説明

低屈折率膜形成用組成物、低屈折率薄膜の製造方法及び反射防止膜付き部品

【課題】基盤上に設けた際に低屈折率性を有し、また、十分な機械的強度があり、低温・短時間で硬化させることが可能あり、光の透過性を向上させることを目的とする低屈折率膜形成用組成物及びこれを用いた光学部品、太陽電池部材を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するための低屈折率膜形成用組成物は、原料である下記一般式(1)で表されるシラン化合物2種以上を原料として選択し、混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有する低屈折率膜形成用組成物であることを特徴とする。

SiX(4−n) (1)

(式中、Rは、F原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、水素原子又はビニル基を表し、Xはアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基の加水分解基を表す。nは0〜2の整数を示し、nが2のときR1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、Xで示される加水分解基は同一でも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂を主成分とする低屈折率膜形成用組成物、その低屈折率膜形成用組成物による低屈折率薄膜の製造方法及び反射防止膜付き部品に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜が反射防止膜として機能するためには、その薄膜が形成されている基盤よりも小さな屈折率を持つ必要がある。このような要求性能を満たすために、例えば無機系材料としては屈折率が1.38と低屈折率であり耐久性に優れていることから、弗化マグネシウム(MgF2)が低屈折薄膜材としてすでに広く利用されている。しかし、MgF2膜に代表される無機系薄膜の形成は、化学蒸着法など工程上制約の多い製造方法を必要とする。
【0003】
また、MgF2 と同等の低屈折率の有機系材料物質として、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素ポリマーがあるが、成形加工性に乏しく、一般の溶媒に不溶であるため、薄膜コーティングが出来なかった。また、溶剤に可溶かあるいは分散可能な含フッ素ポリマーを用いた薄膜化には、低接着性や相分離などによる実用上の問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような工程上の制約の解消、またさらなる低屈折材料の要求から、例えば、シラン化合物を原料として、ゾル−ゲル法を用いて反射防止膜の多孔質化を図る検討の実施が多数報告させている(たとえば、特許文献2〜8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−53631号公報
【特許文献2】特開2001−226171号公報
【特許文献3】特表2005−503664号公報
【特許文献4】特開2002−332313号公報
【特許文献5】特開2006−227596号公報
【特許文献6】特開2006−342341号公報
【特許文献7】特開2008−247700号公報
【特許文献8】特開2009−75583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らがかかる従来の多孔質化を図った反射防止膜について詳細な検討を実施したところ、いずれの検討においても多孔質化による膜内の細孔率の割合の増加が、薄膜の重要な要求性能である機械強度や基盤への密着性を低下させ、これにより硬度や耐擦傷性が低いという問題点の存在が明白となった。また、これら報告例に記載される反射防止膜を太陽電池部材の一つである太陽電池保護ガラスに用いた場合には、対候性能や防汚性能が不足し、長期間にわたる要求性能を満たすことができない。
【0007】
また、前記報告例(例えば、特許文献2〜8参照)においては、低屈折率膜形成用組成物の原料として使用可能なシラン系の化合物が多数列挙されている。
【0008】
しかしながら、これら先行技術において形成された薄膜が、原料として使用したシラン化合物によりどのような特徴的機能が発現されるかを詳細に検討しているものは無い。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、基盤上または透明基盤上に設けた際に十分な機械強度、対候性能及び防汚性能を有し、かつ、高い保存安定性を有するシリコーン樹脂を含有する低屈折率膜形成用組成物の提供を目的とする。また、そのような低屈折率膜形成用組成物からなる薄膜の製造方法及びその薄膜を有する反射防止膜付き部品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための鋭意研究の結果本発明者らは、シラン化合物を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂から形成された薄膜が、特定のシラン化合物を用いることにより特徴的な物性を現すことを見出した。そしてこの特定のシラン化合物を混合した原料を、加水分解・縮合することにより合成されたシリコーン樹脂を用いることにより、優れた反射防止性能と共に機械的強度を有する低屈折率膜形成用組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明の低屈折率膜形成用組成物は、形成する薄膜に求められる多様な要求性能を発現させるために、低屈折率膜形成用組成物の原料となる下記一般式(1)で表されるシラン化合物の少なくとも2種類以上の混合物を選定して用いる。
【0012】

SiX(4−n) (1)

(式中、Rは、F原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、水素原子又はビニル基を表し、Xはアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基の加水分解基を表す。nは0〜2の整数を示し、nが2のときR1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、Xで示される加水分解基は同一でも異なっていてもよい。)
【0013】
そして、本発明の低屈折率膜形成用組成物は、選定された前記一般式(1)で表されるシラン化合物の少なくとも2種類以上を混合の上、ゾル−ゲル法を用いて加水分解・縮合させることにより得られるゾル状反応液を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた反射防止性能と共に機械的強度、対候性、防汚性など薄膜に求められる多様な要求性能を同時に発現した低屈折率膜形成用組成物が得られる。しかも、従来の低屈折率膜形成用組成物と比較して低温かつ短時間の熱硬化により高い機械強度を発現できる。
【0015】
また、本発明により得られる低屈折率膜形成用組成物は、高い保存安定性を有するため長期間の保存にも耐えうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1〜5に記載の薄膜の光線透過率曲線をプロットした。(未コートガラスの曲線をベースラインとして使用。)
【図2】比較例1〜4に記載の薄膜の光線透過率曲線をプロットした。(未コートガラスの曲線をベースラインとして使用。)
【図3】実施例2記載の低屈折率膜形成用組成物より、30日後、60日後、90日後に形成した薄膜の透過率曲線をプロットした。(未コートガラスの曲線をベースラインとして使用。)
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔反射防止膜の製造方法〕
本発明の低屈折率膜形成用組成物は、まず、前記一般式(1)で表されるシラン化合物を2種類以上選定し、その混合原料を酸触媒又は塩基触媒と水の存在下で加水分解・重合し、ゾル状反応液を得る。このシリコーン樹脂含有ゾル状反応液を溶媒で希釈し得られた低屈折率膜形成用組成物を、スリットコート、スピンコート、スプレーコート、ディップコートなどのコート法を用いて基板上又は透明基板上に薄膜を形成させ、熱硬化させて低屈折率膜を製造する。
【0018】
〔1〕低屈折率膜形成用組成物の調製
(a)シラン化合物
本発明の低屈折率膜形成用組成物の原料として用いられるシラン化合物は前記一般式(1)で表される。一般式(1)において、RはF原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、水素原子又はビニル基を表し、Xはアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基の加水分解基を表し、Xは加水分解基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のときR1は同一での異なっていてもよく、nが0〜2のとき、Xで示される加水分解基は同一でも異なっていてもよい。
【0019】
加水分解基Xは、水等と反応して、酸素原子等の介在下に珪素原子を連結させるための反応性の置換基であり、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
これらのでも、光学性能、対候性能、機械的強度などの観点から炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0020】
このような化合物のうち一般式(1)中のn=0であるものとして、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランやテトラフェノキシシランを挙げることができる。
【0021】
また、n=1であるものとして、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−iso−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−iso−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−iso−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−iso−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、4,4,4−トリフルオロブチルトリメトキシシラン、4,4,4−トリフルオロブチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランやメチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン等のトリフェノキシシランを挙げることができる。
【0022】
n=2であるものとして、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−iso−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−iso−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−iso−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等のジアルコキシシランやジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジ−iso−プロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン等のジフェノキシシランが挙げられる。
【0023】
これら一般式(1)で示されるシラン化合物を、形成される薄膜に要求される性能に応じて2種類以上を選択して混合原料として用いる。
【0024】
また、選択される2種類以上の一般式(1)で示されるシラン化合物の内、少なくとも1種類以上は、n=1でありRにフッ素原子で置換されたアルキル基を含むシラン化合物であることが好ましい。フッ素原子は低屈折という物理的特長を有する原子であり、混合原料中にフッ素原子を有する有機基を含むシラン化合物を含有させると、その効果により透明基盤の光透過性をより向上させることが可能となる。
【0025】
また、薄膜中にフッ素原子が存在することにより、薄膜に撥水性能及び防汚性能を付与することができる。
【0026】
フッ素原子で置換されたアルキル基を含むシラン化合物の全ての原料中での含有量としては、5mol%〜50mol%であることが好ましい。5mol%未満では、薄膜の屈折率への効果が十分発揮でない場合があり、また、50mol%を超えると形成された薄膜の機械的強度や基盤への密着性が十分でなくなる場合があり好ましくない。
【0027】
また、選択される2種類以上の一般式(1)で示されるシラン化合物の内、少なくとも1種類以上は、n=0であることが好ましい。n=0であるシラン化合物は、化合物中に4つの官能基を有するため、加水分解・縮合により高次元的は架橋を作りやすくなるため、膜の機械強度を向上させる。また、基盤との結合部位となるシラノール基の存在確立も高くなるため基盤との密着性も向上する。
【0028】
しかしながら、n=0であるシラン化合物は、化合物中に4つの官能基を有するためか架橋密度が高くなり、膜中の空隙率を低下させてしまうため形成された薄膜の光学性能を低下させる場合がある。
【0029】
n=0であるアルコキシシランの全ての原料中での含有量としては、15mol%〜50mol%であることが好ましい。15mol%未満では形成されて薄膜の機械的強度や基盤との密着性が十分でなくなる場合があり、また、50mol%を越えると形成された薄膜の光学性能が低下する場合がある。
【0030】
選択される3種類以上の一般式(1)で示されるシラン化合物の内、少なくとの1種類はn=1でRが炭素数1〜6の無置換アルキル基であるシラン化合物であることが好ましい。n=1でRが炭素数1〜6の無置換アルキル基であるシラン化合物は、加水分解を受けない置換基を化合物内に1つ有する。この置換基により縮合後の架橋密度が上がり過ぎることが緩和される。このため、薄膜中に空隙が保持され、光学性能が向上する。
【0031】
n=1であるアルコキシシランの全ての原料中での含有量としては、20mol%〜70mol%であることが好ましい。20mol%未満では形成された薄膜の空隙率が小さくなる場合があり、また、70mol%を超えると形成された薄膜の空隙率が大きくなり、薄膜の機械的強度や基盤との密着性が十分でなくなる場合がある。
【0032】
また、Rの炭素数が7より大きなアルキル基では、その有機基の立体障害により、膜中に存在する細孔の1つ1つの容積が拡大するため、形成された薄膜の機械的強度や基盤との密着性が十分でなくなる場合がある。
【0033】
(b)触媒
一般式(1)であらわされるシラン化合物の加水分解・縮合反応に用いる酸触媒としては、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルフォン酸等の有機酸、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等の無機酸等を用いることができる。
【0034】
また、一般式(1)であらわされる化合物の加水分解・縮合反応に用いるアルカリ性触媒としては、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、アンモニア、NaOH,KOH等の無機塩基等を用いることができる。
【0035】
触媒の使用量は、一般式(1)で表されるシラン化合物1モルに対して0.0001〜1モルより好ましくは0.001〜0.1モルの範囲が望ましい。この使用量が1モルを超える場合、加水分解縮合が短時間に促進され反応液がゲル化し、薄膜の形成が困難になる場合がある。また使用量が0.0001モル未満の場合、反応が十分進行しない傾向があり、製膜後の膜の機械強度が十分ではなくなる場合がある。
【0036】
(c)溶媒
一般式(1)で表されるシラン化合物を加水分解・縮合させる際の溶媒としては、一般式(1)で表されるシラン化合物を溶解可能でありかつ、反応系内には水が添加されるため、水溶性溶媒が好ましい。これら溶媒の中でも特にアルコール系またはエーテル系の溶媒が好ましい。
【0037】
アルコール系の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等を挙げることができる。
【0038】
エーテル系の反応溶媒として、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
これら溶媒の中でもイソプロパノールもしくは1−メトキシ−2−プロパノール、又はその混合溶媒を用いることが、膜形成後の薄膜の性能面で特に好ましい。
【0039】
(d)水の添加量
加水分解・縮合時の水の添加量は、一般式(1)で表されるシラン化合物1モルに対して0.1〜10モルより好ましくは0.5〜2.0モルの範囲が望ましい。水の量が10モルを超えると加水分解反応が速く進行し過ぎるため反応液がゲル化し、低屈折率膜形成用組成物の調整が困難となる場合がある。一方、水の量が0.1モル未満であると、シラン化合物の加水分解が十分に起こらないため、このような反応液から調整された低屈折率膜形成用組成物を用いても、基板上に薄膜が形成されない場合がある。
【0040】
(e)反応条件
一般式(1)で表されるシラン化合物を加水分解・縮合させる際の反応温度は0〜100℃で、反応時間は10分〜100時間である。この反応により加水分解及び重合が進行し、シリコーンゾル液が得られる。
【0041】
(f)低屈折率膜形成用組成物の希釈
本発明で使用可能な希釈溶媒としては、加水分解縮合により生成したシリコーン樹脂が溶解可能な溶媒であれば、特に限定されない。
【0042】
希釈溶媒としては、例えば非プロトン性溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、アセテートエチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、及びジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒などが挙げられる。
【0043】
また、プロトン性溶媒としては、アルコール系溶媒、カルボン酸系溶媒等が挙げられる。アルコール系の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等を挙げることができる。
【0044】
カルボン酸系の溶媒としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。
【0045】
これら溶媒の中でも、酢酸ブチルもしくはイソプロパノールまたはこれらの混合溶媒がシリコーン樹脂の溶解性、膜形成後の薄膜の性能面から特に好ましい。
【0046】
希釈後の低屈折率膜形成用組成物中におけるシリコーン樹脂の濃度は、低屈折率膜形成用組成物の粘度と保存安定性の観点より、仕込みに用いたシラン化合物の重量を基準として、0.5重量%〜20重量%より好ましくは2重量%〜14重量%とすることが望ましい。0.5重量%未満であると、粘度が低すぎ薄膜系形成時に十分な膜厚を確保することが出来ず、20重量%を超えると粘度が高すぎ大面積の基板上に均一な薄膜の形成が困難となる場合がある。
【0047】
〔2〕薄膜の形成
(a)塗布
低屈折率膜形成用組成物を基材の表面に塗布する方法として、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。三次元的な構造物への塗布には、ディッピング法、スプレーコート法が優れる。
【0048】
(b)乾燥
塗布膜の乾燥条件は基材の耐熱性に応じて適宜選択が、乾燥後に十分な機械強度を得るためには150℃以上の温度で30分間以上乾燥させることが好ましい。
【0049】
〔3〕反射防止膜
本発明の方法で得られる低屈折率膜形成用組成物を用いることにより形成される薄膜は、反射防止性能を有する。また、透明基板上に薄膜を形成した場合には、光の透過率を向上させる効果を有する。
【0050】
本発明における反射防止膜が形成される部品とは、ワープロ、コンピュータ、テレビ等の各種ディスプレイ、太陽電池基板、太陽電池の保護ガラス、各種光学レンズ、光学部品、自動車や電車の窓ガラス表面等の部品である。
【0051】
例えば、本発明の低屈折率膜形成用組成物を用い太陽電池保護ガラス上の薄膜を形成させた場合、その反射防止性能により光の透過率を向上させ太陽電池の発電効率を向上させることが可能になると共に、この薄膜は高い機械強度と対候性を有しているため、長期間にわたりその性能を発揮させることが可能となる。
【0052】
また、本発明の低屈折率膜形成用組成物を用いて薄膜をディスプレイの保護層上に設けた場合、その反射防止膜性能により光の透過率を向上させバックライトに要求される光度を抑えることができるため、ディスプレイの省電力化に寄与すると共に、その高い防汚性と機械強度によりディスプレイの表示部を保護することが可能となる。
【0053】
(光線透過率の測定)
各低屈折率膜形成用組成物から白板ガラス上に形成した薄膜の、光線透過率の測定を分光光度計(日本分光:V−630、測定波長:350nm〜1100nm)を用いて測定した。
【0054】
(鉛筆硬度の測定)
コーテック社製の鉛筆硬度測定器(KT−VF2391、加重:750g)で測定した。
【0055】
(消しゴムを用いた剥離試験)
ラビングテスター(井本製作所:IMS−157C型、加重:100g、20往復/分)に消しゴムを取り付け、往復運動を実施し膜の表面状態を目視により観察した。膜の剥離状態は以下のように判断した。
○:膜が透明性を維持している。
△:膜の一部に白濁が確認される。
×:膜の一部が完全に剥離した。
【0056】
(保存安定性試験)
実施例2の方法により作成された低屈折率膜形成用組成物を遮光ガラス瓶に充填し、室温(25℃)での3ヶ月間の保存安定性の試験を実施した。(一ヶ月毎の頻度で、白板ガラス上に薄膜を形成し、光線透過率、鉛筆硬度、消しゴム剥離の各試験を実施した。)
【0057】
以下に記載した実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
実施例1
テトラエトキシシラン 2.98g、メチルトリエトキシシラン 3.82g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 1.56gをシクロヘキサノン 27.70gに溶解させた。水18.02gに60重量%硝酸 0.0184g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランのシクロヘキサノン溶液を20℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけてシクロヘキサノン溶液に滴下した。滴下終了後、25℃の水浴中で4時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を75.25gのイソプロパノールで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整してスピンコートし薄膜を形成させた。200℃で120分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0059】
実施例2
テトラエトキシシラン 1.79g、メチルトリエトキシシラン 11.38g、ジメチルジエトキシシラン 1.02g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 1.41gを1−メトキシ−2−プロパノール 18.46gに溶解させた。水 8.10gに60重量%硝酸0.0360g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランの1−メトキシ−2−プロパノール溶液を40℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけて1−メトキシ−2−プロパノール溶液に滴下した。滴下終了後、40℃の水浴中で4時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を5.0g取り出し、それを酢酸ブチル 21.39gで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整して、スピンコートし薄膜を形成させた。200℃で180分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0060】
実施例3
テトラエトキシシラン 3.57g、メチルトリエトキシシラン 11.08g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 1.40gを1−メトキシ−2−プロパノール 18.46gに溶解させた。水 8.15gに60重量%硝酸0.0388g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランの1−メトキシ−2−プロパノール溶液を40℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけて1−メトキシ−2−プロパノール溶液に滴下した。滴下終了後、40℃の水浴中で2時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を15g取り出し、それを酢酸ブチル 65.65gで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整して、スピンコートし薄膜を形成させた。200℃で30分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0061】
実施例4
テトラエトキシシラン 7.15g、メチルトリエトキシシラン 3.06g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 7.48gを1−メトキシ−2−プロパノール 18.46gに溶解させた。水 8.15gに60重量%硝酸0.0360g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランの1−メトキシ−2−プロパノール溶液を40℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけて1−メトキシ−2−プロパノール溶液に滴下した。滴下終了後、40℃の水浴中で2時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を5g取り出し、それを酢酸ブチル 23.53gで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整して、スピンコートし薄膜を形成させた。200℃で30分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0062】
実施例5
テトラエトキシシラン 3.57g、メチルトリエトキシシラン 3.06g、ジメチルジエトキシシラン 0.06g、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 0.47g、パーフルオロオクチルトリメトキシシラン 3.06gをイソプロパノール 9.23gに溶解させた。水 4.05gに60重量%硝酸0.0190g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランのイソプロパノール溶液を40℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけてイソプロパノール溶液に滴下した。滴下終了後、40℃の水浴中で2時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を1g取り出し、それをイソプロパノール 8.66gで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整して、スピンコートし薄膜を形成させた。220℃で90分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0063】
比較例1
テトラエトキシシラン 27.9gをメタノール 24.3gに溶解させた。水 2.4gに1N塩酸0.1g加えた塩酸水溶液を調整した。アルコキシシランのメタノール溶液を40℃で30分攪拌した後、塩酸水溶液を30分かけてメタノール溶液に滴下した。滴下終了後、60℃の水浴中で90分間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を75.25gの酢酸ブチルで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整してスピンコートし薄膜を形成させた。80℃で30分の過熱後、160℃で30分加熱し熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0064】
比較例2
テトラエトキシシラン 3.08g、メタノール 23.2gに溶解させた。水 3.58gに60重量%塩酸0.15g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランのメタノール溶液を30℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけてメタノール溶液に滴下した。滴下終了後、30℃の水浴中で4.5分間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液からメタノールと水を濃縮操作により除去した後、イソプロパノールで濃縮物重量が5.0wt%になるように希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整してスピンコートし薄膜を形成させた。80℃で30分の過熱後、160℃で30分加熱し熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0065】
比較例3
テトラエトキシシラン 2.06g、メチルトリエトキシシラン 1.68gをシクロヘキサノン 7.38gに溶解させた。水 1.08gに60重量%硝酸0.008g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランのシクロヘキサノン溶液を30℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけてシクロヘキサノン溶液に滴下した。滴下終了後、30℃の水浴中で5時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を1−メトキシ−2−プロパノール 25.53gで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整して、スピンコートし薄膜を形成させた。200℃で30分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0066】
比較例4
テトラエトキシシラン 34.36g、メチルトリエトキシシラン 26.8gをシクロヘキサノン 120.73gに溶解させた。水18.0gに60重量%硝酸0.117g加えた硝酸水溶液を調整した。アルコキシシランのシクロヘキサノン溶液を30℃で30分攪拌した後、硝酸水溶液を30分かけてシクロヘキサノン溶液に滴下した。滴下終了後、30℃の水浴中で5時間攪拌しながら熟成を行った。熟成後、反応液を123.5g分取し、ポリプロピレングリコール 5.5gと、1%マレイン酸水溶液 1.2gを加え30℃で1時間攪拌した。攪拌後、酢酸ブチル 533.2gで希釈して低屈折率膜形成用組成物を得た。得られた低屈折率膜形成用組成物を白板ガラス上に膜厚が90nm〜120nmになるように回転数を調整して、スピンコートし薄膜を形成させた。250℃で120分の熱硬化を行い、ガラス基板上に反射防止膜を作成した。
【0067】
(測定結果)
各低屈折率膜形成用組成物から白板ガラス上に形成した薄膜の各試験評価の結果を、表1、表2、図1、図2、図3に示す。
表1、図1及び図2から、本発明の低屈折率膜形成用組成物から形成させた薄膜は、優れた機械強度と光線透過性能を併せ持つ唯一の組成物であることが判る。また、表2及び図3から、この優れた機械強度と光線透過性能が長期間に渡り維持されることが判る。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の薄膜は、ワープロ、コンピュータ、テレビ等の各種ディスプレイ、太陽電池基板、太陽電池保護ガラス、各種光学レンズ、光学部品、自動車や電車の窓ガラス表面等の光反射防止膜として用いることが出来きる。また、透明基板上に薄膜を設けた際には、その基盤の光の透過率を向上させることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)

SiX(4−n) (1)

(式中、Rは、F原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、水素原子又はビニル基を表し、Xはアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基の加水分解基を表す。nは0〜2の整数を示し、nが2のときR1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、Xで示される加水分解基は同一でも異なっていてもよい。)
で表されるシラン化合物の2種以上を選択し、その混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有することを特徴とする低屈折率膜形成用組成物。
【請求項2】
一般式(1)で表されるシラン化合物の3種類以上を選択し、加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項3】
一般式(1)で表されるシラン化合物うち1種類以上がn=1且つRがフッ素原子で置換されたアルキル基であるシラン化合物であり、当該シラン化合物を全シラン化合物中に5mol%〜50mol%含む混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項4】
一般式(1)で表されるシラン化合物うち1種類以上がn=0であるシラン化合物であり、当該シラン化合物を全シラン化合物中に15mol%〜50mol%含む混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項5】
一般式(1)で表されるシラン化合物うち1種類以上がn=1且つRが炭素数1〜6の無置換アルキル基であるシラン化合物であり、当該シラン化合物を全シラン化合物中に20mol%〜70mol%含む混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項6】
一般式(1)で表されるシラン化合物うち1種類以上がn=2且つRが炭素数1〜6の無置換アルキル基であるシラン化合物であり、当該シラン化合物を全シラン化合物中に3mol%〜15mol%含む混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項7】
一般式(1)で表されるシラン化合物の少なくとも2種以上を加水分解・縮合する際の溶媒として、シクロヘキサノン、イソプロパノール及び1−メトキシ−2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を用いることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項8】
一般式(1)で表されるシラン化合物の少なくとも2種以上を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有する反応液を、酢酸ブチル及び/又はイソプロパノールと混合し、シリコーン樹脂の濃度を重量比で0.5〜20%とすることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の低屈折率膜形成用組成物。
【請求項9】
一般式(1)

SiX(4−n) (1)

(式中、Rは、F原子で置換されてもよい炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、水素原子又はビニル基を表し、Xはアルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基又はヒドロキシル基の加水分解基を表す。nは0〜2の整数を示し、nが2のときR1は同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、Xで示される加水分解基は同一でも異なっていてもよい。)
で表されるシラン化合物の2種以上を選択し、その混合原料を加水分解・縮合して得られるシリコーン樹脂を含有する低屈折率膜形成用組成物を成膜することを特徴とする低屈折率薄膜の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された方法により製造された低屈折率薄膜を有することを特徴とする反射防止膜付き部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−203059(P2012−203059A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65198(P2011−65198)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】