説明

低燃費主機搭載船

【課題】 通常仕様と同等の出力を有するディレーティング仕様の主機関を搭載し、且つ機関室長と船体抵抗の増加が抑制された、低燃費主機搭載船を提供する。
【解決手段】 ディレーティング仕様の2ストロークディーゼル主機関を複数搭載し、船尾に前記主機関と同数のプロペラを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低燃費主機搭載船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大型船舶に搭載された2ストロークディーゼル主機関において、最大圧力を通常仕様と同一とし、平均有効圧力を通常仕様よりも低減させて、出力を通常仕様よりも低減させ、燃料消費量を通常仕様よりも低減させた、ディレーティング仕様の設計が可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ディレーティング仕様の主機関は、通常仕様の主機関よりも出力が小さいので、ディレーティング仕様の主機関を搭載する場合には、通常仕様の主機関と同等の出力を得るために、通常仕様の主機関よりも気筒数を増加させるか、通常仕様の主機関よりも気筒径を増加させる必要がある。気筒数を増加させると、機関室長が増加して貨物区画長ひいては貨物量が減少し、気筒径を増加させると、主機関の幅が増加して船尾が太くなり船体抵抗が増加する。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、通常仕様と同等の出力を有するディレーティング仕様の主機関を搭載し、且つ機関室長と船体抵抗の増加が抑制された、低燃費主機搭載船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、ディレーティング仕様の2ストロークディーゼル主機関を複数搭載し、船尾に前記主機関と同数のプロペラを備えることを特徴とする低燃費主機搭載船を提供する。
ディレーティング仕様の2ストロークディーゼル主機関を複数搭載することにより、出力を通常仕様の主機関と同等にし、且つ主機関1基当たりの気筒数の増加を抑制して、機関室長の増加を抑制することができる。主機関と同数配設したプロペラ近傍の船尾形状を、それぞれ、通常仕様の主機関を搭載した1基1軸船のプロペラ近傍の船尾形状に近似させることにより、船体抵抗の増加を抑制することができる。ディレーティング仕様の2ストロークディーゼル主機関を複数搭載することにより、気筒径の増加が抑制されて各主機関の幅の増加が抑制されるので、各プロペラ近傍の船尾が太くなるのが抑制され、船体抵抗の増加が抑制される。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、通常仕様と同等の出力を有するディレーティング仕様の主機関を搭載し、且つ機関室長と船体抵抗の増加が抑制された、低燃費主機搭載船が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例に係る低燃費主機搭載船を説明する。
載貨重量30万トンのVLCCに、代表的舶用2ストロークディーゼル主機関であるB&WのS80MC−C主機関を搭載した場合を想定して、通常仕様の主機関を搭載したVLCCと、本発明を適用したVLCCとを比較する。
B&WのS80MC−C主機関の仕様を図1に示す。通常仕様の主機関を搭載したVLCCを図2(a)に、本発明を適用したVLCCを図2(b)に示す。
図2(a)に示すVLCCは、7気筒の通常仕様のS80MC−C主機関1を1基搭載し、プロペラ2を1基備えた、1機1軸船である。
図2(b)に示すVLCCは、6気筒のディレーティング仕様のS80MC−C主機関10を2基搭載し、プロペラ20を2基備えた、2機2軸船である。
【0007】
図2(a)のVLCCが備える7気筒の通常仕様のS80MC−C主機関1の出力は27160kWであり、燃料消費量は167g/kWhである。上記主機関をディレーティング仕様にして、燃料消費量を約7%減の155g/kWhにしようとすると、1気筒当たりの出力は約35%減少するので、気筒数を11に増加させる必要を生じ、機関室長を約7m増加させる必要を生ずる。
これに対し、図2(b)のVLCCにおいては、6気筒のディレーティング仕様のS80MC−C主機関10を2基搭載したので、燃料消費量が図2(a)のVLCCに比べて約7%減の155g/kWhになる一方、出力は図2(a)のVLCCと同等以上の29760kWとなり、機関室長は図2(a)のVLCCよりも約1.4m(1気筒分)短くなっている。
図2(b)の2機2軸のVLCCにおいては、主機関10と同数の2基配設したプロペラ20近傍の船尾形状を、それぞれ、通常仕様の主機関を搭載した図2(a)の1基1軸のVLCCのプロペラ近傍の船尾形状に近似させることにより、船体抵抗の増加を抑制している。ディレーティング仕様の2ストロークディーゼル主機関を2基搭載することにより、気筒径の増加が防止されて各主機関10の幅の増加が防止されているので、各プロペラ20近傍の船尾が太くなるのが防止され、船体抵抗の増加が抑制されている。
【0008】
上記実施例では2機2軸としたが、n機n軸(n≧3)としても良い。
本発明は、VLCCに限らず、大型船一般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】B&WのS80MC−C主機関の仕様を示す図である。
【図2】VLCCの一般配置図である。(a)は、7気筒の通常仕様のS80MC−C主機関1を基搭載し、プロペラを1基備えた、1機1軸のVLCCの一般配置図である。(b)は、6気筒のディレーティング仕様のS80MC−C主機関10を2基搭載し、プロペラ20を2基備えた、2機2軸のVLCCの一般配置図である。
【符号の説明】
【0010】
1、10 S80MC−C主機関
2、20 プロペラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディレーティング仕様の2ストロークディーゼル主機関を複数搭載し、船尾に前記主機関と同数のプロペラを備えることを特徴とする低燃費主機搭載船。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−189103(P2008−189103A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24954(P2007−24954)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(501237084)株式会社大内海洋コンサルタント (11)
【出願人】(502298192)流体テクノ有限会社 (11)