説明

低温での結晶化を使用して、Apo2リガンド/TRAILを精製するための方法

【課題】一般に結晶化できるタンパク質に使用できる結晶化を含む回収および精製方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、一般にApo2L/TRAILの結晶化を含む精製に関する。本出願人は、驚くべきことに、特定の条件下において、APO2L/TRAILの独特な分子構造が、APO2L/TRAILを自発的に結晶化させることを見出した。この特性が、精製工程として結晶化を利用するAPO2L/TRAILの効率的で拡大縮小できる回収/精製方法の開発を可能にした。さらに、APO2L/TRAILで得られた経験により、一般に結晶化できるタンパク質に使用できる結晶化を含む回収および精製方法の開発が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般にApo2L/TRAILの結晶化を含む精製に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
様々な分子、例えば腫瘍壊死因子アルファ(「TNF−アルファ」)、腫瘍壊死因子ベータ(「TNF−ベータ」または「リンホトキシン−アルファ」)、リンホトキシン−ベータ(「LT−ベータ」)、CD30リガンド、CD27リガンド、CD40リガンド、OX−40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド(FasリガンドまたはCD95リガンドとも呼ばれる)、Apo−2リガンド(Apo2LまたはTRAILとも呼ばれる)、Apo−3リガンド(TWEAKとも呼ばれる)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODFまたはTRANCEとも呼ばれる)、およびTALL−1(BlyS、BAFFまたはTHANKとも呼ばれる)が、サイトカインの腫瘍壊死因子(「TNF」)ファミリーのメンバーとして同定されている[例えば、GrussおよびDower、Blood、85巻:3378〜3404頁(1995年);Schmidら、Proc. Natl. Acad. Sci.、83巻:1881頁(1986年);Dealtryら、Eur. J. Immunol.、17巻:689頁(1987年);Pittiら、J. Biol. Chem.、271巻:12687〜12690頁(1996年);Wileyら、Immunity、3巻:673〜682頁(1995年);Browningら、Cell、72巻:847〜856頁(1993年);Armitageら、Nature、357巻:80〜82頁(1992年)、1997年1月16日に公開のWO97/01633;1997年7月17日に公開のWO97/25428;Marstersら、Curr. Biol.、8巻:525〜528頁(1998年);Chicheporticheら、Biol. Chem.、272巻:32401〜32410頁(1997年);Hahneら、J. Exp. Med.、188巻:1185〜1190頁(1998年);1998年7月2日に公開のWO98/28426;1998年10月22日に公開のWO98/46751;1998年5月7日に公開のWO98/18921;Mooreら、Science、285巻:260〜263頁(1999年);Shuら、J. Leukocyte Biol.、65巻:680頁(1999年);Schneiderら、J. Exp. Med.、189巻:1747〜1756頁(1999年);Mukhopadhvavら、J. Biol. Chem.、274巻:15978〜15981頁(1999年)を参照]。これらの分子の中でも、TNF−アルファ、TNF−ベータ、CD30リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド、Apo−2リガンド(Apo2L/TRAIL)およびApo−3リガンド(TWEAK)は、アポトーシス性細胞死に関与していることが報告されている。
【0003】
Apo2L/TRAILは、サイトカインのTNFファミリーのメンバーとして数年前に同定された[例えば、Wileyら、Immunity、3巻:673〜682頁(1995年);Pittiら、J. Biol. Chem.、271巻:12697〜12690頁(1996年)を参照]。完全長ヒトApo2L/TRAILポリペプチドは、281アミノ酸長のタイプII膜貫通タンパク質である。いくつかの細胞は、ポリペプチドの細胞外領域の酵素による切断を介して、そのポリペプチドの天然の可溶型を生じ得る[Marianiら、J. Cell. Biol、137巻:221〜229頁(1997年)]。Apo2L/TRAILの可溶型の結晶学的な研究は、TNFおよび他の関連タンパク質の構造に類似したホモ三量体構造を明らかにしている[Hymowitzら、Molec. Cell、4巻:563〜571頁(1999年);Hymowitzら、Biochemistry、39巻:633〜644頁(2000年)]。しかし、他のTNFファミリーのメンバーとは異なり、Apo2L/TRAILは、3つのシステイン残基(ホモ三量体の各サブユニットの位置230)が併せて亜鉛原子を配位しており、亜鉛の結合が三量体の安定性と生物学的活性にとって重要であるという独特な構造的特徴を有していることが見出された[Hymowitzら、上掲;Bodmerら、J. Biol. Chem.、275巻:20632〜20637頁(2000年)]。
【0004】
Apo2L/TRAILは、関節リウマチなどの自己免疫性疾患を含む免疫系調節、およびHIVの治療においてある役割を担っている可能性があることが文献において報告されている[例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7を参照]。
【0005】
また、Apo2L/TRAILの可溶型は、大腸、肺、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、卵巣および脳の腫瘍、ならびにメラノーマ、白血病、および多発性骨髄腫を含む、in vitroでの様々な癌細胞においてアポトーシスを誘導することが報告されている[例えば、Wileyら、上掲;Pittiら、上掲;Riegerら、FEBS Letters、427巻:124〜128頁(1998年);Ashkenaziら、J. Clin. Invest.、104巻:155〜162頁(1999年);Walczakら、Nature Med.、5巻:157〜163頁(1999年);Keaneら、Cancer Research、59巻:734〜741頁(1999年);Mizutaniら、Clin. Cancer Res.、5巻:2605〜2612頁(1999年);Gazitt、Leukemia、13巻:1817〜1824頁(1999年);Yuら、Cancer Res.、60巻:2384〜2389頁(2000年);Chinnaiyanら、Proc. Natl. Acad. Sci、97巻:1754〜1759頁(2000年)を参照]。さらに、マウスの腫瘍モデルにおけるin
vivoの研究は、Apo2L/TRAILは、単独でまたは化学療法もしくは放射線治療と組み合わせて、実質的な抗腫瘍効果を発揮することができることを示唆している[例えば、Ashkenaziら、上掲;Walzcakら、上掲;Gliniakら、Cancer Res.、59巻:6153〜6158頁(1999年);Chinnaiyanら、上掲;Rothら、Biochem. Biophys. Res. Comm.、265巻:1999頁(1999年)を参照]。多くのタイプの癌細胞と対照的に、大部分の正常なヒトの細胞タイプは、Apo2L/TRAILのある種の組換え型により誘導されるアポトーシスに対して耐性があるように思われる[Ashkenaziら、上掲;Walzcakら、上掲]。Joらは、Apo2L/TRAILのポリヒスチジンタグ付きの可溶型が、in vitroにおいて、正常なヒトで単離された肝細胞ではアポトーシスを誘導するが、非ヒト肝細胞では誘導しないことを報告している[Joら、Nature Med.、6巻:564〜567頁(2000年);さらにNagata、Nature Med.、6巻:502〜503頁(2000年)を参照]。ある種の組換えApo2L/TRAIL調製物は、病変細胞対正常細胞に及ぼす生化学的性質および生物学的活性に関して、例えば、タグ分子の有無、亜鉛含有量、および三量体含有%に応じて変化し得ると考えられている[Lawrenceら、Nature Med.、Letter to the Editor、7巻:383〜385頁(2001年);Qinら、Nature Med.、Letter to the Editor、7巻:385〜386頁(2001年)を参照]。
【0006】
このようなTNFファミリーのサイトカインにより媒介される様々な細胞応答の誘導は、これらのサイトカインが特定の細胞レセプターに結合することにより始まると考えられている。以前に、約55kDa(TNFR1)および75kDa(TNFR2)の2つの異なるTNFレセプターが同定されていた[Hohmanら、J. Biol. Chem.、264巻:14927〜14934頁(1989年);Brockhausら、Proc. Natl. Acad. Sci.、87巻:3127〜3131頁(1990年);1991年3月20日に公開のEP417,563;Loetscherら、Cell、61巻:351頁(1990年);Schallら、Cell、61巻:361頁(1990年);Smithら、Science、248巻:1019〜1023頁(1990年);Lewisら、Proc. Natl. Acad. Sci.、88巻:2830〜2834頁(1991年);Goodwinら、Mol. Cell. Biol.、11巻:3020〜3026頁(1991年)]。これらのTNFRは、細胞外、膜貫通および細胞内領域を含む細胞表面レセプターの典型的な構造を共有していることが分かった。また、双方のレセプターの細胞外部分は、可溶性TNF結合タンパク質として天然に見出された[Nophar, Y.ら、EMBO J.、9巻:3269頁(1990年);およびKohno, T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、87巻:8331頁(1990年);Haleら、J. Cell. Biochem. 補遺15F、1991年、113頁(P424)]。
【0007】
タイプ1およびタイプ2TNFR(TNFR1およびTNFR2)の細胞外部分は、NH−末端から出発して、1から4と名付けられた4つのシステインリッチドメイン(CRD)の反復アミノ酸配列パターンを含む[Schallら、上掲;Loetscherら、上掲;Smithら、上掲;Nopharら、上掲;Kohnoら、上掲;Bannerら、Cell、73巻:431〜435頁(1993年)]。CRDの類似した反復パターンが、p75神経成長因子レセプター(NGFR)[Johnsonら、Cell、47巻:545頁(1986年);Radekeら、Nature、325巻:593頁(1987年)]、B細胞抗原CD40[Stamenkovicら、EMBO J.、8巻:1403頁(1989年)]、T細胞抗原OX40[Malletら、EMBO J.、9巻:1063頁(1990年)]およびFas抗原[Yoneharaら、上掲およびItohら、Cell、66巻:233〜243頁(1991年)]を含むいくつかの他の細胞表面タンパク質に存在する。CRDは、ショープ(Shope)ウイルスおよび粘液腫ポックスウイルスの可溶性TNFR(sTNFR)様T2タンパク質にも見出されている[Uptonら、Virology、160巻:20〜29頁(1987年);Smithら、Biochem. Biophys. Res. Commun.、176巻:335頁(1991年);Uptonら、Virology、184巻:370頁(1991年)]。これらの配列の最適なアライメントは、システイン残基の位置が十分保存されていることを示している。これらのレセプターは、時には集合的にTNF/NGFレセプタースーパーファミリーのメンバーと呼ばれている。
【0008】
現在まで同定されたTNFファミリーリガンドは、リンホトキシンベータを除き、通常、タイプII膜貫通タンパク質であり、そのC末端は細胞外に存在する。これに対して、現在までに同定されたTNFレセプター(TNFR)ファミリーの大部分のレセプターは、通常、タイプI膜貫通タンパク質である。しかし、TNFリガンドおよびレセプターファミリーの双方において、ファミリーのメンバー間で同定された相同性は、主として細胞外ドメイン(「ECD」)において見出されている。TNF−アルファ、Apo−1リガンドおよびCD40リガンドを含むTNFファミリーサイトカインのいくつかは、細胞表面においてタンパク質分解的に切断され、それぞれの場合に得られるタンパク質は、通常、可溶性サイトカインとして機能するホモ三量体の分子を形成する。また、TNFレセプターファミリータンパク質は、通常、タンパク質分解的に切断され、同族のサイトカインの阻害剤として機能し得る可溶性レセプターのECDを放出する。
【0009】
Panらは、「DR4」と呼ばれる別のTNFレセプターファミリーのメンバーを開示している[Panら、Science、276巻:111〜113頁(1997年);また1998年7月30日に公開のWO98/32856を参照]。DR4は、細胞自殺装置に関与できる細胞質デスドメインを含むことが報告された。Panらは、DR4がApo2L/TRAILとして知られているリガンドに対するレセプターであると考えられることを開示している。
【0010】
Sheridanら、Science、277巻:818〜821頁(1997年)およびPanら、Science、277巻:815〜818頁(1997年)においては、Apo2L/TRAILに対するレセプターであると考えられる別の分子が記載されている[1998年11月19日公開のWO98/51793;1998年9月24日公開のWO98/41629も参照のこと]。この分子は、DR5と呼ばれる(あるいはApo−2;TRAIL−R、TR6、Tango−63,hAPO8、TRICK2またはKILLERとも呼ばれている)[Screatonら、Curr. Biol.、7巻:693〜696頁(1997年);Walczakら、EMBO J.、16巻:5386〜5387頁(1997年);Wuら、Nature Genetics、17巻:141〜143頁(1997年);1998年8月20日公開のWO98/35986;1998年10月14日公開のEP870,827;1998年10月22日公開のWO98/46643;1999年1月21日公開のWO99/02653;1999年2月25日公開のWO99/09165;1999年3月11日公開のWO99/11791]。DR4のように、DR5は細胞質デスドメインを含み、アポトーシスのシグナル伝達が可能であると報告されている。Apo−2L/TRAILおよびDR5の間に形成される複合体の結晶構造は、Hymowitzら、Molecular Cell、4巻:563〜571頁(1999年)に記載されている。
【0011】
最近同定されたレセプターのさらなるグループは、「デコイレセプター」と呼ばれ、シグナル伝達のトランスデューサーとしてよりはむしろ阻害剤として機能すると考えられている。このグループは、どちらも細胞表面分子であるDCR1(TRID、LITまたはTRAIL−R3とも呼ばれる)[Panら、Science、276巻:111〜113頁(1997年);Sheridanら、Science、277巻:818〜821頁(1997年);McFarlaneら、J. Biol. Chem.、272巻:25417〜25420頁(1997年);Schneiderら、FEBS Letters、416巻:329〜334頁(1997年);Degli−Espostiら、J. Exp. Med.、186巻:1165〜1170頁(1997年);およびMongkolsapayaら、J. Immunol.、160巻:3〜6頁(1998年)]およびDCR2(TRUNDDまたはTRAIL−R4とも呼ばれる)[Marstersら、Curr. Biol.、7巻:1003〜1006頁(1997年);Panら、FEBS Letters、424巻:41〜45頁(1998年);Degli−Espostiら、Immunity、7巻:813〜820頁(1997年)]、ならびにどちらも分泌性の可溶性タンパク質であるOPG[Simonetら、上掲;Emeryら、下記]およびDCR3[Pittiら、Nature、396巻:699〜703頁(1998年)]を含む。Apo2L/TRAILは、DcR1、DcR2およびOPGと呼ばれるレセプターに結合することが報告されている。
【0012】
Apo2L/TRAILは、細胞表面「デスレセプター」であるDR4およびDR5を介して作用して、カスパーゼ、または細胞死プログラムを実行する酵素を活性化すると考えられている。リガンドに結合後、DR4およびDR5の双方はFADD/Mort1と呼ばれるデスドメイン含有アダプター分子を介して、アポトーシスイニシエータであるカスパーゼ−8を補充して活性化することにより、独立してアポトーシスを誘発することができる[Kischkelら、Immunity、12巻:611〜620頁(2000年);Sprickら、Immunity、12巻:599〜609頁(2000年);Bodmerら、Nature Cell Biol.、2巻:241〜243頁(2000年)]。DR4およびDR5とは異なり、DcR1およびDcR2レセプターはアポトーシスをシグナル伝達しない。
サイトカインのTNFファミリーおよびそれらのレセプターの概説については、AshkenaziおよびDixit、Science、281巻:1305〜1308頁(1998年);AshkenaziおよびDixit、Curr. Opin. Cell Biol.、11巻:255〜260頁(2000年);Golstein、Curr. Biol.、7巻:750〜753頁(1997年);GrussおよびDower、上掲;Nagata、Cell、88巻:355〜365頁(1997年);Locksleyら、Cell、104巻:487〜501頁(2001年)を参照。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Thomasら、J. Immunol.(1998年)161巻:2195〜2200頁
【非特許文献2】Johnsenら、Cytokine、(1999年)11巻:664〜672頁
【非特許文献3】Griffithら、J. Exp. Med. (1999年)189巻:1343〜1353頁
【非特許文献4】Songら、J. Exp. Med. (2000年)191巻:1095〜1103頁
【非特許文献5】Jeremiasら、Eur. J. Immunol. (1998年)28巻:143〜152頁
【非特許文献6】Katsikisら、J. Exp. Med. (1997年)186巻:1365〜1372頁
【非特許文献7】Miuraら、J. Exp. Med. (2001年)193巻:651〜660頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
ある種のタンパク質、例えばApo2L/TRAILおよびサイトカインのTNFファミリーの他メンバーは、タンパク質が三量体または三量体の形態である場合に生物学的活性を示す。したがって、治療目的または診断用途の目的に対してさえ、タンパク質が安定で生物学的に活性なままであり、特に三量体形態で安定なこのようなタンパク質の製剤が望まれる。
【0015】
本出願人は、驚くべきことに、特定の条件下において、APO2L/TRAILの独特な分子構造が、APO2L/TRAILを自発的に結晶化させることを見出した。この特性が、精製工程として結晶化を利用するAPO2L/TRAILの効率的で拡大縮小できる回収/精製方法の開発を可能にした。さらに、APO2L/TRAILで得られた経験により、一般に結晶化できるタンパク質に使用できる結晶化を含む回収および精製方法の開発が可能になった。
【0016】
1つの態様において、本発明は、
(a)カチオン交換カラムに混合物をロードすること;
(b)平衡緩衝液で前記カチオン交換カラムを洗浄し、前記混合物中に存在する非結合成分を除去すること;
(c)前記カチオン交換カラムに結合したApo2L/TRAILを、溶出緩衝液を用いて溶出すること;
(d)前記溶出液を約2から4℃の温度に徐々に冷却し、Apo2L/TRAILを自発的に結晶形態に沈殿させて、母液およびApo2L/TRAIL結晶の混合物を生成すること、および
(e)工程(d)で得られた前記混合物から、少なくとも約99%の純度でApo2L/TRAILを回収すること
を含む混合物からApo2L/TRAILを回収する方法に関する。
【0017】
特定の実施形態では、前記カチオン交換カラムにロードされる前記混合物は、Apo2L/TRAIL産生細胞の培養培地または細胞溶解物である。
【0018】
別の実施形態においては、前記混合物は、Apo2L/TRAILを産生する大腸菌宿主細胞の細胞溶解物である。
【0019】
さらに別の実施形態では、前記溶解物は、前記カチオン交換カラムにロードする前に清澄化させる。
【0020】
さらなる実施形態においては、工程(c)で得られた溶出液は、追加の精製なしに(d)の結晶化工程に供する。
【0021】
例えば、前記カチオン交換カラムは、SP−セファロースカラムであり得る。
【0022】
なおさらなる実施形態では、前記カチオン交換カラム(例えばSP−セファロース)にロードされる前記混合物のpHは約7.5であるか、または約7.5に調整する。例えば、Apo2L/TRAILの溶出は、pHを7.5〜7.8に調整した緩衝液中で100〜200mM NaClまたは100〜150mM NaSOを含む溶出緩衝液中で実施することができる。
【0023】
さらなる実施形態では、工程(d)において前記溶出液は、約1〜60時間の間に、約15〜30℃の温度から約2〜8℃の温度に、または約1〜8時間の間に、約2〜8℃の温度に、または約1時間の間に、約2〜8℃の温度に、または約1時間の間に、約4℃の温度に冷却する。
【0024】
さらに別の実施形態では、結晶化の前に、前記溶出液のpHは、pH7.0〜8.0であるか、またはpH7.0〜8.0に、例えばpH7.3に調整する。
【0025】
別の実施形態においては、結晶化の後に、前記溶出液のpHは、約7.5〜8.0であるか、または約7.5〜8.0に調整する。
【0026】
さらなる実施形態では、工程(d)において、Apo2L/TRAILの平衡溶解度に達するまで、またはほぼ達するまで、約2〜4℃の温度を維持する。
【0027】
本発明の方法を実施する過程で、工程(d)において、Apo2L/TRAILの溶解度を、貧溶媒、例えばポリエチレングリコール(PEG)、MPD、エタノール、イソプロパノール、および/またはジオキサンの添加により減少することができる。
【0028】
したがって、例えば約400と約10,000ダルトンの間のPEGの分子量を有するPEGを、貧溶媒として用いる。他の代表的実施形態では、PEGの分子量は400、3,350または10,000ダルトンである。
【0029】
さらなる実施形態においては、工程(e)において、Apo2L/TRAILは、濾過または遠心分離またはこれらの組合せにより母液から分離される結晶の形態で回収する。溶解度を減少させる濾過に先立ち、母液のpHを約8.0に調整し得る。
【0030】
さらなる態様において、本発明の回収/精製法は、上記の方法の工程(d)で得られたApo2L/TRAILの結晶を溶解する工程と、得られたその溶液を第2のクロマトグラフィーによる精製工程に供する工程をさらに含む。
【0031】
1つの実施形態では、第2のクロマトグラフィーによる精製工程は、例えば、フェニル−セファロースカラムで実施され得る疎水性相互作用クロマトグラフィーである。
【0032】
別の実施形態においては、第2のクロマトグラフィーによる精製工程は、例えば、CM−セファロースまたはSP−セファロースカラムで実施されるカチオン交換クロマトグラフィーである。
【0033】
さらなる実施形態において、Apo2L/TRAILは、第2のクロマトグラフィーの精製工程に続く限界濾過−ダイアフィルトレーションにより回収し、製剤化する。
【0034】
さらに他の実施態様においては、精製されたタンパク質の純度は、少なくとも約99.5%または少なくとも約99.9%である。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
混合物からApo2L/TRAILを回収する方法であって、
(a)カチオン交換カラムに前記混合物をロードする工程と、
(b)前記カチオン交換カラムを平衡緩衝液で洗浄し、前記混合物中に存在する非結合成分を除去する工程と、
(c)前記カチオン交換カラムに結合したApo2L/TRAILを、溶出緩衝液を用いて溶出する工程と、
(d)前記溶出液を、約2から4℃の温度に徐々に冷却し、Apo2L/TRAILを結晶形態に自発的に沈殿させて、母液およびApo2L/TRAIL結晶の混合物を生成する工程と、
(e)工程(d)で得られた前記混合物から、少なくとも約99%の純度でApo2L/TRAILを回収する工程と
を含む方法。
(項目2)
前記カチオン交換カラムにロードする前記混合物が、Apo2L/TRAIL産生細胞の培養培地または細胞溶解物である項目1に記載の方法。
(項目3)
前記混合物が、Apo2L/TRAILを産生する大腸菌宿主細胞の細胞溶解物である項目2に記載の方法。
(項目4)
前記カチオン交換カラムにロードする前に、前記溶解物を清澄化させる項目3に記載の方法。
(項目5)
工程(c)で得られた前記溶出液を、追加の精製なしに(d)の前記結晶化工程に供する項目1に記載の方法。
(項目6)
前記カチオン交換カラムが、SP−セファロースカラムである項目1に記載の方法。
(項目7)
前記カラムにロードする前記混合物のpHは、約7.5であるかまたは約7.5に調整される項目6に記載の方法。
(項目8)
Apo2L/TRAILの溶出を、pHを7.5〜7.8に調整する緩衝液中に100〜200mM NaClまたは100〜150mM NaSOを含む溶出緩衝液で実施する項目6に記載の方法。
(項目9)
工程(d)において、前記溶出液を、約1〜60時間で約15〜30℃の温度から約2〜8℃の温度に冷却する項目1に記載の方法。
(項目10)
工程(d)において、前記溶出液を、約1〜8時間で約2〜8℃の温度に冷却する項目9に記載の方法。
(項目11)
工程(d)において、前記溶出液を、約1時間で約2〜8℃の温度に冷却する項目9に記載の方法。
(項目12)
工程(d)において、前記溶出液を、約1時間で約4℃の温度に冷却する項目11に記載の方法。
(項目13)
結晶化の前に、前記溶出液のpHはpH7.0〜8.0であるか、またはpH7.0〜8.0に調整される項目1に記載の方法。
(項目14)
結晶化の前に、前記溶出液のpHは、約7.3であるかまたは約7.3に調整される項目13に記載の方法。
(項目15)
結晶化後に、前記溶出液のpHは、約7.5〜8.0であるかまたは約7.5〜8.0に調整される項目13に記載の方法。
(項目16)
工程(d)において、Apo2L/TRAILが平衡溶解度に達するかまたはほぼ達するまで、約2〜4℃の前記温度を維持する項目1に記載の方法。
(項目17)
工程(d)において、Apo2L/TRAILの溶解度を貧溶媒の添加により減少させる項目16に記載の方法。
(項目18)
前記貧溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)、MPD、エタノール、イソプロパノール、およびジオキサンからなる群から選択される項目17に記載の方法。
(項目19)
前記PEGの分子量が、約400および約10,000ダルトンの間である項目18に記載の方法。
(項目20)
前記PEGの分子量が、400、3,350または10,000ダルトンである項目19に記載の方法。
(項目21)
工程(e)において、Apo2L/TRAILを、濾過または遠心分離またはこれらの組合せにより、前記母液から分離された結晶の形態で回収する項目1に記載の方法。
(項目22)
溶解度を減少させるために濾過前に、前記母液のpHを約8.0に調整する項目21に記載の方法。
(項目23)
工程(d)で得られた前記Apo2L/TRAIL結晶を溶解する工程、および得られた前記溶液を第2のクロマトグラフィー精製工程に供する工程をさらに含む項目1に記載の方法。
(項目24)
前記第2のクロマトグラフィーの精製工程が、疎水性相互作用クロマトグラフィーである項目23に記載の方法。
(項目25)
疎水性相互作用クロマトグラフィーを、フェニル−セファロースカラムで実施する項目24に記載の方法。
(項目26)
前記第2のクロマトグラフィー精製工程が、カチオン交換クロマトグラフィーである項目23に記載の方法。
(項目27)
前記カチオン交換クロマトグラフィーを、CM−セファロースまたはSP−セファロースカラムで実施する項目26に記載の方法。
(項目28)
Apo2L/TRAILを、前記第2のクロマトグラフィー精製工程に続く限界濾過−ダイアフィルトレーションにより回収して製剤化する項目23に記載の方法。
(項目29)
前記純度が、少なくとも約99.5%である項目1に記載の方法。
(項目30)
前記純度が、少なくとも約99.9%である項目1に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、ヒトApo−2L/TRAIL cDNAのヌクレオチド配列(配列番号:2)およびこれに由来するアミノ酸配列(配列番号1)を示す。ヌクレオチド位置447(配列番号2の)の「N」は、ヌクレオチド塩基が「T」または「G」であり得ることを示すために使用される。
【図2】図2は、記載されたApo2L/TRAIL調製物の純度を示すSDS−PAGE銀染色ゲルを示す。
【図3】図3は、Apo2L/TRAILの結晶化に及ぼす種々の塩の影響を示す。
【図4】図4は、1、4、8および24時間の冷却期間にわたる22℃および2℃間の直線温度勾配に対する平衡結晶の粒度分布を示す。
【図5】図5は、APO2L/TRAIL溶解度に及ぼすPEG添加の影響を示す:2〜8℃で5日攪拌。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
A.定義
「TNFファミリーのメンバー」は、構造または機能に関して腫瘍壊死因子(TNF)にある程度の類似性を共有する種々のポリペプチドを意味するものとして広義に使用される。TNFファミリーのポリペプチドに関連したある種の構造および機能的な特徴は、当該技術分野で公知であり、例えば、上述した本発明の背景に記載されている。このようなポリペプチドには、限定されるものではないが、当該技術分野でTNF−アルファ、TNF−ベータ、CD40リガンド、CD30リガンド、CD27リガンド、OX−40リガンド、4−1BBリガンド、Apo−1リガンド(FasリガンドまたはCD95リガンドとも呼ばれる)、Apo−2L/TRAIL(TRAILとも呼ばれる)、Apo−3リガンド(TWEAKとも呼ばれる)、APRIL、OPGリガンド(RANKリガンド、ODF、またはTRANCEとも呼ばれる)、およびTALL−1(BlyS、BAFFまたはTHANKとも呼ばれる)と呼ばれるポリペプチドが含まれる(例えば、GrussおよびDower、Blood、1995年、85巻:3378〜3404頁;Pittiら、J. Biol. Chem、1996年、271巻:12687〜12690頁;Wileyら、Immunity、1995年、3巻:673〜682頁;Browningら、Cell、1993年、72巻:847〜856頁;Armitageら、Nature、1992年、357巻:80〜82頁、PCT国際公開番号WO97/01633;およびWO97/25428;Marstersら、Curr. Biol、1998年、8巻:525〜528頁;Chicheporticheら、Biol.
Chem、1997年、272巻:32401〜32410頁;Hahneら、J. Exp. Med、1998年、188巻:1185〜1190頁;PCT国際公開番号WO98/28426;WO98/46751;およびWO98/18921;Mooreら、Science、1999年、285巻:260〜263頁;Shuら、J. Leukocyte Biol、1999年、65巻:680頁;Schneiderら、J. Exp. Med、1999年、189巻:1747〜1756頁;Mukhopadhyayら、J. Biol. Chem、1999年、274巻:15978〜15981頁を参照のこと)。
「Apo2L/TRAIL」、「Apo2L」、「Apo−2リガンド」および「TRAIL」という用語は、図1(配列番号1)に示したアミノ酸配列のアミノ酸残基114〜281、95〜281、残基92〜281、残基91〜281、残基41〜281、残基15〜281、または残基1〜281、ならびに上記の配列の生物学的に活性なフラグメント、欠失、挿入、または置換変異体を含むポリペプチド配列を意味するものとして本明細書で使用される。1つの実施形態では、ポリペプチド配列は、図1(配列番号1)の残基114〜281を含み、場合によっては図1(配列番号1)の残基114〜281からなる。場合によっては、ポリペプチド配列は、図1(配列番号1)の残基92〜281または残基91〜281を含む。Apo−2Lのポリペプチドは、図1(配列番号2)に示された天然のヌクレオチド配列によりコードされ得る。場合によっては、残基Pro119(図1;配列番号2)をコードするコドンは「CCT」または「CCG」であり得る。他の実施形態では、フラグメントまたは変異体は生物学的に活性であり、上記の列挙されたApo2L/TRAIL配列のいずれか1つと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。場合によっては、Apo2L/TRAILポリペプチドは、図1(配列番号2)で提供されるコード化ポリヌクレオチド配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列によりコードされる。この定義は、その天然のアミノ酸の少なくとも1つがアラニン残基により置換されているApo2L/TRAILの置換変異体を包含する。Apo2L/TRAILの特定の置換変異体は、少なくとも1つのアミノ酸がアラニン残基により置換されているものを含む。これらの置換変異体は、例えば「D203A」「D218A」および「D269A」として同定されたものを含む。この命名法は、(図1(配列番号1)に示される番号付けを用いて)位置203、218および/または269のアスパラギン酸残基がアラニン残基により置換されているApo2L/TRAIL変異体を同定するために使用される。場合によっては、Apo2L変異体は、公開されたPCT出願公開WO01/00832の表1に列挙されている1つまたは複数のアラニン置換を含み得る。置換変異体には、2001年1月4日公開のWO01/00832の表1において同定された1つまたは複数の残基置換が含まれる。また本定義は、Apo2L/TRAIL供給源から単離されたか、または組換えもしくは合成法により調製された天然配列Apo2L/TRAILも包含する。本発明のApo2L/TRAILは、PCT国際公開番号WO97/01633およびWO97/25428で開示されるApo2L/TRAILまたはTRAILと呼ばれるポリペプチドを含む。「Apo2L/TRAIL」または「Apo2L」という用語は、このポリペプチドの単量体、二量体または三量体形態を含むApo2L/TRAILの形態を一般に意味するものとして使用される。特に記載しない限りは、Apo2L配列で言及されているアミノ酸残基のすべての番号付けは、図1(配列番号1)に記載の番号付けを使用している。例えば、「D203」または「Asp203」は、図1(配列番号1)で提供される配列における、位置203のアスパラギン酸残基を意味する。
【0037】
「Apo2L/TRAIL細胞外ドメイン」または「Apo2L/TRAIL ECD」という用語は、膜貫通および細胞質ドメインを本質的に含まないApo2L/TRAILの形態を意味する。通常、ECDはこのような膜貫通および細胞質ドメインの1%未満を有し、このようなドメインの0.5%未満を有するのが好ましい。本発明のポリペプチドに対して同定されたいずれの膜貫通ドメイン(複数可)も、疎水性ドメインのこのタイプを同定するために、当該技術分野で常套的に使用されている基準に従って同定されていることは理解されるであろう。膜貫通ドメインの正確な境界は変わり得るが、多くの場合は、最初に同定されたドメインのいずれかの末端において、約5つのアミノ酸を超えないと思われる。好ましい実施形態において、ECDは、膜貫通および細胞質または細胞内ドメインを含まない(そして、細胞膜に結合していない)、可溶性のポリペプチドの細胞外ドメイン配列からなる。Apo−2L/TRAILの特定の細胞外ドメイン配列は、PCT国際公開番号WO97/01633およびWO97/25428に記載されている。
【0038】
「Apo2L/TRAIL単量体」または「Apo2L単量体」という用語は、Apo2Lの細胞外ドメイン配列の共有結合鎖を意味する。
【0039】
「Apo2L/TRAIL二量体」または「Apo2L二量体」という用語は、ジスルフィド結合を介して共有結合で連結された2つのApo−2Lの単量体を意味する。本明細書中で用いられる場合の用語には、遊離しているApo2L二量体およびApo2Lの三量体形態内にあるApo2L二量体(すなわち、他の第3のApo2L単量体と結合した)が含まれる。
【0040】
「Apo2L/TRAIL三量体」または「Apo2L三量体」という用語は、非共有結合で結合している3つのApo2L単量体を意味する。
【0041】
「Apo2L/TRAIL凝集体」という用語は、Apo2L/TRAILの自己結合したより高次のオリゴマー形態、例えばApo2L/TRAIL三量体を意味するために使用され、この三量体は、例えば、Apo2L/TRAILの六量体およびナノメリック(nanomeric)形態を形成する。
【0042】
Apo2L/TRAIL単量体、二量体、または三量体(または他の凝集体)の存在および量の決定は、当該技術分野で公知の方法およびアッセイを使用して(および商業的に入手可能な物質を使用して)、例えば天然サイズ排除HPLC(「SEC」)、ドデシル硫酸ナトリウムを使用する変性サイズ排除(「SDS−SEC」)、逆相HPLC、キャピラリー電気泳動法、および以下の実施例にさらに詳細に記載されている方法によりなされ得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「タグ付きの」という用語は、「タグポリペプチド」に融合したApo2L/TRAILまたはこれらの一部を含むキメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、抗体が産生され得るエピトープを提供するか、または金属イオンキレート化などのいくつかの他の機能を提供するのに十分な残基を有するが、一般的にTNFファミリーのサイトカインの活性を阻害しないよう十分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、タグ特異的抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に少なくとも6つのアミノ酸残基、通常は約8〜約50個の間のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20個の間の残基)を有する。
【0044】
「二価の金属イオン」という用語は、2つの正電荷を有す金属イオンを意味する。二価の金属イオンの具体例には、限定するものでないが、亜鉛、コバルト、ニッケル、カドミウム、マグネシウム、およびマンガンが含まれる。使用され得るこのような金属の特定の形態には、塩の形態(例えば、薬剤学的に許容し得る塩の形態)、例えば上述の二価の金属イオンの塩化物、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩および硫酸塩の形態が含まれる。場合によっては、本発明で使用される二価の金属イオンは、亜鉛、および好ましくは、塩の形態、硫酸亜鉛または塩化亜鉛である。
【0045】
「単離された」とは、本明細書で開示された種々のタンパク質を記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離されおよび/または回収されたタンパク質を意味する。その自然環境の汚染成分とは、典型的には、タンパク質の診断または治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様の溶質を含み得る。好ましい実施形態においては、タンパク質は、(1)スピニングカップシークエネーターの使用により、N末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るために十分な程度に、あるいは(2)クーマシーブルーまたは好ましくは、銀染色を用いる非還元または還元条件下でのSDS−PAGEによる均質性になるまでに、あるいは(3)質量分光分析またはペプチドマッピング技術による均質性になるまでに精製される。Apo2L/TRAILの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離されたタンパク質には、組換え細胞内のin situでのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は単離されたタンパク質は少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0046】
「単離された」Apo2L/TRAIL核酸分子は、Apo2L/TRAIL核酸の天然の供給源に通常付随している少なくとも1つの混入核酸分子から同定され分離される核酸分子である。単離されたApo2L/TRAIL核酸分子は、天然に見出される形態または配列以外のものである。したがって、単離されたApo2L/TRAIL核酸分子は、天然細胞に存在するようなApo2L/TRAIL核酸分子とは区別される。しかし、単離されたApo2L/TRAIL核酸分子は、例えば、Apo2L/TRAIL核酸分子が、天然の細胞の染色体部位とは異なる染色体部位に存在するApo2L/TRAILを通常発現する細胞中に含まれるApo2L/TRAIL核酸分子を含む。
【0047】
本明細書で同定されている配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させて、必要に応じて、最大のパーセント配列同一性を達成するために間隙を導入し、いかなる保存的置換も配列同一性の一部としてみなさないとした後の、Apo2L/TRAIL配列のアミノ酸残基で同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法で達成可能であり、比較される全長配列にわたって最大アライメントを達成するために必要なアルゴリズムを割り当てることを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。本明細書での目的のために、パーセントアミノ酸同一性値は、Genentech,Inc.により作成され、そのソースコードは米国著作権庁、Washington,DC、20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている配列比較コンピュータプログラムALIGN−2用いて得ことができる。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、CA.を通して一般公開されている。すべての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され、変動しない。
【0048】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、一般に、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなれば、適切なアニーリングのために温度を高くする必要があり、プローブが短くなれば、温度を低くする必要が生じる。ハイブリダイゼーションは、一般に相補鎖がその融点より低い環境に存在する場合、変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、高い相対的な温度は、反応条件をよりストリンジェントにする傾向があるが、低い温度ではこの傾向は低下することになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular
Biology、Wiley Interscience Publishers、(1995年)を参照のこと。
【0049】
本明細書で定義される「高ストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度および高温度;50℃において0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを用いる条件;(2)ハイブリダイゼーションの間、変質剤を用い;42℃で50%(v/v)のホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/pH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液、および750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いる条件;または(3)42℃で50%のホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%の硫酸デキストランを用いるとともに42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中での洗浄および55℃での50%ホルムアミド、次いで55℃でEDTAを含む0.1×SSCからなる高いストリンジェンシーの洗浄を用いる条件によって同定される。
【0050】
「中等度ストリンジェント条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989年に記載されているように同定され得て、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20mg/ml変性剪断サケ精子DNA含む溶液中、37℃で一夜のインキュベーション、次いで1×SSC中、約37〜50℃でのフィルターの洗浄を含んでいる。当業者であれば、プローブ長などの因子に適応させる必要性に応じて、どのようにして温度、イオン強度などを調整するかを認識するであろう。
【0051】
「制御配列」という用語は、特定の宿主生物において作動可能に結合したコード配列の発現のために必要なDNAの塩基配列を意味する。原核生物に適切な制御配列は、例えばプロモーター、場合によってはオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0052】
核酸が他の核酸配列と機能的なつながりに配置されるとき、その核酸は「作動可能に結合されて」いる。例えば、プレ配列もしくは分泌リーダーに対するDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前駆体タンパク質として発現される場合、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に結合されている;プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に結合されている;またはリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作動可能に結合されている。一般に、「作動可能に結合された」とは、結合されているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合には連続した読み取りフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは連続している必要はない。結合は、都合の良い制限酵素認識部位でライゲーションにより達成される。このような部位が存在しない場合は、通常の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが使用される。
【0053】
「貯蔵安定性」という用語は、商業的流通網において、例えば、所定の温度で少なくとも12カ月、好ましくは所定の温度で少なくとも24カ月の製品に関する許容可能な貯蔵期限を有する製剤を記述するために使用される。場合によっては、このような貯蔵安定性のある製剤は、5%以下の凝集体、10%以下の二量体、および/または電荷不均質性または生物学的活性における最小の変化しか含まない。タンパク質の分解経路は、化学的不安定性(すなわち、新たな化学成分を生じる結合形成もしくは切断によるタンパク質の改変を含むすべての過程)、または物理的不安定性(すなわち、タンパク質の高次構造における変化)を含むことがある。例えば、化学的不安定性は脱アミド、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離またはジスルフィド交換から生じることがある。例えば、物理的不安定性は、変性、凝集、沈殿または吸着から生じることがある。3つの最も一般的なタンパク質分解経路は、タンパク質凝集、脱アミドおよび酸化である。Clelandら、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、10巻(4号):307〜377頁(1993年)。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「可溶性」とは、水溶液中で完全に溶解しており、目視検査により評価して視認できる粒子がない、透明からわずかに乳白色の溶液を生じるポリペプチドを意味する。溶液の濁度(または、タンパク質の溶解度)のさらなるアッセイは、20mg/mlの濁度が0.05未満の吸光度単位である場合、1cmの経路長セルを用い340nm〜360nmでUV吸光度を測定することにより実施され得る。
【0055】
「オスモライト」とは、溶液に浸透圧を与える張性調整物質または浸透圧調節物質を意味する。浸透圧とは、溶液に対してイオンおよび非イオン化分子により寄与される全浸透圧活性を意味する。具体例には、塩化ナトリウムなどの無機塩、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、シュークロースまたはトレハロースなどの糖、グリセロール、アミノ酸、およびマンニトールなどの糖アルコールで、一般的に安全であることが当該技術分野において公知であるもの(GRAS)が含まれる。
【0056】
「保存料」は、製剤中での細菌、ウイルス、および真菌の増殖を防止するために作用でき、抗酸化剤、または他の化合物は、製剤の安定性を保つために種々の方法で機能することができる。具体例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖の化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、および塩化ベンゼトニウムが含まれる。他のタイプの化合物には、フェノールおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、ならびにm−クレゾールが含まれる。場合によっては、このような化合物は、フェノールまたはベンジルアルコールである。保存料または他の化合物は、必要に応じて液体または水性形態のApo2L/TRAIL製剤に含まれるが、通常、凍結乾燥された形態の製剤には含まれない。後者の場合、保存料または他の化合物は、通常、再構成のために使用される注射用水(WFI)または静菌注射用水(BWFl)中に存在する。
【0057】
「界面活性剤」は、製剤における濁度またはタンパク質の変性を減少させるように作用できる。界面活性剤の具体例には、ポリソルベートなどの非イオン性活性剤、例えばポリソルベート20、60、または80、ポロキサマー、例えば、ポロキサマー184または188、プルロニックポリオール、エチレン/プロピレンブロックポリマーまたはGRASである当該技術分野において公知の任意の他のものを含む。場合によっては、界面活性剤はポリソルベートまたはポロキサマーである。
【0058】
本明細書で用いられる「緩衝液」は、GRASである任意の適切な緩衝液であり、ポリペプチドがApo2L/TRAILである場合、一般に、約6〜約9、場合によっては約6.5〜約8.5、場合によっては約7〜約7.5のpHを与える。具体例には、Tris、Hepes、トリエタノールアミン、ヒスチジン、または所望の効果を有することが当該技術分野において公知の任意の他のものが含まれる。
【0059】
「サイトカイン」という用語は、細胞間伝達物質として他の細胞に作用する、1つの細胞集団により放出されたタンパク質に対する総称である。このようなサイトカインの具体例には、リンフォカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンがある。サイトカインには、成長ホルモン例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH);肝臓成育因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−および−;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成育因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);神経成長因子;血小板成長因子;トランスフォーミング成長因子(TGF)例えばTGF−およびTGF−;インシュリン様成長因子IおよびII;エリスロポイエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン例えばインターフェロン−、−、および−ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)例えばマクロファージ−CSF(M−CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒球−CSF(G−CSF);インターロイキン(IL)例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で用いられる場合、サイトカインという用語は、天然の供給源由来または組換え細胞培養由来のタンパク質および天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0060】
本明細書で用いられる「細胞障害剤」という用語は、細胞の機能を阻害または抑制し、かつ/または細胞の破壊を引き起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、I131、I125、Y90およびRe186)、化学療法剤、およびトキシン例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性なトキシン、またはこれらのフラグメントを含むことを意図する。
【0061】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の具体例には、アルキル化剤例えばチオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標));アルキルスルホナート例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン(bullatacin)およびブラタシノン(bullatacinone));カンプトセシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)およびビセレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189およびCBI−TMIを含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード例えばクロランブシル、クロルナファジン、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドハイドロクロライド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質例えばエンジイン抗生物質(例えばカリチェアミシン、特にカリチェアミシンガンマ1lおよびカリチェアミシンphil1、例えば、Agnew、Chem Intl. Ed. Engl.、33巻:183〜186頁(1994年)を参照;ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;ビスホスホネート、例えばクロドロナート;エスペラマイシン(esperamicin);ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトロビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(商標))(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝産物例えばメトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル(eniluracil);アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド(maytansinoid)例えばメイタンシン(maytansine)およびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(“Ara−C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、NJ)およびドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル;ゲムシタビン(Gemzar(商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナアナログ例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(Navelbine(商標));ノバントロン(novantron);テニポシド;エダトレキサート(edatrexate);ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ(xeloda);イバンドロナート(ibandronate);CPT−11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド例えばレチノイン酸;カペシタビン;ならびに薬剤学的に許容し得る上記のいずれかの塩類、酸または誘導体が含まれる。また、この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(Nolvadex(商標)を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston(商標))を含む抗卵胞ホルモンおよび選択的エストロゲン受容体モデュレータ(SERM);副腎でエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼインヒビター、例えば4(5)−イミダゾール類、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(Megace(商標))、エクセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(Rivisor(商標))、レトロゾール(Femara(商標))、およびアナストロゾール(Arimidex(商標));ならびに抗アンドロゲン例えばフルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリン;ならびに薬剤学的に許容し得る上記いずれかの塩、酸または誘導体が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「増殖阻害剤」は、in vitroまたはin vivoのいずれかにおいて本明細書で同定された任意の遺伝子を過剰発現している細胞、特に癌細胞の増殖を阻害する化合物または組成物を意味する。したがって、増殖阻害剤は、S期でこのような遺伝子を過剰発現する細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の具体例には、細胞周期の進行を(S期以外の箇所で)ブロックする薬剤、例えばG1期停止およびM期停止を誘発する薬剤が含まれる。典型的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキソール、ならびにトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニソン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、およびara−CなどのDNAアルキル化剤はS期停止にも波及する。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer、MendelsohnおよびIsrael、編、Chapter 1、表題「Cell cycle regulation, oncogens, and antineoplastic drugs」Murakamiら著、(WB Saunders:Philadelphia、1995年)、特に13頁に見出すことができる。
【0063】
本明細書の目的のための「生物学的に活性な」または「生物学的活性」とは、(a)単一の薬剤として単独で、または化学療法剤と組み合わせて、少なくとも1つのタイプの哺乳動物癌細胞またはin vivoまたはex vivoでウイルス感染した細胞においてアポトーシスを誘発または刺激する能力を有すること(b)抗体を産生可能である、すなわち、免疫原性である;(c)Apo2L/TRAIL(このようなレセプターはDR4レセプター、DR5レセプター、OPG、DcR1レセプター、およびDcR2レセプターを含み得る)に対するレセプターに結合および/または刺激可能である;または(d)天然または天然に存在するApo2L/TRAILポリペプチドの活性を保持していることを意味する。Apo2L/TRAILの生物学的活性を判定するためのアッセイは、当該技術分野において公知の方法、例えばDNAのフラグメンテーション(例えば、Marstersら、Curr. Biology、6巻:1669頁(1996年)を参照)、カスパーゼ不活性化、DR4結合、DR5結合(例えば、1998年11月19日に公開のWO98/51793を参照)、DcR1結合(例えば、1998年12月23日に公開のWO98/58062を参照)、DcR2結合(例えば、1999年3月4日に公開のWO99/10484を参照)、ならびにPCT国際公開番号WO97/01633、WO97/25428、WO01/00832、およびWO01/22987に記載されているアッセイを使用して実施することができる。
【0064】
「アポトーシス」および「アポトーシス活性」という用語は、広義に使用され、細胞原形質の凝縮、形質膜微小絨毛の喪失、核の分節化、染色体DNAの分解またはミトコンドリアの機能の喪失を含む1つまたは複数の特徴的な細胞変化を通常伴う哺乳動物における細胞死の規則的なまたは制御された形態を意味する。この活性は、当該技術分野で公知の、例えば、細胞生存率アッセイ(例えばアラマーブルーアッセイまたはMTTアッセイ)、FACS分析、カスパーゼ活性化、DNAフラグメンテーション(例えば、Nicolettiら、J. Immunol. Methods、139巻:271〜279頁(1991年)を参照)、およびポリADPリボースポリメラーゼ、「PARP」、切断アッセイにより決定し測定することができる。
【0065】
本明細書中で用いられる場合、「疾患」という用語は、有効量のポリペプチド、例えばApo2L/TRAILなどにより治療可能な任意の疾病または疾患を含む、本明細書に記載されている組成物による治療により利益を受けると考えられるあらゆる症状を一般に意味する。これには、慢性および急性の疾患、ならびに哺乳動物を問題の疾患に罹患させるようなこれらの病的状態が含まれる。本明細書で治療される疾患の非限定的な例には、良性および悪性癌;炎症性、血管原性、および免疫性の疾患、自己免疫疾患、関節炎(関節リウマチを含む)、多発性硬化症、ならびにHIV/AIDSが含まれる。
【0066】
「癌」、「癌性」または「悪性」という用語は、典型的には統制されてない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を意味するかまたは記述する。癌の具体例には、これらに限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫、および肉腫が含まれる。このような癌のより特定の例には、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、胃腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肝癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形性神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、胃癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、および頭頚部癌が含まれる。場合によっては、癌細胞は、DR4および/またはDR5レセプター(複数可)を発現する。
【0067】
本明細書中で用いられる「治療する」、「治療」および「治療法」という用語は、治癒的治療法、予防的治療法、および防護的治療法を意味する。連続的治療または投与とは、1日または複数日で治療を中断することなく、少なくとも毎日であることを基本として治療を行うことを意味する。断続的治療もしくは投与、または断続的な様式での治療もしくは投与とは、連続的でなく、むしろ事実的には周期的に治療することを意味する。
【0068】
本明細書中で用いられる「哺乳動物」という用語は、ヒト、ウシ、ウマ、イヌおよびネコを含む哺乳動物に分類される任意の哺乳動物を意味する。本発明の好ましい実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0069】
本明細書で使用される場合の「ポリオール」という用語は、広義に多価アルコール化合物を意味する。ポリオールは、例えば任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖または分枝鎖を有し得る。好適なポリオールは、1つまたは複数のヒドロキシル位置で、化学基例えば1個から4個の炭素を有するアルキル基で置換されたポリオールを含む。典型的には、ポリオールは、ポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレンポリプロピレングリコールコポリマーを、タンパク質および他生体分子に結合のために使用できることが理解できるであろう。ポリオールには、当該技術分野で公知のポリオールおよび一般公開されている、例えば商業的に入手可能な供給源からのポリオールが含まれる。
【0070】
B.発明を実施するための例示的な方法および物質
本発明は、Apo2L/TRAILを回収および精製する方法を提供する。特に、本発明は、他の不純物、例えば混入しているタンパク質および他の不純物を伴う混合物からApo2L/TRAILを回収して精製する結晶化を含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、本発明は組換え型宿主の培養または細胞溶解物、例えばApo2L/TRAILを産生している組換え型大腸菌宿主細胞の細胞溶解物からApo2L/TRAILを回収して精製する方法を提供する。
【0071】
これらの精製法の原理は、Apo2L/TRAILが、特定の緩衝液系で容易に自発的に結晶化するという予期しない発見による。この発見は、Apo2L/TRAILの精製スキームにおいて、効率的な精製工程として結晶化を利用することを可能にする。特に、本発明の基礎をなす実験的な研究は、自発的な結晶化の類似した傾向を示すAPO2L/TRAILおよび他のタンパク質の精製プロセスにおける1つの工程として結晶化を実施できることを示している。精製スキームに結晶化工程を組み込むと、結晶化を伴わない複数のクロマトグラフィーの精製工程を用いる従来の精製スキームに相当する収量を維持しながら、精製プロセスの工程を減らすことを可能にする。したがって、精製プロセスで結晶化を実施することは、効率、生産物収量または生産品質を損なうことなく、著しい時間とコストの削減をもたらす可能性がある。
【0072】
B.1 Apo2L/TRAILの産生
以下の記載は、Apo2L/TRAILをコードする核酸を含むベクターで形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞を培養して、細胞培養物からポリペプチドを回収することにより、Apo2L/TRAILを産生する方法に関する。
【0073】
Apo2L/TRAILをコードするDNAは、Apo2L/TRAIL mRNAを持ち、検出可能な量でこれを発現すると考えられる組織から調製された任意のcDNAライブラリーから得ることができる。したがって、ヒトApo2L/TRAIL DNAは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリー、例えばPCT国際公開番号WO97/25428に記載されたようなヒト胎盤cDNAのバクテリオファージライブラリーから簡便に得ることができる。また、Apo2L/TRAILをコードする遺伝子は、ゲノムライブラリーから、またはオリゴヌクレオチド合成によっても得ることができる。
【0074】
ライブラリーは、関心のある遺伝子またはその遺伝子によりコードされたタンパク質を同定するように設計されたプローブ(例えばApo2L/TRAILに対する抗体または少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)を用いてスクリーニングすることができる。選択されたプローブを用いたcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、標準的な手順を用いて実施することができる(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual;New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)。Apo2L/TRAILをコードする遺伝子を単離する他の方法は、PCR法を用いるものである(Sambrookら、上掲;Dieffenbachら、PCR Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995年)。
【0075】
Apo2L/TRAILのアミノ酸配列フラグメントまたは変異体は、Apo2L/TRAIL DNAに適切なヌクレオチドの変化を導入するか、または所望のApo2L/TRAILポリペプチドを合成することにより調製することができる。このようなフラグメントまたは変異体は、細胞内領域、細胞膜貫通領域、もしくは細胞外領域、または完全長のApo2L/TRAILに関して図1(配列番号1)に示したアミノ酸配列の内部もしくは一端もしくは両端で、残基の挿入、置換、および/または欠失を示す。本明細書で定義されるように、最終的な構成体は、例えば、所望の生物学的活性またはアポトーシス活性を備えているという条件で、挿入、置換、および/または欠失の任意の組合せにより、最終的な構成体に到達することができる。好ましい実施形態では、フラグメントまたは変異体は、Apo2L/TRAILの細胞内、膜貫通もしくは細胞外ドメイン、またはApo−2L/TRAILの完全長配列に対して、例えば、本明細書で同定された配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。また、アミノ酸変化は、Apo−2L/TRAILの翻訳後プロセス、例えば糖鎖形成部位の数もしくは位置の変化または細胞膜アンカリング特性を変える可能性がある。
【0076】
上記のApo2L/TRAIL配列の変異は、米国特許第5,364,934号に説明されている任意の技術ならびに保存的および非保存的変異のためのガイドラインを用いて作成することができる。これらには、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング、およびPCR突然変異誘発が含まれる。
【0077】
連続した配列に沿った1つまたは複数のアミノ酸を同定するために、スキャニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャニングアミノ酸は、比較的小さく、中性のアミノ酸である。このようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリンおよびシステインが含まれる。アラニンはベータ炭素を越える側鎖を排除し、変異体の主鎖立体構造を変化させにくいので、このグループの中で典型的に好ましいスキャニングアミノ酸である(Cunninghamら、Science、1989年、244巻:1081頁)。また、アラニンは、最も多いアミノ酸であるので通常好適である。さらに、アラニンは埋もれたおよび露出した位置での双方に頻繁に見出される(Creighton、The Proteins、(W.H. Freeman & Co.、NY);Chothia、J. Mol. Biol、1976年、150巻:1頁)。
【0078】
本発明の特定のApo2L/TRAIL変異体は、PCT出願公開WO01/00832の表1で提供された1つまたは複数の列挙されたアラニン置換を含むこれら変異体のApo2L/TRAILポリペプチドを含む。このようなApo2L/TRAIL変異体は、典型的には、天然のApo2L/TRAILアミノ酸配列(例えばApo2L/TRAILの完全長もしくは成熟形態またはこれらの細胞外ドメイン配列に関して図1;配列番号1に提供された)とは、少なくとも1つまたは複数のアミノ酸において異なる天然に生じたものではないアミノ酸配列を含む。場合によっては、天然のApo2L/TRAILと比較してApo2L/TRAIL変異体で異なる1つまたは複数のアミノ酸は、WO01/00832の表1に示されているアミノ酸のようなアミノ酸置換(複数可)を含む。本発明のApo2L/TRAIL変異体は、図1(配列番号1)の残基91〜281、92〜281、95〜281または114〜281を含み、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する可溶性のApo2L/TRAIL変異体を含む。好ましいApo2L/TRAIL変異体は、図1(配列番号1)の残基91〜281、92〜281、95〜281または114〜281を含み、受容体結合などの生物学的活性を増強する1つまたは複数のアミノ酸置換を有する変異体を含む。特に好ましい変異体は、図1(配列番号1)の残基114〜281を含む。ある特定の実施形態では、Apo−2L/TRAILは、図1(配列番号1)の残基114〜281からなる。
【0079】
2001年1月4日に公開のWO01/00832に記載されたように、Apo2L/TRAILの細胞外ドメインのX線結晶構造を同定し、アラニンスキャニング突然変異誘発を実施してそのレセプター接触領域のマッピングを提供した。Apo2L/TRAIL対して得られた構造は、Apo2L/TRAIL三量体分子の3つのサブユニットの相互作用をコーディネートする新規な二価金属イオン(亜鉛)結合部位を含むホモ三量体タンパク質を明らかにした。TNFファミリーの他メンバーのように、Apo2L/TRAILは、約5100平方オングストローム(単量体当たり1700平方オングストローム)を埋めて球状三量体を形成する3つのゼリーロール単量体から形成されたコンパクトな三量体を含むと思われる。コアのベータ鎖の位置は、TNF−アルファまたはTNF−ベータのコア鎖と比較した場合、TNFファミリーの他の構造的に特徴づけられたメンバーのTNF−アルファ、TNF−ベータ、およびCD40Lと比較して良好に保存されていた。
【0080】
また、本発明の範囲内に含まれるApo2L/TRAIL配列の変異は、アミノ末端誘導体または改変された形態に関連している。このようなApo2L/TRAIL配列は、ポリペプチド配列のN末端にメチオニンまたは修飾されたメチオニン(例えばホルミルメチオニルまたは他のブロックされたメチオニル種)を有する本明細書に記載された任意のApo2L/TRAILポリペプチドを含み得る。
【0081】
天然または変異体Apo2L/TRAILをコードする核酸(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクターに挿入することができる。様々なベクターが一般に利用することができる。ベクター成分には、一般に、これらに限定はされるものではないが、次のものの1つまたは複数が含まれる。すなわち1つのシグナル配列、1つの複製開始点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、1つのエンハンサーエレメント、1つのプロモーター、および1つの転写終結配列であり、そのそれぞれを以下に記載する。使用され得る任意のシグナル配列、複製開始点、マーカー遺伝子、エンハンサーエレメントおよび転写終結配列は、当該技術分野で公知であり、さらに詳細にPCT国際公開番号WO97/25428に記載されている。
【0082】
発現およびクローニングベクターは、通常、宿主生物により認識され、Apo2L/TRAIL核酸配列に作動可能に結合されているプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)(一般に約100〜1000塩基対の範囲内で)に位置するApo2L/TRAIL核酸配列などの特定の核酸配列の転写および翻訳を制御する翻訳されない配列であり、この特定の核酸配列に作動可能に結合されている。このようなプロモーターは、典型的には、誘導性および構成的な2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターとは、培養条件の何らかの変化、例えば、栄養素の有無または温度変化に反応して、その制御の下でDNAからの転写のレベルの増加を開始させるプロモーターである。現時点において、種々の潜在的な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。これらのプロモーターは、制限酵素の消化により供給源のDNAからプロモーターを取りはずし、単離したプロモーター配列をベクターに挿入することにより、Apo2L/TRAILをコードするDNAに作動可能に結合されている。天然のApo2L/TRAILプロモーター配列および多くの異種のプロモーターのどちらも、Apo2L/TRAIL DNAの直接的増幅および/または発現に用いることができる。
【0083】
原核生物および真核生物宿主での使用に適したプロモーターが当該技術分野で公知であり、さらに詳細にPCT国際公開番号WO97/25428に記載されている。
【0084】
大腸菌での可溶性Apo2L/TRAILの産生のための好ましい方法では、生成物の発現を調節するために、誘導性プロモーターが使用される。制御可能な誘導性プロモーターを使用することにより、生成物の発現が誘導されて宿主が許容できないかなりの量の生成物が蓄積する前に、望ましい細胞密度にまで培養を増殖することができる。
【0085】
様々な誘導性プロモーター系(T7ポリメラーゼ、trpおよびアルカリホスファターゼ(AP)を含む)が、Apo2L/TRAIL(アミノ酸114〜281)の発現に対して、本出願人により評価されている。T7ポリメラーゼ、trpおよびアルカリホスファターゼプロモーターのそれぞれを使用することで、可溶性で生物学的に活性なApo2L/TRAIL三量体のかなりの量が、収集した細胞ペーストから回収される結果をもたらした。他の任意のプロモーターは、グリセリンリン酸プロモーター系である。
【0086】
1つまたは複数の上に列挙した構成成分を有する適切なベクターの構築には、標準的なライゲーション技術を使用する。単離したプラスミドまたはDNAフラグメントを、必要とされるプラスミドを作成するために所望の形態に、切断し、調整し、再度ライゲーションする。
【0087】
構築されたプラスミド中の正しい配列を確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて大腸菌K12株294(ATCC 31,446)を形質転換し、必要に応じて、合格した形質転換体をアンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により選択できる。形質転換体からのプラスミドを、調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、および/または当該技術分野で公知の標準的な技術を用いて配列を決定する(例えば、Messingら、Nucleic Acids Res、1981年、9巻:309頁;Maxamら、Methods in Enzymology、1980年、65巻:499頁を参照のこと)。
【0088】
Apo2L/TRAILをコードするDNAについて哺乳動物細胞で一過性発現をもたらす発現ベクターを使用することができる。一般に、一過性発現は宿主細胞が発現ベクターの多数のコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによりコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効率的に複製できる発現ベクターを使用することを含む(Sambrookら、上掲)。適切な発現ベクターおよび宿主細胞を含む一過性発現系は、クローン化DNAによりコードされたポリペプチドの簡便でポジティブな同定、ならびに所望の生物学的または生理学的な特性に関するこのようなポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、本発明において一過性発現系は、生物学的に活性なApo2L/TRAILであるApo2L/TRAILのアナログおよび変異体を同定する目的のために特に有用である。
【0089】
組換え脊椎動物細胞培養でApo2L/TRAILの合成に適合させるために適切な他の方法、ベクター、および宿主細胞は、Gethingら、Nature、1981年、293巻:620〜625頁;Manteiら、Nature、1979年、281巻:40〜46頁;EP117,060;およびEP117,058に記載されている。
【0090】
本明細書のベクター中のDNAのクローニングまたは発現に適切な宿主細胞には、原核生物、酵母、または高等真核細胞が含まれる。この目的のために適切な原核生物には、限定されるものではないが、グラム陰性菌またはグラム陽性菌などの真正細菌、例えば、大腸菌属などの腸内細菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばSalmonella typhimurium、セラチア属、例えばSerratia marcescans、および赤痢菌属、ならびにバシラス属例えばB.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266,710に開示されたB.licheniformis 41P)、シュードモナス属例えばP.aeruginosa、およびストレプトマイセス属が含まれる。宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するのが好ましい。
【0091】
大腸菌が、本発明で使用するために好ましい宿主細胞である。大腸菌は、グリコシル化の必要がない大きさが20kd以下のポリペプチドであるApo2L/TRAIL(図1のアミノ酸114〜281を含む)の発現に特に適している。産生宿主として、大腸菌は比較的高い細胞密度まで培養することができ、比較的高いレベルの異種タンパク質を産生できる。
【0092】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、Apo2L/TRAILコードベクターのための適切なクローニングまたは発現宿主である。グリコシル化されたApo2L/TRAILの発現のための適切な宿主細胞は、多細胞生物から得られる。CHO細胞を含むすべてのこのような宿主細胞の具体例は、さらにPCT国際公開番号WO97/25428に記載されている。
【0093】
宿主細胞を、Apo2L/TRAIL産生のための上記の発現またはクローニングベクターでトランスフェクションおよび好ましくは形質転換して、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された栄養培地で培養する。
【0094】
トランスフェクションは、任意のコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。多数のトランスフェクションの方法、例えば、CaPOおよびエレクトロポレーションが当業者に知られている。良好なトランスフェクションは、一般にこのベクターが作動した任意の指標が宿主細胞中で生じる場合に認識される。
【0095】
形質転換とは、染色体外因子としてか、または染色体成分によるかのいずれかで、DNAが複製可能であるように生物にDNAを導入することを意味する。形質転換は、用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に適切な標準的な技術を用いて行われる。上掲のSambrookらに記載されたような塩化カルシウムを用いるカルシウム処理、またはエレクトロポレーションが、一般に原核生物あるいは実質的な細胞壁障壁を有する他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウムチュメファシエンス(Agrobacterium
tumefaciens)による感染が、(Shawら、Gene、1983年、23巻:315頁およびPCT国際公開番号WO89/05859に)記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。さらに、植物に1991年1月10日に公開のPCT国際公開番号WO91/00358の超音波処理を用いてトランスフェクションすることができる。
【0096】
このような細胞壁のない哺乳動物細胞に対しては、リン酸カルシウム沈殿法(Grahamおよびvan der Eb、Virology、1978年、52巻:456〜457頁)を用いることができる。哺乳動物細胞宿主系形質転換の一般的な側面については、米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母への形質転換は、典型的には、Van Solingenら、J. Bact、1977年、130巻:946頁およびHsiaoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1979年、76巻:3829頁の方法に従って実施する。しかし、細胞にDNAを導入する他の方法、例えば核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞またはポリカチオン、例えば、ポリブレン、ポリオルニチンを用いる細菌のプロトプラスト融合による方法も用いることができる。哺乳動物細胞を形質転換するための様々な技術については、Keownら、Methods in Enzymology、1990年、185巻:527〜537頁およびMansourら、Nature、1988年、336巻:348〜352頁を参照のこと。
【0097】
Apo2L/TRAILの産生に用いる原核細胞は、上掲のSambrookらに一般に記載されるように適切な培地で培養することができる。大腸菌の培養に用い得る特定の形態の培地は、さらにPCT出願WO01/00832に記載されている。特に好ましいプロセスにおいて、大腸菌で産生されたAPO2L/TRAIL(図1のアミノ酸114〜281を含む)は、亜鉛供給およびグリセロリン酸を用いて発酵させる。発酵のタイターは、約4から約6g/lの範囲に及ぶのが好ましい。
【0098】
Apo2L/TRAILの産生に用いられる哺乳動物宿主細胞は、種々の培地で培養することができる。
【0099】
市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地(「MEM」、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ(Dulbecco)の改良イーグル培地(「DMEM」、Sigma)が含まれる。このような培地はいずれも、必要に応じてホルモンおよび/または他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、または上皮細胞成長因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシン(商標)薬)、微量元素(最終濃度が通常マイクロモルの範囲で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補充することができる。任意の他の必要なサプリメントもまた、当業者には周知の適切な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pHなどは、発現に対して選択された宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0100】
一般に、哺乳動物細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、および実用的な技術は、Mammalian Cell Biotechnology:A Practical Approach、M. Butler編(IRL Press、1991年)において見出すことができる。
【0101】
Apo2L/TRAILの発現は、本明細書で提供された配列に基づく適切に標識したプローブを用いて、例えば、通常のサザンブロッティング法、mRNAの転写を定量するノーザンブロッティング法(Thomas、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1980年、77巻:5201〜5205頁)、ドットブロット法(DNA分析)、またはin situハイブリダイゼーション法により、直接的に試料で測定することができる。様々な標識を用いることができ、最も一般的には放射性同位体、そして特に32Pである。しかし、ポリヌクレオチドへの導入のためにビオチン修飾ヌクレオチド用いるような、他の技術も用いることができる。次いでこのビオチンは、放射性ヌクレオチド、蛍光剤または酵素などの様々な標識で標識され得るアビジンまたは抗体に結合する部位として機能する。あるいは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖またはDNA−タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識できる抗体を用いることもできる。次に抗体を標識し、二重鎖が表面に結合している場合、その表面上に二重鎖が形成した時点で、二重鎖に結合した抗体の存在を検出することができるようにアッセイを実施し得る。
【0102】
あるいは、遺伝子発現を、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞もしくは組織切片の免疫組織化学的な染色および細胞培養もしくは体液のアッセイにより測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料は、典型的には、脱水および固定、続いて結合した遺伝子産物に特異的な標識抗体との反応により調製され、標識は通常視覚的に検出可能であり、例えば酵素標識、蛍光標識、ルミネセンス標識などである。
【0103】
試料液の免疫組織化学的染色および/またはアッセイに有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれであってもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は天然のApo2L/TRAILポリペプチドに対して、または本明細書で提供されたDNA配列に基づく合成ペプチドに対して、またはApo2L/TRAIL DNAに融合され、特異的抗体エピトープをコードする外来性の配列に対して調製することができる。
【0104】
Apo−2Lのポリペプチドは、1つまたは複数の化学基に共有結合で結合(以下「コンジュゲートされた(conjugated)」)できる。Apo−2Lのコンジュゲート体での使用に適する化学基は、有意に毒性または免疫原性でないものが好ましい。ポリペプチドにコンジュゲートされ得る様々な例示的な化学基が当分野で知られており、例えば天然に糖タンパク質に存在する炭水化物のような炭水化物、ポリグルタメート、およびポリオールのような非タンパク質様ポリマーが含まれる(例えば、米国特許第6,245,901号を参照のこと)。
【0105】
例えばポリオールは、上掲のWO93/00109に開示されているように、リジン残基を含む1つまたは複数のアミノ酸残基において、Apo−2Lのようなポリペプチドにコンジュゲートできる。用いられるポリオールは、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖または分枝鎖を有し得る。適切なポリオールには、1つまたは複数のヒドロキシル位置で、1つから4つの炭素を有するアルキル基などの化学基で置換されたポリオールが含まれる。典型的には、ポリオールは、ポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)であり、したがって、記載の簡略化のために以下の議論においては、用いたポリオールがPEGである例示的な実施形態に関するものとし、ポリペプチドにポリオールをコンジュゲートするプロセスを「ペグ化(pegylation)」と称する。しかし、当業者であれば、他のポリオール、例えばポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレンポリプロピレングリコールコポリマーを、PEGに対して本明細書に記載されたコンジュゲート技術を利用して用いることができることを理解するであろう。
【0106】
Apo−2Lのペグ化に用いられるPEGの平均分子量は変動でき、典型的には、約500から約30,000のダルトン(D)まで変動し得る。好ましくは、PEGの平均分子量は、約1,000から約25,000Dであり、より好ましくは、約1,000から約5,000Dである。1つの実施形態では、ペグ化は約1,000Dの平均分子量を有するPEGを用いて実施する。場合によっては、PEGホモポリマーは非置換であるが、一端がアルキル基で置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基は、C1〜C4アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。PEG調製物は商業的に入手可能であり、典型的には本発明での使用に適するこれらのPEG調製物は、平均分子量毎に販売されている非均質な調製物である。場合によっては、Apo−2Lの三量体は、PEG分子が三量体のApo−2Lを構成する3つの単量体の1つ、2つまたはそれぞれに結合またはコンジュゲートされるような形でペグ化される。このような実施形態では、用いられるPEGは約1,000から約5,000Dの平均分子量を有するのが好ましい。Apo−2Lの三量体は「部分的に」ペグ化され得、すなわち、三量体を構成する3つの単量体のただ1つまたは2つだけがPEGに結合またはコンジュゲートされていることも考えられる。
【0107】
タンパク質をペグ化するための様々な方法が当該技術分野で知られている。PEGにコンジュゲートされたタンパク質を産生する特定の方法には、米国特許第4,179,337号、米国特許第4,935,465号および米国特許第5,849,535号に記載された方法が含まれる。典型的には、主として反応条件、ポリマーの分子量などに応じて、タンパク質はそのタンパク質の1つまたは複数のアミノ酸残基を介して、ポリマーの末端反応性基に共有結合で結合している。反応性基(複数可)を有するポリマーは、本明細書では活性化ポリマーと命名する。反応性基は、タンパク質の遊離のアミノまたは他の反応性基と選択的に反応する。PEGポリマーは、ランダムな様式または部位特異的な様式のいずれかでタンパク質のアミノまたは他の反応性基に結合できる。
【0108】
B.2 Apo2L/TRAILの結晶化
結晶化は、低分子の精製に広く使われている。しかし、一般に結晶化技術は、例えば、溶解度、核形成および成長速度、および結晶の粒度分布(それぞれがさらなるパラメータ、例えば溶解度、温度、pH、緩衝液、不純物などの関数である)を含む多様なパラメータがタンパク質結晶化に影響を及ぼす可能性があるため、タンパク質に対しては広範に利用されていなかった。タンパク質は一般に低分子よりも結晶化させるのが困難なため、現在まで治療用タンパク質の回収および精製には、結晶化工程(複数可)がほとんど含まれていない。
【0109】
本出願人は、驚くべきことに、5℃で固体状態のApo2L/TRAILタンパク質は、中等度から低いイオン強度の条件下において結晶であり、同様の条件下で可溶性またはアモルファス析出物を生ずる当該技術分野で公知の多くの他のタンパク質とは異なることを見出した。さらに、Apo2L/TRAIL結晶の固体状態は、周囲温度(すなわち室温)に移したとき、タンパク質の生物学的活性の減少またはタンパク質の生化学的性質に及ぼす有害な作用を伴わないで可逆的に可溶化することが見出された。この観察は、当該技術分野で公知の他のタンパク質に対して観察された変性または不可逆的な析出とはまったく異なっていた。
【0110】
場合によっては、Apo2L/TRAILの結晶は、Apo−2L/TRAILタンパク質の過飽和溶液を約20〜約30℃から約15℃より低く、好ましくは約2から8℃に、より好ましくは約2〜8℃より低く、さらにより好ましくは約4℃より低く、最も好ましくは約2〜4℃に冷却することにより調製される。場合によっては、自発的な結晶化を起こさせるために、Apo2L/TRAIL濃度が3g/Lを超えることができる。低いタンパク質濃度において、逆溶剤を自発的な結晶化を起こさせるために用いることができる。結晶化は、数ミリリットルから数百リットルの溶液までの広範囲な規模でバッチ処理またはセミバッチ処理で実施することができる。結晶化速度は、プログラムされた冷却および攪拌により制御することができる。装置は、限定されるものではないが、表面および/または内部の温度調節を備えた攪拌または静置タンクを含み得る。内部のバッフルおよびドラフトチューブもまた、攪拌タンク中の混合を高めるために使用され得る。また結晶核形成は、シーディングによっても制御することができる[Moore、AlChE Practical Engineering Perspectives、Distillation and Other Industrial Separations、239〜245頁]。いくつかあるパラメータの中で過飽和の程度、塩組成、冷却速度、攪拌速度、およびシーディングが、結晶の形成速度、結晶の粒度分布、および結晶の収量に影響を及ぼす可能性がある。
【0111】
場合によっては、結晶を調製するためにApo−2L/TRAILタンパク質溶液は、硫酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムを含む。場合によっては、この塩濃度は、約100mM〜約200mMであり、場合によっては、pHは約6〜約9(好ましくは、pHは約6.5〜約8.5)である。
【0112】
B.3 APO2L/TRAILの回収および精製における結晶化の利用
本発明の方法において、結晶化はApo2L/TRAILの回収および精製における工程であり、場合によってはApo2L/TRAILの回収および精製のための1−カラムまたは2−カラムスキームの工程である。
【0113】
特定の実施形態では、Apo2L/TRAILは、組換え型宿主培養もしくは細胞溶解物から精製されるか、または結晶化工程を含む精製プロセスを用いて細胞溶解物を清澄化する。Apo2L/TRAILが大腸菌で産生される場合、典型的には、細胞培養培地全体を採取し、大腸菌細胞をホモジナイズして破壊し、細胞質中の可溶性Apo2L/TRAILを放出させる。固形残屑を、例えば遠心分離により除去後、混合物をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂、例えばSP−Sepharose Fast Flow またはCM−Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia、Sweden)にロードする。大腸菌の発酵により得られた細胞培養培地からApo2L/TRAILを精製するための典型的なプロトコルは、実施例2および3で提供される。
【0114】
典型的なプロトコルでは、大腸菌細胞の発酵により得られた細胞培養培地全体のpHを、例えばHEPESナトリウムまたは他の任意の適切な緩衝液の添加により約7.5に調整する。好ましくは、還元剤、例えば1,4−ジチオ−トレイトール(DTT)またはβ−メルカプトエタノールを添加して、Apo2L/TRAILの非共有結合で結合した単量体間のジスルフィド結合の形成を妨げる。市販の高圧ホモジナイザー中を1回または複数回通過させて細胞を押し破り、細胞残渣を除去して細胞溶解物を清澄化する。特定の処理パラメータ、例えば試薬の選択および濃度は、出発の全細胞培養培地の組成、例えば細胞密度に依存する。
【0115】
Apo2L/TRAIL含有混合物、例えば清澄化した細胞溶解物を、次いでカチオン交換樹脂を用いる第1のクロマトグラフィーカラムにロードする。カチオン交換クロマトグラフィーでは、樹脂の表面上で性質が酸性である荷電基の相互作用により、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンを有する生体分子が保持される。カチオン交換樹脂は、様々な製造業者の製品ライン、例えばSigma Aldrichから商業的に入手可能である。カチオン交換体には、例えば、カルボキシメチル官能基を持つ樹脂(弱いカチオン交換体、例えば、CM セルロース/Sephadex)またはスルホン酸官能基(強いカチオン交換体、例えば、SP Sephadex)が含まれる。本発明の方法の第1のクロマトグラフィー精製工程には、強いカチオン交換カラム、例えばSP−Sepharose(登録商標)、Spectra/Gel(登録商標)強カチオン交換体など、TSKgel強カチオン交換体などが好ましい。SP−Sepharose(登録商標)カラムの場合、負に荷電する官能基を有する架橋結合アガロースマトリックスは、Apo2L/TRAILに結合するが、大部分の不純物およびApo2L/TRAIL変異体はカラムの中を通過する。溶出は、塩濃度勾配溶出または段階溶出を用いて実施でき、段階溶出は収量を損なわないでその後の結晶化段階に良好な条件を提供するので、段階溶出が好ましい。溶出緩衝液は、通常、塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを含み、塩濃度はカチオン交換カラムおよびその後の結晶化段階に必要な条件を満たすように選択される。SP−Sepharose(登録商標)カラムは、結合したApo2L/TRAILタンパク質を取り出すために、かなり高い塩濃度を必要とするが、その後の結晶化段階に対しては、タンパク質の溶解度を低下させるために比較的低い塩濃度が好ましい。典型的には、約100〜150mM NaSOまたは100〜200mM NaClの濃度が使用される。典型的な溶出緩衝液は、200mM NaCl、50mM HEPES、0.05%Triton X−100、1mM DTT、pH7.5からなっている。
【0116】
カチオン交換、例えばSP−Sepharose(登録商標)溶出プールにおけるApo2L/TRAILの濃度が、次の結晶化段階の理論収率に影響を与える。濃度は低温での溶解度差を最大にするために十分に高くなければならないが、しかし、あまり高すぎて室温またはその付近で自発的結晶化を誘発してはならない。
【0117】
代表的なプロトコルでは、Apo2L/TRAILタンパク質のロードと溶出の間に2つの洗浄段階が用いられる。第1の洗浄には、平衡緩衝液を使用し、第2の洗浄には、より低い塩濃度(例えば200mM NaClの代わりに100mM NaCl)を用いること以外はその後の溶出緩衝液と同一の緩衝液を用いる塩洗浄である。
【0118】
2つの洗浄段階を含むSPの溶出段階で、典型的には、3〜6g/L前後、例えば約5g/L Apo2L/TRAIL濃度が生じ、収量は約80〜90%である。塩洗浄段階で活性タンパク質の減少が生じる。したがって、この段階を除くことにより、収量を95%以上に増加することができる。しかし、この段階を除くと、エンドトキシンおよび細胞外タンパク質を取り除くカラムの能力も減少し、そのために純度が低下する。
【0119】
カチオン交換カラムから出した溶出プールは、それ以上追加の精製段階なしに直接結晶化に供するが、場合によっては無菌滅菌を含む。結晶化は、典型的には、60時間にも及ぶ長さに拡張できるが、典型的にはもっと短い、例えば約1〜8時間の時間枠で、約15〜30℃から約2〜8℃まで温度を徐々に低下させることにより実施する。
【0120】
典型的な結晶化プロセスにおいて、カチオン交換カラムから出した溶出プールは、適切な攪拌を備えている温度制御されたタンクに移される。結晶化速度に影響を与える固体微粒子に基づく核形成を避けるために、容器およびタンパク質溶液には、結晶化の前にいかなるそのような微粒子も存在しないことを確認することが重要である。小規模な用途のためには、例えば、1または2リットルのApplikon(登録商標)反応容器が使用できる。1Lの容器では、容器に差し込まれた冷却コイルを介して温度が制御される。2Lの反応容器は熱交換ジャケットを有する。プログラム可能な熱交換槽(例えば、PolyScience Programmable Temperature Circulator Model 1157)を使用することにより、両方の容器で直線的な温度スロープを作り出すことができる。容器は、通常、十分に溶液を混合するための攪拌機を備えており、一度形成された結晶を懸濁する。攪拌速度は、典型的には0.4Lの規模に対して約250rpmであり、N/Vに比例した容積比に対して一定の能力を保持することにより、より大きなプールに対してはスケールアップされる(定直径攪拌機)。
【0121】
Apo2L/TRAILの溶解度は塩濃度の増加とともに増加し、Apo2L/TRAILは、硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム中でほぼ同程度に可溶性であることが分かった。塩化ナトリウム中で形成された結晶は、外観上はより平坦である硫酸ナトリウム中で形成された結晶と比べて、より肥大した厚みを有する。その結果、塩化ナトリウム中で作り出された結晶は濾過による分離がより容易であり、これが塩化ナトリウムを好ましい塩にしている。バックグラウンド緩衝液として、HEPESおよびTRISは典型的には、同等の結果を与える。
【0122】
Apo2L/TRAIL溶解度は、約pH7.0および8.0の範囲内でpHの増加とともに減少する。より高いpHでは、収量が増加する傾向があるが、外観上、結晶をよりアモルファスにする。さらに、結晶はpHが高くなれば大きくなるが、また壊れやすくもなる。これらの点を考慮した、所望の結晶形態を作り出す好ましいpHは7.3±0.1である。
【0123】
結晶化の間に用いられた温度スロープ(典型的には、周囲温度付近からから約2℃まで)は、約1時間および24時間の間での平均結晶サイズまたは粒度分布に及ぼす有意な効果を有していなかった。温度スロープは直線的であり得るが、結晶化の進行につれて一定の過飽和レベルを維持することにより非直線的冷却速度もさらに結晶サイズプロフィールを改善するために使用され得る。Apo2L/TRAILは、温度が約8℃以下に、好ましくは約5℃よりも低くなるまで、本発明の緩衝液系では自発的に結晶化しないため、急速に温度を約10℃に下げ、それからゆっくりとプールを冷やして結晶化させることは可能である。
【0124】
結晶サイズは、攪拌の速度に影響を受ける。3つの異なる攪拌速度(100rpm、175rpmおよび250rpm)で試験することにより、結晶化は、最大の攪拌速度で最も速いが、結晶の粒度分布および結晶の外観は175rpmおよび250rpmの攪拌速度については非常に類似していることが見出された。より低い速度では、結晶は完全には懸濁されないで、結晶の凝集が起こる可能性がある。より高い攪拌速度では、空気/液体界面で剪断効果にさらされることにより可溶タンパク質が損傷しないように配慮しなければならない。
【0125】
結晶化効率は、Apo2L/TRAILの溶解度を低下させることにより改善される可能性がある。したがって、結晶化段階での総収量は、第1のカチオン交換クロマトグラフィーカラムから収集された冷却したプール中でのApo2L/TRAILの溶解度により、部分的には制御されている。収量に影響を及ぼす2つの要素は、第1のカチオン交換クロマトグラフィーカラム(例えばSPカラム)から収集された溶出プール中のApo2L/TRAILの初期濃度および結晶スラリー中の可溶性Apo2L/TRAILの濃度(すなわち、結晶化しないApo2L/TRAILの量)である。結晶化後に溶液中にまだ存在するApo2L/TRAILは、濾過の間に失われる。貧溶媒の添加により、溶液化学を変えて平衡溶解度を低下させることができる。すなわち、
パーセント理論収率=[Apo2L]22C−[Apo2L]4C/[aPO2I]22C×100
ここで下つき添字の数は、温度値を示す。
【0126】
溶液中のApo2L/TRAILを減少させることにより、母液が濾過されるときの除去されるタンパク質が少なくなる。貧溶媒、別名沈殿剤は、当該技術分野で周知であり、様々な形で機能できる。いくつかの貧溶媒は、水を吸収することにより、溶液から水分を奪う。この貧溶媒は、本質的にタンパク質の溶解に利用できる水の活性を減少させる(例えば、McPherson、A.、1998年、Crystallization of
Biological Macromolecules. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Plainview NYを参照のこと)。
【0127】
広く使われている貧溶媒は、様々な分子量で利用可能なポリマーのポリエチレングリコール(PEG)である。本発明の方法における実施例で示すように、PEGの分子量が高い(3350および10000)ほど、優れた結果をもたらした。貧溶媒として使用できる他のポリマーには、例えば、Eudragit RS、エチルセルロース、イソプロピルアルコール、エタノール、ジオキサン、および2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)が含まれる。
【0128】
結晶化が完全な場合、Apo2L/TRAILの結晶は、例えば濾過により取り出される。結晶は内蔵攪拌機を用いて濾過する間、懸濁された状態のままに保ち得るか、または充填層中に析出できる。所望の流量の達成を困難にする可能性のある圧縮された結晶ケーキの形成を防ぐことが重要である。したがって、充填層全体の圧力差を、最小限に抑えられなければならない。流量は変動でき、典型的には、約200cm/時間および約100cm/時間の間である。流量は、使用される器材および濾過の間に適用される圧力差に依存し得る。濾過は、バッチ式または連続的に実施され得る。さらなる精製は、例えば、Apo2L/TRAIL結晶を実質的に溶解しない溶液、例えば約pH7.5の低モル濃度TRIS冷却溶液(2〜8℃)で、析出した結晶の層を洗浄することにより達成できる。
【0129】
結晶化および分離の後、Apo2L/TRAIL結晶は溶解および保存または意図する用途に適した製剤に変換することができる。
【0130】
あるいは、貧溶媒(PEG)の残渣および緩衝液成分を除去することにより、さらに純度を高めるために、さらなるクロマトグラフィー精製工程を追加することができ、残留する細胞外タンパク質、エンドトキシン、二量体、および凝集体の濃度を減少することができる。結晶化後に用いる第2のクロマトグラフィーカラムは、カチオン交換カラムまたは疎水性相互作用カラムであり得る。結晶化プールは非常に純粋なので、典型的には、結合−および−溶出分離様式(例えば典型的には、SP−SepharoseまたはCM−Sepharoseが用いられる)を使用する必要はなく、典型的にはフロースルーカラム、例えばフェニルセファロースHIC樹脂が良好な性能を示す。結合−および−溶出様式でのカチオン交換およびフロースルー様式でのHICの両タイプの樹脂の使用を試験し、その結果を実施例で検討している。結合および段階溶出クロマトグラフィー工程は、最初の精製のための非常に強力な手段を提供するのに対して、第2のクロマトグラフィー精製工程でのフェニル−セファロースの疎水性相互作用クロマトグラフィーは、所望の純度および収量を与えるのに十分であることが分かった。このクロマトグラフィーはフロースルー工程であるため、優れた収量を与え、結合および溶出クロマトグラフィーと比べて操作を完了するのに必要な溶液の数を減少させる。
【0131】
B.4 Apo2L/TRAILの使用
本発明の方法は、例えば、複数のカラム精製を必要とする精製プロトコルに対する効果的、効率的、および低コストの代替法を提供する。上記のように、1つの実施形態では、本発明の精製スキームは、カチオン交換カラムを1回使用し、これに引き続く結晶化を含んでいる。本発明の方法により得られたApo2L/TRAIL結晶は、貯蔵のために乾燥することができる。また、結晶性物質を乾燥させることは、貯蔵容積を大幅に減少させることができ、製剤溶液において低濃度で精製物質を冷凍することを回避できる大量貯蔵の有効な手段を提供する。非常に高いタンパク質濃度での結晶スラリーは、より小容積の容器内に冷凍することができる。
【0132】
別の実施形態においては、Apo2L/TRAIL結晶を収集し、緩衝液(または水)(好ましくは温度が約2から8℃の冷緩衝液)で洗浄する。洗浄した結晶は、周囲温度で再懸濁または再融解することができる。再可溶化したApo2L/TRAILは、上記のように疎水性相互作用クロマトグラフィーまたはカチオン交換クロマトグラフィーの第2の工程によりさらに精製し、再結晶化し、洗浄して湿性の結晶バルク物質として貯蔵することができる。あるいは、疎水性相互作用または他のクロマトグラフィー工程は、簡単な再結晶化の方が有利であるために省略することができる。
【0133】
湿性の結晶バルク物質は、−20℃で貯蔵または周囲温度(室温)または2〜8℃で貯蔵のために乾燥することができる。乾燥した結晶性物質は、コハク酸アルギニン含有製剤で再可溶化されるのが好ましい。場合によっては、このような製剤は無菌濾過されるか、および/または個々の投薬バイアルに充填されるか、その後の再構成または懸濁のために凍結乾燥することができる。場合によっては、乾燥した結晶製剤は、バイアルに粉末として充填することもできるし、溶液または懸濁液にすることもできる。乾燥したApo2L/TRAIL結晶では、約5%から約10%の含水量を達成するのが望ましい。
【0134】
Apo2L/TRAIL製剤は、種々の治療的および非治療的用途に用いることができる。これらの用途の中には、疾患、例えば癌、免疫関連症状、またはウイルス性症状を治療する方法がある。このような治療的および非治療的用途は、さらに、例えばWO97/25428、WO97/01633、およびWO01/22987に記載されている。
【0135】
本明細書で開示された製剤を用いて疾患を治療する本発明の方法では、Apo2L/TRAIL製剤を、注入または注射を含む任意の適切な技術により、哺乳動物に直接投与することができる。特定の投与経路は、例えば、Apo2L/TRAILの使用による、知覚または予想される任意の副作用を含む患者の病歴および是正する特定の疾患に依存するであろう。非経口投与の例には、組成物の皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、および腹腔内投与が含まれる。製剤は、好ましくは静脈内(静注)、皮下(s.c.)、筋肉内(筋注)の繰り返し注射もしくは注入、頭蓋内注入または鼻腔内もしくは肺内送達に適したエアゾール製剤として投与される(肺内送達については、例えばEP257,956を参照)。
【0136】
注射液の浸透圧が、皮下および筋肉内注射で重要であり得ることに留意されたい。注射用溶液が低張または高張であると、注入時に患者に痛みが生じるおそれがある。通常、本明細書での治療用の注射用製剤には、注射用溶液の相対浸透圧が約300mosmから約600mosmであるのが好ましい。
【0137】
また、Apo2L/TRAILは、徐放性製剤の形態で投与することもができる。徐放性製剤の適切な例には、タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、セルロース誘導体、(例えば、カルボキシメチルセルロース)、非水溶媒体中のスクロースアセテートイソブチレート(SABER(商標))、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langerら、J. Biomed. Mater. Res、1981年、15巻:167〜277頁;Langer、Chem. Tech、1982年、12巻:98〜105頁またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers、1983年、22巻:547〜556頁)、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langerら、上掲)、分解可能な乳酸グリコール酸コポリマー、例えばLupron Depot(乳酸グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用マイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が含まれる。全身作用性薬剤を送達する1つの任意の方法には、連続注入(例えば、浸透ポンプもしくは皮膚パッチなどの徐放性装置もしくはミニポンプを使用して)、または注射(例えば、単回のボーラス投与を含む静脈内もしくは皮下手段を使用して)による投与が含まれる。
【0138】
治療で使用される組成物は、個々の患者の臨床的状態、組成物の送達部位、投与方法、投与スケジュール、実務者に公知の他の要因を考慮に入れ、良好な医療行為に矛盾することのない様式で処方され、投薬されるであろう。したがって、本明細書の目的に対するそれぞれの成分の「有効量」は、このような考慮により決定され、哺乳動物に対するApo2L/TRAILまたは他の薬剤の生体有用性をもたらす量である。
【0139】
一般的な提案として、投与されるApo2L/TRAILポリペプチドの全薬学的有効量は、患者体重のkgに基づき、約1mg/kg/日から約20mg/kg/日までの範囲であるが、先に言及したようにこの有効量は治療的裁量に従うであろう。
【0140】
注射が好ましいが、連続注入のための注入装置を使用してもよい。また、静脈注射バッグ溶液を使用してもよい。
【0141】
本方法において、さらに付加的な治療法が用い得ることが企図される。1つまたは複数の他の治療法には、限定されるものではないが、放射線治療、サイトカイン(複数可)、増殖阻害性剤(複数可)、化学療法剤(複数可)、細胞毒性剤(複数可)、チロシンキナーゼインヒビター、ラスファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、血管形成インヒビター、およびサイクリン依存性キナーゼインヒビターの投与が含まれ得て、これらは当該技術分野で公知であり、上記のセクションIに詳細に記載されている。さらに、治療法は、治療用抗体、例えばRituxan(商標)もしくはHerceptin(商標)、ならびに抗血管新生抗体、例えば抗VEGF、またはApo2Lレセプター、例えばDR5もしくはDR4などの腫瘍抗原を標的にする抗体に基づく。
【0142】
化学療法剤に対する調製法および用量スケジュールは、製造業者の指示に従って使用し得るか、または熟練した実務家により経験的に決定される。このような化学療法に対する調製法および用量スケジュールは、またChemotherapy Service編、M. C. Perry、Williams & Wilkins、Baltimore、MD(1992年)にも記載されている。
【0143】
また他の抗原に対する抗体、例えばCD20、CD11a、CD18、CD40、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、血管内皮因子(VEGF)、または他のTNFRファミリーメンバー(例えばDR4、DR5、OPG、TNFR1、TNFR2)に結合する抗体を投与することも望ましい。別法として、あるいは付加的に、本明細書で開示された同一または2つもしくはそれ以上の異なる抗原に結合する2つもしくはそれ以上の抗体が、患者に同時投与され得る。しばしば、患者に1つまたは複数のサイトカインを投与することも有益である。1つの実施形態では、Apo2L製剤は、増殖阻害剤と同時投与される。
【0144】
Apo2L/TRAIL製剤は、このような他の薬剤と同時または経時的に投与され得る。例えば、Apo2L/TRAIL製剤または化学療法剤は、前処置(任意のこのような他の薬剤の投与前に)として、例えばさもなければApo2L/TRAILのアポトーシス効果に耐性であり得る癌細胞の前処置として投与され得る。
【0145】
また本発明は、本明細書で記載された製剤を含むキットを提供する。典型的なキットは、上述した1つまたは複数の賦形剤中のApo2L/TRAILのための容器、好ましくはバイアル;および使用説明書、例えば使用者にApo2L/TRAIL製剤の使用法を指示する製品挿入物またはラベルを具備する。このキットは、医薬製剤を提供するのが好ましい。好ましくは、医薬製剤は、癌または免疫に関連した症状を治療するためのものである。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の物質から形成することができる。容器は、疾患の診断または治療に対して有効なApo2L/TRAIL製剤を収容し、無菌のアクセスポート(例えば、容器は、静脈注射用溶液バッグ、もしくは皮下注射針により貫通可能なストッパーを具備するバイアルであり得る)を有し得る。容器上または、容器に伴うラベルには、製剤が選択した疾患の診断または治療に使用されることが示されている。この製品は、注射用水、薬剤学的に許容し得る溶液、生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに具備する。他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ、および使用説明書を備えた包装挿入物を含む、商業上および使用者の立場から望ましい他の物質をさらに含むことができる。
【0146】
すべての特許、特許出願、出版物、製品記載、およびプロトコルは、この出願の全体を通して援用され、その開示は、それらのすべてが参考として本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0147】
以下の例は、例示目的のためにのみ提供されるものであって、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実施例で言及されている市販試薬は、特に明記しない限り製造業者の指示に従い使用した。以下の実施例および本明細書の全体を通してATCC登録番号により特定されるこれらの細胞の供給源は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、Manassas、Virginiaである。
【0148】
(実施例1)
大腸菌におけるApo2L/TRA1Lの産生および複数のクロマトグラフィー工程による精製(結晶化を用いない)
A.アミノ酸114〜281(図1を参照)からなるApo2L/TRAILタンパク質を、APプロモーター制御下で大腸菌で発現し(2001年1月4日公開のWO01/00832の実施例8(セクションA)に記載されている調製および発現)、カチオン交換、ヒドロキシアパタイト、および疎水性相互作用クロマトグラフィー(WO01/00832、実施例8、セクションC)からなる3つのクロマトグラフィーの工程により大腸菌細胞溶解物から精製した。第3のクロマトグラフィー分離において、Apo2L/TRAILタンパク質を、600mM硫酸ナトリウムまたは400mM硫酸アンモニウム、50mM Tris、pH7.5で溶出した。
【0149】
B.Apo2L/TRAIL精製の他の方法は、4つのクロマトグラフィー工程および2つの限界濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)工程からなっていた。大腸菌産生工程から得られた全細胞培養培地を、ホモジナイズして大腸菌細胞を破壊し、細胞質内に保持されている可溶性APO2L/TRAILを放出した。次いで固体の細胞残渣を遠心分離により除去した。
【0150】
最初の分離を、カチオン交換(CEX)カラム(SP−Sepharose Fast
Flow column)への結合および勾配溶出により実施した。次いで溶出液を、ヒドロキシアパタイト(HA)クロマトグラフィーカラム、引き続いて疎水性相互作用(フェニル−セファロース)クロマトグラフィーに移した。限界濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)工程の後、混合物をCM−Sepharose Fast Flowカラム上にロードし、溶出したタンパク質を最終のUFDF工程により濃縮した。
【0151】
(実施例2)
1カラム精製に続く回収および精製法としてのApo2L/TRAIL結晶化
硫酸ナトリウム溶液中でのApo2L/TRAILの結晶化の傾向を、大腸菌抽出物からApo2L/TRAILタンパク質を精製する手段として利用した。タンパク質品質に悪影響を与えることなく以下のプロトコルを、組換え型Apo2L/TRAILの回収および精製に使用した。
【0152】
大腸菌から採取した全細胞培養培地(実施例1に記載された)を、1.5M Hepes(または1.5M Tris)でpH7.5に調整し、次いでホモジナイザー(Gaulin corporation、Everett、MA)を用いて、6,500psiでホモジナイズした。ホモジェネートを、純水中5mM DTTで1対1に希釈した。いったん溶液が室温に達すると、5%ポリエチレンイミン(PEI)を最終濃度0.1%を与えるように添加し、溶液を1〜2時間凝集させた。凝集した物質を、BTPX205(Alfa Laval Separation AB、Sweden)連続フィード遠心分離機により遠心分離し、デプス濾過により清澄化した。清澄化した細胞溶解物(抽出物)を、Triton−X100で終濃度0.05%に調整した。次いで調整し清澄化した細胞溶解物を、50mM Hepes(または50mM Tris)/0.05%Triton−X100/1mM DTT、pH7.5で平衡化したカチオン交換カラム(SP−Sepharose FFカチオン交換樹脂、Amersham Pharmacia、Sweden)にロードした。Apo2L/TRAILはカラムに結合するが、非結合タンパク質はカラムを通過して流れ、280nmの吸光度がベースラインに達するまで、平衡緩衝液で洗浄して除去した。次いでカラムを、3カラム容量の平衡緩衝液中の0.1M NaClを用いて洗浄した。Apo2L/TRAILを、それぞれ50mMのHepes、Trisおよびトリエタノールアミン中の0.1M NaCl(または0.1M NaSO)、0.05%Triton−X100および1mM DTT緩衝液、pH7.8を用いて段階溶出した。
【0153】
SPカラムから収集された周囲温度のApo2L/TRAILプールを、加熱冷却保温ジャケット付きステンレス鋼タンクの中に入れた。タンクには結晶化したタンパク質の回収を最大にするために、円錐状底部およびフラッシュボトムバルブを装備した。適度な混合条件下で、マリンタイプ攪拌翼を用いてプールを攪拌した。温度調節スキッドを使用し、1時間にわたり約25℃から約4℃まで直線的に温度勾配をつけた。プールが4℃に到達後、数分以内に自発的な結晶化が観察された。これらの条件下で12時間以上経過後、平衡溶解度がほぼ確立されたときに結晶化が完了した。次いで結晶を、20μmポリプロピレンフリットを含む濾過アセンブリー上に捕獲した。フィルター表面に結晶を沈着後、結晶を冷却した20〜50mM Tris、pH7.5で洗浄した。次いで、Apo2L/TRAILのSPプール容積と同量の洗浄緩衝液を用いて、沈着した結晶から残留母液(上清)を除去した。洗浄後、約30℃で結晶層を通過して溶解緩衝液を再循環させて、結晶を100mM硫酸ナトリウム/20mM Tris、pH7.5に溶解した。結晶の溶解が約4時間以内に観察された。次いで、溶解し精製したApo2L/TRAILを容器中に無菌濾過し、−70℃で冷凍保存した。
【0154】
Apo2L/TRAIL調製の純度を、全大腸菌タンパク質(ECP)ELISAアッセイ、カブトガニアメーバ様細胞溶解物(LAL)アッセイ、およびSDS−PAGE銀染色により測定した。ECP ELISAは、マイクロタイタープレートのウェル上に、アフィニティー精製したヤギ抗−全ECP抗体を固定し、試料をインキュベート後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ECPとインキュベートして実施した。次いでペルオキシダーゼ酵素活性を、o−フェニレンジアミンを用い、マイクロタイタープレートリーダーで490nmの吸光度を読むことにより定量した。エンドトキシン濃度を、カブトガニアメーバ様細胞血餅融解アッセイを用いて測定した。SDS−PAGE銀染色は、0.1%SDS含有Tris−グリシン緩衝液中、10〜20%勾配のポリアクリルアミドゲル(Daiichi Pure Chemicals)上で実施した。電気泳動を、色素の前線がゲルの底部近傍に達するまで50mAの定電流で実施した。ゲルを固定し、クーマシーブリリアントブルーまたはメリル銀染色方法により染色した。
【0155】
タンパク質の品質を、実施例1に記載した方法に従い、SEC SDS−SEC、IEX、および生物活性により評価した。
【0156】
60Lの発酵規模で、上記の結晶化法を用いて回収したApo2L/TRAILの純度および品質を表1に示す。また比較のために、実施例1で記載した3つのクロマトグラフィー工程方法により精製した参照標準物質も示す。
【0157】
【表1】

表1で示すように、製造規模でのApo2L/TRAIL調製物は、治療用途に適した高い純度を有していた。データは、「1−カラム」工程で精製されたApo2L/TRAILタンパク質は、結晶化に敏感に反応し、実施例1に記載した3−カラム精製法により精製したApo2L/TRAILタンパク質に匹敵するか、またはより良好な純度を有することを示している。図3に、1−カラム工程で精製されたApo2L/TRAILの結晶化に及ぼす塩の種類の影響を示している。二価カチオンによる結晶化の「触媒活性低下」が、部分的に精製されたApo2L/TRAILに対して観察された(図3)。
【0158】
また、Apo2L/TRAILの生化学的特性は、部分的に精製されたApo2L/TRAILの結晶化により悪影響を受けなかった(表1を参照)。データは、組換え型で発現したApo2L/TRAILの結晶化が、部分的に精製された状態で、その精製にとって有効で、効率的でコスト効率の良い手段とすることができることを示唆している。場合によっては、次いでそのような結晶を、貯蔵用の乾燥バルクまたは徐放製剤の調製に用いることができる。
【0159】
(実施例3)
結晶化に続く第2のクロマトグラフィー工程を含む結晶化を用いるApo2L/TRAILの回収および精製法(2−カラム精製)
大腸菌から採取した全細胞培養培地(実施例1に記載された)を、1.5M Hepes(または1.5M Tris)でpH7.5に調整した。DTTを5mM添加して、非共有結合で結合した単量体間のジスルフィド結合の形成を阻止した。ホモジナイザー(Gaulin Corporation、Everett、MA)を6,500psiで2回通過させて大腸菌細胞をバーストした。次いで溶解物を、純水中の5mM DTTで1:1に希釈した。いったん溶液が室温に達すると、5%PEIを終濃度0.2%PEIになるように添加した。PEIは細胞固形物のフロキュレーション(flocculation)を引き起こした。遠心分離して完全にフロキュレーションさせる前に、この物質を少なくとも30分間混合した。遠心分離後、清澄化した溶解物を、Cuno Maximizer 30/60SP デプスフィルター(Cuno Incorporated、Meriden、CT)を用いて濾過した。SP Sepharoseカラムに清澄化した溶解物をロードする前に、1MのNa HEPESを用いてpHを7.5に調整し、水溶液の5mM DTTを用いて伝導度を9.5mS/cm以下に調整した。
【0160】
実施例2で記載した精製法のように、強いカチオン交換樹脂であるSP−セファロース樹脂を、最初の捕獲工程に選択した。負荷電の官能基と架橋結合したアガロースマトリックスはAPO2L/TRAILを結合したが、大部分の不純物およびAPO2L/TRAIL変異体はカラムを通過させた。以下の条件の緩衝液、すなわち200mM NaCl、50mM HEPES、0.05%Triton X−100、1mM DTT、pH7.5を用いた。
【0161】
SP溶出プールの結晶化は、4時間にわたる22℃から4℃までの制御された温度スロープにより達成された。SP溶出プールを無菌濾過し、良好な攪拌付き温度制御タンクへ移した。結晶化前に容器およびタンパク質溶液には、いかなる粒子も含まないことを確認することが重要であった。SP溶出プールを冷却したとき、Lasantecの集束ビーム反射率測定技術での測定による平均コード長44μmを有する結晶が自発的に形成された。結晶形態は、最大コード長の約半分の深さを有する六方晶系の結晶であった。プールを約1〜2時間、4℃に保持して、結晶の成長速度を緩慢した後、50%のPEG3350を終濃度5%のPEG3350になるように添加した。PEG3350(貧溶媒)の添加によりAPO2L/TRAILの溶解度を低下させ、さらに結晶の成長を促進した。
【0162】
次いで、形成された結晶を、バッチ式濾過または連続的濾過のいずれかにより除去した。どちらの場合も、母液を除去し不純物および残留溶媒を除去するために結晶を洗浄した。濾過は2〜8℃で実施した。結晶スラリーを含むタンクをサイホンで吸い上げるかまたは加圧することにより、結晶スラリーを5〜20μmの焼結鋼、焼結ポリプロピレンもしくは鋼メッシュフィルターを含むBuchnerまたはNutscheタイプフィルターに移した。次いで、フィルターから手動でかき集めるか、または次の精製工程に適切な緩衝液系に溶解した。
【0163】
CM−セファロースカラムにロードする前に、結晶を0.5Mアルギニン−コハク酸塩/20mM TRIS/pH7.2に溶解した。フェニル−セファロースカラムにロードする前に、結晶を、0.6mM NaSO/50mM TRIS/pH7.5に溶解した。
【0164】
結晶化に続くクロマトグラフィー工程は、PEGおよび結晶タンパク質プール由来の緩衝液成分の除去ならびにECP、エンドトキシン、二量体、および凝集物の少なくとも適度な除去をもたらすのに役立った。
【0165】
1つのセットの実験では、CM−セファロース結合−および−溶出カラムをこの工程で用いた。このカラムにロードする前に、APO2L/TRAIL結晶を製剤緩衝液である0.5Mアルギニン−コハク酸塩/20mM TRIS pH7.2に溶解し、溶解したプールを20mM TRISで5倍希釈した。溶解した結晶プールをカラムにロードし、125mM NaCl/50mM TRIS/1mM DTT/pH7.5で溶出した。一貫した回収(85〜95%)および純度が示されるように、様々な回数カラム操作を繰り返した。
【0166】
他のセットの実験では、フェニルセファロースHICのフロースルーカラムを用いた。この場合には、結晶を0.6M NaSO/50mM TRIS/1mM DTT/pH7.5に溶解した。APO2L/TRAILの溶解度は、高い塩濃度のためにこの溶液中では非常に高かった。3回の実施では、一貫して98%の収量があり、クロマトグラムはほとんど同一であった。CM−セファロース結合−および−溶出カラムを用いて観察されたのと同様に純度のレベルは高かった。
【0167】
(実施例4)
結晶化条件の選択
実施例3に記載の第1のクロマトグラフィー精製工程からのSP−セファロース溶出プールを、結晶を生成するために冷却し、次いで加熱して結晶を複数回溶解した。
【0168】
リアルタイム粒径分析器(Lasantec集束ビーム反射率測定−FBRM)を、結晶のコード長および結晶化プロセスを通じての分布をモニターするために用いた。FBRM法では、レーザーは、円形軌道で急速に回転する。結晶上をレーザーが通過するとき、光ビームは回転レーザー装置の速度により増加する特定の期間反射して、「コード長」を与える。
【0169】
温度冷却速度の影響
FBRMを用いて、温度冷却速度の関数として結晶成長プロフィールをモニターした。冷却速度は結晶化に要する時間および最終粒度分布に影響する。ゆるやかな冷却速度は、ゆるやかに溶液を過飽和にし、ゆるやかな結晶核形成および結晶成長になる。急速な冷却は、高い過飽和を引き起こし、多数の小結晶が形成する。
【0170】
様々な時間にわたり22℃から2℃までの、直線的な温度スロープを調べた。1、4、8および24時間の冷却期間に対する平衡結晶分布の結果を図4に示し、表2で説明する。
【0171】
【表2】

4時間の冷却速度は、満足できる結果を与えた。
【0172】
結晶サイズが攪拌に及ぼす影響
約0.4LのSP溶出緩衝液を、3つの攪拌速度で結晶化した。この3つの速度研究は、大部分の結晶を懸濁するために必要とされる最低の(100RPM)、気泡を抜く前の最大の攪拌速度(250RPM)、および中間の攪拌速度(175RPM)であった。結晶化は、最も高い攪拌速度(250RMP)で最も速いことが見出された。175RPMおよび250RPMでの実験運転では、結晶粒度分布は非常に類似し、顕微鏡像における顕著な相違は存在していなかった。100RPMでは、全粒子を完全に懸濁するのに十分な攪拌を与えなかった。さらに、いくつかの結晶の凝集が観察された。すべての場合、攪拌翼は空気表面近くにあり、空気を吸い込みやすかった。大規模な応用装置においては、この形状は変化し得て、気相液相界面への曝露によりタンパク質に損傷を与えることなく、より高い攪拌速度を用いることができる。
【0173】
貧溶媒研究
結晶化プロセスに用いる貧溶媒は、タンパク質の溶解度を低下させて結晶化効率を改善する。溶液中に残存するすべてのタンパク質が、濾過の間に失われるので、結晶化反応の間、溶解度をできるだけ低くすることが重要である。
【0174】
APO2L/TRAIL結晶またはSP溶出プールを5mLの注射器に充填し、次いで貧溶媒の適切な量を添加することにより、貧溶媒をスクリーニングした。室温および2〜8℃の両方で2週間にわたり試料をゆっくり攪拌した。1mLの試料を、0.22μmフィルターに通して全タンパク質結晶を除去し、次いで、HPLC IEXに流して溶液中のAPO2L/TRAIL濃度を測定した。
【0175】
400、3350および10000Daの分子量のポリエチレングリコール(PEG)を貧溶媒として試験した(それぞれPEG440、PEG3350およびPEG10000)。APO2L/TRAIL結晶を、SP溶出緩衝液に溶解し(200mM NaCl、50mM HEPES、0.05%Triton X−100、1mM DTT、pH7.5)、PEGを添加した。混合物を、2〜8℃の温度で5日間攪拌した。図5に示したこの結果は、PEG3350およびPEG10000はPEG400よりも優れ、収量の向上に関してはほぼ同一であることを示している。5%のPEG3350の添加により、PEGまたは他のいずれの貧溶媒も添加しない結晶化と比べて、理論収量が約85%から約96%まで向上した。
【0176】
次に、エタノールおよびイソプロピルアルコールのAPO2L/TRAILの溶解度に及ぼす影響を調べた。このどちらも、5%から10%の濃度でかなりの収率増加をもたらすことが分かった。これらの溶媒を用いる平衡APO2L/TRAIL溶解度は、PEGに対する溶解度とほぼ同等であった。
【0177】
また、他の一般に用いられる有機貧溶媒、すなわち、2−メチル−2,4−ペンタンドール(pentanedol)(MPD)、エチレングリコール、およびジオキサンも試験したが、APO2L/TRAIL溶解度の減少に関してほとんどまたはまったく有益性を示さなかった。
【0178】
これらの研究に基づき、4時間の冷却期間および貧溶媒としてPEG3350を用いて、22℃から4℃の直線的な温度スロープでSP溶出プールを冷却することにより、良好な結晶化の結果および収量を達成できることが確認された。
(実施例5)
結晶化工程で貧溶媒を用いる2−カラム精製プロセス
APO2L/TRAILを、結晶化の間に5%のPEG3350を添加することを除き、実施例3に本質的に記載されているように精製した。結晶化の後、物質を6つのプールに分割した。3つのプールをCM−セファロースカラムにかけ、他の3つのプールをフェニル−セファロースカラムにかけた。収量および純度の結果を、下記の表4に示す。
【0179】
【表3】

本発明の範囲は、本明細書に記載した特定の実施形態により制限されない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に変更することは、前記の記載および付随する図から当業者にとっては明らかなものである。このような変更は、添付の特許請求項の範囲に入ることを意図している。
【数1】


【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−60471(P2013−60471A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−145(P2013−145)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2008−513521(P2008−513521)の分割
【原出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】