説明

低温液化ガス気化装置

【課題】 散水設備や温水式気化器を持たないにもかかわらず、フィン付伝熱管の外表面に付着する氷を効果的に解氷することができる低温液化ガス気化装置を提供する。
【解決手段】 大気との熱交換により低温液化ガスを蒸発させるフィン付伝熱管21cを有する蒸発部21と、蒸発部21で蒸発した気化ガスを加温するフィン付伝熱管22aを有する加温部22とからなる熱交換器2を備えてなる低温液化ガス気化装置1において、前記熱交換器2の上方近傍位置に、前記蒸発部21のフィン付伝熱管21cに沿って下降する下降空気流を加温する空気加温器3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を熱源として液化天然ガス(LNG)等の低温液化ガスを効果的に気化する低温液化ガス気化装置の改善に係り、より詳しくは、熱交換器のフィン付伝熱管に氷結する氷を効果的に解氷し得るようにした低温液化ガス気化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低温液化ガスである液化天然ガスのサテライト基地には、大気を熱源とする自然通風型あるいは強制通風型の空温式気化器(空温式の熱交換器)を備えてなる低温液化ガス気化装置が設置されている。この種の低温液化ガス気化装置としては、例えば下記のような幾つかの例を挙げることができる。以下、従来例に係る低温液化ガス気化装置を図面を参照しながら説明する。
【0003】
従来例1に係る低温液化ガス気化装置は、その回路系統図の図5に示すように構成されている。即ち、この従来例1に係る低温液化ガス気化装置は、散水ヘッダー95から強制通風型の空温式気化器(熱交換器)80のフィン付伝熱管81に温水を噴射することにより、フィン付伝熱管81に形成されている氷層を解氷するものである。即ち、フィン付伝熱管81に温水を噴射する散水設備90は、散水用ピット91から散水ヘッダー95に連通する水供給管路92と、この水供給管路92に介装され、前記散水用ピット91内の水を吸引して吐出する散水ポンプ93と、この散水ポンプ93から吐出された水を加温する水加温器94とから構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来例2に係る低温液化ガス気化装置は、その系統図の図6に示すように構成されている。この従来例2に係る低温液化ガス気化装置101は、上記従来例3のような温水を噴射する散水設備を要しない構成になるものである。即ち、通常の気化運転中においては、液化天然ガス供給管路102からLNGが供給され、第1空温式気化器103および温水式気化器104で蒸発加温される。第1空温式気化器103を出たNGは必要に応じて第1気化ガス加温器105hで追加加温され、温水式気化器104から第2気化ガス送出管路106に出たNGと合流して、第1気化ガス送出管路105を介して供給先側に送出されるように構成されている。なお、第1空温式気化器103および温水式気化器104は設備容量により、それぞれ1基ずつ設けられている場合と、複数基ずつ設けられている場合とがある。また、通常の気化運転中においてもLNGの気化量に応じて、第1空温式気化器103および温水式気化器104の何れか一方が運転される場合も、両方が運転される場合も、複数基の第1空温式気化器103および温水式気化器104が共に運転される場合もある。
【0005】
この低温液化ガス気化装置101の場合には、LNGの気化運転の後に解氷モードに切り換えられるが、第1空温式気化器103では下記のようにして解氷される。即ち、並列設置されている温水式気化器104を気化運転機とし、液化天然ガス供給管路102から供給されたLNGを温水式気化器104により蒸発加温させる。この温水式気化器104を出た加温されたNGは気化ガス循環管路107を通り、解氷を必要とする第1空温式気化器103の液化天然ガス入口103aに供給され、第1空温式気化器103のフィン付伝熱管の管壁を加温するため、フィン付伝熱管の外表面に氷着している氷が解氷される。
そして、第1空温式気化器103を出たNGは氷との熱交換によって温度が低下するため、第1気化ガス加温器105hで加温され、第1気化ガス送出管路105を介して供給先側に送出される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
従来例3に係る低温液化ガス気化装置は、その概略構成説明図の図7に示すように構成されている。即ち、この従来例3に係る低温液化ガス気化装置61は、水平配設された上部ヘッダー62aと下部ヘッダー62bとの間に、垂直、かつ並行に複数本のフィン付伝熱管62cが配設されてなる蒸発部62を備えており、前記下部ヘッダー62bから供給されたLNGがフィン付伝熱管62cを上昇して上部ヘッダー62aに到達する間に、空気と熱交換しての蒸発するように構成されている。この蒸発部62で蒸発して上部ヘッダー62aから排出されるNGは、上部ヘッダー62aから、前記蒸発部62のフィン付伝熱管62cと同構成になる、垂直な複数本の並列配設されたフィン付伝熱管63aと、これら複数本のフィン付伝熱管63aの上開口部同士、および下開口部同士を接続するU字状のベント管63bとからなる加温部63に導かれ、この加温部63において下降と上昇とを繰り返す間に、空気との熱交換によって次第に加温され、所定温度のNGとして出口から供給先側に送出されるように構成されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
従来例4に係る低温液化ガス気化装置は、その模式的構成説明図の図8に示すように構成されている。即ち、この従来例4に係る低温液化ガス気化装置71は、後述する構成の熱交換器72を備えている。この熱交換器72は水平配設された上部ヘッダー73aと下部ヘッダー73bとの間に上下向きに配設され、大気との熱交換により低温液化ガスを蒸発させる複数本のフィン付伝熱管73cを有する蒸発部73を備えている。さらに、上下のU字状のベンド管74bを介して連結され、前記蒸発部73での低温液化ガスの蒸発で生じた気化ガスを加温する複数本のフィン付伝熱管74aを有する加温部74を備えている。この熱交換器72の下部には、この熱交換器72の下端部およびこの下端部の下方部分を覆い、大気中への霧の流出を防止する覆い壁75を設けられている。そして、この覆い壁75の外方近傍に、この覆い壁75の内側に滞留する霧を吸引し、吸引した霧を前記熱交換器72から離れる方向、つまり斜め上向き方向に拡散排気する排気ダクト76aを有する吸引ファン装置76が設けられている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−005398号公報
【特許文献2】特開2002−228096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例1に係る低温液化ガス気化装置では、散水ピット、散水ポンプ、散水加温器、水供給管路、散水ヘッダーからなる散水設備が必要で、設備コストに関して不利になるという問題があった。また、散水時に水が飛散するため、隣接機との間に所定の間隔(例えば、3m)の機器間距離を隔てなければならず、広大な機器設置スペースを要するという敷地確保上の問題があった。さらに、寒冷地の場合にあっては、散水ピット、散水ポンプ、散水加温器、水供給管路、散水ヘッダーからなる散水設備の氷結を防止するための寒冷地対策が必要であり、これらも設備コストを押し上げる要因となっていた。
【0009】
また、上記従来例2に係る低温液化ガス気化装置では、解氷のために散水設備を必要としないため優れていると考えられるが、第1空温式気化器に温水式気化器を併設する必要がある。また、気化時と解氷時との切り換えのための配管、切換弁を要し、設備コストが嵩むという問題があった。さらに、気化時から解氷時への切り換えに際して、温水式気化器で加温したNGを、低温のLNGが残存する第1空温式気化器の液化天然ガス入口部に供給するため、残存するLNGの突沸によりフィン付伝熱管内で異状温度アンバランスを生じさせたり、メタル温度が低温から高温になることによる、熱応力発生に対する技術上の配慮をしなければならず、これも設備コストアップの要因になっていた。
【0010】
さらに、上記従来例3や4に係る低温液化ガス気化装置は、低温液化ガスの気化に、自然対流する大気を熱源として活用する方式であって、気化運転中にフィン付伝熱管の外表面に大気中の水分が氷となって着氷する。冬季の厳しい条件下においては、短時間のうちにフィン付伝熱管の外表面が氷結して着氷量が増大し、短いサイクルで解氷工程が必要であったり気化運転自体が困難になったりすることがあり、低温液化ガス気化装置の稼働率が低く液化ガスの気化効率が悪いという問題があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、散水設備や温水式気化器を持たないにもかかわらず、フィン付伝熱管の外表面に付着する氷を効果的に解氷することを可能ならしめる低温液化ガス気化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って、上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、大気との熱交換により低温液化ガスを蒸発させ、かつ蒸発により生じた気化ガスを加温するフィン付伝熱管を有する熱交換器を備えてなる自然通風型の低温液化ガス気化装置において、前記熱交換器の上方近傍位置に、前記フィン付伝熱管に沿って下降する下向空気流を前もって加温する空気加温器を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項2に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、請求項1に記載の低温液化ガス気化装置において、前記熱交換器の下方の空間に通じる吸引口を備えた吸引ファン装置を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項3に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、請求項2に記載の低温液化ガス気化装置において、熱交換器側を開放して前記空間を覆う覆い壁を設け、前記空間に滞留する空気を、前記吸引ファン装置により排除するように構成したことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項4に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、請求項3に記載の低温液化ガス気化装置において、前記空気加温器および前記熱交換器を囲繞する囲いを設けたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項5に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、請求項1乃至4に記載の低温液化ガス気化装置において、前記空気加温器は、流体を熱源とする流体伝熱管を備えてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項6に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、請求項5に記載の低温液化ガス気化装置において、流体伝熱管の外周部にフィンが設けられてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項7に係る低温液化ガス気化装置が採用した手段は、請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載の低温液化ガス気化装置において、前記空気加温器は、電流が供給される電熱式の空気加温器であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る低温液化ガス気化装置では、熱交換器の複数本のフィン付伝熱管に沿って下降する下向空気流が、熱交換器の上方近傍位置に設けられた空気加温器により前もって加温されるので、加温された下向空気流により熱交換器のフィン付伝熱管の外表面に付着している氷が解氷される。
【0020】
従って、本発明の請求項1に係る低温液化ガス気化装置によれば、下記のとおりの効果を得ることができる。
(1)従来例1のように散水設備を設ける必要がないので、設備の設置スペースを狭くすることができると共に、設備コストに関しても有利になり、そして寒冷地域においても氷結トラブルが発生するようなことがない。
(2)従来例2のように第1空温式気化器に温水式気化器を併設する必要がなく、気化時と解氷時との切り換えのための配管、切換弁が不要であるのに加えて、気化時から解氷時への切り換えに際して、残存するLNGの突沸やメタル温度が低温から高温になることによる熱応力発生に対する技術上の配慮をする必要がないから、設備コストに関して有利になるという優れた効果がある。
(3)自然空気流の大気熱源だけを利用する従来例3や4に比べて空気加温器により下向空気流を加温することにより、気化運転中はより連続運転時間性能をアップすることができ、また冬季の厳しい気象条件下においても気化運転することができる。そして、解氷運転工程においては散水なしで、加温された下向空気流によりフィン付伝熱管に着氷した氷を解氷することができる。
【0021】
本発明の請求項2に係る低温液化ガス気化装置によれば、前記熱交換器の下方の空間に吸引口が通じるように設けた吸引ファン装置の吸引により、下方の空間に滞留する空気を排除するため、空気加温器で加温された下向空気流がより効果的に熱交換器のフィン付伝熱管に沿って流れるから、上記請求項1に係る低温液化ガス気化装置よりも解氷性能が向上する。また、気化運転時にフィン付伝熱管に沿って霧が発生しても、この霧を空気と共に吸引ファン装置により吸引して大気中に拡散排気することにより、効果的に消霧することができる。
【0022】
本発明の請求項3に係る低温液化ガス気化装置によれば、覆い壁により前記熱交換器の下方の空間とその周囲とが区画されているため、吸引ファン装置の吸引により空間に滞留する空気が効率良く排除される。従って、空気加温器で加温された下向空気流がより効果的に熱交換器のフィン付伝熱管に沿って流れるから、上記請求項2に係る低温液化ガス気化装置よりも解氷性能が向上する。また、霧が発生しても、空間に一旦滞留して吸引されるため、発生した霧が周囲に流出することがなく消霧性能が優れている。
【0023】
本発明の請求項4に係る低温液化ガス気化装置によれば、空気加温器で加温された下向空気流が熱交換器の外方に散逸することなく、囲いの内側を流れるのに加えて、たとえ風があったとしても、囲いにより風が遮られて下向空気流が乱れることがないので、上記請求項3に係る低温液化ガス気化装置よりも解氷性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の形態1に係る低温液化ガス気化装置を、その模式的構成説明図の図1を参照しながら説明する。なお、本発明の形態1に係る低温液化ガス気化装置の熱交換器は、従来例3,4に係る低温液化ガス気化装置の熱交換器と同構成であって、この熱交換器の蒸発部と加温部とに用いられている伝熱管は何れもフィン付であるが、簡略化のために図示省略している。
【0025】
図に示す符号1は、本発明の形態1に係る低温液化ガス気化装置である。この低温液化ガス気化装置1は、後述する構成になる蒸発部21と加温部22とを有する熱交換器2を備えている。前記蒸発部21は、大気と熱交換させることにより、供給された低温液化ガス(以下、LNGという。)を蒸発させる働きをするものである。また、前記加温部22は、前記蒸発部21におけるLNGの蒸発により発生した気化ガス(以下、NGという。)を加温して所定の温度に昇温させる働きをするものである。
【0026】
より詳しくは、前記熱交換器2の蒸発部21は、水平に配設された上部ヘッダー21aと、この上部ヘッダー21aの直下に、この上部ヘッダー21aと平行に配設された水平な下部ヘッダー21bと、これら上部ヘッダー21aと下部ヘッダー21bとの間に、垂直、かつ所定の間隔を持って配設され、外周部に長手方向に沿うフィン(図示省略)を有する複数本のフィン付伝熱管21cとから構成されている。つまり、下部ヘッダー21bから供給されたLNGが、複数本のフィン付伝熱管21cを上昇して上部ヘッダー21aに到達する間に、これら複数本のフィン付伝熱管21cの周囲を対流する空気との熱交換により加温されて蒸発するように構成されている。
【0027】
前記熱交換器2の加温部22は、前記蒸発部21のフィン付伝熱管21cと同構成になる垂直な複数本の並列配設されたフィン付伝熱管22aと、これら複数本のフィン付伝熱管22aの上開口部同士、下開口部同士を接続するU字状のベンド管22bとからなっている。つまり、前記上部ヘッダー21aから加温部22のフィン付伝熱管22aに流入するNGが、フィン付伝熱管22aを下降すると共に、上昇することを繰り返して、前記蒸発部21から最も離れた位置に配設されたフィン付伝熱管22aの下端部位置に到達する前に、各フィン付伝熱管22aに沿って下降する下向空気流Adfとの熱交換により加温されて、所定温度のNGとして供給先側に送気されるように構成されている。そして、前記熱交換器2の蒸発部21の上方近傍位置に、図示しない支持ブラケットを介して、熱源となる流体が供給される流体伝熱管を備えてなる流体熱交換式の空気加温器3が横向きに配設されている。前記流体伝熱管は蒸発部21の上下方向の投影面積(設置面積)に応じた範囲に設ければ良く、例えば複数の流体伝熱管を並設すると良い。また、熱源となる流体としては、例えば温水、蒸気、ホットオイル等を用いることができる。
【0028】
以下、上記形態1に係る低温液化ガス気化装置1の作用態様を説明する。即ち、熱交換器2の蒸発部21を構成する下部ヘッダー21bの一端側からLNGが供給されると、供給されたLNGは、下部ヘッダー21bから複数本のフィン付伝熱管21cを上昇する。
次いで、上部ヘッダー21aに到達するまでの間に、フィン付伝熱管21cに沿って下降する下向空気流との熱交換により加温されて蒸発し、低温のNGとなる。この低温のNGは、加温部22のフィン付伝熱管22aに流入し、フィン付伝熱管22aを下降すると共に、上昇することを繰り返す。そして、前記蒸発部21から最も離れた位置に配設されたフィン付伝熱管22aの下端部に到達するまでの間に、各フィン付伝熱管22aに沿って下降する下向空気流Adfとの熱交換により昇温されて、所定温度のNGとして、図示しない供給先側に送気される。
【0029】
このような低温液化ガス気化装置1のLNGの気化運転の継続により、熱交換器2の蒸発部21のフィン付伝熱管21cの外表面に氷が氷着する。しかしながら、本発明の形態1に係る低温液化ガス気化装置1では、フィン付伝熱管21cに沿って下降する下向空気流Adfは、熱交換器2の上方近傍位置に設けられた空気加温器3によって加温され、この加温された下向空気流Adfによって、蒸発部21のフィン付伝熱管21cの外表面に付着している氷が解氷される。従って、本発明の形態1に係る低温液化ガス気化装置1によれば、下記のとおりの効果を得ることができる。
【0030】
(1)従来例1のように散水設備を設ける必要がないので、設備の設置スペースを狭くすることができると共に、設備コストに関しても有利になり、そして寒冷地域においても氷結トラブルが発生するようなことがない。
(2)従来例2のように第1空温式気化器に温水式気化器を併設する必要がなく、気化時と解氷時との切り換えのための配管、切換弁が不要であるのに加えて、気化時から解氷時への切り換えに際して、残存するLNGの突沸やメタル温度が低温から高温になることによる熱応力発生に対する技術上の配慮をする必要がないから、設備コストに関して有利になるという優れた効果がある。
(3)自然空気流の大気熱源だけを利用する従来例1や2に比べて空気加温器により下向空気流を加温することにより、気化運転中はより連続運転時間性能をアップすることができ、また冬季の厳しい気象条件下においても気化運転することができる。そして、解氷運転工程においては散水なしで、加温された下向空気流によりフィン付伝熱管に着氷した氷を解氷することができる。
【0031】
本発明の形態2に係る低温液化ガス気化装置を、その模式的構成説明図の図2を参照しながら説明する。なお、本発明の形態2に係る低温液化ガス気化装置が上記形態1に係る低温液化ガス気化装置と相違するところは、吸引ファン装置が付加されたところにあり、それ以外はまったく同構成であるから、上記形態1と同一のものに同一符号を付し、主としてその相違する点について説明する。
【0032】
即ち、本発明の形態2に係る低温液化ガス気化装置1では、熱交換器2の下部に、吸引ファン4aを有する吸引ファン装置4が設け、前記空間に通じる吸引口4bを備えると共に、吸引した空気を斜め上方に排気する排気ダクト4cを備えている。
【0033】
従って、本発明の形態2に係る低温液化ガス気化装置1によれば、前記熱交換器2の下部に設けた吸引ファン装置4の吸引により、熱交換器2の下方の空間に滞留する空気を排除する。これにより空気加温器3で加温された下向空気流Adfがより効果的に熱交換器2のフィン付伝熱管21cに沿って流れるから、上記形態1に係る低温液化ガス気化装置よりも解氷性能が向上する。また、気化運転時にフィン付伝熱管21cに沿って霧が発生しても、この霧を吸引ファン装置4により吸引して大気中に拡散排気することにより、効果的に消霧することができるという白煙防止効果もある。なお、本発明の形態2に係る低温液化ガス気化装置を示す図2においては、円形状に形成された吸引口4bを例示しているが、矩形状、スリット状、また多孔形状等であっても良く、種々の形状のものを採用することができる。
【0034】
本発明の形態3に係る低温液化ガス気化装置を、その模式的構成説明図の図3を参照しながら説明する。なお、本発明の形態3に係る低温液化ガス気化装置が上記形態2に係る低温液化ガス気化装置と相違するところは、覆い壁が設けられているところにあり、それ以外はまったく同構成であるから、上記形態2と同一のものに同一符号を付し、主としてその相違する点について説明する。
【0035】
本発明の形態3に係る低温液化ガス気化装置1では、熱交換器2側を開放して、この熱交換器2の下方の空間を覆う覆い壁5が設けられており、この覆い壁5で囲まれた空間に滞留する空気が吸引ファン装置4により排除されるように構成されている。この覆い壁5は、熱交換器2の下端部、より具体的には蒸発部21の複数本のフィン付伝熱管21cのフィン、加温部22のフィン付伝熱管22aのフィンの下端から、その下方部分を囲む状態に配設されている。即ち、覆い壁3はフィン付伝熱管21c内を上昇するLNGや、フィン付伝熱管22a内を流れるNGとの熱交換により冷却されて熱交換器2の下方側に流下する下向空気流Adfに含まれている微細な水滴からなる霧を滞留させ、大気中に流出させないように構成されている。また、この覆い壁3は、熱交換器2の熱交換効率の低下を回避するために、設置、かつ撤去自在に構成されている。そして、この覆い壁5は、設置、撤去を容易ならしめるために、例えばアルミニウム材、プラスチック材等の軽量素材から製造されている。なお、覆い壁5に開閉自在な窓部を設けて、この覆い壁5を据え置くようにしても良い。
【0036】
従って、本発明の請求項3に係る低温液化ガス気化装置1によれば、覆い壁5により前記熱交換器2の下方の空間とその周囲とが区画されているため、吸引ファン装置4の吸引により空間に滞留する空気が効率良く排除される。従って、空気加温器2で加温された下向空気流Adfがより効果的に熱交換器2のフィン付伝熱管21cに沿って流れるから、上記形態2に係る低温液化ガス気化装置よりも解氷性能が向上する。また、霧が発生しても、空間に一旦滞留して吸引されるため、発生した霧が周囲に流出することがなく消霧性能も優れている。
【0037】
本発明の形態4に係る低温液化ガス気化装置を、その模式的構成説明図の図4を参照しながら説明する。なお、本発明の形態4に係る低温液化ガス気化装置が上記形態3に係る低温液化ガス気化装置と相違するところは、覆い壁の上部に囲いが設けられているところにあり、それ以外はまったく同構成であるから、上記形態3と同一のものに同一符号を付し、主としてその相違する点について説明する。
【0038】
本発明の形態4に係る低温液化ガス気化装置1では、空気加温器3および熱交換器2を囲繞する囲い6が設けられてなる構成になっている。この場合、前記空気加温器3は、囲い6の上端付近の内壁に、ボルト等の機械的締結手段により基端側が固着されている。
【0039】
従って、本発明の形態4に係る低温液化ガス気化装置1によれば、空気加温器で加温された下向空気流Adfが熱交換器2の外方に散逸することなく、囲い6の内側を流れるのに加えて、たとえ風があったとしても、囲い6により風が遮られて下向空気流Adfが乱れることなくフィン付伝熱管21cに沿って流れるので、上記形態3に係る低温液化ガス気化装置よりも解氷性能が向上する。なお、囲い6は、覆い壁5と同様の軽量素材からなる構成とし、着脱自在にすることができる。また、複数のロールカーテンで囲うようにしたり、蛇腹状のチューブで囲うようにすれば、必要に応じて容易に熱交換器部分を囲ったり、露出させることができる。これらの場合、前記空気加温器3は、別途支柱等を設けて支持するようにすれば良い。
【0040】
以上の形態に係る低温液化ガス気化装置1においては、外周部にフィンが設けられていない流体電熱管を有する空気加温器が設けられている例を説明したが、外周部にフィンが設けられている流体電熱管を有する空気加温器を設けることができる。これにより、大気との接触面積が増大するので、上記形態1乃至4に係る低温液化ガス気化装置1の空気加温器3より効率よく下向空気流を加温することができるという効果を得ることができる。
また、熱源として、温水、蒸気、ホットオイル等の流体を用いる空気加温器の例を説明したが、電流が供給される電熱式の空気加温器を用いることもできる。従って、上記形態1乃至4に係る低温液化ガス気化装置1の構成に限定されるものではなく、また本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の形態1に係る低温液化ガス気化装置の模式的構成説明図である。
【図2】本発明の形態2に係る低温液化ガス気化装置の模式的構成説明図である。
【図3】本発明の形態3に係る低温液化ガス気化装置の模式的構成説明図である。
【図4】本発明の形態4に係る低温液化ガス気化装置の模式的構成説明図である。
【図5】従来例1に係る低温液化ガス気化装置の回路系統図である。
【図6】従来例2に係る低温液化ガス気化装置の系統図である。
【図7】従来例3に係る低温液化ガス気化装置の概略構成説明図である。
【図8】従来例4に係る低温液化ガス気化装置の模式的構成説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1…低温液化ガス気化装置,2…熱交換器、21…蒸発部,21a…上部ヘッダー、21b…下部ヘッダー,21c…フィン付伝熱管,22…加温部,22a…フィン付伝熱管,22b…ベンド管,3…空気加温器,4…吸引ファン装置,4a…吸引ファン,4b…吸引口,4c…排気ダクト,5…覆い壁,6…囲い,Adf…下向空気流。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気との熱交換により低温液化ガスを蒸発させ、かつ蒸発により生じた気化ガスを加温するフィン付伝熱管を有する熱交換器を備えてなる自然通風型の低温液化ガス気化装置において、前記熱交換器の上方近傍位置に、前記フィン付伝熱管に沿って下降する下向空気流を前もって加温する空気加温器を設けたことを特徴とする低温液化ガス気化装置。
【請求項2】
前記熱交換器の下方の空間に通じる吸引口を備えた吸引ファン装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の低温液化ガス気化装置。
【請求項3】
熱交換器側を開放して前記空間を覆う覆い壁を設け、前記空間に滞留する空気を、前記吸引ファン装置により排除するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の低温液化ガス気化装置。
【請求項4】
前記空気加温器および前記熱交換器を囲繞する囲いを設けたことを特徴とする請求項3に記載の低温液化ガス気化装置。
【請求項5】
前記空気加温器は、流体を熱源とする流体伝熱管を備えてなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の低温液化ガス気化装置。
【請求項6】
流体伝熱管の外周部にフィンが設けられてなることを特徴とする請求項5に記載の低温液化ガス気化装置。
【請求項7】
前記空気加温器は、電流が供給される電熱式の空気加温器であることを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載の低温液化ガス気化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29356(P2006−29356A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204657(P2004−204657)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】