説明

低熱膨張性の熱硬化性樹脂組成物および樹脂フィルム

【課題】低弾性率、高伸び性及び低熱膨張率を併せ持つことが可能な、低熱膨張係数の熱硬化性樹脂組成物及び樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合されてなる樹脂フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低弾性率、高伸び性、低熱膨張率を併せ持つことが可能な、低熱膨張性の熱硬化性樹脂組成物および樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや、携帯電話の普及に伴い、これらに用いられる電子部品には高密度化が求められている。このような状況下、プリント基板などにはこれまで以上の優れた信頼性が要求されている。特に、耐リフロー性に直接影響する耐熱性、低吸湿性及び低応力性、層間や実装時の接続信頼性に直接影響する低熱膨張性などの向上が求められている。
【0003】
従来、無機材料を用いることで優れた耐熱性、低吸湿性、低熱膨張率が実現されてきた。そして、より低価格においてこれらの特性を実現するために、有機材料を活かす方法が検討されてきた。このような方法として、例えば、シランカップリング剤等の表面処理剤を使用する。シランカップリング剤は加水分解性のアルコキシ基に有機官能基が結合した構造を持つ。そのため、アルコキシ基が無機材料の表面と反応し、有機官能基が有機ポリマーと反応する。これにより、無機成分と有機成分を結合させ、無機材料と有機ポリマーとの密着性を高める作用を果たす。
【0004】
また、無機材料と有機ポリマー界面の接着性のさらなる向上について検討されている。これらの接着性を向上させるために、例えば、通常のシランカップリング剤が有する有機官能基の種類や数を調整し有機ポリマーとの反応性を高める方法(例えば、特許文献1及び2)がある。しかし、有機ポリマーとの反応性を高くするだけでは界面に生じる残留応力等の低減は困難であった。
【0005】
界面の残留応力の低減も含めた改良方法としては、表面処理剤に長鎖のポリシロキサンを併用するものが開示されている(例えば、特許文献3及び4)。しかしながら、長鎖のポリシロキサンによって界面の接着性が低下するという問題点があった。これに対して、無機材料と反応するアルコキシル基及び有機ポリマーと反応する有機官能基を併せ持つ鎖状ポリシロキサンを無機材料の表面処理剤として用いることが開示いる(例えば、特許文献5)。しかしながら、このような鎖状ポリシロキサンでは鎖の長さに見合った界面の低応力化を実現するのは困難であった。
【0006】
無機材料と有機材料の界面の低応力性と接着性を両立する手段として、ガラス基材等の基材を用いたプリプレグにおいては、無機材料表面の水酸基と反応する官能基及び有機ポリマーと反応する有機官能基を各々1個以上有する予め3次元縮合反応させたシリコーン重合体を分散剤、基材の表面処理剤として利用することが効果的であることが知られている。(例えば、特許文献6〜8)。
【0007】
ところで、一般に、プリント配線板、金属張積層板、プリプレグ、封止材などの樹脂組成物としては室温においてリジットな特性を有するエポキシ樹脂やフェノール樹脂が使われている。このうち、封止材用の無機充填剤を高充填した樹脂組成物は極薄のフィルム形成などが不可能であるなど、他用途で使用することは不可能である。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂はリジットであるがゆえに無機充填剤を配合した場合、低熱膨張率は実現できる。しかし、これらに、低弾性率化及び高伸び性を付与することが難しい。低弾性率化及び高伸び性の付与のために、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などにエラストマなどを配合すると不具合、(例えば、低熱膨張性が損なわれる、吸水率が高くなるなど)が生ずる問題がある。そこで、半導体チップをはじめとする各種電子部品に有用な材料、すなわち、フィルム形成が可能で、基材によらずに樹脂自体で優れた低応力性と低熱膨張率を兼ね備えた新規な材料が待望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63-230729号公報
【特許文献2】特公昭62-40368号公報
【特許文献3】特開平3-62845号公報
【特許文献4】特開平3-287869号公報
【特許文献5】特開平1-204953号公報
【特許文献6】特開平10-121363号公報
【特許文献7】特開平11-60951号公報
【特許文献8】特開平11-106530号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は無機材料と有機材料のそれぞれの長所をもつ新規材料に関する。すなわち、本発明は、優れた耐熱性及び低吸湿性を実現するために多量の無機成分を含むことが可能であり、かつ、低弾性率、高伸び性、低熱膨張率の3特性を併せ持つことが可能な樹脂組成物および樹脂フィルムに関する。
【0010】
本発明は、具体的に、以下記載の各事項に関する。
【0011】
(1) 20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有してなる熱硬化性樹脂組成物。
【0012】
(2) 結合剤が熱硬化性シリコーン重合体を主成分とする(1)記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0013】
(3) 熱硬化性シリコーン重合体として熱硬化性シリコーンオイルを含有す(2)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0014】
(4) 熱硬化性シリコーン重合体として下記の一般式(I)で表される化合物を含有する(2)記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

【0015】
(式中、Rは一価の炭化水素基、Rは有機官能基、Rは一価の炭化水素基もしくはフェニル基、Rは一価の炭化水素基もしくは有機官能基を表し、複数個のRは同一でも異なってもよく、Rが複数個の場合は同一でも異なってもよく、Rが複数個の場合は同一でも異なってもよく、2個のRは同一でも異なってもよく、l、m、nは1以上の整数である。)
(5) 熱硬化性シリコーン重合体として、3次元架橋したシリコーン重合体であって、かつ無機充填剤表面の水酸基と反応する官能基及び熱硬化性官能基を各々1個以上有するシリコーン重合体を含有する(2)または(3)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0016】
(6) 結合剤成分中に無機充填剤の表面を改質する改質剤として3次元架橋したシリコーン重合体であって、熱硬化性官能基を持たないシリコーン重合体、もしくはシラン系、チタネート系又はアルミネート系のカップリング剤を含む(1)〜(5)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0017】
(7) 結合剤成分中に両末端シリル基変性エラストマを含む(1)〜(6)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0018】
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなる樹脂フィルム。
【0019】
(9) 20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合されてなる樹脂フィルム。
【0020】
(10) 20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合され、20℃での弾性率が10GPa以下である硬化物および樹脂フィルム。
【0021】
(11) 20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合され、硬化後の20℃での熱膨張係数が100ppm/K以下である硬化物および樹脂フィルム。
【0022】
(12) 20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有する組成物からなり、硬化後の20℃での弾性率が10GPa以下である硬化物および樹脂フィルム。
【0023】
(13) 20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有する組成物からなり、硬化後の熱膨張係数が100ppm/K以下である硬化物及び樹脂フィルム。
【0024】
本明細書に開示の内容は、日本国特許出願 2001−291635号(出願日:2001年9月25日)に包含された主題に関し、この出願に開示の内容を参照のため本明細書に組み込む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、多量の無機充填剤を含有してなる熱硬化性樹脂組成物を用いる。これによって、低弾性率、高伸び性、広い温度範囲での低熱膨張率を実現可能な樹脂フィルムを作成することを可能とする。このような樹脂フィルムは熱応力を低減し、緩和する部材として有用である。例えば、この樹脂フィルムを、半導体チップなどを搭載する樹脂材料として用いた場合、半導体チップの熱膨張率と樹脂材料の熱膨張率の差を小さくすることで熱応力を抑えることができる。さらには、高伸び性により熱応力を緩和することが可能であるため、リフロークラックを防ぐことができる。熱膨張率の調整は無機充填剤の配合量によって調整することができる。熱膨張率の差に起因する熱応力を効果的に抑えるためには、前記熱硬化性樹脂組成物は硬化後の引張り試験での伸びの値が1.0%以上であることが好ましい。
【0026】
(結合剤)
結合剤として、20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂が含まれる。但し、本明細書では、「熱硬化性樹脂」とは硬化していない状態、すなわち、未硬化の状態のものを意味する。また、「貯蔵弾性率」及び「伸び」については、これらの熱硬化性樹脂が硬化した場合の貯蔵弾性率及び伸びを意味する。
【0027】
上記の熱硬化性樹脂の具体例としては、熱硬化性官能基を有するシリコーン重合体(以下、熱硬化性シリコーン重合体と記載する。)を主成分とする樹脂が挙げられる。なお、本発明において熱硬化性官能基とは、一般に熱硬化性樹脂が反応(硬化)する際に作用する官能基であり、すなわち、硬化剤又は架橋剤と反応する反応性有機基、自硬化反応する反応性有機基、無機充填剤の分散性、耐熱性向上のための有機基、水酸基と反応する基等である。熱硬化性官能基としては、例えばエポキシ基やアミノ基が例示される。
【0028】
(3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体)
前記熱硬化性シリコーン重合体として、3次元架橋しており、かつ無機充填剤表面の水酸基と反応する官能基及び熱硬化性官能基を各々1個以上有するシリコーン重合体(本発明において、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体と記載する。)を用いることができる。
【0029】
ここで、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は、一般式(II)
R′m(H)kSiX4-(m+k) (II)
(式中Xは、加水分解してOH基を生成する基であり、例えば、塩素、臭素等のハロゲン又は−ORを示し;Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルカルボニル基を示し;R′は、非反応性の基であり、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基等のアリール基;kは1又は2、mは0又は1;m+kは1又は2を意味する)で表される。これは、シラン化合物とヒドロシリル化反応剤とを反応させて得ることができるシリコーン重合体である。一般式(II)のシラン化合物は加水分解、重縮合によってSi−H基含有シリコーン重合体とされる。つぎに、ヒドロシリル化反応剤をSi−H基含有シリコーン重合体のSi−H基との間でヒドロシリル化反応させて、熱硬化性官能基が導入された3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体が得られる。
【0030】
一般式(II)のSi−H基含有シラン化合物に一般式(III)
R′nSiX4-n (III)
(式中R′及びXは一般式(II)に同じであり、nは0〜2の整数を意味する。)で表されるアルコキシシラン化合物を併用することができる。
【0031】
前記一般式(II)で表されるSi−H基含有シラン化合物としては、具体的には、
HCH3Si(OCH32、HC25Si(OCH32
3CH7Si(OCH32、HC49Si(OCH32
HCH3Si(OC252、HC25Si(OC252
HC37Si(OC252、HC49Si(OC252
HCH3Si(OC372、HC25Si(OC372
HC37Si(OC372、HC49Si(OC372
HCH3Si(OC492、HC25Si(OC492
HC37Si(OC492、HC49Si(OC492
等のアルキルジアルコキシシラン、
2Si(OCH32、H2Si(OC252
2Si(OC372、H2Si(OC492
等のジアルコキシシラン、
HPhSi(OCH32、HPhSi(OC252
HPhSi(OC372、HPhSi(OC492
(ただし、Phはフェニル基を示す。以下同様)
等のフェニルジアルコキシシラン、
2Si(OCH32、H2Si(OC252
2Si(OC372、H2Si(OC492
等のジアルコキシシランなどの2官能性シラン化合物(以下、シラン化合物における官能性とは、縮合反応性の官能基を有することを意味する。)、
HSi(OCH33、HSi(OC253
HSi(OC373、HSi(OC493
等のトリアルコキシシランなどの3官能性シラン化合物などが挙げられる。
【0032】
一般式(III)で表されるシラン化合物は、具体的には、
Si(OCH34、Si(OC254
Si(OC374、Si(OC494
等のテトラアルコキシシランなどの4官能性シラン化合物、
3CSi(OCH33、H52Si(OCH33
73Si(OCH33、H94Si(OCH33
3CSi(OC253、H52Si(OC253
73Si(OC253、H94Si(OC253
3CSi(OC373、H52Si(OC373
73Si(OC373、H94Si(OC373
3CSi(OC493、H52Si(OC493
73Si(OC493、H94Si(OC493
等のモノアルキルトリアルコキシシラン、
PhSi(OCH33、PhSi(OC253
PhSi(OC373、PhSi(OC493
(ただし、Phはフェニル基を示す。以下同様)
等のフェニルトリアルコキシシラン、
(H3CCOO)3SiCH3、(H3CCOO)3SiC25
(H3CCOO)3SiC37、(H3CCOO)3SiC49
等のモノアルキルトリアシルオキシシラン、
Cl3SiCH3、Cl3SiC25
Cl3SiC37、Cl3SiC49
Br3SiCH3、Br3SiC25
Br3SiC37、Br3SiC49
等のモノアルキルトリハロゲノシランなどの3官能性シラン化合物、
(H3C)2Si(OCH32、(H522Si(OCH3)2
(H732Si(OCH32、(H942Si(OCH32
(H3C)2Si(OC252、(H522Si(OC252
(H732Si(OC252、(H942Si(OC252
(H3C)2Si(OC372、(H522Si(OC372
(H732Si(OC372、(H942Si(OC372
(H3C)2Si(OC492、(H522Si(OC492
(H732Si(OC492、(H942Si(OC492
等のジアルキルジアルコキシシラン、
Ph2Si(OCH32、Ph2Si(OC252
等のジフェニルジアルコキシシラン、
(H3CCOO)2Si(CH32、(H3CCOO)2Si(C252
(H3CCOO)2Si(C372、(H3CCOO)2Si(C492
等のジアルキルジアシルオキシシラン、
Cl2Si(CH32、Cl2Si(C252
Cl2Si(C373、Cl2Si(C492
Br2Si(CH32、Br2Si(C252
Br2Si(C372、Br2Si(C492
等のアルキルジハロゲノシランなどの2官能性シラン化合物が挙げられる。
【0033】
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体を製造する際には、前記一般式(II)で表されるSi−H基含有シラン化合物は必須成分とされる。また、一般式(II)で表されるSi−H基含有シラン化合物と一般式(III)で表されるシラン化合物のうち、3官能性シラン化合物又は4官能性アルコキシシラン化合物は必須成分とされる。4官能性シラン化合物としてはテトラアルコキシシランが好ましく、3官能性シラン化合物としてはモノアルキルトリアルコキシシラン又はトリアルコキシシランが好ましく、2官能性シラン化合物としてはジアルキルジアルコキシシラン又はアルキルジアルコキシシランが好ましい。
【0034】
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の製造方法はシラン化合物の総量に対して、Si−H基含有アルコキシシラン化合物35モル%以上配合することが好ましい。シラン化合物の総量に対して、一般式(II)で表されるSi−H基含有アルコキシシラン化合物35〜100モル%及び一般式(III)で表されるアルコキシシラン化合物0〜65モル%の割合で使用されることが好ましい。より好ましくは、Si−H基含有アルコキシシラン化合物35〜85モル%及び一般式(III)で表されるアルコキシシラン化合物15〜65モル%である。
【0035】
前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は三次元架橋しており、一般式(III)で表されるアルコキシシラン化合物のうち15〜100モル%が4官能性シラン化合物又は3官能性シラン化合物であることが好ましく、より好ましくは20〜100モル%である。
【0036】
すなわち、一般式(III)で表されるアルコキシシラン化合物のうち2官能性シラン化合物は、0〜85モル%であることが好ましく、より好ましくは0〜80モル%の割合で使用される。
【0037】
特に好ましくは、一般式(III)で表されるアルコキシシラン化合物のうち4官能性シラン化合物が15〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、3官能性シラン化合物が0〜85モル%、より好ましくは0〜80モル%及び2官能性シラン化合物が0〜85モル%、より好ましくは0〜80モル%の割合で使用される。2官能性シラン化合物が85モル%を越えると、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の鎖が長くなり、メチル基等の疎水性基の配向等により無機材料表面に横向きとなる可能性が高く、リジットな層を形成しやすいため、低応力化の効果が小さくなる。
【0038】
前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は、前記した一般式(II)で表されるSi−H基含有シラン化合物と一般式(III)で表されるシラン化合物を加水分解・重縮合させ、さらにヒドロシリル化反応して製造される。
【0039】
加水分解・重縮合触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、フッ酸等の無機酸、シュウ酸、マレイン酸、スルホン酸、ギ酸等の有機酸を使用することが好ましい。また、アンモニア、トリメチルアンモニウムなどの塩基性触媒を用いることもできる。これら加水分解・重縮合触媒は、一般式(II)で表されるSi−H基含有シラン化合物と一般式(III)で表されるシラン化合物の量に応じて適当量用いられるが、好適には一般式(II)で表されるSi−H基含有シラン化合物と一般式(III)で表されるシラン化合物の合計1モルに対し0.001〜10モルの範囲で用いられる。
【0040】
ヒドロシリル化触媒としては、白金、パラジウム、ロジウム系の遷移金属化合物を用いることができる。特に塩化白金酸等の白金化合物を使用することが好ましく、過酸化亜鉛、過酸化カルシウム、過酸化水素、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ストロンチウム、過酸化ナトリウム、過酸化鉛、過酸化バリウム等の過酸化物、また、3級アミン、ホスフィンを用いることもできる。これらヒドロシリル化触媒は、一般式(II)で表されるSi−H基含有アルコキシシラン化合物のSi−H基1モルに対し、好ましくは0.0000001〜0.0001モルの範囲で用いられる。
【0041】
ヒドロシリル化反応剤は、ビニル基等のヒドロシリル化反応のための二重結合と、熱硬化性官能基を有するものである。具体例としては、エポキシ基を有するヒドロシリル化反応剤としてアリルグリシジルエーテル等を用いることができる。また、アミノ基を有するヒドロシリル化反応剤として、例えば、アリルアミン、塩酸アリルアミン、アミノエチルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルメタクリレートなどを用いることができる。これらヒドロシリル化反応剤は、一般式(II)で表されるSi−H基含有アルコキシシラン化合物1モルに対し、0.1〜2モルの範囲とすることが好ましく、特に0.2〜1.5モルが好ましい。
【0042】
また、上記の加水分解・重縮合、ヒドロシリル化反応は、溶剤中で行うことが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ブチロニトリルなどのニトリル系溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独で用いてもよく、数種類を併用した混合溶剤を用いることもできる。
【0043】
また、この反応に際して、水が存在してもよい。水の量も適宜決められるが、多すぎる場合には塗布液の保存安定性が低下するなどの問題があるので、水の量は、前記シラン化合物の総量1モルに対して0〜5モルの範囲とすることが好ましく、特に、0.5〜4モルが特に好ましい。
【0044】
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の製造は、上記の条件、配合を調整してゲル化しないように行われる。
【0045】
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は、上記の反応溶媒と同じ溶媒に溶解して使用することが作業性の点で好ましい。このためには、上記の反応生成溶液をそのまま使用してもよく、反応生成溶液から3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体を分離し、改めて上記溶媒に溶解してもよい。
【0046】
前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は、完全硬化又はゲル化していないが、3次元架橋しているものである。本発明おける3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の3次元架橋は、例えば、反応溶媒に溶解する程度に制御される。
【0047】
このために、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の製造、保管及び使用に際し、温度は、常温以上200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0048】
前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は、Si−H基含有シリコーン重合体を中間生成物として作成することができる。このSi−H基含有シリコーン重合体のSi−H基はSi−H基含有2官能性シロキサン単位(HR′SiO2/2)又は(H2SiO2/2)(式中、R′は前記の通りであり、シリコーン重合体中のR′基は互いに同一であってもよいし、異なってもよい。以下同様)又はSi−H基含有3官能性シロキサン単位(HSiO3/2)によって導入されている。また、Si−H基含有シリコーン重合体は、Si−H基含有3官能性シロキサン単位(HSiO3/2)、3官能性シロキサン単位(R′SiO3/2)又は4官能性シロキサン単位(SiO4/2)(式中、R′は有機基であり、シリコーン重合体中のR基は互いに同一であってもよいし、異なってもよい)を含有し、Si−H基含有2官能性シロキサン単位(HR′SiO2/2)又は(H2SiO2/2)及び2官能性シロキサン単位(R′2SiO2/2)を任意成分とするものである。
【0049】
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体は、重合度が7000以下で三次元架橋しているものであることが好ましい。さらに好ましい重合度は4000以下であり、特に好ましい重合度は2000以下である。この3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の側鎖又は末端には、Si−H基に対するヒドロシリル化反応によって導入された熱硬化性官能基が存在する。ここで、熱硬化性シリコーン重合体の重合度は、その重合体の分子量(低重合度の場合)又はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン若しくはポリエチレングリコールの検量線を利用して測定した数平均分子量から算出したものである。
【0050】
なお、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体を作製する際には、前記の様にSi−H基含有シリコーン重合体を製造してからヒドロシリル化反応剤を添加してヒドロシリル化反応を行ってもよい。また、ヒドロシリル化反応剤を前記シラン化合物と同時に配合し、シラン化合物の加水分解・重縮合と同時に又はその途中でヒドロシリル化反応を行ってもよい。
【0051】
(熱硬化性シリコーンオイル)
熱硬化性シリコーン重合体として、分子内に熱硬化性官能基を有するシリコーンオイル(本発明において、熱硬化性シリコーンオイルと記載する)を用いることができる。ここで、熱硬化性シリコーンオイルとは側鎖又は末端にエポキシ基を含む官能基を有する鎖状ポリシロキサン化合物であり、25℃における粘度が10−2〜10Pa・sの範囲にあるものである。なお、本発明における粘度は東京計器(株)製EMD型粘度計を用いて、25℃で測定した。熱硬化性シリコーンオイルとしては例えば下記一般式(I)に示したような化合物を好ましく用いることができる。熱硬化性、耐熱性などの観点から、熱硬化性シリコーンオイルは、熱硬化性官能基としてエポキシ基を含むもの(本発明においてエポキシ変性シリコーンオイルと記載する。)であることが好ましい。エポキシ変性シリコーンオイルのエポキシ当量は150〜5000であることが好ましく、300〜1000であることが特に好ましい。また、エポキシ変性シリコーンオイルの25℃における比重は、好ましくは、0.7〜1.3g/cm、更に好ましくは、0.9〜1.1g/cmである。熱硬化性シリコーンオイルとしては、例えば下記の一般式(I)で表される化合物を用いることができる。
【化2】

【0052】
(式中、Rは一価の炭化水素基、Rは有機官能基、Rは一価の炭化水素基もしくはフェニル基、Rは一価の炭化水素基もしくは有機官能基を表し、複数個のRは同一でも異なってもよく、Rが複数個の場合は同一でも異なってもよく、Rが複数個の場合は同一でも異なってもよく、2個のRは同一でも異なってもよく、l、m、nは1以上の整数である。)
さらに、Rは一価の炭素数1〜4のアルキル基であってもよく、Rは熱硬化性を有する官能基であってもよく、Rは一価の炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はアルール基であってもよく、Rは一価の炭化水素基又は熱硬化性を有する有機官能基であってもよい。
【0053】
(無機充填剤の改質剤)
熱硬化性シリコーンオイルを結合剤の主成分とする場合、結合剤に無機充填剤の改質剤を含有することが好ましい。改質剤の配合量は、樹脂硬化物の伸びの値を考慮すると、熱硬化性シリコーンオイルと改質剤の合計100重量部に対して30重量部以下であることが好ましい。改質剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系などの各種カップリング剤や、3次元架橋シリコーン重合体を用いることができる。
【0054】
無機充填剤を高充填化する場合などは、無機充填剤の分散性などの観点から、3次元架橋シリコーン重合体を改質剤として用いることが好ましい。3次元架橋シリコーン重合体としては前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体を用いることができ、また、熱硬化性官能基を含まない3次元架橋シリコーン重合体(本発明において、3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体と記載する。)を使用することもできる。
【0055】
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体を結合剤の主成分とする場合、カップリング剤を、無機充填剤の改質剤として結合剤に含有させることが好ましい。
【0056】
ここで、3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体とは、2官能性シロキサン単位(R2SiO2/2)、3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)(式中、Rは有機基であり、シリコーン重合体中のR基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)及び4官能性シロキサン単位(SiO4/2)から選ばれる少なくとも1種類のシロキサン単位を含有し、末端に水酸基と反応する官能基を1個以上有するものである。重合度は2〜7000が好ましく、さらに好ましい重合度は2〜100、特に好ましい重合度は2〜70である。前記Rとしては、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基等の芳香族基などがある。水酸基と反応する官能基としては、シラノール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜4のアシルオキシ基、塩素等の臭素以外のハロゲン等がある。
【0057】
このような3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体は、前記一般式(II)で表されるシラン化合物を加水分解、重縮合させて得ることができる。3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体の合成に用いられる前記一般式(II)で表されるシラン化合物としては、4官能性シラン化合物又は3官能性シラン化合物が必須成分として用いられ、2官能性シラン化合物は必要に応じて適宜使用される。特に、4官能性シラン化合物としてはテトラアルコキシシランが好ましく、3官能性シラン化合物としてはモノアルキルトリアルコキシシランが好ましく、2官能性シラン化合物としてはジアルキルジアルコキシシランが好ましい。シラン化合物の使用割合は、好ましくは、4官能性シラン化合物又は3官能性シラン化合物15〜100モル%及び2官能性シラン化合物を0〜85モル%が好ましく、4官能性シラン化合物または3官能性シラン化合物の1種以上を20〜100モル%及び2官能性シラン化合物を0〜80モル%がより好ましい。また、特に、4官能性シラン化合物を15〜100モル%、3官能性シラン化合物0〜85モル%及び2官能性シラン化合物0〜85モル%の割合で使用することが好ましく、4官能性シラン化合物を20〜100モル%、3官能性シラン化合物を0〜80モル%と、2官能性シラン化合物を0〜80モル%の割合で使用することがより好ましい。加水分解・重縮合反応の触媒及び溶剤は前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体を製造する際の加水分解・重縮合反応と同様のものを適用することができる。3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体の製造は条件、配合を調整してゲル化しないように行われる。3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体は、3次元架橋しているが完全硬化又はゲル化していないものであり、3次元架橋は、例えば、反応溶媒に溶解する程度に制御される。このために、3次元架橋非熱硬化性シリコーン重合体の製造、保管及び使用に際し、温度は、常温以上200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0058】
(3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体とシリコーンオイルの併用)
結合剤として、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体と熱硬化性シリコーンオイルとを併用することもできる。3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体と熱硬化性シリコーンオイルの配合割合は、無機充填剤の分散性の観点から、これらの合計100重量部に対して3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体が0.1重量部以上含まれていることが好ましく、熱膨張率、伸びの観点から、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体が1重量部以上含まれていることが特に好ましい。また、伸びの観点から、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体と熱硬化性シリコーンオイルの合計100重量部に対して熱硬化性シリコーンオイルが5重量部以上含まれていることが好ましく、40重量部以上が特に好ましい。3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体と熱硬化性シリコーンオイルの配合比は熱膨張率と伸びの値から、目的に応じて決めることができる。すなわち、3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の配合比が大きいほど熱膨張率が小さくなり、熱硬化性シリコーンオイルの配合比を増やすことで伸びの値を大きくすることができる。
【0059】
(結合剤の添加剤)
結合剤には必要に応じて両末端シリル基変性エラストマを加えることができる。両末端シリル基変性エラストマを加えることで樹脂のフィルムとしての取り扱い性が向上する。ここで、両末端シリル基変性エラストマとは、重量平均分子量が3000〜10万程度の長鎖状エラストマであり、主鎖の両末端にアルコキシシリル基を有するものである。エラストマの主鎖については特に制限はなく、ポリイソブチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ブタジエンゴム又はアクリルゴム等の主鎖骨格を有するエラストマが利用できる。アルコキシシリル基はSi元素に1〜3個のアルコキシ基が結合したものでよく、Si元素に結合したアルコキシ基の炭素数は1〜4であることが好ましい。両末端シリル基変性エラストマとしては、例えばSAT200(両末端シリル基変性ポリエーテル、鐘淵化学工業株式会社製商品名)、EP103S、EP303S(両末端シリル基変性ポリイソブチレン、鐘淵化学工業株式会社製商品名)等を用いることができる。両末端シリル基変性エラストマを用いる場合の配合量は、結合剤の合計100重量部中の0.01〜30重量部であることが好ましく、0.01〜20重量部であることが特に好ましい。0.01重量部未満では配合することによる効果が現れにくく、30重量部を越えると熱膨張率が大きくなる傾向がある。
【0060】
(無機充填剤)
熱膨張率を小さい値に調整するために、本発明で用いる樹脂には、無機充填剤を多量に配合することが好ましい。無機充填剤としては、その種類は特に制約はなく、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ガラス短繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカや炭化ケイ素ウィスカ等の各種ウィスカ等が用いられる。また、これらを数種類併用しても良い。無機充填剤の形状、粒径については特に制限はなく、通常用いられている粒径0.001〜50μmのものを本発明においても用いることができ、絶縁材料の薄型化を考慮した場合、好ましくは0.01〜10μmのものが好適に用いられる。これら無機充填剤の配合量は、結合剤100重量部に対して100〜2000重量部が好ましく、300〜1500重量部が特に好ましい。硬化後の樹脂の熱膨張率は無機充填剤の配合量によって調整することができる。無機充填剤の配合量が少なすぎると熱膨張率が大きくなる傾向があり、無機充填剤が多すぎるとフィルム化が困難になる傾向がある。
【0061】
(硬化剤)
前記結合剤を含有する樹脂の硬化剤は、結合剤の主成分が有する熱硬化性官能基と反応(硬化)する化合物であればよく、特に制限はない。例えば熱硬化性官能基がエポキシ基の場合には、アミン系硬化剤やフェノール系硬化剤などの一般にエポキシ樹脂用硬化剤として用いられるものを利用することができる。エポキシ樹脂用硬化剤としては多官能フェノール化合物が好ましい。多官能フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール等の多価フェノールがあり、また、これらの多価フェノール又はフェノール、クレゾール等の一価のフェノール化合物とホルムアルデヒドを反応させて得られるノボラック樹脂などがある。多官能フェノール化合物は臭素等のハロゲンで置換されていてもよい。硬化剤の使用量は、結合剤中の熱硬化性官能基1当量に対して、0.2〜1.5当量使用することが好ましく、0.5〜1.2当量使用することが特に好ましい。硬化物と金属との接着性を向上させるためにはエポキシ樹脂用硬化剤にアミン化合物を含むことが好ましく、また、硬化剤が過剰に含まれていることが好ましい。このアミン化合物は接着性補強剤として作用するものであり、具体例については後に記載する。耐熱性などの他の特性と接着性とのバランスを考慮すると、アミン化合物を含む硬化剤を結合剤中の熱硬化性官能基1当量に対して1.0〜1.5当量用いることが好ましく、熱硬化性官能基1当量に対して1.0〜1.2当量用いることが特に好ましい。
【0062】
(硬化促進剤)
また、硬化剤とともに硬化促進剤を加えてもよい。例えば熱硬化性官能基がエポキシ基の場合には、イミダゾール化合物などが一般に使用されており、本発明においてもこれを用いることができる。硬化促進剤として用いられるイミダゾール化合物の具体例としてはイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。硬化促進剤の十分な効果を得るためには、結合剤100重量部に対して0.01重量部以上使用することが好ましく、熱膨張率や伸び等の観点から10重量部以下が好ましい。
【0063】
(樹脂組成物の添加剤)
本発明における樹脂組成物には、金属箔との接着性を高め、樹脂硬化物と金属箔との引き剥がし強度を高めるために、必要に応じて接着性補強材を加えることができる。接着性補強材としてはアミノ基や水酸基などの反応性官能基を複数持つ化合物を用いることができ、反応性官能基を複数持つアミン化合物が好ましい。反応性官能基を複数持つアミン化合物としては、例えば、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル等の分子内に複数のアミノ基を持つ化合物やジシアンジアミドなどの、分子内に複数の活性N−H基を有する化合物、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノフェノール等の分子内にアミノ基と水酸基を併せ持つ化合物などを用いることができる。接着性補強材の配合量は結合剤100重量部に対して0.01〜9重量部であることが好ましく、0.1〜6重量部であることが特に好ましい。0.01重量部未満の場合は配合による効果が現れにくく、また、9重量部を越える場合は、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。また、接着性補強材は硬化剤としても作用するため、他の硬化剤との配合量の合計が、前述した硬化剤の配合量の好ましい範囲内となることが好ましい。
【0064】
(樹脂ワニス)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤に溶解ないし分散させて樹脂ワニスとすることができる。樹脂ワニスの濃度は、作業性等を考慮して適宜決定される。また、シリコーン重合体の合成に続いて、樹脂組成物の調整を行う場合、シリコーン重合体の合成に用いた溶剤と同じものを使用することが好ましい。溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ブチロニトリルなどのニトリル系溶剤等が好ましく使用される。また、これら溶剤の数種類を併用した混合溶剤を用いることもできる。樹脂フィルム、基板又は配線板等のコア材の片面又は両面に前記樹脂ワニスをスクリーン印刷機やブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーターなどの塗工方式により常法に従って塗布し、乾燥して、該コア材上に本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を設けることができる。
【0065】
前記樹脂ワニスはキャリアシートに塗布し、乾燥してキャリア付き樹脂フィルムとすることができる。前記樹脂ワニスを塗布する際の厚さは目的に合わせて調整することができ、フィルムの形成性、取り扱い性を考慮すると硬化後の厚さが10〜150μmとなるように調整することが好ましい。ワニスを塗布する際に、キャリアシートと平行な面方向にせん断力を負荷できるか、または、キャリアシートの面に垂直な方向に圧縮力を負荷できる塗工方式を採用することが好ましい。たとえば、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター等の方式を採用することができる。乾燥温度は、80〜200℃が好ましい。乾燥時間を調整することで樹脂フィルムの硬化状態を制御することができる。例えば、半硬化のフィルムを作製する場合の乾燥時間は、硬化が進みすぎない程度の時間とすればよく、1分以上が好ましい。また、完全に硬化させるためには乾燥時間を90分以上とすることが好ましい。キャリア付き樹脂フィルムはそのまま使用してもよく、キャリアシートを引き剥がして用いてもよい。
【0066】
キャリア付き樹脂フィルムを製造する際に用いるキャリアシートとしては、銅やアルミニウム等の金属箔、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、あるいはこれらのキャリアシートの表面に離型剤を塗布したものなどを用いることができる。キャリヤ付き樹脂フィルムからキャリアシートを引き剥がして本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムのみを使用する場合や、キャリア付き樹脂フィルムを基板に積層した後キャリアシートだけを剥離する場合にはキャリアシートに離型剤処理を施すことが、作業性を向上させる点で好ましい。
【0067】
(硬化物)
本発明の樹脂組成物を用いて硬化物を作製する方法は、一般的に熱硬化性樹脂を硬化する方法を用いることができる。例として、輻射型加熱炉や熱風型加熱炉などの加熱装置内で加熱しつつ、一定時間以上放置して硬化物を得てもよい。あるいは、キャリア付き樹脂組成物あるいはキャリアを引き剥がした樹脂組成物を他の物質に接触させて、加熱及び加圧が可能な積層装置で一定時間加熱することにより、他の物質に接着させて硬化物を得てもよい。
【0068】
(評価方法)
本発明の結合剤、樹脂フィルムおよび樹脂硬化物の弾性率は、動的粘弾性評価により求められる貯蔵弾性率などにより評価することができる。動的粘弾性評価は、高分子材料などの粘弾性体の変形挙動を測定する方法として一般的である。動的粘弾性を測定する装置によると、試料に、引張りまたは曲げによる正弦的な応力又はひずみを与えて、動的貯蔵弾性率、動的損失弾性率及び損失正接を、温度などの変化に対して求めることができる。樹脂フィルムの評価を行う場合は、樹脂フィルムの面方向に対して引張り応力あるいはひずみを加えることにより上記の値を求めることができる。
【0069】
本発明に関わる弾性率は、厚み50μmから150μm程度の樹脂フィルムを用い、樹脂フィルムの面方向に対して引張り方向で評価を行った。また、結合剤、樹脂フィルムおよび樹脂硬化物の熱膨張率は、一定荷重の下で試料の温度を変えながら、試料の体積あるいは長さなどが変形する割合を求めるもので、熱機械分析(Thermomechanicalanalysis)装置を用いて測定することができる。本発明に関わる熱膨張率は、厚み50μmから150μm程度の樹脂フィルムを用い、樹脂フィルムの面方向の長さの変化を各測定温度にて求めた。
【0070】
以下、本発明を実験例に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0071】
(3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の合成例)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、テトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)を20g、ジメトキシジメチルシラン(東京化成工業株式会社製)を60g、ジメトキシメチルシラン(東京化成工業株式会社製)を67g、合成溶剤としてメタノール(東京化成工業株式会社製)を37g配合し、混合溶液を得た。この混合溶液に、合成触媒としてマレイン酸を1.5g、蒸留水を50g配合した後、80℃で2時間攪拌した。さらに、アリルグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製)を72gと塩化白金酸塩(2重量%イソプロピルアルコール溶液)を0.2g添加した後、4時間撹拌してエポキシ変性のシリコーン重合体を合成した。得られたシリコーン重合体のシロキサン単位の重合度は65であった(GPCによって標準ポリスチレンの検量線を利用して測定した数平均分子量から換算)。
【0072】
(結合剤の調整例1)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の合成例と同様にして作製したシリコーン重合体の固形分100重量部に対して、テトラブロモビスフェノールAを78重量部と2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部とトルエンを希釈溶剤として202重量部を配合し、20℃で1時間攪拌して結合剤溶液を作製した。
【0073】
(結合剤の調整例2)
3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体に換えてエポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)を用いた以外は、結合剤の調整例1と同様にして結合剤溶液を作製した。
【0074】
(結合剤の調整例3)
エポキシ変性シリコーンオイル:KF101(信越化学株式会社製商品名)に換えてエポキシ変性シリコーンオイル:X22−2000(信越化学株式会社製商品名)を用いた以外は、結合剤の調整例2と同様にして結合剤溶液を作製した。
【0075】
(結合剤の調整例4)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)に換えてエポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ株式会社製)を用いた以外は、結合剤の調整例1と同様にして結合剤溶液を作製した。
【0076】
(結合剤の調整例5)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)に換えてエポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−1503、信越化学株式会社製)を、テトラブロモビスフェノールA78重量部に換えてビスフェノールA30重量部を用いた以外は、結合剤の調整例1と同様にして結合剤溶液を作製した。
【0077】
(評価方法1)
結合剤の調整例1〜4で得た結合剤溶液を離型フィルム上に塗布し、170℃で2時間で硬化させ、厚みが50〜100μmのフィルム(結合剤の硬化物;離型フィルムを除く厚みである。)を得た。得られたフィルム(結合剤硬化物)の特性を以下に記す方法にて測定した。
【0078】
動的粘弾性は、フィルムの幅5mm、スパン間距離20mmとして、RHEOMETRIC社製のRSA−IIで20℃にて(引張りモード、10Hz、歪み0.03%)の条件で測定した。
【0079】
試料の伸びは、(幅 10mm×長さ 80mm 厚み 50〜100μm)のフィルムを試料として用いて、引張試験機(島津製作所製、オートグラフAG−100C)により、測定条件をチャック間距離:60mm、引張速度:5mm/minとして、引張試験で20℃にて測定した。結果を表1に示す。
【表1】

【0080】
(実験例1)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)100重量部に対してシリカ粉末(製品名:SO−25R,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)450重量部と希釈溶剤としてトルエンを202重量部配合して混合物を得た。この混合物を、80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、エポキシ変性シリコーンオイル100重量部に対してテトラブロモビスフェノールAを78重量部と2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部を配合し、室温で1時間撹拌して無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0081】
(実験例2)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)99重量部に対して、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−187、日本ユニカー株式会社製)1重量部、シリカ粉末(製品名:SO−25R,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)450重量部と希釈溶剤としてトルエンを202重量部、テトラブロモビスフェノールA78重量部および2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部とした以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0082】
(実験例3)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)99重量部に対して、両末端シリル基変性エラストマ(商品名:SAT200、鐘淵化学工業株式会社製)1重量部、シリカ粉末(製品名:SO−25R,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)450重量部と希釈溶剤としてトルエンを202重量部、テトラブロモビスフェノールA78重量部および2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部とした以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0083】
(実験例4)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)に換えてエポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−2000、信越化学株式会社製)を使用した以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0084】
(実験例5)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)に換えて前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の合成例と同様にして作製したシリコーン重合体を使用し、シリコーン重合体の固形分100重量部に対してシリカ粉末(製品名:SO−25R,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)450重量部と希釈溶剤としてトルエンを202重量部、テトラブロモビスフェノールA78重量部および2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部とした以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0085】
(実験例6)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)に換えてエポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ株式会社製)を使用した以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0086】
(実験例7)
配合量を3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の固形分1重量部に対してエポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)99重量部、シリカ粉末(製品名:SO−25R,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)900重量部と希釈溶剤としてトルエンを250重量部、テトラブロモビスフェノールA78重量部および2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部とした以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0087】
(実験例8)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF101、信越化学株式会社製)に換えてエポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−2000、信越化学株式会社製) を使用した以外は、実験例7と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0088】
(実験例9)
配合量を、エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ株式会社製)100重量部に対して、シリカ粉末(製品名:SO−25R,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)900重量部と希釈溶剤としてトルエンを250重量部、テトラブロモビスフェノールA78重量部および2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部とした以外は、実験例1と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0089】
(評価方法2)
実験例1〜9で得た樹脂組成物を、それぞれ評価方法1と同様にしてフィルムとし、得られたフィルムの動的粘弾性および伸びは、評価方法1と同様にして評価した。熱膨張率はフィルムの幅5mm、スパン間距離20mmとして熱機械分析(TMA:MAC SCIENCE社製TMA)により引張モードで測定し、20℃における熱膨張率と0℃〜250℃までの熱膨張率で評価した。なお、「フィルム形成性」において、前記のような動的粘弾性、伸びおよび熱膨張率の特性評価が可能な試料を「○」とし、脆くて特性評価が出来ない試料を「×」とした。結果を表2に示す。
【表2】

【0090】
(実験例10)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−1503、信越化学株式会社製)100重量部に対してシリカ粉末(製品名:SC−2050,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)525重量部と、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを225重量部、トルエンを25重量部配合して混合物を得た。この混合物を、80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、エポキシ変性シリコーンオイル100重量部に対してビスフェノールAを30重量部と2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部を配合し、室温で1時間撹拌して無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0091】
(実験例11)
撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、テトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)を20g、ジメトキシジメチルシラン(東京化成工業株式会社製)を20g、合成溶剤としてメタノール(東京化成工業株式会社製)を10g配合した溶液に、合成触媒としてりん酸を0.5g、蒸留水を16g配合し、70℃でシリコーン重合体を合成した。
【0092】
ついで、撹拌装置、コンデンサ及び温度計を備えたガラスフラスコに、この3次元架橋シリコーン重合体の溶液を10重量部、エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−1503、信越化学株式会社製)100重量部、シリカ粉末(製品名:SC−2050,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)525重量部と希釈溶剤としてメチルエチルケトンを225重量部、トルエンを25重量部配合して混合物を得た。この混合物を、80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、エポキシ変性シリコーンオイル100重量部に対してビスフェノールAを30重量部と2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部を配合し、室温で1時間撹拌して無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0093】
(実験例12)
エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−1503、信越化学株式会社製)100重量部にかえて、エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−1503、信越化学株式会社製)100重量部、前記3次元架橋熱硬化性シリコーン重合体の合成例と同様に作製したシリコーン重合体5重量部を使用した以外は、実験例10と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0094】
(実験例13)
シリカ粉末(製品名:SC−2050,平均粒径:0.5μm,株式会社アドマテックス製)780重量部を配合した以外は、実験例10と同様にして無機充填剤溶液(樹脂組成物)を作製した。
【0095】
(評価方法3)
実験例10〜13で得た樹脂組成物を、それぞれ評価方法1と同様にしてフィルムとし、得られたフィルムの動的粘弾性、伸びは、評価方法1と同様にして評価した。フィルム形成性は評価方法2と同様にして評価した。また、熱膨張率はフィルムの幅5mm、スパン間距離20mmとして熱機械分析(TMA:MAC SCIENCE社製TMA)により引張モードで測定し、50℃〜100℃における熱膨張率で評価した。結果を表3に示す。
【表3】

【0096】
以上のように本発明によって、低弾性率でかつ高伸び性の結合剤を用いることで、無機充填剤を多量に配合しても硬化物はフィルム形成性を有し、低弾性率、高伸び性、0℃〜250℃といった広い温度範囲においても低熱膨張率を実現可能な新規な熱硬化性樹脂組成物、樹脂フィルムおよび硬化物を提供することが可能である。この熱硬化性樹脂組成物や樹脂フィルムは、例えば、半導体チップを搭載した基板などに好適に用いられる低応力性、応力緩和性を備えた樹脂層などとして利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合されてなる樹脂フィルム。
【請求項2】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合され、20℃での弾性率が10GPa以下である樹脂フィルム。
【請求項3】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合され、硬化後の20℃での熱膨張係数が100ppm/K以下である樹脂フィルム。
【請求項4】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有する組成物からなり、硬化後の20℃での弾性率が10GPa以下である樹脂フィルム。
【請求項5】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有する組成物からなり、硬化後の20℃での熱膨張係数が100ppm/K以下である樹脂フィルム。
【請求項6】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合され、20℃での弾性率が10GPa以下である硬化物。
【請求項7】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下、20℃での伸びが10%以上の熱硬化性樹脂からなる結合剤によって無機充填剤が結合され、硬化後の20℃での熱膨張係数が100ppm/K以下である硬化物。
【請求項8】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有する組成物からなり、硬化後の20℃での弾性率が10GPa以下である硬化物。
【請求項9】
20℃での貯蔵弾性率が1,000MPa以下の熱硬化性樹脂を結合剤として含有し、この結合剤100重量部に対して無機充填剤を100〜2,000重量部含有する組成物からなり、硬化後の20℃での熱膨張係数が100ppm/K以下である硬化物。

【公開番号】特開2011−6710(P2011−6710A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230488(P2010−230488)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【分割の表示】特願2006−347895(P2006−347895)の分割
【原出願日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】