説明

低温ショーケース

【課題】簡素な構成により、凝縮器等からの廃熱を利用することによって効果的に中支柱、特に、扉上部のガスケットへの結露を解消することができる低温ショーケースを提供する。
【解決手段】本発明の低温ショーケース1は、前面に扉3のガスケット40が当接する中支柱41と、陳列室8下方の本体2外に構成され、凝縮器34や凝縮器用ファン35などを備えた機械室21とを備え、中支柱41に上下に渡って取り付けられ、内部に中支柱ダクト42を構成する中支柱ダクト部材45と、機械室21からの空気を中支柱ダクト42内に導入する導入部50と、ダクト42内を上昇した空気を、扉3上部と本体2間におけるガスケット40の外側に向けて排出する排気孔51とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陳列室の前面開口を扉にて開閉自在に閉塞して成る低温ショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の低温ショーケースは、例えばコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの店舗に設置されるものであって、内部に陳列室を構成する断熱箱体の前面開口は、扉(例えばガラス扉)にて閉塞している(例えば、特許文献1参照)。また、断熱箱体外の下部には機械室を構成し、この機械室内に冷却装置の冷凍サイクルを構成する圧縮機、凝縮器、凝縮器用ファンなどを設置すると共に、陳列室内には同じく冷凍サイクルを構成する冷却器を配設し、この冷却器によって陳列室内を所定の低温度に冷却していた。
【0003】
また、陳列室の前面開口部には、中支柱が設けられている。この中支柱は、例えば観音開き式の扉の内面に取り付けられるガスケットと密着可能とするものであり、これにより、扉閉塞時における陳列室内の密閉性を維持を図っている。
【0004】
ここで、従来の低温ショーケース100の構造について図10乃至図12を参照して説明する。図10は従来の低温ショーケース100の扉を取り除いた状態の斜視図、図11は低温ショーケース100の平断面図、図12は図11の円D部分の拡大図を示している。
【0005】
低温ショーケース100は、前面に開口する断熱箱体101により本体が構成されており、当該断熱箱体101内には、陳列室102が形成されている。そして、この断熱箱体101の下方には、機械室が形成されており、当該機械室前面は、前面パネル103により開閉自在に閉塞されている。
【0006】
陳列室102の前面開口には、観音開き式のガラス扉106、106が設けられている。この扉106の周縁部裏面には、磁性体(磁石)107Mを備えたガスケット107が取り付けられている。そして、陳列室102の前面開口104の例えば中央部に上下に渡って柱状に形成された中支柱105が立設されている。そして、ガラス扉106のガスケット107内に設けられた磁石107Mによって、中支柱105の前面105Aとガラス扉106のそれぞれの開放側の側端部後面のガスケット107が密着することにより、陳列室102内が閉塞されている。
【0007】
ここで、中支柱105は、図12に示すように、上下に延在して形成される後パネル108と、前パネル(金属製)109と、これらパネル108、109間を連結する樹脂製のブレーカ110、110により構成されており、これらパネル108、109及びブレーカ110、110にて囲繞される空間には、断熱材111が発泡充填されている。
【0008】
しかしながら、陳列室102内が冷却されると、中支柱105自体もガラス扉106の枠も冷気に晒される。そのため、外気と接触する中支柱105の前面105Aやガラス扉106のガスケット107表面に結露が発生することとなる。係る結露が生じると、ガラス扉106の開閉時に中支柱105などに付着した結露水によって開閉する手指を濡らしてしまったり、開閉動作によって跳ねた結露水によって服などを濡らしてしまう不都合が生じる。更には、ガラス扉106に付着した結露による水滴が落下することにより、設置床面を濡らしてしまうなどの不都合が生じる。
【0009】
そこで、当該結露水の発生を防止するため、ガラス扉106の開放側の側端部後面が密着する前パネル109の後面に、電気ヒータ(コードヒータ)を当接した状態で交熱的に配設し、当該電気ヒータに通電を行うことによって、中支柱105の前パネル109を加熱し、ガラス扉106やガスケット107、更には、中支柱前面105Aへの結露の発生を抑制していた。
【特許文献1】特開平9−101075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、係る電気ヒータによる加熱は、常時通電を行うこととなるため、ショーケース自体の消費電力量が増加し、ランニングコストの高騰を招く問題があった。また、電気ヒータを中支柱105の断熱材111内に配設することから、作業工程中にヒータの断線などの不具合が発生した場合には、修理が不可能となる問題がある。
【0011】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、簡素な構成により、凝縮器等からの廃熱を利用することによって効果的に中支柱、特に、扉上部のガスケットへの結露を解消することができる低温ショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の低温ショーケースは、断熱壁から成る本体内に構成された陳列室と、この陳列室の前面開口縁に密着するガスケットを備えて当該前面開口を開閉自在に閉塞する扉と、陳列室の開口部に設けられ、前面に扉のガスケットが当接する中支柱と、陳列室下方の断熱壁外に構成された機械室と、この機械室内に配設された圧縮機、凝縮器、凝縮器用ファンなどから成る冷却ユニットとを備えたものであって、中支柱に上下に渡って取り付けられ、内部に中支柱ダクトを構成する中支柱ダクト部材と、凝縮器用ファンから吐出された空気を中支柱ダクト内に導入する導入部と、中支柱ダクト内を上昇した空気を、扉上部と本体間におけるガスケットの外側に向けて排出する排気孔とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明の低温ショーケースは、上記発明において、排気孔は、中支柱ダクト部材に複数設けられていると共に、各排気孔の開口面積は、上方のもの程大きくなるよう設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明の低温ショーケースは、上記各発明において、中支柱ダクト部材は、中支柱の前面に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、断熱壁から成る本体内に構成された陳列室と、この陳列室の前面開口縁に密着するガスケットを備えて当該前面開口を開閉自在に閉塞する扉と、陳列室の開口部に設けられ、前面に扉のガスケットが当接する中支柱と、陳列室下方の断熱壁外に構成された機械室と、この機械室内に配設された圧縮機、凝縮器、凝縮器用ファンなどから成る冷却ユニットとを備えた低温ショーケースにおいて、中支柱に上下に渡って取り付けられ、内部に中支柱ダクトを構成する中支柱ダクト部材と、凝縮器用ファンから吐出された空気を中支柱ダクト内に導入する導入部と、中支柱ダクト内を上昇した空気を、扉上部と本体間におけるガスケットの外側に向けて排出する排気孔とを備えたので、導入部より中支柱ダクト内に導入された機械室内からの暖気(廃熱)を、直接、扉上部と本体間におけるガスケットの外側に向けて排出することができる。これにより、当該扉上部と本体間におけるガスケットを暖気によって加熱することができ、扉上部に設けられるガスケットや当該ガスケット付近の中支柱表面に結露が発生し難くなる。
【0016】
そのため、扉の開閉動作時に、扉上部に付着した水滴が使用者に飛び散る都合や、当該水滴によって床面を濡らしてしまうなどの不都合を抑制することが可能となる。また、係る部分における中支柱表面に結露水が付着し難くなることから、扉裏面との密着性の向上を図ることが可能となり、陳列室内の冷気の漏洩を抑制することが可能となる。
【0017】
請求項2の発明によれば、上記発明において、排気孔は、中支柱ダクト部材に複数設けられていると共に、各排気孔の開口面積は、上方のもの程大きくなるよう設定されていることので、より機械室から離間し、暖気が届きがたい上方ほど、効率的に暖気の排出させることができ、効果的に扉上部に設けられるガスケットや、当該ガスケット付近の中支柱表面に結露が発生し難くなる。
【0018】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、中支柱ダクト部材は、中支柱の前面に設けられているので、中支柱ダクト内を上昇する凝縮器用ファンから吐出された暖気からの伝導熱によって、中支柱の前面に設けられる中支柱ダクト部材を加熱することができる。
【0019】
これにより、外気が接触する中支柱ダクト部材の上下に渡って、その表面に結露が発生し難くなる。そのため、中支柱ダクト部材の前面に当接する扉のガスケットにも結露が生じ難くなり、扉の開閉動作時に手指を濡らしてしまう不都合や扉裏面に付着した水滴によって床面を濡らしてしまうなどの不都合を抑制することが可能となる。また、中支柱表面に結露水が付着し難くなることから、中支柱前面と扉のガスケットとの密着性の向上を図ることが可能となり、陳列室内の冷気の漏洩を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。図1は低温ショーケース1の斜視図、図2は図1の扉3を取り外した状態の低温ショーケース1の一部分解斜視図、図3は図1の縦断側面図、図4は低温ショーケース1の横断平面図、図5は図4の円Aの拡大図、図6は図5の円Bの拡大図、図7は図3の低温ショーケース1下部の拡大断面図、図8は図3の低温ショーケース1上部の拡大断面図、図9は図2の円Cの拡大図をそれぞれ示している。
【0021】
本実施例のショーケース1はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗に設置されて商品を冷却しながら陳列する低温ショーケースであり、前面に開口を有する断熱箱体(断熱壁)より本体2が構成されている。この本体2は前面に開口する鋼板製の外箱5と、この外箱5内に間隔を存して組み込まれた前面に開口する鋼板若しくは硬質合成樹脂製の内箱6と、外箱5及び内箱6間に発泡充填された発泡ポリウレタンから成る断熱材7とから構成されている。尚、本実施例では、当該本体2の前面開口上縁は、天壁2Cの前端が所定寸法だけ下方に延在して構成される。
【0022】
そして、内箱6の内方には、前方に開口する陳列室8が形成され、当該前面開口(開口部)8Aは内部を透視可能とするガラス4を有する観音開き式の扉3、3によって開閉自在に閉塞される。各扉3は、ヒンジ部材11によって本体2の一側を中心に回動自在に枢支される。尚、扉3の詳細な構成については後述する。
【0023】
本体2の底面には、所定の高さを有する台脚アングル12が取り付けられており、この台脚アングル12の両側面は、本体2の両側面と共に化粧パネル13にて被覆されている。これにより、本体2の下方には、断熱壁外において前方に開口を有する機械室21が形成される。そして、本体2の底壁2Aには、断熱材5を貫通するかたちで冷気吸込口14及び冷気吐出口15が前後にそれぞれ形成されている。
【0024】
機械室21の天井となる本体2の底壁2A下面には、上面に開口を有する冷却箱22が当接して設けられる。この冷却箱22の内部には、冷却室23が形成され、冷却装置を構成する冷却器24及び当該冷却器24の前側には冷却器用ファン25が配設される。尚、この冷却箱22の上面開口には冷却箱22側の冷気吸込口27及び冷気吐出口28が形成されている。これら冷気吸込口27及び冷気吐出口28は、それぞれ本体2の底壁2Aに形成された前記冷気吸込口14及び冷気吐出口15にそれぞれ対応する。
【0025】
他方、本体2の背壁2Bの内方には、底壁2Aに形成された冷気吐出口15と陳列室8の上部とを連通するダクト10を構成する仕切板9が取り付けられている。この仕切板9の上端には、冷却器用ファン25から吐出された冷気を供給するための冷気吐出口16が形成されていると共に、陳列室8背面を構成する仕切板9には、複数の開口9Aが形成されている。
【0026】
一方、前記機械室21内には、前記冷却器24と共に冷凍サイクルの冷媒回路を構成する圧縮機33、凝縮器34等と、それらに送風する凝縮器用ファン35から成る冷却ユニットRなどが設けられている。
【0027】
そして、機械室21の前面には、複数の吸込口17が穿設された機械室カバー18により開閉自在に閉塞されている。この機械室カバー18は、機械室21前面開口縁から前記扉3の下方にまで延在して形成されている。機械室カバー18の上面は、図7の部分拡大図に示すように、陳列室8の前面開口(開口部)8A下部に対応する位置に上方に開口する排気口(吹出部)19が左右(長手方向)に延在して複数、形成されていると共に、当該排気口19の前側には、当該排気口19の開口縁よりも低く形成される露受部24が形成されている。
【0028】
また、機械室21内に配設される凝縮器用ファン35は、当該凝縮器用ファン35の前側(即ち、空気吸込側に相当する機械室カバー18側)に位置する凝縮器34の上端に渡ってファンケース26が取り付けられている(図3参照)。このファンケース26の前端は、機械室カバー18の吸込口17の上方に位置する裏面にまで渡って構成されており、これによって、吸込口17から吸い込まれ、凝縮器34の廃熱によって加熱された空気の一部がファンケース26と本体2の底壁2Aとの間に形成される排気ダクト51を介して排気口19から上方に排気される構成とされる。尚、本実施例では、ファンケース26は、機械室カバー18裏面にまで渡って形成されているものとしているが、これに限定されるものではなく、排気ダクト51を構成することができるものであれば、二部品以上の仕切板などによって構成しても良いものとする。
【0029】
次に、扉3の構成について説明する。扉3は、例えば硬質合成樹脂にて構成される扉枠3Aと、当該扉枠3Aに嵌め込まれた透明複層ガラス4と、扉枠3Aの内面(陳列室8側を構成する面)周囲に取り付けられたガスケット40とから構成される。扉3の下辺を構成する扉枠3Aには、上下方向に内部を貫通する複数の図示しない通風孔が形成されており、当該通風孔は、ガラス4の外方側(陳列室8側とは反対側)に開口している。また、ガスケット40内には、陳列室8の前面開口縁8Aに密着して閉塞するための磁性体としての磁石が設けられている。
【0030】
そして、本実施例では、略同一寸法の観音開き式の扉3にて構成されているため、本体2の開口部8Aの略中央には、上下に渡って各扉3の中央側に位置するガスケット40が当接する中支柱41が立設されている。係る中支柱41は、図2の斜視図に示すように、上下に延在して形成される図示しない金属製の後パネルと、前パネル43と、これらパネル間を連結する樹脂製のブレーカ44、44により構成されており、これらパネル43、ブレーカ44にて囲繞される空間には、断熱材が発泡充填されている。金属製材料にて構成される前パネル43の前面は、両ブレーカ44の前端と略面一に構成されている。
【0031】
そして、この中支柱41の前面に対応する位置に、当該中支柱41前面との間に中支柱ダクト42を構成する中支柱ダクト部材45が取り付けられる。この中支柱ダクト部材45は、少なくとも前パネル43がガスケット40の磁石と磁力によって密着可能とする材料、例えば鋼板性材料にて構成されており、その上端は、図8に示すように、本体2の天壁2Cの前面であって、少なくとも扉3のガスケット40上辺40Aよりも上方、本実施例では、扉3の上縁よりも上方にまで延在して構成されている。また、その下端は、図7に示すように、本体2の底壁2Aの前面若しくは、前面より下方であって、前記機械室カバー18に形成される排気口19内にまで延在して構成されている。
【0032】
本実施例では、当該中支柱ダクト部材45の下端は、機械室カバー18の排気口19内にて開口する導入部50が形成されており、排気口19から排出される機械室21内の排気を当該導入部50を介して中支柱ダクト42内に流入可能な構成としている。
【0033】
そして、この中支柱ダクト部材45は、図6に示すように、両扉3のガスケット40を回避した位置に設けられ、その断面は、扉3を閉じた状態で、扉枠3Aの後面と、本体2の天壁2C前面、中支柱41前面、底壁2Aの前面との間の隙間寸法内に収容可能とする寸法で、後方(中支柱41側)に開口する略コ字状を呈し、その両側端は、外方に向けて折曲形成されたフランジ45A、45Aとされている。
【0034】
これらフランジ45A、45Aの裏面は、本体2の天壁2C前面、中支柱41前面及び底壁2Aの前面と当接可能とされており、天壁2C前面と当接する位置及び底壁2Aの前面と当接する位置には、ネジ止めにより固定するためのねじ穴46が形成されている。そのため、当該中支柱ダクト部材45の上端は、天壁2C前面に形成される図示しないねじ穴と当該ダクト部材45のねじ穴46とを重合してネジ47によって固定され、中支柱ダクト部材45の下端は、底壁2A前面に形成されるねじ穴48と、当該ダクト部材45のねじ穴46とを重合してネジ47によって固定される。
【0035】
このとき、天壁2C前面、底壁2Aの前面と、中支柱41の前面とは、略面一とされているため、中支柱ダクト部材45のフランジ45Aと、中支柱41前面とは、当接して設けられることとなる。
【0036】
そして、この中支柱ダクト部材45の上部両側面には、上下に複数の排気孔51・・・が設けられている。これら排気孔51は、図8及び図9に示すように、上側に形成される排気孔51の開口面積は、下側に形成されるものよりも大きくなるように形成されている。また、これらの排気孔51の一部は、図8に示すように扉3のガスケット40上辺40Aよりも上側に位置して形成されている。
【0037】
尚、当該中支柱ダクト部材45の上端は、図9に示すように上方に開口して形成されていてもよいが、これに限定されるものではなく、上壁を設けて上端を閉塞してもよい。
【0038】
係る構成により、扉3が閉じられた状態では、中支柱ダクト部材45は、扉3のガスケット40を回避した状態で扉枠3A後面と中支柱41前面との間に形成される隙間内に位置するため、扉3の開閉の邪魔となることなく、当該ガスケット40が中支柱41の前面の中支柱ダクト部材45両側に当接可能とされ、該ガスケット40内部に設けられる磁石の磁力によって中支柱41の前パネル43に密着可能とされる。
【0039】
以上の構成により、冷却ユニットRが運転されると、冷却室23内の冷却器24は、冷却作用を発揮する。このとき、冷却器用送風機25が運転されることにより、冷却器24で冷却された冷気は、冷気吐出口28、15を介して本体2内のダクト10内を上昇し、当該冷気の一部は、冷気吐出口16から陳列室8上部前方に向けて吐出される。図3にて実線矢印にて示すように、陳列室8内に吐出された冷気は、前面開口8A上部、即ち、扉3上部に向けて吐出され、降下して陳列室8内を循環した後、冷気吸込口14、27を介して冷却室23内に帰還する。これにより、陳列室8内は、所定の温度にまで冷却される。
【0040】
このとき、当該冷気循環を行う低温ショーケース1では、陳列室8内に吐出されたばかりの低温の冷気は、図1の一点破線にて囲繞される扉3上部の扉枠3A付近が最も低温となる。そのため、係る部分において外気と接触する中支柱41の前面や扉3のガスケット40表面には、結露が発生しやすくなる。
【0041】
本実施例では、凝縮器用ファン35の運転によって機械室21前方の外気は、先ず、機械室カバー18の吸込口17を介してファンケース26にて囲繞された機械室21内に流入し、凝縮器34を空冷する。凝縮器34を空冷することによって温められた外気(暖気)の一部は、ファンケース26と本体2の底壁2Aにより形成される排気ダクト51内に流入し、機械室カバー18の上面に左右に渡って形成される排気口19より上方に吹き出される(図7では黒塗りの矢印で示す)。
【0042】
排気口19より上方に吹き出された暖気の一部は、周囲空気に拡散されることなく中支柱ダクト部材45に形成される導入部50より中支柱ダクト42内に流入し、該ダクト42内を上昇する。ダクト42内を上昇した暖気は、中支柱ダクト部材45の上部に形成される各排気孔51・・・より扉3上部と本体2(中支柱41)間におけるガスケット40の外側に向けて排出される。
【0043】
本実施例では、排気孔51は、扉枠3Aの後面と、本体2の天壁2C前面、中支柱41前面、底壁2Aの前面との間の隙間内に収容される中支柱ダクト部材45の上部両側面に形成されているため、扉3の扉枠3Aの後面と、本体2との間から各扉3の上部のガスケット40、即ち、ガスケット40の上辺40Aや、中支柱41に当接するガスケット40の上部、更には、当該ガスケット40と上辺40Aにより構成される角隅部のそれぞれの外側に向けて暖気を直接、排出することができる。
【0044】
特に、係る扉3上部の扉枠3A付近は、上述したように、陳列室8内に吐出されたばかりの低温の冷気が供給されることで、外気と接触する中支柱41の前面や扉3のガスケット40表面の内で最も低温となるため結露が生じやすいが、このように、扉3の扉枠3Aと本体2間におけるガスケット40上部を暖気の供給によって直接加熱することができるため、係る扉3上部に設けられるガスケット40や当該ガスケット40付近の中支柱41表面に結露が発生し難くなる。
【0045】
そのため、扉3の開閉動作時に、扉3上部に付着した水滴が使用者に飛び散る都合や、当該水滴によって床面を濡らしてしまうなどの不都合を抑制することが可能となる。また、係る部分における中支柱41表面に結露水が付着し難くなることから、扉3裏面(ガスケット40)との密着性の向上を図ることが可能となり、陳列室8内の冷気の漏洩を抑制することが可能となる。
【0046】
また、本実施例では、中支柱ダクト部材45に形成される排気孔51は、上方のもの程、排気孔51の開口面積が大きくなるように設定されているので、より機械室21から離間し、暖気が届きがたい上方ほど、効率的に暖気の排出させることができる。従って、効果的に扉3上部に設けられるガスケット40や、当該ガスケット40付近の中支柱41表面に結露が発生し難くなる。
【0047】
更に、本実施例では、中支柱ダクト部材45は、中支柱41の前面に設けられているので、中支柱ダクト42内を上昇する凝縮器用ファン35から吐出された暖気からの伝導熱によって、中支柱41の前面に設けられる中支柱ダクト部材45を加熱することができる。
【0048】
これにより、外気が接触する中支柱ダクト部材45の上下に渡って、その表面に結露が発生し難くなる。そのため、中支柱ダクト部材45の前面に当接する扉3のガスケット40にも結露が生じ難くなり、扉3の開閉動作時に手指を濡らしてしまう不都合や扉裏面に付着した水滴によって床面を濡らしてしまうなどの不都合を抑制することが可能となる。また、中支柱41表面に結露水が付着し難くなることから、中支柱41前面と扉3のガスケット40との密着性の向上を図ることが可能となり、陳列室8内の冷気の漏洩を抑制することが可能となる。
【0049】
また、中支柱ダクト部材45の下端に設けられる導入部50は、前記機械室カバー18に形成される排気口19に対応して形成されているため、格別に機械室21からの暖気を誘導するための手段を設けることなく、効率的に、機械室21からの暖気を中支柱ダクト42内に導入することが可能となる。
【0050】
尚、上記構成では、中支柱ダクト42は、既存のショーケースに設けられる中支柱の前面に中支柱ダクト部材45を取り付けることで、構成することが可能であるため、中支柱の設計変更を行うことなく、本発明を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用した低温ショーケースの斜視図である。
【図2】図1の扉を取り外した状態のショーケースの一部分解斜視図である。
【図3】図1の縦断側面図である。
【図4】図1の横断平面図である。
【図5】図1の円A部分の拡大図である。
【図6】図5の円B部分の拡大図である。
【図7】図3のショーケース下部の拡大断面図である。
【図8】図3のショーケース上部の拡大断面図である。
【図9】図2の円C部分の拡大図である。
【図10】従来の低温ショーケースの扉を取り除いた状態の斜視図である。
【図11】図11の平断面図である。
【図12】図12の円D部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0052】
1 低温ショーケース
2 本体(断熱箱体)
2A 底壁
2B 背壁
2C 天壁
3 扉
4 ガラス
8 陳列室
10 ダクト
16 冷気吐出口
17 吸込口
18 機械室カバー
19 排気口(吹出部)
20 露受部
21 機械室
24 冷却器
34 凝縮器
35 凝縮器用ファン
40 ガスケット
41 中支柱
42 中支柱ダクト
43 前パネル
44 ブレーカ
45 中支柱ダクト部材
50 導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁から成る本体内に構成された陳列室と、該陳列室の前面開口縁に密着するガスケットを備えて当該前面開口を開閉自在に閉塞する扉と、前記陳列室の開口部に設けられ、前面に前記扉の前記ガスケットが当接する中支柱と、前記陳列室下方の断熱壁外に構成された機械室と、該機械室内に配設された圧縮機、凝縮器、凝縮器用ファンなどから成る冷却ユニットとを備えた低温ショーケースにおいて、
前記中支柱に上下に渡って取り付けられ、内部に中支柱ダクトを構成する中支柱ダクト部材と、
前記凝縮器用ファンから吐出された空気を前記中支柱ダクト内に導入する導入部と、
前記中支柱ダクト内を上昇した空気を、前記扉上部と前記本体間における前記ガスケットの外側に向けて排出する排気孔とを備えたことを特徴とする低温ショーケース。
【請求項2】
前記排気孔は、前記中支柱ダクト部材に複数設けられていると共に、各排気孔の開口面積は、上方のもの程大きくなるよう設定されていることを特徴とする請求項1に記載の低温ショーケース。
【請求項3】
前記中支柱ダクト部材は、前記中支柱の前面に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の低温ショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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