステル化反応の温度は−100℃〜100℃程度で実施されるが、−20℃〜50℃が好ましい。またここで用いられる塩基としては、トリエチルアミン、ピリジンのようなアミン類が好ましく用いられる。
【0040】
[さらに高い世代のデンドリマー化合物の製造方法]
上記で説明した反応において、式(II)で表される化合物(本明細書中、化合物(II)と称する場合がある。)のYが、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である場合、前記のようにして得られる化合物(Ia’)、化合物(Ib’)、および化合物(Ic’)は、それぞれ、化合物(II)に由来する2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基を有することになる。このような化合物(以下、それぞれ、化合物(Ia’)、化合物(Ib’)、および化合物(Ic’)と称する場合がある。)を、新たに用意した化合物(II)と反応させることにより、さらに1世代高い世代のデンドリマー化合物を得ることができる。
具体的には、前記のようにして得られた化合物(Ia’)、化合物(Ib’)、および化合物(Ic’)(上述のように、それぞれ、Yが、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である)を、式
【化28】

[式中の記号は、前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させることによって、さらに高い世代のデンドリマー化合物を製造する。
前記の説明から理解されるように、この反応を逐次的に繰り返すことにより、より高い各世代のデンドリマー化合物を得ることができる。
また、所望により、任意の世代のデンドリマー化合物を出発物質として用いることができる。
なお、より高い世代のデンドリマー化合物を製造する出発物質を合成するためには、、目的の世代のデンドリマー化合物を得るには、Yが2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である化合物(II)を用いればよく、最終目的とする世代のデンドリマー化合物を合成するためには、Yが水素原子またはフッ素原子である化合物(II)を用いればよい。
このように逐次的に繰り返される各反応において、Yは、同一であっても、異なっていてもよい。
このようにして得られる高い世代のデンドリマー化合物もまた、本発明の範囲内である。
【0041】
[本発明のデンドリマー化合物の使用]
つぎに本発明のデンドリマーの使用形態について述べる
デンドリマー単独で用いてもよいし、他の材料、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等に混合して使用してもよい。他材と混合する場合は、本発明の特徴である、低い屈折率の特徴を損なわないために、フッ素系の材料であることが好ましい。また、混合量に関しては特に制限は設けないが、0.1〜99.9%の範囲であればよい。
フッ素系の材料の一例として、ふっ素樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社 (1990/12))に記載されているようなフッ素樹脂があげられる。また、特許WO0218457に記載されているような高フッ素含有率の材料も好ましい。
【0042】
他材と混合する方法に特に制限はないが、通常、溶融混合方法、溶液混合方法の2種類が上げられる。このうち、本材料の特徴である、溶剤溶解性や相溶性が高いという観点から、溶液混合方法が好ましい。この溶液混合させた溶液は、そのままコーティング用樹脂組成物として用いることもできる。
溶液混合の際に用いる溶剤に特に制限はないが、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤;2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤などがあげられる。
またさらに、含フッ素デンドリマ化合物の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
フッ素系の溶剤としては、たとえばCHCClF(HCFC−141b)、CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンなどのほか、
H(CFCF)n−CHOH (n:1〜3の整数)、F(CF)nCHOH(n:1〜5の整数)、(CF−CHOH
などのフッ素系アルコール類;
ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCFCFClCFCFClなどがあげられる。
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
コーティング用樹脂組成物として用いる場合は、目標とする塗装性、成膜性、膜厚の均一性、塗装生産性に応じて、適宜選択される。特に好ましいのは、ケトン系、酢酸エステル系、アルコール系、芳香族炭化水素系、フッ素系溶剤があげられる。
本発明のデンドリマーを用いれば、非常に屈折率の低い膜の作製が可能である。
【0043】
製膜する場合は、上記のコーティング用組成物を使い、塗料のように用いる場合と、溶融混合物を押出成型する方法があげられる。前述のように本材料の特徴である、溶剤溶解性や相溶性が高いという観点から、塗料の形態が好ましい。塗料には必要に応じて硬化剤、レベリング剤、光安定剤などの添加剤が含まれていてもかまわない。
【0044】
塗料として膜を形成する場合、塗布法としては、公知の方法が広く採用でき、例えば、回転塗布(スピンコート)、流延塗布、ロール塗布、グラビア塗装、バーコート、スプレーコート、ダイコートなどが利用できる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
実施例1<化合物1の合成>
10mLの蓋付き試験管に2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイルクロライド(817mg、1.97mmol)、1,3−プロパンジオール(50mg、0.66mmol)を入れ、70℃で12時間撹拌した後、室温で放冷した。酸クロライドを減圧留去した後、減圧蒸留を行い、下記式で表される目的化合物1を得た(250mg、52%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.23 (quint, 2H, J = 5.9 Hz), 4.49 (t, 4H, J = 5.9 Hz), 6.05 (tt, 2H, J = 51.9, 5.3Hz).
【化29】

【0047】
実施例2<化合物2の合成>
10mLの蓋付き試験管に2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイルクロライド(913mg、2.20mmol)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)1,3−プロパンジオール(50mg、0.37mmol)を入れ、150℃で12時間撹拌した後、室温で放冷した。酸クロライドを減圧留去した後、減圧蒸留を行い、下記式で表される目的化合物2を得た(315mg、59%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.43 (s, 8H), 6.04 (tt, 2H, J = 52.0, 5.0Hz).
【化30】

【0048】
実施例3<化合物4の合成>
10mLの蓋付き試験管に化合物3(330mg、0.88mmol)、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイルクロライド(1.64g、3.96mmol)を入れ、120℃で12時間撹拌した後、室温で放冷した。酸クロライドを減圧留去した後、シリカゲルカラム(溶媒クロロホルム)と高速液体クロマトグラフィで精製を行い、目的化合物4を得た(1.00g、84%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.40 (s, 2H), 3.80 (s, 3H), 4.40 (s, 8H), 6.04 (tt, 3H, J = 52.0, 5.1Hz), 6.87 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 7.16 (d, 2H, J = 8.7 Hz).
【化31】

【化32】

【0049】
実施例4<化合物5の合成>
20mLのナスフラスコに化合物4(300mg、0.242mmol)、塩化メチレン6mL,水0.3mLを加えた。DDQ(110mg、0.484mmol)を加えて室温で一晩攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させた後、クロロホルムで有機層を抽出した。溶媒を減圧留去した後、高速液体クロマトグラフィで精製を行い、目的化合物5を得た(180mg、66%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.71 (s, 2H), 4.45 (s, 6H), 6.05 (tt, 3H, J = 52.0, 5.1Hz).
【化33】

【0050】
実施例5<化合物6の合成>
10mLのナスフラスコに化合物5(157mg、0.140mmol)、ピリジン2mLを加えた。ドデカフルオロスベロノイルクロライド(26mg、0.063mmol)を加えて室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧留去した後、高速液体クロマトグラフィで精製を行い、目的化合物6を得た(21mg、13%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.43(s, 16H), 6.04 (tt, 6H, J = 51.9, 5.1Hz).
【化34】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の化合物によれば、優れた低屈折率を有するフィルムを形成可能であり、例えば、コーティング塗膜等の用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
Rfは、各出現において同一または異なって、
(1)−(CFn2
(式中、n2は、各出現において同一または異なって、1〜20の整数を表す。)
、または
(2)−(CFO)−(CO)−(CO)−(Cs
(式中、p、q、およびrは、それぞれ、各出現において同一または異なって、0〜15の整数を表し、sは、0または1を表し、p、q、およびrのうち少なくとも1つは0ではなく、かつp、q、およびrの和は1〜30の整数である。また、sが1のとき、(Csは、O−CO側の末端にのみ存在する。)
を表し、
Yは、各出現において同一または異なって、
(1)水素原子、
(2)フッ素原子、または
(3)2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基を表し、
n1は、1〜20の整数を表す。

で表される化合物
(但し、
【化2】

(C13COOCHC、
(CCOOCHC、
(HCCOOCHC、および
CFCOO(CHOCOCF(式中、pは2以上10以下の自然数である。)を除く。)
、またはその溶媒和物。
【請求項2】
Yが、いずれも、水素原子である
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが、いずれも、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基である
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Yが、
(1)式
【化3】

(式中、
a1、Ra2、およびRa3は、同一または異なって、
1)水素原子、
2)アルキル基、
3)ペルフルオロアルキル基、
4)ヒドロキシ基で置換されたアルキル基、または
5)保護されたヒドロキシ基で置換されたアルキル基
を表す。)
で表される基、
(2)式
【化4】

(式中、
b1、およびRb2は、同一または異なって、
水素原子、または
炭素数1〜10の炭化水素基を表し、および
b3は、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される基、および
(3)式
【化5】

(式中、
は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
で表される基、
(4)式
【化6】

(式中、
d1は、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基、または保護されていてもよいヒドロキシ基を表し、
ORd2、およびORd3は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rd2、およびRd3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(5)式
−CRe1=CRe2 (e)
(式中、
e1およびRe2は、同一または異なって、水素原子、フッ素原子、または塩素原子を表す。)
で表される基、
(6)式
【化7】

(式中、
Rf1は、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基もしくは保護されたヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基、を表し、
ORf2、およびORf3は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rf2、およびRf3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(7)式
【化8】

(式中、
ORg1、ORg2は、同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rg2、およびRg3が連結して2価の基を形成していてもよい。)
で表される基、
(8)式
【化9】

(式中、
ここでORh1、ORh2、およびORh3は同一または異なって、ヒドロキシ基、または保護されたヒドロキシ基を表すか、あるいは、Rh1、Rh2、およびRh3から選択される2個または3個が連結して2価の基を形成していてもよい。)
から選択される
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
n1が、6であり、および
Rfが、−(CF−である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
工程1:請求項3または4に記載の化合物を、

【化10】

[式中、
Xは、
ヒドロキシ基またはハロゲン原子を表し、および
その他の記号は、
前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させることを含む方法によって製造される含フッ素デンドリマー化合物。
【請求項7】
請求項3または4に記載の化合物を、

【化11】

[式中、
Xは、ヒドロキシ基またはハロゲン原子を表し、および
Yが、2または3個のカルボキシ基またはその誘導基とエステル化反応可能な反応性基であり、
その他の記号は、
前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させること、および
工程2:工程1の反応で生じた化合物を、式
【化12】

[式中の記号は、前記と同意義を表す。]
で表される化合物、またはその溶媒和物と反応させること、
を含む方法によって製造される
含フッ素デンドリマー化合物。

【公開番号】特開2010−209045(P2010−209045A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59936(P2009−59936)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】