説明

低温水で活性化する機能性シート

【課題】低温水で活性化する機能性シートを提供する。
【解決手段】本発明は、第1の基材上に少なくとも1つの有効成分が塗布されるか又は含浸し、室温、特に0℃〜30℃の低温水に投入して使用される機能性シートであって、前記有効成分は、前記低温水中で第2の基材上に物理的または化学的に吸着し、前記低温水を除去しても第2の基材上に残っており、第1の基材として水接触角が90°以下の基材を使用し、0℃〜30℃の低温水に5分以内で第1の基材上に塗布されるかまたは含浸している有効成分の70%以上が脱離することを特徴とする機能性シートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温水で脱離可能な繊維柔軟剤などの有効成分が含浸した、または塗布された機能性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
衣類、繊維などの洗濯時、一般の洗浄剤及び補助剤が使用されている。洗浄剤は、衣類または繊維に付着している異物を分離させる役割を果たし、洗濯水と共に除去される。
【0003】
洗浄剤とは異なり、選択後にも衣類などの選択物に残って特定の機能を行う補助剤があり、例えば、洗濯による生地の質感変形を直して生地を柔らかくし、原状に復元させる機能を有する柔軟剤、生地の変形またはバクテリア、幼虫などの拡散と繁殖を防止するための抗菌剤、摩擦力の作用時に静電気を発生する生地に対する静電気発生を抑制して着用感を向上させるための帯電防止剤などが挙げられる。このような補助剤は、その機能を果たすため、洗濯過程において、洗浄剤とはその投与時期が分離して使用されている。洗濯は、通常、洗浄剤の投入と同時に所定待機時間つけ置きを行い、ついで洗浄、すすぎ、脱水の順で行われる。例えば、このような補助剤は、最後すすぎの時または脱水後の乾燥時に投入して使用されている。
【0004】
洗濯機用洗浄剤としては、通常、粉末状に加工されたパック単位の洗浄剤が利用されており、手洗いの時には、固形洗剤も使用することができる。しかし、柔軟剤、帯電防止剤、抗菌剤などのような補助剤は、それぞれ液状に加工してボトルや容器単位で包装されている。特に、市販の家庭用柔軟剤の多くは、液状タイプであるため、購買及び/又は使用の際に重く、浪費が多く、投与が不便であり、定量使用が難しいという問題がある。
【0005】
なお、一般洗濯機のすすぎ過程に使用される液状繊維柔軟剤とは異なり、乾燥機の高温でのみ性能が発揮する乾燥機用シート状繊維柔軟剤が販売されている。図2に示されるように、洗濯物を乾燥機で乾燥する時、洗濯物内の水分が熱により蒸発して高温のスチームになり、このような高温スチームの雰囲気下で洗濯物が膨潤し、その有効成分が乾燥機用シート状柔軟剤から気化及び摩擦によりシートから脱離し、繊維に強制吸着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水洗い洗濯に使用される洗浄剤とは異なり、洗濯完了後にも衣類に吸着して特定の機能を発揮する有効成分を含浸させた、または塗布した機能性シートであって、低温水でもシートから有効成分が容易に脱離し、第2の基材上に容易に吸着可能な機能性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、洗濯水またはすすぎ水で処理する時、有効成分が塗布されるか、または含浸した機能性シート内に水が容易に浸透できる条件を持たせることにより、低温水でもシート上の有効成分が容易に脱離するようになる。
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1の基材上に少なくとも1つの有効成分が塗布されるか、または含浸した、室温、特に0℃〜30℃の低温水に投入して使用される機能性シートであって、前記有効成分は、前記低温水中で第2の基材上に物理的または化学的に吸着し、前記低温水を除去しても第2の基材上に残っており、前記第1の基材として水接触角が90°以下の基材を使用し、室温、特に0℃〜30℃の低温水に5分以内で第1の基材上に塗布された、または含浸している有効成分の70%以上が機能性シートから脱離することを特徴とする機能性シートを提供する。
【0009】
また、本発明では、洗濯水またはすすぎ水で処理する時、有効成分が塗布されるか、または含浸した機能性シート内に水が容易に浸透することができると共に、前記有効成分の水分散を容易にすることができる条件を持たせることにより、低温水でもシート上の有効成分が容易に脱離するようになる。
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、第の基材上に少なくとも1つの有効成分が塗布されるか、または含浸し、0℃〜30℃の低温水に投入して使用される機能性シートであって、前記有効成分は、前記低温水中で第2の基材上に物理的または化学的に吸着し、前記低温水を除去しても第2の基材上に残っており、前記機能性シートは、光透過率が2乃至20%であり、これにより、0℃〜30℃の低温水に5分以内で第1の基材上に含浸している有効成分の70%以上が脱離することを特徴とする機能性シートを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗濯完了後にも衣類に吸着して特定の機能を発揮する柔軟剤のような有効成分を含浸させた、または塗布した機能性シートは、低温水でもシート上の有効成分が容易に脱離するため、流通、保管及び使用が便利であり、有効成分の定量使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一具体例に係る機能性シートの性能発現メカニズムを示す概略図である。
【図2】従来の乾燥機用シート状繊維柔軟剤の性能発現メカニズムを示す概略図である。
【図3】水接触角を示す図である。
【図4】第1の基材の水接触角を示す写真である。
【図5】第1の基材及び機能性シートの光透過率を示す写真である。
【図6】比較例2乃至5、実施例4乃至7で製造された機能性シートの水透過率、脱離率及び柔軟効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、第1の基材とは、有効成分を低温水に伝達するための担体または媒介体であって、使用前に有効成分を含浸させた、または塗布することができるシートをいう。
【0014】
また、本明細書において、第2の基材とは、低温水中で前記有効成分を吸着させようとする対象物であって、衣類または繊維などが挙げられ、通常、洗濯の対象となる洗濯物をいう。
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
柔軟剤のような有効成分は、選択完了後にも衣類に吸着して特定の機能を発揮するため、最終すすぎの時に投入されるが、柔軟剤は、5分程度の短いすすぎ時間の間に低温水に分散して衣類などに吸着される必要があるため、通常液状となっている。しかし、液状の柔軟剤は、購買及び/または使用の際に重く、浪費が多く、投与が不便であり、定量使用が難しいという問題がある。従って、本発明は、上記の有効成分を多孔性基材上に塗布し、または含浸させて提供することにより、液状柔軟剤の問題を解決しようとする。なお、基材上に有効成分が塗布されるか、または含浸した機能性シートは、3〜5分間の短いすすぎ時間の間に有効成分が大部分低温水へ脱離し、第2の基材上に、例えば、洗濯物に吸着される必要がある。
【0016】
本発明は、通常のすすぎ条件、例えば、室温、特に0℃〜30℃、好ましくは、0℃〜25℃の低温水で5分以内で第1の基材上に塗布されるか、または含浸している有効成分の70〜100%が脱離できる機能性シートを提供するため、第1の基材として水接触角が90°以下の基材を使用することに特徴がある。
【0017】
水接触角とは、水滴の表面への滴下時、水の表面張力によって表面に吸収されず、表面上に水滴が生じて表面となす接触角(図3参照)を意味し、表面の界面活性特性によって接触角が変化し、表面の親水性が高いほど水接触角が小さくなる。
【0018】
第1の基材として水接触角が90°以下の親水性基材を使用すると、洗濯水またはすすぎ水で処理する時、有効成分が塗布されるか、または含浸した機能性シートへの水の浸透が容易で、低温水でもシート上の有効成分が容易に脱離することができる。また、第1の基材として水接触角が90°を越えるものを使用する場合は、有効成分が第1の基材上に安定に塗布するか、または含浸させることができず、第1の基材上に有効成分を強制的に固着させても低温水の浸透が容易でないため、第1の基材から低温水への有効成分の分散が困難で、これによって、有効成分の第2の基材上への吸着も困難である。
【0019】
実際に、親水性エマルジョンで処理されていない不織布では、水接触角が120°であったが、親水性エマルジョンとして親水性シリコン系界面活性剤を50〜100ppm濃度で処理した場合は、水接触角が90°を超過し、このような不織布を使用する場合は、有効成分が不織布に安定に塗布されず、有効成分が十分に塗布されなかった。
【0020】
前記水接触角が90°以下の第1の基材は、疎水性ポリマー繊維で製造したシートを親水性エマルジョンで表面処理したもの、または親水性を有する天然繊維それ自体であることができ、親水性ポリマーで製造したシートであることができる。
【0021】
本発明に係る親水性エマルションは、界面特性を変化させて親水性を付与することができるもので、例えば、親水性界面活性剤などが挙げられ、当業者であれば、親水性エマルジョンとして使用可能なものを容易に選択することができる。例えば、第1の基材として不織布を使用する場合、親水性シリコン系界面活性剤などを使用することができる。親水性エマルジョンの使用量は、第1の基材の種類及び親水性エマルジョンの種類によるが、通常、第1の基材100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲で使用することができ、親水性エマルジョンの使用量は、実験を繰り返して行い、90°以下の水接触角を達成するため、適宜選択することができる。
【0022】
親水表面処理とは、ポリマー繊維で製造したシートに、親水性基を有する親水性エマルジョンを物理的または化学的に付着させることをいう。
【0023】
親水性基としては、例えば、スルホン酸塩、スルホン酸、カルボン酸塩、カルボン酸、リン酸塩、リン酸、ヒドロキシル基(OH)などが挙げられるが、これらに制限されない。また、親水性エマルジョンとしてSiを含有した無機ポリマー(例えば、複合金属酸化物)または有機ポリマーを使用することができる。親水性特性をさらに強化するため、無機ポリマーは、多孔性、例えば中空の管型多孔構造を有することができる。
【0024】
親水性エマルジョンがポリマーである場合、親水性モノマーとしては、例えば、カルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマー、スルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマー、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーなどが挙げられるが、これらに制限されない。カルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのカルボン酸モノマーを使用することができる。スルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、スチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などを使用することができる。水酸基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜12のヒドロキシアルキルメタクリレート類が好ましく、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはヒドロキシブチルメタクリレートなどを使用することができる。
【0025】
親水表面処理は、前記親水性エマルジョンを含有する塗布液を基材に適用させる方法であって、例えば、ディップコート、ダイコート、ロールコート、コンマコート、ドクターブレード、スプレー、グラビア印刷またはこれらの混合方法を使用することができる。コートは、1回または2回にわたって行うことができ、必要によっては、コートを行った後、通常の加熱、乾燥法を利用して硬化したコート膜を形成することができる。
【0026】
また、前記水接触角が90°以下の第1の基材は、多孔性基材であることが好ましい。多孔性基材に有効成分を塗布するか、または含浸させた場合、前記有効成分の表面積が大きくなって基材から脱離及び低温水への分散を容易にし、有効成分の脱離及び分散時間を短くすることができる。また、有効成分が塗布されるか、または含浸した機能性シートに単位面積当たり最適の孔隙率を持たせることにより、機能性シート内への低温水の浸透をさらに容易にすると共に、前記有効成分の水分散性を十分に発揮することができる。また、有効成分が塗布されるか、または含浸した後でも気孔構造を維持するように製造された機能性シートは、有効成分の比表面積が大きいので、有効成分が低温水に容易に脱離するようになる。
【0027】
また、本発明は、通常のすすぎ条件、例えば、室温、特に0℃〜30℃、好ましくは、0℃〜25℃の低温水で5分以内に第1の基材上に含浸している有効成分の70〜100%が脱離する機能性シートを提供するため、光透過率が2〜20%、好ましくは5〜10%になるように機能性シートの孔隙率を調節することに特徴がある。
【0028】
特に、機能性シートは、有効成分の単位面積当たりの含浸量または塗布量が0.1〜20mg/cmでありながら光透過率が2〜20%の孔隙率を有することが好ましい。
【0029】
本発明において、光透過率は、有効成分が含浸しているか、または塗布された機能性シートまたは前記第1の基材において総面積に対する光透過面積にて計算される。なお、光透過率は、前記機能性シートまたは第1の基材が光不透過性であることを前提として計算される。
【0030】
前記機能性シートまたは第1の基材は、孔隙が均一に形成されていないため、測定個所によって光透過率が異なっている。従って、前記光透過率は、全体的な機能性シートまたは第1の基材の平均光透過率を求めることが好ましい。例えば、1mm直径の円をサンプリングしてその光透過率を計算し、これをランダムに20個計算し、その平均値を求める。光透過率の計算において、不織布の接合点は光透過率面積の測定から除外する。前記接合点は、実質的に水が浸透することができないためである。
【0031】
前記光透過率は、水の接触可能な面積に対応し、前記機能性シートを水に浸す時に水が浸透できる孔隙率、即ち、水透過率に対応する。有効成分が含浸した機能性シートを水に漬け、直接その孔隙率または水透過率を計算する場合、有効成分が脱離して正確な孔隙率または水透過率を測定することができないため、光透過率を測定して水が浸透できる孔隙率または水透過率を予測している。
【0032】
本発明に係る機能性シートの光透過率が2%以上であれば、洗濯またはすすぎの際に水を容易に誘引し、第1の基材上に塗布されている有効成分が水と接触できる比表面積が大きくなり、低温水でも第1の基材上の有効成分が容易に脱離するようになる。しかし、本発明に係る機能性シートの光透過率が2%未満である場合は、水に触れて有効成分が水分散されず、20%を超える場合は、繊維柔軟剤のような有効成分が機能を十分に発揮できる程度に第1の基材に含浸させることができない。
【0033】
本発明において、低温水は、水だけでなく、水溶液、水分散液を含む。
また、攪拌下、室温、特に0℃〜30℃の低温水に5分以内で第1の基材上に塗布されるか、または含浸している有効成分の70%以上が脱離する機能性シートも本発明の範疇に含まれる。
【0034】
洗濯完了後にも衣類などに吸着して特定の機能を発揮する上記の有効成分としては、例えば、柔軟剤、芳香剤、帯電防止剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、抗菌剤、電解質、光学増白剤、漂白剤などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0035】
なお、前記機能性シートの光透過率を2〜20%にするためには、第1の基材は、多孔性基材であることが好ましく、第1の基材それ自体の光透過率は、20〜50%であることが好ましい。多孔性基材に有効成分を含浸させるか、または塗布した場合は、製造された機能性シートの比表面積も大きくなって多孔性基材から有効成分の脱離及び低温水中への分散を容易にし、有効成分の脱離及び分散時間を短くすることができる。なお、有効成分が含浸しているか、または塗布された機能性シートに単位面積当たり最適の孔隙率を持たせることにより、機能性シート内への低温水の流入をさらに容易にすると共に、前記有効成分の水分散性を十分に発揮することができる。また、有効成分が含浸しているか、または塗布された後でも気孔構造を維持するように製造された機能性シートは、有効成分の比表面積が大きくなって有効成分が低温水に容易に脱離することができる。
【0036】
前記第1の基材としては、綿、麻、リンネル、シルクなどの天然物質、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン系、ポリアミド系またはポリエステル系などの合成物質、または紙を使用することができる。
【0037】
前記第1の基材は、織物または不織布であることができる。前記第1の基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ナイロン、レーヨン、パルプ及びアクリルからなる群から選ばれた少なくとも1つのポリマー繊維を熱接合、エアスルー、スパンボンドまたはメルトブローン方式で製造された不織布であることが好ましい。なお、第1の基材の材質は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。これは、低価格であるだけでなく、製品化の際に、安定性に優れかつ洗濯後の毛羽発生が少ないためである。本発明の機能性シートは、低温水で使用されるものであるため、乾燥機用シート状繊維柔軟剤とは異なり、第1の基材は、高温での耐熱性が要求されない。
【0038】
また、流通時において、嵩を低減するという観点から、機能性シートは、容易に折り畳んで嵩を小さくする必要があり、このため、第1の基材は、柔軟性を有することが好ましい。
【0039】
なお、第1の基材を形成するポリマー繊維の繊度は、好ましくは、1〜10デニール、さらに好ましくは、3〜7デニールである。上記の繊度範囲であれば、各繊維間の空き領域で毛細管作用によって有効成分および/または低温水が容易に含浸しうるためである。
【0040】
坪量は、1m当たり質量(g)を意味し、前記第1の基材の坪量は、10〜100であることができ、好ましくは、15〜50である。10を下回る場合は、有効成分の含浸量または塗布量が十分でなく、100を上回る場合は、水の浸透空間が著しく少なくなって製品化が困難で、第1の基材それ自体が過度に重くなる。
【0041】
前記有効成分は、シート状に剤形化するため、60℃以上では液状、室温、特に30℃以下では固形であることが好ましい。製造過程において、円滑な含浸または塗布を行うため、高温、特に60℃以上では液状であることが好ましく、保管の際には、有効成分が流れることなく形態を維持する必要があるため、固形であることが好ましい。常温で液状の有効成分を不織布のような多孔性基材に含浸させるか、または塗布した場合、滑りやすくなって剤形化が困難であるためである。
【0042】
本発明に係る低温水で活性化する機能性シートは、第1の基材100重量部を基準にして有効成分の塗布量または含浸量を100〜500重量部に調節することができ、200〜400重量部に調節することが好ましい。即ち、機能性シートにおいて単位面積当たりの有効成分の含浸量または塗布量は、0.1〜20mg/cmであることができる。これに対し、高温乾燥機用シート状繊維柔軟剤は、塗布される有効成分の量が少ない。
【0043】
前記有効成分が柔軟剤である場合、低温水すすぎの時に第1の基材からの柔軟剤の脱離を容易にするため、例えば、下記の化1乃至化3で示されるカチオン界面活性剤からなる群から選ばれた柔軟剤を使用することができる。
【0044】
【化1】

【0045】
【化2】

【0046】
【化3】

【0047】
式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ直鎖状または分枝状のC−C21のアルキル基、C−C21のアルケニル基またはC−C21のアルキニル基を示し、
及びRは、それぞれC−Cのアルキル基を示し、
Aは、C−Cアルキル基、(CHOHまたは(CHOCORを示し、
Bは、(CHOHまたは(CHOCORを示し(但し、n及びmは、それぞれ1乃至4の整数を示す)、
及びRは、それぞれ直鎖状または分枝状のC−C21のアルキル基、C−C21のアルケニル基またはC−C21のアルキニル基を示し、
Xは、ハロゲンまたはC−Cのアルキル硫酸塩、好ましくは、F、Cl、I、Br、CHSOまたはCHCHSOを示す。
前記カチオン界面活性剤は、下記の数式1を満たすことが好ましい。
Q/T≧0.6 … (数式1)
【0048】
ここで、Tは、高圧液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーで検出される前記R、R、R、R、R、A及びB中のC−C21のアルキル基、C−C21のアルケニル基、C−C21のアルキル基に対するピークの総面積であり、
Qは、高圧液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーで検出される前記R、R、R、R、R、A及びB中の飽和炭化水素、即ち、C−C21のアルキル基に対するピークの総面積である。
【0049】
前記カチオン界面活性剤において、高圧液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーで分析したC−C21アルキル置換基の比率が0.6以上であれば、低温水で容易に脱離・分散されることができる。前記アルキル置換基の比率は、0.6乃至0.9であることが好ましく、0.7乃至0.9であることがより好ましい。前記アルキル置換基の比率が0.6未満の場合は、カチオン界面活性剤がシートに堅く塗布もしくは含浸し得ず、シートから容易に脱離してしまうという問題が発生する。
【0050】
また、前記カチオン界面活性剤は、下記の数式をさらに満たすことが好ましい。
P/T≧0.9 … (数式2)
【0051】
式中、Pは、高圧液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーで検出される前記R、R、R、R、R、A及びB中のC12−C18のアルキル基、C12−C18のアルケニル基及びC12−C18のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
Tは、上記で定義した通りである。
【0052】
前記カチオン界面活性剤において高圧液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトグラフィーで分析した長鎖置換基(C12−C18のアルキル基、C12−C18のアルケニル基及びC12−C18のアルキニル基)の比率が0.9以上であれば、ファン・デル・ワールス力の作用で第1の基材上に容易に塗布・含浸し、また、機能性シートの水への投入前には、カチオン界面活性剤を含む有効成分が前記機能性シートから容易に脱離されない。
【0053】
また、前記カチオン界面活性剤は、下記の数式を満たすことが好ましい。
0.6≦(Q/T)*X+(Q/T)*Y+(Q/T)*Z≦0.9 … (数式3)
【0054】
式中、Tは、高圧液体クロマトグラフィーで検出される前記R及びRのC−C21のアルキル基、C−C21のアルケニル基及びC−C21のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
は、高圧液体クロマトグラフィーで検出される前記R及びRの飽和炭化水素、即ち、C−C21のアルキル基に対するピークの総面積であり、
は、ガスクロマトグラフィーで検出される前記R及びRのC−C21のアルキル基、C−C21のアルケニル基、C−C21のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
は、ガスクロマトグラフィーで検出される前記R及びRの飽和炭化水素、即ち、C−C21のアルキル基に対するピークの総面積であり、
は、ガスクロマトグラフィーで検出される前記R、A及びB中のC−C21のアルキル基、C−C21のアルケニル基及びC−C21のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
は、ガスクロマトグラフィーで検出される前記R、A及びB中の飽和炭化水素、即ち、C−C21のアルキル基に対するピークの総面積であり、
Xは、カチオン界面活性剤の全体使用量に対する化1で示される化合物の重量比であり、
Yは、カチオン界面活性剤の全体使用量に対する化2で示される化合物の重量比であり、
Zは、カチオン界面活性剤の全体使用量に対する化3で示される化合物の重量比である。
【0055】
また、前記カチオン界面活性剤は、下記の数式4を満たすことが好ましい。
(P/T)*X+(P/T)*Y+(P/T)*Z≧0.9 … (数式4)
【0056】
式中、Pは、高圧液体クロマトグラフィーで検出される前記R及びRのC12−C18のアルキル基、C12−C18のアルケニル基及びC12−C18のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
は、ガスクロマトグラフィーで検出される前記R及びRのC12−C18のアルキル基、C12−C18のアルケニル基及びC12−C18のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
は、ガスクロマトグラフィーで検出される前記R、A及びB中のC12−C18のアルキル基、C12−C18のアルケニル基及びC12−C18のアルキニル基に対するピークの総面積であり、
、T、T、X、Y及びZは、それぞれ上記で定義した通りである。
前記柔軟剤としては、例えば、天然の柔軟成分である油菜抽出物を含有したカチオン、ジアルキルジメチル塩化アンモニウム(dimethyl dialkyl ammonium chloride)、エステルクアット(ester quat.)及びイミダゾリンを使用することができる。
【0057】
なお、本発明の機能性シートでは、分散剤を併用して使用することができる。この時、高い分散力を有する乳化剤を使用すると、低温水でも有効成分が均一に分散される。
【0058】
前記乳化剤の含量は、第1の基材上に含浸させようとする有効成分の全体組成物100重量部に対して50重量部以下であることが好ましい。前記含量が50重量部を上回る場合は、シート製造後、滑り現象が発生し、使用に不便である。
【0059】
乳化剤としては、例えば、HLB2乃至18が好ましく、これらの乳化剤を使用すると、シート製造の容易さを図ることができ、製造したシートに含浸させた有効成分が洗濯水に全て脱離・分散されることができる。従って、HLB8乃至12の乳化剤を含むことがより好ましい。なお、HLBとは、親水性−親油性バランスを意味する。
【0060】
本発明の機能性シートは、有効成分を第1の基材上に塗布または含浸して製造され、塗布または含浸方法は、例えば、ディップコート、ダイコート、ロールコート、コンマコート、ドクターブレード、スプレー、グラビア印刷法またはこれらの混合方式など、種々の方式を利用することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の理解を助けるため、好適な実施例を挙げて説明するが、これらの実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
<実験例>
接触角測定器(KRUSS社製、FM40、EASY DROP)を用い、30gsmの高密度ポリプロピレンスパンボンド不織布(a)、15gsmの低密度ポリプロピレンスパンボンド不織布(b)、親水性シリコン界面活性剤5,000ppmで親水処理が施された30gsmの高密度ポリプロピレンスパンボンド不織布(c)に対して水接触角を測定し、その実験結果を図4に示す。
【0062】
図4に示されるように、親水処理が施されていないポリプロピレン不織布(a)及び(b)は、水接触角が約120°であった。これに対し、親水処理が施されたポリプロピレン不織布(c)は、表面上に滴下される水滴が全て吸収され、水接触角の測定が不可能であった(水接触角:0°)
【0063】
比較例1、実施例1乃至3
下記の表1に示されるような水接触角を有する第1の基材を使用し、表1に示した各有効成分及び含量で基材含浸用組成物を製造し、プレスコート及び冷却過程を経て機能性シートを製造した。なお、プレスコートを行う時、基材含浸用組成物の温度は、60℃(液状)、冷却温度は、25℃であった。
【0064】
比較例1で使用した第1の基材は、親水表面処理が施されていないポリプロピレンスパンボンド不織布であり、実施例1乃至3で使用した第1の基材は、親水性シリコン界面活性剤で使用量を変えて親水処理を施したポリプロピレンスパンボンド不織布である。
【0065】
上記の比較例1、実施例1乃至3において第1の基材として使用された各不織布の水吸収率は、不織布を20℃の低温水に5分間浸して水飽和させた後、水飽和処理前後の不織布の重量差を測定し、処理前の不織布の重量で割って計算した。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜3及び比較例1で製造した各機能性シートに対して後述の実験方法で性能評価を行った。その結果を表2に示す。
実験1:溶解度試験
実施例1乃至3、比較例1で製造した各機能性シートに対して、低温水における有効成分の溶解度及び分散性を測定した。ビーカーに20℃の低温水3リットルを注ぎ、前記機能性シートをそれぞれ入れて5分間攪拌した後、処理前の機能性シートの重量と処理後の乾燥した機能性シートの重量との差を測定することにより、有効成分の溶解度を測定し、このような溶解度測定を3回以上繰り返して行った。
【0068】
【表2】

【0069】
実験2:柔軟効果試験
市販の100%純綿タオルを、一般洗濯洗剤を定量使用して洗濯機で5回繰り返して洗濯した後、脱水した。次いで、脱水された純綿タオルを、前記実施例1乃至3、比較例1で製造した各機能性シート1枚と共にすすぎ水(浴比1:30、25℃)に投入して5分間柔軟処理を行い、脱水し、20℃、65%RH条件で24時間コンディショニングを行った。次いで、熟練したパネリストの官能評価によって軟化程度を点数化して1〜5点付与し、これを3回以上繰り返し、その平均値にて柔軟効果を測定した。
【0070】
【表3】

【0071】
実験3:吸収性試験
標準の綿布を、縦糸及び横糸の方向に2×15cmサイズにカットした後、前記実験2と同様に柔軟処理を施し、20℃、65%RH条件で24時間コンディショニングを行った試験片をクランプと錘を用いて垂直に懸垂した後、水溶性の青色染料を0.1%に希釈させた水溶液中に試験片の末端を漬けておき、青色染料の上昇高さを20分後に測定した。これを3回以上繰り返して行った後、その平均値にて吸収効果を評価した。
【0072】
【表4】

【0073】
実験4:帯電防止特性試験(半減期)
上記の実験4と同様に柔軟処理を施し、20℃、65%RH条件で24時間コンディショニングを行った各試験片に対し、定電圧リーク速度を測定した。KS K−0555A実験方法及び静電電圧計(Rothschild社製、スイス)を用いて初期電圧150Vを印加した後、電圧が半減した時間にて定電圧リーク速度を測定した。これを3回以上繰り返して行った後、平均値を求めた。
【0074】
【表5】

【0075】
実験5:残香性評価
実験1と同様に柔軟処理を施した純綿タオルを、5点を基準にパネリストが評価した。これを3回繰り返して行った後、点数を出した。
【0076】
【表6】

【0077】
【表7】

【0078】
上記の表2からわかるように、親水処理が施されなかった、水接触角が120°である第1の基材を使用した機能性シートは異なり、本発明によって第1の基材に親水処理が施された、水接触角が90°以下の機能性シートは、吸収性に優れ、かつ低温水への溶解性に優れているため、機能性シートに含浸させた有効成分の柔軟効果、残香効果、帯電防止特性が十分に発揮される。
【0079】
比較例2乃至5、実施例4乃至7
繊維柔軟剤としてエステルクアット(EQ、化2)20重量部、剤形分散剤としてグリセロールモノステアレート20重量部、乳化分散剤としてポリオキシエチレンソルビタンエステルTween−81(HLB10)2重量部、補助柔軟剤としてステアラミドプロピルジメチルアミン10重量部、芳香剤として10重量部を使用して含浸用組成物を製造した。また、前記第1の基材として30gsmのポリプロピレンスパンボンド不織布を使用した。
プレスコート及び冷却過程を経て機能性シートを製造した。なお、プレスコート時、含浸用組成物の温度は60℃(液状)、冷却温度は25℃であった。
【0080】
比較例2乃至5、実施例4乃至7の機能性シートでは、プレスコートの時に使用する第1のローラと第2のローラとの距離によって第1の基材への塗布量を調節することにより、下記表3のように光透過率を調節した。
【0081】
<光透過率測定方法>
第1の基材として、15gsmのポリプロプレンスパンボンド不織布、30gsmのポリプロピレンスパンボンド不織布、30gsmのPETスパンボンド不織布及び比較例2乃至5、実施例4乃至7の機能性シートの光透過率は、後述のように測定した。
【0082】
前記第1の基材及び各機能性シートを、画像分析器(日本HIROX社製、Hi−scope KH−2400、×200、接合点間の距離:1〜2mm)で分析し、直径1mmの円を測定単位にし、総面積に対する光透過面積にて光透過率を測定した。この光透過率は、測定単位20箇所をランダムにサンプリングして平均を求めた値である。なお、光透過率の計算において、不織布それ自体の接合点は、計算から除外した。
【0083】
図5の上方には、15gsのポリプロピレンスパンボンド不織布、30gsmのポリプロピレンスパンボンド不織布、30gsmのPETスパンボンド不織布の光透過率を示し、図5の下方には、それぞれ前記含浸用組成物を塗布した後の光透過率を示した。また、比較例2乃至5、実施例4乃至7に係る機能性シートの光透過率は、表3及び図6に示す。
【0084】
<脱離率測定方法>
比較例2乃至5、実施例4乃至7で製造した各機能性シートに対し、低温水における有効成分の溶解度及び分散性を測定した。ビーカーに20℃の低温水を3リットル注ぎ、前記機能性シートをそれぞれ入れて1分間攪拌した後、処理前の機能性シートの重量と処理後の乾燥した機能性シートの重量との差を測定することにより、有効成分の脱離率を測定し、これを3回以上繰り返して行った。その結果を表3及び図6に示す。
【0085】
<柔軟効果測定方法>
市販の100%純綿タオルを、一般洗濯洗剤を定量使用して洗濯機で5回繰り返して洗濯した後、脱水した。次いで、脱水された純綿タオルを、比較例2乃至5、実施例4乃至7で製造した各機能性シート1枚と共にすすぎ水(浴比1:30、25℃)に投入して1分間柔軟処理を行い、脱水し、20℃、65%RH条件で24時間コンディショニングを行った。次いで、熟練したパネリストの官能評価によって軟化程度を点数化して1〜5点付与し、これを3回以上繰り返し、その平均値にて柔軟効果を測定した。その結果を表3及び図6に示す。
【0086】
【表8】

【0087】
【表9】

【0088】
機能性シートの光透過率は、水が接触できる面積を意味し、比較例2で示されたように、機能性シートの光透過率が2%を下回る場合は、水に触れても有効成分が水分散しないことがわかり、比較例3乃至5に示されたように、光透過率が20%を上回る場合は、有効成分の脱離率は99%以上であるが、柔軟効果が低く、繊維柔軟剤が不織布内に十分に含浸しないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材上に少なくとも1つの有効成分が塗布または含浸され、0℃〜30℃の低温水に投入して使用される機能性シートであって、
前記有効成分は、前記低温水中で第2の基材上に物理的または化学的に吸着し、前記低温水を除去しても第2の基材上に残っており、
前記機能性シートは、光透過率が2〜20%であり、これにより、0℃〜30℃の低温水に5分以内で第1の基材上に塗布されるか、または含浸している有効成分の70%以上が脱離することを特徴とする機能性シート。
【請求項2】
第1の基材は、多孔性基材であることを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項3】
有効成分が塗布されるか、または含浸した後にも気孔構造を維持することを特徴とする請求項2に記載の機能性シート。
【請求項4】
前記第1の基材それ自体の光透過率が20〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項5】
前記有効成分は、柔軟剤、芳香剤、帯電防止剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、抗菌剤、電解質、光学増白剤、漂白剤からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項6】
機能性シートにおいて、有効成分の単位面積当たりの塗布量が、0.1〜20mg/cmでありながら光透過率が2〜20%の孔隙率を有することを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項7】
前記有効成分は、乳化剤または分散剤を併用することを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項8】
前記有効成分は、60℃以上では液状、30℃以下では固形であることを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項9】
第1の基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレート(PET)であることを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。
【請求項10】
第1の基材は、不織布または織物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28892(P2013−28892A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207980(P2012−207980)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2010−541382(P2010−541382)の分割
【原出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(501343972)エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド (8)
【Fターム(参考)】