説明

低温液化ガス用液面計

【課題】容器に収容された低温液化ガスの液面の位置を計測する精度を高めることができる低温液化ガス用液面計を提供する。
【解決手段】低温液化ガス用液面計1は、容器の深さ方向に並べて配置される複数の超伝導体35を備える。複数の超伝導体35の超伝導遷移温度は同じであり、低温液化ガスの沸点よりも高い。断熱体37は隣り合う超伝導体35の間に配置されている。判定部15は、複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある超伝導体35と常伝導状態にある超伝導体35とを判定する。決定部17は、複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35を、判定部15での判定を用いて特定することによって、低温液化ガスの液面の位置を求め、求めた液面の位置を液面の位置に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低温液化ガスの液面の位置を計測する液面計に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク内に貯蔵された液化水素、液化窒素及び液化ヘリウム等の低温液化ガスの液面の位置を計測する液面計として、超伝導を応用した技術が提案されている。例えば、超伝導体MgBからなる長尺状単芯線のセンサが内部に固定されている筒を貯蔵容器内の低温液化ガスに浸し、センサに電流を流してセンサの両端の電位差を測定し、実験データから予め求めていた電圧値と液面の位置との関係式を用いて、液面の位置を計測する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−139441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超伝導体からなる長尺状単芯線では、液面の上に位置する部分であっても熱伝導により超伝導状態になることがあり、これが液面の位置を計測する精度を低下させる原因となる。
【0005】
本発明は容器に収容された低温液化ガスの液面の位置を計測する精度を高めることができる低温液化ガス用液面計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の一の局面に係る低温液化ガス用液面計は、低温液化ガスを収容する容器の内部に前記容器の深さ方向に並べて配置することが可能であり、前記低温液化ガスの沸点よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体と、隣り合う前記超伝導体の間に配置され、隣り合う前記超伝導体を断熱する断熱体と、前記複数の超伝導体の中で超伝導状態にある超伝導体と常伝導状態にある超伝導体とを判定する判定部と、前記容器の深さ方向に並べて配置された前記複数の超伝導体の中で超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体を、前記判定部での判定を用いて特定することによって、前記低温液化ガスの液面の位置を求め、求めた前記液面の位置を前記液面の位置に決定する決定部と、を備える。
【0007】
本発明によれば、上述した複数の超伝導体に対して、超伝導状態にある超伝導体と常伝導状態にある超伝導体とを判定している。これにより、容器の深さ方向に並べて配置された複数の超伝導体の中で超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体を特定することができるので、低温液化ガスの液面の位置を計測することができる。そして、本発明によれば、隣り合う超伝導体の間にこれらを断熱する断熱体を設けることにより、液面の上に位置する超伝導体を常伝導状態にすることが可能なので、液面の位置を計測する精度を高めることができる。
【0008】
上記構成において、前記複数の超伝導体を加温するヒータと、前記判定部での判定前に、前記ヒータを作動させて前記複数の超伝導体を加温した後に前記ヒータの作動を停止させる制御をするヒータ制御部と、を備えることができる。
【0009】
この構成によれば、超伝導状態にある超伝導体と常伝導状態にある超伝導体とを判定する前に、複数の超伝導体を一度、常伝導状態にすることができる。これにより、例えば液面が急激に低下し、低下前に液面下に位置した超伝導体が超伝導状態を維持した状態で判定することを防止できるので、液面の計測精度を高めることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の超伝導体を1つのセットとして、前記超伝導遷移温度がそれぞれのセットで異なる複数のセットを備え、前記判定部は、前記複数のセットのそれぞれについて、前記複数の超伝導体の中で超伝導状態にある超伝導体と常伝導状態にある超伝導体とを判定し、前記決定部は、前記複数のセットのそれぞれについて前記液面の位置を求め、求めた前記液面の位置を用いて前記液面の位置を決定することができる。
【0011】
この構成によれば、超伝導体の超伝導遷移温度がそれぞれ異なる複数のセットを備え、複数のセットのそれぞれの場合について液面の位置を求めている。したがって液面の位置のデータが複数あるので、例えば複数の液面の位置の平均値を液面の位置に決定することにより、液面の位置の計測誤差を小さくすることができる。
【0012】
上記構成において、前記低温液化ガスの沸点を特定できる情報及び前記複数のセットのそれぞれの前記超伝導遷移温度の情報が、操作によって設定される設定部を備え、前記決定部は、前記複数のセットのそれぞれについて求めた前記液面の位置が同じでない場合、前記複数のセットの中で前記低温液化ガスの沸点に最も近い前記超伝導遷移温度のセットを用いて求めた前記液面の位置を、前記液面の位置に決定することができる。
【0013】
液面の位置が急激に低下すると、低下前に液面下に位置した超伝導体は、余熱(冷熱)の影響により、しばらく超伝導状態を維持していることがある。この構成は、低温液化ガスの沸点に最も近い超伝導遷移温度を有する超伝導体が、余熱の影響を一番受けにくいことを考慮したものであり、複数の超伝導体を加温するヒータを備えない場合に特に有効となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器に収容された低温液化ガスの液面の位置を計測する精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る低温液化ガス用液面計の概略図である。
【図2】センサ部の側面図である。
【図3】低温液化ガスを収容する容器の内部にセンサ部を取り付けた状態を示す図である。
【図4】超伝導状態にある超伝導体の個数と液面の位置との対応関係の一例を示す表である。
【図5】第1実施形態に係る低温液化ガス用液面計を用いた液面の計測動作の一例を説明するフローチャートである。
【図6】上記計測動作における低温液化ガスの液面とセンサ部の関係を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る低温液化ガス用液面計に備えられるセンサ部の平面図である。
【図8】容器に配置されたセンサ部と液面の一例を示す図である。
【図9】容器に配置されたセンサ部と液面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る低温液化ガス用液面計1の概略図である。低温液化ガス用液面計1はセンサ部11、複数の電流測定部13、判定部15、決定部17、設定部19、表示制御部21、表示部23及びヒータ制御部25を備える。図2はセンサ部11の側面図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、センサ部11は実装基板31、ヒータ33及び複数の超伝導体35を備える。複数の超伝導体35は同じ材料から構成されており、したがって同じ超伝導遷移温度を有する。超伝導体35は低温液化ガスの沸点よりも高い超伝導遷移温度を有する。気化された低温液化ガスによって超伝導体35が超伝導状態になれば液面の位置の正確な計測ができないので、超伝導体35の超伝導遷移温度は低温液化ガスの沸点付近であることが好ましい。例えば、低温液化ガスが液化水素(沸点20K)であれば、超伝導体35として、超伝導遷移温度23KであるNbGeや超伝導遷移温度39KであるMgBを用いることができる。低温液化ガスは、その沸点が超伝導体35の超伝導遷移温度よりも低ければ、本実施形態を適用することが可能である。
【0018】
ヒータ33は実装基板31に実装されており、ヒータ33上に複数の超伝導体35が間隔を空けて形成されている。ヒータ33によって複数の超伝導体35が加温される。ヒータ33は低温液化ガスの温度領域で動作可能な電気抵抗素子であり、材料がステンレス、マンガニン等からなる。
【0019】
図3に示すように、低温液化ガスを収容する容器41の内部にセンサ部11を取り付けた際に、複数の超伝導体35が容器41の深さ方向Dに一列に並ぶように、複数の超伝導体35はヒータ33上に配置されている。したがって、複数の超伝導体35は低温液化ガスを収容する容器41の内部に容器41の深さ方向Dに並べて配置することが可能にされている。
【0020】
断熱体37は隣り合う超伝導体35の間に配置されており、隣り合う超伝導体35を断熱すると共に電気的に絶縁する。断熱体37の材料としてFRP(Fiber Reinforced Plastics)等を例示することができる。
【0021】
超伝導体35の厚みT1と断熱体37の厚みT2は、低温液化ガス用液面計1の分解能に対応している。例えば厚みT1+厚みT2が1cmで、複数の超伝導体35が100個であれば、100cmの範囲を1cm単位で計測できる。
【0022】
複数の電流測定部13は複数の超伝導体35のそれぞれに対応して設けられている。したがって、超伝導体35の個数がNであれば、電流測定部13の個数もNとなる。電流測定部13は対応する超伝導体35に電圧を印加して、その超伝導体35を流れた電流を測定する。
【0023】
判定部15は複数の電流測定部13でそれぞれ測定された電流I1〜Inを用いて、複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある超伝導体35と常伝導状態にある超伝導体35とを判定する。電流I1〜Inの中で電流が∞である超伝導体35が超伝導状態と判定され、それ以外が常伝導状態と判定される。
【0024】
設定部19では複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある超伝導体35の個数に対応する液面の位置が、低温液化ガス用液面計1の製造者等によって設定されて、記憶される。図4は設定部19に記憶されている個数と液面の位置との対応を示す表の一例である。
【0025】
図3及び図4を参照して、複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある超伝導体35の個数が1であれば、超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35は、底45から第1番目の超伝導体35であり、液面43の位置は容器41の底45から5cmである。個数が2であれば、超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35は、底45から第2番目の超伝導体35であり、液面43の位置は底45から6cmである。個数が3であれば、超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35は、底45から第3番目の超伝導体35であり、液面43の位置は底45から7cmである。個数が4であれば、超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35は、底45から第4番目の超伝導体35であり、液面43の位置は底45から8cmである。個数が100であれば、超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35は、底45から第100番目の超伝導体35であり、液面43の位置は底45から104cmである。
【0026】
決定部17は判定部15での判定結果を用いて、複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある超伝導体35の個数をカウントする。そして決定部17は設定部19を参照して、カウントした個数に対応する液面43の位置を、液面43の位置として決定する。したがって、決定部17は容器41の深さ方向Dに並べて配置された複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35を、判定部15での判定を用いて特定することによって、低温液化ガスの液面43の位置を求め、求めた液面43の位置を液面43の位置に決定する。
【0027】
表示制御部21は表示部23(例えば液晶パネル)の表示を制御し、決定部17で決定された液面43の位置を表示部23に表示させる機能を有する。
【0028】
ヒータ制御部25は判定部15での判定前に、ヒータ33を作動させて複数の超伝導体35を加温した後にヒータ33の作動を停止させる制御をする。これにより、判定部15での判定前に複数の超伝導体35を一度、常伝導状態にしている。
【0029】
判定部15、決定部17、設定部19、表示制御部21及びヒータ制御部25は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等よって構成される。
【0030】
次に、第1実施形態に係る低温液化ガス用液面計1を用いた液面43の計測動作の一例について説明する。図5はその計測動作を説明するフローチャートである。図6はその計測動作における低温液化ガスの液面43とセンサ部11の関係を示す図である。
【0031】
低温液化ガスの液面43は、容器41の底45から4番目の超伝導体35と5番目の超伝導体35の間の断熱体37のところに位置している。したがって、複数(例えば100個)の超伝導体35の中で4個の超伝導体35が低温液化ガスに浸っている。
【0032】
まず、ヒータ制御部25はヒータ33を作動させて、ヒータ33により複数の超伝導体35を加温する(ステップS1)。これにより複数の超伝導体35を一度、常伝導状態にする。したがって、例えば、低温液化ガスの液面43が急激に低下し、低下前に液面下に位置した超伝導体35が超伝導状態を維持していた場合、その状態を速やかに解消できる。
【0033】
次に、複数の電流測定部13によって、対応する超伝導体35を流れる電流を測定する(ステップS3)。超伝導体35が低温液化ガスに浸っていれば、その超伝導体35は超伝導状態となり、その超伝導体35の抵抗値が0オームになるので、その超伝導体35を流れる電流は∞となる。一方、超伝導体35が低温液化ガスに浸っていなければ、その超伝導体35は常伝導状態となり、その超伝導体35を流れる電流は∞にならない。
【0034】
複数の電流測定部13によって測定された電流I1〜Inのデータは、判定部15に送られる。判定部15は電流が∞である超伝導体35を超伝導状態と判定し、電流が∞でない超伝導体35を常伝導状態と判定する。
【0035】
決定部17は、判定部15で超伝導状態にあると判定された超伝導体35の個数をカウントする(ステップS5)。図6では容器41の底45から1番目、2番目、3番目及び4番目の超伝導体35を流れる電流I1,I2,I3,I4が∞なので、超伝導状態にある超伝導体35の個数は4となる。
【0036】
決定部17は設定部19を用いて個数が4の場合の液面43の位置を求める(ステップS7)。第1実施形態では、ステップS7で求めた液面43の位置を、そのまま液面43の位置として決定する(ステップS9)。ここでは図4に示す表から液面43の位置は容器41の底から8cmとなる。表示制御部21によって表示部23に液面43の位置(ここでは8cm)が表示される(ステップS11)。
【0037】
第1実施形態の主な効果を説明する。第1実施形態では容器41の深さ方向Dに並べて配置された複数の超伝導体35について、超伝導状態にある超伝導体35と常伝導状態にある超伝導体35を判定している。そして超伝導状態にある超伝導体35の個数をカウントして、これを基にして液面43の位置を決定し、液面43の位置を表示している。このように第1実施形態では、超伝導状態にある超伝導体35と常伝導状態にある超伝導体35とを判定している。これにより、容器41の深さ方向Dに並べて配置された複数の超伝導体35の中で超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体35を特定することができるので、低温液化ガスの液面43の位置を計測することができる。そして、第1実施形態によれば、隣り合う超伝導体35の間にこれらを断熱する断熱体37を設けることにより、液面43の上に位置する超伝導体35を常伝導状態にすることが可能なので、液面43の位置を計測する精度を高めることができる。
【0038】
また、第1実施形態によれば、判定部15での判定前に、ステップS1においてヒータ33を作動させて複数の超伝導体35を加温した後にヒータ33の作動を停止させている。これにより、超伝導状態にある超伝導体35と常伝導状態にある超伝導体35とを判定する前に、複数の超伝導体35を一度、常伝導状態にすることができる。その結果、例えば液面43が急激に低下し、低下前に液面下に位置した超伝導体35が超伝導状態を維持した状態で判定することを防止できるので、液面43の計測精度を高めることができる。
【0039】
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態については第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通点については説明を省略する。図7は第2実施形態に係る低温液化ガス用液面計に備えられるセンサ部51の平面図である。センサ部51は図1に示す複数の超伝導体35を1つのセットとして、3つのセット(複数のセットの一例)を備える。各セットの超伝導体35の超伝導遷移温度がそれぞれ異なる。例えば、第1のセット53aに含まれる複数の超伝導体35aの超伝導遷移温度が−160℃、第2のセット53bに含まれる複数の超伝導体35bの超伝導遷移温度が−170℃、第3のセット53cに含まれる複数の超伝導体35cの超伝導遷移温度が−180℃とする。なお、第1のセット53a、第2のセット53b、第3のセット53cを区別する必要がなければ、セット53と記載する。超伝導体35a,35b,35cを区別する必要がなければ超伝導体35と記載する。
【0040】
実装基板31に形成されたヒータ33上に各セット53の複数の超伝導体35が配置されている。各セット53の超伝導体35の個数は同じである。個数を例えばNとすれば、各セット53の同じ順番の超伝導体35は容器の深さ方向Dの位置が同じである。すなわち、第1番目の超伝導体35a,35b,35cは容器の深さ方向Dの位置が同じであり、第2番目の超伝導体35a,35b,35cは容器の深さ方向Dの位置が同じであり、・・・、第N番目の超伝導体35a,35b,35cは容器の深さ方向Dの位置が同じである。
【0041】
図示はしていないが、各超伝導体35に対応させて、図1に示す電流測定部13が設けられている。第1のセット53aで測定された電流I1〜In、第2のセット53bで測定された電流I1〜In、第3のセット53cで測定された電流I1〜Inは、図1に示す判定部15に送られる。判定部15は第1のセット53aについて、複数の超伝導体35aの中で超伝導状態にある超伝導体35aと常伝導状態にある超伝導体35aとを判定し、第2のセット53bについて、複数の超伝導体35bの中で超伝導状態にある超伝導体35bと常伝導状態にある超伝導体35bとを判定し、第3のセット53cについて、複数の超伝導体35cの中で超伝導状態にある超伝導体35cと常伝導状態にある超伝導体35cとを判定する。
【0042】
第2実施形態では、図5のステップS1,S3,S5,S7によって、第1のセット53aを用いて液面43の位置を求め、第2のセット53bを用いて液面43の位置を求め、第3のセット53cを用いて液面43の位置を求める。このように第2実施形態では液面43の位置のデータが3つ得られ、決定部17は3つデータを用いて、液面43の位置を決定する。液面の位置の決定の仕方についてはいくつかあり、それについて説明する。第1のセット53aの超伝導体35aの超伝導遷移温度が−160℃、第2のセット53bの超伝導体35bの超伝導遷移温度が−170℃、第3のセット53cの超伝導体35cの超伝導遷移温度が−180℃である。低温液化ガスは液化酸素(沸点−183℃)とする。
【0043】
液面43の位置の決定の仕方の一つとして、決定部17は第1のセット53a、第2のセット53b及び第3のセット53cを用いて求めた液面43の位置が同じでない場合、 液面43の位置の3つのデータの平均値を液面43の位置に決定する。これを具体的に説明する。図8は容器に配置されたセンサ部51と液面43の位置関係の一例を示す図である。センサ部51は超伝導体35a,35b,35c以外を省略して記載している。
【0044】
液面43のところに位置する超伝導体35の全部が低温液化ガスに浸らずに、一部が浸る場合、超伝導体状態にある一番上に位置する超伝導体35が、各セット53で同じにならないことが起きる可能性がある。超伝導体35a,35bの超伝導遷移温度は、低温液化ガスの沸点より比較的大きいので、超伝導体35a,35bの一部が低温液化ガスに浸れば、超伝導体35a,35bは超伝導状態となる。これに対して、超伝導体35cの超伝導遷移温度は、低温液化ガスの沸点に近いので、超伝導体35cの全部が低温液化ガスに浸らなければ、超伝導体35cは超伝導状態とならない。
【0045】
したがって、図8では液面43の実際の位置は19cmであるが、第1のセット53a及び第2のセット53bを用いて求めた液面43の位置が19cmであり、第3のセット53cを用いて求めた液面43の位置が18cmになる。決定部17は求めた液面43の位置が同じにならなければ、第1のセット53a、第2のセット53b及び第3のセット53cを用いて求めた液面43の位置の平均値を演算する。
【0046】
(19+19+18)÷3=18.666・・・≒19
平均値は19cmとなり、表示制御部21は表示部23に19cmを表示する。
【0047】
液面43の位置の決定の仕方の他の一つとして、決定部17は第1のセット53a、第2のセット53b及び第3のセット53cを用いて求めた液面43の位置が同じでない場合、低温液化ガスの沸点に最も近い超伝導遷移温度を有する超伝導体35のセット53を用いて求めた液面43の位置を、液面43の位置に決定する。これについて図9を用いて具体的に説明する。図9は容器に配置されたセンサ部51と液面43の他の例を示す図である。センサ部51は超伝導体35a,35b,35c以外を省略して記載している。
【0048】
この決定の仕方では、低温液化ガスの沸点を特定できる情報並びに、第1のセット53a、第2のセット53b及び第3のセット53cのそれぞれの超伝導遷移温度の情報が、設定部19に設定される。例えば、第1のセット53aに含まれる超伝導体35aの超伝導遷移温度−160℃、第2のセット53bに含まれる超伝導体35bの超伝導遷移温度−170℃、第3のセット53cに含まれる超伝導体35cの超伝導遷移温度−180℃の値が予め設定部19に予め設定されている。低温液化ガス用液面計の使用者が計測対象となる低温液化ガスの沸点の値を設定部19に設定した後、液面43の位置の計測を可能にする。
【0049】
低温液化ガスの沸点の値を設定する替わりに、低温液化ガスの名称を選択させてもよい。この場合は、低温液化ガスの名称とその低温液化ガスの沸点とを対応づけた情報(例えば、液化酸素:−183℃、液化窒素:−196℃、液化ヘリウム:−268℃、・・・)を予め設定部19に設定する。設定部19は表示制御部21によって上記情報に含まれる低温液化ガスの名称を表示部23に表示させて、低温液化ガス用液面計の使用者が計測対象となる低温液化ガスの名称を選択することにより、低温液化ガスの沸点を特定する。
【0050】
図9の(A)から(B)に示すように液面43の位置が急激に低下したとする。図9の(A)では液面43の実際の位置は20cmであり、第1のセット53a、第2のセット53b、第3のセット53cのいずれも20cmに対応する超伝導体35a,35b,35cが一番上に位置する超伝導体状態の超伝導体である。図9の(B)に示すように、液面43が急激に減少した場合、超伝導体35a,35b,35cに残っている余熱(冷熱)によって、低温液化ガスの沸点より比較的高い超伝導遷移温度を有する第1のセット53a及び第2のセット53bでは、液面43の低下前に液面下に位置した超伝導体35a,35bが常伝導状態に遷移せず超伝導状態を維持することがある。このようなことは、ヒータ33により超伝導体35a,35b,35cを加温すれば、解消することができるが、センサ部51がヒータ33を備えない態様であれば、解消することができない。
【0051】
したがって、(B)において、液面43の位置の3つのデータの平均値を液面43の位置に決定すれば却って測定精度が悪くなる。低温液化ガスの沸点に最も近い超伝導遷移温度を有する超伝導体35が、余熱の影響を一番受けにくい。そこで、第1のセット53a、第2のセット53b、第3のセット53cを用いて求めた液面43の位置が同じにならない場合、低温液化ガスの沸点に最も近い超伝導遷移温度を有するセット53(この例では第3のセット53c)を用いて求めた液面43の位置を、液面43の位置に決定して、表示部23に表示する。このような決定の仕方は、超伝導体35a,35b,35cを加温するヒータ33を備えない態様の場合に特に有効である。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態によれば、超伝導遷移温度がそれぞれ異なる3つのセット53を備え、各セット53を用いて液面43の位置を求めている。したがって液面43の位置として3つのデータが得られるので、これらのデータを用いて総合的に判断して液面43の位置を決定することができる。よって液面43の位置を計測する精度をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 低温液化ガス用液面計
11 センサ部
31 実装基板
33 ヒータ
35,35a,35b,35c 超伝導体
37 断熱体
41 容器
43 液面
51 センサ部
53a 第1のセット
53b 第2のセット
53c 第3のセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを収容する容器の内部に前記容器の深さ方向に並べて配置することが可能であり、前記低温液化ガスの沸点よりも高い超伝導遷移温度であってそれぞれが有する前記超伝導遷移温度が同一である複数の超伝導体と、
隣り合う前記超伝導体の間に配置され、隣り合う前記超伝導体を断熱する断熱体と、
前記複数の超伝導体の中で超伝導状態にある超伝導体と常伝導状態にある超伝導体とを判定する判定部と、
前記容器の深さ方向に並べて配置された前記複数の超伝導体の中で超伝導状態にある一番上に位置する超伝導体を、前記判定部での判定を用いて特定することによって、前記低温液化ガスの液面の位置を求め、求めた前記液面の位置を前記液面の位置に決定する決定部と、を備える低温液化ガス用液面計。
【請求項2】
前記複数の超伝導体を加温するヒータと、
前記判定部での判定前に、前記ヒータを作動させて前記複数の超伝導体を加温した後に前記ヒータの作動を停止させる制御をするヒータ制御部と、を備える請求項1に記載の低温液化ガス用液面計。
【請求項3】
前記複数の超伝導体を1つのセットとして、前記超伝導遷移温度がそれぞれのセットで異なる複数のセットを備え、
前記判定部は、前記複数のセットのそれぞれについて、前記複数の超伝導体の中で超伝導状態にある超伝導体と常伝導状態にある超伝導体とを判定し、
前記決定部は、前記複数のセットのそれぞれについて前記液面の位置を求め、求めた前記液面の位置を用いて前記液面の位置を決定する請求項1又は2に記載の低温液化ガス用液面計。
【請求項4】
前記低温液化ガスの沸点を特定できる情報及び前記複数のセットのそれぞれの前記超伝導遷移温度の情報が、操作によって設定される設定部を備え、
前記決定部は、前記複数のセットのそれぞれについて求めた前記液面の位置が同じでない場合、前記複数のセットの中で前記低温液化ガスの沸点に最も近い前記超伝導遷移温度のセットを用いて求めた前記液面の位置を、前記液面の位置に決定する請求項3に記載の低温液化ガス用液面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−42236(P2012−42236A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181379(P2010−181379)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】