説明

低温収縮性フィルム

本発明は60℃における寸法安定性に優れ、100℃,120℃で良好な収縮性を有する収縮性フィルムを提供すること。密度が0.870〜0.920g/cmの少なくとも1種のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、110℃未満に主ピークを有する少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)から構成される、少なくとも1層からなるフィルムにおいて、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率が50〜100%であり、且つフィルムの示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率が60〜100%であり、フィルムの縦方向と横方向の加熱収縮率の平均値が60℃において0〜15%、100℃において50%以上、120℃において70%以上である低温収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシュリンク包装用の低温収縮性フィルムに関するものであり、特にピロー型の自動包装機や突上型、直線型等の自動包装機によるシュリンク包装及びストレッチシュリンク包装に適した延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シュリンク包装は、その特長として、被包装物の形状や大きさに依らずまた同時に複数個の製品を迅速かつタイトに包装することができ、得られた包装物は外観が美しく、ディスプレイ効果を発揮し、商品価値を高め、また内容物を衛生的に保ち、視覚による品質確認が容易なことから、食品、雑貨等の包装に多用されている。かかるシュリンク包装とは、フィルムに少し余裕を持たせて内容物を一次包装した後、熱風等によりフィルムを熱収縮させる方法であり、例えばピローシュリンク包装がその代表例である。この方法によれば、一般的には容器やトレーに収納された食品等の被包装物をフィルムで筒状に覆い、次に回転ローラー式等のセンターシール装置にて被包装物の裏面にシール線がくるように合掌ヒートシールし、続いて該筒状フィルムの両開放端をヒートシールして袋状とし、これを加熱収縮させる。
【0003】
このピローシュリンク包装には、上記以外にも三方シール及び四方シールした袋状フィルムを加熱収縮する方法等がある。上記ピローシュリンク包装の主な例として、蓋付きのポリスチレン製やフィラー入りポリプロピレン製等の耐熱容器を使用した弁当や惣菜の包装等が挙げられる。しかしながら近年、上記の容器に比べ耐熱性が低い非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、A−PETという)容器を採用したカット野菜等のサラダ容器の包装も行われているが、容器の耐熱性が低いことから、フィルム収縮時の容器変形が問題となっている。一般にA−PETのガラス転移点は約80℃であり、この温度以上に加熱されると、容器の変形が起こりやすくなる。
【0004】
従って、この容器の包装において最も重要なフィルムの特性として、容器の変形温度以下でフィルムが高収縮する必要があり、具体的には高くとも120℃以下で高収縮する必要がある。ここで言うガラス転移点とは、それよりも高い温度では高分子の各部分の熱運動が激しく、ゴム状弾性を示すが、それより低い温度では熱運動が自由体積の減少に抑制されて硬くなる温度であり、高分子物質の硬さが急激に変化する温度である。また、ユーザーサイドにおいても、収縮処理を行うシュリンクトンネルの高温条件での運転は、内容物の温度上昇を招き、雑菌の繁殖を促進させるといった懸念から、衛生上嫌われる傾向があり、また省エネルギーの観点から使用温度はできる限り低い方が望ましいという要望もある。
【0005】
シュリンク包装に適した多層フィルムとして、特開平07−009640号公報において、エチレン−α−オレフィン共重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体等との混合樹脂を表面層とし、高圧法低密度ポリエチレンの重合体層を内部層としたフィルムが例示されており、包装適性、表面ディスプレイ特性に優れた多層フィルムが提案されている。しかしながら、上記特開平07−009640号公報に例示されているフィルムは内部層として、高圧法ポリエチレンや比較的密度の高い線状低密度ポリエチレンを配しているために80〜120℃における温度域の収縮率が低く、実包装時のシュリンクトンネル温度は140℃以上に設定する必要がある。その結果A−PET容器を包装する場合には容器が変形するといった問題がある。
また、収縮性に優れたフィルムとして、特許第2989479号において、エチレン−α−オレフィン共重合体とエチレン酢酸ビニルの組成物を表面層とし、ポリ塩化ビニリデンを内層としたフィルム、また表面層に用いたエチレン−α−オレフィン共重合体を単独で使用したフィルムが例示されており、低温での収縮性に優れたフィルムが提案されている。しかしながら、特許第2989479号に記載されている延伸方法で得られたフィルムは樹脂の融点より低い温度で延伸されており、特に低融点の樹脂を用いた例では、90℃における収縮性は良好であるものの、延伸温度が室温に近すぎるために、低温での収縮成分が多く、保管、輸送中で寸法変化がおこりやすくなり、規定のフィルムとはサイズの異なってしまうといった問題がある。
【特許文献1】特開平07−009640号公報
【特許文献2】特許第2989479号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は80〜120℃で良好な熱収縮性を有する収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明により課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.密度が0.870〜0.920g/cmの少なくとも1種のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、示差走査熱量計の2nd.融解挙動において110℃未満に主ピークを有する少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)を含む組成物を含んでなり、以下の(1)〜(3)を特徴とする低温収縮性フィルム:
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が50〜100%であること、
(2)フィルムの示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が60〜100%であること。
(3)フィルムの縦方向と横方向の加熱収縮率の平均値が60℃において0〜15%、100℃において50%以上、120℃において70%以上であること。
【0008】
2.エチレン系共重合体(B)が、酢酸ビニル含有量5〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体である前記1.記載の低温収縮性フィルム。
3.エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下である前記1.記載の低温収縮性フィルム。
【0009】
4.密度が0.870〜0.920g/cmの少なくとも1種のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、示差走査熱量計の2nd.融解挙動において110℃未満に主ピークを有する少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)を含んでなり、以下の(1)及び(2)を満足する樹脂組成物を環状ダイスより押出し、得られたチューブ状原反を延伸機内に誘導し、延伸機内で再加熱して延伸を行う低温収縮性フィルムの製造方法であって、延伸開始温度が樹脂の融点以上の温度であり、かつ80〜150℃である上記製造方法:
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が50〜100%であること、
(2)フィルムの示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が60〜100%であること。
【0010】
5.前記1.〜3.のいずれか一項に記載のフィルムの、ガラス転移点90℃以下の熱可塑性樹脂製容器をシュリンク包装した包装材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の低温収縮性フィルムは特定の原料からなり、特に100℃〜120℃における収縮性に優れるため、一般トレー包装用のピロー又はオーバーラップ自動包装機による、収縮仕上りが良好である。また、低温収縮性に優れることにより、フルーツやサラダ、カット野菜又はそばやそう麺、にゅう麺、中華系麺類、うどん系麺類を内容物とする、例えば非晶性若しくは低結晶性のPET(例えば、A−PET、PETG等)容器等のガラス転移点が90℃以下の耐熱性が低い熱可塑性樹脂製容器の包装にも好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、特にその好ましい実施態様を中心に、以下具体的に説明する。
本発明でいうエチレン−α−オレフィン共重合体(A)としては、エチレンと、炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体とのランダム共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。
共重合体中のエチレン含量は、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜85重量%である。該樹脂はマルチサイト触媒又はシングルサイト触媒のいずれで重合されたものでもよいが、エチレン系共重合体(B)との相溶性の観点から、シングルサイト系触媒で重合された組成で、分子量分布が狭いものが好ましい。ゲルパーミエイションクロマトグラフィー装置(以下、GPCという)によって測定される分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下のものを使用することで、エチレン系共重合体(B)との相溶性が向上し、透明性が良好となる。
【0013】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の密度は、0.870〜0.920g/cmが好ましい。密度が0.870g/cm以上であることにより、フィルムの腰が上がり、包装機上での走行性が良くなる傾向にあり、密度が0.920g/cm以下であることによりエチレン系共重合体(B)との相溶性が良くなる傾向にあり、更には低温収縮性や収縮後の透明性、光沢が良好となる傾向にある。また、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、示差走査熱量計の2nd.融解挙動(以下、DSC2nd.カーブと記す)において、全融解熱量に対して100℃以下の融解熱量の比率が50〜100%である樹脂を使用することで、フィルム全体の結晶性を低下させ、100℃〜120℃での収縮性を向上させることができる。
【0014】
本発明でいうエチレン系共重合体(B)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。これらは更にその他の成分を加えた3成分以上の多元共重合体(例えば、エチレンと脂肪族不飽和カルボン酸及び同エステルから選ばれる、任意の3元以上の共重合体等、又はこれらを変性したもの)であってもよく、共重合させる成分が上記のもの、又はその他の成分から選ばれる少なくとも2種以上の多元共重合体であってもよく、更にはエチレンとコモノマーとしてオクテン−1等のα−オレフィンを共重合させた超低密度ポリエチレン等でもよい。中でも透明性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。これらはDSC2nd.カーブにおいて、110℃未満に主ピークがあるものを用いることで、フィルムに柔軟性と良好な低温収縮性を付与できる。
この例に限定されるものではないが、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体(B)のブレンド比率の目安としては、例えば(A)の100℃以下の融解熱量の比率が50%程度の場合は、(B)としては融点が100℃以下のものを50重量%以上ブレンドする方が低温収縮性の観点から好ましい。一方、(A)が100℃で100%融解する場合は、(B)は100℃以上、110℃未満に融解ピークを持つものから選択できるが、ブレンド比率としては50重量%以下が低温収縮性の観点から好ましい。
【0015】
また、縦方向と横方向の加熱収縮率の平均値は、60℃においては0〜15%が好ましく、更に好ましくは0〜10%である。60℃における収縮率が15%を超えると、流通時及び保管時又は輸送時の温度上昇によって、寸法安定性が悪くなる。例えば、流通時及び保管時の温度上昇によって、使用前にフィルムが収縮して、幅が狭くなると包装機走行時にフィルムが蛇行したり、酷い場合はシール不良の原因となる。一方、100℃においては50%以上が好ましく、更に好ましくは60%以上である。120℃においては70%以上が好ましく、更に好ましくは75%以上である。100〜120℃の収縮率が上記収縮率を下回ると、ピロー包装する際に収縮不足となり、小皺残り等の問題があり、商品性が低下する。特に皿型や丼型の容器の場合は角残りも発生し、タイトな包装体が得られない。
【0016】
一方、本発明のフィルムはダブルバブルインフレーション法やテンター法によって、延伸製膜される。特にダブルバブルインフレーション法は10μm程度の薄いフィルムを延伸するのに好適である。具体的には環状ダイスから、樹脂を押出し、チューブ状の未延伸原反を得る。これを急冷固化したものを、延伸機内に誘導し、延伸開始点を樹脂の融点以上で、かつ80〜150℃まで加熱しながら、回転速度差を設けたニップロール間でエアー注入を行い、縦横それぞれ、4〜10倍の倍率で延伸を行う方法が好ましい。ここで言う融点とは、DSC2nd融解パターンにおける融解時のピーク値を指すが、ピークが2箇所以上ある場合は、最も高温側のピーク値を指す。樹脂の融点以上で延伸することで、40〜60℃の低温収縮成分が残りにくくなるために、寸法安定性が良好となる。また、150℃以下で延伸することで、フィルム表面の荒れが起こりにくくなり、透明性や光沢が向上する傾向にある。
【0017】
また、目的に応じて例えば架橋処理などによって耐熱性を付与してもよい。架橋処理は延伸前又は延伸後のいずれの工程で行ってもよいが、延伸前で行うと、比較的小型の架橋処理装置を使用できるため、好ましい場合がある。
多層構造にすると更にシール性の観点から好ましい場合がある。多層構造のフィルムを製膜するには、例えば、ダブルバブルインフレーション法で製膜を行う場合、数台の押出機を使用して多層原反を得る。本発明においては層の数は限定されるものではないが、3層又は5層が各層の偏肉調整の観点より好ましい場合がある。例えば、3層、5層又は7層の場合、各層の視差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量が60〜100%である方が好ましい。100℃以下の融解熱量が60%未満の場合でも目的とする収縮特性のフィルムが得られる場合があるが、高融点の樹脂を使用すると、その層自体の収縮性が低下し、特に収縮後の透明性が低下する場合がある。エチレン−α−オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体(B)の組成物の層を内層として、使用する場合に、表層に使用する樹脂層は透明性、シール性の観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が好ましい場合があり、特にエチレン−α−オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び、それらの内の数種の混合物がシール性の観点から好ましい場合がある。特にシール性と収縮性の観点から、密度が0.880〜0.920g/cmの範囲のエチレン−α−オレフィン共重合体と、融点が110℃以下の高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等から選ばれる1種又は2種以上のエチレン系重合体を50重量%以下ブレンドして表層組成として使用するのが最も好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.880g/cm以下ではシール強度が低下し、密度が0.920g/cmを超えると内層よりも収縮速度が遅くなることがあり、内層の収縮に外層が追随しない場合は、収縮後の透明性が低下する傾向にある。ブレンドするエチレン系重合体は低温収縮性の観点から、融点として110℃以下が好ましく、フィルム表面のべた付き防止の観点から、80℃以上が好ましい。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体(B)の組成物の層を表面層として使用する場合、内層として密度が0.880〜0.920g/cmの範囲のエチレン−α−オレフィン共重合体や、融点が110℃以下の高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等から選ばれる1種または2種以上のエチレン系重合体をブレンドして内層組成として使用してもよい。エチレン−α−オレフィン共重合体の密度が0.880g/cm以下ではフィルムの腰が低下し、密度が0.920g/cmを超えると収縮性が低下する傾向にある。内層として使用するエチレン系重合体は低温収縮性の観点から、融点として100℃以下が好ましい。
次に押出された原反について、延伸開始温度80〜150℃、延伸倍率4〜10倍で延伸を行い、原反フィルムを得る。この原反フィルムにコロナ処理やオゾン処理、火炎処理等の表面処理を行うと印刷用途にも適したフィルムが得られる。得られた原反フィルムは所定のサイズにスリット加工し、フィルムを得る。フィルムの厚みは7〜30μmが好ましく、8〜20μmが更に好ましい。本発明のフィルム中には本来の特性を損なわない程度で界面活性剤や防曇剤を含んでもよく、例えばグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール部分の脂肪酸エステルが挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステルを使用する場合、含有量として0.5重量%〜10%が好ましいが、帯電防止性の観点から0.8重量%以上、押出安定性の観点から6.0重量%以下が更に好ましい。また、フィルムを印刷用途に用いる場合はグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステルを0.8重量〜2.0重量%添加し、コロナ処理を行ってから、印刷処理を行うのが好ましい。インク剥がれ防止の観点から、添加量としては1.0重量%〜1.5重量%が更に好ましい。更には可塑剤として、ミネラルオイルや石油系樹脂を含んでもよく、本来の特性を損なわない範囲で加工助剤として、高圧法低密度ポリエチレン等を配合してもよい。ミネラルオイルや石油樹脂(アルコン(商標)、クリアロン(商標)を使用する場合、含有量としては0.1重量%〜10重量%とすると収縮性や透明性が好ましい場合がある。
【実施例】
【0018】
本発明を実施例に基づいて説明する。
(1)示差走査型熱量計(DSC)測定
パーキンエルマー社製入力補償示差走査熱量測定装置Diamond DSC(商標)を用いて、温度0℃から10℃/分で200℃まで昇温した(1st.融解挙動)。200℃で1分間保持した後、10℃/分で0℃まで降温した(1st.結晶化挙動)。次いで再び10℃/分で200℃まで昇温し(2nd.融解挙動)、この時の主ピーク温度を採用した。試料重量は5〜10mgの範囲に入るようにした。
【0019】
(2)分子量分布(Mw/Mn)
GPC(日本ウォーターズ社製GPC装置150C型(商標))を用い、カラムとして東ソー製TSK GMH−6(商標)を、溶媒としてオルトジクロロベンゼン(ODCB)を用いて、温度135℃、流量1ml/min、濃度10mg/10ml、サンプル流量500μlの条件で測定した。標準ポリスチレンでの構成曲線から換算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から、Mw/Mnを求めた。
【0020】
(3)収縮後HAZE
あらかじめ、30%の面積余裕率を持たせて、フィルムを100mm角の木枠に貼り付けたものを、120℃に加熱したシュリンクトンネルを通し、収縮させて、フラットなフィルムを得た。これを、ASTM−D−1003に準じて測定し、フィルムの透明性を評価した。
【0021】
(4)収縮後GLOSS
あらかじめ、30%の面積余裕率を持たせて、フィルムを100mm角の木枠に貼り付けたものを、120℃に加熱したシュリンクトンネルを通し、収縮させて、フラットなフィルムを得た。これを、ASTM−D−2457に準じて測定し、フィルムの光沢を評価した。
【0022】
(5)収縮率
100mm角のフィルムを所定の温度に設定したエアーオーブン式高温槽に入れ、1分間熱処理を行い、フィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比で表し、縦横の平均値を求めた。
【0023】
(6)包装品の収縮性
得られたフィルムを500mm巾にスリットし、株式会社フジキカイ製の「FW−3451A−αV(商標)」を用いて、リスパック社製「ハイクッカーHD−180Bアイボリー(商標)」に米飯を200g入れたものを各20パック包装し、120℃に設定したシュリンクトンネル中で3秒間の熱処理を行い、収縮性の評価を行った。完全収縮し、仕上りが良好なものを5点、角はないが小皺のあるものを4点、やや角残りがあるものを3点、ユルミがあってタイトに収縮できていないものを2点、全く収縮していないものを1点とした。
【0024】
(7)寸法安定性の評価
得られた巾300mmのロール状フィルムを40℃で2週間保管し、開始前のフィルム巾寸法300mmに対し、2週間経過後の幅方向の寸法変化量に従い5段階評価を行った。
5点:幅方向の寸法変化量=3mm未満(実用上問題ないレベル)
4点:幅方向の寸法変化量=3mm以上〜6mm未満
3点:幅方向の寸法変化量=6mm以上〜9mm未満(シール不良が起こり得るレベル)
2点:幅方向の寸法変化量=9mm以上〜12mm未満
1点:幅方向の寸法変化量=15mm以上(実用に適さない)
【0025】
(8)実施例及び比較例において使用した樹脂
VL1:エチレン−α−オレフィン共重合体(シングルサイト系触媒にて重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.900g/cm、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=2.18、DSC2ndカーブの全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率=99.6%)
VL2:エチレン−α−オレフィン共重合体(シングルサイト系触媒にて重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.904g/cm、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.08、DSC2ndカーブの全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率=69.0%)
VL3:エチレン−α−オレフィン共重合体(シングルサイト系触媒にて重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.915g/cm、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.02、DSC2ndカーブの全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率=55.1%)
VL4:エチレン−α−オレフィン共重合体(シングルサイト系触媒にて重合されたもの、α−オレフィン=ブテン−1、密度=0.880g/cm、MI=0.5g/10分、Mw/Mn=2、DSC2ndカーブの全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率=100%)
【0026】
LL1:エチレン−α−オレフィン共重合体(シングルサイト系触媒にて重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.925g/cm、MI=2.0g/10分、DSC2ndカーブの全融解熱量に対する100℃以下の融解熱量の比率=37.9%)
EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量=15重量%、MI=1.0g/10分)
EVA2:エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量=5重量%、MI=2.0g/10分)
なお、EVA1及びEVA2は、DSC2nd.カーブにおいて、110℃未満に主ピークを持っている。
【0027】
実施例1
VL2を60重量%とEVA1を40重量%混合したものにジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含めたものを環状ダイを用いて押出した後、冷水にて冷却固化して、折り巾120mm、厚さ460μmのチューブ状原反を作成した。これを電子線照射装置に誘導し、500kVに加速した電子線を照射し、吸収線量として100kGyになるように架橋処理を行った。これを延伸機内に誘導して再加熱を行い、2対の差動ニップロール間に通して、エアー注入によりバブルを形成し、延伸開始点の加熱温度を140℃に設定し、縦方向に7倍、横方向に6倍の倍率にそれぞれ延伸を行って、厚さ11μmのフィルムを得た。得られたチューブ状のフィルムの両端をカットしながら、巾300mmのサイズに切り出して、2枚のフィルムとし、それぞれ1枚のフィルムとしたものを、巾310mm、内径76.2mm、厚さ10mmの紙巻に、皺が入らない程度のテンションで200mの長さで巻き付け、評価用フィルムとした。
【0028】
実施例2
VL3を40重量%とEVA1を60重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。
【0029】
実施例3
VL1を60重量%とEVA1を40重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。
【0030】
実施例4
VL1を40重量%とEVA1を60重量%に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。
【0031】
実施例5
VL2を60重量%とEVA1を40重量%混合したものを芯層とし、ジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含め、両表面層としてジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させたVL2を積層し、3層構成とした以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。
【0032】
実施例6
VL2を60重量%とEVA1を40重量%混合したものを芯層とし、ジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含め、両表面層としてジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させたEVA1を積層し、3層構成とした以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。
【0033】
実施例7
VL2を40重量%とEVA1を60重量%混合したものを芯層とし、ジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含め、両表面層としてジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させたVL3を積層し、3層構成とした以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。
【0034】
実施例8
VL3を60重量%とEVA1を40重量%混合したものを芯層とし、ジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含め、両表面層としてジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させたEVA1を積層し、3層構成とした以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。実施例1〜8で得られたフィルムの評価結果を表1〜2に示す。得られたフィルムのDSC2nd.カーブにおける全融解熱量に対する、100℃以下の融解熱量の割合は全て50%以上であり、100℃における加熱収縮率が50%以上、120℃における収縮率がそれぞれ70%以上であり、収縮性に優れており、収縮後の透明性、光沢も優れたフィルムであることが分かる。一方、60℃における加熱収縮率がそれぞれ5%以下であり、40℃保管における寸法安定性評価も良好であった。
【0035】
比較例1
VL3を60重量%とEVA2を40重量%にジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させた組成物に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。DSC2nd.カーブにおける全融解熱量に対する、100℃以下の融解熱量の割合が低いために、特に80〜100℃における収縮率が低く、実包装しても十分な収縮が得られなかった。
【0036】
比較例2
VL3を40重量%とEVA2を60重量%にジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させた組成物に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。DSC2nd.カーブにおける全融解熱量に対する、100℃以下の融解熱量の割合が低いために、特に80〜100℃における収縮率が低く、実包装しても十分な収縮が得られなかった。
【0037】
比較例3
VL4を70重量%とEVA1を30重量%とを混合し、環状ダイを用いて押出した後、冷水にて冷却固化して、折り巾120mm、厚さ180μmのチューブ状原反を作成した。これを延伸機内に誘導して再加熱を行い、2対の差動ニップロール間に通して、エアー注入によりバブルを形成し、延伸開始点の加熱温度を50℃に設定し、縦方向に4倍、横方向に4倍の倍率にそれぞれ延伸を行って、厚さ11μmのフィルムを得た。60℃における収縮率が高いため、寸法安定性が極めて悪く、実用に適さないフィルムとなった。100℃の収縮率は高いが、120℃の収縮率は低いため、実包装しても十分な収縮が得られなかった。
【0038】
比較例4
LL1を60重量%とEVA1を40重量%にジグリセリン脂肪酸エステルを1.5重量%含有させた組成物を芯層とし、VL2を両表面層とした以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表4に示す。芯層に用いたLL1の密度が0.920g/cm以上であるため、EVA1との相溶性に劣り、透明性が悪く、またフィルムの全融解熱量に対する、100℃以下の融解熱量の割合が60%未満のため、特に80〜100℃の収縮率が低く、実包装しても十分な収縮が得られなかった。
実施例及び比較例の樹脂組成等の製造条件、フィルムの物性を表1〜4に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のフィルムは蓋付き容器、蓋無しのトレー等の食品包装分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.870〜0.920g/cmの少なくとも1種のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、示差走査熱量計の2nd.融解挙動において110℃未満に主ピークを有する少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)を含む組成物を含んでなり、以下の(1)〜(3)を特徴とする低温収縮性フィルム:
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が50〜100%であること、
(2)フィルムの示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が60〜100%であること、
(3)フィルムの縦方向と横方向の加熱収縮率の平均値が60℃において0〜15%、100℃において50%以上、120℃において70%以上であること。
【請求項2】
エチレン系共重合体(B)が、酢酸ビニル含有量5〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1に記載の低温収縮性フィルム。
【請求項3】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)が3.5以下である請求項1に記載の低温収縮性フィルム。
【請求項4】
密度が0.870〜0.920g/cmの少なくとも1種のエチレン−α−オレフィン共重合体(A)と、示差走査熱量計の2nd.融解挙動において110℃未満に主ピークを有する少なくとも1種のエチレン系共重合体(B)を含んでなり、以下の(1)及び(2)を満足する樹脂組成物を環状ダイスより押出し、得られたチューブ状原反を延伸機内に誘導し、延伸機内で再加熱して延伸を行う低温収縮性フィルムの製造方法であって、延伸開始温度が樹脂の融点以上の温度であり、かつ80〜150℃である上記製造方法:
(1)エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が50〜100%であること、
(2)フィルムの示差走査熱量計の2nd.融解挙動において、全融解熱量に対して、100℃以下の融解熱量の比率が60〜100%であること。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムで、ガラス転移点90℃以下の熱可塑性樹脂製容器をシュリンク包装した包装材。

【国際公開番号】WO2005/049702
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515657(P2005−515657)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017253
【国際出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】