説明

低強度寒天を用いた化粧品

【目的】 従来の増粘剤使用の化粧品にはない優れた効果を有する化粧品を提供する。
【構成】 寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2 以下の範囲に調整された低強度寒天を、化粧品に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2 以下の範囲に調整された低強度寒天を用いた化粧品に関する。
【0002】
【従来の技術】乳液、クリーム、シャンプー、パック、歯磨剤などの化粧品には、従来から増粘剤として、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、CMC、MC、PVP等が使用されている。
【0003】ところが、最近の化粧品は、「無着色」「無香料」という面が好まれる傾向にあるため、その素材にも天然物指向が強くなり、例えば海藻から抽出される寒天を増粘剤に使用する検討がなされている。これは、寒天がミネラル等の有効成分を持ち、より自然な化粧品原料になると考えられるからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の寒天はゲル化力が強い。例えば、ゼリー強度(日寒水式、寒天濃度1.5%)が粉末寒天やフレーク寒天で400g/cm2 以上あり、また自然寒天と呼ばれる角寒天や糸寒天で250〜400g/cm2 程度ある。このため、高濃度で使用すると流動性に欠け、実際に化粧品に含有させた場合、液状またはクリーム状の態様を保ちにくい。この点を避けるために、従来寒天を低濃度で使用すると、その含有量が少なくなるので寒天本来の機能(増粘性、浸透性等)が発現できない。
【0005】本発明は、高濃度で使用しても流動性のある低強度寒天を用いることにより、従来の増粘剤使用の化粧品にはない優れた効果を有する化粧品を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明の化粧品は、寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2 以下の範囲に調整された低強度寒天を含有することを特徴としている。
【0007】
【作用】本発明で使用する低強度寒天は、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2 以下の範囲に調整されたものであるため、高濃度で使用しても流動性に優れる。したがって、この低強度寒天を多く含有させた本発明の化粧品は、多くの天然ミネラル等を含むため、皮膚に潤いを与え、肌を滑らかにし、さらには清浄にする効果がある。これは、低強度寒天が増粘性だけでなく、浸透性にも優れるからである。又、乳液などの乳化製品にあっては、乳化安定性を助ける効果がある。この低強度寒天は、酸及び熱処理によって寒天成分の分子を短く切断し、ゼリー強度を低下させたものであり、詳細は特願平4−148855に示されている。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。本発明の実施例1は、計100部の化粧水に対し、低強度寒天を0.5部含有させた例である。
【0009】
【表1】
実施例1:化粧水低強度寒天 0.5部エタノール 5部グリセリン 5部レモン液 2部水 87.5部(計) (100部)
【0010】上記組成で得られた化粧水は、皮膚に対し潤いを与え、肌を滑らかにし、また清浄にする効果において、従来の増粘剤使用の化粧水に比べ、優れたものであった。
【0011】本発明の実施例2は、計100部のパック剤に対し、低強度寒天を3部含有させた例である。
【0012】
【表2】
実施例2:パック剤低強度寒天 3部グリセリン 5部エタノール 10部香料 適量防腐剤 適量水 82部(計) (100部)
【0013】上記組成で得られたパック剤は、皮膚に対し潤いを与え、肌を滑らかにし、また清浄にする効果において、従来の増粘剤使用のパック剤に比べ、優れたものであった。
【0014】本発明の実施例3は、計100部のシャンプー液に対し、低強度寒天を1部含有させた例である。
【0015】
【表3】
実施例3:シャンプー液低強度寒天 1部ラウリル硫酸トリエタノールアミン 15部ラウリン酸ジエタノールアミド 2部香料 適量色素 適量水 82部(計) (100部)
【0016】上記組成で得られたシャンプー液は、皮膚に対し潤いを与え、肌を滑らかにし、また清浄にする効果において、従来の増粘剤使用のシャンプー液に比べ、優れたものであった。
【0017】本発明の化粧品は、上記実施例に限定されるものでなく、クリーム、歯磨剤等にも適用できる。また、使用する低強度寒天の濃度も実施例の値に限らない。
【0018】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2 以下の範囲に調整された低強度寒天を含有させたため、従来の増粘剤使用の化粧品にはない優れた効果を有する化粧品を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で250g/cm2 以下の範囲に調整された低強度寒天を含有することを特徴とする、低強度寒天を用いた化粧品。

【公開番号】特開平6−56625
【公開日】平成6年(1994)3月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−226398
【出願日】平成4年(1992)8月3日
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)