説明

低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造

【課題】万一、一次防壁からLNG等の低温流体がリークしたとしても、二次防壁によって低温流体を食い止め、低温流体が直接外槽に触れないようにして、該外槽の急激な温度変化を防止することができ、且つ低価格化を図り得る低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造を提供する。
【解決手段】熱伸縮を吸収するためのコルゲーション5が設けられた金属薄板4を一次防壁とし、外槽1の内面を覆うように取り付けられる保冷材2を、外槽側パネル部2aと一次防壁側パネル部2bとからなる二層の保冷パネル2cによって形成し、その一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材2dとして形成すると共に、前記二層の保冷パネル2cの中間層に繊維補強した樹脂コーティング材を中間層バリア材2eとして形成し、前記表層バリア材2dと中間層バリア材2eとから低温流体をシールする二次防壁を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)等の低温の流体を貯蔵する低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、LNG等の低温の流体を貯蔵する低温流体貯蔵タンクは、液圧に耐える構造にすることは勿論のこと、例えば、LNGの場合、その液化温度は約−162[℃]であるので、大きな熱伸縮を許容でき、且つ低温流体の漏れが生じない構造にする必要がある。
【0003】
このため、従来の地下埋設式の低温流体貯蔵タンクは、図4に示される如く、コンクリート製の外槽1と、該外槽1の内面を覆うように取り付けられる保冷材2と、該保冷材2の内面側を覆うように取り付けられ且つ低温流体3をシールする防壁としての金属薄板4(メンブレン)とを備えてなる構成を有しており、前記金属薄板4には、熱伸縮を吸収するためのコルゲーション5が設けられている。
【0004】
図4に示されるような地下埋設式の低温流体貯蔵タンクの場合、外槽1の側壁と底版には土圧が作用して常に圧縮応力が作用した状態にあるため、万一、金属薄板4からLNG等の低温流体3がリークし、外槽1を冷却したとしても、外槽1を構成するコンクリートの圧縮応力状態が保たれ、亀裂の発生を防ぐことができ、又、万一、リークした低温流体3によって外槽1が過度に冷却されて収縮し引張応力が作用して亀裂が生じたとしても、外槽1の周囲の土は凍結しており、外槽1から漏れた低温流体3が凍結線Lを越えて外部へ拡散する心配はなく、これにより、前記金属薄板4と凍結線Lで覆われた外槽1とから二重の安全性が確保されている。
【0005】
一方、低温流体貯蔵タンクが地上に設置される場合、地下埋設式の低温流体貯蔵タンクのように外槽の周囲に凍結した土が存在しないため、外槽にはプレストレスコンクリートが用いられ、外槽を圧縮応力が作用した状態に保つと共に、金属薄板を一次防壁と二次防壁の二重構造とすることにより、万一、一次防壁としての金属薄板からLNG等の低温流体がリークしたとしても、二次防壁としての金属薄板によって低温流体を食い止め、低温流体が直接コンクリートの外槽に触れないようにして、該外槽の急冷による熱衝撃(thermal shock)を防止するようになっている。
【0006】
ところで、最近、低温流体貯蔵タンクを海上に設置する計画が進められており、これは、着底式LNG受入基地(GBS:Gravity Based Structure)と称されるものであるが、その保冷シール構造としてLNG船における技術を適用することが考えられている。
【0007】
LNG船におけるタンクの保冷シール構造としては、例えば、ガストランスポート・メンブレン方式とテクニガス・メンブレン方式がある。
【0008】
前記ガストランスポート・メンブレン方式の場合、タンクを構成する内殻の内側から順次、二次断熱箱、二次防壁、一次断熱箱、一次防壁を積層した構造を有しており、一次防壁並びに二次防壁には、金属薄板(メンブレン)として線膨張係数が低い厚さ約0.7[mm]程度のインバー材(Fe-36%Ni)が採用されているため、コルゲーション等の特別な熱伸縮対策が不要となっている。
【0009】
又、前記テクニガス・メンブレン方式の場合、タンクを構成する内殻の内側から順次、保冷材、二次防壁、保冷材、一次防壁を積層した構造を有しており、一次防壁には、金属薄板(メンブレン)として、熱伸縮を吸収するためのコルゲーションが設けられた厚さ約1.2[mm]程度のステンレス鋼が採用され、二次防壁には「トリプレックス(登録商標)」と称される特殊複合アルミニウムシートが採用されている。
【0010】
尚、地上設置式や地下埋設式の低温流体貯蔵タンクの一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2002−181288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の如きガストランスポート・メンブレン方式では、一次防壁並びに二次防壁にインバー材が採用されているため高価であり、又、テクニガス・メンブレン方式では、二次防壁に特殊複合アルミニウムシートが採用されているためやはり高価である。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、万一、一次防壁からLNG等の低温流体がリークしたとしても、二次防壁によって低温流体を食い止め、低温流体が直接外槽に触れないようにして、該外槽の急激な温度変化を防止することができ、且つ低価格化を図り得る低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、外槽と、該外槽の内面を覆うように取り付けられる保冷材と、該保冷材の内面側を覆うように取り付けられ且つ低温流体をシールする一次防壁とを備えた低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造であって、
保冷材を二層の保冷パネルによって形成し、その一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材として形成すると共に、前記二層の保冷パネルの中間層に繊維補強した樹脂コーティング材を中間層バリア材として形成し、前記表層バリア材と中間層バリア材とから低温流体をシールする二次防壁を構成したことを特徴とする低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造にかかるものである。
【0014】
前述の如く、外槽の内面を覆うように取り付けられる保冷材を二層の保冷パネルによって形成し、その一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材として形成すると共に、前記二層の保冷パネルの中間層に繊維補強した樹脂コーティング材を中間層バリア材として形成し、前記表層バリア材と中間層バリア材とから低温流体をシールする二次防壁を構成すると、万一、一次防壁としての金属薄板からLNG等の低温流体がリークした場合、二次防壁としての表層バリア材と中間層バリア材とによって低温流体が食い止められ、低温流体が直接外槽に触れることが避けられ、該外槽の急激な温度変化を防止することが可能となる。
【0015】
前記低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造においては、前記一次防壁を、熱伸縮を吸収するためのコルゲーションを有した金属薄板とし、更に、前記保冷パネルをポリウレタンフォームとし、前記二次防壁を構成する表層バリア材と中間層バリア材とを、ガラス繊維強化ポリウレタン樹脂又はガラス繊維強化エポキシ樹脂とすることができ、このようにすると、従来においてLNG船のタンクの保冷シール構造に採用されているガストランスポート・メンブレン方式のように、一次防壁並びに二次防壁に高価なインバー材を用いたり、或いは、テクニガス・メンブレン方式のように、二次防壁に高価な特殊複合アルミニウムシートを用いたりするのに比べ、大幅にコストを低減することが可能となり、海上等に設置される低温流体貯蔵タンクに適用する上で非常に有利となる。
【0016】
又、前記低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造においては、二層の保冷パネルの外槽側パネル部を一次防壁側パネル部より大きくしてその断面形状を凸型とし、隣接する保冷パネルの外槽側パネル部間に、注入ポリウレタンフォーム、及び/又は、圧密ガラス繊維を充填し、且つその表面をシール部材で覆うようにし、更に又、隣接する保冷パネルの一次防壁側パネル部間に、一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材として形成したポリウレタンフォームプラグを介装すると共に、該ポリウレタンフォームプラグと前記一次防壁側パネル部との間に、注入ポリウレタンフォーム、及び/又は、圧密ガラス繊維を充填し且つその表面をシール部材で覆うようにすることができ、このようにすると、保冷パネルの継目部分におけるシール性も充分に確保することが可能となる。又、前記保冷パネルが低温となってその一次防壁側パネル部が収縮することに伴う熱応力は、前記ポリウレタンフォームプラグと前記一次防壁側パネル部との間に充填された注入ポリウレタンフォームの内部応力として吸収されるか、或いは、該注入ポリウレタンフォームが割れること、或いは、圧密ガラス繊維が熱収縮に追従する形で膨らむことによって吸収緩和される形となるが、前記保冷パネルの外槽側パネル部の表面温度は、一次防壁側パネル部に比べて高く、外槽側パネル部の収縮量も小さいため、隣接する保冷パネルの外槽側パネル部間に充填された注入ポリウレタンフォームが割れる心配はない。
【0017】
一方、前記低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造においては、一次防壁を構成する金属薄板のコルゲーションをポリウレタンフォームプラグの上に位置するよう配設すると共に、該ポリウレタンフォームプラグと前記コルゲーションとの間に合板を介在させるようにすることができ、このようにすると、LNG等の低温流体の貯留時にコルゲーションの部分から集中してポリウレタンフォームプラグに作用しようとする応力は、合板により分散され、ポリウレタンフォームプラグに余分な負荷がかからなくなる。
【0018】
又、前記低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造においては、保冷パネルの一次防壁側の表面を全面に亘って耐火板で覆うようにすることができ、このようにすると、前記一次防壁を構成する金属薄板の施工時や破損箇所の修復時等に該金属薄板を溶接する際には、耐火板によって溶接の熱が遮られ、保冷パネルやポリウレタンフォームプラグが焼損することを防止可能となる。
【0019】
更に、前記低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造においては、シール部材を繊維補強した樹脂コーティング材とすることができ、このようにすると、保冷パネルの継目部分をシールするための施工性も良好となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1〜8記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造によれば、万一、一次防壁からLNG等の低温流体がリークしたとしても、二次防壁によって低温流体を食い止め、低温流体が直接外槽に触れないようにして、該外槽の急激な温度変化を防止することができ、且つ低価格化を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、図1に示す低温流体貯蔵タンクは、コンクリート製で直方体形状とした外槽1のLNG等の低温流体3が貯留される貯留部1aの外周にバラストタンク1bを形成し、これを海に浮かべた状態で図示していない船で曳航し、沖合の所要箇所においてバラストタンク1b内に砂等のバラストBを充填することによって、外槽1の底面を海底に着底させ、海上におけるLNG等の低温流体3の受入基地(GBS:Gravity Based Structure)とするものである。
【0023】
そして、本図示例の場合、図2及び図3に示す如く、熱伸縮を吸収するためのコルゲーション5が設けられた金属薄板4を一次防壁とし、外槽1の内面を覆うように取り付けられる保冷材2を、外槽側パネル部2aと一次防壁側パネル部2bとからなる二層の保冷パネル2cによって形成し、その一次防壁側の表層(一次防壁側パネル部2bの表層)に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材2dとして形成すると共に、前記二層の保冷パネル2cの中間層(外槽側パネル部2aの表層)に繊維補強した樹脂コーティング材を中間層バリア材2eとして形成し、前記表層バリア材2dと中間層バリア材2eとから低温流体3をシールする二次防壁を構成してある。
【0024】
前記保冷パネル2cはポリウレタンフォームとし、前記二次防壁を構成する表層バリア材2dと中間層バリア材2eはガラス繊維強化ポリウレタン樹脂としてある。尚、前記二次防壁を構成する表層バリア材2dと中間層バリア材2eはガラス繊維強化エポキシ樹脂としても良い。
【0025】
又、前記二層の保冷パネル2cの外槽側パネル部2aは一次防壁側パネル部2bより大きくしてその断面形状を凸型とし、隣接する保冷パネル2cの外槽側パネル部2a間には、注入ポリウレタンフォーム6及び圧密ガラス繊維7の両方を充填し、且つその表面をシール部材8で覆うようにしてある。尚、前記隣接する保冷パネル2cの外槽側パネル部2a間には、注入ポリウレタンフォーム6又は圧密ガラス繊維7のいずれか一方のみを充填するようにしても良い。
【0026】
更に又、前記隣接する保冷パネル2cの一次防壁側パネル部2b間には、一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材2d’として形成したポリウレタンフォームプラグ2b’を介装すると共に、該ポリウレタンフォームプラグ2b’と前記一次防壁側パネル部2bとの間には、注入ポリウレタンフォーム9及び圧密ガラス繊維13の両方を充填し且つその表面をシール部材10で覆うようにしてある。尚、前記ポリウレタンフォームプラグ2b’と前記一次防壁側パネル部2bとの間には、注入ポリウレタンフォーム9又は圧密ガラス繊維13のいずれか一方のみを充填するようにしても良い。
【0027】
一方、前記一次防壁を構成する金属薄板4のコルゲーション5はポリウレタンフォームプラグ2b’の上に位置するよう配設すると共に、該ポリウレタンフォームプラグ2b’と前記コルゲーション5との間には合板11を介在させ、該合板11により、LNG等の低温流体3の貯留時にコルゲーション5の部分から集中してポリウレタンフォームプラグ2b’に作用しようとする応力を分散させるようにしてある。
【0028】
又、前記保冷パネル2cの一次防壁を構成する金属薄板4側の表面は、全面に亘って耐火板12で覆い、該耐火板12により、前記一次防壁を構成する金属薄板4を溶接する際にその熱で保冷パネル2cやポリウレタンフォームプラグ2b’が焼損することを防止するようにしてある。
【0029】
更に、前記シール部材8,10は、繊維補強した樹脂コーティング材としてガラス繊維強化エポキシ樹脂を用いたテープ状のものとしてある。尚、前記シール部材8,10を形成する繊維補強した樹脂コーティング材としては、ガラス繊維強化エポキシ樹脂を用いる代りにガラス繊維強化ポリウレタンを用いることも可能である。又、前記シール部材8としては、テープ状のものを使用する代りに、例えば、前記注入ポリウレタンフォーム6及び圧密ガラス繊維7が充填された外槽側パネル部2a間の継目部表面に樹脂を刷毛等で塗布し、その上にガラス繊維を置き、該ガラス繊維の上に再度樹脂を塗布し、更に同様の作業をもう一度繰り返すことにより、ガラス繊維と樹脂とが複数積層されるようにしたものを使用することも可能である。同様に、前記シール部材10としては、テープ状のものを使用する代りに、例えば、前記ポリウレタンフォームプラグ2b’が介装された一次防壁側パネル部2b間の継目部表面に樹脂を刷毛等で塗布し、その上にガラス繊維を置き、該ガラス繊維の上に再度樹脂を塗布し、更に同様の作業をもう一度繰り返すことにより、ガラス繊維と樹脂とが複数積層されるようにしたものを使用することも可能である。
【0030】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0031】
前述の如く、熱伸縮を吸収するためのコルゲーション5が設けられた金属薄板4を一次防壁とし、外槽1の内面を覆うように取り付けられる保冷材2を、外槽側パネル部2aと一次防壁側パネル部2bとからなる二層の保冷パネル2cによって形成し、その一次防壁側の表層(一次防壁側パネル部2bの表層)に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材2dとして形成すると共に、前記二層の保冷パネル2cの中間層(外槽側パネル部2aの表層)に繊維補強した樹脂コーティング材を中間層バリア材2eとして形成し、前記表層バリア材2dと中間層バリア材2eとから低温流体3をシールする二次防壁を構成すると、万一、一次防壁としての金属薄板4からLNG等の低温流体3がリークした場合、二次防壁としての表層バリア材2dと中間層バリア材2eとによって低温流体3が食い止められ、低温流体3が直接コンクリートの外槽1に触れることが避けられ、該外槽1の急激な温度変化を防止することが可能となる。
【0032】
本図示例においては、前記保冷パネル2cはポリウレタンフォームとし、前記二次防壁を構成する表層バリア材2dと中間層バリア材2eはガラス繊維強化ポリウレタン樹脂としてあるため、従来においてLNG船のタンクの保冷シール構造に採用されているガストランスポート・メンブレン方式のように、一次防壁並びに二次防壁に高価なインバー材を用いたり、或いは、テクニガス・メンブレン方式のように、二次防壁に高価な特殊複合アルミニウムシートを用いたりするのに比べ、大幅にコストを低減することが可能となり、海上等に設置される低温流体貯蔵タンクに適用する上で非常に有利となる。
【0033】
又、前記二層の保冷パネル2cの外槽側パネル部2aは一次防壁側パネル部2bより大きくしてその断面形状を凸型とし、隣接する保冷パネル2cの外槽側パネル部2a間には、注入ポリウレタンフォーム6及び圧密ガラス繊維7の両方を充填し、且つその表面をシール部材8で覆うようにしてあり、更に又、前記隣接する保冷パネル2cの一次防壁側パネル部2b間には、一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材2d’として形成したポリウレタンフォームプラグ2b’を介装すると共に、該ポリウレタンフォームプラグ2b’と前記一次防壁側パネル部2bとの間には、注入ポリウレタンフォーム9を充填し且つその表面をシール部材10で覆うようにしてあるため、保冷パネル2cの継目部分におけるシール性も充分に確保することが可能となる。又、前記保冷パネル2cが低温となってその一次防壁側パネル部2bが収縮することに伴う熱応力は、前記ポリウレタンフォームプラグ2b’と前記一次防壁側パネル部2bとの間に充填された注入ポリウレタンフォーム9の内部応力として吸収されるか、或いは、該注入ポリウレタンフォーム9が割れること、或いは、圧密ガラス繊維13が熱収縮に追従する形で膨らむことによって吸収緩和される形となるが、前記保冷パネル2cの外槽側パネル部2aの表面温度は、一次防壁側パネル部2b側に比べて高く、外槽側パネル部2aの収縮量も小さいため、隣接する保冷パネル2cの外槽側パネル部2a間に充填された注入ポリウレタンフォーム6が割れる心配はない。
【0034】
一方、前記一次防壁を構成する金属薄板4のコルゲーション5はポリウレタンフォームプラグ2b’の上に位置するよう配設すると共に、該ポリウレタンフォームプラグ2b’と前記コルゲーション5との間には合板11を介在させるようにしてあるため、LNG等の低温流体3の貯留時にコルゲーション5の部分から集中してポリウレタンフォームプラグ2b’に作用しようとする応力は、合板11により分散され、ポリウレタンフォームプラグ2b’に余分な負荷がかからなくなる。
【0035】
又、前記保冷パネル2cの一次防壁を構成する金属薄板4側の表面は、全面に亘って耐火板12で覆うようにしてあるため、前記一次防壁を構成する金属薄板4の施工時や破損箇所の修復時等に該金属薄板4を溶接する際には、耐火板12によって溶接の熱が遮られ、保冷パネル2cやポリウレタンフォームプラグ2b’が焼損することが防止可能となる。
【0036】
更に、前記シール部材8,10は、繊維補強した樹脂コーティング材としてガラス繊維強化エポキシ樹脂を用いたテープ状のものとしてあるため、保冷パネル2cの継目部分をシールするための施工性も良好となる。
【0037】
こうして、万一、一次防壁からLNG等の低温流体3がリークしたとしても、二次防壁によって低温流体3を食い止め、低温流体3が直接外槽1に触れないようにして、該外槽1の急激な温度変化を防止することができ、且つ低価格化を図り得る。
【0038】
尚、本発明の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、海上に設置されるタンクに限らず、プレストレスコンクリート製等の地上に設置される低温流体貯蔵タンクの冷熱抵抗緩和材にも適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す全体概要側断面図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例を示す要部拡大断面図であって、図1のII部相当図である。
【図3】本発明を実施する形態の一例における保冷材を示す斜視図である。
【図4】従来の地下埋設式の低温流体貯蔵タンクの一例を示す全体概要側断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 外槽
2 保冷材
2a 外槽側パネル部
2b 一次防壁側パネル部
2b’ ポリウレタンフォームプラグ
2c 保冷パネル
2d 表層バリア材
2d’ 表層バリア材
2e 中間層バリア材
3 低温流体
4 金属薄板
5 コルゲーション
6 注入ポリウレタンフォーム
7 圧密ガラス繊維
8 シール部材
9 注入ポリウレタンフォーム
10 シール部材
11 合板
12 耐火板
13 圧密ガラス繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と、該外槽の内面を覆うように取り付けられる保冷材と、該保冷材の内面側を覆うように取り付けられ且つ低温流体をシールする一次防壁とを備えた低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造であって、
保冷材を二層の保冷パネルによって形成し、その一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材として形成すると共に、前記二層の保冷パネルの中間層に繊維補強した樹脂コーティング材を中間層バリア材として形成し、前記表層バリア材と中間層バリア材とから低温流体をシールする二次防壁を構成したことを特徴とする低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項2】
一次防壁を、熱伸縮を吸収するためのコルゲーションが設けられた金属薄板とした請求項1記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項3】
保冷パネルをポリウレタンフォームとし、二次防壁を構成する表層バリア材と中間層バリア材とを、ガラス繊維強化ポリウレタン樹脂又はガラス繊維強化エポキシ樹脂とした請求項1又は2記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項4】
二層の保冷パネルの外槽側パネル部を一次防壁側パネル部より大きくしてその断面形状を凸型とし、隣接する保冷パネルの外槽側パネル部間に、注入ポリウレタンフォーム、及び/又は、圧密ガラス繊維を充填し、且つその表面をシール部材で覆うようにした請求項3記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項5】
隣接する保冷パネルの一次防壁側パネル部間に、一次防壁側の表層に繊維補強した樹脂コーティング材を表層バリア材として形成したポリウレタンフォームプラグを介装すると共に、該ポリウレタンフォームプラグと前記一次防壁側パネル部との間に、注入ポリウレタンフォーム、及び/又は、圧密ガラス繊維を充填し且つその表面をシール部材で覆うようにした請求項4記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項6】
一次防壁を構成する金属薄板のコルゲーションをポリウレタンフォームプラグの上に位置するよう配設すると共に、該ポリウレタンフォームプラグと前記コルゲーションとの間に合板を介在させるようにした請求項5記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項7】
保冷パネルの一次防壁側の表面を全面に亘って耐火板で覆うようにした請求項6記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。
【請求項8】
シール部材を繊維補強した樹脂コーティング材とした請求項4〜7いずれかに記載の低温流体貯蔵タンクの保冷シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17213(P2006−17213A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195323(P2004−195323)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000244084)明星工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】