説明

低毒性活性薬剤局所送達システム

ビタミンAおよびその誘導体を含む活性薬剤の局所送達を可能にする、活性薬剤送達組成物が提供される。メトキソナフルオロブタンまたはエトキソナフルオロブタンなどのポリハロゲンビヒクルが、シリコーンには通常溶けない活性薬剤の可溶化を可能にし、水分を保持する組成物を提供するよう、活性薬剤およびシリコーン担体の結合剤として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2009年12月15日に出願された米国仮出願第61/286,668号、および2010年2月24日に出願された米国特許出願連続番号第12/711,381号の優先権を主張する。双方の出願の内容全体はここに引用により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、活性薬剤の局所送達のための組成物に関する。組成物は、乾燥、刺激、または炎症などの毒性が低下した、活性薬剤の皮膚への送達に関する。本発明の組成物は、レチノイドなどの局所薬剤の皮膚への送達に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
レチノイドなどの脂溶性スキンケア活性薬剤は通常、加齢の出現の軽減、他の美容上の目的、またはニキビなどの皮膚症状の処置のために、局所的に塗布される。
【0004】
局所薬剤の塗布に関連する快適性は、皮膚上の塗布された組成物の蒸発速度に一部関連する。蒸発速度が遅い製品は皮膚上でべたつく感じになり、一方、蒸発速度が速すぎる製品は、それが皮膚に全く塗布されなかったかのように感じられ、または十分に塗布されなかったという印象を使用者に与えて、過度の使用に繋がるおそれがある。局所薬剤を揮発性シリコーンと組合せると、心地よい塗布を提供する適正な蒸発速度が可能になる。しかしながら、シリコーン自体は、疎水性活性薬剤用の溶媒としては相応しくない。
【0005】
シリコーンにおける溶けにくさに対処するには、これらの薬剤用の送達システムは通常、活性薬剤を可溶化し、かつ使用者による心地よい塗布を提供する揮発性化合物との組合せに対する適合性を提供するために、35%以上の有機溶媒を担体として必要とする。先行技術は、有機溶媒として、エチルアルコールなどのアルコールを好んでいる。
【0006】
多くの活性薬剤は、皮膚の薄化または乾燥の一因となっている。この問題は、表皮バリア脂質を変質させ、皮膚の炎症の一因となり得る、著しいレベルの有機溶媒を含むことによって悪化する。ここに引用により援用される米国特許第4,826,828号のレチノイド組成物において使用されるようなエチルアルコールは、疎水性薬剤の局所送達に対する解決策であると考えられてきた。しかしながら、エチルアルコールは皮膚の炎症および乾燥の一因となる。このため、エチルアルコールを刺激性活性薬剤と組合せると、皮膚の乾燥が増加し、最適でない使用に繋がる。
【0007】
このため、心地よい塗布を提供し、毒性の一因とはならない疎水性活性薬剤送達システムに対する要望が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
本発明の以下の概要は、本発明に特有のいくつかの革新的な特徴の理解を容易にするために提供されており、完全な説明であるよう意図されてはいない。本発明のさまざまな局面の十分な理解は、明細書全体、請求項、図面、および要約書を全体として捉えることによって得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
べたつく感じの残留物がなく、被験者の皮膚への活性薬剤の心地よい投与を作り出す活性薬剤送達組成物が提供される。本発明の組成物は、例示的にはビタミンAまたはその誘導体、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、抗菌剤、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、UVフィルタ、脂質、および免疫調整剤である、活性薬剤を含む。活性薬剤は任意に、0.001〜2重量パーセントで存在しているビタミンAまたはその誘導体である。任意に、ビタミンA誘導体は、レチナール、レチノイン酸、レチニルエステル、レチノール、トレチノイン、イソトレチノイン、アダパレン、タザロテン、またはそれらの組合せである。活性薬剤は任意に、サリチル酸、アセチルサリチル酸、またはそれらの組合せである。
【0010】
本発明の組成物は、任意に直鎖脂肪族ポリオルガノシロキサン、任意にエチルトリシロキサンであるシリコーン担体の使用を通して、心地よい皮膚投与を提供する。
【0011】
本発明の組成物には、エタノールなどの有機溶媒に対する必要性を低減または排除しつつ、担体を用いて活性薬剤を可溶化するために、ポリハロゲンビヒクルが存在している。ビヒクルは、任意にパーフルオロエーテル、任意にメトキソナフルオロブタンまたはエトキソナフロオロブタンである。ビヒクルは任意に、約15〜25重量パーセントで存在している。
【0012】
任意の有機溶媒が含まれる。任意に、有機溶媒は25重量パーセント未満で存在している。任意に、有機溶媒は5重量パーセント未満で存在している。
【0013】
被験者における皮膚症状を処置するプロセスも提供される。皮膚症状は、たとえば、ニキビ、皺、乾燥、癌、または発汗であってもよい。本発明のプロセスは、本発明の組成物を被験者の皮膚に塗布するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、当然代わり得る説明される特定の実施形態に限定されない、ということが理解されるべきである。また、ここで使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定的であるよう意図されてはいない、ということが理解されるべきである。
【0015】
本発明は、活性薬剤局所送達システムとしての効用を有する。本発明は、薬剤または溶媒に関連する副作用が減少し、快適性およびユーザコンプライアンスが改良された、疎水性活性薬剤の皮膚への送達のためのより具体的な効用を有する。
【0016】
本発明の組成物は、担体および相溶性ビヒクルと組合された活性薬剤を含む。
ここで使用されるように、「活性薬剤」という用語は、被験者の皮膚への送達に好適な分子を指す。好ましくは、活性薬剤は、薬剤活性を有しており、皮膚症状の処置または予防のために存在する。活性薬剤は任意に、炭素数が3以上の炭化水素鎖を有する分子などの低極性分子であるが、より高い極性の材料を含んでいてもよい。活性薬剤の例は、ビタミンAまたはその誘導体;ヒドロキシ酸;過酸化ベンゾイルおよびレゾルシノールなどの芳香族分子;アゼライン酸、エリスロマイシン、スルファセタミドナトリウム、テトラサイクリンおよび誘導体、クリンダマイシンなどの抗菌剤;5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、イミキモド、および[o−(2,6−ジクロロアニリノ)フェニル]酢酸ナトリウムを例示的に含む抗腫瘍薬および/または眼科用薬剤;例示的にはガンシクロビル、トリフルオロチミジン、および関連化合物である抗ウイルス薬;例示的にはフルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、および関連化合物である非ステロイド性抗炎症薬;例示的にはコルヒチンタキソールおよび関連化合物である有糸分裂阻害剤;例示的にはファロイジン、サイトカラシンB、および関連化合物である、アクチン重合に作用する薬剤;ジヒドロピリミジン・デヒドロゲナーゼ(DPD)の阻害剤、チミジンホスホリラーゼ(TP)および/またはウリジンホスホリラーゼ(UP)酵素阻害剤;例示的にはオキシベンゾン、オクトクリレン、オクチルメトキシシンナメート、およびアボベンゾンなどのベンゾフェノン誘導体である紫外光(UV)フィルタ;例示的には6−メチルウラシルおよび4−メチルウラシルなどのメチルウラシルである放射線防護剤;ならびに、タクロリムスおよびピメクロリムスなどの免疫調節分子を例示的に含む。他の活性薬剤は、例示的には、顔料、染料、および充填剤などの化粧品である。本発明の組成物は任意に2つ以上の活性薬剤を含む、ということが理解される。任意に、2、3、4、5、6、またはそれを上回る数の活性薬剤が、本発明の組成物に存在する。任意に、活性薬剤は、任意に皮膚またはその層の所望の活性種に変換されるプロドラッグである。
【0017】
活性薬剤は任意に、発汗を制御するのに好適な脂質といった脂質である。脂質は、約12未満、約8未満、または任意に約6未満のHLBを有する。脂質の例示的な例は、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸グリコールのプロピレン、モノイソステアリン酸プロピレングリコール、モノカプリル酸プロピレングリコール、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノカプリル酸ソルビタン、モノイソオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、それらの混合物などを含む。任意に、脂質は、フィッツケム社(Fitz Chem Corporation)といった供給業者によってMONOMULS90−L12という名前で入手可能となっているモノラウリン酸グリセリルである。
【0018】
通常、脂質は、組成物の約4〜約35重量%、任意に約5〜約20重量%、任意に約10〜約15重量%を、組成物の総重量に基づいて、それらに包含される全範囲を含んで占めている。
【0019】
顔料の例は、金属レーキの形をした分子といった無機または有機分子を例示的に含む。顔料は例示的に、二酸化チタン、酸化亜鉛、D&CレッドNo.36およびD&CオレンジNo.17、D&CレッドNo.7、11、31および34のカルシウムレーキ、D&CレッドNo.12のバリウムレーキ、D&CレッドNo.13のストロンチウムレーキ、FD&CイエローNo.5、FD&CイエローNo.6、D&CレッドNo.27、D&CレッドNo.21、およびFD&CブルーNo.1のアルミニウムレーキ、酸化鉄、マンガンバイオレット、酸化クロム、およびウルトラマリンブルーでできている。
【0020】
ビタミンAまたはその誘導体の例は、レチナール、レチノイン酸、レチニルエステル、レチノール、トレチノイン、イソトレチノイン、アダパレン、タザロテンなどのレチノイドを例示的に含む。
【0021】
ヒドロキシ酸の例は、サリチル酸、アセチルサリチル酸などのベータヒドロキシ酸を例示的に含む。
【0022】
この説明は活性薬剤の例示的な例としてレチノールを使用しているが、明細書はそのようなものとして限定されてはいない。他の活性薬剤も同様にここで使用可能である。
【0023】
本発明の組成物を用いて、とりわけ、ニキビ、皺、乾燥、湿疹、乾癬、光線性および非光線性角化症、酒さを例示的に含むさまざまな皮膚症状または全身症状が処置可能である。米国特許第3,932,665号は、局所塗布によりニキビを処置するための方法において、治療薬としてレチナールを記載した。米国特許第3,932,665号の開示はしたがって、ここに引用により援用される。角化症の処置のための5−フルオロウラシルの局所投与は、その内容がここに引用により援用される米国特許第4,034,114号に記載されている。本発明の組成物は、活性薬剤の局所投与または眼科的投与に通常伴う関連する副作用を減少させる。
【0024】
本発明の組成物は、活性薬剤の局所送達に好適である。本発明の組成物は、揮発性シリコーンを含有する担体に配合されたレチノールを例示的に含む。そのような担体を用いると、有益な効果を達成するのに必要とされるレチノールレベルが最小限に抑えられ、レチノールによる皮膚への刺激効果の可能性が大いに低減する。また、レチノールは、他の従来の担体とは対照的に、シリコーンを含有する本発明の組成物に配合されると、安定している。
【0025】
本発明の組成物は、0.005〜1.0重量パーセントのレチノールを含んでいてもよく、その場合、組成物は任意に、皮膚に直接塗布され、またはより高いレベルの活性薬剤を含有するより濃縮された溶液として供給され、その場合、組成物は塗布の前に任意に、化粧品として許容可能な担体により、レチノールについて0.005〜1.0重量パーセントといった所望のレベルに希釈される。本発明の配合物では、レチノールの安定性を改良し、かつ油と水との分離の可能性を最小限に抑えるために、任意に、水が最小限に抑えられ、または排除される。任意に、水は2%未満で存在する。当業者であれば、活性薬剤の所望の最終量に依存して、異なるレベルの活性薬剤がここで使用可能である、ということを認識するであろう。
【0026】
任意に、活性薬剤は、30%w/w量未満、存在する。任意に、活性薬剤は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.01、0.001、0.0001重量パーセント、それらの間の任意のレベル、またはそれらの任意の範囲で存在する。任意に、活性薬剤は20%w/wで存在する。例示的には、アゼライン酸が活性薬剤である場合、それは15〜25%w/wで存在する。ビタミンA誘導体は、任意に0.001〜2重量パーセントで存在する。イミキモドは、任意に3〜8重量パーセントで存在する。濃縮溶液または塗布用最終溶液における活性薬剤の最適レベルを定めることは、当該技術分野の技能の範囲内にある。
【0027】
活性薬剤は好ましくは、担体中に提供される。担体は、任意に10〜75%w/v存在する。担体は任意に、揮発性シリコーンなどの揮発性化合物である。シリコーンは例示的には、環状シリコーンまたは非環状シリコーンである。環状シリコーンの例は、環状ポリジオルガノシロキサン、シクロテトラジメチコン、およびシクロペンタジメチコンを例示的に含む。直鎖オルガノポリシロキサンは例示的には、アルキル−、アルコシキ−またはフェニルジメチコン、およびアルキル−、アルコシキ−またはフェニルトリメチコンである。任意に、担体は脂肪族揮発性シリコーンである。脂肪族揮発性シリコーンは、任意に2〜6個のシリコン原子を有する。任意に、脂肪族揮発性シリコーンは、2〜6個のシリコン原子を有するポリオルガノシロキサンなどの直鎖ポリオルガノシロキサンであり、任意にトリシロキサンである。任意に、担体はエチルトリシロキサンである。本発明の組成物は任意に2つ以上の担体を含む、ということが理解される。
【0028】
揮発性シリコーンは任意に、塗布されると蒸発し、ひいては皮膚上に上品で軽い「感触」を有する軽量の担体である。揮発性シリコーンは通常、レチノイドなどの低極性(すなわち通常C7〜C8よりも大きい)有機化合物を溶解する能力の点で限定されている。たとえば、比較的低い治療レベルのレチノール(0.1〜0.2%w/v)がシクロメチコンのみに溶解されている場合、シリコーン流体による不完全な可溶化によって、曇った溶液が結果的に生じる。
【0029】
活性薬剤および揮発性シリコーンとともに機能し得るビヒクルのほぼ無限の可能性の中でも、有機ポリハロゲンビヒクルが適切な治療レベルでレチノイドと結合して、炭化水素溶媒のレベルを、35〜60%w/wの炭化水素溶媒を必要とした米国特許第4,826,828号とは対照的に、5パーセント未満に減少させ得る、ということが思いがけなく発見された。有機ポリハロゲンビヒクルは任意に、その内容がここに引用により援用される米国特許第6,251,375号に開示されたものである。特定の場合、ビヒクルは、1つ以上のフッ素原子などのハロゲンと結合する。いくつかの具体的な場合、ビヒクルは、パーフルオロエーテルである。いくつかの特定の場合、ビヒクルは、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M・スペシャルティ・マテリアルズ(3M Specialty Materials)から入手可能なメトキソナフルオロブタンまたはエトキソナフロオロブタンである。ビヒクルは任意に、78℃未満の沸点を有する。任意に、ビヒクルは65℃未満の沸点を有する。ビヒクルは、任意に約5〜40%w/wの最終濃度で存在する。任意に、ビヒクルは15〜25%w/wで存在する。任意に、ビヒクルは20%w/wで存在する。本発明の組成物には2つ以上のビヒクルが任意に存在する、ということが理解される。本発明の組成物には、任意に2、3、4、5、6、またはそれを上回る数のビヒクルが存在する。
【0030】
本発明の組成物は任意に、さまざまなレベルの有機溶媒を用いて配合される。有機溶媒は任意に、周囲温度および周囲圧力で揮発性である。任意に、35%未満の有機溶媒が含まれる。任意に、30%未満の有機溶媒が含まれる。任意に、揮発性有機溶媒のレベルは15%w/w未満である。任意に、有機溶媒は5%w/w以下で存在する。任意に、有機溶媒は存在しない。有機溶媒は任意に、アルコール、例示的にはエタノールである。任意に、アルコールは、エトキシジグリコール、エタノール、またはイソプロピルアルコールである。任意に、有機溶媒は、10%w/w以下で存在するエトキシジグリコールである。任意に、エトキシジグリコールは3%w/wで存在する。はるかにより高い濃度のエタノールなどの揮発性有機溶媒を必要とする先行技術とは対照的に、有機溶媒のレベルは任意に、皮膚に対して目立った乾燥効果または他の毒性効果を誘発しない。本発明の組成物には2つ以上の有機溶媒が任意に存在する、ということが理解される。本発明の組成物にはエタノールが全くない、ということがさらに理解される。
【0031】
本発明の特に予期しなかった思いがけない発見は、15%w/w未満の有機溶媒が5〜40%w/wのビヒクルと組合されると、担体における活性化合物の安定した溶液が調製可能である、ということである。5〜40%w/wのビヒクルが、5%未満の有機溶媒とともに、安定した可溶性溶液を促進できる、ということは特に驚くべきことである。
【0032】
本発明の組成物は任意に、抗酸化BHTなどの安定剤;例示的にはラウレス−4である界面活性薬剤;例示的にはビタミンC、ビタミンE、および緑茶抽出物(すなわち、カメリアシネンシス)またはニューヨーク州ストーニーブルック(Stony Brook)のコラボレイティブラブズ(Collaborative Labs)からのSILOX−GTである抗酸化剤;ならびに、例示的には、ニュージャージー州テターボロ(Teterboro)のシムライズ(Symrise)から入手可能な、ブランド名SYMREPAIRで販売されている皮膚軟化剤の混合物または単成分である皮膚軟化剤を例示的に含む、他の添加剤または医薬担体を含む。当業者であれば、所望の流動特性、吸収、蒸発、活性薬剤の送達、プロドラッグの変換、または他の所望の特性を提供するなどのために、本発明で使用するのに好適な添加剤を容易に理解する。
【0033】
本発明の組成物はまた、任意に、レチノールまたは本発明の他の活性薬剤と任意に混合できる他の局所的に許容可能な化合物またはビヒクルを用いることにより、塗布用に適切な活性薬剤レベルに希釈される。本発明の組成物において、または好適なビヒクルを用いて希釈された場合のこれらの組成物において、他の化粧品添加剤が任意に採用される。
【0034】
ここに記載されるように配合された組成物は任意に、0.005〜1.0重量パーセント、任意に0.01〜0.50重量パーセントのレチノールの塗布をもたらす濃度で、皮膚に局所的に塗布される。活性薬剤は任意に、細かい線、皺、乾燥したまたは弾力のない皮膚、もしくは大きな毛穴が観察される領域に塗布される。組成物の塗布に関連する感触の良さを高めるために、また組成物によって達成される皺の消失および他の利点を高めるために、本発明の組成物とともに、または本発明の組成物の塗布後、保湿剤が任意に塗布される。本発明の組成物の改良された一特性は、追加の保湿剤の使用が必要ないということである。
【0035】
任意に、レチノールを含有する本発明の組成物では保湿効果が達成され、それにより、別個の保湿剤の必要性がない。したがって、本発明の任意の組成物は、シリコーン担体と相溶性の保湿成分を、最終配合物の最高35重量パーセントのレベルまで含むよう配合される。本発明の好ましい組成物での使用に好適な好ましい保湿成分は、例示的には、ペトロラタム、パルミチン酸エチルヘキシル、コレステロール脂肪酸セラミド、およびスクワレンである。本発明の組成物が、以前より乾燥している皮膚に塗布される場合、または、寒い気候や冬季など、乾燥がよく起こる条件下で塗布される場合、1つ以上の保湿成分の添加は有益である。レチノールまたは5−フルオロウラシルが塗布される場合など、活性薬剤自体が乾燥効果を有する場合、任意に保湿成分が塗布される。
【0036】
レチノールを含有する組成物を毎日塗布することにより、肌のきめ、色、および調子が改良するであろう。皺および細かい線は、最小限の刺激効果で減少するであろう。
【0037】
本発明の組成物は任意に、被験者の皮膚に塗布される。被験者は任意に、患者である。被験者は任意に、ヒト、ヒト以外の霊長類、馬、山羊、牛、羊、豚、犬、猫、および齧歯動物といった哺乳類である。
【0038】
本発明の組成物は任意に、ローション、クリーム、ゲル、バー、軟膏として、またはパッド形状で提供される。任意に、組成物は使い捨て容器に入って提供され、その中身は、被験者の角質層に直接塗布され、またはアプリケータパッドに塗布されてその後被験者に送達される。
【0039】
本発明の組成物を塗布すると、任意に冷却効果が観察される。ここで使用するような冷却効果とは、塗布すると皮膚の温度を任意に約1〜約2℃下げることを意味する。冷却効果は、担体またはビヒクルの蒸発から生じる効果を含む。
【0040】
本発明の組成物は任意に、1日に1〜3回投与される。任意に、本発明の組成物は1日に1回送達される。任意に、本発明の組成物は、毎週、隔週、毎月、またはそれらを再分割した周期で投与される。本発明の組成物は、活性薬剤の効能にとって好適な時間量の間投与される、ということが理解される。任意に、本発明の組成物は、1〜6週間投与される。任意に、本発明の組成物は無期限に投与される。
【0041】
任意に被験者の皮膚に心地よく投与するための、本発明の組成物を配合するプロセスも提供される。本発明のプロセスは、任意に1つ以上の活性薬剤を有機溶媒に、好ましくは光が少ない、またはない条件で穏やかに混合して可溶化することによって、第1の溶液を作るステップを例示的に含む。
【0042】
第2の溶液は、皮膚軟化剤などの添加剤およびビタミンを混合することによって作られる。第2の溶液は、第1の溶液に添加され、それと混合される。混合は好ましくは、暗闇の中で、穏やかな混合条件下で行なわれる。
【0043】
担体およびビヒクルの第3の溶液が作られ、第3の溶液は、組合された第1および第2の溶液に添加されて、組成物が形成される。混合は任意に、少量の光または暗闇の中での、振動のない(non-vortex)穏やかな混合である。混合は好ましくは、120分間である。組成物は好ましくは、窒素ガスなどの不活性ガスの下で貯蔵される。
【0044】
本発明において感光成分が存在する場合、光が少ない、および光がない条件は重要である、ということが理解される。感光成分がない場合、本発明のプロセスは任意に、周囲照明条件または他の照明条件で行なわれる。
【0045】
本発明のプロセスは任意に、周囲温度および周囲圧力条件で行なわれる。任意に、本発明のプロセスは、1つ以上の成分または溶液を加熱することによって行なわれる。
【0046】
本発明のさまざまな局面を、以下の非限定的な実施例によって例示する。これらの実施例は、例示的な目的のためのものであり、本発明の実践に対する限定ではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更および修正がなされ得る、ということが理解されるであろう。実施例は例示のためのものであり、本発明の実践に対する限定ではない。当業者であれば、ここに記載された試薬および成分を合成する、または商業的に入手する方法を容易に知っている。
【実施例1】
【0047】
3.0パーセントのエトキシジグリコールと、0.5パーセントのラウレス−4と、0.10パーセントのヒドロキシピナコロンレチノアートと、0.05%のBHTと、2.0パーセントのSYMREPAIRと、2.0パーセントのアスコルビン酸テトラヘキシルデシルと、0.50パーセントのトコフェロールと、20パーセントのメトキソナフルオロブタンと、1.0パーセントのSILOX GTと、残りのエチルトリシロキサンとを含有する、処方A組成物を混合する。
【0048】
エトキシジグリコール(カナダ、オンタリオ州トロント(Toronto)のガットフォセ(Gattefosse)から購入されたトランスクトールCG)と、ラウレス−4(ニュージャージー州エジソン(Edison)のクローダ(Croda))と、ヒドロキシピナコロンレチノアート(MDI−101、コンサート(Concert)LLC)と、BHTとを含有する溶液1を、光が少ない条件を用いてプロペラミキサ内で穏やかに混合して作製することによって、処方Aを調製する。溶液2を別個に調製する。溶液2は、ヘキシルデカノールと、ビサボロールと、パルミチン酸セチルヒドロキシプロリンと、ステアリン酸と、アブラナステロールとを含むSYMREPAIR(ニュージャージー州テターボロのシムライズ社)を含む。透明な溶液が形成されるまで、プロペラミキサ内で、SYMREPAIRを、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル(BV−OSC、ニュージャージー州イングルウッドクリフス(Englewood Cliffs)のバーネット(Barnet))およびトコフェロールUSPと混合する。溶液1と溶液2とを、溶液を光から保護する振動のない連続プロペラ混合で、低速添加により組合せる。周囲温度での穏やかなプロペラ混合により、溶液3を調製する。溶液3は、エチルトリシロキサン(シルソフト(Silsoft)ETS、ニューヨーク州アルバニー(Albany)のモメンティブ(Momentiv))と、CF−61(3M・スペシャルティ・マテリアルズ)と、SILOX GT(BASFビューティーケア(BASF Beauty Care)からのカメリアシネンシス葉抽出物とシクロペンタシロキサンとの混合物)とを含む。組合された溶液1および2を、光から保護された振動のない連続プロペラ混合で、溶液3にゆっくりと添加する。混合を120分間継続する。
【0049】
処方Aを、貯蔵のために、窒素ヘッドスペースを有する不透明な保持容器に移す。次に、60mLの処方Aを、精製された窒素ガスヘッドスペースを有する2オンスの琥珀ガラスボトルに移し、使用されるまで光から保護して貯蔵する。
【0050】
46.3%のシクロメチコン−テトラマーと、35%の無水アルコールSD40Bと、5%のパルミチン酸エチルヘキシルと、5%のオクチルジメチルPABAと、2%のベンゾフェノン−3と、2%の脱塩水と、2%のジカプリン酸ネオペンチルグリコールと、1.5%のエチルセルロースK5000と、0.22%のブチル化ヒドロキシトルエンと、1%のレチノイド混合物とを含有する比較溶液を作る。本質的に、その内容がここに引用により援用される米国特許第4,826,828号に記載されるように、処方Bを調製する。
【実施例2】
【0051】
処方Aおよび比較溶液を以下のように使用することによって、分割画面試験を行なう。
20〜59歳の12名の女性が、顔の一方の側に処方Aを、もう一方の側に比較溶液を、1日1回、8週間塗布する。顔の各側の皮膚を薄く削ったものを、試験開始前と、8週間の試験期間後に採取する。試験後の皮膚を削ったものは、処方Aグループでは12名の女性全員において、比較溶液グループでは12名中9名の女性において、試験前のものよりも状態がより良好である。すべての女性の皮膚は、試験前よりも試験後、厚くなり、かるより整っている。処方Aグループのすべての女性は、試験を受けた皮膚の水分の改善を報告しているが、比較溶液グループは、試験を受けた皮膚領域の乾燥および亀裂という不満を訴えている。
【実施例3】
【0052】
電流が角質層を通って流れる能力は、角質層の水分含有量の間接測定を提供する。IBSインピーダンス/コンダクタンスメータを用いて、実施例2の研究に参加したパネリストらを、保湿について評価する。製品の最後の塗布と皮膚コンダクタンス測定との間には、少なくとも12時間が経過している。処方Aで処置した側は比較溶液側よりも湿っている(すべての測定地点で、コンダクタンス測定値がより高い)ことを、データは実証している。顔の比較溶液側は、同様のレベルの相対水分含有量を示していない。このため、角質層の導電性の客観的測定および実証は、顔の皮膚の水分含有量における著しい増大を示している。
【実施例4】
【0053】
比較溶液に対する実施例1の処方Aの組成物の、皮膚の乾燥を減少させる能力の試験を、補足保湿剤有りまたは無しで行なう。この研究に参加するために、手を石鹸で繰返し洗うと皮膚が乾燥する12名のパネリストらを選択する。まず、パネリストらは、両手を固形石鹸で洗うことによって乾燥の状態を引起す。片方の手に試験配合物を毎日塗布し、一方、もう片方の手は、対照側としての役割を果たすよう、処置されないままにする。どちらの手が処置されているか知らない、訓練された2人の評価者によって、各々の手をランダムに格付けする。評価者らは、格付けしやすくするために、立体顕微鏡を使用する。この研究の結果は、保湿されていない比較溶液側が、処置された手に比べ、さらなる乾燥を示すことを実証している。このレベルの乾燥は、比較溶液を塗布するたびに保湿剤を塗布することによって改良される。これに対し、処方Aで処置した手は、水分含有量の著しい改良を示している。処方Aを塗布するたびに保湿剤を追加しても、処置された皮膚の水分含有量をかなり改良することはない。処方Aの利点は最後の処置の後24時間持続し、処方Aの組成物が長続きする効果的な保湿を提供することを示している。
【0054】
本発明のさまざまな変更は、ここに示され、記載されたものに加え、上述の説明の技術分野における当業者には明らかであろう。そのような変更はまた、添付された請求の範囲内に該当するよう意図されている。
【0055】
明細書に述べられた特許および公報は、本発明が属する技術分野における当業者のレベルを示している。これらの特許および公報は、各個々の出願または公報がここに引用により具体的にかつ個々に援用されたかのように、ここに同程度、引用により援用される。
【0056】
前述の説明は本発明の特定の実施形態を例示しているが、その実践に対する限定であるよう意図されてはいない。請求項は、それらのすべての均等物を含め、本発明の範囲を定義するよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤と、
シリコーン担体と、
有機ポリハロゲンビヒクルとを含む、活性薬剤局所送達組成物。
【請求項2】
前記薬剤は、ビタミンAまたはその誘導体、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、抗菌剤、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、非ステロイド性抗炎症薬、UVフィルタ、脂質、または免疫調整剤からなる群から選択される1つ以上の部材を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬剤はビタミンAまたはその誘導体であり、0.001〜2重量パーセントで存在している、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビタミンA誘導体は、レチナール、レチノイン酸、レチニルエステル、レチノール、トレチノイン、イソトレチノイン、アダパレン、タザロテン、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシ酸は、サリチル酸、アセチルサリチル酸、またはそれらの組合せである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記シリコーン担体は、直鎖脂肪族ポリオルガノシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記シリコーン担体は、エチルトリシロキサンである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビヒクルは、パーフルオロエーテルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ビヒクルは、メトキソナフルオロブタンまたはエトキソナフロオロブタンである、請求項1または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ビヒクルは、約5〜40重量パーセントで存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ビヒクルは、約15〜25重量パーセントで存在している、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
活性薬剤局所送達組成物であって、
レチノールを含み、前記レチノールは0.005〜1重量パーセントで存在しており、前記組成物はさらに、
揮発性シリコーン担体と、
メトキソナフルオロブタンビヒクルとを含み、前記ビヒクルは約5〜40重量パーセントで存在している、組成物。
【請求項13】
前記揮発性シリコーン担体は、直鎖脂肪族ポリオルガノシロキサンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記揮発性シリコーン担体は、エチルトリシロキサンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1、2、または12に記載の組成物を被験者の皮膚に投与するステップを含む、被験者における皮膚症状を処置するプロセス。
【請求項16】
前記被験者は、ヒト以外の動物である、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
活性薬剤局所送達組成物であって、
活性薬剤と、
直鎖オルガノポリシロキサン担体と、
メトキソナフルオロブタンビヒクルとを含み、前記ビヒクルは約5〜40重量パーセントで存在しており、前記組成物はさらに、
25重量%未満の有機溶媒を含む、組成物。
【請求項18】
前記有機溶媒は、エトキシジグリコールである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記有機溶媒は、5重量パーセント未満で存在している、請求項17に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−513660(P2013−513660A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544485(P2012−544485)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025491
【国際公開番号】WO2011/081672
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512156899)
【氏名又は名称原語表記】KULESZA, JOHN, E.
【Fターム(参考)】