説明

低残留物を伴う感光性犠牲ポリマー

【課題】PAG(光酸発生物質)二重層を用い、残留物が無くLERも僅かな犠牲ポリマー層、及び犠牲ポリマー層の分解方法と、これを使用して改良されたエアキャビティー、又はエアギャップを作製するための方法を提供する。
【解決手段】PAG二重層はその中に光酸発生物質を組込み、上部のPAG濃度は構造物の低部より高い。PAGが非存在の犠牲層15が基板10上に形成される。犠牲層が乾燥された後、PAG単層20が形成され、層15と層20はPAG二重層25を形成する。次いで二重層25の像様暴露(光線照射35)遮蔽物30を使用して行われる。暴露部分は熱分解法によって除去されて、基板上に残った非暴露部分40を残す。次いで保護被覆層50が構造体上に配置され、部分45の分解及び保護被覆50を通る分解生成物の浸透のために適当な温度に加熱した後、エアギャップ55が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
[0001]本出願は、非仮出願であり、そしてその全ての内容が本明細書中に参考文献として援用される2011年7月8日に出願された特許仮出願61/505,572の優先権の恩恵を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は、一般的に犠牲ポリマー構造体、そして更に具体的には、光酸発生物質の濃度勾配を集合的に有する、一つ又はそれより多い犠牲ポリマー層を包含するような構造体に関し、ここで、このような濃度は、多層構造体の頂部層で最高であるか又は単層構造体の頂部領域で最高であり、このような犠牲ポリマー構造体は、包囲された三次元空間を有する微小エレクトロニクス構造体の形成において有用である。
【背景技術】
【0003】
[0003]ポリプロピレンカーボネート(PPC)、及び光酸発生物質のような犠牲ポリマーを包含する犠牲ポリマー層又は組成物は既知である。典型的には、このような犠牲ポリマー層は、犠牲ポリマー及び光酸発生物質(PAG)を包含する犠牲ポリマー組成物を基板に適用することによって、基板を保護被覆して形成される。PAGの均一な分布をそれ中に有する得られた犠牲ポリマー層は、次いで、最初、光線照射への像様暴露を行い、そして次いでこのような部分の熱分解によってポリマー層の暴露部分を除去することによって、光でパターン形成される。次いで、このパターン形成は、一般的に犠牲ポリマー層の残った部分を本質的にカプセル化する保護被覆層の形成が続いて行われる。典型的には、このような保護被覆層は、非犠牲物質である。次いで、保護被覆され、光でパターン形成された犠牲ポリマー構造体は、カプセル化された犠牲ポリマーが分解を起こし、そして更に形成された分解生成物が、保護被覆層を通過又は浸透を起こすために十分な温度に加熱される。この様式において、規定された三次元の包囲された空間、即ち、エアキャビティー又はエアギャップが形成される。このような既知の方法が、幾つかの適用のために有効であることが証明されているが、(1)分解後、PAG添加物からのような包囲された空間中に残される残留物の量が、進歩したデバイスの作成及び/又は新しい或いは既存の適用の両方におけるこのような進歩したデバイスの使用に対して問題であることができること;及び(2)このような層のパターン形成が、しばしば高い程度の線状端粗さ(LER)を有する構造体をもたらすことが見いだされている。
【0004】
[0004]例えば、図1は、先に記載したような従来の技術によって製造された非カプセル化犠牲ポリマー構造体の分解後に観察された残留物の平面図を示す。即ち、このような構造体は、分解を起こすための加熱前に保護被覆されていなかった。観察された残留物の平均厚みは、走査プロフィロメトリーによって測定され、そして約.157μmであると計算された。構造体の本来の厚みに基づけば、残留物の厚みは、約.55%残留である。
【0005】
[0005]ここで図2を参照すれば、これは、従来の技術によって製造されたカプセル化される前に、光でパターン形成された犠牲ポリマー構造体の平面図を示す。図において、しばしば線状端粗さ(LER)と呼ばれる、縦の直線に対する有意な幅の非均一性が存在する。更に、暗い縁辺領域の厚みの有意な変化を観察することができ、これは、非暴露領域に入ったPAGの活性化によって作られた酸の拡散のためである。当業者は、これらの変化が、示された特徴の側壁の傾斜の変化の指標として認識するものであり;より濃い暗い領域は、更に傾斜のついた側壁の指標である。
【0006】
[0006]更に、前述のそれ中にPAGの均一な分布を有する現在既知の犠牲ポリマー層が、PAG添加物の高い全量を包含するために、このような層は、一般的にPAG活性化のために必要な光線照射を高度に吸収している。従って、必要な高い照射線量は、これらが、製造能力に不都合に影響することができる長い暴露時間に導くために、更に問題であることができる。
【発明の概要】
【0007】
[0007]従って、既知の方法によって製造された既知の犠牲ポリマー層に対する残留物の量、観察されるLERの程度、及びPAG活性化のために必要な長い暴露時間が問題であることができるために、前述の欠点に対処する犠牲ポリマー層並びにこのような層を形成及び分解するための方法を開発することが望ましい。
【0008】
[0008]本発明による態様は、以下の付随する図及び/又は画像を参照して以下に記載される。図面が提供される場合、これは、例示の目的のためのみに提供される簡略化されたデバイスの部分である図面であるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】[0009]図1は、従来の技術によって製造された光でパターン形成されたPPC単層の分解残留物のパターンの平面図を示す光画像である。
【図2】[0010]図2は、従来の技術によって製造された光でパターン形成された、高い程度のLERを示すPPC単層の分解残留物のパターンの平面図を示す光画像である。
【図3】[0011]本発明による態様の光でパターン形成されたPPCのPAG二重層の分解残留物のパターンの平面図を示す光画像である。
【図4】[0012]図4は、本発明による態様の光でパターン形成された、最小のLERを示すPPCのPAG二重層の平面図を示す光画像である。
【図5】[0013]図5は、従来の技術によって形成された、UV暴露を伴う及び伴わないPPC単層の、光酸発生物質(PAG)を付加されたポリカーボネート(PPC)層の動的熱重量分析(TGA)のプロットである。
【図6】[0014]図6aは、従来の技術によって製造されたPPC単層中に形成された、各種の直線及び空間寸法を有する解像度試験パターンの画像の平面図を示す光画像であり、底部アレイは公称50μmの間隔を有する。
【0010】
[0015]図6bは、図6aの底部アレイの輪郭である。
【図7】[0016]図7aは、本発明の態様によって製造されたPPCのPAG二重層中に形成された、各種の直線及び空間寸法を有する解像度試験パターンの画像の平面図を示す光画像であり、底部アレイは公称50μmの間隔を有する。
【0011】
[0017]図7bは、図7aの底部アレイの輪郭である。
【図8】[0018]図8aは、従来の技術によって製造された光でパターン形成されたPPC単層の平面図及び寸法を示す光画像である。
【0012】
[0019]図8bは、本発明の態様によって製造された光でパターン形成されたPPCのPAG二重層の平面図及び寸法を示す光画像である。
【図9】[0020]図9は、本発明によるPAG二重層構造体の態様の一部の断面略図である。
【図10】[0021]図10a−10bは、エアギャップ構造を形成するためにPAG二重層を使用する、本発明の方法の態様を使用して形成されたデバイスの一部の断面簡略図である。
【図11】[0022]図11A−11Gは、エアギャップ構造を形成するために、本発明によるPAGドープ単一層を使用する、本発明のもう一つの方法の態様を使用して形成したデバイスの一部の断面簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0023]本発明による例示的態様は、本明細書中で以下に提供される実施例及び特許請求の範囲を参照して記載されるものである。本明細書中に記載されるこのような例示的態様の各種の改変、適合又は変化は、このようなものが開示されているかのように当業者にとって明白となることができる。本発明の教示に依存し、そしてそれによってこれらの教示が当技術を進歩させる全てのこのような改変、適合又は変化は、本発明の範囲内であると考えられることは理解されるものである。
【0014】
[0024]本明細書中で使用される場合、冠詞“一つ”、“一つの”、及び“その”は、一つの指示対象に明確に、そしてはっきりと他に制約しない限り、複数への言及を含むと理解されるものである。
【0015】
[0025]本明細書中で、そして本明細書に付属する特許請求の範囲において使用される成分、反応条件、等の量に関する全ての数字、数値及び/又は表現は、このような数値を得ることにおいて遭遇する測定の各種の不確実性の影響下にあるために、他に示されない限り、全ては、全ての場合用語“約”によって修飾されていると理解されるべきである。
【0016】
[0026]本明細書中で使用する場合、重量平均分子量(M)及び数平均分子量(W)のようなポリマーの分子量値は、ポリスチレン標準を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって決定される。
【0017】
[0027]本明細書中で使用する場合、多分散指数(PDI)値は、ポリマーの重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)の比(即ち、M/M)であると理解されるものである。
【0018】
[0028]本明細書中で使用する場合、そして他に記述しない限り、ポリマーの分解温度は、ポリマーの特定の重量パーセントがガス状の分解生成物に分解される、0.5℃/分の加熱速度における熱重量分析法によって決定される温度を意味すると理解されるものである。従って、用語Td5、Td50及びTd95は、ポリマーの5重量%、50重量%及び95重量%が分解される温度を示すと理解されるものである。
【0019】
[0029]本明細書中で数値的範囲が開示された場合、このような範囲は、範囲の最小及び最大値の両方、並びにこのような最小及び最大値間のことごとくの数値を含む連続である。なお更に、範囲が整数を指す場合、このような範囲の最小及び最大値間のことごとくの整数が含まれる。更に、特徴及び特性を記載するために複数の範囲が提供された場合、このような範囲を組み合わせることができる。即ち、他に示さない限り、本明細書中に開示される全ての範囲は、本明細書中に包含されるいずれもの、そして全ての部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、“1ないし10”の記述された範囲は、最小値1及び最大値10間のいずれもの、そして全ての部分範囲を含むと考えるべきである。1ないし10の範囲の例示的な部分範囲は、制約されるものではないが、1ないし6.1、3.5ないし7.8、及び5.5ないし10を含む。
【0020】
[0030]本明細書中で使用する場合、用語“光酸発生物質”(PAG)及び“光反応開始剤”は、適当な波長で提供される適当な量の光線照射への暴露後、制約されるものではないが、プロトン酸を含む一つ又はそれより多い酸を発生する物質を意味すると理解されるものである。
【0021】
[0031]本明細書中で使用する場合、用語“分解可能な”及び“分解された”、又は同様な用語は、犠牲ポリマーが、それが分解される前の犠牲ポリマーの分子量より小さい分子量を、それぞれが有するより小さい単位に、少なくとも部分的に分解されることができるか又は分解されていることを意味する。このようなより小さい単位は、制約されるものではないが:犠牲ポリマーのオリゴマー、犠牲ポリマーがそれから誘導されるモノマー及びその断片を含む。例えば、犠牲ポリマーがポリプロピレンカーボネート(PPC)である場合、このようなより小さい単位は、ヒドロキシル末端多環式カーボネートオリゴマー、多環式カーボネート、多環式エーテル、及び/又は環式カーボネート、CO及び/又はCOを包含することができる。
【0022】
[0032]本明細書中で使用する場合、用語“PAG単層”は、犠牲ポリマー、光酸発生物質及び溶媒を包含するPAGを付加された犠牲ポリマー組成物から、従来の技術によって形成された犠牲ポリマーを意味し、ここで、ポリマーは、組成物の10ないし30重量%であり、そしてPAGは、ポリマーの3ないし10重量%である。形成されたPAG単層は、自己感光性である。
【0023】
[0033]本明細書中で使用する場合、用語“PAG二重層”は、少なくとも二つの別個の犠牲ポリマー組成物から本発明の態様によって形成される犠牲ポリマー層を意味する。第一の犠牲ポリマー層を形成するためのこのような別個のポリマー組成物の一番目の、このような第一の組成物は、犠牲ポリマー及び溶媒を包含するが、しかしこのような組成物は、いずれものPAGが非存在であり、そして第一の犠牲ポリマー層を覆う第二の犠牲ポリマー層を形成するためのこのような別個のポリマー組成物の二番目の、このような第二の組成物は、犠牲ポリマー層及び溶媒を包含し、そして更に所望の濃度の適当なPAGを有する。従ってこのようなPAG二重層は、集合的に光酸発生物質の濃度勾配をその中に有する。例えば、前記の第二の組成物が、前記の第一の組成物から形成された層の上に配置される、前述の第一及び第二の別個の犠牲ポリマー組成物から形成されたPAG二重層を考えた場合、PAG濃度は、前記の第二の別個の組成物から主として形成されたPAG二重層の部分より、前記の第二の別個の組成物から主として形成された前記のPAG二重層の部分において高いものである。従って、このようなPAG二重層を、集合的に、光酸発生物質の濃度勾配と理解することができる。
【0024】
[0034]本明細書中で使用する場合、用語“PAG単一層”又は“PAGドープ単一層”は、本発明の態様によって形成された犠牲ポリマー層を意味し、ここで、このような層は、最初、犠牲ポリマー及び溶媒を包含する犠牲ポリマー組成物からの基板上に形成されるが、しかしこのような組成物はいずれものPAGが非存在である。このような最初の形成後、適当なPAG及び適当な溶媒を包含するPAG溶液が、PAGの濃度勾配がこのような最初に形成された層内に作られるように犠牲ポリマー層上に配置され、ここで、PAGの濃度は、PAGドープ単一層が形成された基板の直近のこのような最初に形成された層の低い部分より、このように最初に形成された層の上部の部分において高い。
【0025】
[0035]従って、本発明のPAG二重層及びPAG単一層の態様の両方が、PAG濃度勾配を包含し、ここで、このような層の少なくとも一つの領域が、活性化光線照射によりポリマー分解を起こすために十分なPAGの濃度を有することを理解することができる。然しながら、好都合には、このような層の全PAG付加は、従来の技術のPAG単層のそれより少ない。
【0026】
[0036]本発明の態様を特徴づける特徴は、特許請求の範囲中に特殊性を伴って指摘されている。このような態様、その操作上の利益及び使用上のこれらの及び他の特徴は、本明細書中の以下のこのような態様の記載から、更に十分に理解されるものである。
【0027】
[0037]本発明による幾つかの態様は、PAG二重層及びそれから形成された構造体を包含し、一方、本発明による他の態様は、PAGドープ単一層及びこれから形成された構造体を包含する。このような態様が本明細書中で以下に考察されるため、これらは、ポリプロピレンカーボネート(PPC)犠牲ポリマーと呼ばれるものである。このような考察におけるPPCの使用が、有用な犠牲ポリマーに関する本開示の範囲を制約することを意味しないことは、他の犠牲ポリマーを使用することができるために理解されるものである。例えば、ポリノルボルネン、ポリカプロラクトン(PCL)及び他のポリカーボネートは、本発明の態様のために適した犠牲ポリマーであり、そして特定の犠牲ポリマーの選択は、設計上の選択として認識されるべきである。むしろ、本開示をPPCに制約することは、このようなPAG二重層の態様の開示及び理解の容易さのためにのみ行われる。
【0028】
[0038]本発明の態様によるPAG二重層構造体は、最初、基板上に第一の犠牲ポリマー組成物を適用することによって形成され、ここで、このような第一の組成物は、第一の犠牲ポリマー層を形成するためのいずれもの光酸発生物質又は光反応開始剤が非存在である。このように第一の層が形成された後、第二の犠牲ポリマー層を形成するために、このような第一の層上に第二の犠牲ポリマー組成物が適用され、ここで、このような第二の組成物は、犠牲ポリマーの0.1重量%に等しいか、又はそれより多い所望の濃度の光酸発生物質を包含する。第一の犠牲ポリマー層がいずれものPAGの非存在で形成され、そして第二の犠牲ポリマー層が所望のPAG濃度で形成されることを考慮すれば、このような第一及び第二の犠牲ポリマー層が、光酸発生物質の濃度勾配をその中に有するPAG二重層の態様を形成すると集合的に言うことができる。即ち、PAGの濃度は、PAG二重層構造体の上部で最高であり、そして最初に、これが形成された基板との界面の直近の層の低い部分で最低である。このようなPAG二重層構造体の正味の結果は、効率の良いPPC分解のために十分なレベルのPAGのピーク濃度が、層の一部に、そして従来の技術のPC単層のように層中にではなく提供される。驚くべきことに、このような構造体が、従来の技術によって製造された層の分解温度から本質的に変わらない温度において容易に分解されることができることが見いだされている。理論に束縛されることを望むものであはないが、照射されたPAGから作られた酸が、触媒のように作用し(PPC分解過程において再生され、そして消費されない)、そして従って、PAG二重層又はPAG単一層の一部が分解され、このような酸の有効な濃度を、前述の再生及び/又はこのような酸のより低い酸濃度を有する部分への拡散のために直近部分に維持することができるために、この結果が達成されると信じられる。従って、PAG二重層及びPAG単一層の全PAG付加が、従来の技術のPAG単層より低いために、PAG付加に関係する残留物の量は、大幅に減少される。
【0029】
[0039]好都合には、これらのPAG二重層構造体の態様は、従来知られていたものより大幅に改良された観察される線状端粗さ(LER)の程度で、光でパターン形成することができ、そして分解後、従来知られていたものより有意に少ない残った残留物を残す。このような利点は、本発明による態様の代表である図3及び図4、並びに先に考察した従来の技術の代表である図1及び図2の比較によって示される。最初に図1及び図3の比較を参照して、犠牲ポリマーの分解後に存在する残留物の量の有意な減少が、図1において観察される残留物と比較して、図3において観察される。図3において観察される残留物の平均厚みは、図1に対して考察したと同様な様式で測定し、そして約0.059μmであると計算された。構造体の本来の厚みに基づけば、図3において観察される残留物の厚みは、約0.19%残留であり、従って図1において観察された残留物の僅か約1/3であることを示す。図2及び図4の比較について、図4において存在するLERの程度は、最小量であり、そして従って、図2において観察されたものから大幅に減少されているように見受けることができる。
【0030】
[0040]従って、本発明によるPAG二重層の態様は、僅かな残留物又はそれが無いこと及び僅かな低い程度のLERを提供する犠牲ポリマーの分解を提供する。従って、このような態様が、従来知られた犠牲ポリマー層及び方法を使用して製造された構造体より大幅に改良されたエアキャビティー又はエアギャップを作成するために有用であることは理解されるものである。更に、本発明の態様によって形成されたエアキャビティーは、このような構造体の用途を、流体チャンネル、微小電気機械システム(MEMS)梱包容器のようなマイクロメートル及びナノメートル以下の規模のデバイス、及び改良された微小エレクトロニクスデバイスのための低−K誘電性構造体に拡大することが可能である。
【0031】
[0041]PAG二重層構造体に対するいずれもの言及が、二つの別個の犠牲ポリマー組成物のみから得られる構造体の形態に制約されないことは更に理解されるものである。むしろ、このようなPAG二重層構造体が、少なくとも二つの別個の組成物から形成され、そして従って、本発明による態様が、更に二つより多い犠牲ポリマー組成物から形成されるPAG二重層構造体を含むことは理解されるものである。なお更に、このようなPAG二重層構造体又はフィルムを形成するために使用される別個のポリマー組成物の数に関わらず、一旦形成された後、このようなフィルムは一体化構造体であることは理解されるものである。即ち、前述のPAG濃度勾配以外に、このようなPAG二重層フィルムは、このようなPAG二重層フィルムを作成するために使用された適用された犠牲ポリマー組成物のいずれかの間の界面又は界面の特性を示さない。
【0032】
[0042]ここに図5を参照して、暴露された及び非暴露のPAG単層の両方の熱重量分析のプロットは、暴露されたPAGを付加されたポリプロピレンカーボネート(PPC)のTd50が約80℃であり、一方、非暴露のPAGを付加されたPPCのTd50は約170℃であることを示す。従って、このような層を、像様暴露にかけることが、即ち、遮蔽成分を通して光線照射に暴露することが、層の幾つかの部分のみが暴露され、そして従って図5において観察される分解温度の低下をこのような暴露された部分のみに起こすものであるプロトン酸(類)を、そこに発生させることは理解されるものである。更に、暴露された部分の分解温度の又はそれより上の、しかし非暴露部分の分解温度より下の温度に層を加熱することが、遮蔽成分の画像を表す構造を作成するためにこのような暴露部分の分解をもたらすものであることは理解されるものである。
【0033】
[0043]図5は、PAGを付加されたPPC物質、即ち3ないし10重量%のPAGを有するPPC物質のデータを示しているが、このような分解温度の低下が更にPAG二重層においても観察されていることが見いだされている。理論に束縛されることを望むものではないが、PAG二重層構造体において、適当な波長の光線照射に暴露された後、PAG付加が非存在である第一の別個のポリマー組成物から形成された二重層に部分が、PAG付加を実際に有する前述の第二の別個の犠牲組成物から形成された二重層構造体の部分のPAGから形成されるいずれもの酸のための“拡散シンク”としての役目を果たすと信じられる。従って、十分な局所的酸濃度が、全体の二重層構造体を通して提供されて、暴露された部分の分解温度の本質的に均一な低下を可能にする。従来の技術のPAG単層及び同等の厚みのPAG二重層の分解過程における唯一の観察された差は、PAGの局所的濃度が二重層の本質的に完全な分解を得るためのPAG不良領域へ拡散するために必要な更なる時間である。例えば、約30μmのPAG単層の暴露された部分は、約4−5分で分解し、一方、本質的に同じ厚みのPAG二重層の暴露された部分は、約13−15分で分解する。“拡散シンク”効果が、更に例えば、図2及び図4の比較において観察されるような線状縁辺粗さにおける改良の寄与体であると更に信じられる。上述の理論に加えて、“拡散シンク”の存在が、暴露された領域中のPAGによって発生された上述の酸(類)の隣接する非暴露の領域への横への拡散を制約して、図2において観察される程度のLERを作成すると信じられる。
【0034】
[0044]好都合には、このような制約された横への拡散は、改良された空間的解像度、即ち、予測された寸法及び本質的に垂直の側壁特性のより良好な解像度をもたらす。ここで図6a及び7aを参照して、それぞれは、PAG単層(6a)及びPAG二重層(7a)中に画像化された解像度試験パターンを示す。図6b及び7bは、図6a及び7aのそれぞれの50μmの線の部分及び空間底部アレイの輪郭のプロットを示す。容易に観察されるように、図7aに示した試験パターンの特徴の解像度は、図6aに示したものより優れている;更に、図7bの輪郭は、図6bのものより有意に更に垂直である側壁の輪郭を示す。従って、従来の既知の技術によって製造されたPAG単層のそれに対する、本発明のPAG二重層態様の改良された画像化可能性を証明する。
【0035】
[0045]ここで図8a及び8bについて、従来の技術のPAG単層(8a)及び本発明のPAG二重層(8b)の態様間の画像化可能性のもう一つの比較を示す。それぞれの層の像様暴露のために使用された光遮蔽物の線の幅の寸法は、600μmであったが、PAG単層(8a)の測定された線の幅は、446μmであることが示され、一方、PAG二重層の測定された線の幅は、621μmであることが示されている。それぞれの画像に対して、同じ暴露時間及びエネルギー並びに画像発生法が使用され(二重層に対する延長された分解時間以外は)、従って、それぞれ図8a及び8bの従来の技術の犠牲層及び本発明によって製造された二重層間の差の関数である異なった結果が得られるという結果になる。
【0036】
[0046]ここで図9を参照して、本発明によるPAG二重層構造体の態様の一部の、断面簡略図を示す。このような二重層構造体は、基板100を、最初に、前述の第一の別個の犠牲ポリマー組成物からの基板100上に、いずれものPAGが非存在の第一の犠牲ポリマー層120を形成することによって保護被覆し、そして得られたフィルム又は層を乾燥した後、犠牲ポリマー層120上に前述の第二の犠牲ポリマー組成物からの第二の犠牲層140を形成することによって形成される。表1に示すように、層120及び層140の両方の厚みを、所望の結果を得るために変化することができることは理解されるものである。
【0037】
[0047]本発明による幾つかの態様は、前述のPAG二重層ではなく、PAG単一層を包含する。図10a及び10bを参照して、このようなPAGドープ単一層は、基板100を、最初に、基板100上に先に記載したように犠牲ポリマー層120を形成することによって保護被覆して形成される。層120が形成され、そして穏やかに焼くことによって乾燥した後、このような層をPAGを付加された溶液150で処理する。PAG溶液150は、溶媒及びPAGからなり、そしていずれもの犠牲ポリマーが非存在である。ポリマー層120及び140は、一般的にスピンコート、噴霧コート、ドクターブレード等のような方法によって形成されるが、PAGを付加された溶液150による処理は、更に所望の時間のこのような溶液中への層120の浸漬を包含することができることは理解されるものである。溶液150によるこのような初期の処理後、層及び基板を再び穏やかに焼き、そしてPAGドープ単一層155(図10b)が作成される。
【0038】
[0048]先に記述したように、本発明のPAG二重層及びPAG単一層の態様を形成するために使用される犠牲ポリマーが、ポリプロピレンカーボネート(PPC)に制約されないことは理解されるものである。他のポリカーボネートとしては、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリシクロヘキサンカーボネート(PCC)、ポリシクロヘキサンプロピレンカーボネート(PCPC)、ポリノルボルネンカーボネート(PNC)、及びこれらの組合せなどが挙げられる。なお更に、このような態様は、更に、特にポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo3−endo−ジメタン)];ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−5−ノルボルネン−2−endo−3−endo−ジメタン)];ポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,1,4,4−テトラメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)];及びポリ[(オキシカルボニルオキシ−1,4−ジメチルブタン)−alt−(オキシカルボニルオキシ−p−キシレン)]のような犠牲ポリマーを使用して形成することもできる。
【0039】
[0049]更に、このような犠牲ポリマーは、有用な範囲の分子量を有する本発明によるPAG二重層及びPAG単一層の態様を形成するために提供することができる。従って、幾つかの態様に対して、犠牲ポリマーは、2,000ないし200,000の重量平均分子量(Mw)を有することができ、一方、他の態様に対して、8,000ないし70,000のMwの範囲が適当であり、そしてなお他の態様に対して、9,000ないし60,000の範囲が適当である。
【0040】
[0050]先に考察し、そして図9に示すように、本発明のPAG二重層及びPAGドープ単一層の態様は、少なくとも一つの光酸発生物質成分又はPAGを包含する。一般的に、このようなPAGは、トリフリン酸基、ペルフルオロブタンスルホン酸(nonaflic acid)基、FABA酸基又は非フッ化スルホン酸基を包含する物質から選択される。更に具体的には、有用なPAGは、制約されるものではないが、トリフリン酸(tert−ブトキシカルボニルメトキシナフチル)−ジフェニルスルホニウム(TBOMDS−TF)、トリフリン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム(BTBPL−TF)、トリフリン酸N−ヒドロキシナフタルイミド、ペルフルオロ−1−ブタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム(NHN−TF)、ペルフルオロ−1−ブタンスルホン酸トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム(DPI−NF)、ペルフルオロ−1−ブタンスルホン酸n−ヒドロキシナフタルイミド(TTBPS−NF)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(ロードシル(Rhodorsil)−FABA)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム(TTBPS−FABA)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルスルホニウム(TPS−FABA)、p−トルエンスルホン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム(BTBPI−PTS)、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸ジフェニルヨードニウム(DPI−DMOS)、Ciba非イオン性光酸発生剤(CGI−263)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(ペルフルオロメタンスルホニル)メチド(BTBPI−TMM)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムビス(ペルフルオロメタンスルホニル)イミド(BTBPI−BBI)、ペルフルオロ−1−オクタンスルホン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム(BTBPI−HDF)及びこれらの組合せを含む。
【0041】
[0051]本発明の二重層の態様を形成するために使用されるポリマー組成物は、一般的に適当な犠牲ポリマー及び適当なPAG(類)の溶液である。本発明によるこのような組成物の態様の幾つかのポリマー濃度は、5%ないし50%重量%(組成物の全重量に基づく)の範囲であることができるが、他の組成物の態様は、5ないし35重量%のポリマー濃度を有し、一方なお他の態様において、ポリマー濃度は、10ないし20重量%の範囲である。これらの前述の態様において使用されるポリマー濃度が、一般的に特定の厚みを有する層又はフィルムの形成を可能にするために選択され、そして従って、設計上の選択であると考えられることは理解されるものである。
【0042】
[0052]更に理解されなければならないように、使用されるPAGの濃度は、任意ではなく、しかしPAGを付加されたポリマー組成物又はPAG溶液が使用されるか否か、選択された具体的なPAG又は複数のPAG、選択された具体的な犠牲ポリマー又は複数のポリマーの分解を強制するために十分な強さを有するプロトン酸を形成するその能力の関数である。従って、上記で考察したポリマーの濃度のように、使用されるPAGの濃度も、更に設計上の選択である。本発明による幾つかの態様に対して、光酸発生物質濃度が、0.2ないし6重量%、又は3ないし20重量%の量で存在することができると言われ、ここで、このような範囲は、所望の層(複数の層)を形成するために使用されるポリマー組成物中に存在するポリマーの重量、又はPAG溶液が使用される場合溶液の重量に基づいている。他の態様に対して、このような組成物中のPAG濃度は、4ないし18重量%、そしてなお他の態様に対して、5ないし15重量%の範囲であることができる。
【0043】
[0053]先に記述したように、本発明によるポリマー組成物の態様は溶液であり、そして従って溶媒を包含する。再び、ポリマー及びPAG(類)の選択に関して上記で考察したように、溶媒の選択も更に設計上の選択であるが、然しながらこの選択は、選択された溶媒(類)が選択された犠牲ポリマー(類)及び/又はPAG(類)の溶液を形成するために適当である場合にのみ有効であることができる。例示的な溶媒は、制約されるものではないが、アセトニトリル、アセトフェノン、アルファ−アンゲリカラクトン、アニソール、ガンマ−ブチロラクトン、酢酸N−ブチル、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、デカヒドロナフタレン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メシチレン、2−メトキシエチルエーテル、1−メチル−2−ピロリジノン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフリルエーテル、ガンマ−オクタノラクトン、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、及びこれらの組合せを含む。
【0044】
[0054]PAGドープ単一層が形成される場合、PAGを付加された溶液150(図10)を製造するために使用される溶媒は、犠牲ポリマー層120を形成するために使用される犠牲ポリマー組成物の溶媒と同一であるか又は異なっていることができる。溶液150が犠牲ポリマーを包含していないために、層120の処理はこのような層の初期の厚みを減少する可能性があることは理解されるべきである。このような厚みの減少は、溶液150のために使用される溶媒中の層120のポリマーの溶解度の関数である。従って、PAGドープ単一層155の特定の最終厚みが所望される場合、層120の最初の厚みは、溶液150によるその処理のためのこのような厚みの減少に対して調節されなければならない。このような厚みの減少は、溶液150のために使用される溶媒及び使用される処理の方法の関数であり、層120の最初の厚みの調節は、過度な実験無しに容易に決定することができる。
【0045】
[0055]以下の表1は、PAG二重層の態様におけるPAG単層の厚みの変化の影響を決定するために行った一連の実験を例示する。更に、それぞれの実験のために、完全な厚みのPAG単層及びPAG二重層の両方を形成し、それぞれの層の一部は、本質的に等量のUV暴露を受け、そして次いで同じパターン発生及び分解条件にかけた。更に、全ての場合、PAG単層のPAG付加は、ポリマーの重量の3重量%であった。それぞれのPAG二重層構造体に対して残留物の減少の%が報告されている場合、報告された値は、犠牲ポリマーの分解後に見出された残留物の平均(平均)厚みから、以下の等式:
残留物減少%=[1−(平均二重層残留物/平均単層残留物)]×100
によって計算された。
【実施例】
【0046】
実施例1
[0056]従って実験1において、残留物の62.5%の減少が見いだされ、一方PAG二重層のPAG単層部分の厚みが減少されると、残留物の減少の%が増加し、実験3では74%に達した。二重層のパターンの幅が事件1及び実験3間で約7%増加したことが観察された筈であるが、単層のパターンの幅は、約6%増加した。単層の結果を“内部対照”と考えれば、パターンの幅の変化は、それぞれのPAG二重層のPAG単層部分の厚みの減少と直接関係しないと信じられる。
【0047】
[0057]残った残留物の量は、非揮発性のPAG(類)から得られたと信じられることはもちろん理解されるものであるために、従ってそれぞれの二重層の全体的PAG付加が残留物の減少の%の指標であるべきであることは理解されるものである。このような結果は、実際に見いだされ、そして表1に開示されている。
【0048】
[0058]以下の表1において、与えられている場合、単層は先に記載したような従来の技術のPAG単層の代表であり、二重層は、先に記載したようなPAG二重層の代表であり、全フィルム厚み、最終パターン厚み、及び最終パターン幅の数値はμm、UV暴露時間の数値は秒(秒)で表示され、平均(平均)残留物の数値はオングストローム(Å)で表示されている。残留物の%の数値は、[0048]項で先に与えた式を使用して計算されている。
【0049】
【表1】

【0050】
[0059]要約として、典型的には、直接光画像化可能なPPCのような犠牲ポリマーのために、最低3重量%のPAG付加が必要であるが、犠牲構造体の暴露部分が分解工程によって除去される場合、少なくとも一つのこのような層がいずれものPAGが非存在である多層構造体を作成することによって、このような構造体は、ポリマー分解工程による多層又は二重層構造体の暴露部分の除去によって、直接光でパターン形成することができることが見いだされている。PAGを、このような構造体の幾つかの部分(等)のみの制約することによって、全体的PAG付加が減少されることは注目すべきである。従って、上記の表1において、二重層1のPAG付加は、合計0.58%であり、一方二重層3に対するPAG付加は0.09%である。好都合には、全体的PAG付加が大幅に減少されるが、本発明による二重層の態様の画像化可能性が優れていることは、注目に値する。従って、二重層3に対して、このような二重層の部分を暴露するために使用されるエネルギーの量は、二重層1又は2の暴露のために使用されるものの1/10に減少され、パターン形成は好結果であり、そして残った残留物の%は、大幅に減少した。
【0051】
[0060]本明細書中で先に提供したデータの多くは、非カプセル化犠牲ポリマーの分解を考察し、そして示してきたが、本発明による幾つかの態様は、保護被覆層又は物質を伴う二重層のカプセル化された非暴露部分を包含することも更に注目すべきである。酸託されたこのような保護被覆物質は、非暴露犠牲部分の分解のために選択された温度において熱的に安定であり、並びに分解生成物がそれを通る浸透を可能にすることが可能であるように選択された。このような保護被覆物質は、適当に高い分解温度を持つポリマー、例えば、Promerus LLC又はBrecksville Ohioから入手可能なAvatrel(登録商標)物質のようなポリノルボルネンポリマーであることができ、或いは別の方法として、二酸化ケイ素又は非暴露二重層部分の早発分解を回避するために適した様式で形成されたオキシ窒化ケイ素のような無機物質であることができる。
【0052】
[0061]“浸透”又は“通って浸透する”は、膜又はフィルム中への成分の溶解、そのようなフィルムを通るこのような溶解された成分の拡散、及びそのようなフィルム又は膜からのこのような成分の蒸発の既知の過程を指すことは理解されるものである。
【0053】
[0062]ここで(mow)図11A−11Gについて、エアギャップ構造55、保護被覆構造10及び下部保護被覆層50を形成するための工程が示される。従っていずれものPAGが非存在の犠牲層15は、示されるように(10B)基板10上に形成される。このような層(フィルム)が乾燥された後、PAG単層20が、PAG単層20が形成され、ここで、層15及び層20は、PAG二重層フィルム25を包含する(10C)。次いで二重層25の像様暴露が、フィルム25のどの部分が光線照射35によって暴露されるかを規定する遮蔽物30を使用して行われる(10D)。二重層25の暴露部分は、熱分解法によって除去されて、基板上に残った非暴露部分40を残す(10E)。次いで、図11Fに示すように、保護被覆層50が、図10Eに示すように構造体上に配置され、そして図11Fの構造体を、部分45の分解及び保護被覆50を通る分解生成物の浸透のために適当な温度に加熱した後、エアギャップ55が形成される(10G)。
【0054】
[0063]先に考察したように、本発明による幾つかの態様のために、先に考察したPAG二重層ではなく、PAG単一層が使用される。このようなPAG単一層は、以下の実験2において記載されるように調製され、そして試験された。
【0055】
実施例2
実験2
[0064]GBL中の20重量%のPPCを有する第一の溶液を調製した。この第一の溶液は、いずれものPAGが非存在であった。GBL中の0.6重量%のPAGを有する第二の溶液を調製し、ここで、PAGは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(ロードシル−FABA)であった。
【0056】
[0065]PPCフィルムを、Si基板上の第一の溶液から成形した。フィルムは、シリコンウエハーを、第一の溶液で500RPMで5秒間スピンコートし、次いで、スピン速度を1000rpmに上げ、そしてスピン速度をこの速さで40秒間保つことによった。次いでウエハーを105℃に加熱し、そしてこの温度で5分間保った。ウエハーを冷却した後、得られた犠牲ポリマー層の厚みは、10.7umであるとその後決定された。
【0057】
[0066]次いで、犠牲ポリマー層を、第二のPAGのみの溶液で処理した。処理を、第二の溶液を犠牲ポリマー層上に、先に記載したと同じスピンコートサイクルを使用して配置し、続いて処理された層及びシリコンウエハーを、更に先に記載したように加熱することによって達成した。
【0058】
[0067]処理後の犠牲ポリマー層の目視観察は、層の表面に見えるPAGを伴わない平滑な表面を証明した。第二の溶液による処理後の犠牲ポリマー層の厚みは、6.1umであると決定された。
【0059】
[0068]次いで、犠牲ポリマー層をUV照射(62秒間248nmを照射)に暴露し、そして次いで再び105℃で5分間加熱した。ウエハーを冷却した後のウエハーの目視観察は、犠牲ポリマーが、ウエハーの表面に存在するPAGのためと信じられる少量の残留物のみを伴って、本質的に完全に分解したことを証明した。残留物は、非常に薄い褐色の埃っぽい外観の層であり、これは、イソ−プロピルアルコール洗浄で完全に除去された。
【0060】
[0069]図5に示すように、PAGを含まないPPC層は、150℃より下では何らの分解も示し始めないために、実験2によって証明された結果は、いずれものPAGが非存在であるPPC層の先に記載したものと一致する様式における処理が、十分なPAGを層に組込んで、このような処理された層の完全な分解を、105℃で、又はそれより下で、5分以内で可能にするものであることを証明する。
【0061】
[0070]実験2は、犠牲ポリマー層へのPAGの組込みのために提供されるそれぞれの組成物に対して同じ溶媒が使用されることを証明するが、第二の溶液が第一の溶液と異なった溶媒を使用し、犠牲ポリマーがこのような異なった溶媒中のある程度の溶解度を示す場合、このような第二の溶液のPAGは、更に犠牲層に組込まれるものであるが、しかし犠牲ポリマーがこのような異なった溶媒中により少なく溶解性である場合、層の厚みの減少は、恐らく減少されるものであると信じられる。PAGが十分な蒸気圧を有するか、又はこのように充分な量のPAGが適当な溶媒の蒸気相に含有されている場合、更に気相浸透のような他の手段を想像することもできる。更に、このような層と接触させられた場合、例えば、薄いPAG層がその上に形成されるものであるように、犠牲ポリマーと混和性ではない溶媒を、第二の溶液のための異なった溶媒として使用することによって、PAGが犠牲ポリマー層に拡散することができると信じられる。
【0062】
[0071]これまで、PAG二重層又はPAG単一層のいずれかとしてのPAGドープ犠牲ポリマー層を形成するための新規な方法が、本明細書中で先に証明されていることは理解されるべきである。更に、本明細書中で証明されている向上された画像化可能性及び改良された線状端粗さが、このような構造体の用途を、公知の製造方法を使用してマイクロ及びナノ規模のデバイスに拡大することが可能であるために、PAG二重層及びPAG単一層を、エアキャビティー、流体チャンネル、微小電気機械システム(MEMS)デバイス及び梱包容器、改良された微小エレクトロニクスデバイス等のための低K誘電性構造体等のような構造体を形成するために使用することができることは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0063】
10 保護被覆構造体
15 PAG非存在犠牲層
20 PAG単層
25 PAG二重層フィルム
30 遮蔽物
35 光線照射
45 分解される部分
50 下部保護被覆層
55 エアギャップ構造体
100 基板
120 第一の犠牲ポリマー層
140 第二の犠牲層
150 PAGを付加された溶液
155 PAGドープ単一層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包囲されたエアギャップ構造体を製造するための方法であって:
基板上に犠牲ポリマー二重層フィルム(PAG二重層)又は前記基板上に犠牲ポリマー単一層フィルム(PAGドープ単一層)のいずれかを形成し、ここで、二重層フィルム及び単一層フィルムの両方は、その中に濃度勾配を有する光酸発生物質成分を含んでなり;
前記二重層又は単一層を光線照射に像様に暴露し、これによってその暴露部分及び非暴露部分を形成し;
前記暴露された二重層又は単一層フィルムを、前記暴露部分の犠牲ポリマーを分解するために有効な第一の温度(T)に加熱し;
前記非暴露部分を覆う保護被覆層を形成し;そして
前記非暴露部分を、その犠牲ポリマーを分解するために有効な第二の温度(T)に加熱し、ここで、このような分解の分解生成物が、前記保護被覆層を浸透し、これによって前記包囲されたエアギャップ構造体を形成すること;
を含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記犠牲ポリマー二重層フィルムを形成することが:
基板を覆う第一の犠牲ポリマーフィルムを形成し、前記第一の犠牲ポリマーフィルムは、光酸発生物質成分の濃度が非存在であり;
前記第一の犠牲ポリマーフィルムを覆う第二の犠牲ポリマーフィルムを形成し、前記第二の犠牲層ポリマーフィルムは、ポリマーの2重量パーセントないしポリマーの10重量パーセントの濃度の光酸発生物質成分を有し;そして
いずれもの残留溶媒を除去するために十分な温度に前記第一及び第二の犠牲ポリマーフィルムを加熱し、ここで、前記第一及び第二の犠牲ポリマーフィルムは、光酸発生物質成分の勾配を有する犠牲ポリマー二重層フィルムを形成すること;
を含んでなる、請求項1に記載の包囲されたエアギャップ構造体を製造するための方法。
【請求項3】
前記犠牲ポリマー二重層フィルムを形成することが、更に前記第二のフィルムを覆う第三の犠牲ポリマーフィルムを形成し、ここで、前記第三のフィルムは、光酸発生物質の濃度が非存在であるか、又はポリマーの0.5重量パーセントないしポリマーの20重量パーセントの光酸発生物質成分の付加を有するかのいずれかであることを含んでなる、請求項2に記載の包囲されたエアギャップ構造体を製造するための方法。
【請求項4】
前記犠牲ポリマー単一層フィルムを形成することが:
基板を覆う犠牲ポリマーフィルムを形成し、前記犠牲ポリマーフィルムは、光酸発生物質成分の濃度が非存在であり;
光酸発生物質成分の溶液(PAG溶液)を、前記犠牲ポリマーフィルム上に配置し、ここで、前記溶液は、ポリマーの0.01重量パーセントないし溶液の1.0重量パーセントの光酸発生物質成分の付加を有し;そして
前記犠牲ポリマーフィルム及び配置されたPAG溶液を、いずれもの残留溶媒を除去するために十分な温度に加熱し、ここで、前記犠牲ポリマーフィルム及び配置されたPAG溶液は、光酸発生物質成分の勾配を有する犠牲ポリマー単一層フィルムを形成すること;
を含んでなる、請求項1に記載の包囲されたエアギャップ構造体を製造するための方法。
【請求項5】
前記第二の溶媒が、前記第一の溶媒と同じである、請求項1に記載のエアギャップ構造体を形成する方法。
【請求項6】
前記第一及び第二の溶媒が、イソプロピルアルコール、ガンマブチロラクトン、N−メチルピロリドン、アニソール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エアギャップ構造体が、実質的に残留物を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光線照射が、UV照射である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
が、50℃ないし250℃の両端を含むその範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
が、50℃ないし300℃の両端を含むその範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記PAG二重層の第一のポリマー層が、0.1μmないし300μmの両端を含むその範囲の厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記PAGドープ単一層の犠牲ポリマー層が、0.1μmないし300μmの両端を含むその範囲の厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記改変されたポリマー層が、第一の層の厚みより大きい厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記犠牲ポリマーが、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリシクロヘキサンカーボネート、ポリシクロヘキサンプロピレンカーボネート、ポリノルボルネンカーボネート、及びこれらの組合せから選択されるポリカーボネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記犠牲ポリマーが、層の1ないし50重量%であり、そして光酸発生物質が、第二のポリマー層の0.5ないし10重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
エレクトロニクスデバイスにおいて使用するための二重層構造体であって:
基板を覆って形成された第一のポリマー層であって、少なくとも一つの犠牲ポリマーからなる前記層;
前記第一のポリマー層を覆って形成された第二のポリマー層であって、少なくとも前記犠牲ポリマー及び光酸発生物質からなる前記第二のポリマー層;
を含んでなり、エレクトロニクスデバイスにおいて使用するためのエアギャップ構造体を形成するために使用される、前記二重層構造体。
【請求項17】
前記第一のポリマー層が、17.9μmないし28.5μmの範囲の厚みを有する、請求項16に記載の二重層構造体。
【請求項18】
前記第二のポリマー層が、1.4μmないし5.6μmの範囲の厚みを有する、請求項16に記載の二重層構造体。
【請求項19】
エレクトロニクスデバイスにおいて使用するための、複数のエアギャップを形成するために使用される、請求項16に記載の二重層構造体。
【請求項20】
複数のエアギャップ構造体を形成する方法であって:
基板を覆う複数のPAG二重層ポリマー構造体又はPAGドープ単一層構造体を形成し;
前記二重層ポリマー構造体のそれぞれを包囲する保護被覆層を形成し;そして
前記二重層構造体を、前記二重層構造体を分解するために有効な温度に加熱し、これによって前記保護被覆層内に複数のエアギャップ構造体を形成すること;
を含んでなる、前記方法。

【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58737(P2013−58737A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−152433(P2012−152433)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(512178868)ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】