説明

低温で動作するリチウム電池

【課題】低温で動作するリチウム電池の溶媒混合物において、低温(例えば−20℃未満)でのリチウム電池充電時に、その負極の分極化を減少させ、カーボンアノードを有するリチウム電池の電解質用の有機溶媒の混合物を提案しているのであって、その性能は、低温(−20℃〜−60℃)での充電が従来のリチウム電池に比較して改良される。
【解決手段】溶媒混合物に対する体積比で、50〜95%のC〜C飽和酸の線状エステル、および5〜50%のC〜C飽和環状カーボネートならびにC〜C飽和線状カーボネートからなる溶媒混合物であって、この二つのカーボネートのうちの一つのみが、少なくとも一つのハロゲン原子により置換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温(−60℃まで)で動作することができるリチウム電池の溶媒混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、その構造内にリチウムを挿入できる電気化学的に活性な活物質(遷移金属の酸化物であって通常はリチウム化されている)からなる正極と、リチウムイオンを供給する負極とで構成される電気化学的スタックを有している。これらの電極は、一般的にはポリオレフィンからなる分離膜の両側に設けられる。電気化学的スタックは、固体または液体の非水系電解質が含浸されている。この電解質は、有機溶媒の混合物に溶解したリチウム塩を含有している。
リチウム電池の負極は、充電時にリチウムを挿入するとともに放電時にリチウムを除去する性質を有する炭素含有の物質で構成される。充電時においては、リチウムイオンが負極でリチウムに還元されるとともに、リチウムが移動して炭素含有物質の構造内に挿入される。
かかるバッテリを低温(−20℃から)で充電する場合、負極の分極増大により、負極表面にリチウム析出が時に観察される。温度が低ければ低いほど、かつ放電率が高ければ高いほど、この析出が多くなる。これはバッテリの可逆容量を低下させるため、バッテリにとって有害である。他方、その発生により、セパレータに穿孔を生じさせバッテリの内部ショートに至るので、利用者にとって危険である。
低温でバッテリを動作させる場合の負極の分極化を減少する努力が行われ、またこの欠点を有しないバッテリの追求されてきた。
【0003】
従来、文献EP−A−1009057は、−20℃や−30℃で動作できるリチウム電池について記載している。これは、飽和環状カーボネートと不飽和環状カーボネートと少なくとも一つの飽和モノカルボン酸の線状(リニア)エステルを含む溶媒や、フッ素なしのバインダを有する負極を特徴としている。
【特許文献1】欧州特許公開第1009057号公報
【0004】
日本の特許第10144346号は、電解液として、他の非水系溶媒と混合されるジメチルカーボネートのモノフッ化誘導体を含有するリチウム電池について記載している。その具体的な数値や性質は限定していない。このバッテリは、−10放電時に良好な性能を有する。
【特許文献2】特許第10144346号公報
【0005】
日本の特許第10247519号は、一つ以上のハロゲン原子で置換される(あるいは置換されない)飽和環状カーボネートと一つ以上のハロゲン原子で置換される(あるいは置換されない)線状カーボネートとの混合物に溶解した、LiN(C2n+1SO(n=1,2,3,4)および/またはLiC(C2m+1SO(m=1,2,3,4)のリチウム塩を含有するリチウム電池を記載している。この電解質組成は、バッテリ充電、特に高温(60℃)のバッテリの延長保管時における保護改善につき有利である。
【特許文献3】特許第10247519号公報
【0006】
2003年4月23〜25日の「Physical and electrolytic properties of monofluorinated dimethyl carbonate」と称するセミナー(3rd Franco−Japanese seminar on organic chemistry and the electrochemistry of fluorine)におけるY.Sasaki等の出版物は、どのようにしてモノフッ化ジメチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物が25℃で周期的に動作するリチウム電池の電解質となることができるかについて記載している。
【非特許文献4】「Physical and electrolytic properties of monofluorinated dimethyl carbonate」
【0007】
文献EP−A−0 548 449は、リチウム電池の電解質のための飽和環状カーボネートと飽和線状カーボネートと脂肪族カルボン酸塩(すなわちエステル)との混合物についての記載している。このバッテリは、−10℃放電時に良好な性能を有する。
【特許文献5】欧州特許公開第0548449号公報
【0008】
文献EP−A−1 150 374は、ゲル電解質を有するリチウム電池を記載している。その溶媒は、一つ以上のハロゲン原子で置換されたエチレンカーボネート、および一つ以上の環状カーボネート、および/または一つ以上の線状カーボネートの混合物により構成される。かかるバッテリは、−20℃放電時に良好な性能を有する。
【特許文献6】欧州特許公開第1150374号公報
【0009】
JP2004−014134は、別の非水系溶媒の混合物において、フッ素、例えばモノフッ化ジメチルカーボネートで置換された飽和線状カーボネートからなる電解質を記載している。その具体的な数値や性質は限定していない。そのような電解質のバッテリは、充放電時に高収率を示すとともに、高温時の延長保管における性能変化はない。
【特許文献7】特開2004−014134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、従来、これらのいずれの文献も本発明のバッテリを開示していない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、リチウム電池の電解質のための溶媒混合物を提供するものであって、この溶媒混合物は、これに対する体積比で50〜95%のC〜C飽和酸の線状エステル、および5〜50%のC〜C飽和環状カーボネートならびにC〜C飽和線状カーボネートからなる(二つのカーボネートのうちの一つのみが、少なくとも一つのハロゲン原子により置換される)。
本発明のバッテリは、約−60℃の範囲にわたる温度で動作することができる。
また、本発明の目的は、約−60℃の範囲にわたる温度で本発明のバッテリを使用するところにもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、
溶媒混合物に対する体積比で
50〜95%のC〜C飽和酸の線状エステル、および
5〜50%のC〜C飽和環状カーボネートならびにC〜C飽和線状カーボネート
からなる溶媒混合物であって、この二つのカーボネートのうちの一つのみが、少なくとも一つのハロゲン原子により置換されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、低温(例えば−20℃未満)でのリチウム電池充電時に、その負極の分極化を減少させるところにある。このため、本発明は、カーボンアノードを有するリチウム電池の電解質用の有機溶媒の混合物を提案しているのであって、その性能は、低温(−20℃〜−60℃)での充電が従来のリチウム電池に比較して改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、
溶媒混合物に対する体積比で
50〜95%のC〜C飽和酸の線状エステル、および
5〜50%のC〜C飽和環状カーボネートならびにC〜C飽和線状カーボネート
からなる溶媒混合物であって、この二つのカーボネートのうちの一つのみが、少なくとも一つのハロゲン原子により置換される。
本発明は、リチウム電池電解質用の有機溶媒の三元混合物を提供するものであって、その溶媒混合物は、この混合物に対する体積比で50〜95%のC〜C飽和酸の線状エステルと、5〜50%のC〜C飽和環状カーボネートおよびC〜C飽和線状カーボネートとからなる(二つのカーボネートのうちの一つのみが、少なくとも一つのハロゲン原子により置換される)。
一実施例によると、置換されるカーボネートは一置換である。
一実施例によると、少なくとも一つのハロゲン原子はフッ素である。
式R−CO−OR’の化合物は、飽和酸の線状エステルまたは飽和脂肪族カルボン酸エステルを通常意味するのであって、RはHまたはアルキル基であり、R’はCH(メチル)やCH−CH(エチル)のようなアルキル基である。飽和脂肪族モノカルボン酸の線状エステルは、例えば、RがHならギ酸エステル、RがCHならアセテート、RがCH−CHならプロピオナート、RがCH−(CHならブチラート、RがCH−(CHならvaleriate等である。
前記線状エステルは、例えば、アセテート、ブチラート、プロピオナートから選択される。例えば、エチルアセテート、メチルアセテート、プロピルアセテート、エチルブチラート、メチルブチラート、プロピルブチラート、エチルプロピオナート、メチルプロピオナート、プロピルプロピオナートが選択される。
一実施例によると、前記線状エステルは、酢酸エチル(EA)である。
前記飽和環状カーボネートは、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選択される。
一実施例によると、前記飽和環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)である。
前記線状カーボネートは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネートから選択される。
一実施例によると、線状環状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)である。
一実施例によると、線状エステルの体積比は、溶媒混合物の60〜85%である。
前記飽和環状カーボネートの混合物の体積比は、一つ以上のハロゲン原子により置換されたかどうかに関係なく、好ましくは溶媒の総体積の3〜30%である。好ましくは、前記飽和環状カーボネートの混合物の体積比は、一つ以上のハロゲン原子により置換されたかどうかに関係なく、好ましくは溶媒の総体積の10〜20%である。
前記飽和線状カーボネートの混合物の体積比は、一つ以上のハロゲン原子により置換されたかどうかに関係なく、好ましくは溶媒の総体積の3〜30%である。好ましくは、前記飽和線状カーボネートの混合物の体積比は、一つ以上のハロゲン原子により置換されたかどうかに関係なく、好ましくは溶媒の総体積の5〜25%である。
一実施例によると、溶媒混合物は、エチレンカーボネート、モノフッ化ジメチルカーボネート(F1DMC)、エチルアセテートで構成され、それらの体積比は、それぞれ10〜20%、20〜30%、50〜70%である。
一実施例によると、溶媒混合物は、モノフッ化エチレンカーボネート(F1EC)、ジメチルカーボネート、エチルアセテートで構成され、それらの体積比は、それぞれ10〜20%、20〜30%、50〜70%である。
この溶媒混合物は、不飽和環状カーボネートを含有しないのが好ましい。ビニレンカーボネート(VC)およびその誘導体、特にプロピリデンカーボネート、エチリデンエチレンカーボネート、イソプロピリデンエチレンカーボネートのような化合物は、不飽和環状カーボネートの族に属している。環の一つの炭素原子と少なくとも一つの不飽和結合を有する化合物、例えば、プロピリデンカーボネート、エチリデンエチレンカーボネート(4−エチリデン1−3ジオキソラン2−オン)、あるいはイソプロピリデンエチレンカーボネート(4−イソプロピリデン1−3ジオキソラン2−オン)は、ビニレンカーボネートの誘導体を意味する。好ましくは、ビニレンカーボネートは、体積で0.1%未満、好ましくは0である。
リチウム塩は、本発明の溶媒混合物に溶解する。リチウム塩は、例えば、ヘキサフルオロホスフェイトリチウム(LiPF)、ペルクロラートリチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ素酸リチウム(LiAsF)、テトラフルオロホウ酸塩リチウム(LiBF)、トリフルオロメタンスルホナートリチウムLiCFSO、トリフルオロメタンスルホンイミドリチウムLiN(CFSO(LiTFSI)あるいは、トリフルオロメタンスルホンメチドリチウムLiC(CFSO(LiTFSM)から選択される。リチウム塩が添加された溶媒混合物は、リチウム電池の電解質を構成する。
本発明のバッテリは、少なくとも一つの正極と、バインダおよびリチウムイオンを挿入可能な炭素である電気化学的活物質を含む少なくとも一つの負極と、上記の液体電解質とを備えている。
負極のバインダは、スチレンとブタジエンとの共重合体、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体、アクリル酸単独重合体、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの混合物から選択される非フッ化重合体であるのが好ましい。
一実施例によると、重合体は、スチレン・ブタジエン共重合体とカルボキシメチルセルロースとの混合物である。
好ましくは、スチレン・ブタジエン共重合体の重量比は前記バインダの30〜70%であり、カルボキシメチルセルロースの重量比は前記バインダの30〜70%である。
本発明の目的は、約−60℃まで及ぶ温度で本発明のバッテリを使用するところにもある。
本発明の別の特性や利点は、以下の非限定実施例により明らかになる。
【実施例】
【0015】
電池の製造
6つのボタン型電池は、それぞれ作用電極としてグラファイト負極(対極・金属リチウムの基準電極として)、ポリプロピレンセパレータとを備えている。カルボキシメチルセルロースおよびスチレン・ブタジエン共重合体(CMC/SBR)の混合物は、負活物質のバインダとして使用される。6つのバッテリは、その電解質の組成が異なっている。1mole.L−1の濃度で溶解したLiPFをリチウム塩として添加した6つの溶媒混合物が調製された。6つの溶媒混合物の組成は、以下の表1に示されている。
ポリプロピレンセパレータは、電気化学的スタックを構成するよう電極間に配置した。
電気化学的スタックを電解質で含浸した。電池ケースは閉鎖している。
【0016】
【表1】

【0017】
溶媒の比率は、溶媒の総体積に対する百分率で示したものである。
ビニレンカーボネートを含有する電池1a、電池4a、電池5a、電池6aにおいては、ビニレンカーボネート以外の電解質溶媒を混合させた後で、ビニレンカーボネートを添加する。ビニレンカーボネートの比率は、その他の溶媒混合物の重量100%に対して大きな比率をなしている。
【0018】
低温でのテスト
60℃での電気化学的形成および周囲温度でのサイクルの後、負極の表面への金属リチウム析出の存否につき出願人が開発した動作方法により電池をテストした。このテストの基準は、図1に示される。
このテストの方式は、次の通りである:電池は、Cレートで、また0℃、−20℃、−30℃、−39℃で、その容量の10%まで部分的に充電する。この高レート・低温(電解質イオン伝導度が非常に低い)により、負極の分極が増加し、一定場合には表面にリチウムが析出される。この部分的充電に続いて行われる緩和の間に、析出したリチウムがグラファイト構造中に再挿入し、図1に示すように混合電位(充電時に既に挿入したリチウム、および再挿入されるリチウム)が生じる。電圧展開を追従することにより、グラファイトへのリチウムの再挿入時間を計測することが可能となる。再挿入時間が長いほど、電解質表面の析出リチウムが多くなる。
電池1a〜6aにつき行われた部分的充電テスト(図2A、図3A、図4A、図5A)において、本発明の電解質で充填した電池2a、電池3aにつき、最も短いリチウム析出再挿入時間となることが示された。4時間のテスト温度下におけるVCなしのEC/F1DMC/EA(15/25/60)の混合物を含有する電池3aにおいて、ほぼゼロの再挿入時間が得られた。これは、この電池の場合、電解質負極の表面のリチウム析出の存否はかなり少量であることを示す。
また、電池1a〜6aについて、Cレートでの充電段階およびC/10レートでの放電段階からなる部分的サイクルテストも行った。充電時および放電時に測定した電圧は、それぞれ0℃、−20℃、−30℃、−39℃についての図2B、図3B、図4B、図5Bに示されている。本発明による電解質を充電した電池2a、電池3aの場合、充電電圧と放電電圧との差は小さいことが注目される。これは、電池2a、電池3aが最も低い分極抵抗を有することを意味する。
本発明による電解質を使用すると、負極の分極化をかなり減少させることが可能となる。
【0019】
負極の分極時に不飽和環状カーボネートが存在することの影響
負極の分極時に不飽和環状カーボネートが電解質に存在することの影響が明らかになった。この目的のために、電池7a、電池8bを製造し、テストした。これらの電池は、ビニレンカーボネート(VC)である不飽和環状カーボネートを含有する電解質を充填した。電池7a、電池8aの電解液の組成は、以下の表2に示される。
【0020】
【表2】

【0021】
電池7a、電池8aのテストは、電池1a、電池2a、電池3aと比較して行われた。−30℃、−40℃、−50℃、−60℃で行われたこの実施テストの結果は、それぞれに図6A、図7A、図8、図9に示されている。
図6Aは、フッ素により一置換されたカーボネートを含みビニレンカーボネートを含まない電池2a、電池3aにつき、最短のリチウム再挿入時間が得られたことを示している。
モノフッ化ジメチルカーボネートおよびビニレンカーボネートを含む電池7a、電池8aは、電池2a、電池3aよりも大きな分極化を示した。
フッ素により一置換されたカーボネートおよびビニレンカーボネートを含む電池1aは、最も高い分極化を示した。
これらの結果は、図6Bに示す部分的サイクルテストの結果によって確認できる。
図7A、図7B、図8、図9は、図6Aや図6Bのテストよりもさらに低温でなされたテストに相当するものであるが、電池3aの電解質のみがリチウム析出がなく(緩和時や放電時のいずれも混合電位がない)、最も高い容量を有することを示す。
リチウム析出があるその他の電解質の中では、最も良好な可逆容量および最小の分極化の結果は、電池2aにつき得られた。
その電解質がビニレンカーボネートを含む電池7a、電池8aは、電池2aほどは、良好な結果をもたらさなかった。
最も不良な結果は、かなり分極化があり可逆容量がかなり小さい電池1aになった。
【0022】
本発明の変形
本発明の変形として、4つの電池を準備した。これらは、電池2b、電池2c、電池3b、電池3cである。電池2b、電池2cは、種々の溶媒の体積比を変化させたこと以外は電池2aと同様の方法で準備した。電池3b、電池3cは、種々の溶媒の体積比を変化させたこと以外は電池3aと同様の方法で準備した。電池1bは、本発明の電池と比較するための電池1aの場合と同様に製造しテストした。
表3は、用いられる溶媒混合物の組成を示す。
【0023】
【表3】

【0024】
これらの電池につき、部分的充電テストおよび部分的サイクルテストを−30℃で実施した。
部分的充電テストの結果は図10Aに示される。リチウム再挿入時間が最も短いものは、EC/F1DMC/EAの溶媒混合物を充填した電池3a、電池3b、電池3cであった。これらの電池には、リチウム析出はみられない。電池2a、電池2b、電池3cのうちでは、リチウム析出が最も小さいのは、溶媒混合F1EC/DMC/EA(比率が15/25/60)の電池2aであった。
部分的サイクルテストの結果は、図10Bに示される。充電電圧と放電電圧との差については、本発明による電解質を充填した電池2a、電池2b、電池2c、電池3a、電池3b、電池3cは、本発明を構成しない電池1a、電池1bよりも小さくなっていることが注目される。したがって、電池2a、電池3b、電池3cは、最も低い分極抵抗を有することになる。
よって、本発明の電解質を使用すると、負極の分極化をかなり減少させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、実施例と図面とに限定された例としてみるべきではないので、本明細書に詳述したことに限定することは意図しておらず、添付の請求の範囲を維持しつつ修正できる。特に、置換カーボネートは、ハロゲンによって多置換されうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】低温時充電テストの基準を示す図である。
【図2A】Cレート・0℃で容量の10%まで部分的に充電した後の種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図2B】0℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)。
【図3A】Cレート・−20℃で容量の10%まで部分的に充電した後の種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図3B】は、−20℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)。
【図4A】は、Cレート・−30℃で容量の10%まで部分的に充電した後の種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図4B】−30℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)。
【図5A】Cレート・−39℃で容量の10%まで部分的に充電した後の種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図5B】−39℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)。
【図6A】Cレート・−30℃で容量の10%まで部分的に充電した後の、ビニレンカーボネートも含む種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図6B】−30℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)。
【図7A】Cレート・−40℃で容量の10%まで部分的に充電した後の、ビニレンカーボネートも含む種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図7B】−40℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)。
【図8】部分的サイクルにおける、ビニレンカーボネートも含む種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である(−50℃のCレートで充電し、−40℃のC/10レートで放電)。
【図9】部分的サイクルにおける、ビニレンカーボネートも含む種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である(−60℃のCレートで充電し、−40℃のC/10レートで放電)。
【図10A】Cレート・−30℃で容量の10%まで部分的に充電した後の、種々の電解液を充填したバッテリの電圧変化を示す図である。
【図10B】−30℃で部分的サイクル時における、これらのバッテリの電圧変化を示す図である(Cレートで充電し、C/10レートで放電)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒混合物に対する体積比で
50〜95%のC〜C飽和酸の線状エステル、および
5〜50%のC〜C飽和環状カーボネートならびにC〜C飽和線状カーボネート
からなる溶媒混合物であって、この二つのカーボネートのうちの一つのみが、少なくとも一つのハロゲン原子により置換されることを特徴とする溶媒混合物。
【請求項2】
置換カーボネートは一置換されることを特徴とする請求項1に記載の溶媒混合物。
【請求項3】
前記少なくとも一つのハロゲン原子は、フッ素であることを特徴とする請求項1に記載の溶媒混合物。
【請求項4】
前記線状エステルは、エチルアセテート、メチルアセテート、プロピルアセテート、エチルブチラート、メチルブチラート、プロピルブチラート、エチルプロピオナート、メチルプロピオナート、プロピルプロピオナートから選択されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項5】
前記線状エステルはエチルアセテートであることを特徴とする請求項4に記載の溶媒混合物。
【請求項6】
前記飽和環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選択されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項7】
前記飽和環状カーボネートは、エチレンカーボネートであることを特徴とする請求項6に記載の溶媒混合物。
【請求項8】
前記飽和線状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネートから選択されることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項9】
前記飽和線状カーボネートは、ジメチルカーボネートであることを特徴とする請求項8に記載の溶媒混合物。
【請求項10】
前記線状エステルの体積比は、溶媒の総体積に対して、60〜85%であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項11】
前記飽和環状カーボネートの体積比は、溶媒の総体積に対して、3〜30%であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項12】
前記飽和環状カーボネートの体積比は、溶媒の総体積に対して、10〜20%であることを特徴とする請求項11に記載の溶媒混合物。
【請求項13】
前記飽和線状カーボネートの体積比は、溶媒の総体積に対して、3〜30%であることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項14】
前記飽和線状カーボネートの体積比は、溶媒の総体積に対して、5〜25%であることを特徴とする請求項13に記載の溶媒混合物。
【請求項15】
不飽和環状カーボネートを含まない請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項16】
エチレンカーボネート、モノフッ化ジメチルカーボネート、エチルアセテートで構成された溶媒混合物であって、エチレンカーボネート、モノフッ化ジメチルカーボネート、エチルアセテートの体積比は、それぞれ10〜20%、20〜30%、50〜70%であることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項17】
モノフッ化エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルアセテートで構成された溶媒混合物であってモノフッ化エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルアセテートの体積比は、それぞれ10〜20%、20〜30%、50〜70%であることを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の溶媒混合物。
【請求項18】
請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の溶媒混合物に溶解したリチウム塩を含む液体電解質。
【請求項19】
少なくとも一つの正極と、バインダおよびリチウムイオンを挿入可能な炭素である電気化学的活物質を含む少なくとも一つの負極と、請求項18の液体電解質とを備えていることを特徴とするリチウム電池。
【請求項20】
前記バインダは、非フッ素化重合体であることを特徴とする請求項19に記載のリチウム電池。
【請求項21】
前記重合体は、スチレンとブタジエンとの共重合体、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体、アクリル酸同種重合体、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項20に記載のリチウム電池。
【請求項22】
前記重合体は、スチレン・ブタジエン共重合体とカルボキシメチルセルロースとの混合物であることを特徴とする請求項21に記載のリチウム電池。
【請求項23】
約−60℃までの温度で動作可能な請求項1〜請求項22のいずれか1項に記載のリチウム電池。
【請求項24】
約−60℃までの温度での請求項19〜請求項23のいずれか1項に記載のリチウム電池の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2006−173124(P2006−173124A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361250(P2005−361250)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(390040707)
【氏名又は名称原語表記】SAFT
【Fターム(参考)】