説明

低水分率のアラミド繊維基材及びその製造方法

【課題】リフロー半田付けの際の高温による銅箔パターンの剥がれ及び膨れを効果的に防止できる低水分率のプリント配線板用繊維基材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛の加熱加圧成形により形成されてなるプリント配線板用繊維基材であって、平衡水分率が2.5質量%以下であることを特徴とする繊維基材。該基材は、平衡水分率3.5〜7.0%のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛を、200℃〜500℃の温度下、100〜400kg/cmの圧力で加熱加圧成形することにより、簡便に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛より形成されてなる、低水分率のプリント配線板用繊維基材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化、低誘電特性に代表される高性能化の要求は一層高まり、電子機器に必須のプリント配線板においても同様である。一方、従来から使用されている一般的なプリント配線板であるガラス繊維基材にエポキシ樹脂を含浸させて乾燥してなるプリント配線板は、前記した小型軽量化に関しては、ガラス繊維が高比重であることと、レーザー等による穴あけが困難であることから、また、高性能化に関しては、ガラス繊維エポキシ基板の誘電率等が高いことから、要求を満たすものではない。最近では、小型軽量化の要求を満たすプリント配線板の代表的なものとして、アラミド(全芳香族ポリアミド)繊維を用いた不織布を基材とするプリント配線板がある。該プリント配線板は、ガラス繊維基材の代わりにアラミド繊維基材を用いることにより軽量化を達成し、さらには、ガラス繊維基材を用いたプリント配線板では困難であったレーザー等による穴あけ加工により多層配線基板の製造を可能にしている。
【0003】
プリント配線板に電子部品を実装して、その部品と回路の配線パターンとを電気的かつ機械的に接合するために、スクリーン印刷等でクリーム半田が塗布された実装面に電子部品が載置された状態で、遠赤外線や熱風循環方式等のリフロー炉内に配線板を通過させることにより、配線板上の半田を加熱して溶融させる方法が知られている。この方法では、リフロー半田付け装置でプリント配線板に電子部品を半田付けする際、プリント配線板は非常に高温になる。しかしながら、近年の環境問題に対応した鉛フリー半田を用いて接合する場合、鉛フリー半田の溶融温度は、従来の鉛−錫系よりも高いため、半田付けもより高温で実施され、リフロー半田付けは従来220〜240℃で行われていたが、さらに高温(260℃)で行われる場合もある。
【0004】
そのため、プリント配線板を構成する繊維基材をリフロー炉によって加熱する際、繊維基材に含まれる水分が熱せられて、高温のガスとなって繊維基材から放出される。このとき、放出されたガスにより繊維基材上の銅箔パターンが剥がれたり、ガスが基材と銅箔パターンとの境界面に溜まり銅箔パターンが部分的に盛り上がるように膨らむことがある。あるいは、発生したガスが繊維基材から放出されず、当該ガスにより繊維基材に膨れが生じ、繊維基材の膨れが生じた箇所上に形成された銅箔パターンに膨れが生じることもある。その結果、プリント配線板の異常や破壊の原因となる。
【0005】
従来、アラミド繊維を用いた耐熱性繊維紙は、プリント配線板用基材として用いられてきている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかし、アラミド繊維の平衡水分率が高いと高温高湿状態の電界中において絶縁抵抗が低下する問題点を有している。かかる問題点を解決するために、特許文献1では、アラミド繊維として平衡水分率が約3.0質量%以下のものを用い、このアラミド繊維を抄紙して得た紙にバインダー樹脂組成物を付与して乾燥硬化したものを、表面温度200℃の金属カレンダーロールにより熱圧加工を施し、次いで熱風硬化することにより、平衡水分率約2%の基板用アラミド繊維紙を製造している。ところが、アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を用いた場合は、コポリパラフェニレン−3,4'−ジフェニルエーテルテレフタルアミド型のパラ系アラミド繊維と同様の処理を行っても、平衡水分率が4.1%と高いために絶縁抵抗の低下が大きくなることが記載されている。
【0006】
特許文献2では、コポリパラフェニレン−3,4'−ジフェニルエーテルテレフタルアミド型のパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維の混抄不織布の水分含有量を2.7重量%以下に調整しておき、これを280〜350℃、線圧150〜250kg/cmで加熱加圧して、メタ系アラミド繊維を熱融着してパラ系アラミド繊維に絡み合わせることにより、半田耐熱性の良好な(膨れ発生の無い)銅張り積層板を得ている。しかし、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維には言及していない。
【0007】
特許文献3〜5では、パラ系アラミド短繊維とフィブリッド又は樹脂バインダーを主成分とする繊維紙を乾燥して得た乾燥紙を、所定の嵩密度になるように220〜400℃、線圧150〜250kg/cmで加熱加圧し、フィブリッド又は樹脂バインダーを軟化、溶融させることにより、平衡水分率が約2.2%の耐熱性繊維紙を製造している。特許文献4には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を400℃の高温雰囲気中で熱処理して得た平衡水分率1.7%の短繊維を用いると、平衡水分率2.12%の繊維紙が得られることも記載されている。しかしながら、これらの耐熱性繊維紙は、予め高温熱処理を行って平衡水分率を調整したパラ系アラミド短繊維を湿式抄紙し、その後、乾燥して得た紙を加熱加圧して樹脂バインダーを硬化せしめるため、製造工程が煩雑である。
【0008】
一方、特許文献6には、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維に含まれる水分量を約10〜100質量%程度に保ったまま布帛化したものを、線圧が約1〜100kg/cm、約200〜400℃の金属製熱ロールで加熱加圧することにより、繊維の形状を扁平化させることにより、厚さが顕著に薄い基板用布帛が得られることが記載されている。しかし、このような条件下で製造された布帛において、その布帛を形成するポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の平衡水分率に関する考察はなく、繊維中に含まれる水分に起因する前記の問題点を解決するものではない。
【特許文献1】特開平2−47392号公報
【特許文献2】特開平10−204789号公報
【特許文献3】特開平11−61679号公報
【特許文献4】特開2000−290891号公報
【特許文献5】WO2003/093576号公報
【特許文献6】特開2003−49388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑みてなされたものであり、リフロー半田付けの際の高温による銅箔パターンの剥がれ及び膨れを効果的に防止できる低水分率のプリント配線板用繊維基材、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、かかる課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛の加熱加圧成形により形成されてなるプリント配線板用繊維基材であって、平衡水分率が2.5質量%以下であることを特徴とする繊維基材。
(2)繊維基材の平衡水分率が2.0質量%以下である(1)に記載の繊維基材。
(3)加熱加圧成形前のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の平衡水分率が3.5〜7.0%である(1)又は(2)に記載の繊維基材。
(4)加熱加圧成形前の布帛の厚み(A)に対する、加熱加圧成形後の繊維基材の厚み(B)の比(B/A)が、0.30〜0.95の範囲である(1)〜(3)いずれか記載の繊維基材。
(5)繊維基材の厚みが75μm以下である(1)〜(4)いずれか記載の繊維基材。
(6)布帛が織布である(1)〜(5)いずれかに記載の繊維基材。
(7)織布が開繊処理を施した織布である(6)に記載の繊維基材。
(8)平衡水分率3.5〜7.0%のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛を、200℃〜500℃の温度下、100〜400kg/cmの圧力で加熱加圧成形することを特徴とする低水分率のプリント配線板用繊維基材の製造方法。
(9)250kg/cmを超える圧力で加熱加圧成形する(8)記載のプリント配線板用繊維基材の製造方法。
(10)布帛が開繊処理を施した織布である(8)又は(9)に記載のプリント配線板用繊維基材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る繊維基材は、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維布帛を加熱加圧成形して形成されたものであるため、軽量、薄型で、且つ、含有水分が低いため、プリント配線板用繊維基材に用いた際、リフロー半田付けの際の高温による銅箔パターンの剥がれ及び膨れを効果的に防止できる。また、繊維基材自体が薄いため、従来と同じ厚さの多層積層板を形成する場合には積層枚数を増やすことが可能となるため、高密度多層配線基板に好適なプリント配線板用基材となり得る。繊維基材を形成するポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の耐熱性が高く、繊維基材の線膨張率が小さいため、部品実装時の加熱下における基板の寸法安定性も優れている。また、製造方法が簡便であるため、低コストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の繊維基材は、プリント配線板用基材であって、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下、PPTAと略称する)繊維を主成分として含有する布帛を、加熱加圧成形して形成されてなる。平衡水分率は2.5質量%以下、好ましくは2.0質量%以下である。ここで、「平衡水分率」は、実施例に後述するように、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法に準拠して、恒温恒湿下での平衡状態での繊維の水分率を測定した値である(単位:質量%)。
【0013】
アラミド繊維には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(デュポン社製、商品名ノーメックス;帝人テクノプロダクツ社製、商品名コーネックス)などのメタ系アラミド繊維と、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)、コポリパラフェニレン−3,4'−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ株式会社製、商品名テクノーラ)などのパラ系アラミド繊維がある。
【0014】
アラミド繊維の耐熱性及び機械的性質に鑑みて、近年、湿式抄紙したアラミド繊維紙をプリント配線板用基材として用いることが多い。これらのアラミド繊維の中でも、PPTA繊維は、他のアラミド繊維に比べて耐熱性及び機械的性質に優れるため、プリント配線板用基材として好適である。しかしながら、PTTA繊維は、コポリパラフェニレン−3,4'−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維と比べて、吸水(湿)性が非常に高く、平衡水分率が高い(通常、約3.5〜7.0%程度)ため、繊維紙の平衡水分率を、リフロー半田付けの際の高温による銅箔パターンの剥がれや膨れを効果的に防止できる平衡水分率(2.5%以下、好ましくは2.0%以下)まで低減させることは、極めて困難であった事情がある。
【0015】
本発明で用いるPPTA繊維を主成分とする布帛は、常法で製造されたPPTA繊維を用いて形成される。PPTA繊維の製造方法としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド硫酸溶液を紡糸した後、中和、乾燥し、巻き取った繊維(原料繊維)を100〜500℃で熱処理をしたもの等が挙げられる。本発明では、常法で製造されたPPTA繊維を常温下で保存しておいたものを使用することができる。
【0016】
本発明で用いるPPTA繊維の単糸繊度は、平衡水分率の調整が容易である点から、約0.1〜10dtex程度であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る布帛としては、特に限定されないが、織布が最も好ましい。織布の製造方法は、公知の方法に従えばよい。織成方法(織り方)としては、例えば、平織、綾織、からみ織、朱子織、三軸織、横縞織、斜文織などが挙げられ、特に限定されるものではない。織布を形成するPPTA繊維は、フィラメント糸、スパン糸、紡績糸のいずれでもよい。
【0018】
従来のアラミド繊維紙(湿式不織布)の場合は、パラ系アラミド短繊維と熱可塑性のメタ系アラミド繊維もしくはフィブリッドとを混抄し、混抄紙をメタ系アラミド繊維の軟化または溶融温度以上で加熱加圧成形することにより製造する。従って、バインダー樹脂として混抄した耐熱性の低いメタ系アラミド繊維の影響で、繊維基材と基板樹脂(エポキシ樹脂)との層間ピール強度が低下する可能性がある。これに対し、織布は、バインダー樹脂が不要となることの他に、繊維自体の強度を維持しつつ、薄型化することが可能である利点を有している。
【0019】
織布は、該織布を構成するPPTA繊維束をばらけさせる処理(開繊処理)を施す必要はかならずしもないが、開繊処理を施しておくことにより、タテ糸とヨコ糸とによって囲まれた空隙が減少するため、加熱加圧成形後に形成される繊維基材の厚みが薄くなる。その結果、高密度多層配線基板に好適なプリント配線板用基材を提供することが可能になる。また、繊維に満遍なく熱履歴が生じるため、安定して平衡水分率が低い繊維基材を製造することができる。開繊処理の方法は、公知の方法に従えばよい。例えば、水流による開繊、液体を媒体とした振動による開繊、回転ドラムに織物を押圧せしめ液体吹き出し口から吹き出された液体の液圧と回転ドラムへの押圧による開繊、ロールによる加圧での加工による開繊又は空気流或いは吸引気流を用いた開繊等が挙げられる。
【0020】
本発明に係る布帛は、不織布であってもよい。不織布とは、繊維(短繊維あるいは長繊維)集合体を機械的、化学的あるいは加熱等の手段を用いて接着または交絡させてシート状またはウエブ構造にしたものをいう。不織布として、表面が平滑な紙状のものでもよいし、表面が平滑でない布状のものでもよい。不織布は製造工程が短く、比較的低コストで生産できるという利点がある。不織布の製造工程には、乾式と湿式とがあるが、本発明においては、乾式が好ましい。湿式法による場合は、PPTA繊維の平衡水分率を2.5%以下に低減させるには、高温雰囲気下での予熱処理等が必要になるためコストアップになり、また予め平衡水分率を低減させておいても、湿式処理することによって、一旦低下した平衡水分率が上昇するおそれがあるからである。
【0021】
不織布を製造する乾式法による好ましい方法としては、カード法とエアレイ法がある。これらの方法はいずれも公知の方法に従えばよい。これらの方法で作製された不織布は、柔軟性に富み、ドレープ性にも優れている。これらの不織布を製造する際には、耐熱性のバインダー樹脂を用いてPPTA繊維を接着するのがよい。
【0022】
本発明に係る布帛の厚みは、加熱加圧成形後に形成される繊維基材の厚さを考慮して決定される。該繊維基材の厚さは、多層積層基板に用いることを考慮すると、75μm以下であることが好ましく、より好ましくは60μm以下、最も好ましくは55μm以下であり、基板の反りや捩れを生じさせないためには、10μm以上であることが好ましい。目標とする厚さの繊維基材は、布帛を構成するPPTA繊維の糸条繊度を変更したり、或いは、成形時の圧力を変更したりすることで調整できる。例えば、糸条繊度が同じPPTA繊維からなる布帛を成形する場合には、成形時の圧力を高くすることにより、繊維基材を薄く成形することができる。また、糸条繊度が小さいPPTA繊維を用いれば薄手の織布が得られるので、厚手の織布を同じ圧力で成形した場合よりも、繊維基材を薄く成形することができる。
【0023】
また、加熱加圧成形前の布帛の厚みは、厚すぎると布帛内部の繊維の平衡水分率を低減させることが困難となる。そのため、加熱加圧成形前の布帛の厚み(A)に対する加熱加圧成形後の布帛(繊維基材)の厚み(B)の比(B/A)が、0.30〜0.95の範囲、より好ましくは0.35〜0.90の範囲、最も好ましくは0.35〜0.70の範囲となるよう、布帛の厚みを選択することが好ましい。
【0024】
加熱加圧成形は、公知の方法で実施することができる。例えば、布帛を、200℃〜500℃、好ましくは300〜500℃、より好ましくは350〜500℃の温度下、100kg/cm以上の圧力で、金属製ロールまたは加熱プレス機で加熱加圧することによって、平衡水分率が2.5%以下に調整された繊維基材を得ることができる。温度200℃未満及び圧力100kg/cm未満では、平衡水分率を低下させることが困難となり、一方、温度が500℃を超えるとPPTA繊維が熱分解するおそれがある。繊維基材を薄型化するためには、上記の温度下、圧力(線圧)250kg/cmを超える圧力で加熱加圧成形することがより好ましい。装置及び生産性を考慮すると、400kg/cm以下の圧力(線圧)で加熱加圧成形することが好ましい。加熱加圧成形を金属製カレンダーロールで行う場合等は、加熱温度、ロール間の隙間(クリアランス)、ロール回転速度を適宜変更することで、所望の厚さと平衡水分率を有する布帛(繊維基材)を得ることができる。
【0025】
本発明に係るPPTA繊維基材の線膨張率は小さく、約−5〜5ppm/℃の範囲である。従って、この繊維基材を用いたプリント配線板に部品を実装する際に、以下のような問題点を解決することができる。すなわち、例えば、基板の熱膨張による寸法変化により、部品と基板との寸法変化が大きくなり、ボンディング精度が悪くなったり、あるいは、ボンディング後の温度変化による部品と基板の熱ストレスが大きくなることによって、クラックが発生しやすくなる等の問題を生じさせる可能性が極めて低い。
【0026】
本発明により得られるPPTA繊維基材を用いてプリント配線板を製造する場合は、従来公知の一般的な方法に従えばよい。例えば、難燃性エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む組成物をPPTA繊維基材に含浸させ、約150℃程度で約5分間程度乾熱処理を施し、樹脂含浸プリプレグを作製する。さらに、得られたプリプレグを適宜所望の枚数を積層し、約170℃程度、圧力約40kg/cm程度で、約60分間、ホットプレスによる加圧成形を行って、プリント配線板を得ることができる。また、この加圧成形時に銅箔を同時に積層し、銅張積層板を作製することも可能である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
(1)平衡水分率
PPTA繊維及び繊維基材の平衡水分率は、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.2に準拠し、試料を105℃4時間で絶乾した後、温度22℃65%RHにおいて140時間調整し、該試料中に含まれる水分率を求めて、該試料の絶乾状態での重量に対する割合を算出し、これを百分率(%)にて表す。
【0029】
(2)厚み測定法
布帛を100×100mm角に切り、ダイアルゲージ(三豊製作所製No.2109-10)に直径10mmの測定子(No.7002)を取り付けたものにて最低10点の厚みを測定し、厚みの平均値d(μm)を算出する。
【0030】
(実施例1)
PPTAフィラメント糸(東レ・デュポン株式会社、商品名ケブラー29、糸条繊度1000dtex、単糸繊度1.65dtex)からなる平織織布を用意した。織布の目付は30g/m、厚みは0.055mmであった。
上記織布をそれぞれ、表1に示す温度で10分間、高温真空プレス機KVHC−S(北川精機社製)を使用して加熱プレスし、その後、水分変化を測定し、平衡水分率を求めた。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1より、PPTA平織織布を200℃以上で加熱すれば、織布の平衡水分率が2.5%以下となり、同様に300℃以上で加熱すれば2.0%以下となり、同様に390℃以上で加熱すれば1.5%以下となった。
【0033】
(実施例2)
糸条繊度が異なる2種類のPPTAフィラメント糸(東レ・デュポン株式会社、商品名ケブラー49、単糸繊度1.65dtex)からなる平織織布を用意した。
220dtexのPPTAフィラメント糸を用いた織布(25×25本/25mm)は、目付45.2g/m、厚み0.089mmであった。
110dtexのPPTAフィラメント糸を用いた織布(37×37本/25mm)は、目付34.2g/m、厚み0.069mmであった。
【0034】
上記織布を回転ドラムに押圧して開繊処理を施した。開繊により、220dtexのPPTAフィラメント糸を用いた織布は、厚み0.070mmとなった。110dtexのPPTAフィラメント糸を用いた織布は、厚み0.067mmとなった。
【0035】
次いで、金属ロールを有する一対のロールカレンダーを用いて、開繊処理を施した織布及び開繊処理を施していない織布について、表2に示す温度、線圧及び速度で加熱加圧成形を行った。これらの成形品の引張強度、厚みを測定した結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2より、圧力を高くすることにより成形品の厚みを薄くすることができた。また、織布を開繊処理することにより、成形品の厚みを薄くすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る繊維基材は、プリント配線板のなかでも薄型化が求められる高密度多層配線基板用の繊維基材等へ応用できる。また、本発明の繊維基材は、製造方法が簡便であり、特別な装置を必要としないので、低コストで製造することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛の加熱加圧成形により形成されてなるプリント配線板用繊維基材であって、平衡水分率が2.5質量%以下であることを特徴とする繊維基材。
【請求項2】
繊維基材の平衡水分率が2.0質量%以下である請求項1に記載の繊維基材。
【請求項3】
加熱加圧成形前のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の平衡水分率が3.5〜7.0%である請求項1又は2に記載の繊維基材。
【請求項4】
加熱加圧成形前の布帛の厚み(A)に対する、加熱加圧成形後の繊維基材の厚み(B)の比(B/A)が、0.30〜0.95の範囲である請求項1〜3いずれか記載の繊維基材。
【請求項5】
繊維基材の厚みが75μm以下である請求項1〜4いずれか記載の繊維基材。
【請求項6】
布帛が織布である請求項1〜5いずれかに記載の繊維基材。
【請求項7】
織布が開繊処理を施した織布である請求項6に記載の繊維基材。
【請求項8】
平衡水分率3.5〜7.0%のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を主成分として含有する布帛を、200℃〜500℃の温度下、100〜400kg/cmの圧力で加熱加圧成形することを特徴とする低水分率のプリント配線板用繊維基材の製造方法。
【請求項9】
250kg/cmを超える圧力で加熱加圧成形する請求項8記載のプリント配線板用繊維基材の製造方法。
【請求項10】
布帛が開繊処理を施した織布である請求項8又は9に記載のプリント配線板用繊維基材の製造方法。

【公開番号】特開2010−147291(P2010−147291A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323715(P2008−323715)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】