説明

低温で湿気硬化性の被覆用組成物および関連する方法

低温で湿気硬化性の被覆用組成物、関連する被覆された基材、および基材を被覆するための方法が開示される。被覆用組成物は、2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、およびアミノ官能性シランを含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物を含む。特定の観点では、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)成分(1)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物とを含む低温で湿気硬化性の被覆用組成物であって、組成物から堆積した完全硬化被覆物は、最大20ミルの乾燥膜厚が得られる結果となるように塗布されたとき亀裂が生じにくい組成物を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、低温で湿気硬化性の被覆用組成物、関連する被覆された基材、および被覆物を基材の上に堆積させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
多くの用途において低温で湿気硬化性の被覆用組成物が望ましい。例えば、そのような被覆用組成物は、(i)組成物を硬化させるためにエネルギーがほとんどまたはまったく必要ない、(ii)基材によっては、構築されるもとの材料が高温の硬化条件に耐えることができない、および/または(iii)被覆される大きな物品または複雑な物品は熱硬化装置または放射線硬化装置によるプロセス加工に便利でないことがあるので、少なくとも場合によって、例えば熱硬化被覆用組成物または放射線硬化被覆用組成物より好ましい。
【0003】
いくつかの被覆用組成物は、架橋されたSi−O−Siマトリックスを形成するシラン系材料の加水分解および縮合を利用する。これらの組成物は、多くの場合、可撓性が限られる硬質の高架橋膜を形成する。従って、結果として得られる被覆物は、多くの場合、被覆膜の脆化によって欠けるかまたは熱亀裂化しやすい。さらに、そのような膜は、エラストマー自動車部品およびアクセサリー、例えばエラストマーバンパーおよびボディーサイドモールディングなどの、曲げるかまたは屈曲させることができる被覆物基材ならびに特に家電装置に用いるのに特に不適なことがある。そのようなエラストマー基材に塗布される被覆用組成物は、一般に、亀裂ができずに被覆物が基材とともに曲がるか収縮することができるように可撓性が非常に高くなければならない。
【0004】
その結果、基材に塗布され、硬化したとき可撓性であって亀裂を生じにくい被覆物を作り出すことができる低温で湿気硬化性の被覆用組成物を提供すると望ましいと考えられる。さらに、少なくとも場合によっては、実質的に溶媒を含まず、室温で吹き付けることができ、保存安定であるような被覆用組成物を提供すると望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の観点では、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)成分(1)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物とを含む低温で湿気硬化性の被覆用組成物であって、組成物から堆積した完全硬化被覆物は、最大20ミルの乾燥膜厚が得られる結果となるように塗布されたとき亀裂を生じにくい組成物を目的とする。
【0006】
特定の観点では、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)成分(1)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物とを含む低温で湿気硬化性の被覆用組成物であって、成分(1)および(2)は、成分(2)の中の第二級アミンと反応する官能基に対する成分(1)中の第二級アミンのモル比が0.7から1.3であるような量で組成物中に存在する組成物を目的とする。
【0007】
他の観点では、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)ASTM D1545−89に従って測定したとき120°Fで42日後にDを超えない粘度を有する組成物を作り出すのに十分な量で存在する水分捕捉剤とを含む組成物を目的とする。
【0008】
さらに他の観点では、本発明は、マルチパック被覆用組成物を目的とする。ここで(A)第1のパックは(1)(a)2つ以上のエチレン不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)水分捕捉剤とを含み、(B)第2のパックはマイケル付加反応生成物の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含む。
【0009】
さらに他の観点では、本発明は、基材を被覆するための方法を目的とする。これらの方法は、(A)第1のパッケージおよび第2のパッケージの内容物を組み合わせる工程であって、(1)第1のパッケージは、(a)(i)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(ii)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物を含み、(2)第2のパッケージは、マイケル付加反応生成物の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含み、(3)第1のパッケージおよび第2のパッケージの内容物は、結果として得られる組み合わせの中の第二級アミンと反応する官能基に対するマイケル付加反応生成物の中の第二級アミンのモル比が0.7から1.3となるように組み合わされる工程、(B)この組み合わせを基材の少なくとも一部に塗布する工程、(C)組み合わせが一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および(D)組み合わせが10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気の存在下で24時間以内に完全に硬化することを可能にする工程を含む。
【0010】
特定の観点では、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物と、(3)成分(1)および/または(2)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物とを含む被覆用組成物を目的とする。
【0011】
他の観点では、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物と、(3)成分(1)および/または(2)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物と、(4)ポリシロキサンとを含む被覆用組成物を目的とする。
【0012】
他の観点では、本発明は、マルチパック被覆用組成物を目的とする。ここで、(A)第1のパックは、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物との混合物を含み、(B)第2のパックは、マイケル付加反応生成物の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含む。
【0013】
さらに他の観点では、本発明は、基材を被覆するための方法を目的とする。これらの方法は、(A)第1のパッケージおよび第2のパッケージの内容物を組み合わせる工程であって、(1)第1のパッケージは、(a)(i)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(ii)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(b)(i)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(ii)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物との混合物を含み、(2)第2のパッケージは、マイケル付加反応生成物の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含む工程、(B)組み合わせを基材の少なくとも一部に塗布する工程、(C)組み合わせが一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および(D)組み合わせが10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気の存在下で24時間以内に完全に硬化することを可能にする工程を含む。
【0014】
本発明は、とりわけ、そのような組成物によって、およびそのような方法によって、少なくとも部分的に被覆された基材にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明に関し、特に明示的に断らない限り、本発明はさまざまな代替変化形および工程順を取ってよいと理解すべきである。さらに、特定の実施例を除いて、または特に断らない限り、例えば、本明細書中および請求項中で用いられる成分の量を表すすべての数値は、すべての場合に用語「約」で修飾されていると理解するべきである。従って、特に断らない限り、以下の明細書中および添付の請求項中に示される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、請求項の範囲への均等論の原則の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも報告された有効数字の数を考慮し、通常の丸め技法を利用することによって解釈するべきである。
【0016】
本発明の広義の範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、どの数値もそれぞれの試験測定値中に見いだされる標準偏差の結果として必然的に生じる特定の誤差を固有に含む。
【0017】
本明細書中に挙げられる任意の数値範囲は、その中に組み込まれるすべての部分範囲を含むものとすることも理解すべきである。例えば、「1から10」の範囲は、挙げられた最小値1と挙げられた最大値10との間(これらの数値を含む)の、すなわち1以上の最小値と10以下の最大値とを有する、すべての部分範囲を含むものとする。
【0018】
本出願では、特に断らない限り、単数の使用は複数を含み、複数は単数を包含する。さらに、本出願では、特定の場合に「および/または」が明示的に用いられることがあるが、「または」の使用は、特に断らない限り「および/または」を意味する。
【0019】
既に言及したように、本発明の特定の実施態様は、低温で湿気硬化性の被覆用組成物を目的とする。本明細書中で用いられる用語「低温で湿気硬化性」は、基材への塗布の後、周囲の空気の存在下で硬化することができる被覆用組成物を指す。空気は、10から100パーセント、例えば25から80パーセントの相対湿度および−10から120℃、例えば5から80℃、場合によっては10から60℃、さらに他の場合には15から40℃の範囲の温度を有する。本明細書中で用いられる用語「硬化」は、組成物の任意の架橋可能成分が少なくとも部分的に架橋している被覆物を指す。特定の実施態様では、架橋可能成分の架橋密度すなわち架橋度は、完全架橋の5%から100%、例えば35%から85%、または場合によっては50%から85%の範囲である。当業者には、架橋の存在および程度すなわち架橋密度は窒素下で実施されるPolymer LaboratoriesのMKIII DMTA分析装置を用いる動的機械熱分析(DMTA)など、さまざまな方法によって測定することができることは自明である。
【0020】
当業者に自明であるように、硬化度はメチルエチルケトンの二枚擦過(double rubs)に対する被覆物の耐溶剤性を試験することによって測定することができる。被覆物への損傷のない二枚擦過数が高いほど硬化度が大きい。この試験では、メチルエチルケトンで飽和した二枚の厚さのチーズクロスを人さし指に保持し、被覆物表面に対して45°の角度に保持する。軽い圧力で毎秒1回の二枚擦過の速度で擦過を行う。本明細書中で用いられる場合、被覆物が「完全に硬化している」と記述されたら、被覆物は100回、場合によっては200回の上記の手順によるメチルエチルケトンの二重擦過に被覆物を損傷させることなく抵抗することを意味する。
【0021】
既に示したように、本発明の被覆用組成物は、2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、すなわちポリ(メタ)アクリレートなどのポリエチレン性不飽和化合物を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物を含む。本明細書中で用いられる用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートとアクリレートとの両方を含むものとする。本明細書中で用いられる用語「第二級アミン含有」は、2つの有機置換基が1つの水素とともに窒素に結合している官能基である第二級アミンを含む化合物を指す。本明細書中で用いられる用語「非ゲル状」は、実質的に架橋を含まず、適当な溶媒中に溶解されたとき、例えばASTM−D1795またはASTM−D4243に従って測定されると、固有粘度を有する樹脂を指す。樹脂の固有粘度は、その分子量の指標である。他方、ゲル化樹脂は、本質的に無限に高い分子量なので、測定するには高すぎる固有粘度を有する。本明細書中で用いられる「実質的に架橋を含まない」樹脂(または重合体)は、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定したとき、1,000,000未満の重量平均分子量(Mw)を有する反応生成物を指す。
【0022】
特定の実施態様では、2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物は、ジアクリレートおよび高次アクリレートなどのポリエチレン性不飽和単量体を含む。適当なポリエチレン性不飽和単量体の特定の例は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、および/またはビスフェノールAジメタクリレートなどのジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート、および/またはトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレートなどのトリアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよび/またはジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート;および/またはジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレートなどのペンタアクリレートである。
【0023】
前述のポリエチレン性不飽和単量体に加えて、または代えて、本発明の被覆用組成物は、ポリエチレン性不飽和オリゴマーを含む反応体のマイケル付加反応生成物を含んでよい。自明であるが、用語「オリゴマー」と「重合体」とは区別なく頻用される。一般的に、用語「オリゴマー」は比較的短い重合体を記述するために用いられるが、この用語は繰り返し単量体単位の数に関して一般に容認された定義を有しない。従って、2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物を記述する際に、本明細書で用いられる用語「オリゴマー」および「重合体」は区別ないものとされる。
【0024】
本発明に用いるのに適するいくつかの特定のポリエチレン性不飽和オリゴマーの例は、例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびそれらの混合物(特にヒドロキシル官能基のないもの)を含む。そのような材料の具体的な例は、Cytec Surface Specialties Inc.から入手可能なEbecryl220およびEbecryl264などのウレタンアクリレートおよびUCB Chemicalsから入手可能なエベクリル80などのポリエステルアクリレートを含む。
【0025】
既に示したように、本発明の被覆用組成物においては、上記で特定した2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物(単数または複数)をアミノ官能性シランと反応させる。本明細書中で用いられる用語「アミノ官能性シラン」は、アミン基およびケイ素原子を含む分子構造を有する化合物を指す。
【0026】
特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物中に利用されるアミノ官能性シランは、式
【0027】
【化1】

を有する化合物を含む。式中、R’は2から10の炭素原子を有するアルキレン基、R’’は1から8の炭素原子を有するアルキル、アリール、アルコキシまたはアリールオキシ基、R’’’は1から8の炭素原子を有するアルキル基であり、pは0から2の値を有する。本発明の特定の実施態様では、R’は2から5の炭素原子を有するアルキレン基、pは0であり、本発明者らは、少なくとも実施態様によっては、既に記載した低温、湿気硬化条件下で集塵のない膜を10分以内に、完全に硬化した膜を24時間以内に得るためにこれらの使用が最善であることを発見した。
【0028】
本発明において用いるのに適するアミノ官能性シランの具体的な例は、アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、δ−アミノブチルトリエトキシシラン、δ−アミノブチルエチルジエトキシシランを含む。特定の実施態様では、アミノ官能性シランは、γ−アミノプロピルトリアルコキシシランを含む。
【0029】
本発明の特定の実施態様では、マイケル付加反応のための反応体混合物にポリアミンなどの他の反応体をほとんどまたはまったく加えない。その結果、特定の実施態様では、マイケル付加反応に参加する反応体は、ポリアミンを実質的に含まないかまたは場合によってはまったく含まない。本明細書中で用いられる用語「ポリアミン」は、2つ以上の第一級または第二級アミノ基を含む化合物を指す。本明細書中で用いられる用語「実質的に含まない」は、対象となる物質が存在したとしても、組成物中に偶発的な不純物として存在することを意味する。言い換えると、物質は組成物の性質に影響を及ぼさない。本明細書中で用いられる用語「まったく含まない」は、対象となる材料が組成物の中にまったく存在しないことを意味する。本発明者らは、いかなるポリアミンであっても有意な量が存在すると少なくとも場合によって黄変増加、新たな望ましくない副生物の発生、および/または望ましくないマイケル付加反応生成物中の粘度の増加加速を生じる結果となり得ることを発見した。
【0030】
特定の実施態様では、非ゲル状マイケル付加反応生成物は、単に反応体を室温でまたはわずかに高い温度、例えば最大100℃で混合することによって形成される。本発明において進行するアミン基とエチレン性不飽和基との反応は、多くの場合マイケル付加反応と呼ばれる。その結果、本明細書中で用いられる用語「マイケル付加反応生成物」は、そのような反応の生成物を指すものとされる。そのような生成物は、アクリリル含有量がもっと多い生成物より熱および光に安定なことがある。2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物にアミノ官能性シランをゆっくり加えると、アミノ官能性シランに対して大過剰のアクリレート基がある結果となることを認識すべきである。反応混合物の温度を十分に低く保持しないと、ゲル化生成物が生じる結果となり得る。従って、時にはアミノ官能性シランを既に含む反応器に不飽和物質を加えて非ゲル状反応生成物を得る方がよい。反応は、溶媒の非存在下で実行してもよく、不活性溶媒の存在下で実行してもよい。適当な不活性溶媒の例は、トルエン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、およびエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートである。多くの場合、水分の非存在下でまたは制御された量の水分下で反応を行い、望ましくない副反応および起こりうるゲル化を回避すると望ましい。
【0031】
特定の実施態様では、アミン基に対するエチレン性不飽和基の当量比が少なくとも1:1、場合によっては少なくとも1.05:1となるようにマイケル付加反応を行う。
【0032】
特定の実施態様では、上記で特定したマイケル付加反応生成物は、本発明の被覆用組成物の中に組成物の全重量を基準として最大80重量パーセント、場合によっては最大60重量パーセントの量で存在する。特定の実施態様では、上記で特定したマイケル付加反応生成物は本発明の被覆用組成物の中に組成物の全重量を基準として少なくとも30重量パーセント、例えば少なくとも40重量パーセントの量で存在する。
【0033】
既に示したように、本発明の被覆用組成物を製造するために、特定の実施態様では、既に記載したマイケル付加反応生成物を(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物と組み合わせる。
【0034】
特定の実施態様では、1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物は、例えば(メタ)アクリル酸の任意のC〜C30脂肪族アルキルエステルを含む(メタ)アクリレートを含み、その非限定的な例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、N−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボミル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、および3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含む。
【0035】
既に示したように、本発明の特定の実施態様によると、上記で特定した1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物(単数または複数)をアミノ官能性シランと反応させる。この目的に適するアミノ官能性シランは、本明細書中で既に特定したアミノ官能性シランの任意のものを含む。
【0036】
本発明の特定の実施態様では、前述のマイケル付加反応のための反応体混合物にポリアミンなどの他の反応体をほとんどまたはまったく加えない。その結果、特定の実施態様では、マイケル付加反応に参加する反応体は、実質的にポリアミンを含まないかまたは場合によってはポリアミンをまったく含まない。
【0037】
特定の実施態様では、1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物が関与するマイケル付加反応は、単に反応体を室温、または若干高い温度、例えば最大100℃で混合することによって実行される。反応は、溶媒非存在下で実行してもよく、または不活性溶媒存在下で実行してもよい。適当な不活性溶媒の例は、本明細書中で既に特定した溶媒の任意のものを含む。特定の実施態様では、アミン基に対するエチレン性不飽和基の当量比は少なくとも1:1、場合によっては少なくとも1.05:1であるように前述のマイケル付加反応を行う。
【0038】
特定の実施態様では、アミノ官能性シランと上記で特定した1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物との間の反応のマイケル付加反応生成物は、本発明の被覆用組成物の中に組成物の全重量を基準として最大30重量パーセント、例えば最大25重量パーセントの量で存在する。特定の実施態様では、アミノ官能性シランと上記で特定した1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物との間の反応のマイケル付加反応生成物は、本発明の被覆用組成物の中に組成物の全重量を基準として少なくとも10重量パーセント、例えば少なくとも15重量パーセントの量で存在する。
【0039】
既に示したように、本発明の被覆用組成物を製造するために、既に記載したマイケル付加反応生成物(単数または複数)を既に記載したマイケル付加反応生成物の一方または両方の中に存在する第二級アミンと反応する官能基を含む化合物と組み合わせる。当業者に自明であるように、そのような官能基は、イソシアネート、エポキシおよびエチレン性不飽和基を含むがそれらに限定されない。特定の実施態様では、そのような化合物は、ポリエポキシド、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、またはそれらの混合物から選ばれる。
【0040】
本明細書中で用いられる用語「ポリエポキシド」は、分子あたり少なくとも2つの1,2−エポキシド基を有するエポキシ樹脂を指す。特定の実施態様では、エポキシ当量はポリエポキシドの固体を基準として100から4000、例えば100から1000の間の範囲にある。ポリエポキシドは、例えば、飽和であっても不飽和であってもよく、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環であってよい。それらは、例えばハロゲン、ヒドロキシル基およびエーテル基などの置換基を含んでよい。
【0041】
適当な種類のポリエポキシドは、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンをアルカリの存在下でポリフェノールと反応させることによって得られるエポキシエーテルを含む。適当なポリフェノールは、例えばレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−メタン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、および1,5−ジヒドロキシナフタレンを含む。場合によっては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが特に適当である。
【0042】
他の適当なポリエポキシドは、多価アルコールおよび/または多価シリコーン類のポリグリシジルエーテルを含む。適当な多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールを含むがそれらに限定されない。これらの化合物は、ポリプロピレングリコールなどの高分子ポリオールからも誘導してよい。
【0043】
他の適当なポリエポキシドの例は、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルを含む。これらの化合物は、エピクロロヒドリンまたは別のエポキシ物質をコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、またはトリメリット酸などの脂肪族または芳香族ポリカルボン酸と反応させることによって形成させてよい。約36の炭素原子を含む二量化不飽和脂肪酸(二量酸)およびカルボキシル末端アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの重合体ポリカルボン酸もこれらのポリカルボン酸のポリグリシジルエステルの形成において用いてよい。
【0044】
オレフィン系不飽和脂環式化合物のエポキシ化によって誘導されたポリエポキシドも本発明の被覆用組成物に適する。これらのポリエポキシドは非フェノール性であり、例えば酸素、過安息香酸、酸−アルデヒドモノ過酢酸エステル、または過酢酸による脂環式オレフィンのエポキシ化によって得られる。そのようなポリエポキシドは、当分野で公知のエポキシ脂環式エーテルおよびエステルを含む。
【0045】
他の適当なポリエポキシドは、エポキシノボラック樹脂類を含む。これらの樹脂は、エピハロヒドリンをアルデヒドと一価または多価フェノール類との縮合生成物と反応させることによって得られる。一般的な例は、エピクロロヒドリンとフェノール−ホルムアルデヒド縮合物との反応生成物である。
【0046】
適当なポリエポキシドは、米国特許第6,344,520号明細書の第3欄の第46行から第6欄の第41行に記載されている樹脂などのエポキシ官能有機ポリシロキサン類を含む。この特許文献の引用部分は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0047】
本発明の被覆用組成物は、1つのポリエポキシド、または2つ以上のポリエポキシドの混合物を含んでよい。
【0048】
示したように、特定の実施態様では、マイケル付加反応生成物(単数または複数)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含む。適当な物質は、既に記載したジアクリレートおよびそれより多いアクリレートなどのポリエチレン性不飽和単量体を含む。
【0049】
しかし、特定の実施態様では、そのような化合物は、重合性のエチレン性不飽和を含むオリゴマーを含む。本発明において用いるのに適するそのようなオリゴマーの例は、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエポキシドから誘導されたポリアクリレート、およびアクリレート官能性アクリル系重合体を含む。当業者には自明であるように、そのようなオリゴマーは、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、およびエポキシ樹脂から、すべてのまたは一部のヒドロキシル基またはエポキシ基をアクリル酸またはメタクリル酸と反応させることによって調製することができる。ペンタエリスリトールおよびトリメチロール10プロパン、プロピレングリコールおよびエチレングリコールなどのポリオールも用いてよい。ポリオールを(メタ)アクリル酸の低級アルコールエステルとエステル交換させることによってアクリレート官能性化合物も得ることができる。
【0050】
本発明の特定の実施態様では、マイケル付加反応生成物(単数または複数)の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物は、四官能性ポリエステルアクリレート、例えばSartomerから商品名CN2262で市販されているものを含む。
【0051】
本発明の被覆用組成物は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する1つの化合物、または2つ以上のエチレン性不飽和基を有する2つ以上の化合物の混合物を含んでよい。
【0052】
本発明の特定の実施態様では、マイケル付加反応生成物(単数または複数)(成分1)および成分1の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物(成分2)は、成分2の中の反応基に対する成分1の中の反応基のモル比が0.7から1.3、場合によっては0.9から1.1、さらに他の場合には1:1となるような量で組成物の中に存在する。実は、本発明者らは、驚くべきことに、前述のモル比がそのような範囲内にある本発明の特定の実施態様では、被覆用組成物を最大20ミル、例えば1から20ミルの乾燥膜厚が得られる結果となるように塗布すると、実施例に記載したようなさまざまな環境条件への暴露後に亀裂を生じにくいことを発見した。本明細書中に用いられる用語「亀裂を生じにくい」は完全に硬化した被覆物が任意の距離で肉眼に見える亀裂を示さないことを意味する。
【0053】
特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は、ポリシロキサンも含む。適当なポリシロキサンは、式
【0054】
【化2】

のものを含む。式中、各Rはアルキルおよびアリール基を含む群から独立に選ばれ、RおよびRは同一であってもまたは異なっていてもよく、水素、アルキルおよびアリール基を含む群からそれぞれ独立に選ばれ、nはポリシロキサンの分子量が400から10,000の範囲になるように選ばれる。
【0055】
適当なポリシロキサンは、500から6000の範囲の分子量および10から50%の範囲のアルコキシ含有率を有するものを含むが必ずしもそれらに限定されない。
【0056】
適当なポリシロキサンの例は、当業者に既知のアルコキシおよびシラノール官能性ポリシロキサンを含むがそれらに限定されない。適当なアルコキシ官能性ポリシロキサンは、Dow CorningからのDC−3074およびDC3037、Wacker SiliconeからのSilres SY−550およびSY−231、Rhodia SiliconesからのRhodorsil Resin 10369A、Rhodorsil 48V750、48V3500、およびGeneral ElectricsからのSF1147を含むがそれらに限定されない。適当なシラノール官能性ポリシロキサンは、Wacker SiliconeからのSilres SY300、Silres SY440、Silres MKおよびREN 168、Dow CorningのDC−840、DC233およびDC−431HSシリコーン樹脂およびDC−Z−6018中間体、ならびにRhodia SiliconesのRhodorsil Resin 6407および6482Xを含むがそれらに限定されない。
【0057】
特定の実施態様では、既に記載したポリシロキサンは、本発明の被覆用組成物の中に組成物の全重量を基準として最大40重量パーセント、例えば最大30重量パーセントの量で存在する。特定の実施態様では、既に記載したポリシロキサンは、本発明の被覆用組成物の中に組成物の全重量を基準として少なくとも5重量パーセント、例えば少なくとも10重量パーセントの量で存在する。
【0058】
本発明の被覆用組成物は、塩基触媒などの硬化促進用触媒を含んでよい。適当な塩基触媒は、トリフェニルホスフィン、ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム、ヨウ化テトラブチルホスホニウムおよびベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、トリエチルアミンおよび類似物などの第三級アミン、N−メチルイミダゾールおよびテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを含む。特定の実施態様において用いられるとき、そのような触媒は、被覆用組成物の全重量を基準として0.1から1重量パーセントの量で存在する。
【0059】
特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は着色剤も含む。本明細書中で用いられる用語「着色剤」は、色および/または他の不透明さおよび/または他の視覚効果を組成物に付与する任意の物質を意味する。着色剤は、別個の粒子、分散液、溶液および/または薄片などの任意の適当な形で被覆物に加えてよい。単一の着色剤または2つ以上の着色剤の混合物を本発明の被覆用組成物の中で用いてよい。
【0060】
着色剤の例は、塗料業界で用いられるものおよび/またはDry Color Manufactures Association(DCMA)に挙げられているものならびに特殊効果組成物など、顔料、染料および色合い剤を含む。着色剤は、例えば、使用条件下で不溶性であるが濡らすことができる微細に粉砕された固体粉末を含んでよい。着色剤は有機物であっても無機物であってもよく、凝集していても凝集していなくてもよい。着色剤は、当業者が使い慣れているアクリル系研削ビヒクルなどの研削ビヒクルを用いて被覆物中に組み込んでよい。
【0061】
顔料および/または顔料組成物の例は、カルバゾールジオキサジン粗製顔料、アゾ、モノアゾ、ジスアゾ、ナフトールAS、塩型(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、縮合型、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、およびそれらの混合物を含むがそれらに限定されない。用語「顔料」と「着色充填材」とは区別なく用いてよい。
【0062】
染料の例は、フタログリーンまたはブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、アルミニウムおよびキナクリドンなどの溶媒系および/または水系のものを含むがそれらに限定されない。
【0063】
色合い剤の例は、Degussa,Inc.から市販されているAQUA−CHEM 896、Eastman Chemical,Inc.のAccurate Dispersion Divisionから市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなどの水系または水相溶性キャリア中に分散した顔料を含むがそれらに限定されない。
【0064】
上記のように、着色剤はナノ粒子分散物を含むがそれに限定されない分散物の形であってよい。ナノ粒子分散は、所望の可視色および/または不透明さおよび/または視覚効果を作り出す1つ以上の高度に分散したナノ粒子着色剤および/または着色剤粒子を含んでよい。ナノ粒子分散物は、150nm未満、例えば70nm未満、または30nm未満の粒子サイズを有する顔料または染料などの着色剤を含んでよい。ナノ粒子は0.5mm未満の粒子サイズを有する研削媒体を用いて有機または無機顔料原体を摩砕することによって製造してよい。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許登録第6,875,800号に、ナノ粒子分散物の例およびそれらを作るための方法が記載されている。ナノ粒子分散物は、結晶化、沈殿、気相凝縮および化学摩擦(すなわち部分溶解)によって製造してよい。被覆物の中のナノ粒子の再凝集化を最小限にするために、樹脂被覆ナノ粒子の分散物を用いてよい。本明細書中で用いられる「樹脂被覆ナノ粒子の分散物」は、ナノ粒子とナノ粒子上の樹脂被覆物とを含む別個の「複合微粒子」が分散している連続相を指す。参照によって本明細書に組み込まれる2004年6月24日出願の米国特許出願公開第2005−0287348号、2003年6月24日出願の米国特許仮出願第60/482,167号、および2006年1月20日出願の米国特許出願第11/337,062号に、樹脂被覆ナノ粒子の分散の例およびそれらを作るための方法が記載されている。
【0065】
本発明の被覆用組成物において用いてよい特殊効果組成物の例は、1つ以上の反射率、真珠光沢、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、光感受性、サーモクロミズム、ゴニオクロミズムおよび/または変色などの外観効果を作り出す顔料および/または組成物を含む。別の特殊効果組成物は、不透明さまたは触感などの他の認識できる特性を提供することができる。特定の実施態様では、特殊効果組成物は、被覆物が異なる角度で見られるとき被覆物の色が変化するように、色の変化を作り出すことができる。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,894,086号に色効果組成物の例が記載されている。別の色効果組成物は、透明な被覆された雲母および/または合成雲母、被覆されたシリカ、被覆されたアルミナ、透明な液晶顔料、液晶被覆物、および/または任意の組成物を含むことができる。この場合、干渉は材料内の屈折率差の結果であり、材料の表面と空気との間の屈折率差のためではない。
【0066】
特定の実施態様では、1つ以上の光源に曝露されるとき色を可逆的に変化させる感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物を本発明の被覆用組成物の中に用いることができる。特定の波長の放射線への曝露によってフォトクロミックおよび/または感光性組成物を活性化させることができる。組成物が励起されると、分子構造は変化し、変化した構造は、組成物のもとの色と異なる新しい色を示す。放射線への曝露が取り除かれると、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、組成物のもとの色が戻る静止の状態に戻ることができる。特定の実施態様では、フォトクロミックおよび/または感光性組成物は、非励起状態において無色であってよく、励起状態において色を示してよい。ミリ秒から数分、例えば20秒から60秒以内に完全な変色が表れることがある。フォトクロミックおよび/または感光性組成物の例は、フォトクロミック染料を含む。
【0067】
特定の実施態様では、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、例えば共有結合形成によって、重合性成分の重合体および/または重合体材料と会合し、および/または少なくとも部分的に結合することができる。感光性組成物が被覆物の外へ泳動し、基材の中で結晶化することがあるいくつかの被覆物とは異なり、本発明の特定の実施態様による重合体および/または重合性成分と会合し、および/または少なくとも部分的に結合する感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、被覆物の外への泳動が最小限である。参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006−0014099号には、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物の例およびそれらを作るための方法が記載されている。
【0068】
一般に、着色剤は、所望の視覚および/または色効果を付与するのに十分な任意の量で被覆用組成物の中に存在してよい。着色剤は本組成物の全重量を基準として本組成物の1から65重量パーセント、例えば3から40重量パーセントまたは5から35重量パーセントを含んでよい。
【0069】
本発明の被覆用組成物は、望むなら、メチルエチルケトンを含むケトン、トルエンおよびキシレンなどの炭化水素、およびそれらの混合物などのさまざまな有機溶媒とともに製剤化してよい。
【0070】
しかし、特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は、有機溶媒または水系溶媒すなわち水などの溶媒を実質的に含まないかまたは場合によってはまったく含まない。言い換えれば、特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は実質的に100%活性である。
【0071】
特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は、コロイドシリカを実質的に含まないかまたは場合によってはまったく含まない。特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は、アクリルレート末端オキシアルキレンオキシドを実質的に含まないかまたは場合によってはまったく含まない。特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物はエチレン性不飽和酸、すなわちビニル不飽和を有する酸を実質的に含まないかまたは場合によってはまったく含まない。
【0072】
本発明の被覆用組成物は、1つのパッケージ組成物としてまたは2つのパッケージ組成物として利用してよい。2つのパックとして、1つのパッケージは上記で記載した成分1を含み、第2のパッケージは上記に記載した成分2、ならびに含むなら任意選択の既に記載したポリシロキサンを含む。所望によりまたは必要に応じて、既に記載した添加物および他の物質をどちらかのパッケージに加えてよい。2つのパッケージは、使用時または使用時近くに単に一緒に混合するだけでよい。
【0073】
既に記載した2つのパッケージ組成物などの本発明の特定の実施態様では、成分1のマイケル付加反応生成物(単数または複数)を含むパッケージは、水分捕捉剤も含む。適当な水分捕捉成分は、CaSO−1/2HOなどのカルシウム化合物、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラnブチル−シランなどの金属アルコキシド、QP−53 14、ビニルシラン(A171)、およびオルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリメチル、オルトケイ酸テトラメチルおよびオルトギ酸メチルなどの有機アルコキシ化合物を含む。
【0074】
特定の実施態様では、水分捕捉剤は、マイケル付加反応生成物の混合物を含むパッケージの中にマイケル付加反応生成物の組み合わせの全重量を基準として最大10重量パーセント、例えば0.25から9.75重量パーセント、または、場合によっては5重量パーセント量存在する。
【0075】
実は、本発明者らは、驚くべきことに、マイケル付加反応生成物(単数または複数)に比較的少量の水分捕捉剤を含ませると、マイケル付加反応生成物(単数または複数)が時間とともに顕著に粘度を増加させることを防ぐことを発見した。その結果、本発明は、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能基シランを含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)ASTM D1545−89によって測定したとき120°Fで42日後にDを超えない粘度を有する組成物を製造するのに十分な量で存在する水分捕捉剤とを含む組成物も目的とする。特定の実施態様では、上記組成物は、(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含む反応体のマイケル付加反応生成物も含んでよい。
【0076】
さらに、本発明は、マルチパック被覆用組成物も目的とする。ここで、(A)第1のパックは、(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(2)水分捕捉剤とを含み、(B)第2のパックは、成分(1)の第二級アミン基と反応する官能基を含む化合物を含む。特定の実施態様では、第1のパックは、(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物も含む。
【0077】
本発明の被覆用組成物は、ケラチン、毛皮、皮膚、歯、爪および類似部位などのヒトおよび/または動物の基材、ならびに植物、樹木、種子、放牧地、耕作地および類似地などの農地;芝生で覆われた地域、例えば、芝生、ゴルフコース、アスレティックフィールド等、ならびに森および類似地域などの他の地域を含むさまざまな任意の基材への塗布に適している。
【0078】
適当な基材は、紙、ボール紙、段ボール、合板および圧縮ファイバーボード、硬質木材、軟質木材、木製単板、パーティクルボード、チップボード、配向性ストランドボードおよびファイバーボードを含むセルロース系材料を含む。そのような材料は、マツ、カシ、カエデ、マホガニー、サクラおよび類似樹木などの木材だけで作られてよい。しかし、場合によって、これらの材料は、樹脂材料などの別の材料と組み合わされた木材、すなわちフェノール系複合材料、木材繊維と熱可塑性重合体との複合材料などの木材/樹脂複合材料、およびセメント、繊維またはプラスチック外装材で強化した木材複合材料を含んでよい。
【0079】
適当な金属基材は、冷間圧延鋼、ステンレス鋼、ならびに亜鉛金属、亜鉛化合物および亜鉛合金の任意のもので表面処理した鋼(電気亜鉛メッキ鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、ガルバニール(GALVANNEAL)鋼、および亜鉛合金でメッキした鋼を含む)、銅、マグネシウムおよびその合金、アルミニウム合金、ガルファン(GALFAN)、ガルバルーム(GALVALUME)などの亜鉛−アルミニウム合金、アルミニウムメッキ鋼およびアルミニウム合金メッキ鋼で造られた箔、シートまたはワークピースを含むがそれらに限定されない。溶接可能な、亜鉛の多いまたは鉄リン化物の多い有機被覆物で被覆された鋼基材(冷間圧延鋼または上記に挙げた任意の鋼基材など)も本発明のプロセスに適する。例えば、米国特許第4,157,924号および同第4,186,036号にそのような溶接可能な被覆用組成物が開示されている。冷間圧延鋼は、例えば、金属ホスフェート溶液、少なくとも1つのIIIB族またはIVB族金属を含む水溶液、有機ホスフェート溶液、有機ホスホネート溶液およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた溶液で前処理されたときも適当である。適当な金属基材は、銀、金およびそれらの合金も含む。
【0080】
適当なシリカ系基材の例は、ガラス、磁器およびセラミックである。
【0081】
適当な重合体基材の例は、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン類および対応する共重合体およびブロック共重合体、生分解性高分子および、ゼラチンなどの天然高分子である。
【0082】
適当な布基材の例は、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド布地、ナイロン、綿、綿ブレンド布地、ジュート、亜麻、麻およびカラムシ、ビスコース、ウール、絹、ポリアミド、ポリアミドブレンド布地、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル超極細繊維およびガラス線維布地で構成される繊維、紡糸、糸、編物、織物、不織布および衣服である。
【0083】
適当な皮革基材の例は、銀付き革(例えばヒツジ、ヤギまたはウシからのナパ、および仔ウシまたはウシからのボックス革)、スエード革(例えばヒツジ、ヤギまたは仔ウシからのベロア、および狩猟用革)、分割ベロア(例えばウシまたは仔ウシ皮から)、バックスキンおよびニューバック革であり、さらにウールスキンおよび毛皮(例えば毛皮付きスエード革)でもある。皮革は、任意の通常のなめし方法によってなめされたものであってよく、特に、植物なめし、鉱物なめし、合成物なめしまたは複合なめし(例えばクロムなめし、ジルコニルなめし、アルミニウムなめしまたは半クロムなめし)によってなめされたものであってよい。望むなら、皮革は再なめしされてよく、再なめしには、再なめしに通常使用されている任意のなめし剤、例えば鉱物、植物または合成なめし剤、例えばクロム、ジルコニルまたはアルミニウム誘導体、ケブラチョ、クリまたはミモザの抽出物、芳香族合成なめし剤、ポリウレタン類、(メタ)アクリル酸化合物またはメラミンの(共)重合体、ジシアノジアミドおよび/または尿素/ホルムアルデヒド樹脂が用いられてよい。
【0084】
適当な圧縮可能な基材の例は、発泡体基材、液体で満たされた高分子袋状構造体(bladder)、空気および/または気体で満たされた高分子袋状構造体、および/または血漿で満たされた高分子袋状構造体を含む。本明細書で用いられる用語「発泡体基材」は、開放小室発泡体および/または閉鎖小室発泡体を含む高分子または天然材料を意味する。本明細書中で用いられる用語「開放小室発泡体」は、発泡体が複数の相互連結した空気室を含むことを意味する。本明細書中で用いられる用語「閉鎖小室発泡体」は、発泡体が一連の別個の閉鎖細孔を含むことを意味する。発泡体基材の例は、発泡ポリスチレン、発泡ポリメタクリルイミド、発泡ポリ塩化ビニル、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンおよび発泡ポリオレフィン類を含む。発泡ポリオレフィンの例は、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンおよび/または発泡エチレン酢酸ビニル(EVA)を含む。発泡EVAはフラットシートまたはスラブ、あるいは靴の中子(ミッドソール)などの成型されたEVA形を含んでよい。異なる種類のEVA発泡体は、異なる種類の表面多孔性を有してよい。成型されたEVAは、高密度の表面または「表層部」を含んでよく、一方フラットシートまたはスラブは多孔質表面を示してよい。
【0085】
本発明の被覆用組成物は、他にも方法はあるが、吹き付け法、ブラシ法、浸漬法、およびロール塗布法を含むさまざまな方法の任意のものによってそのような基材に塗布してよい。しかし、特定の実施態様では、本発明の被覆用組成物は吹き付け法によって塗布され、従って、そのような組成物は多くの場合、周囲条件における吹き付け法によって塗布に適する粘度を有する。
【0086】
本発明の被覆用組成物の基材への塗布の後、組成物が一体化して実質的に連続な膜を基材の上に形成することを可能にする。通常、膜厚は0.01から20ミル(約0.25から508ミクロン)、例えば0.01から5ミル(0.25から127ミクロン)、または場合によっては0.1から2ミル(2.54から50.8ミクロン)の厚さになる。
【0087】
本発明の被覆用組成物は、比較的短い時間の間に硬化して膜を提供することができ、この膜は、膜の外観に悪影響を及ぼさないで被覆された物体の取り扱いを可能にする良好な早期特性を有し、最終的に硬化して優れた硬さ、耐溶剤性および衝撃抵抗を示す膜となる。例えば、本発明の被覆用組成物は空気中低温で約30分、場合によっては10分以内に乾燥して集塵のない、不粘着状態となることができる。従って、それらは例えば12時間から24時間で完全硬化被覆物が形成されるように空気中低温で硬化し続けることができる。
【0088】
結果として、既に示したように、本発明は、基材を被覆するための方法も目的とする。これらの方法は、(A)第1のパッケージおよび第2のパッケージの内容物を組み合わせる工程であって、(1)第1のパッケージは、(a)(i)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(ii)アミノ官能性シラン、を含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、(b)水分捕捉剤とを含み、(2)第2のパッケージは、マイケル付加反応生成物の第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含む工程、(B)組み合わせを基材の少なくとも一部に塗布する工程、(C)組み合わせが一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および(D)組み合わせが10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気の存在下で24時間以内に完全に硬化することを可能にする工程を含む。そのような方法の特定の実施態様では、第1のパッケージは、(i)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(ii)アミノ官能性シランを含むかまたは場合によっては本質的にこれらからなる反応体のマイケル付加反応生成物も含む。
【0089】
以下の実施例は本発明の例を示す。これらの実施例は、本発明を実施例の細部に限定するとみなされないものとする。実施例中のすべての部および百分率は、明細書全体におけると同様に、特に明記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0090】
(実施例1)
表1に挙げた成分から以下のようにマイケル付加生成物を調製した。
【0091】
【表1】

GE Siliconesから入手可能なSilquest A1110。
【0092】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌羽根、水冷コンデンサー、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有するマントルヒーターを備えた適切なサイズの4つ口フラスコに原料#1を加えた。内容物を窒素雰囲気下で撹拌した。原料#2を適切な速度で加えて温度を<60℃に維持した。原料#2の終了後、反応温度を60℃に設定した。アクリルレート二重結合の消失がIR(約1621cm−1のピーク)および/またはNMR(約5.7〜6.4ppmのピーク)分析によって実証されるまで反応は温度に維持した。
【0093】
(実施例2)
表2に挙げた成分から以下のようにマイケル付加生成物を調製した。
【0094】
【表2】

GE Siliconesから入手可能なSilquest A1110。
【0095】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌羽根、水冷コンデンサー、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有するマントルヒーターを備えた適切なサイズの4つ口フラスコに原料#1を加えた。内容物を窒素雰囲気下で撹拌した。原料#2を適切な速度で加えて温度を<60℃に維持した。原料#2の終了後、反応温度を60℃に設定した。アクリレート二重結合の消失がIR(約1621cm−1のピーク)および/またはNMR(約5.7〜6.4ppmのピーク)分析によって実証されるまで、反応を温度に維持した。
【0096】
(実施例3)
表3に挙げた成分から以下のようにマイケル付加生成物を調製した。
【0097】
【表3】

GE Siliconesから入手可能なSilquest A1110。
【0098】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌羽根、水冷コンデンサー、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有するマントルヒーターを備えた適切なサイズの4つ口フラスコに原料#1を加えた。内容物を窒素雰囲気下で撹拌した。原料#2を適切な速度で加えて温度を<60℃に維持した。原料#2の終了後、反応温度を60℃に設定した。アクリレート二重結合の消失がIR(約1621cm−1のピーク)および/またはNMR(約5.7〜6.4ppmのピーク)分析によって実証されるまで、反応を温度に維持した。
【0099】
(実施例4)
表4に挙げた成分から以下のように水分捕捉剤と実施例2および3のマイケル付加生成物との混合物を調製した。
【0100】
【表4】

上記実施例2および3に記載したものなどのマイケル付加生成物をオルトぎ酸トリエチルなどの水分捕捉剤と混合させる。用いてよい典型的な比は、重量で5%の水分捕捉剤に対して95%の付加生成物である。材料は<40℃で混合され、最終溶液は窒素雰囲気下で保管される。
【0101】
(実施例5)
実施例1のマイケル付加生成物を容器の中に入れ、表5に示される以下の成分の中に周囲条件で混合することによって、3つの異なる試料を調製した。
【0102】
【表5】

オルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリメチル、およびオルトケイ酸テトラメチルはSigma Aldrich Companyから入手可能である。
【0103】
(実施例6)
パドル羽根ミキサーを備えた適当な容器の中で表6に挙げた成分を組み合わせることによって被覆用組成物を調製した。
【0104】
【表6】

GE Siliconesから入手可能なSilquest A1110。
【0105】
Hexionから市販されているエポキシ樹脂。
【0106】
ジブチルスズジラウレート。
【0107】
Wacker Siliconesから市販されているメトキシ官能性シリコーン。
【0108】
(実施例7)
実施例6の被覆用組成物を冷間圧延鋼およびアルミニウムパネルの上に2〜5ミルの膜厚で被覆した。被覆された基材を周囲条件下で24時間静置した。この時間でそれらは完全に硬化した。次に、試料を表5に例を示した環境条件に曝露した。次に、試料の亀裂の徴候を観察した。表7に結果を示す。表7の用語「亀裂なし」は肉眼で観察して試料上に膜の亀裂がなく、膜は100%連続なことを意味する。用語「軽度の亀裂」は試料上にいくぶんかの膜の亀裂があったが、基材上には膜が連続である他の膜区域があったことを意味する。用語「重度の亀裂」は、パネル上に亀裂の存在しない区域がなく、場所によっては膜が浮き上がるかまたは剥がれていたことを意味する。
【0109】
【表7】

不粘着時間は約2フィートの高さから綿球をパネル上に落下させて測定した。記入の時間は綿がパネル上に粘着せず、綿球がパネルから自由落下するのに要した時間である。
【0110】

(実施例8)
表8に挙げた成分から以下のようにマイケル付加生成物を調製した。
【0111】
【表8】

GE Siliconesから入手可能なSilquest A1110。
【0112】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌羽根、水冷コンデンサー、および温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計を有するマントルヒーターを備えた適切なサイズの4つ口フラスコに原料#1を加えた。内容物を窒素雰囲気下で撹拌した。原料#2を適切な速度で加えて温度を<60℃に保持した。原料#2の終了後、反応温度を60℃に設定した。アクリレート二重結合の消失がIR(約1621cm−1のピーク)および/またはNMR(約5.7〜6.4ppmのピーク)分析によって実証されるまで、反応を温度に保持した。
【0113】
(実施例9)
実施例8のマイケル付加生成物を容器の中に入れ、表9に示される以下の成分の中に周囲条件で混合することによって3つの異なる試料を調製した。
【0114】
【表9】

オルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリメチルおよびオルトケイ酸テトラメチルはSigma Aldrich Companyから入手可能である。
【0115】
(実施例10)
実施例8のマイケル付加生成物、および実施例9の試料「B」、「C」および「D」の粘度の変化をASTM D1545−89に従う気泡管粘度法によって測定した。室温および120°Fで6週間後に試料を分析した。結果を表10に示す。
【0116】
【表10】

(実施例11)
パドル羽根ミキサーを備えた適当な容器の中で表11に挙げた成分を組み合わせることによって被覆用組成物を調製した。
【0117】
【表11】

Hexiconから市販されているエポキシ樹脂。
【0118】
Sartomerから市販されている四官能性ポリエステルアクリレート。
【0119】
Byk−Chemieから市販されているポリエーテル修飾ポリジメチルシロキサン表面添加剤。
【0120】
ジブチルスズジラウレート。
【0121】
(実施例12)
実施例11の被覆用組成物をBonderite 1000CRSおよびクロム処理アルミニウムパネルの上に1、6および14ミルの膜厚で被覆した。被覆された基材は周囲条件下で24時間放置した。それらは24時間後には完全に硬化した。次に、試料を表12に例を示すさまざまな環境要因に曝露した。次に、試料の亀裂の兆候を観察した。結果を表12に示す。表12において、用語「亀裂なし」は試料の上の膜の亀裂がなく、膜は肉眼で観察すると100%連続なことを意味する。用語「軽度の亀裂」は試料の上のいくらかの膜の亀裂があったが、膜が連続である他の膜の区域が基材の上にあったことを意味する。用語「重度の亀裂」はパネルの上に亀裂が存在しない区間がなく、場所によっては、膜は浮き上がるかまたは剥がれていたことを意味する。
【0122】
【表12】

5Bはテープ剥離のない100%接着を表し、1Bは>90%のテープが剥離し、ほとんど接着性がないことを表す。
【0123】
上記に記載の実施態様に対し、実施態様の本発明の広義の概念から逸脱することなく変化を施すことができることは当業者に自明である。従って、本発明は、開示されている特定の実施態様に限定されず、添付の請求項によって定義される本発明の技術思想および範囲に属する改変を包含するものと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(2)前記マイケル付加反応生成物の前記第二級アミンと反応する官能基を含む化合物と、
を含む低温で湿気硬化性の被覆用組成物であって、
前記組成物から堆積した完全硬化被覆物は、最大20ミルの乾燥膜厚が得られる結果となるように塗布されたとき亀裂を生じにくい、
組成物。
【請求項2】
成分(1)および(2)は、前記第二級アミンと反応する前記官能基に対する前記第二級アミンの前記モル比が0.7から1.3であるような量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項3】
前記アミノ官能性シランは、下式を有する化合物を含み、
【化3】

式中、R’は2から10の炭素原子を有するアルキレン基、R’’は1から8の炭素原子を有するアルキル、アリール、アルコキシまたはアリールオキシ基、R’’’は1から8の炭素原子を有するアルキル基であり、pは0から2の値を有する、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項4】
R’は2から5の炭素原子を有するアルキレン基であり、pは0である、請求項3に記載の被覆用組成物。
【請求項5】
前記アミノ官能性シランは、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを含む、請求項3に記載の被覆用組成物。
【請求項6】
前記マイケル付加反応生成物は、実質的にポリアミンを含まない反応体から形成される、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項7】
前記マイケル付加反応生成物は、本質的に(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物と、(b)アミノ官能性シランとからなる反応体の生成物である、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項8】
成分(1)は、前記組成物の全重量を基準として、30から80重量パーセントの量で前記組成物中に存在し、成分(2)は5から25重量パーセントの量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項9】
前記マイケル付加反応生成物中の前記第二級アミンと反応する官能基を含む前記化合物は、ポリエポキシド、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、またはそれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項10】
前記マイケル付加反応生成物中の前記第二級アミンと反応する官能基を含む前記化合物は、ポリエポキシドを含む、請求項9に記載の被覆用組成物。
【請求項11】
前記ポリエポキシドは飽和している、請求項10に記載の被覆用組成物。
【請求項12】
前記ポリエポキシドは、エピハロヒドリンをポリフェノールと反応させることによって得られるエポキシエーテルである、請求項11に記載の被覆用組成物。
【請求項13】
前記組成物は実質的に溶媒を含まない、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項14】
ポリシロキサンをさらに含む、請求項1に記載の被覆用組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の被覆用組成物から堆積した被覆物で少なくとも部分的に被覆された基材。
【請求項16】
被覆物を基材の上に堆積させるための方法であって、
(a)請求項1に記載の被覆用組成物を前記基材の少なくとも一部の上に堆積させる工程、
(b)前記被覆用組成物が一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および
(c)前記膜を10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気に曝露する工程
を含む方法。
【請求項17】
(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(2)ASTM D1545−89に従って測定したとき120°Fで42日後にDを超えない粘度を有する組成物を作り出すのに十分な量存在する水分捕捉剤と、
を含む組成物。
【請求項18】
基材を被覆するための方法であって、
(1)(A)第1のパッケージは、
(a)(i)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(ii)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(b)水分捕捉剤と、
を含み、
(B)第2のパッケージは、前記マイケル付加反応生成物の前記第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含み、
(C)前記第1のパッケージおよび前記第2のパッケージの前記内容物が組み合わされ、これによって、結果として得られる前記組み合わせ中の前記第二級アミンと反応する前記官能基に対する前記マイケル付加反応生成物中の前記第二級アミンのモル比が0.7から1.3となる、
前記第1のパッケージおよび前記第2のパッケージの前記内容物を組み合わせる工程、
(2)前記組み合わせを前記基材の少なくとも一部に塗布する工程、
(3)前記組み合わせが一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および
(4)前記組み合わせが10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気の存在下で24時間以内に完全に硬化することを可能にする工程、
を含む方法。
【請求項19】
前記組み合わせは、吹き付け法によって塗布される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(2)前記マイケル付加反応生成物の前記第二級アミンと反応する官能基を含む化合物と、
を含む低温で湿気硬化性の被覆用組成物であって、
前記組成物中の成分(1)および(2)は、前記第二級アミンと反応する前記官能基に対する前記第二級アミンの前記モル比が0.7から1.3であるような量で存在する、
組成物。
【請求項21】
(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(2)(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体のマイケル付加反応生成物と、
(3)成分(1)および/または(2)の前記第二級アミンと反応する官能基を含む化合物と、
を含む被覆用組成物。
【請求項22】
成分(1)、(2)および(3)は、前記第二級アミンと反応する前記官能基に対する前記第二級アミンの前記モル比が0.7から1.3であるような量で前記組成物中に存在する、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項23】
前記アミノ官能性シランは、下式を有する化合物を含み、
【化4】

式中、R’は2から10の炭素原子を有するアルキレン基、R’’は1から8の炭素原子を有するアルキル、アリール、アルコキシまたはアリールオキシ基、R’’’は1から8の炭素原子を有するアルキル基であり、pは0から2の値を有する、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項24】
R’は2から5の炭素原子を有するアルキレン基であり、pは0である、請求項23に記載の被覆用組成物。
【請求項25】
前記アミノ官能性シランは、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを含む、請求項22に記載の被覆用組成物。
【請求項26】
成分(1)の前記マイケル付加反応生成物は、実質的にポリアミンを含まない反応体から形成される、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項27】
成分(1)の前記マイケル付加反応生成物は、本質的に(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および(b)アミノ官能性シランからなる反応体の前記生成物である、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項28】
2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む前記化合物は1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを含み、1つのエチレン性不飽和部位を含む前記化合物はエチルアクリレートを含む、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項29】
前記組成物の前記全重量を基準として、成分(1)は30から80重量パーセントの量で前記組成物中に存在し、成分(2)は10から30重量パーセントの量で前記組成物中に存在し、成分(3)は5から25重量パーセントの量で前記組成物中に存在する、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項30】
前記マイケル付加反応生成物中の前記第二級アミンと反応する官能基を含む前記化合物は、ポリエポキシド、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、またはそれらの混合物から選ばれる、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項31】
前記マイケル付加反応生成物中の前記第二級アミンと反応する官能基を含む前記化合物は、ポリエポキシドを含む、請求項30に記載の被覆用組成物。
【請求項32】
前記ポリエポキシドは飽和している、請求項31に記載の被覆用組成物。
【請求項33】
前記ポリエポキシドは、エピハロヒドリンをポリフェノールと反応させることによって得られるエポキシエーテルである、請求項31に記載の被覆用組成物。
【請求項34】
ポリシロキサンをさらに含む、請求項21に記載の被覆用組成物。
【請求項35】
前記ポリシロキサンは、下式であり、
【化5】

式中、各Rはアルキル基およびアリール基を含む群から独立に選ばれ、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく水素、アルキルおよびアリール基を含む群からそれぞれ独立に選ばれ、nは前記ポリシロキサンの分子量が400から10,000の範囲内であるように選ばれる、請求項34に記載の被覆用組成物。
【請求項36】
請求項21に記載の被覆用組成物から堆積した被覆物で少なくとも部分的に被覆された基材。
【請求項37】
被覆物を基材の上に堆積させる方法であって、
(a)請求項21に記載の被覆用組成物を前記基材の少なくとも一部の上に堆積させる工程、
(b)前記被覆用組成物が一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および
(c)前記膜を10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気に曝露させる工程、
を含む方法。
【請求項38】
基材を被覆するための方法であって、
(1)(A)第1のパッケージは、
(a)(i)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(ii)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(b)(i)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(ii)アミノ官能性シラン、水分捕捉剤、
を含む反応体のマイケル付加反応生成物と
を含み、
(B)第2のパッケージは、前記第1のパッケージ中に存在する前記第二級アミンと反応する官能基を含む化合物を含む、
前記第1のパッケージおよび前記第2のパッケージの前記内容物を組み合わせる工程、
(2)工程(1)で形成した前記組み合わせを前記基材の少なくとも一部の上に塗布する工程、
(3)前記組み合わせが一体化して実質的に連続な膜を形成することを可能にする工程、および
(4)前記組み合わせが10から100パーセントの相対湿度および−10から120℃の温度を有する空気の存在下で24時間以内に完全に硬化することを可能にする工程、
を含む方法。
【請求項39】
前記組み合わせは、吹き付け法によって塗布される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(1)(a)2つ以上のエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体の非ゲル状第二級アミン含有マイケル付加反応生成物と、
(2)(a)1つのエチレン性不飽和部位を含む化合物、および
(b)アミノ官能性シラン、
を含む反応体のマイケル付加反応生成物と、
(3)水分捕捉剤と、
(4)前記マイケル付加反応生成物の前記第二級アミンと反応する官能基を含む化合物と、
を含む被覆用組成物であって、
前記組成物から堆積した完全硬化被覆物は、最大20ミルの乾燥膜厚が得られる結果となるように塗布されたとき亀裂を生じにくい、
組成物。

【公表番号】特表2010−504408(P2010−504408A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529358(P2009−529358)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/078863
【国際公開番号】WO2008/036721
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】