説明

低水溶性または水不溶性活性物質の水性分散液およびそれから製造される乾燥粉末

本発明は、少なくとも1種の低水溶性または水不溶性活性物質と、保護コロイドとしてコメデンプンとを含有する、水性分散液およびそれから製造される乾燥粉末に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性化合物および保護コロイドとしてのコメデンプンを含む水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
食品・飼料の分野や医薬品用途、化粧品用途に適した多くの活性物質、例えば脂溶性のビタミン類、カロテノイド類ばかりでなく、天然の着色剤であるクルクミンやカルミン、および多数のUVフィルタ類は、それらが水に不溶性であるという事実の結果、および/またはそれらが酸化を受けやすい結果として、特別に安定化された調製物の形態でしか用いることができない。結晶質物質を、特に水性食品を着色するため、あるいは飼料添加物として、あるいは化粧品中の活性物質および活性剤として直接用いることは原則としてできない。特に水性媒体、のみならず親油性媒体におけるバイオアベイラビリティ、着色特性、および分散性についての高い要求は、特別な処方によってのみ満たすことができる。
【0003】
食品を直接着色する場合、満足のいく着色結果は、調製物中の活性物質、例えばカロテノイドが微細に粉砕された形態で存在し且つ保護コロイドによって酸化から保護されている場合にのみ得ることができる。動物飼料で用いられているこの製剤は、活性物質のより高いバイオアベイラビリティ、つまり間接的には例えば卵黄や魚の色素沈着におけるより良い着色効果をもたらす。
【0004】
文献から、一連の様々な製剤方法(これらは全て、活性物質の結晶サイズを小さくし、10μm未満の粒子サイズ範囲にすることを目的としている)は既に知られている。
【0005】
多数の方法、例えば非特許文献1、特許文献1および特許文献2に記載のものは、カロテノイドを粉にする際にコロイドミルを使用しており、この方法によって2〜10μmの粒子サイズが得られている。
【0006】
また乳化/スプレー乾燥を組み合せた方法も存在しており、例えば特許文献3や特許文献4に記載されている。
【0007】
特許文献5の欧州特許明細書によれば、微細に粉砕された粉状のカロテノイド調製物が、例えばβ−カルテンを揮発性の水混和性有機溶媒に50℃〜200℃の温度で、適切であれば高圧下で、10秒未満の時間内で溶解させることにより調製される。β−カロテンは、得られた分子状分散溶液から、0℃〜50℃の温度で保護コロイドの水溶液と瞬間迅速混合することによって沈殿する。これにより、橙色〜黄色のコロイド分散β−カロテンヒドロゾルが得られる。この後、この分散液をスプレー乾燥することにより自由流動性の乾燥粉末が得られ、これは水に溶解して透明な黄色〜橙色の分散液を形成する。
【0008】
微細に粉砕された粉状のカロテノイド調製物を調製するための同様な方法が特許文献6に記載されており、ここでは水に不混和性である溶媒が用いられている。
【0009】
特許文献7は、低分子量保護コロイドと高分子量保護コロイドの混合物を用いて再分散可能なキサントフィル含有乾燥粉末を調製することに関するものである。
【特許文献1】国際公開第91/06292号パンフレット
【特許文献2】国際公開第94/19411号パンフレット
【特許文献3】西独国特許出願公告第1211911号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0410236号明細書
【特許文献5】欧州特許第0065193号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0937412号明細書
【特許文献7】国際公開第98/26008号パンフレット
【非特許文献1】Chimia 21, 329 (1967)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水に溶けにくいかまたは不溶性である疎水性の活性物質および活性剤を、安定な水性分散液または安定で容易に再分散可能な乾燥粉末に変換することである。
【0011】
本発明の目的のため、「安定」とは、製剤が、特に酸化、光の影響、沈殿、およびクリーム状になることに対し、問題となる用途について十分な期間および温度範囲にわたり安定であることを意味する。
【0012】
したがって本発明は、特に化粧品、医薬品、食品、食品サプリメント、および飼料において、保護コロイドとして用いることができる天然のポリマーを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質および保護コロイドとしてのコメデンプンを含む水性分散液によって達成された。
【0014】
本発明の目的のため、用語「水性分散液」とは、水性懸濁液と水性エマルジョンの両方を意味するものと理解される。分散相が、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質をナノ粒子状粒子として含むような水性分散液は、好ましいと言える。さらに、本発明の傑出した点は、上記水性分散液から調製される乾燥粉末またはエマルジョン、好ましくはダブルエマルジョン、特にO/W/O型エマルジョンにある。
【0015】
明細書中において、水に溶けにくい有機活性物質とは、水への溶解度が<5重量%、好ましくは<1重量%、特に好ましくは<0.1重量%、とりわけ特に好ましくは<0.01重量%である化合物を意味すると理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の範囲内にあるといえる、食品分野および飼料分野ならびに医薬品用途および化粧品用途のための活性物質の例は、以下の化合物である。
【0017】
例えば、Kビタミン類、ビタミンA、およびビタミンAアセテート、ビタミンAプロピオネートやビタミンAパルミテートのような誘導体、ビタミンDおよびビタミンD、ビタミンEおよび誘導体などの脂溶性ビタミン類。明細書中において、ビタミンEは、天然または合成のα−、β−、γ−、もしくはδ−トコフェロールを表し、好ましくは天然または合成のα−トコフェロール、およびトコトリエノールを表す。ビタミンE誘導体の例は、トコフェリルアセテートやトコフェリルパルミテートのようなトコフェリル−C−C20−カルボン酸エステルである。
【0018】
例えばリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの多価不飽和脂肪酸。
【0019】
クルクミン、カルミンやクロロフィルのような食品着色剤。
【0020】
例えばβ−カロテン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、クリプトキサンチン、キトラナキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、β−アポ−4−カロテナール、β−アポ−8−カロテナールおよびβ−アポ−8−カロテン酸エチルエステルのようなカロテノイド類(カロテン類およびキサントフィル類)。
【0021】
フィトステロール類、コエンザイムQ10。
【0022】
例えばトリアジン類、アニリド類、ベンゾフェノン類、トリアゾール類、シンナムアミド類、およびスルホン化ベンズイミダゾール類の群から選ばれる化合物などの、水に不溶性であるかまたは溶けにくい有機UVフィルタ。
【0023】
好ましい活性物質は、カロテノイド(特にβ−カロテン)、リコペン、ルテイン、アスタキサンチンとカンタキサンチン、およびビタミンE、ならびに一連のUVフィルタからはトリアジンクラスの物質(特にUvinul T150)である。
【0024】
本発明による水性分散液の特に好ましい実施形態は、冒頭においてナノ粒子状粒子として言及した、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を含む水性分散液の形態をとっている。
【0025】
用いる製剤方法に応じて、水性分散液中のナノ粒子状粒子の平均粒子サイズは、0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.01〜10μmの範囲、特に好ましくは0.01〜2μmの範囲、とりわけ特に好ましくは0.02〜1μmの範囲内にある。
【0026】
本発明による分散液、特に懸濁液における様々な成分の量は、本発明に従って、調製物が、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を0.1〜90重量%、好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは3〜30重量%、とりわけ特に好ましくは5〜25重量%と、コメデンプンを0.1〜99.9重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜60重量%、とりわけ特に好ましくは15〜35重量%含むように選ばれる。重量パーセントは、それぞれの場合において、製剤の乾燥物を基準にしている。
【0027】
調製物は、さらに、活性物質を保護するため抗酸化剤および/または防腐剤などのような低分子量の安定化剤を含むことができる。好適な抗酸化剤または防腐剤の例は、α−トコフェロール、アスコルビン酸、t−ブチル−ヒドロキシトルエン、t−ブチルヒドロキシアニソール、レシチン、エトキシクイン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸や安息香酸ナトリウムである。抗酸化剤または防腐剤は、製剤の乾燥物を基準にして、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、とりわけ特に好ましくは1〜10重量%の量とすることができる。
【0028】
分散液はさらに、分散液から調製される乾燥粉末の機械的安定性を向上させるための可塑剤も含むことができる。好適な可塑剤の例は、スクロース、グルコース、ラクトース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトールやグリセロールなどの糖類および糖アルコール類である。可塑剤としてはラクトースが好ましく用いられる。可塑剤は、製剤の乾燥物を基準にして0.1〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量で存在させることができる。
【0029】
分散液は、さらに、低分子量の表面活性化合物(乳化剤)を、製剤の乾燥物を基準にして0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の濃度で含んでいてもよい。そのような化合物で好適なのは、特に両親媒性の化合物またはそのような化合物の混合物である。原理的には、HLB値が5〜20の表面活性剤はすべて好適である。好適なそのような表面活性物質の例は:長鎖脂肪酸とアスコルビン酸とのエステル、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリドならびにそれらのエトキシル化生成物;モノ脂肪酸グリセリドと酢酸、クエン酸、乳酸またはジアセチル酒石酸とのエステル;例えばトリグリセロールモノステアレートのような多価グリセロール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;およびレシチンである。アスコルビルパルミテートは好ましく用いられる。
【0030】
また、一定の状況下ではさらに、例えばゴマ種油、トウモロコシ油、綿実油、ダイズ油やラッカセイ油などの生理学的に許容される油、および化粧油(例えば流動パラフィン、グリセリルステアレート、イソプロピルミリステート、ジイソプロピルアジペート、セチルステアリル2−エチル−ヘキサノエート、水素化ポリイソブテン、ワセリン、カプリリック/カプリックトリグリセリド、微結晶ワックス、ラノリンやステアリン酸)を、水に溶けにくいかまたは不溶性である活性物質(1種以上)を基準にして0.1〜500重量%、好ましくは10〜300重量%、特に好ましくは20〜100重量%の濃度で用いるのが有利であり得る。
【0031】
本発明はまた、コメデンプンを保護コロイドとして用いることを含む、保護コロイドの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液に水に溶けにくいかまたは不溶性である1種以上の活性物質を分散させることによる水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の水性分散液の調製方法にも関する。
【0032】
本発明による方法の好ましい実施形態では、分散ステップは、コメデンプンの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液中、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の懸濁液を調製する形式をとっている。
【0033】
本方法の特に好ましい実施形態では、分散ステップ特に懸濁ステップは:
)水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を、1種以上の水混和性の有機溶媒、または水と1種以上の水混和性有機溶媒との混合物に溶解させること、または
)水と不混和性である1種以上の有機溶媒に、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を溶解させること、
b)a)またはa)で得られた溶液をコメデンプンの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液と混合して、水に溶けにくいかまたは不溶性である活性物質の疎水性相をナノ分散相として発生させること、および
c)有機溶媒を除去すること、
を含む。
【0034】
ステップa)で用いられる水混和性溶媒は、主に、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アセタール類などの、炭素、水素および酸素のみを含む水混和性で、熱的に安定な、揮発性の溶媒である。便宜に用いられる溶媒は、少なくとも10%まで水混和性であり、沸点が200℃より低く、および/または10個未満の炭素を有しているものである。特に好ましく用いられる物質は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,2−ブタンジオール1−メチルエーテル、1,2−プロパンジオール1−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフランやアセトンである。
【0035】
本発明の文脈においては、用語「水と不混和性である有機溶媒」は、大気圧下で水に10%未満までしか溶けない有機溶媒を意味する。この文脈で考えられる溶媒の例は、特に、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチルや酢酸イソプロピルなどのカルボン酸エステル、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテルである。好ましい水不混和性の有機溶媒は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、およびメチルt−ブチルエーテルからなる群から選ばれる化合物である。
【0036】
分散/懸濁のステップのために特に好ましく用いられる溶媒は、少なくとも1種の水混和性の有機溶媒、または水と少なくとも1種の水混和性有機溶媒との混合物であり、とりわけ特に好ましくはイソプロパノールまたはアセトンである。
【0037】
本発明による上記方法の有利な実施形態は、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の分子状分散溶液を、ステップa)において30℃より高い、好ましくは50℃〜240℃、特に100℃〜200℃、特に好ましくは140℃〜180℃の温度で、適切であれば加圧下で調製し、その後直ちにステップb)において、保護コロイドの水性溶液で処理し、35℃〜120℃の混合温度を確立することを特徴とする。
【0038】
この過程の間、溶媒成分は水相に移動し、そして活性物質(1種以上)の疎水性相がナノ分散相として発生する。
【0039】
上記分散ステップのための方法および装置のより詳細な説明については、この時点で、欧州特許第0065193号明細書を参考文献として挙げておく。
【0040】
本発明はさらに、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質をナノ粒子状粒子として含む乾燥粉末の調製方法に関し、該方法では上述した水性分散液、特に懸濁液から水が除去されて、乾燥される。
【0041】
これに関連して、乾燥粉末への転換は、特に、スプレー乾燥、スプレー冷却、凍結乾燥、または流動床乾燥によって、また適切であればコーティング材料の存在下で行うことができる。好適なコーティング材料は、特に、トウモロコシデンプン、シリカやリン酸三カルシウムなどである。
【0042】
上記方法の好ましい実施形態では、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の得られた懸濁液は粉化され、その後乾燥粉末に転換される。
【0043】
これに関連して、粉化ステップは、公知の方法で、例えばボールミルを用いて行うことができる。用いるミルのタイプにもよるが、混合物は、粒子が、フラウンホーファー回折によって決定される平均粒子サイズD[4.3]が0.1〜100μm、好ましくは0.2〜50μm、特に好ましくは0.2〜20μm、とりわけ特に好ましくは0.2〜5μm、特に0.2〜0.8μmを示すまで粉化する。記号D[4.3]は、容積平均直径を意味する(Malvern Mastersizer S[Malvern Instruments Ltd., UK]の取り扱い説明書を参照されたい)。
【0044】
粉化ステップに関するさらなる詳細およびそれに用いられる装置は、特に、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 2000, Electronic Release, Size Reduction, chapter 3.6.: Wet Grinding、および欧州特許出願公開第0498824号明細書中に見い出すことができる。
【0045】
上記した乾燥粉末のうちのひとつを調製するための本発明による方法の特に好ましい実施形態では、
a) 水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を、30℃より高い温度で水混和性の有機溶媒、または水と水混和性有機溶媒との混合物に溶解させ、
b)得られた溶液を、コメデンプンの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液と混合させ、そして
c)得られた分散液を乾燥粉末に変換する。
【0046】
本発明はまた、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の粉状製品にも関し、該調製物は上記した方法のうちのひとつによって得ることができる。
【0047】
本発明はまた、ダブルディスパージョンの形態にある、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を含む油混和性製品の調製方法にも関し、該方法では冒頭で述べた水性分散液を油中で乳化させる。
【0048】
この方法では、乳化剤を用いて、水相が、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の有機UVフィルタの保護コロイド安定化ナノ粒子を含む、油中水型エマルジョンを形成させる。好適な乳化剤は、HLB値が10未満、特に2〜6のW/O型乳化剤であり、このW/O型乳化剤それ自体は知られているものである(参照:H.P. Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete(医薬品、化粧品および関連の分野のためのアジュバントの辞典), 1996, pages 753 ff)。このクラスの乳化剤の典型は、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、例えばグリセロールモノステアレート、またはモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物、脂肪酸とソルビタンの部分エステル、および/または好ましくはポリグリセロールの脂肪酸エステル(例えばポリグリセロールポリリシノレエートなど)であり、これらは、活性物質(1種以上)を基準にして10〜1000重量%、好ましくは100〜900重量%、特に好ましくは400〜800重量%の濃度で用いられる。
【0049】
分散媒は、合成由来、鉱油由来、植物由来、あるいは動物由来のものであり得る。典型的なものは、特に、ゴマ種油、トウモロコシ油、綿実油、ダイズ油またはラッカセイ油、植物由来の中鎖脂肪酸のエステル、ならびに流動パラフィン、グリセリルステアレート、イソプロピルミリステート、ジイソプロピルアジペート、セチルステアリル2−エチルヘキサノエート、水素化ポリイソブテン、ワセリン、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、微結晶ワックス、ラノリン、およびステアリン酸である。通常、分散媒は、最終的なエマルジョンの全体量を基準にして30〜95、好ましくは50〜80重量%の量にする。
【0050】
乳化は、連続式でも、回分式でも行うことができる。
【0051】
ダブルディスパージョン系の物理的安定性、例えば沈殿安定性などは、油相中における水相の非常に良好な細かい分布によって達成されるもので、例えば温度20〜80℃、好ましくは40〜70℃でのローター/ステーター型ディスパーサーを用いた強力な処理により、あるいは圧力範囲700〜1000バールでの高圧ホモジナイザー(例えばAPV Gaulin装置)または超高圧ホモジナイザー(例えばMicrofluidizer)を用いた強力な処理により達成される。これによって達成することができる水性分散相の平均直径は、500μm未満、好ましくは100μm未満、特に好ましくは10μm未満、特には1μm未満である。
【0052】
本発明はまた、上記した方法によって得ることができる、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の液体状油混和性製品にも関するもので、該製品は、ダブルディスパージョン系として、分散媒としての油中に、水に溶けにくいかまたは不溶性である1種以上の活性物質の保護コロイド安定化粒子が分散形態で存在している粒子直径が500μm未満の水性分散相を含む。
【0053】
本発明はまた、上記した水性分散液の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品製品および化粧品製品への添加物としての使用にも関する。
【0054】
本発明はまた、上記した粉状製品の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品製品および化粧品製品への添加物としての使用にも関する。
【0055】
本発明はまた、上記した液体状油混和性製品の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品製品および化粧品製品への添加物としての使用にも関する。
【実施例】
【0056】
本発明を以下に実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0057】
実施例1:水性アスタキサンチン懸濁液の調製、およびその後の乾燥粉末への変換
加熱可能な容器中で、アスタキサンチン20gおよびアスコルビルパルミテート4gを、温度30℃でイソプロパノール/水(88/12、重量/重量)294gに懸濁させた。混合チャンバー中で、この懸濁液を、イソプロパノール/水(88/12、重量/重量)536gと混合温度170℃、滞留時間0.2秒で混合した。前記した滞留時間の後、得られた分子状分散アスタキサンチン溶液を、直ちにこの後、コメデンプン108gに加えてスクロース36gを含み且つ水酸化ナトリウム溶液によってpH8にしたコメデンプン溶液10.4kgが高圧ポンプによって混合角度90度に混合されているさらなる混合チャンバーに入れた。この工程の間、アスタキサンチンが、温度45℃で平均粒子サイズが144nmのコロイド分散形態で沈殿した。
【0058】
懸濁液をこの後濃縮し、それ自体知られている方法によって変換し、平均粒子サイズが129nmの自由流動性10%乾燥アスタキサンチン粉末を得た。この乾燥粉末を水に再溶解させて、透明な赤色の分散液を得た。この再分散液の色明度は、元の分散液の色明度におよそ10%及ばないだけであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質と、保護コロイドとしてコメデンプンとを含む水性分散液。
【請求項2】
水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質をナノ粒子状粒子として含む懸濁液の形態をとっている請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質0.1〜90重量%およびコメデンプン0.1〜99.9重量%を含む(パーセンテージは全て水性分散液の乾燥物を基準にしている)請求項1または2に記載の水性分散液。
【請求項4】
さらに少なくとも1種の可塑剤0.1〜70重量%、少なくとも1種の乳化剤0.01〜70重量%、および/または少なくとも1種の抗酸化剤0.01〜50重量%、および/または防腐剤を含む請求項3に記載の水性分散液。
【請求項5】
保護コロイドの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液に、水に溶けにくいかまたは不溶性である1種以上の活性物質を分散させることを含む、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の水性分散液の調製方法であって、保護コロイドとしてコメデンプンを用いる前記方法。
【請求項6】
分散ステップが、コメデンプンの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液中、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の懸濁液を調製する方式をとる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分散ステップが:
)水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を、1種以上の水混和性の有機溶媒、または水と1種以上の水混和性有機溶媒との混合物に溶解させること、または
)水と不混和性である1種以上の有機溶媒に、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を溶解させること、
b)a)またはa)で得られた溶液をコメデンプンの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液と混合して、水に溶けにくいかまたは不溶性である活性物質の疎水性相をナノ分散相として発生させること、および
c)有機溶媒を除去すること、
を含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
分散ステップのための有機溶媒が、少なくとも1種の水混和性の有機溶媒、または水と少なくとも1種の水混和性有機溶媒との混合物である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の分子状分散溶液を、ステップa)で30℃より高い温度で調製し、その後直ちにステップb)で保護コロイドの水性溶液で処理し、35℃〜120℃の混合温度を確立する請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質をナノ粒子状粒子として含む乾燥粉末の調製方法であって、請求項1に記載の水性分散液から、適切であればコーティング材料の存在下で水を除去し乾燥させる前記方法。
【請求項11】
水性分散液が、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の水性懸濁液である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
懸濁液を乾燥粉末に転換する前にそれを粉化する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
a)水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質を、30℃より高い温度で水混和性の有機溶媒、または水と水混和性有機溶媒との混合物に溶解させ、
b)得られた溶液をコメデンプンの水性分子状分散溶液またはコロイド分散溶液と混合させ、
c)得られた分散液を乾燥粉末に転換する、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の粉状製品。
【請求項15】
水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の油混和性製品の調製方法であって、請求項1に記載の水性分散液を、乳化剤の存在下に油中で乳化させる前記方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって得ることができる、水に溶けにくいかまたは不溶性である少なくとも1種の活性物質の液体状油混和性製品であって、該製品が、ダブルディスパージョン系として、分散媒としての油中に、水に溶けにくいかまたは不溶性である1種以上の活性物質の保護コロイド安定化粒子が分散形態で存在する、粒子直径が500μm未満の水性分散相を含む前記製品。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性分散液の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品製品、化粧品製品への添加物としての使用。
【請求項18】
請求項14に記載の粉状の調製物の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品製品、化粧品製品への添加物としての使用。
【請求項19】
請求項16に記載の油混和性の液体状調製物の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品製品、化粧品製品への添加物としての使用。

【公表番号】特表2008−503518(P2008−503518A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517158(P2007−517158)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006547
【国際公開番号】WO2006/000347
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】