説明

低温液体用液面計及びそれを備えた低温液体貯留容器

【課題】 構成が簡単で且つ防爆性を向上した低温液体用液面計及びそれを備えた低温液体貯留容器を提供する。
【解決手段】 本発明は、貯留容器3内に貯留された低温液体5の液面位置を測定する低温液体用液面計1であって、貯留容器3内に配置して低温液体5に浸漬するための管状部15と、貯留容器3外に配置するための室温部17とを有し、貯留容器3内の低温液体5と同じ温度で液化し得る測定用ガスを内部に注入して密閉可能な密閉体19と、管状部15との間に所定の間隙31が形成されるように管状部15が挿入され、貯留容器3内の管状部15の外周を取り囲む断熱層21D,21Eを有する筒状体21と、間隙31と筒状体21の外部空間とを連通するガス流通路21Fと、密閉体19内の気圧を測定する圧力計23と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、貯留容器内に貯留された低温液体の液面位置を測定する低温液体用液面計、及びそれを備えた低温液体貯留容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯留容器内に貯留された低温液体の液面位置を測定する低温液体用液面計が種々提案されている。例えば、非特許文献1には、この種の液面計として、ガスが封入された細管と、該細管内の気圧を測定する圧力計とを備えた液面計が開示されている。この細管内のガスは、測定する低温液体が気化したものと同じであり、管内に数気圧で封入されている。この液面計は、細管内の気圧の変動を利用して、圧力計の値から貯留容器内の低温液体の液面位置を測定している。
【0003】
より詳細には、非特許文献1の液面計では、細管に被覆電線がヒーターとして巻きつけられ、細管が加熱されている。そして、貯留容器内の低温液体に細管の下部が浸漬された状態では、細管が冷却され、細管の下部から上方へいくにつれて細管の温度が高くなっている。この状態では、細管内のガスが冷却されて液化するようになっているが、細管にこのような温度勾配がついているため、細管内のガスにも同様の温度勾配がつく。そのため、細管内のガスが飽和温度になる位置を境としてガスが液化し、この位置が液化した液体の液面位置となる。
【0004】
ここで、貯留容器内の低温液体の液面位置が変動することによって、細管の軸方向の各位置での温度も変動する。そのため、この変動に伴って、細管内のガスが飽和温度になる位置も変動し、細管内で液化した液体の液面位置も変動する。そして、この細管内の液面位置の変動に伴って、細管内の気圧が変動する。非特許文献1の液面計では、この気圧の変動を利用して、貯留容器内の低温液体の液面位置を測定している。
【0005】
以上のことから、このような測定方法においては、細管に温度勾配をつけることが重要となっている。
【非特許文献1】田中 峰雄、信貴 豊一郎,「簡単な低温液体用液面計」,低温工学,低温工学協会,1980年,Vol.15,No.6,p.335−338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1の液面計では、電気式のヒーターで細管を加熱することによって細管に温度勾配をつけている。そのため、ヒーターへの電源や配線等を設ける必要があり、液面計の構成が煩雑になるという問題があった。また、貯留容器内の低温液体から発生する蒸発ガスが可燃性を有する場合には、ヒーターのショート等により生じ得る火花によって蒸発ガスに引火し、爆発するという危険性があった。
【0007】
そこで、本発明は、構成が簡単で且つ防爆性を向上した低温液体用液面計及びそれを備えた低温液体貯留容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貯留容器内に貯留された低温液体の液面位置を測定する低温液体用液面計であって、前記貯留容器内に配置して前記低温液体に浸漬するための管状部と、前記貯留容器外に配置するための室温部とを有し、前記貯留容器内の前記低温液体と同じ温度で液化し得る測定用ガスを内部に注入して密閉可能な密閉体と、前記管状部との間に所定の間隙が形成されるように前記管状部が挿入され、前記貯留容器内の前記管状部の外周を取り囲む断熱層を有する筒状体と、前記間隙と前記筒状体の外部空間とを連通するガス流通路と、前記密閉体内の気圧を測定する圧力計と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記低温液体用液面計において、前記断熱層は、真空層であることが好ましい。また、前記管状部は、銅で形成されていることが好ましい。前記圧力計は、機械式のものであることが好ましい。前記ガス流通路は、複数個設けられ、前記筒状体の軸方向において異なる位置で前記間隙に開口するように形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る低温液体貯留容器は、上記低温液体用液面計を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る低温液体用液面計によれば、密閉体の管状部が貯留容器内に配置されたときに、筒状体の断熱層が密閉体の管状部の外周を取り囲むように構成されているため、筒状体の外側で発生する低温液体の蒸発ガスによって管状部が冷却されることがない。そのため、貯留容器外に配置された密閉体の室温部が有する熱を、貯留容器内の管状部へ効率的に伝導することができる。そして、管状部が低温液体に浸漬されたときには、筒状体と管状部との間に形成された間隙に低温液体が導入され、管状部の低温液体に浸漬した部分(以下、浸漬部分という。)が冷却される。これにより、管状部の低温液体に浸漬していない部分(以下、非浸漬部分という。)に、室温部に近づくにつれて管状部の温度が高くなるように温度勾配がつけられる。
【0012】
また、管状部の非浸漬部分は、筒状体と管状部との間隙に導入された低温液体の液面から発生する蒸発ガスによっても冷却される。ここで、筒状体と管状部との間隙が大きすぎると、間隙の半径方向における蒸発ガスの運動や対流等により、管状部の非浸漬部分が冷却され過ぎて、適切な温度勾配を得ることができない。逆に、この間隙が小さ過ぎると、低温液体の粘性によって、貯留容器内の低温液体の液面と同じ位置まで低温液体を導入できないことがある。また、間隙内に導入される低温液体の量が少な過ぎるために、室温部の熱が伝導される管状部を十分に冷却することができず、その熱によって間隙内の低温液体が蒸発し、貯留容器内の低温液体の液面と同じ位置まで低温液体を導入できないこともある。そのため、貯留容器内の低温液体の液面位置を正確に測定することができない。したがって、筒状体と管状部との間の間隙の大きさは、管状部の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけるとともに、貯留容器内の低温液体の液面と同じ位置まで低温液体を導入可能となるように設定されている。尚、低温液体の種類によって、貯留温度や蒸発ガスの温度、粘性等の各種特性が異なる。そのため、この間隙の大きさは、低温液体の種類に応じて設定される。
【0013】
また、筒状体と管状部との間隙と、筒状体の外部空間とをガス流通路によって連通している。そのため、管状部を低温液体に浸漬する際には、筒状体と管状部との間隙内に存在するガスがこのガス流通路から抜けるようになっている。これにより、この間隙内に低温液体を導入することができるようになっている。そして、この間隙内に低温液体が導入された後は、間隙内のガスと筒状体の外部空間のガスとが、このガス流通路を介して流通するので、間隙内の低温液体の液面が上下移動可能になっている。
【0014】
また、間隙内で発生した蒸発ガスもこのガス流通路から外部へ抜けるようになっている。そのため、ガス流通路の大きさ,個数,及び間隙の長さ方向における形成位置等によって、発生した蒸発ガスがガス流通路から放出されるまでの時間等が変わり、温度勾配が変化する。そこで、本発明では、このガス流通路の大きさ,個数及び位置等が、上記の筒状体と管状部との間隙の大きさとともに低温液体の種類に応じて、管状部の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけるように設定される。
【0015】
本発明に係る低温液体用液面計は、以上のような構成により、管状部の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけている。そして、管状部内の測定用ガスは、貯留容器内の低温液体と同じ温度で液化し得るものであるため、管状部が低温液体に浸漬されたときに測定用ガスが冷却されて液化する。このとき、低温液体の液面位置に応じて管状部の冷却範囲が変わり、管状部の非浸漬部分の温度勾配が変化する。そのため、管状部内の測定用ガスが飽和温度になる位置が変動し、管状部内の液面位置が変動するようになっている。この管状部内の液面位置の変動によって変動する測定用ガスの圧力を圧力計で測定する。ここで、圧力計の圧力値と貯留容器内の低温液体の液面位置との関係を実験等により予め求めておけば、貯留容器内の低温液体の液面位置がわかる。尚、このことから、圧力計で測定される圧力値と貯留容器内の低温液体の液面位置との関係は、線形性を有することが好ましい。よって、筒状体と管状部との間の間隙及びガス流通路は、管状部の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけることで、この圧力値と液面位置との関係が線形に近づくようにさらに設定される。
【0016】
よって、本発明に係る低温液体用液面計によれば、筒状体の断熱層を密閉体の管状部を取り囲むように設け、筒状体と管状部との間に所定の間隙と、この間隙と筒状体の外部空間とを連通するガス流通路とを形成することで、管状部に適切な温度勾配をつけるように構成されている。そのため、本発明では、従来例のように電源や配線等を設ける必要がないので、構成を簡単にすることができる。また、本発明では、従来例のヒーターのような電気的な装置によってではなく、機械的な構造によって管状部に温度勾配をつけている。そのため、貯留容器内の低温液体の蒸発ガスが可燃性を有する場合であっても、火花等による蒸発ガスの爆発の危険性がなく、防爆性を向上させることができる。
【0017】
また、上記のように構成された低温液体用液面計において、筒状体の断熱層を真空層で構成すると、高い断熱効果を得ることができる。
【0018】
また、管状部を銅で形成すると、貯留容器内に配置された管状部へ、室温部からの熱を効率良く伝導することができる。
【0019】
また、圧力計を機械式のものにすると、火花等による蒸発ガスの爆発をより効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る低温液体用液面計の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る低温液体用液面計の概略構成を示すとともに使用状態を説明する図である。図2は、図1の低温液体用液面計の要部断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る低温液体用液面計1は、貯留容器3に貯留された低温液体5の液面位置を測定するものである。この貯留容器3は、低温液体5を貯留する胴部7と、胴部7の上面開口部7aに首部9を有しており、首部9の上端が蓋体11で閉塞されている。蓋体11には、貯留容器3内で発生する低温液体5の蒸発ガスを外部へ放出するための放出管13が設けられている。尚、貯留容器3は、各構成部材が断熱性を有するように構成されており、所定の貯留温度で低温液体5を貯留可能な断熱構造となっている。対象とする低温液体5としては、ヘリウム,ネオン,水素,酸素,窒素,アルゴン及びメタン(天然ガス)等が挙げられる。
【0022】
図1及び図2に示すように、液面計1は、貯留容器3内に配置して低温液体5に浸漬するための管状部15及び貯留容器3外に配置するための室温部17を有する密閉体19と、管状部15が挿入される筒状体21と、密閉体19内の気圧を測定する圧力計23とを備えている。尚、以下では、管状部15を低温液体5に浸漬し、本実施形態に係る液面計1により低温液体5の液面位置を測定可能である状態に基づいて説明する。
【0023】
図2に示すように、密閉体19の管状部15は、熱伝導性を有する材料から構成され、蓋体11の外側から貯留容器3内へ延びている。これにより、貯留容器3の外部に配置された室温部17からの熱を、貯留容器3内の管状部15へ伝導するようになっている。熱伝導性を有する材料としては、例えば銅,アルミニウム,銀及び銅合金等が挙げられる。また、管状部15は、下端が閉塞され、上端が開口している。
【0024】
密閉体19の室温部17は、図1に示すように、接続管25と、これに接続されているガス溜め部27とを備えている。また、接続管25は、図2に示すように、略筒状の第一接続部材29を介して管状部15の上端部に接続されている。そして、管状部15,接続管25及びガス溜め部27の内部空間が気密に連通され、この内部空間に測定用ガスが注入され密閉されている。この測定用ガスは、貯留容器3内の低温液体5と同じ温度で液化し得るものであり、例えば、貯留容器3内の低温液体5と同じ種類の液体が気化したものが挙げられる。或いは、低温液体5がネオンの場合は水素、酸素の場合は窒素又はアルゴン、メタンの場合は窒素が挙げられ、また、低温液体5が水素の場合はネオンのようにこれらの逆の組み合わせが挙げられる。尚、密閉体19内に封入された測定用ガスの気圧は、測定用ガスの飽和状態の液体温度が貯留容器3内の低温液体5の温度より高くなるように設定されている。即ち、密閉体19内の測定用ガスは、貯留容器3内の低温液体5の温度と同じ温度における測定用ガスの飽和蒸気圧より気圧が高くなるように封入されている。
【0025】
また、ガス溜め部27の内部容積は、次のように設定されている。即ち、例えば窒素が気体から液体へ状態変化するとその体積が約650分の1になるように、一般に、気体に対する液体の体積は数百分の1である。そのため、後述するように測定用ガス5は管状部15内で液化するが、その液化量を十分に確保できるように、ガス溜め部27の内部容積が設定されている。
【0026】
圧力計23は、ガス溜め部27に接続されており、密閉体19内の気圧を測定可能になっている。また、圧力計23は、機械式のものが好ましい。
【0027】
筒状体21は、上端部が第一接続部材29の下部内周面に嵌合され、内部に管状部15を挿入して貯留容器3の内部へ延びている。また、筒状体21は、内管21A及び外管21Bを備えるとともに上筒部21Uと下筒部21Lとに分割され、上筒部21Uと下筒部21Lとが略筒状の第二接続部材21Cによって接続されている。
【0028】
また、内管21A及び第二接続部材21Cと、管状部15との間には間隙31が形成されている。そして、下筒部21Lにおける間隙31には、管状部15が低温液体5に浸漬されたときに、低温液体5が導入されるようになっている。これにより、管状部15の低温液体5に浸漬した部分(以下、浸漬部分という。)が冷却され、管状部15の低温液体5に浸漬していない部分(以下、非浸漬部分という。)に、上方へ進むにつれて管状部15の温度が高くなるように温度勾配がつけられる。尚、間隙31の上部開口は、第一接続部材29によって気密的に閉じられている。
【0029】
ここで、間隙31の大きさについて詳細に説明する。管状部15の非浸漬部分は、間隙31に導入された低温液体5から発生する蒸発ガスによっても冷却される。そのため、間隙31が大き過ぎると、間隙31の半径方向における蒸発ガスの運動や対流等により、管状部15の非浸漬部分が冷却され過ぎて、適切な温度勾配を得ることができない。逆に、間隙31が小さ過ぎると、低温液体5が有する粘性によって、貯留容器3内の低温液体5の液面と同じ位置まで低温液体5を導入できないことがある。また、間隙31内に導入される低温液体5の量が少な過ぎるために、室温部17の熱が伝導される管状部15を十分に冷却することができず、その熱によって間隙31内の低温液体5が蒸発し、貯留容器3内の低温液体5の液面と同じ位置まで低温液体5を導入できないこともある。そのため、貯留容器3内の低温液体5の液面位置を正確に測定することができない。したがって、間隙31の大きさは、管状部15の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけるとともに、貯留容器3内の低温液体5の液面と同じ位置まで低温液体5を導入可能となるように設定されている。尚、低温液体5の種類によって、貯留温度や蒸発ガスの温度、粘性等の各種特性が異なる。そのため、間隙31の大きさは、低温液体5の種類に応じて設定される。
【0030】
上筒部21Uにおける内管21Aと外管21Bとの空隙21Dは、上端部が閉塞され、下端部が第二接続部材21Cによって閉塞されることで密閉されている。また、下筒部21Lにおける内管21Aと外管21Bとの空隙21Eは、下端部が閉塞され、上端部が第二接続部材21Cによって閉塞されることで同様に密閉されている。そして、これらの空隙21D,21Eを真空状態にすることにより、空隙21D,21Eが断熱層となっている。このように断熱層である空隙21D,21Eが、貯留容器3内に配置された管状部15を包囲しているので、筒状体21の外側に発生する低温液体5の蒸発ガスによって、管状部15が冷却されないようになっている。
【0031】
第二接続部材21Cには、2つのガス流通路21Fが形成されており、間隙31と筒状体21の外部空間とを連通している。そのため、管状部15を低温液体5に浸漬する際には、間隙31内に存在するガスがガス流通路21Fから抜けるようになっている。これにより、下筒部21Lにおける間隙31内に低温液体5を導入することができるようになっている。そして、間隙31内に低温液体5が導入された後は、間隙31内のガスと筒状体21の外部空間のガスとがガス流通路21Fを介して流通するので、間隙31内の低温液体5の液面が上下移動可能になっている。
【0032】
尚、ガス流通路21Fは、貯留容器3内に貯留される低温液体5の最大貯留時の液面位置より高い位置に配置されるように形成されている。また、間隙31内で発生した蒸発ガスもこのガス流通路21Fから外部へ抜けるようになっている。そのため、ガス流通路21Fの大きさ,個数及び,筒状体21の軸方向における形成位置等によって、発生した蒸発ガスがガス流通路21Fから放出されるまでの時間等が変わり、温度勾配が変化する。そこで、ガス流通路21Fの大きさ,個数及び形成位置等は、間隙31の大きさとともに低温液体5の種類に応じて、管状部15の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけるように設定されている。
【0033】
次に、本実施形態に係る液面計1の作用について説明する。液面計1は以上のような構成により、管状部15の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけている。そして、管状部15内の測定用ガスは、貯留容器3内の低温液体5と同じ温度で液化し得るものであるため、管状部15が低温液体5に浸漬されたときに測定用ガスが冷却されて液化する。このとき、低温液体5の液面位置に応じて管状部15の冷却範囲が変わり、管状部15の非浸漬部分の温度勾配が変化する。そのため、管状部15内の測定用ガスが飽和温度になる位置が変動し、管状部15内の液面位置が変動するようになっている。尚、以上のように管状部15が温度勾配を有することで、管状部15の非浸漬部分の温度は低温液体5の温度より高くなっている。また、上述のように、管状部15内の測定用ガスの飽和状態の液体温度は、貯留容器3内の低温液体5の温度より高く設定されている。そのため、管状部15内の液面位置は、図2に示すように、管状部15の非浸漬部分にくるようになっている。そして、この管状部15内の液面位置の変動によって変動する測定用ガスの圧力を圧力計23で測定する。ここで、圧力計23の圧力値と貯留容器3内の低温液体5の液面位置との関係を実験等により予め求めておけば、貯留容器3内の低温液体5の液面位置がわかる。尚、このことから、圧力計23で測定される圧力値と貯留容器3内の低温液体5の液面位置との関係は、線形性を有することが好ましい。よって、筒状体21と管状部15との間の間隙31及びガス流通路21Fは、管状部15の非浸漬部分に適切な温度勾配をつけることで、この圧力値と液面位置との関係が線形に近づくようにさらに設定されている。
【0034】
本実施形態に係る低温液体用液面計1によれば、筒状体21の断熱層21D,21Eを管状部15を取り囲むように設け、筒状体21と管状部15との間に所定の間隙31と、間隙31と筒状体21の外部空間とを連通するガス流通路21Fとを形成することで、管状部15に適切な温度勾配をつけるように構成されている。そのため、従来例のように電源や配線等を設ける必要がないので、構成を簡単にすることができる。また、従来例のヒーターのような電気的な装置によってではなく、機械的な構造によって管状部15に温度勾配をつけている。そのため、貯留容器3内の低温液体5の蒸発ガスが可燃性を有する場合であっても、火花等による蒸発ガスの爆発の危険性がなく、防爆性を向上させることができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。上記実施形態では、図2に示すように2つのガス流通路21Fが筒状体21の軸方向において同じ位置に開口するように形成されているが、管状部15に適切な温度勾配をつけることができる限り、これに限定されない。例えば、ガス流通路21Fの個数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、ガス流通路21Fが複数個である場合は、筒状体21の軸方向において異なる位置にガス流通路21Fが開口するように形成してもよい。例えば、1つのガス流通路21Fを低温液体5の最大貯留時の液面に近い位置に配置し、1つのガス流通路21Fを貯留容器3内で室温部17により近い位置に配置するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、ガス流通路21Fを第二接続部材21Cに設けているが、間隙31と筒状体21の外部空間とを連通する限り、これに限定されない。例えば、ガス流通路を内管21A及び外管21Bに穿孔を形成することによって設けてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、空隙21D,21Eを真空状態にすることによって断熱層を形成しているが、例えば、空隙21D,21E内に、樹脂系の断熱材や無機繊維系の断熱材等を挿入してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
本実施例では、上記実施形態の液面計1を表1のように構成した。
【0040】
【表1】

以上のように構成された液面計1を用い、低温液体5の液面位置を変動させた。その結果、図3に●で示すように、管状部15の低温液体5への浸漬深さ(管状部15の下端から低温液体15の液面までの距離)と、管状部15内の測定用ガスの気圧(圧力計23の示す圧力値)との関係を得た。尚、この図3の縦軸は、測定用ガスの気圧値を封入気圧値で無次元化した値(無次元圧力値)を示す。
【0041】
この関係を見ると、浸漬深さの変動に対して、圧力値が概ね線形的に変動しているのがわかる。このことから、管状部15の非浸漬部分に、室温部17に向かうにつれて温度が高くなるような適切な温度勾配がついていることがわかる。
【0042】
また、図3には、□で示すように、上記実施例においてガス流通路21Fの形成位置を、筒状体21の下端より1100mmにした場合の関係も示している。この関係を見ると、筒状体21の下端より900mmの場合の方がより線形性を有している。そのため、このような場合は、その関係がより線形性を有する方にガス流通路21Fの形成位置を設定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施形態に係る低温液体用液面計の概略構成を示すとともに使用状態を説明する図である。
【図2】図1の低温液体用液面計の要部断面図である。
【図3】実施例における、管状部15の低温液体5への浸漬深さと、管状部15内の測定用ガスの無次元圧力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 低温液体用液面計
3 貯留容器
5 低温液体
15 管状部
17 室温部
19 密閉体
21 筒状体
21D,21E 空隙(断熱層)
21F ガス流通路
23 圧力計
31 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留容器内に貯留された低温液体の液面位置を測定する低温液体用液面計であって、
前記貯留容器内に配置して前記低温液体に浸漬するための管状部と、前記貯留容器外に配置するための室温部とを有し、前記貯留容器内の前記低温液体と同じ温度で液化し得る測定用ガスを内部に注入して密閉可能な密閉体と、
前記管状部との間に所定の間隙が形成されるように前記管状部が挿入され、前記貯留容器内の前記管状部の外周を取り囲む断熱層を有する筒状体と、
前記間隙と前記筒状体の外部空間とを連通するガス流通路と、
前記密閉体内の気圧を測定する圧力計と、
を備えていることを特徴とする、低温液体用液面計。
【請求項2】
前記断熱層は、真空層であることを特徴とする、請求項1に記載の低温液体用液面計。
【請求項3】
前記管状部は、銅で形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の低温液体用液面計。
【請求項4】
前記圧力計は、機械式のものであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の低温液体用液面計。
【請求項5】
前記ガス流通路は、複数個設けられ、前記筒状体の軸方向において異なる位置で前記間隙に開口するように形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の低温液体用液面計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の低温液体用液面計を備えた低温液体貯留容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−68948(P2009−68948A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236634(P2007−236634)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(593222229)株式会社クライオバック (2)
【Fターム(参考)】