説明

低放出性製品のための天然化合物を有する新規な複合バインダー

樹脂組成物(A)及び(B)を記載する。樹脂組成物(A)は、タンパク質を含む天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及びアミノ樹脂を含み、天然成分又はその誘導体は芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学結合してncPF樹脂を形成しており、天然成分又はその誘導体は、場合によってはアミノ樹脂に化学結合しており、樹脂組成物(B)は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び樹脂組成物の全質量を基準として少なくとも20重量%の尿素の縮合生成物を含み、天然成分又はその誘導体の少なくとも50重量%は芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂(ncPF)に直接又は間接的に化学結合しており、天然成分又はその誘導体はタンパク質を含む。樹脂組成物は、低いホルムアルデヒド放出性と高い強度との優れた組み合わせを有するリグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーとして用いることができる。また、独特のバインダーの組み合わせを含む低ホルムアルデヒド放出性の木製製品も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダー、及びかかるバインダーを含むリグノセルロース又はセルロース材料に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系産業、絶縁、含浸紙、被覆などのような産業において最も多く用いられているタイプの接着剤の1つは、アミノ−及びフェノール−ホルムアルデヒドのようなホルムアルデヒドをベースとする接着剤である。原材料の世界中での入手容易性、及び種々の用途における接着剤の優れた特性のために、粉末から液体の形態、高粘度特性から低粘度特性、異なるモル比等の広範囲のアミノ及びフェノール−ホルムアルデヒド製品が存在する。接着剤特性の選択は、適用において製品が満足しなければならない特性、及び満足しなければならない標準的な要求によって定まる。しかしながら、アミノ−ホルムアルデヒド類の全ての接着剤に対して共通な1つの特性は、反応性とホルムアルデヒド放出性とは、比例していて、アミノに対するホルムアルデヒドのモル比、及びこれよりは少ない程度であるがフェノールに対するホルムアルデヒドのモル比に大きく依存することである。実際においては、これは、より低いホルムアルデヒド放出性を要求する異なる標準規格を満足するためには、アミノに対するホルムアルデヒドの比及びフェノールに対するホルムアルデヒドの比を減少させることを意味し、これにより、通常、同等の操作条件下での効率性も低下する。
【0003】
バインダーとして用いるためのアミノ−ホルムアルデヒド樹脂とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を比較すると、前者はより効率的であるが、加水分解する傾向がより高く、製品のホルムアルデヒド放出性がより高い。これは、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂よりも低いホルムアルデヒド放出性の製品を与えるが、生産効率が低下するという犠牲が伴うフェノール−ホルムアルデヒド樹脂と対照的である。低い接着特性を克服するために、天然成分のような物質を用いて接着剤の特性を変化させることは公知の手段である。しかしながら、天然成分を加えることによってフェノール−及びアミノ−ホルムアルデヒド樹脂を変性することは、物理的及び/又は化学的特性(例えば粘度又は緩衝能)を、元の接着剤と比較して、変性した接着剤の潜在的用途を限定するような程度まで大きく不利に変化させる可能性がある。かかる系は、Horowitzらの米国特許第3,701,743号(以下、「’743特許」)に記載されている。’743特許には、尿素ホルムアルデヒド樹脂、PF樹脂、及び、小麦粉、スターチ、又はタピオカのような澱粉質増量剤から構成される合板用の樹脂混合物が記載されている。澱粉質増量剤は、また、接着剤の高温硬化時間を短くすると教示されている大豆粉又は乾血のようなタンパク質増量剤によって置き換えることもできる。しかしながら、最終製品は、単に、タンパク質増量剤、PF樹脂、及び尿素ホルムアルデヒド樹脂の物理的混合物であり、タンパク質増量剤によって接着剤の体積が増加する。’743特許の接着剤製品は、噴霧性及び良好な低温粘着性を有するように意図されている。低温粘着性は、合板を製造する際に特に重要であり、これにより2枚のベニヤ層の間の接着層を物理的に(化学的ではなく)固化する所謂予備プレス工程が可能になり、予備プレスしたベニヤの積層体を熱プレス工程の前に中間的に保管することが可能になる。’743特許の他の目的は、外面のベニヤを通してブリードが起こることを避けることである。しかしながら、最終混合物は2500〜5000mPas・sの高い粘度を有しており、これは非常に高くて、接着剤を、パーティクルボード、MDF(中密度ファイバーボード)、及びOSB(配向性ストランドボード)のような用途のためには望ましくないものにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,701,743号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、天然成分を含む新規な複合バインダーを提供することによって、公知のバインダーの上記記載の問題点を克服することである。この新規な複合バインダーにより、高い固形分を低い粘度と組み合わせて形成することが可能になる。かかる組成物は、良好な噴霧性、及び硬化した接着層のより薄い色を有し、これはファイバーボードの製造のような操作において望ましい。
【0006】
バインダーの組成は、迅速な架橋及び高度の硬化を、製造後の低いホルムアルデヒド放出性と共に与えるように釣り合わせる。
更に、本発明のバインダーは、加水分解抵抗性ネットワーク中に高度に迅速架橋させるために利用できる十分な量のホルムアルデヒド、及び適用における適切な時点で利用できる有効なホルムアルデヒドスキャベンジャーを有することにより、良好な反応性を有し、低いホルムアルデヒド放出性の製品を達成する。
【0007】
また、原材料の品揃えが拡大されることで、本特許出願において記載されている接着剤混合物に関する目的のために用いる接着剤の原材料コストを低下させる点で商業的な有利性を有する可能性があり、既存の原材料市場への依存性を減少させるのを助けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及びアミノ樹脂の縮合生成物を含み、天然成分又はその誘導体は芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂(ncPF樹脂)及び場合によってはアミノ樹脂に直接又は間接的に化学結合しており、天然成分又はその誘導体はタンパク質を含む、リグノセルロース又はセルロース材料のバインダーとして用いるための低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明の一態様は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び樹脂組成物の全質量を基準として少なくとも20重量%の尿素の縮合生成物を含み、天然成分又はその誘導体の少なくとも50重量%は芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合しており(ncPF)、天然成分又はその誘導体はタンパク質を含む、リグノセルロース又はセルロース材料のバインダーとして用いるための低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物である。
【0010】
他の態様においては、本発明は、≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体を、芳香族ヒドロキシル化合物及びアルデヒド化合物と配合することを含むプロセスで製造され、天然成分又はその誘導体のタンパク質は水性である、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及びタンパク質を含む天然成分又はその誘導体を含む重合性樹脂組成物に関する。
【0011】
他の態様においては、本発明は、≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物を、任意の順番で、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物の少なくとも2つを一緒に縮合するのに十分な条件下で化合させることを含み、天然成分又はその誘導体が水性タンパク質を含む、リグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法に関する。
【0012】
更に、本発明の一態様は、バインダーとしてかかる低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含むリグノセルロース及びセルロース材料製品に関する。
更に、本発明の一態様は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物を含み、場合によっては天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物の少なくとも2つが一緒に縮合して互いに共有結合している、バインダーとして用いられる低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む複合ボードであって、複合ボードは、2001年3月に発行されたJIS A1460にしたがって0.5mg/L未満、好ましくは0.01〜0.3mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有し;
複合ボードがパーティクルボードである場合には、パーティクルボードは、2003年10月に発行された標準規格EN 312にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがファイバーボードである場合には、ファイバーボードは、2003年6月に発行された標準規格EN 622−1にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがMDFである場合には、MDFは、1997年12月に発行された標準規格EN 622−5にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードが配向性ストランドボードである場合には、配向性ストランドボードは、1997年9月に発行された標準規格EN 300にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
天然成分又はその誘導体はタンパク質を含む、上記複合ボードに関する。
【0013】
更に、本発明の一態様は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学的に結合している天然成分又はその誘導体を含む、バインダーとして用いられる低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む層(X);及び、層(X)中のバインダー以外のバインダーを含む層(Y);を含む木質パネルに関する。
【0014】
本発明の更なる適用範囲は、以下に与える詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、発明の精神及び範囲内での種々の変更及び修正はこの詳細な説明から当業者には明らかとなるので、詳細な説明及び特定の実施例は、発明の好ましい態様を示しているが、例示のみの目的で与えられることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明:
低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物:
本発明の一態様は、リグノセルロース又はセルロース材料のバインダーとして用いられ、アミノ樹脂、並びに、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び場合によってはかかるアミノ樹脂の縮合生成物を含み、天然成分又はその誘導体が芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂(以下、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学結合している天然成分又はその誘導体である樹脂組成物の成分を「ncPF」と称する)、及び場合によってはアミノ樹脂(以下、アミノ樹脂に化学結合している天然成分又はその誘導体である樹脂組成物の成分を「nc(M)UF」と称する)に直接又は間接的に化学結合(即ち、イオン結合、ファンデルワールス力による結合、及び/又は共有結合、好ましくは共有結合)している、低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物である。かかるアミノ樹脂は、かかる組成物中に機械的に混合するか、及び/又は縮合生成物の一部とすることによって、かかる低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物中に存在させる。
【0016】
「天然成分又はその誘導体」という句は、本明細書においては、水性タンパク質、及び場合によってはリグニン、有機酸、脂肪酸、及びポリオール(例えば、炭水化物、スターチ、及び糖類)の少なくとも1つを含む組成物を特定する単一の総称として用いる。天然成分又はその誘導体は、植物性、動物性、又は微生物由来のものであってよい。
【0017】
本発明の他の態様は、リグノセルロース又はセルロース材料のバインダーとして用いられ、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び樹脂組成物の全質量を基準として少なくとも20重量%の尿素の縮合生成物を含み、天然成分又はその誘導体の少なくとも50重量%が芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合しており(ncPF)、樹脂組成物の粘度が、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度においてスピンドルPP50を用いて回転粘度計(Physica MCR301)で測定して1〜500mPasであり、樹脂組成物中の固形分の量が標準規格ASTM D−1490−93を用いて加熱後に測定して45〜75%であり、天然成分又はその誘導体がタンパク質を含む、低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物である。
【0018】
天然成分又はその誘導体は、抽出工程、及び/又は結合分解反応(例えば加水分解)を行う工程において植物又は動物の天然タンパク質試料中の総分子量を減少させて総材料の粘度を減少させ、それによって水性タンパク質を有する天然成分又はその誘導体を形成するプロセスで形成することが好ましい。本明細書においては、「水性」タンパク質という用語は、(i)水溶性タンパク質;(ii)微酸性(例えば約4〜6.9のpH)の媒体中に可溶のタンパク質;及び(iii)塩に可溶のタンパク質;の少なくとも1つから構成される1種類又は複数のタンパク質を指す。好ましくは、水性タンパク質は、(i)水溶性タンパク質;(ii)微酸性(例えば約4〜6.9のpH)の媒体中に可溶のタンパク質;及び(iii)塩に可溶のタンパク質;の全てから構成される。天然成分又はその誘導体は、エタノール中に可溶であるが、水、微酸性の媒体、及び塩水媒体中では実質的に可溶でないタンパク質を実質的に含まない(即ち、天然成分又はその誘導体の重量を基準として1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の微量を含んでいてもよい)。グリアジンは、微酸性条件下で可溶のグルテニンと一緒にグルテンを形成するエタノール可溶タンパク質である。
【0019】
天然成分又はその誘導体は、トウモロコシの湿式粉砕として知られている方法に類似の方法で得ることができる。トウモロコシの湿式粉砕は、トウモロコシ穀粒を、スターチ、タンパク質、繊維、及び油脂のような製品に分離するために用いられている。トウモロコシの湿式粉砕は、(a)トウモロコシの穀粒を軟化させて次の工程を容易にするための浸漬プロセス;(b)精製スターチ、並びに、油脂、繊維、及びタンパク質のような異なる副生成物を得る湿式粉砕プロセス;の2段階プロセスである。一般に、スターチの回収率は90〜96%の間である。スターチの残りは異なる副生成物中に見られる。天然成分又はその誘導体として用いることができるのは、この残りの部分である。
【0020】
天然成分又はその誘導体を形成する他の方法は、WO−2005/074704(その全てを参照として本明細書中に包含する)に記載されている。天然成分又はその誘導体が植物性材料から誘導される場合には、抽出手順及び/又は結合分解反応を行った後に、材料中に、タンパク質、並びに炭水化物、リグニン、有機酸、脂肪酸、及び糖類の少なくとも1つが残留する可能性がある。この最終組成物(「天然成分又はその誘導体」)は、天然成分がそれから得られる植物種のタイプ、及び抽出法によって変化する。天然成分が植物性材料から誘導される場合には、抽出手順及び/又は結合分解反応を行った後に、材料中に、タンパク質、並びに炭水化物、有機酸、脂肪酸、及び糖類の少なくとも1つが残留する可能性がある。
【0021】
最も好ましい態様においては、天然成分又はその誘導体は、水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕によって植物源から単離されるタンパク質材料である。好ましくは、単離物は、ペプチド結合を加水分解し、それによってタンパク質の主構造に影響を与える相当量の化学物質(例えばアルカリ)には曝露しないが、単離物は、タンパク質の二次構造及び三次構造に影響を与える程度まで、化学的又は機械的に変性することができる。抽出プロセスにおいては、単離物の形成において、(機械的手段によって分解されたペプチド結合の割合にかかわらず)ペプチド結合の10%未満が化学的に分解される。好ましくは、単離物の形成において、(機械的手段によって分解されたペプチド結合の割合にかかわらず)ペプチド結合の3%未満、より好ましくは0.1%未満が化学的に分解される。例えば、小麦を誘導体化する方法は、水(純水、塩水、又は微酸性水)中で成分を溶解度に基づいて分離して、グルテン中の高分子量タンパク質(例えばグリアジン及び場合によってはグルテニン)並びに高分子量炭水化物(不溶部分)を、アルブミンのようなより低分子量のタンパク質及び低分子量の炭水化物(可溶部分)から分離する工程を含む。
【0022】
この天然成分又はその誘導体は、重量が安定するまでオーブン内で揮発分を加熱除去し、加熱前の試料の重量パーセントとして最終組成物の重量を計算することによって測定して、40〜60重量%、好ましくは44〜56重量%の固形分濃度を有する。天然成分又はその誘導体の粘度は、100〜3000mPas、好ましくは100〜300mPasである。本発明の好ましい態様においては、粘度は300mPas未満である。本発明において用いる粘度測定値は、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度でスピンドルPP50を用いて回転粘度計(Physica MCR301)によって測定する。天然成分又はその誘導体中のタンパク質の量は、固形分の全重量を基準として、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは5〜20重量%の固形分であり、炭水化物の量は、固形分の全重量を基準として、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%である。天然成分のpHは、<7、好ましくは6未満、より好ましくは4.5未満である。
【0023】
好ましくは、天然成分又はその誘導体は、小麦、トウモロコシ、菜種(キャノーラ)、大豆、コメ等、又はこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つから形成する。より好ましくは、天然成分又はその誘導体は、小麦及び/又はトウモロコシ、或いはこれらの誘導体から形成する。最も好ましくは、天然成分又はその誘導体は大豆又はカゼインからは形成しない。
【0024】
芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド成分としては、例えばフェノール−アルデヒド樹脂、レゾルシノール−アルデヒド樹脂などのような硬化性アルデヒド縮合樹脂が挙げられる。これらの縮合タイプの樹脂を製造するのに用いることのできる芳香族ヒドロキシル化合物(本明細書において、時には記号「P」を用いて示す)は、フェノール、並びに、アミノフェノール、オルト、メタ、及びパラクレゾール、クレシル酸、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、キノール(ヒドロキノン)、ピロガロール(焦性没食子酸)、フロログルシノール、又はこれらの組み合わせなどをはじめとする種々の変性フェノールを含む。好ましくは、芳香族ヒドロキシル化合物は、レゾルシノール、ヒドロキノン、フェノール、又はビスフェノールAである。より好ましくは、芳香族ヒドロキシル化合物はフェノールである。これらの化合物又はこれらの組み合わせは、種々のアルデヒド(本明細書において、時には記号「F」を用いて示す)、1つの種類としては脂肪族又は脂環式又は芳香族或いは混合形態の好ましくは1〜約10個の炭素原子を有するものと反応させて、本発明において有用な縮合タイプの樹脂を製造することができる。かかるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフルアルデヒドなどが挙げられる。現時点ではホルムアルデヒドが好ましい。
【0025】
アミノ樹脂は、硬化性アルデヒド縮合樹脂であり、例えば、尿素−アルデヒド樹脂(尿素は、本明細書において時には記号「U」を用いて示す)、アニリン−アルデヒド樹脂、メラミン−アルデヒド樹脂(メラミンは、本明細書において時には記号「M」を用いて示す)、これらの樹脂の2つの混合物、メラミン−尿素縮合物−アルデヒド樹脂などが挙げられる。アミノ樹脂の製造において用いるアルデヒド化合物としては、上述の段落において記載したようなncPF樹脂を製造する際に有用なものが挙げられる。アミノ樹脂を製造するのに用いることができる窒素化合物(例えば、アミン、アミド、及びトリアジン)は、アンモニア、尿素、エチレン尿素、チオ尿素、グアニジン、メチル尿素、アセチル尿素、シアナミド、ジシアノジアミド、ビウレット、セミカルバジド、メラミン、モノフェノルメラミン、アンメリン、チオアンメリン、アンメリド、ホルモグアナミン、アセトグアナミン、ステアログアナミンなどを含む。好ましくは、アミノ樹脂は、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、又はメラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂であり、後者は尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、及びメラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂の群からの2つを混合するか、又は尿素及びメラミンをホルムアルデヒドと縮合することによって製造することができる。
【0026】
一態様においては、バインダー樹脂組成物は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂(ncPF)の骨格及び/又はアミノ樹脂(nc(M)UF)の骨格に直接又は間接的に化学結合(即ち、イオン結合、ファンデルワールス力による結合、及び/又は共有結合、好ましくは共有結合)している天然成分又はその誘導体を含む。更に、天然成分又はその誘導体は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂及び/又はアミノ樹脂の間の架橋剤として作用させることができる。好ましくは、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド成分の骨格に直接又は間接的に結合しているものは、天然成分又はその誘導体中のタンパク質である。
【0027】
ncPFの粘度は、20〜1000mPas、好ましくは20〜300mPasである。ncPF中の固形分の量は、41〜80%、好ましくは45〜60%である。ncPFのモル比は、1.0:0.1P/F〜1.0:4.0P/Fである。ncPF中の天然成分又はその誘導体の量は、ncPF樹脂の全重量を基準として、1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%である。
【0028】
nc(M)UF中のFとアミノ基とのモル比は0.3〜1.0:1.0である。好ましくは、このモル比は、0.3〜0.7:1.0、より好ましくは0.35〜0.6:1.0である。nc(M)UFの固形分含量は、全固形分を基準として、50〜80%、好ましくは50〜70%である。nc(M)UFの粘度は、10〜1000mPas、好ましくは50〜700mPasである。
【0029】
アミノ樹脂を製造するための成分を、ncPF樹脂を製造するための成分と化合させる手法に応じて、樹脂の骨格中、又は側基中、又は側鎖中、或いは化学的に結合している任意の他の形態で含まれている窒素化合物を含むncPF樹脂のような複合バインダーを形成することができる。
【0030】
それぞれの成分の乾燥重量を基準とするnc(M)UF樹脂中の天然成分又はその誘導体とアミノ(又はアミド基)との比は、99.9:0.1〜50:50、好ましくは99:01〜70:30である。
【0031】
nc(M)UF及びncPFの両方を含む態様においては、nc(M)UF:ncPFの乾燥重量比は99.8:0.2〜90:10である。
樹脂組成物中のアミノ樹脂とncPFとの比は、それぞれの成分の乾燥重量を基準として99:1〜50:50である。好ましくは、この比は90:10〜60:40である。より好ましくは、85:15〜70:30である。
【0032】
本発明の一態様においては、樹脂組成物は、ncPF樹脂、及び樹脂組成物の全質量を基準として少なくとも20重量%の尿素、好ましくは20〜50重量%の尿素を含む。
本発明の一態様においては、アミノ樹脂組成物中のアミノ(又はアミド基)/アルデヒドのモル比は1:0.3〜1.0である。好ましくは、このモル比は1:0.3〜1:0.7である。より好ましくは、このモル比は1:0.35〜1:0.6である。
【0033】
本発明の一態様においては、バインダー樹脂組成物中の窒素基と芳香族ヒドロキシル基とのモル比は1:0〜0.25である。好ましくは、このモル比は1:0〜1:0.15である。より好ましくは、このモル比は1:0.01〜1:0.1である。
【0034】
本発明の一態様においては、樹脂組成物中の(芳香族ヒドロキシル化合物の)ヒドロキシル基とアルデヒドとのモル比はである。好ましくは、このモル比は1:0.1〜1:400である。より好ましくは、このモル比は1:0.9〜1:80である。
【0035】
本発明の一態様においては、樹脂組成物の固形分含量は、(標準規格ASTM D−1490−93を用いて加熱後に測定して)全樹脂組成物を基準として50〜75重量%である。好ましくは、固形分含量は45〜75重量%である。より好ましくは、固形分含量は60〜70重量%である。
【0036】
本発明の一態様においては、アミノ樹脂は、樹脂組成物中の固形分の全重量を基準として1〜65重量%の濃度のメラミンを含む。
本発明の樹脂組成物には、添加剤、増量剤、硬化剤、軟化剤、ポリウレタン(例えばMDI)等のような当該技術において通常用いられる成分を含ませることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、濃縮形態で保管して、次にリグノセルロース又はセルロース材料に適用する前に希釈することができる。これは、保管コストの低減という観点で有利である。濃縮組成物の粘度は10〜3500mPas(保管用)である。好ましくは、固形分の濃度は45〜75%である。より好ましくは、固形分の濃度は60〜70%である。これに対して、希釈組成物の粘度は1〜2000mPas(適用時)である。好ましくは、この粘度は1〜700mPasである。より好ましくは、1〜500mPasである。樹脂組成物のpHは、好ましくは中程度、即ち7〜10である。
【0038】
この本発明の樹脂組成物は、その最終形態で極めて低いホルムアルデヒド放出性を有し、そのままでリグノセルロース又はセルロース材料のバインダーとして用いるのに極めて有利である。
【0039】
重合性樹脂組成物:
一態様においては、本発明は、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及びタンパク質を含む天然成分又はその誘導体を含み、≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体を、芳香族ヒドロキシル化合物及びアルデヒド化合物と配合することを含むプロセスで製造され、天然成分又はその誘導体のタンパク質が水性である、重合性樹脂組成物に関する。
【0040】
他の態様においては、本発明は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及びタンパク質を含む天然成分又はその誘導体を含み、≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体を芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂と配合することを含むプロセスで製造され、天然成分又はその誘導体のタンパク質が水性である、重合性樹脂組成物に関する。
【0041】
更に他の態様においては、本発明は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及びタンパク質を含む天然成分又はその誘導体を含み、≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体を芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂と縮合させることを含むプロセスで製造され、天然成分又はその誘導体のタンパク質が水性であり、水性タンパク質が芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合している、重合性樹脂組成物に関する。
【0042】
低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を形成する方法:
本発明のリグノセルロース又はセルロース材料のバインダーは、種々の方法で製造することができる。例えば、バインダーは、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物を、任意の順番で、水性媒体(即ち、全ての成分が必ずしも溶解しない水溶液)中において、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物の少なくとも2つを一緒に縮合するのに十分な条件下で化合させることを含むプロセスで製造する。
【0043】
天然成分又はその誘導体、及びその製造方法の説明は、「低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物」と題した上記の節において与える。
一態様においては、バインダー樹脂組成物を形成する方法は、少なくとも200g/モル、好ましくは12,000g/モル以下、より好ましくは200〜12,000g/モルの重量平均分子量を有するPF樹脂を形成する工程;及び、かかるPF樹脂を、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及びアミノ化合物の少なくとも1つと、任意の順番で縮合させる工程;を含む。
【0044】
一態様においては、本方法は、天然成分又はその誘導体を、芳香族ヒドロキシル化合物及びアルデヒド化合物と任意の順番で化合させることによってncPF樹脂を形成する工程を含む。
【0045】
一態様においては、本方法は、天然成分又はその誘導体を、窒素化合物及びアルデヒド化合物と任意の順番で化合させることによってnc(M)UF樹脂を形成する工程を含む。
【0046】
尿素はタンパク質を変性する傾向を有するという事実を考慮すると、この影響を最小にする方法を用いることが好ましい。一態様においては、本方法は、1つのバッチにおいて、アルデヒド化合物を窒素化合物と縮合してアミノ樹脂を形成する工程;第2のバッチにおいて、天然成分又はその誘導体を芳香族ヒドロキシル化合物及びアルデヒド化合物と縮合してncPF樹脂を形成する工程;及び2つのバッチをブレンドする工程;を含む。
【0047】
好ましい態様においては、下式において例示するように、縮合工程の前に、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、及び窒素の少なくとも1つをメチロール化する。
【0048】
【化1】

【0049】
芳香族ヒドロキシル化合物とアルデヒド化合物を縮合する工程は、好ましくは、中性〜アルカリ性条件下、即ち7〜13のpHにおいて水性媒体中で行う。必要な場合には、有機及び/又は無機塩基を用いてpHを制御することができる。
【0050】
窒素化合物とアルデヒド化合物を縮合する工程は、好ましくは、微アルカリ性〜酸性条件下、即ち9〜3のpHにおいて水性媒体中で行う。必要な場合には、有機及び/又は無機酸、塩、又は酸と塩の組み合わせを用いてpHを制御することができる。
【0051】
本発明方法においては、酸は、量(触媒量で存在すること以外には)又はタイプにおいて特に限定されないが、好ましくは、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、及びマレイン酸からなる群から選択される。
【0052】
同様に、塩基は、量(触媒量で存在すること以外には)又はタイプにおいて特に限定されないが、好ましくは、エタノールアミン類(例えばジメチルエタノールアミン又はジエタノールアミン)のような含窒素塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、スズ化合物(ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、及びジブチルスズジアセテート)などからなる群から選択される。含窒素塩基は、より少ない灰分を与え、生成物を希釈せず(アルカリは1N以下の濃度で用いなければならない)、総最終生成物がより良好な機械特性を有するので、含窒素塩基を用いることが特に好ましい。
【0053】
一態様においては、本方法は、芳香族ヒドロキシル化合物、第1のアルデヒド化合物、及び天然成分又はその誘導体を縮合することによってncPFを含む水性媒体を形成する最初の工程;及び、第2のアルデヒド化合物(第2及び第1のアルデヒド化合物は同一であっても異なっていてもよい)及び窒素化合物を溶液に加えることによってアミノ樹脂をその場で形成する第2の工程;を含む。窒素化合物とアルデヒド化合物との間の反応は発熱性である可能性があり、反応温度は好ましくは100℃未満に保持する。次に、酸を用いてpHを中性〜微酸性(好ましくはpHは4〜7である)に調節する。溶液を、80〜100℃において、25℃において測定して50〜3000mPas、好ましくは50〜800mPasの粘度に濃縮する。所望の粘度に達したら、溶液を室温に冷却する。最終溶液中において、溶液の全重量を基準として50〜75重量%、好ましくは60〜68重量%の固形分の量を有することが好ましい。プロセスのこの時点において溶液中の固形分の量が50重量%に達しなかった場合には、その後の1つ又は複数の工程において、更なるncPF、窒素化合物、アルデヒド化合物、及び/又はアミノ樹脂を溶液に加えることによって固形分濃度を増加させることができる。
【0054】
1種類又は複数の更なる溶媒が反応物質と反応しない限りにおいて、1種類又は複数の更なる溶媒を水性媒体に加えて反応物質の溶解を助けることができる。
低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む製品:
本発明は、樹脂組成物(A)及び(B)の少なくとも1つを含むバインダーを含み;
樹脂組成物(A)は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂の縮合生成物を含み;
該低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物は、該縮合生成物の一部として、及び/又はその中に混合された成分としてアミノ樹脂を更に含み;
天然成分又はその誘導体は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂(ncPF樹脂)及び場合によってはアミノ樹脂に直接又は間接的に化学結合しており、
樹脂組成物の粘度は、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度において回転粘度計を用いて測定して1〜500mPasであり、樹脂組成物中の固形分の量は、標準規格ASTM D−1490−93を用いて加熱後に測定して45〜75%であり;
天然成分又はその誘導体はタンパク質を含み;
樹脂組成物(B)は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び樹脂組成物の全質量を基準として少なくとも20重量%の尿素の縮合生成物を含み;
天然成分又はその誘導体の少なくとも50重量%は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合しており(ncPF樹脂);
樹脂組成物の粘度は、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度において回転粘度計を用いて測定して1〜500mPasであり、樹脂組成物中の固形分の量は、標準規格ASTM D−1490−93を用いて加熱後に測定して45〜75%であり;
天然成分又はその誘導体はタンパク質を含む;
リグノセルロース又はセルロース材料製品に関する。
【0055】
リグノセルロース又はセルロース材料は、多層又は単層基材である。多層又は単層基材としては、複合ボード(好ましくは、パーティクルボード、配向性ストランドボード、又はファイバーボード)、合板、寄木材、LVL、積層木材、フレームボード、及び含浸紙が挙げられる。バインダー用の樹脂組成物を含む本発明のリグノセルロース又はセルロース材料製品の有利性は、高い強度と低いホルムアルデヒド放出特性の両方を含む。公知のバインダーを用いてこれらのリグノセルロース又はセルロース材料を製造する方法は、(A)M. Dunky及びP. Niemz, "Holzwerkstoffe und Leime"(木質パネル及び樹脂接着剤), Springer, 2002;(B)欧州委員会理事会−研究本部、COSTアクションE13、木用接着剤及び接着接合製品ワーキンググループ2,接着接合木製品の最新技術報告,Vol. 2, Carl-Johan Johanson編, Tony Pizzi及びMarc Van Leemput, 第2版, 2002年8月, 3.1章;及び(C)Hans-Joachim Deppe及びKurt Ernst, "MDF-Mitteldichte Faserplatten", DRW-Verlag, 1996, ISBN 3-87181-329-X(これらは全てその内容の全てを参照として本明細書中に包含する):に記載されている。
【0056】
主たる目標は、ヨーロッパにおいて、通常、直鎖尿素ホルムアルデヒド樹脂を用いて製造されている標準的な板材と比較して効率性の損失を示さないか又は無視しうる程度しか示さない板材の製造を可能にする好適な製造技術と組み合わせた樹脂系を開発することである。
【0057】
ホルムアルデヒドをベースとする接着剤樹脂を用いて接合した木質パネルからの製造後のホルムアルデヒドの放出は、板材中に存在する残留ホルムアルデヒド、及び硬化樹脂中の弱く結合しているホルムアルデヒドの加水分解によって起こる。アミノ樹脂で接合した板材は、主として樹脂と樹脂混合物のモル比によって定まるホルムアルデヒド放出性を示す。アミノ樹脂のモル比が低いと、通常は、完成した板材からの製造後のホルムアルデヒドの放出性が低くなる。製造後のホルムアルデヒド放出性は、1つの例を言及するためのみに上記で引用したM. Dunky及びP. Niemzのような技術/化学文献において詳細に記載されている。
【0058】
製造後のホルムアルデヒド放出性は、実際に放出されるホルムアルデヒドの量として、例えば人工気象室内でのホルムアルデヒドの濃度として、或いは板材中のホルムアルデヒドの潜在放出量として示すことができる。(i)潜在放出性ホルムアルデヒドとしてのホルムアルデヒド含量;及び(ii)板材からの有効放出量;をどのように示すかについて異なる、行なった試験法がある。いずれのアプローチも板材中のホルムアルデヒドの種々の源を異なるやり方で考察しているので、これは区別することが重要である。所謂穿孔(パーフォレーター)試験は、この放出が起こる速度(=一定の表面積を基準とする時間あたりの量)がどうであるかを考慮することなく、板材中の遊離(放出性)ホルムアルデヒドの全含量を測定する。放出は、(最初の観察で同じ面積に基づく端部からの放出挙動は明瞭により大きいが、端部は通常非常に小さいということを無視すると)主として板材の表面層を通して起こるという事実を考慮する。これは、3層板材の表面層中(単一層の板材の外層中)の放出性ホルムアルデヒドが、コア/内層中の放出性ホルムアルデヒドと異なって見えなければならないことを意味する。
【0059】
アミノ樹脂に関し、純粋な尿素ホルムアルデヒド樹脂に関してはホルムアルデヒド/尿素、或いはメラミンのようなNH基を有する他の原材料も含むアミノ樹脂に関してはホルムアルデヒド/(NHのモル比は、放出性ホルムアルデヒドの含量に関する最も重要なパラメーターの1つである。製造後のホルムアルデヒド放出性は、多かれ少なかれ、このモル比に相関しており、即ちこのモル比がより小さいと、ホルムアルデヒド放出性はより低い。
【0060】
本発明においては、窒素化合物に対するアルデヒド化合物の比を制御して、特性における理想的なバランスを与える。アミノ樹脂のホルムアルデヒド/尿素又はホルムアルデヒド/(NHのモル比を減少させ、それによって樹脂中の有効ホルムアルデヒドの含量を減少させることは、
(a)接着剤樹脂に関しては:
・有効ホルムアルデヒドのより低い含量のために樹脂の反応性の低下;
・硬化ネットワーク中の架橋度の減少;及び
・加水分解に対する感受性の増加;
(b)製造した板材に関しては:
・木質パネルの製造中のホルムアルデヒド放出の減少;
・製造後のホルムアルデヒド放出性の減少;
・機械特性の低下;
・硬化(架橋)度の低下;及び
・板材の厚さ膨潤率及び水吸収性の増加;
を意味する。
【0061】
板材の所謂後処理に関しては、アンモニア処理、又は尿素及びアンモニア生成化合物による処理のような幾つかの方法が存在するが、今日では僅かな場合においてしか用いられない。かかる方法の包括的な概要は、G.E. Myers:ホルムアルデヒド放出性に対する板材の製造後処理の効果:文献レビュー(1960〜1984),Forest Products Journal 36 (1986)6, 41-51によって与えられた。板材の表面を被覆及び封止することによっても、製造後のホルムアルデヒド放出性が減少する。製造後のホルムアルデヒド放出性を減少させるためには、建材における板材の開放端部を封止することが好ましい。
【0062】
低放出性を有する板材の全ての公知の製造方法の主たる欠点は、幾つかのファクターにより製造コストが著しく増加することである。標準的な尿素ホルムアルデヒド樹脂と比較して、接着剤の価格(常に固形分を基準とする数量で示される)は、アミノ樹脂に関しては接着剤樹脂中のメラミンの必要含量によって30〜70%高く、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に関しては約2倍の価格が与えられ、一方、イソシアネートをベースとする接着剤に関しては価格は5〜6倍高い可能性がある。
【0063】
接着剤消費量における増加の見積値(それ自体は接着剤固形分/乾燥建材の%として表される)は、アミノ樹脂に関しては+10〜20%であり、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に関しては+20%であり、ここで、全ての数値は、ここでも尿素ホルムアルデヒド樹脂を用いる標準的な板材と比較したものである。イソシアネートに関する接着剤消費量は、尿素ホルムアルデヒド樹脂と直接は比較できない。
【0064】
能力における損失として表される、尿素ホルムアルデヒド樹脂を用いる標準的な板材と比較したプレス速度の減少は、アミノ樹脂に関しては10〜20%であり、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に関しては20〜30%であり、イソシアネートをベースとする接着剤に関しては50%以下である。
【0065】
フェノールホルムアルデヒド樹脂を尿素ホルムアルデヒド樹脂と単純に組み合わせることが産業界によって採用されなかったことは、尿素ホルムアルデヒド樹脂が低いpHで硬化し、一方、フェノールホルムアルデヒド樹脂が高いpHで硬化することを考慮すれば驚くことではない。しかしながら、本発明者らはこの組み合わせを可能にする方法を独創的に見出した。更に、本発明者らは、驚くべきことに、フェノールホルムアルデヒド樹脂及び尿素ホルムアルデヒド樹脂に天然成分を加えると、得られるバインダーは、(純粋なフェノールホルムアルデヒド樹脂と比較して)より高い生産効率で高い強度特性を有し、且つ重要なことに減少したホルムアルデヒド放出性を有することを見出した。更に、天然成分は再生可能資源から得ることができるので、これらのバインダー中に天然成分を用いることに大きな利益が存在する。
【0066】
本発明は、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物を含む、バインダーとして用いられる低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含み、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物の少なくとも2つが縮合して互いに共有結合している複合ボードであって;
複合ボードは、2001年3月に発行されたJIS A1460にしたがって0.5mg/L未満、好ましくは0.01〜0.3mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有し;
複合ボードがパーティクルボードである場合には、パーティクルボードは、2003年10月に発行された標準規格EN 312にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがファイバーボードである場合には、ファイバーボードは、2003年6月に発行された標準規格EN 622−1にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがMDFである場合には、MDFは、1997年12月に発行された標準規格EN 622−5にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードが配向性ストランドボードである場合には、配向性ストランドボードは、1997年9月に発行された標準規格EN 300にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足する;
上記複合ボードに関する。
【0067】
機械特性及び膨潤特性に関する試験は、固体乾燥木質基材上に約5〜20%の樹脂固形分装填量、好ましくは10%の樹脂固形分装填量、及び3.5〜18s/mmのプレス時間において行うことが好ましい。
【0068】
本発明の一態様においては、複合ボードは、天然成分又はその誘導体を含まないバインダー組成物を含む層を更に含む。
本発明の一態様においては、複合ボードは、PMDIの少なくとも1つの層を更に含む。
【0069】
本発明の一態様においては、樹脂組成物(A)及び/又は樹脂組成物(B)は、表面噴霧又は頂面噴霧として複合ボードに施す。
本発明の一態様は、複合ボードの少なくとも1つの表面を粉末塗料を用いて電気塗装することによって樹脂組成物(A)及び/又は樹脂組成物(B)を含む複合ボードを着色する方法である。電気塗装の時点においては、本発明のバインダー樹脂は、通常、電気塗装を行うのに十分に高い塩含量を有する。塩の量を変化させて電気塗装を最適にすることができる。
【0070】
本発明は、また、上記記載の樹脂組成物(A)及び(B)の少なくとも1つを含む、合板、寄木材、LVL、積層木材、フレームボード、又は紙に関する。
本発明の一態様においては、合板、寄木材、LVL、積層木材、又はフレームボードは、天然成分又はその誘導体を含まないバインダー組成物を含む層を更に含む。
【0071】
本発明の一態様においては、合板、寄木材、LVL、積層木材、又はフレームボードは、PMDIの少なくとも1つの層を更に含む。
本発明の一態様においては、樹脂組成物(A)及び/又は樹脂組成物(B)を、表面処理剤として、合板、寄木材、LVL、積層木材、又はフレームボードに施す。
【0072】
本発明の一態様は、粉末塗料を用いて、合板、寄木材、LVL、積層木材、又はフレームボードの少なくとも1つの表面を電気塗装することによって、樹脂組成物(A)及び/又は樹脂組成物(B)を含む合板、寄木材、LVL、積層木材、又はフレームボードを着色する方法である。
【0073】
本発明の一態様は、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学結合している天然成分又はその誘導体を含む、バインダーとして用いられる低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む層(X);及び、層(X)中のバインダー以外のバインダーを含む層(Y);を含む木質パネルである。層(Y)中のバインダーはアミノ樹脂を含むことが好ましい。層(X)は木質パネルの表層であり、層(Y)は木質パネルのコア層であることが、より好ましい。
【実施例】
【0074】
実施例1(ncPF、尿素、及びホルムアルデヒドを含むバインダー樹脂組成物):
まず、ncPFを調製した。小麦の水性誘導体(50%の濃度(固形分含量)、4.3のpH、及び103mPasの粘度、並びに固形分含量を基準として約7.6%のタンパク質及び約47%の糖類を有する)を、アルカリ性条件下で、予め縮合したフェノール−ホルムアルデヒド樹脂と縮合して、150mPasの粘度、9.5のpH、及び59%の固形分含量を与えて、ncPFを生成させた。
【0075】
第2に、バインダー樹脂組成物を調製した。428.7gのホルムアルデヒド(51%)を、固形分50%の8.2gのncPFに加えた。10分後、121.5gの尿素を加えた。反応熱によって温度が80℃に上昇した。次に、106.9gの尿素を加えた。反応熱により温度が97℃に上昇した。10〜30分後、バッチを92℃に冷却した。有機酸を用いてpHを5.4に調節した。バッチを92℃において濃縮した。304mPasの所望の粘度において、368.0gのncPF及び30.7gのホルムアルデヒド、続いて47.4gの尿素をバッチに加え、これを次に350mPas超の粘度に濃縮した。275mPasの目標粘度において、125.3gの尿素を加え、バッチを52℃に冷却した。蒸留を行って64%の固形分含量に到達させた。pHを7.5超にするために、15.8gのncPFを加えた。バッチを25℃に冷却した。
【0076】
黄褐色のバインダーは、25℃において330mPasの粘度、及び>8.0(8.8)のpHを有していた。バインダーは、数週間の間、安定な粘度及びpH特性を維持していた。
【0077】
実施例2(単層複合ボードの製造における複合バインダー(共縮合物として)の適用):
実施例1のバインダーを、樹脂固形分に対して0.5%〜1%の固形分の硬化剤と混合した。接着剤混合物を、乾燥木材に対して10%のバインダーの装填量で繊維上に噴霧した。
【0078】
複合ボードがMDFボードである場合には、MDFボードは6.2s/mmで製造した。
実施例3(多層複合ボードの製造における複合バインダー(共縮合物として)の適用):
下表において、接着剤バインダーのためのアミノ樹脂として尿素ホルムアルデヒド樹脂を用いた。接着剤バインダーを、表に与える装填量及びプレス時間でパーティクルボードに施した。
【0079】
【表1】

【0080】
上表中に記載の板材1及び2に関する事項は理論値である。これらの値は、本発明の複合バインダーを板材の表層において用いると減少したホルムアルデヒド放出性を有することが期待されることを示す。
【0081】
実施例4(単層としての複合ボード(CB)の製造における複合バインダー(ブレンドとして)の適用):
同等の操作条件下において、異なる接着剤を用いて製造したMDFボードの板材特性を、一成分接着剤から製造した板材と比較した。
【0082】
次のようにして、木材繊維を3種類の異なる接着剤によって樹脂処理した。
(1)66%の濃度、450mPasの粘度、0.475のF/NHの比、及び9.5のpHの尿素ホルムアルデヒド樹脂をアミノ樹脂として用いた。木材固形分に対して10%の固形分のアミノ樹脂を、硬化剤として0.5%アンモニウム塩と一緒に繊維上に噴霧した。
【0083】
(2)57.5%の濃度、150mPasの粘度、及び2.6のF/Pの比の実施例1に記載のncPF樹脂を用いた。木材固形分に対して10%の固形分のncPF樹脂を繊維上に噴霧した。
【0084】
(3)繊維に適用する直前に、接着剤(1)の尿素ホルムアルデヒド樹脂を、硬化剤と一緒に、実施例1に記載のncPFと混合した。木材固形分に対して7.5%の固形分のアミノ樹脂、及び木材固形分に対して2.5%の固形分のncPF樹脂を、樹脂固形分に対して0.5%の固形分のアンモニウム塩と一緒に混合するか、或いは3つの部分の全てを木材繊維上に別々に噴霧した。
【0085】
250℃のプレスプラテン温度及び65barの圧力において、750kg/mの密度の12mmMDFボードを製造した。プレス時間は、実験1及び3に関しては11s/mmであり、実験2(ncPF)に関しては13s/mmであった。結果を下表に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
この表は、木材の重量を基準として同等の樹脂固形分の装填量を有するMDFボードが、異なる強度特性、プレス時間、及びホルムアルデヒド放出性を有することを示す。アミノ樹脂は、当該技術において公知なようにフェノールホルムアルデヒド樹脂にほとんど匹敵していた、即ち、アミノ樹脂はより良好な強度特性、減少したプレス時間を有しているが、フェノールアルデヒド樹脂と比較して高いホルムアルデヒド放出性及び高い膨潤性を有していた。しかしながら、アミノ樹脂の25%をncPFで置き換えたアミノ樹脂とすることにより、純粋なアミノ樹脂と比較してホルムアルデヒド放出性が50%減少し、一方、強度(IB値)が約14%向上した。更に、複合バインダーを用いると、アミノ樹脂バインダーと比較してMDFボードの膨潤性が低下した。
【0088】
実施例5(単層としてのCBの製造における複合バインダー(ブレンドとして)の適用):
同じ操作条件下において、異なる接着剤を用いて製造したMDFボードの板材特性を、一成分接着剤から製造した板材と比較した。
【0089】
(1)66.5%の濃度、439mPasの粘度、0.415のF/NHの比、及び9.8のpHの尿素ホルムアルデヒド樹脂をアミノ樹脂として用いた。木材固形分に対して10%の固形分のアミノ樹脂を、硬化剤として0.5%アンモニウム塩と一緒に繊維上に噴霧した。
【0090】
(2)57.5%の濃度、150mPasの粘度、及び2.6のF/Pの比の実施例1に記載のncPF樹脂を用いた。木材固形分に対して10%の固形分のncPF樹脂を繊維上に噴霧した。
【0091】
(3)繊維に適用する直前に、接着剤(1)の尿素ホルムアルデヒド樹脂を、硬化剤と一緒に、実施例1に記載のncPFと混合した。木材固形分に対して7.5%の固形分のアミノ樹脂、及び木材固形分に対して2.5%の固形分のncPF樹脂を、樹脂固形分に対して0.5%の固形分のアンモニウム塩と一緒に混合するか、或いは3つの部分の全てを木材繊維上に別々に噴霧した。
【0092】
250℃のプレスプラテン温度及び65kg/cmbarの圧力において、750kg/mの密度の12mmMDFボードを製造した。プレス時間及び期待される結果を下表に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
この表は、木材の重量を基準として同等の樹脂固形分の装填量を有するMDFボードが、異なる強度特性、プレス時間、及びホルムアルデヒド放出性を有することを示す。アミノ樹脂は、当該技術において公知なようにフェノールアルデヒドタイプの樹脂にほとんど匹敵していた、即ち、アミノ樹脂はより良好な強度特性、減少したプレス時間を有しているが、フェノールアルデヒドタイプの樹脂と比較して高いホルムアルデヒド放出性を有していた。しかしながら、25%のncPFをアミノ樹脂と共に含ませることにより、純粋なアミノ樹脂と比較してホルムアルデヒド放出性が約50%減少し、一方、強度(IB値)が約5%向上した。
【0095】
実施例6(接着剤として複合アミノ/ncPFを用いることによるMDFボードの製造):
(1)66%の濃度、150mPasの粘度、0.40のF/NHの比、及び9.0のpHの尿素ホルムアルデヒド樹脂をアミノ樹脂として用いた。木材固形分に対して10%の固形分のアミノ樹脂を、硬化剤として0.5%アンモニウム塩と一緒に繊維上に噴霧した。
【0096】
(2)繊維に適用する直前に、接着剤(1)の尿素ホルムアルデヒド樹脂を、硬化剤と一緒に、実施例1のncPFと混合した。木材固形分に対して7.5%の固形分のアミノ樹脂、及び木材固形分に対して2.5%の固形分のncPF樹脂を、樹脂固形分に対して0.5%の固形分のアンモニウム塩と一緒に混合するか、或いは3つの部分の全てを木材繊維上に別々に噴霧した。
【0097】
【表4】

【0098】
上表におけるデータは、アミノ樹脂を、アミノ樹脂の25%をncPFと置き換えた他は実質的に同じ樹脂と比較している。同じプロセスパラメーター下で樹脂を施した。複合アミノ/ncPF系は、機械特性を保持しながら大きく減少したホルムアルデヒド放出性を与える板材を生成すると期待される。
【0099】
実施例7(パーティクルボードである多層ボードの製造における複合バインダー(ブレンドとして)の適用):
(1)68.3%の濃度、200mPasの粘度、0.465のF/NHの比、及び9.0のpHの尿素ホルムアルデヒド樹脂をアミノ樹脂として用いた。木材固形分に対して10%の固形分のアミノ樹脂を、硬化剤として0.5%アンモニウム塩と一緒にチップ(粒子)上に噴霧した。
【0100】
(2)チップに適用する直前に、接着剤(1)の尿素ホルムアルデヒド樹脂を、硬化剤と一緒に、49/8%の濃度、154mPasの粘度、及び2.8のF/Pを有するncPFと混合した。木材固形分に対して7.5%の固形分のアミノ樹脂、及び木材固形分に対して2.5%の固形分のncPF樹脂を、樹脂固形分に対して0.5%の固形分のアンモニウム塩と一緒に混合するか、或いは3つの部分の全てをチップ上に別々に噴霧した。
【0101】
コア層中の接着剤としてアミノ樹脂、及び表層中に複合アミノ/ncPF樹脂を用いて、14mmの3層パーティクルボードを製造した。
【0102】
【表5】

【0103】
この表は、パーティクルボードの表層を本発明の複合バインダーを用いて製造した場合と、パーティクルボードをアミノ樹脂を含む表層を有して製造した場合とで、木材の重量を基準として同等の樹脂固形分の装填量を有するパーティクルボードが、同じプレス時間下で製造したパーティクルボードに関して、異なる強度特性、膨潤率値、及びホルムアルデヒド放出性を有することを示す。ボードの表層において複合バインダーを用いて製造したパーティクルボードは、ボードの表層においてアミノ樹脂バインダーを用いて製造したパーティクルボードと比較してより良好な強度特性、減少した膨潤性、及びより低いホルムアルデヒド放出性を有していた。
【0104】
実施例8(表層/コア/表層構造を有する3層パーティクルボードにおける2つの系の接着剤の適用):
次のようにして、木材粒子を2種類の異なる接着剤によって樹脂処理した。
【0105】
(1)68.3%の濃度、200mPasの粘度、0.465のF/NHの比、及び9.0のpHの尿素ホルムアルデヒド樹脂をアミノ樹脂として用いた。
(2)49.8%の濃度、154mPasの粘度、及び2.8のF/Pの比の実施例1に記載のncPF樹脂を用いた。木材固形分に対して10%の固形分のncPF樹脂を繊維上に噴霧した。
【0106】
アミノ樹脂を3%(固/固)の硬化剤(アンモニウム塩/ギ酸)と混合し、混合物を木材チップ上に噴霧することによってコアを調製した。
アミノ樹脂又はncPFのいずれかを硬化剤と混合し、混合物を木材チップ(粒子)上に噴霧することによって表層を調製した。
【0107】
本発明にしたがって、コア層における接着剤としてアミノ樹脂、及び表層においてncPF樹脂を用いて、14mmの3層パーティクルボードを製造した。結果を下表に示す。
【0108】
【表6】

【0109】
結果は、ncPFを含む表層及びアミノ樹脂を含むコア層を有して製造した板材の商業実用性を示す。表層において用いたアミノ樹脂の量と比較して約半分の量のncPF樹脂を表層において用いてボードを製造することによって、同じプレス時間においてもホルムアルデヒド放出性が減少した。
【0110】
以下の実施例は、ncPF樹脂とメラミン−尿素−ホルムアルデヒド(アミノ)樹脂とを化合させることによって形成した複合樹脂バインダー組成物を含む板材が、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド(アミノ)樹脂バインダーのみを含む板材と比較して、板材の機械特性を保持しながらホルムアルデヒド放出性の減少を与えることを示す。
【0111】
実施例9(MUF樹脂の製造):
樹脂液分に基づいて6.5%のメラミン含量を有するようにMUF樹脂を製造した。F:(NHのモル比は1.0であった。
【0112】
樹脂は、220mPasの粘度(25℃)、pH9.9、及び固形分含量65%を有していた。安定性は、25℃において粘度が2倍になるまで>39日間であった。
実施例10(MUF樹脂の製造):
樹脂液分に基づいて24.5%のメラミン含量を有するようにMUF樹脂を製造した。F:(NHのモル比は1.0であった。
【0113】
樹脂は、277mPasの粘度(25℃)、pH9.9、及び固形分含量66%を有していた。安定性は、25℃において粘度が2倍になるまで26日間であった。
実施例11(接着剤としての複合アミノ/ncPFにおけるアミノ樹脂として実施例9のMUF樹脂を用いることによるMDFボードの製造):
同等の操作条件下において、純粋なMUF樹脂を用いて製造した板材を、複合系から製造した板材と比較した。比プレス時間は12.5s/mmであった。MDFボードは、10mmの厚さ及び700kg/mの密度を有する単層であり、205℃のプレスプレート温度においてプレスした。適用前に触媒を樹脂と混合した。乾燥ブレンドによって建材を製造した。
【0114】
(1)実施例9のMUF樹脂バインダーを用いて単層MDFを製造した。1.0%硫酸アンモニウム硬化剤を用いて樹脂を触媒した。樹脂装填量は、乾燥繊維に対して樹脂固形分12%であった。
【0115】
(2)実施例9のMUF樹脂バインダーを実施例1のncPF樹脂と混合して、複合樹脂組成物を製造した。複合樹脂組成物は、実施例9のMUF樹脂バインダーを実施例1のncPF樹脂と、固形分含量に基づいて12:5.9の比で混合することによって製造した。1.0%の硫酸アンモニウムを用いて複合系を触媒した。樹脂装填量は、乾燥繊維に対して、実施例9のMUF樹脂バインダーが12.0%、及び実施例1のncPF樹脂が5.9%で、合計で17.9%の樹脂固形分であった。結果を下表に示す。
【0116】
【表7】

【0117】
実施例12(接着剤としての複合アミノ/ncPFにおけるアミノ樹脂として実施例10のMUF樹脂を用いることによるMDFボードの製造):
同等の操作条件下において、純粋なMUF樹脂を用いて製造した板材を、複合系から製造した板材と比較した。比プレス時間は12.5s/mmであった。MDFボードは、10mmの厚さ及び700kg/mの密度を有する単層であり、205℃のプレスプレート温度においてプレスした。適用前に触媒を樹脂と混合した。乾燥ブレンドによって建材を製造した。
【0118】
(1)実施例10のバインダーを用いて単層MDFを製造した。1.0%硫酸アンモニウム硬化剤を用いて樹脂を触媒した。樹脂装填量は、乾燥繊維に対して樹脂固形分12%であった。
【0119】
(2)実施例10のMUF樹脂バインダーを実施例1のncPF樹脂と混合して、複合樹脂組成物を製造した。複合樹脂組成物は、実施例10のMUF樹脂バインダーを実施例1のncPF樹脂と、固形分含量に基づいて12:5.4の比で混合することによって製造した。1.0%の硫酸アンモニウムを用いて複合系を触媒した。樹脂装填量は、乾燥繊維に対して、実施例10のMUF樹脂バインダーが12.0%、及び実施例1のncPF樹脂が5.4%で、合計で17.4%の樹脂固形分であった。結果を下表に示す。
【0120】
【表8】

【0121】
実施例9〜12は、ncPF樹脂とメラミン−尿素−ホルムアルデヒド(アミノ)樹脂を化合させることによって形成した複合樹脂バインダー組成物を含む板材は、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド(アミノ)樹脂バインダーのみを含む板材と比較して、板材の機械特性を保持しながらホルムアルデヒド放出性の減少を与えることを示す。
【0122】
上記で本発明を説明したが、これを多くの方法で変更できることは明らかである。かかる変更は発明の精神及び範囲から逸脱するものとはみなすべきではなく、当業者に明らかな全てのかかる修正は特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂の縮合生成物を含む低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物であって、
該低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物が、該縮合生成物の一部として、及び/又はその中に混合されている成分として、アミノ樹脂を更に含み、
天然成分又はその誘導体が、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂(ncPF樹脂)及び場合によってはアミノ樹脂に、直接又は間接的に化学結合しており、
樹脂組成物の粘度が、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度において回転粘度計を用いて測定して1〜500mPasであり、樹脂組成物中の固形分の量が、標準規格ASTM D1490−93を用いて加熱後に測定して45〜75%であり、そして
天然成分又はその誘導体がタンパク質を含む、上記組成物。
【請求項2】
天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂、及び樹脂組成物の全質量を基準として少なくとも20重量%の尿素の縮合生成物を含む低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物であって、
天然成分又はその誘導体の少なくとも50重量%が、芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に直接又は間接的に化学結合しており(ncPF樹脂)、
樹脂組成物の粘度が、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度において回転粘度計を用いて測定して1〜500mPasであり、樹脂組成物中の固形分の量が、標準規格ASTM D1490−93を用いて加熱後に測定して45〜75%であり、そして
天然成分又はその誘導体がタンパク質を含む、上記組成物。
【請求項3】
芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及びタンパク質を含む天然成分又はその誘導体を含む重合性樹脂組成物であって、
重合性樹脂組成物が、≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体を、芳香族ヒドロキシル化合物及びアルデヒド化合物と配合させることを含むプロセスで製造され、
天然成分又はその誘導体のタンパク質が水性である、上記組成物。
【請求項4】
樹脂組成物が7〜10の中程度のpHを有する、請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物が7〜10の中程度のpHを有する、請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項6】
天然成分又はその誘導体が、水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕によって得られる植物源からの単離物である、請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項7】
天然成分又はその誘導体が、水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕によって得られる植物源からの単離物である、請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項8】
芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂に化学結合させるために用いる天然成分又はその誘導体が、水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕によって得られる植物源からの単離物である、請求項3に記載の重合性樹脂組成物。
【請求項9】
天然成分又はその誘導体が更にポリオールを含み、ポリオールが炭水化物である、請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項10】
天然成分又はその誘導体が更にポリオールを含み、ポリオールが炭水化物である、請求項3に記載の重合性樹脂組成物。
【請求項11】
天然成分又はその誘導体が小麦及び/又はトウモロコシ由来のものである、請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項12】
天然成分又はその誘導体が小麦及び/又はトウモロコシ由来のものである、請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項13】
天然成分又はその誘導体が小麦及び/又はトウモロコシ由来のものである、請求項3に記載の重合性樹脂組成物。
【請求項14】
樹脂組成物における窒素基対芳香族ヒドロキシル基のモル比が1:0〜0.25である、請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項15】
樹脂組成物における窒素基対芳香族ヒドロキシル基のモル比が1:0〜0.25である、請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項16】
更にアミノ樹脂を含み、アミノ樹脂が樹脂組成物中の固形分の全重量を基準として0.1〜65重量%の濃度のメラミンを含む、請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項17】
更にアミノ樹脂を含み、アミノ樹脂が樹脂組成物中の固形分の全重量を基準として0.1〜65重量%の濃度のメラミンを含む、請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物。
【請求項18】
≦7のpHを有する天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物を、任意の順番で、天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、アルデヒド化合物、及び窒素化合物の少なくとも2つを一緒に縮合するのに十分な条件下で化合させることを含み、
天然成分又はその誘導体が水性タンパク質を含む、リグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項19】
第1工程において芳香族ヒドロキシル化合物をアルデヒド化合物と化合させて芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂を形成し、次に第2工程において天然成分又はその誘導体を芳香族ヒドロキシル化合物−アルデヒド樹脂と化合させてncPF樹脂を形成することを含む、請求項18に記載のリグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項20】
天然成分又はその誘導体を、水抽出及び場合によっては粉砕/摩砕によって、植物源からの単離による単離物として得る工程を更に含む、請求項19に記載のリグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項21】
1つのバッチにおいて、アルデヒド化合物を窒素化合物と縮合してアミノ樹脂を形成し;
第2のバッチにおいて、天然成分又はその誘導体を芳香族ヒドロキシル化合物及びアルデヒド化合物と縮合してncPF樹脂を形成し;そして
2つのバッチをブレンドする;
ことを含む、請求項18に記載のリグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項22】
天然成分又はその誘導体、芳香族ヒドロキシル化合物、及び窒素化合物の少なくとも1つをメチロール化する工程を更に含む、請求項18に記載のリグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項23】
以下の
芳香族ヒドロキシル化合物、第1のアルデヒド化合物、及び天然成分又はその誘導体を縮合することによって、ncPFを含む水性媒体を形成し;
溶液に第2のアルデヒド化合物及び窒素化合物を加えることによってアミノ樹脂をその場で形成し、ここで第2のアルデヒド化合物と第1のアルデヒド化合物とは同一であっても異なっていてもよく;
pHを中性乃至微酸性に調節し;
溶液を、蒸留しながら、1000s−1の剪断速度及び25℃の温度において回転粘度計を用いて測定して50〜3000mPasの粘度に濃縮し;
固形分が溶液の全重量を基準として少なくとも50重量%でない場合には、次に、更なるncPF、窒素化合物、アルデヒド化合物、及び/又はアミノ樹脂を溶液に加えて、固形分を溶液の全重量を基準として少なくとも50重量%に上昇させる更なる工程を行う;
工程をこの順番で含み、天然成分又はその誘導体がタンパク質を含む、リグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項24】
バインダー生成物が7〜10のpHを有する、請求項18に記載のリグノセルロース又はセルロース材料のためのバインダーを形成する方法。
【請求項25】
リグノセルロース又はセルロース材料、及び請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む、リグノセルロース又はセルロース材料製品。
【請求項26】
リグノセルロース又はセルロース材料、及び請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む、リグノセルロース又はセルロース材料製品。
【請求項27】
多層又は単層基材が、複合ボード、合板、寄木材、LVL、積層木材、フレームボード、又は含浸紙である、請求項25に記載のリグノセルロース又はセルロース材料製品。
【請求項28】
多層又は単層基材が、複合ボード、合板、寄木材、LVL、積層木材、フレームボード、又は含浸紙である、請求項26に記載のリグノセルロース又はセルロース材料製品。
【請求項29】
請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む複合ボードであって、
複合ボードは、2001年3月に発行されたJIS A1460にしたがって0.01〜0.5mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有し;
複合ボードがパーティクルボードである場合には、パーティクルボードは、2003年10月に発行された標準規格EN 312にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがファイバーボードである場合には、ファイバーボードは、2003年6月に発行された標準規格EN 622−1にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがMDFである場合には、MDFは、1997年12月に発行された標準規格EN 622−5にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードが配向性ストランドボードである場合には、配向性ストランドボードは、1997年9月に発行された標準規格EN 300にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足する;
上記複合ボード。
【請求項30】
請求項2に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む複合ボードであって、
複合ボードは、2001年3月に発行されたJIS A1460にしたがって0.01〜0.5mg/Lの低いホルムアルデヒド放出性を有し;
複合ボードがパーティクルボードである場合には、パーティクルボードは、2003年10月に発行された標準規格EN 312にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがファイバーボードである場合には、ファイバーボードは、2003年6月に発行された標準規格EN 622−1にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードがMDFである場合には、MDFは、1997年12月に発行された標準規格EN 622−5にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足し;
複合ボードが配向性ストランドボードである場合には、配向性ストランドボードは、1997年9月に発行された標準規格EN 300にしたがう機械特性及び膨潤特性を満足する;
上記複合ボード。
【請求項31】
請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む層(X);及び
層(X)中のバインダー以外のバインダーを含む層(Y);
を含む木質パネル。
【請求項32】
該層(Y)中のバインダーがアミノ樹脂を含む、請求項31に記載の木質パネル。
【請求項33】
バインダーとして請求項1に記載の低ホルムアルデヒド放出性樹脂組成物を含む、<800kg/mの密度を有する低密度ボード。

【公表番号】特表2010−502773(P2010−502773A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526192(P2009−526192)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002506
【国際公開番号】WO2008/026056
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509056629)
【Fターム(参考)】