説明

低熱収縮性高接着性ポリイミドフィルム

【課題】熱に対する収縮性が改善されると同時に接着性が向上したポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のポリイミドフィルムは、(1)1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られるポリイミドと、(2)粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ、平均粒子径が0.05〜0.7μmである無機粒子をを、ポリアミド酸の重量に対して0.1〜0.9重量%からなるポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムは、放電処理と、フィルムの長さ方向の張力を一定に保ちながらの加熱処理とが順次施され、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギー80mN/m以上、および200℃、1時間での加熱収縮率0.10%以下を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱に対する収縮性が改善されると同時に接着性が向上したポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを重縮合して得られるポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性および機械特性に優れているため、フレキシブルプリント基板のベースフィルムとして広く利用されてきた。
【0003】
ポリイミドフィルムをベースフィルムに使用してフレキシブルプリント基板を作るためには、銅などの金属箔を接着剤を介してフィルムに積層するか、あるいは真空蒸着、スパッタリングなどにより金属を直接フィルムに付着させる必要がある。これらの工程では、ベースフィルムにかなりの熱がかかるため、ベースフィルムであるポリイミドフィルムには熱に対する寸法安定性が要求される。さらに、最近の動向として、ファインピッチ化が進められており、熱による収縮がより小さなポリイミドフィルムが求められている。
【0004】
このような要求に応える手段としては、ポリイミドフィルムを実質的に無張力下において、加熱オーブン中で加熱処理した後、冷却する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この方法では、無張力下で熱処理をするために、フィルムを巻いたロールを加熱オーブン中に放置する手順、あるいは、巻出し、巻取り機を備えた連続的加熱炉中でフィルムを連続的に処理する手順がとられている。このような無張力下で熱処理する方法は、フィルムの潜在収縮応力が緩和され、熱処理後の加熱に対するフィルムの収縮が小さくなるため、有効な方法であるといえる。しかしながら、上述のような手順で熱処理することは、いずれにしても無張力下で長時間処理することになるため、得られるフィルムが波を打つ状態になり、これによって熱収縮率がばらつくという問題があった。また、特に連続処理の場合には、フィルムが蛇行して完全な製品ロールが得られないという不都合も生じていた。
【0005】
さらに、フレキシブルプリント配線板のベースフィルム、ICのテープオートメイティッドボンディング用のキャリアテープフィルムなどの用途においては、通常、種々の接着剤を介してポリイミドフィルムと銅箔とが接着される。ところがポリイミドはその化学構造および高度な耐薬品性により、接着性が不十分な場合が多い。接着性の不足を改善するために、従来から試みられている方法として、フィルム表面に対して、酸やアルカリを用いて化学的処理を施す方法(例えば、特許文献2参照)、およびサンドブラストのような物理的処理を施す方法(例えば、特許文献3参照)などがある。
【0006】
しかしながら、これらの処理は、処理後に、洗浄、乾燥などの別工程を要することから、生産性、安定性、コスト面だけでなく、環境保全の面でも問題を含んでいた。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−41024号公報
【特許文献2】特開2002−294965号公報
【特許文献3】特開平9−48864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、熱に対する収縮性が改善されると同時に接着性が向上したポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための、本発明によれば、(1)1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られるポリイミド、および、(2)粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ、平均粒子径が0.05〜0.7μmである無機粒子を、ポリアミド酸の重量に対して0.1〜0.9重量%、からなるポリイミドフィルムであって、前記粉体はポリイミドフィルム内に均一に分散されており、前記ポリイミドフィルムに、放電処理と、フィルムの長さ方向の張力を一定に保ちながらの加熱処理とを順次施すことで、ポリイミドフィルムは、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギー80mN/m以上、および200℃、1時間での加熱収縮率0.10%以下を有することを特徴とするポリイミドフィルムが提供される。
【0011】
上記ポリイミドフィルムは、芳香族ジアミンとして12〜30モル%の1,4−フェニレンジアミンおよび70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、芳香族テトラカルボン酸二無水物として50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物および0.5〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる共重合ポリイミドであることを特徴とする。
【0012】
なお、本発明の低熱収縮性で高接着性のポリイミドフィルムにおいては、ポリイミドフィルムの弾性率が4〜7GPaであり、50〜200℃での線膨張係数が5〜20ppm/℃であり、湿度膨張係数が20ppm/%RH以下であり、吸水率が2%以下であることが、好ましい。
【0013】
また、上記本発明の低熱収縮性で高接着性のポリイミドフィルムでは、ポリイミドを製膜した後、放電処理を施し、ついで、このポリイミドフィルムの長さ方向の張力を一定に保ちながら加熱処理を施すことを特徴とし、前記加熱処理をフィルムの長さ方向の張力を1kg/m以上、10kg/m以下の範囲で一定に保ちながら行うこと、および前記放電処理がプラズマ放電処理であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱に対する収縮性が改善されると同時に接着性が向上したポリイミドフィルムを得ることができる。すなわち、本発明の低熱収縮性、高接着性ポリイミドフィルムは、熱に対する寸法安定性が優れ、熱による収縮が小さく、しかも銅箔との接着性が従来よりも格段に向上したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の低熱収縮性かつ高接着性のポリイミドフィルムについて、詳細に説明する。
【0016】
まず、ポリイミドを得る手順について説明する。ポリイミドは、その前駆体であるポリイミド酸から得ることができる。本発明における好ましいポリアミド酸は、芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸に無水物から調製することができる。本発明では、芳香族ジアミン成分としての1,4−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としてのピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを重合させることによりポリアミド酸が得られる。得られたポリアミド酸は、次にポリイミドに転化される。
【0017】
ポリアミド酸は、芳香族ジアミンとして12〜30モル%の1,4−フェニレンジアミンおよび70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、芳香族テトラカルボン酸二無水物として50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物および0.5〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなることが望ましい。
【0018】
ポリイミドを得る方法としては当該技術において知られている任意の方法を用いることができるが、1)芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分を反応させてポリアミド酸を形成するアミド化工程と、2)ポリアミド酸中のアミドおよびカルボン酸を反応させてポリイミドを形成するイミド化工程とを含む方法により調製することが好ましい。
【0019】
ポリアミド酸を形成するアミド化工程としては、当該技術において知られている任意の方法論を用いることができる。アミド化方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、好ましいアミド化方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
(1) 芳香族ジアミン成分を有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モル量の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を添加して重合させる方法;
(2) 芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と、これに対し過小モル量の芳香族ジアミン成分とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、プレポリマー溶液に対して、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分とが実質的に等モル量となるようにジアミン成分を添加して重合させる方法;
(3) 芳香族テトラカルボン酸二無水物成分とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン成分を有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。プレポリマー溶液に対して、芳香族ジアミン成分を追加添加し、続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分とが実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を添加して重合させる方法;
(4) 芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、実質的に等モル量の芳香族ジアミン成分を添加して重合させる方法;または
(5) 実質的に等モル量の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法
などのような方法である。
【0020】
本発明では、たとえば、実質的に等モル量の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分との有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分の反応が完了するまで撹拌することによってポリアミド酸溶液を製造することができる。
【0021】
これらのポリアミド酸溶液は、通常5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%の濃度で得られる。このような範囲内の濃度とすることによって、適当な分子量のポリアミド酸を得ることができる。また、引き続く処理に適当な範囲内の溶液粘度を有するポリアミド酸溶液を提供することが可能となる。
【0022】
本発明において、上記のいずれの方法を用いて得られるポリアミド酸を用いてもよく、重合方法は特に限定されるものではない。これらの方法の中で、安定的に工程を制御するという観点から、全工程において用いられる芳香族ジアミン成分すべてを有機溶剤に溶解し、その後に実質的に等モル量となるように芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を添加して重合反応を行う方法(1)を用いるのが好ましい。
【0023】
本発明において、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を併用して用いるが、40モル%以下であれば他の芳香族テトラカルボン酸二無水物を併用することができる。併用できる他の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。
【0024】
また、芳香族ジアミン成分は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,4−フェニレンジアミン(p−フェニレンジアミン)の2種類を使用するが、40モル%以下であれば他の芳香族ジアミンをさらに併用することができる。併用できる他の芳香族ジアミンとしては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−フェニレンジアミン(m−フェニレンジアミン)、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンチジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,6−ジアミノピリジン、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、3,3’−ジクロロベンチジン、ビス(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−3’,4−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンチジン、2,4−ビス(2−アミノ−1,1−ジメチルエチル)トルエン、ビス(4−(2−アミノ−1,1−ジメチルエチル)フェニル)エーテル、1,4−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン(m−キシリレンジアミン)、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン(p−キシリレンジアミン)、1,3−ジアミノアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタン−1,7−ジアミン、4,4−ジメチルヘプタン−1,7−ジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−(3−アミノプロピルオキシ)エタン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、3−メトキシヘキサン−1,6−ジアミン、2,5−ジメチルヘキサン−1,6−ジアミン、5−メチルノナン−1,9−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエートなどを挙げることができる。
【0025】
ポリアミド酸を形成するためのアミド化工程において用いることができる有機溶剤は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−ジメチルメトキシアセトアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホロアミド、テトラメチレンスルホン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミドおよびγ−ブチロラクトンなどの有機極性溶媒を含む。これらの有機極性溶媒は単独または組み合わせて使用することもできるし、あるいはベンゼン、ベンゾニトリル、ジオキサン、キシレン、トルエンおよびシクロヘキサンのごとき溶解性の劣る溶媒と組み合わせて用いることもできる。
【0026】
本発明におけるイミド化工程は、当該技術において知られている任意の方法論を用いることができる。たとえば、添加剤の存在または不存在下において、ポリアミド酸を乾燥、熱処理することによって、イミド化工程を実施することができる。触媒を添加せずにイミド化を行うことも可能であるが、本発明においては、転化剤を添加してイミド化を行うことが好ましい。転化剤は、一般的に触媒および脱水剤を含む。本発明では、以下に挙げる触媒および脱水剤をを添加してイミド化を行うことが好ましい。
【0027】
本発明において用いることができる触媒としては、第三級アミン類の使用が望ましく、これらのアミン類の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジエチル−N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−N−ベンジルアミン、N,N−ジメチル−N−ドデシルアミン、N−エチルモルフォリン、N−メチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、ピリジン、2−エチルピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、4−ベンジルピリジン、4−ベンゾイルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、およびイソキノリンなどの非求核性アミンを含むが、これらに限定されない。
【0028】
脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物およびチオニルハロゲン化物が挙げられる。
【0029】
具体的には、脱水剤として用いることができる有機カルボン酸無水物は、
(a) 酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸などの脂肪族モノカルボン酸の無水物および混合酸無水物;
(b) 安息香酸、ナフトエ酸(異性体を含む)、トルイル酸(異性体を含む)、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、アニス酸、ニトロ安息香酸(異性体を含む)、モノハロ安息香酸(異性体を含む)、ジブロモ安息香酸(異性体を含む)、ジクロロ安息香酸(異性体を含む)、トリブロモ安息香酸(異性体を含む)、トリクロロ安息香酸(異性体を含む)、ジメチル安息香酸(たとえば、3,4−キシリル酸、イソキシリル酸などの異性体を含む)、メシチレン酸、ベラトルム酸、トリメトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸などの芳香族モノカルボン酸の無水物および混合酸無水物;
(c) 脂肪族モノカルボン酸と芳香族モノカルボン酸との混合酸無水物;
(d) 炭酸またはギ酸とモノカルボン酸(脂肪族および芳香族を含む)との混合酸無水物;および
(e) 脂肪酸ケテン類(ケテンおよびジメチルケテンを含む)と上記の酸無水物との混合物(無水酢酸とケテン類が好ましい)
を含む。
【0030】
N,N’−ジアルキルカルボジイミド類は、式:R−N=C=N−R(式中、Rは異なったアルキル基であり得るが、一般に同一である)により表され、好ましくは、R基は1乃至8個の炭素原子の低級アルキル基である。
【0031】
脱水剤として用いることができる低級脂肪酸ハロゲン化物は、アセチルクロリド、アセチルブロミド、アセチルヨージド、アセチルフルオリド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、プロピオニルヨージド、プロピオニルフルオリド、イソブチリルクロリド、イソブチリルブロミド、n−ブチリルクロリド、n−ブチリルブロミド、およびバレリルクロリドを含む。
【0032】
脱水剤として用いることができるハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物は、モノクロロアセチルクロリド、ジクロロアセチルクロリド、トリクロロアセチルクロリド、およびブロモアセチルブロミドを含む。
【0033】
脱水剤として用いることができるハロゲン化低級脂肪酸無水物は、クロロ酢酸無水物およびトリフルオロ酢酸無水物を含む。
【0034】
脱水剤として用いることができるアリールホスホン酸ジハロゲン化物は、フェニルホスホン酸ジクロリドを含む。
【0035】
脱水剤として用いることができるチオニルハロゲン化物は、チオニルクロリド、チオニルブロミド、チオニルフルオリド、およびチオニルクロロフルオリドを含む。
【0036】
次に、本発明のフィルム中に含まれる無機粒子について説明する。本発明で使用しうる無機粉体は、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ、平均粒子径が0.05〜0.7μmである無機粒子である。平均粒子径が0.05μm以下になると、フィルムの易滑性効果が低下するので好ましくなく、0.70μm以上になると局所的に大きな粒子となって存在するので好ましくない。好ましい平均粒子径の範囲は、0.1〜0.6μmであり、より好ましい範囲は0.3〜0.5μmである。さらに、粒子径の分布に関しては、0.15〜0.6μmが全粒子中の80重量%以上含まれていることが好ましい。
【0037】
本発明の無機粒子の種類については、特に限定されることはない。例えば、酸化チタン、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、アルミナなどが一般的である。これらの中では二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の製造方法については特に限定されないが、ケイ酸エステル類を出発原料とし加水分解する製造方法が不純物の含有量、粒子径、粒度分布の点から特に好ましい。
【0038】
本発明の効果を得るためには、ポリアミド酸重量に対して0.1〜0.9重量%の割合で上記無機粉体をフィルム中に均一に分散させることが必要である。より好ましい添加量は、0.3〜0.8重量%の範囲である。
【0039】
無機粉体の分散を容易にするためには、例えば、N,Nージメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、nーメチルピロリドン等の極性溶媒に、無機粉体を均一に分散させたスラリーを使用することができる。この方法は、無機粉体の凝集を防止することができる点からも好ましい。また、このスラリーは、無機粒子の粒子径が非常に小さいため、沈降速度が遅く、安定しており、たとえ沈降しても再攪拌することで容易に再分散可能である。
【0040】
次に、本発明のポリイミドフィルムの製膜法について説明する。ポリイミドフィルムの成膜法は特に限定されないが、以下の手順をとるのが一般的である。まず、適切な溶媒中、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分(本発明では、1,4−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)を混合して反応させることによりポリアミド酸溶液を得る。次に、このポリアミド酸溶液に無機粉体を添加し攪拌し、さらに、触媒および脱水剤を加え攪拌する。得られた溶液を流延またはフィルム状に押出す。次に、このフィルムを、乾燥および熱処理することにより、イミド化を行う。
【0041】
乾燥および熱処理は、流延またはフィルム状に押し出されたポリアミド酸溶液を、200〜550℃、好ましくは250〜500℃の高温雰囲気に維持した乾燥熱処理ゾーンを通過させることにより達成することができる。
【0042】
本発明においては、フィルム厚みが5〜150μm、好ましくは7〜125μmになるように調整することが望ましい。
【0043】
本発明のポリイミドフィルムは、上述のように、芳香族ジアミンとして12〜30モル%の1,4−フェニレンジアミンおよび70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、芳香族テトラカルボン酸二無水物として50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物、0.5〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなるポリアミド酸から形成されることが望ましい。
【0044】
本発明の共重合ポリイミドフィルムでは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが多くなると共重合ポリイミドフィルムが柔らかくなり、逆に1,4−フェニレンジアミンが多くなると共重合ポリイミドフィルムが硬くなる。このため、ジアミン成分における1,4−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの割合は、共重合ポリイミドフィルムの用途に応じて両者の添加割合を設定するのが好ましい。また、得られた共重合ポリイミドフィルムを例えばフレキシブルプリント基板に用いる際には、フィルムの特性として硬すぎず且つ柔らかすぎないことが好ましい。かかる条件に適合する共重合ポリイミドフィルムを得るには1,4−フェニレンジアミンが12〜30モル%であることが好ましい。
【0045】
本発明のポリイミドフィルムは、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギーが80mN/m以上であることを特徴とする。
【0046】
ここで、ポリイミドフィルムの表面自由エネルギーが80mN/m未満の場合は、接着性に関する改良効果が不十分となるため好ましくない。表面自由エネルギーの条件が上記の範囲を満たすことにより、銅箔との接着性が優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0047】
また、本発明のポリイミドフィルムは、200℃/1時間の加熱条件における熱収縮率が0.10%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。
【0048】
熱収縮率が0.10%を超える場合には、熱に対する収縮性の改善効果が小さくなるため好ましくない。
【0049】
さらに、本発明のポリイミドフィルムは、弾性率が4〜7GPaであり、50〜200℃での線膨張係数が5〜20ppm/℃であり、湿度膨張係数が20ppm/%RH以下であり、吸水率が2%以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、弾性率5〜6GPa、線膨張係数8〜18ppm/℃、湿度膨張係数15ppm/RH%以下、および、吸水率1.8%以下の範囲である。
【0050】
上記の特性を満たす本発明のポリイミドフィルムは、上記の組成からなるポリイミドを製膜後、このポリイミドフィルムに、放電処理を施し、次いでフィルムの長さ方向の張力を一定に保ちながら加熱処理を施すことにより製造することができる。
【0051】
本発明においては、放電処理を行った後、加熱処理をすることが好ましい。この順序で処理を行うことにより、フィルムが適度な滑り性を持ち、巻き取ったときのしわなどが少なくなる。
【0052】
本発明における放電処理としては、プラズマ処理が代表的である。
【0053】
プラズマ処理を行う雰囲気の圧力は、特に限定されないが、通常13.3〜1330kPaの範囲、13.3〜133kPa(100〜1000Torr)の範囲が好ましく、より好ましくは80.0〜120kPa(600〜900Torr)の範囲で選択することが好ましい。
【0054】
また、プラズマ処理を行う雰囲気は、不活性ガスを少なくとも20モル%、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含有する。用いることができる不活性ガスは、He、Ar、Kr、Xe、Ne、Rn、N2およびこれらの2種以上の混合物を含む。特に好ましい不活性ガスはArである。さらに、前述の不活性ガスに対して、酸素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、四塩化炭素、クロロホルム、水素、アンモニア、テトラフルオロメタン(カーボンテトラフルオリド)、トリクロロフルオロエタン、トリフルオロメタンなどを混合してもよい。これらのガスを混合することによって、酸素、塩素、窒素またはハロゲンを含む活性基の発生が促進されるからである。本発明のプラズマ処理の雰囲気として用いられる好ましい混合ガスの組み合わせは、アルゴン/酸素、アルゴン/アンモニア、アルゴン/ヘリウム/酸素、アルゴン/二酸化炭素、アルゴン/窒素/二酸化炭素、アルゴン/ヘリウム/窒素、アルゴン/ヘリウム/窒素/二酸化炭素、アルゴン/ヘリウム、ヘリウム/空気、アルゴン/ヘリウム/モノシラン、アルゴン/ヘリウム/ジシランなどを含む。
【0055】
プラズマ処理を施す際の処理電力密度は、200W・分/m2以上が好ましく、500W・分/m2以上がより好ましく、最も好ましくは1000W・分/m2以上である。プラズマ処理を行うプラズマ照射時間は1秒〜10分が好ましい。プラズマ照射時間をこの範囲内に設定することによって、フィルムの劣化を伴うことなしに、プラズマ処理の効果を十分に発揮することができる。
【0056】
プラズマ処理のガス種類、ガス圧、処理密度は上記の条件に限定されず大気中で行われることもある。
【0057】
本発明における加熱処理は、得られたポリイミドフィルムを、フィルムの長さ方向の張力を1kg/m以上、10kg/m以下に保ちながら、比較的低い温度で、しかも比較的短時間で加熱処理することが重要である。
【0058】
加熱処理においては、張力が小さい程低熱収縮性のフィルムが得られる。しかし、完全無張力下では、フィルムの巻き取り時、特に連続巻取りを行うときに、フィルムが蛇行する。さらに、完全無張力下では、このようなフィルムの蛇行に加え、フィルムにシワや波打ちが発生し、熱収縮率のバラツキが大きくなる傾向もある。このため、加熱処理における張力を1kg/m以上にする必要がある。また、張力が10kg/mを越えると、本発明で目的とする加熱低収縮性のフィルムが得られなくなるため好ましくない。より好ましい張力の範囲は2kg/m〜7kg/mである。
【0059】
加熱処理時の加熱の好ましい手段としては、遠赤外線を照射する方法または熱風を吹き付ける方法が含まれる。ポリイミドフィルムは遠赤外線領域に吸収ピークがあり、この吸収波長を含む遠赤外線を照射することにより、極めて短時間で加熱処理を行うことができる。また、遠赤外線照射や熱風吹き付けに加えて、ラジエーションヒーターを併用することもでき、ラジエーションヒーターのみを用いて加熱処理を行うこともできる。
【0060】
加熱処理温度は特に限定されないが、300〜500℃が好ましく、さらに好ましくは350〜450℃である。
【0061】
また、加熱処理時間は1秒から10分程度が好ましい。処理時間がこれより長くなると、フィルム平面性が悪くなるなどの特性の低下を生じる場合がある。
【0062】
本発明において、放電処理および加熱処理を行ったポリイミドフィルムは、端部をスリットするなどして規定の幅にした後、巻き取られる。
【0063】
上述のようにして得られる本発明のポリイミドフィルムは、熱に対する寸法安定性が優れ、熱による収縮が小さく、しかも銅箔との接着性が従来よりも格段に向上したものである。このため、これらの特性を活かして、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)として、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中のポリイミドフィルムの各特性は、次の方法で評価した。
【0065】
(表面自由エネルギー)
表面処理を実施したフィルム表面に対して、水、エチレングリコール、ジヨードメタンで各溶液について、接触角を5回測定し、それぞれの液体についての接触角の平均値を求めた。この平均値から、Kyowa Interface ScienceのFACE CA−W150を用いて表面自由エネルギーを求めた。この値が大きいということは水濡れ性が良く、接着力が一般に高いことを示す。
【0066】
(接着性評価)
三井化学株式会社製の3種類のエポキシ樹脂接着剤(商品名:エポックス AH−357A、AH−357BおよびAH−357C)を、AH−357A/AH−357B/AH−357C=100/5/12の重量比で混合した接着剤を調製し、これをコータで各フィルムに塗布した。得られたフィルムを130℃において4分間予備乾燥を行った。次に、このフィルムに、18μm圧延銅箔(BHY−22B−T、ジャパンエナジ−社製)を重ね、2MPa下、170℃、80分のプレスキュア条件で加圧して、銅張り積層板を得た。得られた積層板に0.8mmの回路をきり、塩化第2鉄溶液でエッチチングを行い評価用サンプルを作製した。得られた0.8mm幅の金属箔部分を90°の剥離角度、50mm/分の速度条件で引き剥がすのに必要な力を測定し、接着強度[N/m]とした。5サンプルについて測定し、その平均値を算出した。
【0067】
(熱収縮率測定)
熱収縮率の測定は、200℃、1時間の加熱条件を用いた以外は、IPC−FC−231 Number 2.2.4.に準じて行った。
【0068】
(ヤング率)
ヤング率の測定は、JISK7113に準じて、室温でORIENREC社製のテンシロン型引張試験器により、引張速度100mm/分にて得られる張力−歪み曲線において、初期立ち上がり部の勾配から求めた。
【0069】
(線膨張係数)
線膨張係数の測定は、島津社製熱機械分析装置TMA−50により、温度範囲50℃から200℃、昇温速度10℃/minの条件で測定した値である。
【0070】
(吸水率)
吸水率の測定は、ポリイミドフィルムを蒸留水に48時間浸析後、表面の水分をふき取り、島津社製熱機械分析装置TGA−50により室温から200℃まで10℃/分の昇温速度で加熱された際に、50〜200℃までの重量減少から求めた値である。
【0071】
(湿度膨張係数)
湿度膨張係数は、アルバックリコー社製の湿度膨張係数分析ユニット(TM9400、NESLAB−RTE7、HC−1湿度雰囲気調節装置、MTS9000)を用い、サンプル(長さ(L0)15mm、幅5mm)を炉内にセットし、相対湿度を25%RHから相対湿度75%RHまで上昇させ、湿度75%RH時のサンプル長(L1)及び湿度25%RH時のサンプル長(L2)、相対湿度差(50%RH)を測定し以下の式により算出した。尚、測定は室温25±3℃、相対湿度60±5%の部屋(恒温恒湿室)で行った。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=(L1−L2)/(L0×湿度差)×1000000
【0072】
(シリカスラリーの作成)
平均粒子径0.4μm、最大粒子径1.2μmの球状シリカの濃度が5wt%になるように、N,N−ジメチルアセトアミドに均一に分散させ、シリカスラリーを得た。
【0073】
<実施例1>
500ccのガラス製フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド253.4gを入れ、ここにパラフェニレンジアミン1.947gと、ピロメリット酸二無水物3.828g投入し、常温常圧中で1時間反応させた。次に、ここに4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを26.431g投入し均一になるまで攪拌した後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.826gを添加し、1時間反応させた。続いて、ここにピロメリット酸二無水物22.314gを添加し、さらに1時間反応させることによりポリアミド酸溶液を得た。
【0074】
このポリアミド酸溶液にシリカスラリー3.8gを添加し攪拌した。シリカの添加量はポリアミド酸に対して0.3%となる。さらに、転化剤としての無水酢酸とイソキノリン、および、溶媒としてのN,N−ジメチルアセトアミドを加え攪拌した後、加熱支持体(85℃)上に溶液を押出し、ポリイミドに一部転化させて自己支持性のフィルムを得た。
【0075】
次に、上記の自己支持性フィルムを支持体から剥離し、イミドへの転化反応を完結させるための乾燥、加熱処理を行った。乾燥、加熱処理は、250〜450℃の乾燥熱処理ゾーンを通過させることにより実施した。これにより、厚み25μmのポリイミドフィルムを調製し、これをロール上に巻き取った。得られた、フィルムの熱収縮はMD:0.12、TD:0.15であった。
【0076】
次いで、このポリイミドフィルムにプラズマ処理を施した。プラズマ処理は、希ガス(アルゴン)を少なくとも20モル%含有する750Toorの雰囲気下で、表面が誘電体によって被覆され、かつ25℃に冷却された電極と、ポリイミドフィルムを支持する誘電体被覆電極との間に高電圧を印加し、フィルムの表面を500w・min/m2の処理電力密度で連続的に処理することにより行った。処理時間は、2秒であった。
【0077】
その後、400℃のトンネル型赤外線照射炉にプラズマ処理をしたポリイミドフィルムを連続的に送り込み、張力1.0kg/mで熱処理した。処理温度および処理時間は、それぞれ、400℃で30秒であった。次いで、熱処理したポリイミドフィルムを、炉外で巻取りながら室温まで冷却し、目的とするポリイミドフィルムを得た。熱処理中のフィルム張力は送りローラと巻取ローラの回転速度差で調節し、熱処理時間は各ローラの相対回転速度で調節した。
【0078】
このようにして得られたポリイミドフィルムについて、接着性、熱収縮率の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0079】
<実施例2>
フィルム厚みを7.5μmにした以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムについて、接着性、熱収縮率の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0080】
<比較例1>
400℃の加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムについて、接着性、熱収縮率の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0081】
<比較例2>
プラズマ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムについて、接着性、熱収縮率の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0082】
<比較例3>
400℃の加熱処理とプラズマ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムについて、接着性、熱収縮率の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のポリイミドフィルムは、熱に対する寸法安定性が優れ、熱による収縮が小さく、しかも銅箔との接着性が従来よりも格段に向上したものである。このため、これらの特性を活かして、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)として、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から得られるポリイミド、および
(2)粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ、平均粒子径が0.05〜0.7μmである無機粒子を、ポリアミド酸の重量に対して0.1〜0.9重量%
からなるポリイミドフィルムであって、
前記粉体はポリイミドフィルム内に均一に分散されており、
前記ポリイミドフィルムに、放電処理と、フィルムの長さ方向の張力を一定に保ちながらの加熱処理とを順次施すことで、ポリイミドフィルムは、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギー80mN/m以上、および200℃、1時間での加熱収縮率0.10%以下を有することを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムが、芳香族ジアミンとして12〜30モル%の1,4−フェニレンジアミンおよび70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、芳香族テトラカルボン酸に無水物として50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物および0.5〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる共重合ポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムの弾性率が4〜7GPaであり、50〜200℃での線膨張係数が5〜20ppm/℃であり、湿度膨張係数が20ppm/%RH以下であり、吸水率が2%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記加熱処理が、フィルムの長さ方向の張力を1kg/m以上、10kg/m以下の範囲で一定に保ちながら行う処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記放電処理がプラズマ放電処理であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2008−222926(P2008−222926A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65297(P2007−65297)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】