低熱慣性走査断熱熱量計
【課題】新しい断熱技術を利用した、向上した熱量計を開発する。
【解決手段】新しい断熱走査熱量計は、テスト時に動的に報償される高圧反応容器の熱質量を許容する。これは、複合圧力バランス装備の利用無しに1.0に減少される実験の効果的なcD要素を許容する。吸熱の結果は、定量化され得り、サンプル比熱が測定され得る。テスト完了のために要求される時間は、通常的な断熱熱量計で更に短いため、装置の生産性を非常に向上させる。発熱検出感度は、少なくともHeat-Wait-Search方法を採用する現存する断熱熱量計ほど少なくとも良好であるが、温度走査速度に依存する。また、反応熱は、サンプルの熱容量に関係なく得られ、圧力は連続的に測定され、反応物は、テスト容器内に注入され得り、サンプルはテスト時に混合され得る。
【解決手段】新しい断熱走査熱量計は、テスト時に動的に報償される高圧反応容器の熱質量を許容する。これは、複合圧力バランス装備の利用無しに1.0に減少される実験の効果的なcD要素を許容する。吸熱の結果は、定量化され得り、サンプル比熱が測定され得る。テスト完了のために要求される時間は、通常的な断熱熱量計で更に短いため、装置の生産性を非常に向上させる。発熱検出感度は、少なくともHeat-Wait-Search方法を採用する現存する断熱熱量計ほど少なくとも良好であるが、温度走査速度に依存する。また、反応熱は、サンプルの熱容量に関係なく得られ、圧力は連続的に測定され、反応物は、テスト容器内に注入され得り、サンプルはテスト時に混合され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
材料の熱安定性、発熱反応、及び熱散逸は、加熱速度熱量計で大変しばしば研究され、これはDow ChemicalのARC(登録商標)の科学者達が、1970年代後半に前記装置を初めて開発したのに伴ってしばしば言及され、多くのARCの利用を記載した多くの論文がその後作成されてきた(1、2、3)。前記装置を利用して、サンプル及びサンプル容器は、発熱活動度がサンプルの温度変化比率の観察により、サンプルから検出される温度に加熱される。サンプルと容器とは、サンプル容器を取り囲むガード(guard)ヒーターの慎重な制御により、熱を外部環境で損失することを防止する。通常Heat-Wait-SearchTM(HWS)方法で言及される加熱アルゴリズムは、サンプルの初期加熱を制御して、発熱探索期間の間、サンプルを安定した温度に近づくのに利用される。
【背景技術】
【0002】
図1は、HWS方法及び軽量の球形チタニウム容器でジ-tert-ブチル-パラクサイドのサンプルに関する分解熱及び反応速度を得るための新たなTIAX製造ARCの利用を例示する。前記実験で、トルエンでのDTBPの20%溶液の6グラムが95℃の初期開始温度に6グラムのチタニウム容器で加熱された。発熱はいくつかの加熱段階後に110.5℃で検出された後、断熱的に反応完了につながった。(スキャンの左右側からの「段階」であることに注目する。)分解熱は、サンプル溶液に対しては0.51cal/g℃及びチタニウム容器に対しては0.135cal/g℃の平均熱容量を利用してDTBPの49.35kcal/molで測定された。図2は、加熱速度の図表(1)の発熱部から計算される通り、相互作用温度の関数としてのサンプルの加熱速度と圧力比率及び、また分解反応の1次反応比率を図示する。反応の活性化エネルギー及び以前の指数要素は、公開されたデータ(2)とうまく符合する。
【0003】
ARCが敏感で安定した断熱熱量計であっても、それは多数の重要な欠点を被ることになる。
・サンプル容器の熱質量はサンプルと比較してしばしば大きくなるため、サンプルにより放出される多量の熱が容器により吸収され、ピーク反応温度及び圧力が低下する。即ち、大部分のテストは相対的に大きなΦ要素により試行される。
【0004】
・新型TIAX ARCは加熱速度を250℃/minまで追跡できるが、旧型ARCのヒーターは約15℃/min以下の温度比率に制限される。
前記の更に高い追跡率はもちろん、サンプル及び容器が発熱を通して熱平衡状態にある場合にのみ有用である。
・HWS方法を利用してテストを完了するのに必要な時間は、24時間をしばしば超過して機械当たりの生産性が非常に低い。
【0005】
・装置が吸熱反応を定量化できない。
・旧型ARCの撹拌は可能だが、非常に高いため度々は利用しない。
1980年代初めにDIERS Bench Scale装置が開発されて、VSPTMとしてFauske and Associates(4、5)により商品化された。前記装置は、熱散逸しやすい化学的システムの特性を示し、この装置で形成される温度及び圧力比率の測定から特定の反応器の出口の大きさを計算するよう設計された。前記装置は、感度の損失費用を除き、大きなΦ要素の、ARCの主要な短所を克服した。また、相対的に大きなサンプルサイズが要求され、前記装置は圧力の均衡維持システムのため複合的な高圧の配管、及び「格納容器」を必要とした。また、APTACTM(6、9)及びPhi-TecTM(7)等の競争上の機械は、APTACがARCの感度を維持するとしても、類似する欠点に苦しんだ。
【0006】
また、示差走査熱量計(DSC)は、材料で熱イベントに関する情報を得るために広範囲にわたって利用される。しかし、小さなサンプルサイズが用いられるため(〜1-20mg)圧力測定は一般的に行われない。また、テスト時の反応物の追加及びサンプルの撹拌は、DSCにおいて問題があり、一定の加熱速度での走査方法であるため、データはテストされる材料を取り扱ったり、貯蔵できるフルサイズの装備に容易に測定できない。
【特許文献1】米国特許第3,593,577号明細書
【特許文献2】米国特許第4,208,907号明細書
【特許文献3】米国特許第4,439,048号明細書
【特許文献4】米国特許第4,892,707号明細書
【特許文献5】米国特許第4,963,499号明細書
【特許文献6】米国特許第5,547,282号明細書
【特許文献7】米国特許第5,806,979号明細書
【特許文献8】米国特許第6,157,009号明細書
【特許文献9】米国特許第6,513,969号明細書
【特許文献10】国際公開第99/60356号パンフレット
【特許文献11】欧州特許出願公開第0 286 580号明細書
【特許文献12】特開昭53−049395号公報
【非特許文献1】Townsend, D.I, and Tou, J. C., Thermal Hazard Evaluation by an Accelerating Rate Calorimeter, Thermochimica Acta, 37(1980)1-30.
【非特許文献2】Tou, J. C, and Whiting, L.F., The Thermokinetic Performance of an Accelerating Rate Calorimeter, Thermochimica Acta, 48(1981)21-42.
【非特許文献3】Ahmed, M., and Fisher, H. G. ,and Janeshek, A.M.;Reaction Kinetics from Self-Heat Data-Data Correction for the Depletion of Sample.International Symposium on Runaway Reactions, AIChE, 1989, 331-341.
【非特許文献4】Bench Scale ERS Sizing Tolls: Equipment Details, Test Procedures and Illustrations, Fauske and Associates, Inc. , Report No. FAI/84-4, revised. 1984.
【非特許文献5】Leung, J.C., and Fauske, H.K., and Fisher, H. G., Thermal Runaway Reactions in a Low Thermal Inertia Apparatus, Thermochimica Acta, 104(1986)13-29.
【非特許文献6】Young, M. A., and Chippett, S. Design and Operation of an Automatic Pressure Tracking Adiabatic Calorimeter (APTAC), International Symposium on Runaway Reactions and Pressure Relief Design, AIChE. 1995.23-57.
【非特許文献7】Singh, J., Phi-Tec: Enhanced Vent Sizing Calorimeter-Applications and Comparison with Existing Device, International Symposium on Runaway Reactions, AIChE, 1989, 313-330.
【非特許文献8】Yue, M-H.; An Enhanced Adiabatic Calorimeter for Thermal Hazard Analysis. Journal of Hazardous Materials, 38,1994, 13-25.
【非特許文献9】Chippett, S., Ralbovsky, P., Granville, R; The APTAC: A high Pressure, Low Thermal Inertia, Adiabatic Calorimeter. International Symposium on Runaway Reactions, Pressure Relief Design and Effluent Handling. AIChE, 1998,81-108.
【非特許文献10】Dean, J. A., Editor, Lange's Handbook of Chemistry. 11th Edition. McGraw-Hill. 1973.
【非特許文献11】Leung, J., Creed, M. and Fisher, H.G., Round Robin Vent Sizing Package Results. International Symposium on Runaway Reactions, AIChE, 1989, 264-280.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新しい断熱技術を利用した、向上した熱量計が開発された。本技術は新しい熱量計に実施できる。場合によっては、旧型の機械装置の方法を利用する長所は、機械が正確に追跡できる小規模の最大加熱速度により制限できても、現存する装備は新しい技術を利用するように変更され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一様相において、向上した熱量計はサンプル容器と容器の熱電対、一つ以上のガードヒーター及びガードヒーター用熱電対と選択的にサンプル用熱電対を含む。サンプル容器には容器内部に、また容器自体の壁内に、または壁上に、または結合ヒートシンク内に、またはこのヒートシンク上に位置したサンプルヒーターが装着される。一つ以上の熱電対からフィードバックを通して制御器により調節されるサンプルヒーターは、予め選択された一定比率でサンプル及び容器の温度を増加させるようプログラムされた比率で熱をサンプルに放出する。
【0009】
本発明の別の様相において、サンプルヒーターの熱出力は、選択された比率を維持するためにサンプルの発熱中に減少し、サンプルの吸熱中に増加する。
別の様相において、向上した熱量計は発熱反応中にサンプルからサンプル容器への熱損失を補償するために、サンプルの加熱速度に比例する速度で熱をサンプルに提供する。
別の様相において、サンプルヒーターは容器と良好に熱接触するヒートシンクでのサンプル外部に配置され得る。前記構成を利用して、サンプルの加熱速度は発熱を通して一定の比率で制御される。
【0010】
別の様相において、熱量計は一つ以上の容器を含み、各容器は結合サンプルヒーターと容器の熱電対とを備え、いくつかのサンプルは等しい断熱環境で、等しい温度比率で同時に走査され得る。
別の様相において、前記装置は一つ以上の圧力センサー、撹拌モーターまたは他の撹拌装置、及び測定が周囲下の温度で始まるようにする冷却容量を更に含む。
【0011】
別の様相において、熱量計はサンプルと容器温度とを測定するために、ガードヒーターの熱電対以外に一つの熱電対のみを有することができる。
本発明の別の様相は、説明から自明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、向上した熱量計、及び前記向上した熱量計により可能になる向上した測定と測定技術双方を含む。
1.熱量計
熱量計は図3に概略的に図示されている。熱量計はサンプル反応容器または容器(1)、エンクロージャ(2)、エンクロージャ(2)に連結されたガードヒーター(3)、サンプルヒーター(4)、第1の(外部容器)熱電対(6)、選択的第2の(サンプル)熱電対(5)、サンプル(7)、及び容器(1)の外面(8)を含む。典型的に1つ乃至4つである各ガードヒーター(3)は、結合した熱電対(未図示)を有する。いくつかの熱電対のそれぞれは、制御器にデータを提供する(未図示)。制御器はサンプルヒーター(4)及び各ガードヒーター(3)により提供される熱量を調節する。また、制御器は熱電対からデータを記録し、サンプルヒーター(4)及び各ガードヒーター(3)により提供される電力の量を選択する計算を行う。
【0013】
ガードヒーター(3)は、典型的に容器(1)の周囲に接近して嵌合するエンクロージャ(2)周囲にコイルのように巻かれている。それは装置のリードまたはエンクロージャ(2)(未図示)上にコイルのように形成され得る。いくつかの実施例では、ガードヒーターコイルは伝導による熱漏出を防ぐために容器の「ステム(stem)」(9)上部の端部周囲に巻かれている。作動時に、サンプルに適用される温度増加の特定比率が選択される。サンプルの加熱速度は、サンプルの熱電対(5)及び第1の外部容器壁熱電対(6)により検出される。サンプルヒーター(4)に供給される電力は、所望の加熱速度を得るために調節される。
【0014】
一方、第1の外部熱電対(6)は、容器(1)の外側温度を感知する。ガードヒーター(3)の温度は、サンプル容器(1)周囲に断熱状態を維持するために容器壁の外面(8)の温度と同じ温度に制御される。
代替モードにおいて、サンプル(7)の温度は外部容器壁(8)の温度上昇比率及び測定された温度から測定できるため、サンプル熱電対の必要性を除く。しかも、前記代替モードにおいて、容器壁厚の熱導電率は、以前に実験で測定された標準容器に対して望ましく知られている。
【0015】
いくつかの温度で(または一つ以上)、サンプル(4)は変化するであろう。これは、溶融または相転移等の吸熱変化であったり;相転移であったり分解または他の化学的変化であり得る発熱変化であり得る。
変化が吸熱である場合、サンプルヒーターの電力出力は温度の上昇比率を一定に維持するために増加される。代案として、また望ましくは、適用されたサンプルヒーターの電力は、吸熱中に一定の比率で制御され得る。これらの状態下で、サンプルの温度上昇比率はゼロに落ちるであろうし、サンプル容器を取り囲むガードヒーターは断熱状態を維持するであろう。
【0016】
変化が発熱である場合、サンプルヒーターに供給される電力は、温度上昇の比率を一定に維持するために減少される。サンプルからサンプル容器への熱損失比率は、連続的に計算される。サンプルヒーターの電力出力がサンプル容器の熱損失比率と同等になるよう減少される時、サンプルの電力出力は発熱残余持続期間に対するサンプル容器の熱損失比率と同等になるよう調節されるので、発熱反応中に容器の質量効果を除く。前記環境下で、サンプルの加熱速度は初期に制御された正常状態の加熱速度以上に加速される。また、ガードヒーターの温度比率は、サンプル容器周囲で断熱状態を維持するために増加される。代替モードで、ヒートシンク(11)により選択的に取り囲まれるいくつかのサンプル容器(1)は、サンプル容器を囲む断熱的に制御された加熱空間内で温度上昇の等しい比率で加熱され得る。この構成で、各サンプル及びヒートシンクは、独立して制御されたサンプルヒーターを有するので、多重サンプルは装置で同時にテストされ得る。
【0017】
2.容器壁の熱損失の動的補償による温度走査テスト
断熱環境でサンプルからの熱損失の多くの潜在的なソースは以下を含む:
・反応器(容器)(1)のステム(9)上へ、及び熱電対の覆い(未図示)を通る伝導。
・容器(1)の表面(8)からの対流損失
・周囲のヒーター(3)による放射交換
・反応器をシーリングしてそれを圧力トランスデューサ(未図示)に接続させる選択的嵌合の真空圧縮による還流
うまく設計された断熱熱量計は、前記損失(または利得)のソースを最小化し、TIAX ARCは良好な設計、良好な制御アルゴリズム及び自動化された熱電対の測定チェックによる優れた断熱性を達成する。しかし、損失のほかのソースは反応サンプルからの容器壁の熱損失である。
【0018】
伝統的に、容器壁の相対損失は
Φ=1.0+MbCb/MsCs [1]
で規定されたΦ要素により記載されており、ここでMは質量であり、Cは熱容量であり下記添え字b及びsは、サンプル容器とサンプルそれぞれを言及する。一般的に、反応容器は高い温度と圧力で反応物を含むのに充分なほど強い必要があるため、実験用断熱熱量計のΦ要素は約1.5乃至3.0である傾向がある。従って、多量の反応エネルギーは温度と圧力-時間処理を相当変化させる反応容器により吸収される。2.0のΦ要素は、例えば、容器により吸収される2分の1の反応熱を意味する。ARCは「システム」を断熱状態に維持することによって、厚い壁の容器を取り扱い、ここで前記システムはサンプルと容器である。この場合に、サンプルと容器とは発熱を通して等しい温度になければならない。サンプルの温度が容器壁の温度以上に相当上昇する場合、データは深刻なエラーにさらされる。
【0019】
容器壁の損失は、サンプルに対して非常に小さい熱質量を有する薄い壁の容器を利用することによってAPTAC, VSP及びPhi-Tecで最小化され、Φ要素は略1.1以下である。しかし、薄い壁の反応容器の利用から発生する多数の長所は、以下を含む。
・圧力抑制容器及び結合圧力均衡システムは、典型的に容器亀裂を防ぐために必要である。
【0020】
・圧力が前記抑制容器内で時折非常に迅速に変化することによって、サンプルから熱損失を制御するのが難しい。
・抑制容器への不活性ガスの流れ率の制御から発生し、「バランス」をとることができる圧力上昇の比率の現実的な制限がある。
・容器の亀裂が頻繁にあるので、機械装置がクリーニングされ再測定される間、やっかいなクリーンアップ及びダウンタイムを招く。
【0021】
断熱実験中に反応容器の質量を説明するための代案的な方法が展開されてきた。本方法は、サンプルに沈積した小型のコンピュータ制御ヒーターを含む。ソフトウェアは、発熱のイベント中にサンプルから容器への熱損失を連続的に計算する。ヒーターからの電力が制御されて、サンプルから容器への熱損失比率と同等になる。従って、純粋な熱損失はゼロである。同一のヒーターを利用して、実験の加熱フェーズ(phase)中にサンプルにより吸収されるエネルギーを測定することも可能であるため、サンプルの熱容量を計算したり、またはサンプルから発生するどんな吸熱活動をも定量化する。
【0022】
図3は、エンクロージャ(2)内部の断熱環境で厚い壁のサンプル反応容器(1)を示す。サンプル(7)の温度(Ts)は選択的ではあるが望ましい熱電対(5)(「第2」の熱電対と呼ぶ)を利用して測定され、サンプル容器の外部壁の温度(Tw)は第1の熱電対(6)を利用して測定される。サンプル(7)及び反応容器(1)は、サンプル(7)と接触して小型ヒーター(4)により一定の比率で加熱される。加熱速度は、サンプルの温度(Ts)が容器(1)の外壁(8)でのように、本来等しい温度(Tw)にあるよう選択される。反応容器を取り囲むガードヒーター(3)は導電、放射または対流によるシステムからのどんな熱損失をも防ぐ。サンプル(7)が熱を放出し始めるとき、サンプルヒーター(4)は制御されて温度上昇の全体比率が一定になる。サンプルが吸熱反応を示すとき、サンプルヒーター(4)の出力は温度比率を一定に維持するために増加される。
【0023】
実験データを分析するために、特に明記しない限り、下記の推定は下記の式と手順とで成り立つ。
・サンプルは均一な温度にある。
・容器内部の壁の温度は、全体の内部表面領域にわたって均一であり、内部表面温度と必ずしも同等でなくても容器外部の壁の温度も均一である。
【0024】
・反応容器の内壁の温度は常にバルク(bulk)液体の温度と等しい。
・サンプル容器の外壁での熱損失はゼロである。
・サンプル容器の壁の厚さは容器全体で一定である。
初期にサンプルヒーター(4)はサンプル(7)を加熱する。熱の一部は容器(1)壁に伝達され、ヒーターはサンプルと容器との双方を効果的に加熱する。容器がサンプルにより全体に加熱されるため、サンプルから容器への熱損失比率は以下の通り与えられる。
【0025】
dQL/dt=0.5MbCb(dTw/dt+dTs/dt) [2]
ここで、0.5(Tw+Ts)は平均容器温度である。従って、式[2]により与えられた比率でサンプルに熱を付加することは、実験の発熱部分時の壁の熱損失を補償する。
壁の熱損失を除く目標を果たすために、下記の実験要件が必要となる。
・前記推定は有効である。
【0026】
・容器の内壁及び外壁の温度の正確な測定が得られる。
・対流、放射、導電及び還流によるシステム(サンプル及び反応容器で構成される)からの熱損失が除かれる。
・サンプル容器を取り囲むガードヒーターは、容器の熱損失が除かれたり減少するときに観察される増加したサンプルの加熱速度を追跡することができる。
【0027】
・コンピュータ制御ヒーターはサンプルと良好に熱接触され、前記式により与えられた比率で電力を伝達することができる。
・良好な熱伝達はサンプルと容器との間に存在する。速い割合で熱を展開する液体サンプルに対し、これはサンプルの撹拌が必要であるという意味でもあり得る。
・良好な熱伝達は、ヒーターとサンプルとの間に存在し、これは迅速に熱を展開する液体サンプルのサンプル撹拌を必要とする。
【0028】
高い粘度の液体及び固体は、加熱速度が低く維持されるときにもまた測定され得る。固体微粒子材料及び高い粘度の液体は、ヒーターから材料に、そして材料からサンプル容器の内壁に熱伝達の割合を減少させる傾向がある。加熱速度はこのとき、システムを通じて適切な熱平衡を保障するために、必須的に低く維持されなければならない。
2.1 Φ要素制御
前記式2はサンプルヒーターからの熱の付加により補償される容器の質量割合を示す要素λにより変更されることができる。要素λは補償が発生しないゼロから容器の質量が完全に補償される1まで変化される。
【0029】
dQ/dt=0.5λMbCb(dTw/dt+dTs/dt) [3]
従って、前記式[1]により与えられた通り、1.0から容器の全体質量とサンプルの質量により設定される上部の限界まである所望のΦ要素でシステムに加えられた熱割合を制御することができる。
サンプル温度と外側容器壁温度とは発熱時に発散する傾向があるので、サンプル温度を示す正確な温度を選択することが重要である。熱損失補償がゼロであれば、従来のARC実験での通り、“サンプル”に使用するための適切な温度はこの時、外側壁温度である。前記温度は本来内側壁温度と同一でなければならない。実験に有効なΦが1.0より大きく熱損失補償されれば、この時用いられる温度はサンプル液体のまたは内側容器壁の温度である。
【0030】
実際に、サンプルと容器とは初期にサンプルヒーターを用いて一定の加熱速度で加熱される。熱損失は周囲温度の慎重な制御により防止される。温度走査中のどちらの地点で、サンプルは典型的に熱を展開し始める。ヒーター出力はこの時初期設定割合で加熱速度を制御するために十分に調節される(減少される)。従って、前記時間期間の間、サンプル及びサンプル容器に貯蔵される相当な熱は部分的にサンプルから及び部分的にヒーターから根ざす。ヒーター出力が容器の熱慣性を完全に補償するために要求されるレベルに達する時、式[3]により与えられた通り、システム温度割合は迅速になり、ヒーター出力は式[3]により制御される。
【0031】
より多い従来のARC方法を通して前記形態のテストを用いる長所は以下を含む:
・テストの遅いHWS部分が除去されるためテスト時間は非常に減縮される。(均衡のためのステップ及び待機は必要ではない。)
・データは1.0でどのような与えられた質量の容器にできる限り最大値まで変動するΦ要素で得られることができる。
【0032】
・反応熱は下記のセクション2.3で説明されるようなサンプルの熱容量に関係なく得られることができる。
・制御された方式で容器に超過熱を加えることができるので、熱的に不安定な材料を含む容器に火災加熱をシミュレートする。
・反応物の熱容量及び反応の結果は反応以前及び以後に公知された熱入力から測定されることができる。
【0033】
・発熱開始は初期の温度走査速度により低い温度で検出されることができる。
2.2 実験
DTBP溶液を用いた多数の実験が方法の効用を照明するために行われた。表1はテストを表に載せて結果を要約する。サンプルヒーターが容器の熱質量を補償するために用いられるテストの部分中に、容器の熱容量は温度の関数に推定され、下記の通り計算された(参照文献12):
チタニウム: Cp=0.10105+0.00006788.T
ステンレス鋼: Cp=0.07390+0.00011420.T
ハステロイ C: Cp=0.08681+0.00003000.T
ここで、温度Tは内側壁温度(サンプル温度と同一である)と外側壁温度との測定から得られる、ケルビン等級である、平均容器壁温度である。
【0034】
【表1】
【0035】
鋼鉄の相対的に小さい熱伝導率、前記方法は制御されたサンプルヒーターを用いるため、他の状態下で熱損失割合を合わせるよう定量化することができる。
温度変化転移時に伝導熱損失を最小化するために、部品の付着されるヒーターはサンプル容器の温度よりわずかに高い温度で作動される。温度上昇テストが施行される温度走査速度による。温度上昇の大きさは多数の温度割合でシステムを加熱し、サンプル容器で水を用いた従来の目盛り測定テストとして得られる。ヒーター温度上昇は公知された水質量の熱容量の正確な値が得られる時まで調節される。必要な温度上昇は最大上昇が10℃である条件により:
ΔT=a[dTw/dt]b
の式形態で表現され得ることが発見された。常数(a)及び指数(b)の値がある程度ステンレス鋼部品のサイズによるということも発見された。316ステンレス鋼の他にどんな他部品も用いられないが、前記値は部品構成の材料によるもので、また予想され得、これは熱容量及び熱伝導率に影響を及ぼすので、どんな与えられた加熱速度で部品の熱損失割合に影響を及ぼす。
【0036】
2.2.2 同一の質量容器を除外したところで他の温度走査速度でのテスト。
図4は6グラムチタニウム容器で、かつ0.5、1.0及び2.0℃/minで加熱された10%溶液を用いた3種のテストの温度‐時間プロファイルを示す。各温度‐時間図表の一番目そして最後の部分は一定の割合でサンプルと容器との強制された加熱を示す。システムを加熱するのに要求されるヒーターエネルギーが公知されているので、前記データから熱容量推定を抽出することができる。各図表の中央部はDTBPの発熱分解と関連された温度上昇である。テストの前記部分中に容器の熱質量は式[3]により与えられた割合でサンプルに熱を加えることにより完全に補償される。これは加熱速度のロガリズムが相互作用温度の関数として表示された図5に更に明確に示されている。予想される通り、自己‐発熱の最大割合及び発熱のピーク温度は初期の過熱段階中の強制された加熱速度が増加されるのに従って増加される。前記一連のテストの活性化エネルギーの平均値は36.4kcal/molである。これはVSP装置でRound Robinからの16回施行の平均が36.1±1.0kcal/molと記録されている参照文献(7)の値と有利に比較される。しかし、前記値はARCで実施されたテストから37.8±1.1kcal/molの値が示された参照文献(2)に記録されたものより少し低い。
【0037】
2.2.3 他の容器を除外したところで同一の温度走査速度でのテスト。
二番目一連のテストが質量の異なる容器を除外したところで同一の溶液を用いて施行された。実験に用いられた三つの容器で補償されていないΦ要素は1.26、1.54及び1.88であった。図6は割合が自己‐発熱割合及びサンプルの温度上昇から計算された分解に対する自己‐発熱速度及び第1次割合の図表である[参照文献(1)参照及び下記の“活性化エネルギー”下に論議される]。表1に乗せられた全てのテストでの第1次割合及び結果的な活性化エネルギーと以前‐指数要素が実験の容器補償フェイズ中に測定されたデータを用いて式[4]から計算された。
【0038】
K=(dT/dt)(Tf-T) [4]
三つのテストに対して計算された反応速度パラメーターは良好に一致し、参照文献に公開された値と類似する。明確に、サンプルヒーターは三つのテストに対して実際に同一の自己‐発熱割合図表により明示された通り、三つの異なる容器の質量を十分に補償した。二つのテストで、全体テスト時間を減少させるために、サンプルの初期加熱速度が増加されることを注目しなければならない。検出された発熱の開始前に、加熱速度は0.5℃/minの所望の温度走査速度に低下される。
【0039】
2.3 反応エネルギー及び電力
また図3を参照すれば、システムの単純な熱平衡は下記の式を提供する。
W+H=S+B [5]
ここで、Wはサンプルにより放出されたり吸収されたエネルギーであり、Hはヒーターによるエネルギー出力であり、Sはサンプルにおける感知可能なエネルギーであり、Bは容器における感知可能であるエネルギーである。前記式は容器とサンプルからのゼロエネルギー損失があることと仮定する。
【0040】
従って、サンプルから放出されたエネルギーは次のように与えられる。
W=S+B-H [6]
サンプル電力出力は次のように与えられる。
dW/dt=dS/dt+dB/dt-dH/dt [7]
又は
dW/dt=MsCs(dTs/dt)+0.5MbCb[(dTw/dt)+(dTs/dt)]-P [8]
ここで、Pはヒーターの電力出力である。テストが小さくて一定の加熱速度で施行される時、それは(dTs/dt)=(dTw/dt)と仮定されることができる。
【0041】
dW/dt=(MsCs+MbCb)・(dTw/dt)-P [9]
サンプルと容器の熱容量が公知されていれば、前記式は温度の関数によってサンプルからエネルギー及び電力出力の計算を可能にする。代わりに、発熱加熱がない場合、以前の実験でサンプル容器の熱容量が公知されていたり測定された場合、サンプルの熱容量はこの時の温度の関数として決定されることができる。サンプルと容器の熱容量双方が公知されていない時、結合熱容量はどんな発熱又は吸熱作用の以前及び以後に直接測定される。[(MsCs+MbCb)・(dTw/dt)]の量はサンプルヒーターからベースライン電力出力(P0)として測定され、与えられた温度走査速度でサンプル及びサンプル容器を加熱するために要求される電力である。式[9]は次のように再度記載されることができる:
dW/dt=P0-P [10]
サンプル加熱速度がベースライン割合及び(dTs/dt)>>(dTw/dt)を超過する場合、前記式はこの時次のように変更されることができる。
【0042】
dW/dt=[P0(dTs/dt)/(dT0/dt)]-0.5MbCb[(dTs/dt)-(dTw/dt)]-P [10a]
ここで、(dTs/dt)は測定されたサンプル加熱速度であり、(dT0/dt)はベースライン加熱速度である。式[10a]は(dTs/dt)=(dTw/dt)=(dT0/dt)である時、式[10]に減少される。言い換えれば、温度割合がテストを通して一定に維持された時である。反応熱、ΔHRはdW/dtの積分により与えられる。
【0043】
ΔW=∫(P0-P)dt=ΔHR [11]
実験の温度範囲にわたったサンプルの平均熱容量が公知される時、断熱温度上昇が測定され、反応熱がただ得られる従来のARC実験とは違って反応熱の測定を得るために、前記式はサンプルの熱容量の熟知が要求されないということを注目しなければならない。しかし、容器が式[3]を用いたテストの発熱部分中に熱的に補償される時、その後サンプル容器の熱容量の以前熟知はヒーター出力を正確に制御するために要求される。さらに、サンプル加熱速度が熱的補償により大きくなると、その後の状態(dTs/dt)=(dTw/dt)は特に容器壁厚さが大きい場合、もう以上真実ではない。サンプル電力出力はその後式[8]を用いて計算されなければならない。前記場合に対して、サンプル及び容器の熱容量は実験の非発熱加熱部から公知されたり得られる必要がある。
【0044】
2.4 活性化エネルギー
単純反応の反応速度は従来のARC実験に使われて参照文献(1)に述べられた方法と類似した方式で得られる。単一反応物によるn次反応で反応割合は
dC/dt=kCn [12]
どんな温度でも反応物の濃度がエネルギー変化と関連されることができるという推定により、
C/C0=(Wf-W)/ΔW [13]
式は測定されたエネルギー出力が反応速度に関連されるよう誘導されることができる。前記式で、Cはどんな温度での単一反応物の濃度、C0は初期濃度、Wfは反応に起因した最終エネルギー出力レベル、Wはどんな温度でのエネルギー出力、かつΔWは反応に起因した全体エネルギー出力である。前記式が時間に関して区別され、式[12]に置換される時、その後
dW/dt=k・C0n-1・[[(Wf-W)/ΔW]nΔW] [14]
そしてアレニウスの式を用いて:
k=Ae-(E/RT) [15]
ここでAは以前指数要素でありEは活性化エネルギー及びRはガス常数であり、式は次のように誘導される。
【0045】
In[(dW/dt)/[[(Wf-W)/ΔW]nΔW]]=InC0n-1A-E/RT [16]
従って、正確な次数(n)が反応で選択された場合、相互作用温度に対する式の左側の測定可能な量のロガリズムの表示は直線をもたらす。活性化エネルギー及び以前指数要素はそれぞれ傾斜及び切片から計算されることができる。
式[9]、[10]、[11]及び[16]の利用は加熱速度が一定の時の期間中に発熱結果の以前検出を許容する。また、反応からの熱出力は走査期間時に連続的に計算される。
【0046】
前記式の利用は下記の実験で説明される。トルエンでの5グラムの10%DTBP溶液が18グラムステンレス鋼反応容器で0.5℃/minで加熱される。約145℃でヒーターからの電力出力は加熱速度で容器の熱質量を完全に補償するために要求されることと同一である。前記温度から約203℃で発熱が完了されるまで、ヒーターの電力出力は1.0に設定される値λに式[3]により制御される。203℃でヒーター電力はPID制御アルゴリズムを用いた傾斜割合でシステムを加熱するために要求される電力に調節される。
【0047】
図7は時間の関数としてヒーター電力出力(dH/dt)及びサンプル電力出力(dW/dt)を示す。サンプル電力出力は下記の方法でヒーター出力曲線から誘導される。
直線ベースラインは図7に図示された通り、ヒーターからの電力が発熱後一定のレベルで増加される地点で電力出力上の下側偏差の開始からヒーター電力出力曲線上に図示される。前記ラインは実験上の走査速度で反応物及びサンプル容器を加熱するのに必要なヒーターからのベースライン電力出力を示す。ベースラインの式が発見され、P0に対して式[10a]に置換された。
【0048】
dW/dt=[(2.35+0.0006.t)・(dTs/dt)/Rs]-dH/dt-0.5MbCb[dTs/dt-dTw/dt] [17]
ここで、Rsは初期温度走査速度である。温度割合上昇dTs/dt、dTw/dt、及びヒーター電力出力(dH/dt)が実験を通して知られたので、サンプル電力出力、dW/dtは時間(又は温度)の関数として計算される。時間に対する前記曲線の積分はDTBP熱分解をもたらす。式[17]の式[16]への置換は分解反応で反応速度パラメーターの計算を許容する。図8は相互作用温度の関数としてヒーター電力出力、サンプル電力出力、サンプル温度割合及び圧力上昇割合の対数図表である。また、2つの図表は式[16]と用いて計算される第1次反応割合及び又は145℃以降の温度割合データと式[4]を用いて計算される同一温度常数を示すグラフに図示されている。割合が一定してどんな情報も抽出されることができないため、145℃以前の温度割合データを用いることが可能ではない。2つのラインは図表で分かり通り、同一の活性化エネルギーと以前指数要素を必須的に提供する。活性化エネルギーの平均値は36.88kcal/molと確認され、反応熱は367cal/g DTBPであった。
【0049】
発熱の開始はサンプル電力出力図表を用いて約108℃(図8を用いる軸目盛り上の-2.625)で容易に検出され得るということを注目しなければならない。これは走査テストであり、断熱熱量計を作動させる最も敏感な方式と思われるHWS方法を用いない事実にもかかわらず、前記温度は前記反応のための標準ARC検出限界より摂氏約7度低い。従って、本方法は標準ARC方法よりずいぶんもっと迅速であるばかりではなく、もっと敏感で、システムの熱容量の熟知無しに反応熱を提供し、テストが1.0のΦ要素で作動されることができるようにする。
【0050】
2.5 サンプルの外観比熱の計算
サンプルでのどんな自己‐発熱以前の、かつ発熱活動が終わった後のヒーター電力出力を用いて、サンプルの熱容量及び反応結果を測定することが可能である。初期に、ヒーター電力は与えられた温度走査速度で両サンプル及び容器を加熱するのに用いられる。システムがきちんと測定されて熱損失がゼロである場合、サンプル容器の比熱及び質量が知られれば、サンプルの比熱はこの時温度の関数として得られることができる。
【0051】
従って、式[9]から、かつサンプル電力出力(dW/dt)がゼロであることと仮定する。
P=(MsCs+MbCb)・(dTw/dt) [18]
C=[P/(dTw/dt)]-[MbCb])/Ms [19]
前記関数はソフトウェア制御により計算され、テスト中にグラフで表示され得る。図9は18グラムステンレス鋼容器で0.5℃/minで加熱されたDTBPサンプルから得られる典型的なテスト結果を示す。また、図表はサンプルが熱の放出を始めるのに従って、ヒーターからのエネルギー出力が減少することを示す。システムの熱容量はサンプルが熱的に活動的である時、決定され得ない。また、前記関数は最上部ヒーターの温度に非常に敏感なことと確認された。最上部ヒーターはサンプル容器が付着される高圧部品を加熱するのに用いられる。従って、特にサンプル質量が小さく、サンプル容器質量が相対的に大きい場合、部品の非常に小さい熱損失は比熱の測定された値に影響を与えることができる。前記図9での発熱前に、ラインの傾斜からサンプルの平均比熱は0.505cal/g℃に決定される。
【0052】
2.6 吸熱材料
吸熱は、サンプルヒーターおよび固定温度走査モードやヒーターからの固定電力出力を用いて容易に定量化される。テストは両吸熱状態を示すサンプル及び固体材料に用いられる方法を説明するため硝酸アンモニウムサンプルで行われた。硝酸アンモニウムは周りの温度と約170℃間で4つの個別吸熱を示す。約170℃以上で硝酸アンモニウムは激しく分解される。前記テストはサンプルの相対的に大きいサイズため、前記のイベント前に終了される。
【0053】
4グラムの硝酸アンモニウムは10.6グラムステンレススチル容器で加熱され、サンプルヒーターから50mWの一定の電力出力を用いて加熱される。選ばれた電力レベルは、約0.2℃/minでサンプルを加熱するのに充分である。サンプルが固体、微粒子材料であるため、少し小さい比率はサンプルと容器にかけて、特に等温状態を維持する間ヒーターからサンプルへの適当な熱伝達比率を確実にするのに用いられる。図10は、時間の関数としてのサンプル温度およびサンプル電力を示す。図面は37℃、86℃、126℃および約150℃で開始する固体溶解の4つの吸熱を明確に示す。図11は、サンプル温度の関数としてのサンプル電力及びエネルギー、かつ温度の関数としての明らかなサンプル熱容量を示す。しかし、吸熱結果時、サンプルの熱容量は明確でない。熱容量は上述した通り、ヒーター電力出力およびステンレススチル容器の公知された質量及び熱容量から決定される。溶解熱は168℃で18.1cal/gで測定され、これは公開された値[10]と良好に一致する。
【0054】
2.7 分解熱
容器補償方法を用いたDTBP上の全ての作動テストで、測定された分解熱は約DTBP340および360cal/gの間にある。Tou and whiting [2]には、実験に使用される質量と容器のタイプに応じて約230〜335cal/gまでの範囲にあると値を記載する。Ming-Huei Yue [8]には、EAC装置で平均値331cal/gを記載した反面に、Leung、Fauske and Fisher [5]には、VSP装置で測定された290cal/g値を記載する。Round robin テストから平均値335cal/gが[11]に記載されている。従って、前記作業に確認された値は7-8%程度高く示す。いくつかの可変性は反応の温度範囲にわたって反応物及び結果物の熱容量の不正確な熟知に属するものであると考えられることができる。しかし、前記作業でサンプル容器がARCに取り付けられたスチル部品は、動的な状態下でのサンプルよりさらに冷たいことも確認された。温度差異の大きさはセクション2.2.1に叙述された通り、温度上昇の比率により変化する。従って、標準作動の状態下で標準ARCで発熱活動を遂行するサンプルは、発熱の過程にわたって変化する比率で若干の熱を損失すると予想されることであろう。始める時及び発熱の末尾に温度上昇の比率が必然的にゼロであるとき、目盛りが刻まれた機械装置で“ドリフト”比率はゼロとなるため、損失は明らかではないことであろう。変化する熱損失の比率は測定された自己-発熱比率データから計算される反応速度パラメーターにも影響を及ぼすだろう。
【0055】
結果をチェックし、DTBPの分解熱値に付加的な確信を与えるため、テストは過酸化水素の分解に対して実施された。前記材料の分解は反応容器壁の状態により影響を受けるので、密閉された金属容器で良好な反応速度を得ることは難しい。しかし、最終状態は影響を受けず、分解の結果物が知られ、反応の完了が圧力測定により抑制されることができるため、分解熱は反応物と結果物の形成熱の熟知から予め得られることができる。従って、
H2O2→H2O+1/2O2 ΔHr=689.3cal/g
H2O2の10%溶液の3グラムは0.23グラムの重さを有する小さい磁気撹拌バー(bar)を有する9.7グラムのステンレススチル管状反応器に用いられた。サンプル及び容器は0.5C/minで加熱された。図12は、時間の関数であって、ヒーター電力を示す。図面に示したベースラインの電力出力は式[10]を用いて計算される時間の関数であって、サンプル電力出力を可能にする。図12にも示したサンプル電力出力曲線の積分は696cal/gとしての過酸化水素の分解熱を提供する。前記図面は予想される過酸化水素の予想された分解熱の1%内である。
【0056】
2.8 容器熱質量の補償限界
サンプルヒーターを用いた反応容器の熱質量の補償能力は多数の要素による。主要限界はヒーターからサンプルへのエネルギーの伝達能力及びサンプル容器への熱の均等な分配である。加熱速度が分当たり何十度以上を超過する時、サンプルの撹拌は必須的である。エネルギーの比率が非常に高いと、サンプルヒーターの表面温度は相当の量でサンプルの温度を超過することもできるため、おそらくヒーターの表面で反応比率を上昇させる。150℃/min程度高いサンプル温度の比率は前記作業で観察された。サンプルヒーターから利用可能な最大電力は約80cal/minであるので、成功的に補償されることができる容器の質量を制限する。標準10ml、軽量の(〜6.0g)チタニウムARC容器は、例えばほぼ100℃/minの最大のサンプル加熱速度で完全に補償される。反面、非常に小さい、単に2.5g重さのステンレススチル容器は約260℃/minで完全に補償されることができる。図13は2.0℃/minで傾斜し、その質量の60%が補償された10.6gステンレススチル容器での16.7%DTBP溶液によるテスト結果を示す。加熱速度が100℃/minを超過し、ピークヒーターの電力が約80cal/minのその最大出力に達することが分かる。また、温度の関数としての明白なサンプル比熱は、発熱活動が発生する地点にあると示す。前記テストの活性化エネルギーは36.62kcal/molであると判明された。
【0057】
3.一定の熱比率での走査断熱テスト
断熱テストを実施するための代案的な方法は上述した方法から始める。サンプル容器がサンプルに比べて非常に大きい質量である時、容器はこの時走査速度のものを超える容器の温度比率なしに温度走査時に全ての反応熱を吸収する充分な熱容量を有することができる。この場合に、サンプルヒーターは発熱および吸熱行程を通し、走査速度でシステム(容器を加えるサンプルで構成される)の加熱速度を制御するのに用いられる。限界はサンプル容器材料の熱伝導率に関して発生する。伝導率が小さくて容器の壁の厚さが大きすぎると、反応熱は充分に迅速な比率で容器に分散されることができず、サンプルと容器はもう以上熱平衡にあるものであると考慮できない。
【0058】
3.1 論議
実験の従来ARCタイプにおいて、サンプルの温度比率は発熱が継続されることによって連続的に増加する。磁気-発熱の比率が反応比率に比例するため、反応速度が測定された温度比率から誘導されることができる。式[10]、[11]及び[16]を用いて、断熱テストを行う異なる方法が今後可能である。サンプルとサンプルの容器で構成されたシステムの加熱速度が、サンプルヒーターの電力出力を調節することによって一定の比率で制御される。発熱が比率で加速化されることにより、システムの加熱速度を一定に維持するためヒーターの出力が減少される。従って、ヒーター出力の変化比率は、ARCでのように温度変化の比率でない効果的に反応比率の新たな測定になる。前記方法での温度比率は一定であるので、どのような反応速度の情報も温度比率を用いて抽出されることができない。テストの前記タイプで、サンプル容器は温度上昇の一定の比率を増加させることなく反応熱を吸収するのに充分に厚くなければならない。前記テストモードから発生するいくつかの長所は次を含む:
・ガードヒーターのための電力要求は分当たり何度と似ている与えられる走査速度で温度を追跡することにのみ要求されるため相当に小さい。従来のARCでのガードヒーターは、一方では約15℃/minの磁気-発熱比率を追跡するのに要求され、Φ要素が1.0に近接したAPTACでヒーターは、サンプルの加熱速度を約400/℃minまで追跡できる。
【0059】
・厚いサンプル容器の要求は圧力の観点で有利する。特に走査温度が相対的に小さく維持される場合、高圧要求は今後非常に容易に満足されることができる。
・前記方法は制御較正およびサンプルの熱電対での小さい不正確度にあまり敏感でない。
・テストはARCより相当にさらに短い時間、期間で完了される。
【0060】
・両参照サンプルとテストのサンプルが同一の断熱環境で同一の比率で加熱されることができるため、本方法は、また差動モードでテストを行うための能力を提供する。感度における実質的な向上を差動モードで行うことによりなる。
前記方法は壁の加熱を通して対向するような容器の内部からサンプルと容器とが加熱される点で標準DSC方法と異なる。また、サンプル容器および参照容器が断熱的であり、サンプルの圧力が容易に測定され、テストを通したサンプルの撹拌が可能である。差動モードの自体は多数の長所を提供し、特にサンプル容器の熱容量を“ゼロ-アウト”させ、システムでの小さい熱損失の影響を否定する能力である。
【0061】
特にサンプルの容器は通常的に熱の伝導性が小さいステンレススチル又は類似した合金で構成されているので、厚い壁の容器は内部から外側壁への熱の伝導が遅い短所を有する。高伝導の材料はさらに高い温度でそれらの強度不足、それらの費用(高価金属の場合)またはそれらの化学的反応のため一般的に不適合である。前記短所を克服するため、ステンレススチル等の材料で薄い壁の容器は図14に例示された通り、銅等の高伝導性材料のスリーブと共に用いられることができる。この場合に、銅はサンプルヒーターにより外側から必ず加熱されず、装置の作動は全ての異なる様相において上述したものと同一である。
【0062】
前記タイプのサンプル容器の長所は、さらに高い温度の走査速度が熱伝導性を含むことなく用いられることができ、サンプルヒーターがサンプル容器内に挿入されるように要求されないため、サンプル容器があまり高くなく、処分可能であることである。
3.2一定の温度走査テストでのΦ要素
前記タイプのテストでのΦ要素は、容器により吸収されるエネルギーが2つの供給源、反応のサンプル熱及びヒーターから変化する出力を有するため目的を有しない。従って、サンプルに関連する効果的な容器の熱質量はサンプルヒーターの出力が変化することによって変化する。サンプル容器の熱容量が公知されており、ヒーターからの電力出力が公知されているため、サンプル温度によるΦ要素の変化は望む通り計算されることができる。
【0063】
3.3 実験
多数のテストが図14に示した構成及び、またほぼ71グラム重さの厚い壁のハステロイC容器を有する図3に示した構成を用いて行われた。トルエンの16.7%DTBP溶液は前記厚いハステロイC容器で多数の異なる比率で加熱された。温度比率がヒーター電力を調節することによって一定の比率で制御された。各テストから反応熱を得るため式[11]、また活性化エネルギー及び前指数要素を得るため式[16]を用いてデータが分析された。図15は、サンプル温度の関数として蓄積された吸熱エネルギー出力およびヒーターの電力出力を示す。テストグループの結果が表2に要約された。平均反応熱がセクション2に叙述された通り、容器補償の方法により分かることになる値より約6.0%高いDTBP 379.0cal/gであることが分かることになった。前記方法は反応熱を得るためサンプルの熱容量または容器の熱容量の熟知を要求しないことを注目しなければならない。式[3]で要素、λの値はゼロで設定され、どのような容器の熱質量の補償も発生しない。
【0064】
図16は、図表に示した各4つテストのサンプル温度と反対関数であって、第1次反応比率常数およびヒーター電力を示す。第1次比率常数が式[16]を用いて計算され、線の傾斜が活性化エネルギーおよび前指数要素を提供した。4つのテストでの平均活性化エネルギーは37.20kcal/molであり、これは容器補償方法で分かることになった平均値より約1.2%大きい(表1参照)。
【0065】
また、テストが厚い、ハステロイC反応容器で6.2%過酸化水素溶液の3グラムサンプルで行われた。図17は、時間関数としてのヒーター電力出力、サンプルの電力出力およびサンプルのエネルギー出力を示す。分解測定熱が700cal/g H2O2であることが分かり、これは689.3cal/gの理論値より約1.5%大きい。測定された値は酸素および水を形成する過酸化水素の分解により発生される圧力の分析により確証される。図18は、サンプル温度の関数であって、反応容器での圧力を示す。100℃で圧力は1420KPaである。酸素がその温度で、水で不溶性なこと及び反応容器でのヘッド空間が6.42mlsであることを推定したとき、これは前記1438.9KPaの計算された圧力と相当によく当てはまるので、過酸化水素サンプルの完全な分解を確実にする。
【0066】
【表2】
【0067】
多数の追加的な特徴は選択的に向上された熱量計に提供されることができる。これらは周りの温度以下の温度で熱量計走査を開始するための手段を含む。どのような通常的な冷却手段も選択された周り下の温度で、サンプル、容器および関係される装備を成すのに潜在的に用いられることができる。その後、サンプルの施行は周り以上の温度で走査に対して叙述された通り必須的に行われる。冷却手段は他のもののうち、通常的な冷蔵または冷凍ユニット、例えば液体窒素または異なる液化または凝固ガス(例えば二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、または他の適当なガス)から前記装置を通し、冷たいガスを通過させたり、または冷たい環境でユニットを簡単に作動させるための(冷蔵庫または冷凍庫で歩く)装置である。前記装置で水の凝縮を防止しながら、恐らく乾燥ガスの雰囲気で保護板を必要とすることが考慮される。どのような温度も理論上有用する。実際の問題として、液体窒素の沸騰点以上の開始温度は約190度Kであることが好ましく、大部分の化学的性質はさらに高い温度で発生することであろう。
【0068】
他の選択はサンプルの撹拌であり、これは液体であるか、またはいくつかの場合に微細であり、また好ましくは非凝集の粉末で存在するサンプルに特に有用する。容器内部及び駆動磁石の外側の撹拌磁石による磁気撹拌機は商業的装置に用いられて来た。機械撹拌機も容器の首の部分を通した接近が制限されても可能である。
異なる選択は熱の分析時にサンプルにより生成される圧力の測定である。これは現在、いくつかの商業的熱量計で行われる。容器は、例えば周期的に作動時に、または狭い温度範囲にわたって作動の全てに対してシーリングされることができ、容器内部の圧力は圧力トランスデューサ又は他のセンサーにより測定される。広い圧力範囲にわたって容器のシーリングを許容する代案は加圧可能コンテナの内部にインクロージャーおよび容器を配置し、その後容器内部で得られる圧力の均衡を合わせるため外部圧力を適用することである。前記手続きは現在用いられ、本発明の熱量計に用いられることができ、サンプルから少ない熱を吸収する薄い壁の容器を用いることにする。
【0069】
サンプルのサイズは本発明の重大な様相ではない。サンプルが量に限定されず、強い発熱または分解を有しないとき、1〜5グラムの範囲が適当である。非常に微妙な発熱または吸熱が正確に測定されないと、さらに大きいサンプルが必要でない。要求される感度および精度に応じて100mg程度で小さいサンプルが用いられることができる。容器でのサンプルの大きさに従って調節されることである。典型的な容器の容積は約1cc〜20ccの範囲にあるが、サンプルを受容するのに要求されたようにさらに大きかったり、又はさらに小さい場合がある。
【0070】
しかも、広い範囲の加熱速度が可能である。上部の比率は1500cal/minまたは約100Wの範囲であり得るが、下部の比率は感度および安定性の限界の下で用いられる。これらは分当たり約0.0001calまたは約5〜7のμW程度で低いことができる。加熱速度の前記広い範囲にわたる測定能力は本発明の長所であり、異なるシステムでは見ることができない。
どのような温度の測定方法も用いられることができる。好ましい方法は熱電対、典型的にN型熱電対の利用である。特に、約100deg.C下でサーミスタが用いられることができる。
【0071】
本発明は図3に例示された通り、容器内部のサンプルヒーターを有することに関して叙述されてきた。多くの例で、これは好ましいモードである。しかし、異なる場合においてサンプルヒーターの側部は容器の壁の内部または容器と熱接触する高熱伝導性材料または熱シンクの壁の内部であることができ、かつ本発明の全ての利益を提供する。また、例示されていないが、かつあまり好ましくないが、サンプルヒーターは容器の外側上に設けられることができる。これは加熱の速度が一定するとき、特によく調整された容器により、類似した結果を提供するが、発熱、特に“runaway”の発熱を追跡するのに用いることはさらに難しい。
【0072】
結論
熱イベントを定量化するためサンプルヒーターを用いた断熱熱量計のデータを得るため向上された方法が発展されてきた。本方法は1〜5グラムの等級のサンプルサイズを用いて、圧力がまた日常的に測定される。結果に関する反応容器の質量効果は動的熱の補償により否認されることができるため、テストでの効果的なΦ要素は1.0であり得る。吸熱結果を含むサンプルからの熱の効果はサンプルの比熱に関係なしに定量化される。サンプルおよび反応容器は一定の温度比率で加熱されることができ、従ってHeat-Wait-Searchの方法を用いた通常的な断熱熱量計にわたって劇的にテストの時間を減らす。サンプルの固有熱はどのような熱的結果の以前に測定されることができる。発熱の検出感度は検出感度が温度の走査速度に依存するが、最小限HWSの方法を採用した現存する断熱熱量計と同様である。
【0073】
本発明は、本発明を成し、利用方法を説明するように提供された特定の実施例および例で叙述されてきた。多くの変化および均等物は当業者に明白であり、本発明は叙述及び例の範囲により限定されるのではなく、請求項の範囲により限定される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来のARC機械でモデル物質(DTBP;ジ-tert-ブチル-パラクサイド)によるテストを示す。
【図2】従来のARC機械でモデル物質(DTBP;ジ-tert-ブチル-パラクサイド)によるテストを示す。
【図3】本発明の向上した熱量計の概略図である。
【図4】新たな装置に関するDTBPの図表を示す。
【図5】新たな装置に関するDTBPの図表を示す。
【図6】新たな装置に関するDTBPの図表を示す。
【図7】モデル物質に対して本発明の装置による他のタイプの図表を示す。
【図8】モデル物質に対して本発明の装置による他のタイプの図表を示す。
【図9】発熱中のサンプルヒーターの出力を示す。
【図10】物質での多重吸熱の検出を示す。
【図11】各硝酸アンモニウム及び過酸化水素の走査時に多重発熱及び吸熱を示す。
【図12】各硝酸アンモニウム及び過酸化水素の走査時に多重発熱及び吸熱を示す。
【図13】1.0以外のΦでの補償を示す。
【図14】高い発熱サンプルによる利用のために余分の質量を提供するヒートシンクを有する変更された容器を示す。
【図15】多様な加熱速度で図14のヒートシンクによるDTBPの発熱測定を示す。
【図16】多様な加熱速度で図14のヒートシンクによるDTBPの発熱測定を示す。
【図17】過酸化水素による発熱測定を示し、圧力測定を示す。
【図18】過酸化水素による発熱測定を示し、圧力測定を示す。
【技術分野】
【0001】
材料の熱安定性、発熱反応、及び熱散逸は、加熱速度熱量計で大変しばしば研究され、これはDow ChemicalのARC(登録商標)の科学者達が、1970年代後半に前記装置を初めて開発したのに伴ってしばしば言及され、多くのARCの利用を記載した多くの論文がその後作成されてきた(1、2、3)。前記装置を利用して、サンプル及びサンプル容器は、発熱活動度がサンプルの温度変化比率の観察により、サンプルから検出される温度に加熱される。サンプルと容器とは、サンプル容器を取り囲むガード(guard)ヒーターの慎重な制御により、熱を外部環境で損失することを防止する。通常Heat-Wait-SearchTM(HWS)方法で言及される加熱アルゴリズムは、サンプルの初期加熱を制御して、発熱探索期間の間、サンプルを安定した温度に近づくのに利用される。
【背景技術】
【0002】
図1は、HWS方法及び軽量の球形チタニウム容器でジ-tert-ブチル-パラクサイドのサンプルに関する分解熱及び反応速度を得るための新たなTIAX製造ARCの利用を例示する。前記実験で、トルエンでのDTBPの20%溶液の6グラムが95℃の初期開始温度に6グラムのチタニウム容器で加熱された。発熱はいくつかの加熱段階後に110.5℃で検出された後、断熱的に反応完了につながった。(スキャンの左右側からの「段階」であることに注目する。)分解熱は、サンプル溶液に対しては0.51cal/g℃及びチタニウム容器に対しては0.135cal/g℃の平均熱容量を利用してDTBPの49.35kcal/molで測定された。図2は、加熱速度の図表(1)の発熱部から計算される通り、相互作用温度の関数としてのサンプルの加熱速度と圧力比率及び、また分解反応の1次反応比率を図示する。反応の活性化エネルギー及び以前の指数要素は、公開されたデータ(2)とうまく符合する。
【0003】
ARCが敏感で安定した断熱熱量計であっても、それは多数の重要な欠点を被ることになる。
・サンプル容器の熱質量はサンプルと比較してしばしば大きくなるため、サンプルにより放出される多量の熱が容器により吸収され、ピーク反応温度及び圧力が低下する。即ち、大部分のテストは相対的に大きなΦ要素により試行される。
【0004】
・新型TIAX ARCは加熱速度を250℃/minまで追跡できるが、旧型ARCのヒーターは約15℃/min以下の温度比率に制限される。
前記の更に高い追跡率はもちろん、サンプル及び容器が発熱を通して熱平衡状態にある場合にのみ有用である。
・HWS方法を利用してテストを完了するのに必要な時間は、24時間をしばしば超過して機械当たりの生産性が非常に低い。
【0005】
・装置が吸熱反応を定量化できない。
・旧型ARCの撹拌は可能だが、非常に高いため度々は利用しない。
1980年代初めにDIERS Bench Scale装置が開発されて、VSPTMとしてFauske and Associates(4、5)により商品化された。前記装置は、熱散逸しやすい化学的システムの特性を示し、この装置で形成される温度及び圧力比率の測定から特定の反応器の出口の大きさを計算するよう設計された。前記装置は、感度の損失費用を除き、大きなΦ要素の、ARCの主要な短所を克服した。また、相対的に大きなサンプルサイズが要求され、前記装置は圧力の均衡維持システムのため複合的な高圧の配管、及び「格納容器」を必要とした。また、APTACTM(6、9)及びPhi-TecTM(7)等の競争上の機械は、APTACがARCの感度を維持するとしても、類似する欠点に苦しんだ。
【0006】
また、示差走査熱量計(DSC)は、材料で熱イベントに関する情報を得るために広範囲にわたって利用される。しかし、小さなサンプルサイズが用いられるため(〜1-20mg)圧力測定は一般的に行われない。また、テスト時の反応物の追加及びサンプルの撹拌は、DSCにおいて問題があり、一定の加熱速度での走査方法であるため、データはテストされる材料を取り扱ったり、貯蔵できるフルサイズの装備に容易に測定できない。
【特許文献1】米国特許第3,593,577号明細書
【特許文献2】米国特許第4,208,907号明細書
【特許文献3】米国特許第4,439,048号明細書
【特許文献4】米国特許第4,892,707号明細書
【特許文献5】米国特許第4,963,499号明細書
【特許文献6】米国特許第5,547,282号明細書
【特許文献7】米国特許第5,806,979号明細書
【特許文献8】米国特許第6,157,009号明細書
【特許文献9】米国特許第6,513,969号明細書
【特許文献10】国際公開第99/60356号パンフレット
【特許文献11】欧州特許出願公開第0 286 580号明細書
【特許文献12】特開昭53−049395号公報
【非特許文献1】Townsend, D.I, and Tou, J. C., Thermal Hazard Evaluation by an Accelerating Rate Calorimeter, Thermochimica Acta, 37(1980)1-30.
【非特許文献2】Tou, J. C, and Whiting, L.F., The Thermokinetic Performance of an Accelerating Rate Calorimeter, Thermochimica Acta, 48(1981)21-42.
【非特許文献3】Ahmed, M., and Fisher, H. G. ,and Janeshek, A.M.;Reaction Kinetics from Self-Heat Data-Data Correction for the Depletion of Sample.International Symposium on Runaway Reactions, AIChE, 1989, 331-341.
【非特許文献4】Bench Scale ERS Sizing Tolls: Equipment Details, Test Procedures and Illustrations, Fauske and Associates, Inc. , Report No. FAI/84-4, revised. 1984.
【非特許文献5】Leung, J.C., and Fauske, H.K., and Fisher, H. G., Thermal Runaway Reactions in a Low Thermal Inertia Apparatus, Thermochimica Acta, 104(1986)13-29.
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新しい断熱技術を利用した、向上した熱量計が開発された。本技術は新しい熱量計に実施できる。場合によっては、旧型の機械装置の方法を利用する長所は、機械が正確に追跡できる小規模の最大加熱速度により制限できても、現存する装備は新しい技術を利用するように変更され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一様相において、向上した熱量計はサンプル容器と容器の熱電対、一つ以上のガードヒーター及びガードヒーター用熱電対と選択的にサンプル用熱電対を含む。サンプル容器には容器内部に、また容器自体の壁内に、または壁上に、または結合ヒートシンク内に、またはこのヒートシンク上に位置したサンプルヒーターが装着される。一つ以上の熱電対からフィードバックを通して制御器により調節されるサンプルヒーターは、予め選択された一定比率でサンプル及び容器の温度を増加させるようプログラムされた比率で熱をサンプルに放出する。
【0009】
本発明の別の様相において、サンプルヒーターの熱出力は、選択された比率を維持するためにサンプルの発熱中に減少し、サンプルの吸熱中に増加する。
別の様相において、向上した熱量計は発熱反応中にサンプルからサンプル容器への熱損失を補償するために、サンプルの加熱速度に比例する速度で熱をサンプルに提供する。
別の様相において、サンプルヒーターは容器と良好に熱接触するヒートシンクでのサンプル外部に配置され得る。前記構成を利用して、サンプルの加熱速度は発熱を通して一定の比率で制御される。
【0010】
別の様相において、熱量計は一つ以上の容器を含み、各容器は結合サンプルヒーターと容器の熱電対とを備え、いくつかのサンプルは等しい断熱環境で、等しい温度比率で同時に走査され得る。
別の様相において、前記装置は一つ以上の圧力センサー、撹拌モーターまたは他の撹拌装置、及び測定が周囲下の温度で始まるようにする冷却容量を更に含む。
【0011】
別の様相において、熱量計はサンプルと容器温度とを測定するために、ガードヒーターの熱電対以外に一つの熱電対のみを有することができる。
本発明の別の様相は、説明から自明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、向上した熱量計、及び前記向上した熱量計により可能になる向上した測定と測定技術双方を含む。
1.熱量計
熱量計は図3に概略的に図示されている。熱量計はサンプル反応容器または容器(1)、エンクロージャ(2)、エンクロージャ(2)に連結されたガードヒーター(3)、サンプルヒーター(4)、第1の(外部容器)熱電対(6)、選択的第2の(サンプル)熱電対(5)、サンプル(7)、及び容器(1)の外面(8)を含む。典型的に1つ乃至4つである各ガードヒーター(3)は、結合した熱電対(未図示)を有する。いくつかの熱電対のそれぞれは、制御器にデータを提供する(未図示)。制御器はサンプルヒーター(4)及び各ガードヒーター(3)により提供される熱量を調節する。また、制御器は熱電対からデータを記録し、サンプルヒーター(4)及び各ガードヒーター(3)により提供される電力の量を選択する計算を行う。
【0013】
ガードヒーター(3)は、典型的に容器(1)の周囲に接近して嵌合するエンクロージャ(2)周囲にコイルのように巻かれている。それは装置のリードまたはエンクロージャ(2)(未図示)上にコイルのように形成され得る。いくつかの実施例では、ガードヒーターコイルは伝導による熱漏出を防ぐために容器の「ステム(stem)」(9)上部の端部周囲に巻かれている。作動時に、サンプルに適用される温度増加の特定比率が選択される。サンプルの加熱速度は、サンプルの熱電対(5)及び第1の外部容器壁熱電対(6)により検出される。サンプルヒーター(4)に供給される電力は、所望の加熱速度を得るために調節される。
【0014】
一方、第1の外部熱電対(6)は、容器(1)の外側温度を感知する。ガードヒーター(3)の温度は、サンプル容器(1)周囲に断熱状態を維持するために容器壁の外面(8)の温度と同じ温度に制御される。
代替モードにおいて、サンプル(7)の温度は外部容器壁(8)の温度上昇比率及び測定された温度から測定できるため、サンプル熱電対の必要性を除く。しかも、前記代替モードにおいて、容器壁厚の熱導電率は、以前に実験で測定された標準容器に対して望ましく知られている。
【0015】
いくつかの温度で(または一つ以上)、サンプル(4)は変化するであろう。これは、溶融または相転移等の吸熱変化であったり;相転移であったり分解または他の化学的変化であり得る発熱変化であり得る。
変化が吸熱である場合、サンプルヒーターの電力出力は温度の上昇比率を一定に維持するために増加される。代案として、また望ましくは、適用されたサンプルヒーターの電力は、吸熱中に一定の比率で制御され得る。これらの状態下で、サンプルの温度上昇比率はゼロに落ちるであろうし、サンプル容器を取り囲むガードヒーターは断熱状態を維持するであろう。
【0016】
変化が発熱である場合、サンプルヒーターに供給される電力は、温度上昇の比率を一定に維持するために減少される。サンプルからサンプル容器への熱損失比率は、連続的に計算される。サンプルヒーターの電力出力がサンプル容器の熱損失比率と同等になるよう減少される時、サンプルの電力出力は発熱残余持続期間に対するサンプル容器の熱損失比率と同等になるよう調節されるので、発熱反応中に容器の質量効果を除く。前記環境下で、サンプルの加熱速度は初期に制御された正常状態の加熱速度以上に加速される。また、ガードヒーターの温度比率は、サンプル容器周囲で断熱状態を維持するために増加される。代替モードで、ヒートシンク(11)により選択的に取り囲まれるいくつかのサンプル容器(1)は、サンプル容器を囲む断熱的に制御された加熱空間内で温度上昇の等しい比率で加熱され得る。この構成で、各サンプル及びヒートシンクは、独立して制御されたサンプルヒーターを有するので、多重サンプルは装置で同時にテストされ得る。
【0017】
2.容器壁の熱損失の動的補償による温度走査テスト
断熱環境でサンプルからの熱損失の多くの潜在的なソースは以下を含む:
・反応器(容器)(1)のステム(9)上へ、及び熱電対の覆い(未図示)を通る伝導。
・容器(1)の表面(8)からの対流損失
・周囲のヒーター(3)による放射交換
・反応器をシーリングしてそれを圧力トランスデューサ(未図示)に接続させる選択的嵌合の真空圧縮による還流
うまく設計された断熱熱量計は、前記損失(または利得)のソースを最小化し、TIAX ARCは良好な設計、良好な制御アルゴリズム及び自動化された熱電対の測定チェックによる優れた断熱性を達成する。しかし、損失のほかのソースは反応サンプルからの容器壁の熱損失である。
【0018】
伝統的に、容器壁の相対損失は
Φ=1.0+MbCb/MsCs [1]
で規定されたΦ要素により記載されており、ここでMは質量であり、Cは熱容量であり下記添え字b及びsは、サンプル容器とサンプルそれぞれを言及する。一般的に、反応容器は高い温度と圧力で反応物を含むのに充分なほど強い必要があるため、実験用断熱熱量計のΦ要素は約1.5乃至3.0である傾向がある。従って、多量の反応エネルギーは温度と圧力-時間処理を相当変化させる反応容器により吸収される。2.0のΦ要素は、例えば、容器により吸収される2分の1の反応熱を意味する。ARCは「システム」を断熱状態に維持することによって、厚い壁の容器を取り扱い、ここで前記システムはサンプルと容器である。この場合に、サンプルと容器とは発熱を通して等しい温度になければならない。サンプルの温度が容器壁の温度以上に相当上昇する場合、データは深刻なエラーにさらされる。
【0019】
容器壁の損失は、サンプルに対して非常に小さい熱質量を有する薄い壁の容器を利用することによってAPTAC, VSP及びPhi-Tecで最小化され、Φ要素は略1.1以下である。しかし、薄い壁の反応容器の利用から発生する多数の長所は、以下を含む。
・圧力抑制容器及び結合圧力均衡システムは、典型的に容器亀裂を防ぐために必要である。
【0020】
・圧力が前記抑制容器内で時折非常に迅速に変化することによって、サンプルから熱損失を制御するのが難しい。
・抑制容器への不活性ガスの流れ率の制御から発生し、「バランス」をとることができる圧力上昇の比率の現実的な制限がある。
・容器の亀裂が頻繁にあるので、機械装置がクリーニングされ再測定される間、やっかいなクリーンアップ及びダウンタイムを招く。
【0021】
断熱実験中に反応容器の質量を説明するための代案的な方法が展開されてきた。本方法は、サンプルに沈積した小型のコンピュータ制御ヒーターを含む。ソフトウェアは、発熱のイベント中にサンプルから容器への熱損失を連続的に計算する。ヒーターからの電力が制御されて、サンプルから容器への熱損失比率と同等になる。従って、純粋な熱損失はゼロである。同一のヒーターを利用して、実験の加熱フェーズ(phase)中にサンプルにより吸収されるエネルギーを測定することも可能であるため、サンプルの熱容量を計算したり、またはサンプルから発生するどんな吸熱活動をも定量化する。
【0022】
図3は、エンクロージャ(2)内部の断熱環境で厚い壁のサンプル反応容器(1)を示す。サンプル(7)の温度(Ts)は選択的ではあるが望ましい熱電対(5)(「第2」の熱電対と呼ぶ)を利用して測定され、サンプル容器の外部壁の温度(Tw)は第1の熱電対(6)を利用して測定される。サンプル(7)及び反応容器(1)は、サンプル(7)と接触して小型ヒーター(4)により一定の比率で加熱される。加熱速度は、サンプルの温度(Ts)が容器(1)の外壁(8)でのように、本来等しい温度(Tw)にあるよう選択される。反応容器を取り囲むガードヒーター(3)は導電、放射または対流によるシステムからのどんな熱損失をも防ぐ。サンプル(7)が熱を放出し始めるとき、サンプルヒーター(4)は制御されて温度上昇の全体比率が一定になる。サンプルが吸熱反応を示すとき、サンプルヒーター(4)の出力は温度比率を一定に維持するために増加される。
【0023】
実験データを分析するために、特に明記しない限り、下記の推定は下記の式と手順とで成り立つ。
・サンプルは均一な温度にある。
・容器内部の壁の温度は、全体の内部表面領域にわたって均一であり、内部表面温度と必ずしも同等でなくても容器外部の壁の温度も均一である。
【0024】
・反応容器の内壁の温度は常にバルク(bulk)液体の温度と等しい。
・サンプル容器の外壁での熱損失はゼロである。
・サンプル容器の壁の厚さは容器全体で一定である。
初期にサンプルヒーター(4)はサンプル(7)を加熱する。熱の一部は容器(1)壁に伝達され、ヒーターはサンプルと容器との双方を効果的に加熱する。容器がサンプルにより全体に加熱されるため、サンプルから容器への熱損失比率は以下の通り与えられる。
【0025】
dQL/dt=0.5MbCb(dTw/dt+dTs/dt) [2]
ここで、0.5(Tw+Ts)は平均容器温度である。従って、式[2]により与えられた比率でサンプルに熱を付加することは、実験の発熱部分時の壁の熱損失を補償する。
壁の熱損失を除く目標を果たすために、下記の実験要件が必要となる。
・前記推定は有効である。
【0026】
・容器の内壁及び外壁の温度の正確な測定が得られる。
・対流、放射、導電及び還流によるシステム(サンプル及び反応容器で構成される)からの熱損失が除かれる。
・サンプル容器を取り囲むガードヒーターは、容器の熱損失が除かれたり減少するときに観察される増加したサンプルの加熱速度を追跡することができる。
【0027】
・コンピュータ制御ヒーターはサンプルと良好に熱接触され、前記式により与えられた比率で電力を伝達することができる。
・良好な熱伝達はサンプルと容器との間に存在する。速い割合で熱を展開する液体サンプルに対し、これはサンプルの撹拌が必要であるという意味でもあり得る。
・良好な熱伝達は、ヒーターとサンプルとの間に存在し、これは迅速に熱を展開する液体サンプルのサンプル撹拌を必要とする。
【0028】
高い粘度の液体及び固体は、加熱速度が低く維持されるときにもまた測定され得る。固体微粒子材料及び高い粘度の液体は、ヒーターから材料に、そして材料からサンプル容器の内壁に熱伝達の割合を減少させる傾向がある。加熱速度はこのとき、システムを通じて適切な熱平衡を保障するために、必須的に低く維持されなければならない。
2.1 Φ要素制御
前記式2はサンプルヒーターからの熱の付加により補償される容器の質量割合を示す要素λにより変更されることができる。要素λは補償が発生しないゼロから容器の質量が完全に補償される1まで変化される。
【0029】
dQ/dt=0.5λMbCb(dTw/dt+dTs/dt) [3]
従って、前記式[1]により与えられた通り、1.0から容器の全体質量とサンプルの質量により設定される上部の限界まである所望のΦ要素でシステムに加えられた熱割合を制御することができる。
サンプル温度と外側容器壁温度とは発熱時に発散する傾向があるので、サンプル温度を示す正確な温度を選択することが重要である。熱損失補償がゼロであれば、従来のARC実験での通り、“サンプル”に使用するための適切な温度はこの時、外側壁温度である。前記温度は本来内側壁温度と同一でなければならない。実験に有効なΦが1.0より大きく熱損失補償されれば、この時用いられる温度はサンプル液体のまたは内側容器壁の温度である。
【0030】
実際に、サンプルと容器とは初期にサンプルヒーターを用いて一定の加熱速度で加熱される。熱損失は周囲温度の慎重な制御により防止される。温度走査中のどちらの地点で、サンプルは典型的に熱を展開し始める。ヒーター出力はこの時初期設定割合で加熱速度を制御するために十分に調節される(減少される)。従って、前記時間期間の間、サンプル及びサンプル容器に貯蔵される相当な熱は部分的にサンプルから及び部分的にヒーターから根ざす。ヒーター出力が容器の熱慣性を完全に補償するために要求されるレベルに達する時、式[3]により与えられた通り、システム温度割合は迅速になり、ヒーター出力は式[3]により制御される。
【0031】
より多い従来のARC方法を通して前記形態のテストを用いる長所は以下を含む:
・テストの遅いHWS部分が除去されるためテスト時間は非常に減縮される。(均衡のためのステップ及び待機は必要ではない。)
・データは1.0でどのような与えられた質量の容器にできる限り最大値まで変動するΦ要素で得られることができる。
【0032】
・反応熱は下記のセクション2.3で説明されるようなサンプルの熱容量に関係なく得られることができる。
・制御された方式で容器に超過熱を加えることができるので、熱的に不安定な材料を含む容器に火災加熱をシミュレートする。
・反応物の熱容量及び反応の結果は反応以前及び以後に公知された熱入力から測定されることができる。
【0033】
・発熱開始は初期の温度走査速度により低い温度で検出されることができる。
2.2 実験
DTBP溶液を用いた多数の実験が方法の効用を照明するために行われた。表1はテストを表に載せて結果を要約する。サンプルヒーターが容器の熱質量を補償するために用いられるテストの部分中に、容器の熱容量は温度の関数に推定され、下記の通り計算された(参照文献12):
チタニウム: Cp=0.10105+0.00006788.T
ステンレス鋼: Cp=0.07390+0.00011420.T
ハステロイ C: Cp=0.08681+0.00003000.T
ここで、温度Tは内側壁温度(サンプル温度と同一である)と外側壁温度との測定から得られる、ケルビン等級である、平均容器壁温度である。
【0034】
【表1】
【0035】
鋼鉄の相対的に小さい熱伝導率、前記方法は制御されたサンプルヒーターを用いるため、他の状態下で熱損失割合を合わせるよう定量化することができる。
温度変化転移時に伝導熱損失を最小化するために、部品の付着されるヒーターはサンプル容器の温度よりわずかに高い温度で作動される。温度上昇テストが施行される温度走査速度による。温度上昇の大きさは多数の温度割合でシステムを加熱し、サンプル容器で水を用いた従来の目盛り測定テストとして得られる。ヒーター温度上昇は公知された水質量の熱容量の正確な値が得られる時まで調節される。必要な温度上昇は最大上昇が10℃である条件により:
ΔT=a[dTw/dt]b
の式形態で表現され得ることが発見された。常数(a)及び指数(b)の値がある程度ステンレス鋼部品のサイズによるということも発見された。316ステンレス鋼の他にどんな他部品も用いられないが、前記値は部品構成の材料によるもので、また予想され得、これは熱容量及び熱伝導率に影響を及ぼすので、どんな与えられた加熱速度で部品の熱損失割合に影響を及ぼす。
【0036】
2.2.2 同一の質量容器を除外したところで他の温度走査速度でのテスト。
図4は6グラムチタニウム容器で、かつ0.5、1.0及び2.0℃/minで加熱された10%溶液を用いた3種のテストの温度‐時間プロファイルを示す。各温度‐時間図表の一番目そして最後の部分は一定の割合でサンプルと容器との強制された加熱を示す。システムを加熱するのに要求されるヒーターエネルギーが公知されているので、前記データから熱容量推定を抽出することができる。各図表の中央部はDTBPの発熱分解と関連された温度上昇である。テストの前記部分中に容器の熱質量は式[3]により与えられた割合でサンプルに熱を加えることにより完全に補償される。これは加熱速度のロガリズムが相互作用温度の関数として表示された図5に更に明確に示されている。予想される通り、自己‐発熱の最大割合及び発熱のピーク温度は初期の過熱段階中の強制された加熱速度が増加されるのに従って増加される。前記一連のテストの活性化エネルギーの平均値は36.4kcal/molである。これはVSP装置でRound Robinからの16回施行の平均が36.1±1.0kcal/molと記録されている参照文献(7)の値と有利に比較される。しかし、前記値はARCで実施されたテストから37.8±1.1kcal/molの値が示された参照文献(2)に記録されたものより少し低い。
【0037】
2.2.3 他の容器を除外したところで同一の温度走査速度でのテスト。
二番目一連のテストが質量の異なる容器を除外したところで同一の溶液を用いて施行された。実験に用いられた三つの容器で補償されていないΦ要素は1.26、1.54及び1.88であった。図6は割合が自己‐発熱割合及びサンプルの温度上昇から計算された分解に対する自己‐発熱速度及び第1次割合の図表である[参照文献(1)参照及び下記の“活性化エネルギー”下に論議される]。表1に乗せられた全てのテストでの第1次割合及び結果的な活性化エネルギーと以前‐指数要素が実験の容器補償フェイズ中に測定されたデータを用いて式[4]から計算された。
【0038】
K=(dT/dt)(Tf-T) [4]
三つのテストに対して計算された反応速度パラメーターは良好に一致し、参照文献に公開された値と類似する。明確に、サンプルヒーターは三つのテストに対して実際に同一の自己‐発熱割合図表により明示された通り、三つの異なる容器の質量を十分に補償した。二つのテストで、全体テスト時間を減少させるために、サンプルの初期加熱速度が増加されることを注目しなければならない。検出された発熱の開始前に、加熱速度は0.5℃/minの所望の温度走査速度に低下される。
【0039】
2.3 反応エネルギー及び電力
また図3を参照すれば、システムの単純な熱平衡は下記の式を提供する。
W+H=S+B [5]
ここで、Wはサンプルにより放出されたり吸収されたエネルギーであり、Hはヒーターによるエネルギー出力であり、Sはサンプルにおける感知可能なエネルギーであり、Bは容器における感知可能であるエネルギーである。前記式は容器とサンプルからのゼロエネルギー損失があることと仮定する。
【0040】
従って、サンプルから放出されたエネルギーは次のように与えられる。
W=S+B-H [6]
サンプル電力出力は次のように与えられる。
dW/dt=dS/dt+dB/dt-dH/dt [7]
又は
dW/dt=MsCs(dTs/dt)+0.5MbCb[(dTw/dt)+(dTs/dt)]-P [8]
ここで、Pはヒーターの電力出力である。テストが小さくて一定の加熱速度で施行される時、それは(dTs/dt)=(dTw/dt)と仮定されることができる。
【0041】
dW/dt=(MsCs+MbCb)・(dTw/dt)-P [9]
サンプルと容器の熱容量が公知されていれば、前記式は温度の関数によってサンプルからエネルギー及び電力出力の計算を可能にする。代わりに、発熱加熱がない場合、以前の実験でサンプル容器の熱容量が公知されていたり測定された場合、サンプルの熱容量はこの時の温度の関数として決定されることができる。サンプルと容器の熱容量双方が公知されていない時、結合熱容量はどんな発熱又は吸熱作用の以前及び以後に直接測定される。[(MsCs+MbCb)・(dTw/dt)]の量はサンプルヒーターからベースライン電力出力(P0)として測定され、与えられた温度走査速度でサンプル及びサンプル容器を加熱するために要求される電力である。式[9]は次のように再度記載されることができる:
dW/dt=P0-P [10]
サンプル加熱速度がベースライン割合及び(dTs/dt)>>(dTw/dt)を超過する場合、前記式はこの時次のように変更されることができる。
【0042】
dW/dt=[P0(dTs/dt)/(dT0/dt)]-0.5MbCb[(dTs/dt)-(dTw/dt)]-P [10a]
ここで、(dTs/dt)は測定されたサンプル加熱速度であり、(dT0/dt)はベースライン加熱速度である。式[10a]は(dTs/dt)=(dTw/dt)=(dT0/dt)である時、式[10]に減少される。言い換えれば、温度割合がテストを通して一定に維持された時である。反応熱、ΔHRはdW/dtの積分により与えられる。
【0043】
ΔW=∫(P0-P)dt=ΔHR [11]
実験の温度範囲にわたったサンプルの平均熱容量が公知される時、断熱温度上昇が測定され、反応熱がただ得られる従来のARC実験とは違って反応熱の測定を得るために、前記式はサンプルの熱容量の熟知が要求されないということを注目しなければならない。しかし、容器が式[3]を用いたテストの発熱部分中に熱的に補償される時、その後サンプル容器の熱容量の以前熟知はヒーター出力を正確に制御するために要求される。さらに、サンプル加熱速度が熱的補償により大きくなると、その後の状態(dTs/dt)=(dTw/dt)は特に容器壁厚さが大きい場合、もう以上真実ではない。サンプル電力出力はその後式[8]を用いて計算されなければならない。前記場合に対して、サンプル及び容器の熱容量は実験の非発熱加熱部から公知されたり得られる必要がある。
【0044】
2.4 活性化エネルギー
単純反応の反応速度は従来のARC実験に使われて参照文献(1)に述べられた方法と類似した方式で得られる。単一反応物によるn次反応で反応割合は
dC/dt=kCn [12]
どんな温度でも反応物の濃度がエネルギー変化と関連されることができるという推定により、
C/C0=(Wf-W)/ΔW [13]
式は測定されたエネルギー出力が反応速度に関連されるよう誘導されることができる。前記式で、Cはどんな温度での単一反応物の濃度、C0は初期濃度、Wfは反応に起因した最終エネルギー出力レベル、Wはどんな温度でのエネルギー出力、かつΔWは反応に起因した全体エネルギー出力である。前記式が時間に関して区別され、式[12]に置換される時、その後
dW/dt=k・C0n-1・[[(Wf-W)/ΔW]nΔW] [14]
そしてアレニウスの式を用いて:
k=Ae-(E/RT) [15]
ここでAは以前指数要素でありEは活性化エネルギー及びRはガス常数であり、式は次のように誘導される。
【0045】
In[(dW/dt)/[[(Wf-W)/ΔW]nΔW]]=InC0n-1A-E/RT [16]
従って、正確な次数(n)が反応で選択された場合、相互作用温度に対する式の左側の測定可能な量のロガリズムの表示は直線をもたらす。活性化エネルギー及び以前指数要素はそれぞれ傾斜及び切片から計算されることができる。
式[9]、[10]、[11]及び[16]の利用は加熱速度が一定の時の期間中に発熱結果の以前検出を許容する。また、反応からの熱出力は走査期間時に連続的に計算される。
【0046】
前記式の利用は下記の実験で説明される。トルエンでの5グラムの10%DTBP溶液が18グラムステンレス鋼反応容器で0.5℃/minで加熱される。約145℃でヒーターからの電力出力は加熱速度で容器の熱質量を完全に補償するために要求されることと同一である。前記温度から約203℃で発熱が完了されるまで、ヒーターの電力出力は1.0に設定される値λに式[3]により制御される。203℃でヒーター電力はPID制御アルゴリズムを用いた傾斜割合でシステムを加熱するために要求される電力に調節される。
【0047】
図7は時間の関数としてヒーター電力出力(dH/dt)及びサンプル電力出力(dW/dt)を示す。サンプル電力出力は下記の方法でヒーター出力曲線から誘導される。
直線ベースラインは図7に図示された通り、ヒーターからの電力が発熱後一定のレベルで増加される地点で電力出力上の下側偏差の開始からヒーター電力出力曲線上に図示される。前記ラインは実験上の走査速度で反応物及びサンプル容器を加熱するのに必要なヒーターからのベースライン電力出力を示す。ベースラインの式が発見され、P0に対して式[10a]に置換された。
【0048】
dW/dt=[(2.35+0.0006.t)・(dTs/dt)/Rs]-dH/dt-0.5MbCb[dTs/dt-dTw/dt] [17]
ここで、Rsは初期温度走査速度である。温度割合上昇dTs/dt、dTw/dt、及びヒーター電力出力(dH/dt)が実験を通して知られたので、サンプル電力出力、dW/dtは時間(又は温度)の関数として計算される。時間に対する前記曲線の積分はDTBP熱分解をもたらす。式[17]の式[16]への置換は分解反応で反応速度パラメーターの計算を許容する。図8は相互作用温度の関数としてヒーター電力出力、サンプル電力出力、サンプル温度割合及び圧力上昇割合の対数図表である。また、2つの図表は式[16]と用いて計算される第1次反応割合及び又は145℃以降の温度割合データと式[4]を用いて計算される同一温度常数を示すグラフに図示されている。割合が一定してどんな情報も抽出されることができないため、145℃以前の温度割合データを用いることが可能ではない。2つのラインは図表で分かり通り、同一の活性化エネルギーと以前指数要素を必須的に提供する。活性化エネルギーの平均値は36.88kcal/molと確認され、反応熱は367cal/g DTBPであった。
【0049】
発熱の開始はサンプル電力出力図表を用いて約108℃(図8を用いる軸目盛り上の-2.625)で容易に検出され得るということを注目しなければならない。これは走査テストであり、断熱熱量計を作動させる最も敏感な方式と思われるHWS方法を用いない事実にもかかわらず、前記温度は前記反応のための標準ARC検出限界より摂氏約7度低い。従って、本方法は標準ARC方法よりずいぶんもっと迅速であるばかりではなく、もっと敏感で、システムの熱容量の熟知無しに反応熱を提供し、テストが1.0のΦ要素で作動されることができるようにする。
【0050】
2.5 サンプルの外観比熱の計算
サンプルでのどんな自己‐発熱以前の、かつ発熱活動が終わった後のヒーター電力出力を用いて、サンプルの熱容量及び反応結果を測定することが可能である。初期に、ヒーター電力は与えられた温度走査速度で両サンプル及び容器を加熱するのに用いられる。システムがきちんと測定されて熱損失がゼロである場合、サンプル容器の比熱及び質量が知られれば、サンプルの比熱はこの時温度の関数として得られることができる。
【0051】
従って、式[9]から、かつサンプル電力出力(dW/dt)がゼロであることと仮定する。
P=(MsCs+MbCb)・(dTw/dt) [18]
C=[P/(dTw/dt)]-[MbCb])/Ms [19]
前記関数はソフトウェア制御により計算され、テスト中にグラフで表示され得る。図9は18グラムステンレス鋼容器で0.5℃/minで加熱されたDTBPサンプルから得られる典型的なテスト結果を示す。また、図表はサンプルが熱の放出を始めるのに従って、ヒーターからのエネルギー出力が減少することを示す。システムの熱容量はサンプルが熱的に活動的である時、決定され得ない。また、前記関数は最上部ヒーターの温度に非常に敏感なことと確認された。最上部ヒーターはサンプル容器が付着される高圧部品を加熱するのに用いられる。従って、特にサンプル質量が小さく、サンプル容器質量が相対的に大きい場合、部品の非常に小さい熱損失は比熱の測定された値に影響を与えることができる。前記図9での発熱前に、ラインの傾斜からサンプルの平均比熱は0.505cal/g℃に決定される。
【0052】
2.6 吸熱材料
吸熱は、サンプルヒーターおよび固定温度走査モードやヒーターからの固定電力出力を用いて容易に定量化される。テストは両吸熱状態を示すサンプル及び固体材料に用いられる方法を説明するため硝酸アンモニウムサンプルで行われた。硝酸アンモニウムは周りの温度と約170℃間で4つの個別吸熱を示す。約170℃以上で硝酸アンモニウムは激しく分解される。前記テストはサンプルの相対的に大きいサイズため、前記のイベント前に終了される。
【0053】
4グラムの硝酸アンモニウムは10.6グラムステンレススチル容器で加熱され、サンプルヒーターから50mWの一定の電力出力を用いて加熱される。選ばれた電力レベルは、約0.2℃/minでサンプルを加熱するのに充分である。サンプルが固体、微粒子材料であるため、少し小さい比率はサンプルと容器にかけて、特に等温状態を維持する間ヒーターからサンプルへの適当な熱伝達比率を確実にするのに用いられる。図10は、時間の関数としてのサンプル温度およびサンプル電力を示す。図面は37℃、86℃、126℃および約150℃で開始する固体溶解の4つの吸熱を明確に示す。図11は、サンプル温度の関数としてのサンプル電力及びエネルギー、かつ温度の関数としての明らかなサンプル熱容量を示す。しかし、吸熱結果時、サンプルの熱容量は明確でない。熱容量は上述した通り、ヒーター電力出力およびステンレススチル容器の公知された質量及び熱容量から決定される。溶解熱は168℃で18.1cal/gで測定され、これは公開された値[10]と良好に一致する。
【0054】
2.7 分解熱
容器補償方法を用いたDTBP上の全ての作動テストで、測定された分解熱は約DTBP340および360cal/gの間にある。Tou and whiting [2]には、実験に使用される質量と容器のタイプに応じて約230〜335cal/gまでの範囲にあると値を記載する。Ming-Huei Yue [8]には、EAC装置で平均値331cal/gを記載した反面に、Leung、Fauske and Fisher [5]には、VSP装置で測定された290cal/g値を記載する。Round robin テストから平均値335cal/gが[11]に記載されている。従って、前記作業に確認された値は7-8%程度高く示す。いくつかの可変性は反応の温度範囲にわたって反応物及び結果物の熱容量の不正確な熟知に属するものであると考えられることができる。しかし、前記作業でサンプル容器がARCに取り付けられたスチル部品は、動的な状態下でのサンプルよりさらに冷たいことも確認された。温度差異の大きさはセクション2.2.1に叙述された通り、温度上昇の比率により変化する。従って、標準作動の状態下で標準ARCで発熱活動を遂行するサンプルは、発熱の過程にわたって変化する比率で若干の熱を損失すると予想されることであろう。始める時及び発熱の末尾に温度上昇の比率が必然的にゼロであるとき、目盛りが刻まれた機械装置で“ドリフト”比率はゼロとなるため、損失は明らかではないことであろう。変化する熱損失の比率は測定された自己-発熱比率データから計算される反応速度パラメーターにも影響を及ぼすだろう。
【0055】
結果をチェックし、DTBPの分解熱値に付加的な確信を与えるため、テストは過酸化水素の分解に対して実施された。前記材料の分解は反応容器壁の状態により影響を受けるので、密閉された金属容器で良好な反応速度を得ることは難しい。しかし、最終状態は影響を受けず、分解の結果物が知られ、反応の完了が圧力測定により抑制されることができるため、分解熱は反応物と結果物の形成熱の熟知から予め得られることができる。従って、
H2O2→H2O+1/2O2 ΔHr=689.3cal/g
H2O2の10%溶液の3グラムは0.23グラムの重さを有する小さい磁気撹拌バー(bar)を有する9.7グラムのステンレススチル管状反応器に用いられた。サンプル及び容器は0.5C/minで加熱された。図12は、時間の関数であって、ヒーター電力を示す。図面に示したベースラインの電力出力は式[10]を用いて計算される時間の関数であって、サンプル電力出力を可能にする。図12にも示したサンプル電力出力曲線の積分は696cal/gとしての過酸化水素の分解熱を提供する。前記図面は予想される過酸化水素の予想された分解熱の1%内である。
【0056】
2.8 容器熱質量の補償限界
サンプルヒーターを用いた反応容器の熱質量の補償能力は多数の要素による。主要限界はヒーターからサンプルへのエネルギーの伝達能力及びサンプル容器への熱の均等な分配である。加熱速度が分当たり何十度以上を超過する時、サンプルの撹拌は必須的である。エネルギーの比率が非常に高いと、サンプルヒーターの表面温度は相当の量でサンプルの温度を超過することもできるため、おそらくヒーターの表面で反応比率を上昇させる。150℃/min程度高いサンプル温度の比率は前記作業で観察された。サンプルヒーターから利用可能な最大電力は約80cal/minであるので、成功的に補償されることができる容器の質量を制限する。標準10ml、軽量の(〜6.0g)チタニウムARC容器は、例えばほぼ100℃/minの最大のサンプル加熱速度で完全に補償される。反面、非常に小さい、単に2.5g重さのステンレススチル容器は約260℃/minで完全に補償されることができる。図13は2.0℃/minで傾斜し、その質量の60%が補償された10.6gステンレススチル容器での16.7%DTBP溶液によるテスト結果を示す。加熱速度が100℃/minを超過し、ピークヒーターの電力が約80cal/minのその最大出力に達することが分かる。また、温度の関数としての明白なサンプル比熱は、発熱活動が発生する地点にあると示す。前記テストの活性化エネルギーは36.62kcal/molであると判明された。
【0057】
3.一定の熱比率での走査断熱テスト
断熱テストを実施するための代案的な方法は上述した方法から始める。サンプル容器がサンプルに比べて非常に大きい質量である時、容器はこの時走査速度のものを超える容器の温度比率なしに温度走査時に全ての反応熱を吸収する充分な熱容量を有することができる。この場合に、サンプルヒーターは発熱および吸熱行程を通し、走査速度でシステム(容器を加えるサンプルで構成される)の加熱速度を制御するのに用いられる。限界はサンプル容器材料の熱伝導率に関して発生する。伝導率が小さくて容器の壁の厚さが大きすぎると、反応熱は充分に迅速な比率で容器に分散されることができず、サンプルと容器はもう以上熱平衡にあるものであると考慮できない。
【0058】
3.1 論議
実験の従来ARCタイプにおいて、サンプルの温度比率は発熱が継続されることによって連続的に増加する。磁気-発熱の比率が反応比率に比例するため、反応速度が測定された温度比率から誘導されることができる。式[10]、[11]及び[16]を用いて、断熱テストを行う異なる方法が今後可能である。サンプルとサンプルの容器で構成されたシステムの加熱速度が、サンプルヒーターの電力出力を調節することによって一定の比率で制御される。発熱が比率で加速化されることにより、システムの加熱速度を一定に維持するためヒーターの出力が減少される。従って、ヒーター出力の変化比率は、ARCでのように温度変化の比率でない効果的に反応比率の新たな測定になる。前記方法での温度比率は一定であるので、どのような反応速度の情報も温度比率を用いて抽出されることができない。テストの前記タイプで、サンプル容器は温度上昇の一定の比率を増加させることなく反応熱を吸収するのに充分に厚くなければならない。前記テストモードから発生するいくつかの長所は次を含む:
・ガードヒーターのための電力要求は分当たり何度と似ている与えられる走査速度で温度を追跡することにのみ要求されるため相当に小さい。従来のARCでのガードヒーターは、一方では約15℃/minの磁気-発熱比率を追跡するのに要求され、Φ要素が1.0に近接したAPTACでヒーターは、サンプルの加熱速度を約400/℃minまで追跡できる。
【0059】
・厚いサンプル容器の要求は圧力の観点で有利する。特に走査温度が相対的に小さく維持される場合、高圧要求は今後非常に容易に満足されることができる。
・前記方法は制御較正およびサンプルの熱電対での小さい不正確度にあまり敏感でない。
・テストはARCより相当にさらに短い時間、期間で完了される。
【0060】
・両参照サンプルとテストのサンプルが同一の断熱環境で同一の比率で加熱されることができるため、本方法は、また差動モードでテストを行うための能力を提供する。感度における実質的な向上を差動モードで行うことによりなる。
前記方法は壁の加熱を通して対向するような容器の内部からサンプルと容器とが加熱される点で標準DSC方法と異なる。また、サンプル容器および参照容器が断熱的であり、サンプルの圧力が容易に測定され、テストを通したサンプルの撹拌が可能である。差動モードの自体は多数の長所を提供し、特にサンプル容器の熱容量を“ゼロ-アウト”させ、システムでの小さい熱損失の影響を否定する能力である。
【0061】
特にサンプルの容器は通常的に熱の伝導性が小さいステンレススチル又は類似した合金で構成されているので、厚い壁の容器は内部から外側壁への熱の伝導が遅い短所を有する。高伝導の材料はさらに高い温度でそれらの強度不足、それらの費用(高価金属の場合)またはそれらの化学的反応のため一般的に不適合である。前記短所を克服するため、ステンレススチル等の材料で薄い壁の容器は図14に例示された通り、銅等の高伝導性材料のスリーブと共に用いられることができる。この場合に、銅はサンプルヒーターにより外側から必ず加熱されず、装置の作動は全ての異なる様相において上述したものと同一である。
【0062】
前記タイプのサンプル容器の長所は、さらに高い温度の走査速度が熱伝導性を含むことなく用いられることができ、サンプルヒーターがサンプル容器内に挿入されるように要求されないため、サンプル容器があまり高くなく、処分可能であることである。
3.2一定の温度走査テストでのΦ要素
前記タイプのテストでのΦ要素は、容器により吸収されるエネルギーが2つの供給源、反応のサンプル熱及びヒーターから変化する出力を有するため目的を有しない。従って、サンプルに関連する効果的な容器の熱質量はサンプルヒーターの出力が変化することによって変化する。サンプル容器の熱容量が公知されており、ヒーターからの電力出力が公知されているため、サンプル温度によるΦ要素の変化は望む通り計算されることができる。
【0063】
3.3 実験
多数のテストが図14に示した構成及び、またほぼ71グラム重さの厚い壁のハステロイC容器を有する図3に示した構成を用いて行われた。トルエンの16.7%DTBP溶液は前記厚いハステロイC容器で多数の異なる比率で加熱された。温度比率がヒーター電力を調節することによって一定の比率で制御された。各テストから反応熱を得るため式[11]、また活性化エネルギー及び前指数要素を得るため式[16]を用いてデータが分析された。図15は、サンプル温度の関数として蓄積された吸熱エネルギー出力およびヒーターの電力出力を示す。テストグループの結果が表2に要約された。平均反応熱がセクション2に叙述された通り、容器補償の方法により分かることになる値より約6.0%高いDTBP 379.0cal/gであることが分かることになった。前記方法は反応熱を得るためサンプルの熱容量または容器の熱容量の熟知を要求しないことを注目しなければならない。式[3]で要素、λの値はゼロで設定され、どのような容器の熱質量の補償も発生しない。
【0064】
図16は、図表に示した各4つテストのサンプル温度と反対関数であって、第1次反応比率常数およびヒーター電力を示す。第1次比率常数が式[16]を用いて計算され、線の傾斜が活性化エネルギーおよび前指数要素を提供した。4つのテストでの平均活性化エネルギーは37.20kcal/molであり、これは容器補償方法で分かることになった平均値より約1.2%大きい(表1参照)。
【0065】
また、テストが厚い、ハステロイC反応容器で6.2%過酸化水素溶液の3グラムサンプルで行われた。図17は、時間関数としてのヒーター電力出力、サンプルの電力出力およびサンプルのエネルギー出力を示す。分解測定熱が700cal/g H2O2であることが分かり、これは689.3cal/gの理論値より約1.5%大きい。測定された値は酸素および水を形成する過酸化水素の分解により発生される圧力の分析により確証される。図18は、サンプル温度の関数であって、反応容器での圧力を示す。100℃で圧力は1420KPaである。酸素がその温度で、水で不溶性なこと及び反応容器でのヘッド空間が6.42mlsであることを推定したとき、これは前記1438.9KPaの計算された圧力と相当によく当てはまるので、過酸化水素サンプルの完全な分解を確実にする。
【0066】
【表2】
【0067】
多数の追加的な特徴は選択的に向上された熱量計に提供されることができる。これらは周りの温度以下の温度で熱量計走査を開始するための手段を含む。どのような通常的な冷却手段も選択された周り下の温度で、サンプル、容器および関係される装備を成すのに潜在的に用いられることができる。その後、サンプルの施行は周り以上の温度で走査に対して叙述された通り必須的に行われる。冷却手段は他のもののうち、通常的な冷蔵または冷凍ユニット、例えば液体窒素または異なる液化または凝固ガス(例えば二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、または他の適当なガス)から前記装置を通し、冷たいガスを通過させたり、または冷たい環境でユニットを簡単に作動させるための(冷蔵庫または冷凍庫で歩く)装置である。前記装置で水の凝縮を防止しながら、恐らく乾燥ガスの雰囲気で保護板を必要とすることが考慮される。どのような温度も理論上有用する。実際の問題として、液体窒素の沸騰点以上の開始温度は約190度Kであることが好ましく、大部分の化学的性質はさらに高い温度で発生することであろう。
【0068】
他の選択はサンプルの撹拌であり、これは液体であるか、またはいくつかの場合に微細であり、また好ましくは非凝集の粉末で存在するサンプルに特に有用する。容器内部及び駆動磁石の外側の撹拌磁石による磁気撹拌機は商業的装置に用いられて来た。機械撹拌機も容器の首の部分を通した接近が制限されても可能である。
異なる選択は熱の分析時にサンプルにより生成される圧力の測定である。これは現在、いくつかの商業的熱量計で行われる。容器は、例えば周期的に作動時に、または狭い温度範囲にわたって作動の全てに対してシーリングされることができ、容器内部の圧力は圧力トランスデューサ又は他のセンサーにより測定される。広い圧力範囲にわたって容器のシーリングを許容する代案は加圧可能コンテナの内部にインクロージャーおよび容器を配置し、その後容器内部で得られる圧力の均衡を合わせるため外部圧力を適用することである。前記手続きは現在用いられ、本発明の熱量計に用いられることができ、サンプルから少ない熱を吸収する薄い壁の容器を用いることにする。
【0069】
サンプルのサイズは本発明の重大な様相ではない。サンプルが量に限定されず、強い発熱または分解を有しないとき、1〜5グラムの範囲が適当である。非常に微妙な発熱または吸熱が正確に測定されないと、さらに大きいサンプルが必要でない。要求される感度および精度に応じて100mg程度で小さいサンプルが用いられることができる。容器でのサンプルの大きさに従って調節されることである。典型的な容器の容積は約1cc〜20ccの範囲にあるが、サンプルを受容するのに要求されたようにさらに大きかったり、又はさらに小さい場合がある。
【0070】
しかも、広い範囲の加熱速度が可能である。上部の比率は1500cal/minまたは約100Wの範囲であり得るが、下部の比率は感度および安定性の限界の下で用いられる。これらは分当たり約0.0001calまたは約5〜7のμW程度で低いことができる。加熱速度の前記広い範囲にわたる測定能力は本発明の長所であり、異なるシステムでは見ることができない。
どのような温度の測定方法も用いられることができる。好ましい方法は熱電対、典型的にN型熱電対の利用である。特に、約100deg.C下でサーミスタが用いられることができる。
【0071】
本発明は図3に例示された通り、容器内部のサンプルヒーターを有することに関して叙述されてきた。多くの例で、これは好ましいモードである。しかし、異なる場合においてサンプルヒーターの側部は容器の壁の内部または容器と熱接触する高熱伝導性材料または熱シンクの壁の内部であることができ、かつ本発明の全ての利益を提供する。また、例示されていないが、かつあまり好ましくないが、サンプルヒーターは容器の外側上に設けられることができる。これは加熱の速度が一定するとき、特によく調整された容器により、類似した結果を提供するが、発熱、特に“runaway”の発熱を追跡するのに用いることはさらに難しい。
【0072】
結論
熱イベントを定量化するためサンプルヒーターを用いた断熱熱量計のデータを得るため向上された方法が発展されてきた。本方法は1〜5グラムの等級のサンプルサイズを用いて、圧力がまた日常的に測定される。結果に関する反応容器の質量効果は動的熱の補償により否認されることができるため、テストでの効果的なΦ要素は1.0であり得る。吸熱結果を含むサンプルからの熱の効果はサンプルの比熱に関係なしに定量化される。サンプルおよび反応容器は一定の温度比率で加熱されることができ、従ってHeat-Wait-Searchの方法を用いた通常的な断熱熱量計にわたって劇的にテストの時間を減らす。サンプルの固有熱はどのような熱的結果の以前に測定されることができる。発熱の検出感度は検出感度が温度の走査速度に依存するが、最小限HWSの方法を採用した現存する断熱熱量計と同様である。
【0073】
本発明は、本発明を成し、利用方法を説明するように提供された特定の実施例および例で叙述されてきた。多くの変化および均等物は当業者に明白であり、本発明は叙述及び例の範囲により限定されるのではなく、請求項の範囲により限定される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来のARC機械でモデル物質(DTBP;ジ-tert-ブチル-パラクサイド)によるテストを示す。
【図2】従来のARC機械でモデル物質(DTBP;ジ-tert-ブチル-パラクサイド)によるテストを示す。
【図3】本発明の向上した熱量計の概略図である。
【図4】新たな装置に関するDTBPの図表を示す。
【図5】新たな装置に関するDTBPの図表を示す。
【図6】新たな装置に関するDTBPの図表を示す。
【図7】モデル物質に対して本発明の装置による他のタイプの図表を示す。
【図8】モデル物質に対して本発明の装置による他のタイプの図表を示す。
【図9】発熱中のサンプルヒーターの出力を示す。
【図10】物質での多重吸熱の検出を示す。
【図11】各硝酸アンモニウム及び過酸化水素の走査時に多重発熱及び吸熱を示す。
【図12】各硝酸アンモニウム及び過酸化水素の走査時に多重発熱及び吸熱を示す。
【図13】1.0以外のΦでの補償を示す。
【図14】高い発熱サンプルによる利用のために余分の質量を提供するヒートシンクを有する変更された容器を示す。
【図15】多様な加熱速度で図14のヒートシンクによるDTBPの発熱測定を示す。
【図16】多様な加熱速度で図14のヒートシンクによるDTBPの発熱測定を示す。
【図17】過酸化水素による発熱測定を示し、圧力測定を示す。
【図18】過酸化水素による発熱測定を示し、圧力測定を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル(7)のための内部空間を有する容器(加圧可能な反応容器)(1);
前記容器(1)を囲む外部絶縁壁(2);
前記壁(2)の内部に、及び前記容器(1)外部の一つ以上のカードヒーター(3)であって、一つ以上の結合熱電対(図示されていない)を有する前記ガードヒーター又はヒーター;
前記容器(1)の壁内部に又は上に又は内に又は結合ヒートシンク(11)の壁内部に又は上に又は内にあり、サンプル(7)と熱接触するサンプルヒーター(4);
前記容器(1)外側及び前記壁(2)内側にあり、前記容器(1)の外面(8)と熱接触する第1熱電対(6);
前記容器(1)内側に延長され、サンプル(7)と熱接触する選択的第2熱電対(5);及び
前記絶縁壁(2)外部にあり、第1及び第2熱電対及びガードヒーター熱電対の出力を受信し、サンプルヒーター及び一つ以上のガードヒーターの出力を制御する結合制御器を含むことを特徴とする走査断熱熱量計。
【請求項2】
前記容器(1)を囲むヒートシンク(11)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項3】
前記制御器は、汎用のプログラム可能コンピュータ及び専用マイクロプロセッサのうち、一つ又は両者を含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項4】
熱量計走査の開示前にサンプルと容器を注意以下の温度に冷却させる手段を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項5】
前記走査の開示温度は、190度ケルビンほど低くなり得ることを特徴とする請求項5に記載の走査断熱熱量計。
【請求項6】
前記サンプルを攪拌するための手段を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項7】
前記サンプルを加圧するための手段、及び前記制御器と機能的に接続された圧力センサーを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項8】
外部絶縁壁、ガードヒーター及び制御器を共有する多重容器であって、前記各容器が少なくともサンプルヒーター、及び前記容器の温度を記載する熱電対を有する多重容器を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項9】
前記サンプルヒーターは、ヒートシンク内に又はヒートシンクの表面上に位置することを特徴とする請求項2に記載の走査断熱熱量計。
【請求項10】
断熱走査熱量計に用いられ、発熱反応を遂行するサンプルの熱的性質の測定から容器質量の影響を除去する方法において:
a)容器にサンプルを位置させる段階;
b)サンプルヒーターの電力出力を調節することによって、温度増加の所定の比率でサンプルを加熱する段階;
c)前記サンプルから容器への熱損失の比率を計算する段階;
d)サンプル容器への熱損失の比率と同等になるようにサンプルヒーターの電力出力を調節する段階;
e)前記熱損失を容器の外面から防止するために一つ以上のガードヒーターで電力入力を調節する段階;及び
f)限定された量によってサンプル温度を増加させるためにサンプルによって吸収される実際の熱量を計算する段階を含むことを特徴とするサンプルの熱的性質の測定から容器質量の影響を除去する方法。
【請求項11】
請求項10の方法を含み、サンプル発熱又は吸熱のない温度範囲でサンプルの熱容量を計算する方法において;
f)前記容器の熱容量を確立する段階;
g)前記容器の温度を上昇させるためにサンプルヒーターによって用いられたエネルギー量を計算する段階;
h)前記サンプルによって吸収される熱エネルギーを発見するために供給される全体エネルギーから前記容器を加熱するのに用いられるエネルギーを減算する段階;及び
i)前記サンプルの熱容量を得るために前記サンプルによって吸収される熱を、サンプル質量で分ける段階を更に含むことを特徴とするサンプルの熱容量を計算する方法。
【請求項12】
断熱走査熱量計に用いられ、一定の範囲で発熱及び吸熱の不在を示す前記範囲の温度でサンプルの熱容量を決定する方法において;
a)容器の熱容量を確立する段階;
b)前記容器にサンプルを位置させる段階;
c)サンプルヒーターを用いて一定した比率でサンプルを加熱する段階;
d)一つ以上のガードヒーターを用いて前記容器から熱損失を防止する段階;
e)前記容器の温度を上昇するために前記サンプルヒーターにより用いられるエネルギー量を計算する段階;
f)前記サンプルによって吸収される熱エネルギーを発見するために供給される全体エネルギーから前記容器を加熱するのに用いられるエネルギーを減算する段階;及び
g)前記熱容量を得るため、前記サンプルによって吸収される熱をサンプル質量で分ける段階を含むことを特徴とする一定の範囲の温度でサンプルの熱容量を決定する方法。
【請求項13】
請求項10の方法を含み、吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法において:
f)容器内で本質的な等温状態を維持するため、充分遅い温度上昇比率を選択する段階;
g)所定の温度比率を維持するため、サンプルヒーターに対する電力を増加させる段階;及び
h)前記吸熱の開示前にサンプルヒーターによって印加された電力に対するサンプルヒーター電力出力での増加の差で前記吸熱を計算する段階を更に含むことを特徴とする吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項14】
断熱走査熱量計に用いられ、吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法において:
a)容器にサンプルを位置させる段階;
b)適用された電力の一定した比率で前記容器内で本質的な等温状態を維持するため、充分遅く選択された前記比率でサンプルヒーターを用いてサンプルを加熱する段階;
c)一つ以上のガードヒーターを用いて前記容器の外面から熱損失を防止する段階;及び
d)サンプルと容器の温度減少比率及びサンプル容器の公知された熱容量と質量及び、サンプルヒーターによってサンプルに適用される公知された電力で測定された変化から前記吸熱を計算する段階を含むことを特徴とする吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項15】
断熱走査熱量計に用いられ、発熱中にサンプルによって放出されるエネルギー量を決定する方法において:
a)容器にサンプルを位置させる段階;
b)温度増加の一定した比率で、前記容器内で必須的な等温状態を維持するために充分遅く選択された前記比率でサンプルヒーターを用いてサンプルを加熱する段階;
c)一つ以上のガードヒーターを用いて、前記容器の外面から熱損失を防止する段階;
d)温度上昇の予め選択された比率を維持するため、サンプルヒーターに対する電力を減少させる段階;及び
e)前記サンプルの熱容量が一定の量で残っている場合、サンプルの前記温度上昇比率を維持するために必要な電力に対する温度上昇の選択された比率を維持するために必要な電力の差で、前記発熱を計算する段階を含むことを特徴とする発熱中にサンプルによって放出されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項16】
断熱走査熱量計に用いられ、化学的又は物理的変化中に多重サンプルによって放出されたり吸収されるエネルギー量を決定する方法において:
a)サンプル容器にサンプルを位置させる段階;
b)温度増加の一定した比率で、前記容器内で本質的な等温状態を維持するために充分遅く選択された比率でサンプルヒーターを用いて前記サンプルを加熱する段階;
c)一つ以上のガードヒーターを用いて容器の外面から熱損失を防止する段階;
d)サンプル内で温度上昇の予め選択された比率を維持するためにサンプルヒーターに対する電力を減少させる段階;及び
e)前記サンプルの熱容量が一定の量で残っている場合、サンプルの前記温度上昇比率を維持するために必要な電力に対する温度上昇の選択された比率を維持するために必要な電力の差で、前記発熱を計算する段階を含むことを特徴とする多重サンプルによって放出されたり吸収されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項1】
サンプル(7)のための内部空間を有する容器(加圧可能な反応容器)(1);
前記容器(1)を囲む外部絶縁壁(2);
前記壁(2)の内部に、及び前記容器(1)外部の一つ以上のカードヒーター(3)であって、一つ以上の結合熱電対(図示されていない)を有する前記ガードヒーター又はヒーター;
前記容器(1)の壁内部に又は上に又は内に又は結合ヒートシンク(11)の壁内部に又は上に又は内にあり、サンプル(7)と熱接触するサンプルヒーター(4);
前記容器(1)外側及び前記壁(2)内側にあり、前記容器(1)の外面(8)と熱接触する第1熱電対(6);
前記容器(1)内側に延長され、サンプル(7)と熱接触する選択的第2熱電対(5);及び
前記絶縁壁(2)外部にあり、第1及び第2熱電対及びガードヒーター熱電対の出力を受信し、サンプルヒーター及び一つ以上のガードヒーターの出力を制御する結合制御器を含むことを特徴とする走査断熱熱量計。
【請求項2】
前記容器(1)を囲むヒートシンク(11)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項3】
前記制御器は、汎用のプログラム可能コンピュータ及び専用マイクロプロセッサのうち、一つ又は両者を含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項4】
熱量計走査の開示前にサンプルと容器を注意以下の温度に冷却させる手段を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項5】
前記走査の開示温度は、190度ケルビンほど低くなり得ることを特徴とする請求項5に記載の走査断熱熱量計。
【請求項6】
前記サンプルを攪拌するための手段を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項7】
前記サンプルを加圧するための手段、及び前記制御器と機能的に接続された圧力センサーを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項8】
外部絶縁壁、ガードヒーター及び制御器を共有する多重容器であって、前記各容器が少なくともサンプルヒーター、及び前記容器の温度を記載する熱電対を有する多重容器を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の走査断熱熱量計。
【請求項9】
前記サンプルヒーターは、ヒートシンク内に又はヒートシンクの表面上に位置することを特徴とする請求項2に記載の走査断熱熱量計。
【請求項10】
断熱走査熱量計に用いられ、発熱反応を遂行するサンプルの熱的性質の測定から容器質量の影響を除去する方法において:
a)容器にサンプルを位置させる段階;
b)サンプルヒーターの電力出力を調節することによって、温度増加の所定の比率でサンプルを加熱する段階;
c)前記サンプルから容器への熱損失の比率を計算する段階;
d)サンプル容器への熱損失の比率と同等になるようにサンプルヒーターの電力出力を調節する段階;
e)前記熱損失を容器の外面から防止するために一つ以上のガードヒーターで電力入力を調節する段階;及び
f)限定された量によってサンプル温度を増加させるためにサンプルによって吸収される実際の熱量を計算する段階を含むことを特徴とするサンプルの熱的性質の測定から容器質量の影響を除去する方法。
【請求項11】
請求項10の方法を含み、サンプル発熱又は吸熱のない温度範囲でサンプルの熱容量を計算する方法において;
f)前記容器の熱容量を確立する段階;
g)前記容器の温度を上昇させるためにサンプルヒーターによって用いられたエネルギー量を計算する段階;
h)前記サンプルによって吸収される熱エネルギーを発見するために供給される全体エネルギーから前記容器を加熱するのに用いられるエネルギーを減算する段階;及び
i)前記サンプルの熱容量を得るために前記サンプルによって吸収される熱を、サンプル質量で分ける段階を更に含むことを特徴とするサンプルの熱容量を計算する方法。
【請求項12】
断熱走査熱量計に用いられ、一定の範囲で発熱及び吸熱の不在を示す前記範囲の温度でサンプルの熱容量を決定する方法において;
a)容器の熱容量を確立する段階;
b)前記容器にサンプルを位置させる段階;
c)サンプルヒーターを用いて一定した比率でサンプルを加熱する段階;
d)一つ以上のガードヒーターを用いて前記容器から熱損失を防止する段階;
e)前記容器の温度を上昇するために前記サンプルヒーターにより用いられるエネルギー量を計算する段階;
f)前記サンプルによって吸収される熱エネルギーを発見するために供給される全体エネルギーから前記容器を加熱するのに用いられるエネルギーを減算する段階;及び
g)前記熱容量を得るため、前記サンプルによって吸収される熱をサンプル質量で分ける段階を含むことを特徴とする一定の範囲の温度でサンプルの熱容量を決定する方法。
【請求項13】
請求項10の方法を含み、吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法において:
f)容器内で本質的な等温状態を維持するため、充分遅い温度上昇比率を選択する段階;
g)所定の温度比率を維持するため、サンプルヒーターに対する電力を増加させる段階;及び
h)前記吸熱の開示前にサンプルヒーターによって印加された電力に対するサンプルヒーター電力出力での増加の差で前記吸熱を計算する段階を更に含むことを特徴とする吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項14】
断熱走査熱量計に用いられ、吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法において:
a)容器にサンプルを位置させる段階;
b)適用された電力の一定した比率で前記容器内で本質的な等温状態を維持するため、充分遅く選択された前記比率でサンプルヒーターを用いてサンプルを加熱する段階;
c)一つ以上のガードヒーターを用いて前記容器の外面から熱損失を防止する段階;及び
d)サンプルと容器の温度減少比率及びサンプル容器の公知された熱容量と質量及び、サンプルヒーターによってサンプルに適用される公知された電力で測定された変化から前記吸熱を計算する段階を含むことを特徴とする吸熱中にサンプルによって吸収されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項15】
断熱走査熱量計に用いられ、発熱中にサンプルによって放出されるエネルギー量を決定する方法において:
a)容器にサンプルを位置させる段階;
b)温度増加の一定した比率で、前記容器内で必須的な等温状態を維持するために充分遅く選択された前記比率でサンプルヒーターを用いてサンプルを加熱する段階;
c)一つ以上のガードヒーターを用いて、前記容器の外面から熱損失を防止する段階;
d)温度上昇の予め選択された比率を維持するため、サンプルヒーターに対する電力を減少させる段階;及び
e)前記サンプルの熱容量が一定の量で残っている場合、サンプルの前記温度上昇比率を維持するために必要な電力に対する温度上昇の選択された比率を維持するために必要な電力の差で、前記発熱を計算する段階を含むことを特徴とする発熱中にサンプルによって放出されるエネルギー量を決定する方法。
【請求項16】
断熱走査熱量計に用いられ、化学的又は物理的変化中に多重サンプルによって放出されたり吸収されるエネルギー量を決定する方法において:
a)サンプル容器にサンプルを位置させる段階;
b)温度増加の一定した比率で、前記容器内で本質的な等温状態を維持するために充分遅く選択された比率でサンプルヒーターを用いて前記サンプルを加熱する段階;
c)一つ以上のガードヒーターを用いて容器の外面から熱損失を防止する段階;
d)サンプル内で温度上昇の予め選択された比率を維持するためにサンプルヒーターに対する電力を減少させる段階;及び
e)前記サンプルの熱容量が一定の量で残っている場合、サンプルの前記温度上昇比率を維持するために必要な電力に対する温度上昇の選択された比率を維持するために必要な電力の差で、前記発熱を計算する段階を含むことを特徴とする多重サンプルによって放出されたり吸収されるエネルギー量を決定する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−528991(P2007−528991A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518976(P2006−518976)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/022451
【国際公開番号】WO2005/008203
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506004300)タイアックス エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/022451
【国際公開番号】WO2005/008203
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506004300)タイアックス エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】
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