説明

低発塵ベルト

【課題】低発塵ベルトにおける初期発塵を防いで排気設備を簡単なものとすると共に、走行停止時間を短縮する。
【解決手段】歯付の低発塵ベルト1のピッチラインL1上に心線5(抗張体)が埋設されたベルト本体6と、このベルト本体6のランドラインL2上にベルト長手方向に所定のピッチで配設された複数のベルト歯部7とを設ける。この低発塵ベルト1は、歯付プーリの歯溝に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面7aは伝動に寄与しない。ベルト歯部7における歯付プーリのフランジと接触する両側面7aの間隔を先端に向かうにつれて徐々に小さくし、歯付プーリに巻き付いたときに、そのフランジに略均等な力で面接触するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動用や搬送用の歯付ベルト又は平ベルトよりなる低発塵ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯付ベルトと、複数の歯付プーリとからなるベルト式伝動装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。この歯付ベルトは、ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体と、該ベルト本体のランドライン上にベルト長手方向に所定のピッチで配設された複数のベルト歯部とを備え、少なくとも1つの歯付プーリにおいて、両側面外周部には、プーリの半径方向に延びるフランジが設けられている。
【特許文献1】特開2002−250415公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、伝動ベルトや搬送ベルトは、プーリ間の幾何学的な位置関係(例えば、回転軸の平行や回転面の位置ずれ)、ベルト心線の特性などにより、さらに、はす歯のベルト歯部を有する場合には、はす歯の歯によるスラスト力により、ベルトが幅方向のいずれかへ偏るので、上記特許文献1のベルト式伝動装置のように、複数ある歯付プーリのうち、少なくとも1つには、ベルト脱落防止の観点からフランジを設ける必要がある。
【0004】
図8(a)に示す通常の側面が垂直な歯付伝動ベルト201は、図8(b)に誇張して示すように、歯付プーリ2に掛けると底面側が拡がって末広の台形状に変形すると共に、上記種々の理由により偏ってフランジ部3と接触しながら走行する。図9に拡大して示すように、ベルト側面の歯先に近い領域Aが歯付プーリ2のフランジ3に強く接触する。なお、他に接触の大きい領域Bは、ベルト歯部207の歯付プーリの歯溝に当接する部分である。つまり、伝動ベルト201が歯付プーリ2に巻き付く際に、内側へ折り曲げられて荷重がかかるので、心線205を基準に心線205よりも内側(領域W1)では長手方向に圧縮しようとする荷重がかかり、外側(領域W2)では長手方向に伸張しようとする荷重がかかる。また、このベルト201に用いられる材料は、ウレタン、ゴム、エラストマーなどのゴム状弾性体であり、これらのゴム状弾性体は非圧縮性を有することから、荷重が加わると圧縮もしくは伸張されようとすることによる体積変化を補う必要がある。ベルトがプーリと噛み合った状態では、側面方向にのみ自由度があるので、領域W1ではベルトの幅が拡がろうとし、領域W2ではベルトの幅が狭まろうとする。なお、非圧縮性とは、スポンジのように押された分だけ圧縮するのとは異なり、一部が押されると他の部分が拡がるなどにより全体の体積変化の乏しい性質をいう。最も幅が拡がりやすいのは、最も心線から離れた歯先であるため、歯先がプーリに巻き付いたときには、歯先を中心に幅が拡がる。このため、幅の広がった部分が狭い範囲でフランジに接触して応力集中が起こり、摩耗して摩耗粉が飛散したり、微小な粉塵が浮遊したりするという問題があった。
【0005】
このため、半導体製造や食品加工など、粉塵の発生が好まれない清浄な環境が必要な場所でベルトを走行させるには、囲いを設置したり、ベルト周辺の浮遊粉塵の吸引や排出などの設備が必要であった。
【0006】
また、粉塵の発生はベルトを設置した直後の初期の段階で特に顕著であるため、ベルトを空運転して粉塵がある程度収まってから走行させる必要があり、その分、作業効率が悪くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、初期発塵を防いで排気設備を簡単なものとすると共に、走行停止時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、ベルト歯部の先端に向かうにつれてベルト幅が徐々に小さくなるように、ベルト側面にテーパを設けた。
【0009】
具体的には、第1の発明では、ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体と、該ベルト本体のランドライン上にベルト長手方向に所定のピッチで配設された複数のベルト歯部とを備え、歯付プーリの歯溝に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面は伝動に寄与しない歯付の低発塵ベルトを対象とする。
【0010】
そして、上記ベルト歯部における上記歯付プーリのフランジと接触する両側面は、先端に向かうにつれて徐々に間隔が小さくなっており、上記歯付プーリに巻き付いたときに該歯付プーリのフランジに略均等な力で面接触するように構成されている。
【0011】
すなわち、ベルトが歯付プーリに巻き付く際に抗張体を基準に抗張体よりも内側は長手方向に圧縮されようとし、外側は長手方向に伸張されようとするが、ベルトに用いられる材料は、ウレタン、ゴム、エラストマーなどのゴム状弾性体であり、非圧縮性を有する材料であるため、抗張体よりも内側では長手方向に圧縮されようとする体積を逃がす必要がある。このため、ベルトが歯付プーリと噛み合った状態では、側面方向にのみ自由度があるので、抗張体よりも内側ではベルトの幅が拡がろうとする。最も幅が拡がりやすいのは、最も抗張体から離れた歯先であるため、歯付プーリに巻き付いたときに歯先を中心に幅が拡がる。しかしながら、上記の構成によると、ベルト歯部の幅が先端に向かうにつれて徐々に小さくなっているので、歯先側の幅が拡がっても、歯先部分のみが歯付プーリのフランジに接触するのではなく、広い面で略均等な力で接触する。このため、応力の集中が抑えられ、摩耗を原因とする粉塵の発生が最小限となる。なお、歯付の低発塵ベルトは、歯付プーリの歯溝に当接する底面側のみが伝動に寄与するものであり、側面も伝動に寄与するVベルトではない。また、「略均等な力で接触する」とは、「応力集中がないように接触する」という意味である。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記両側面は、ベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形されている。
【0013】
上記の構成によると、一定の角度の傾斜が生じるようにベルト長手方向に沿って順に成形すればよいので、長尺のベルトであっても成形が容易である。
【0014】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記ベルト歯部は、はす歯よりなるものとする。
【0015】
すなわち、はす歯の場合、運転時の清音化が可能ではあるが、構造上、ベルト幅方向のいずれかへベルトが寄って行くので、歯付プーリのフランジにベルト歯部側面をこすりながら運転される。このため、フランジとの摩擦はより強くなる方向にあるが、上記の構成によると、ベルト歯部の幅が先端に向かうにつれて徐々に小さくなっているので、底面近傍のみがフランジに接触するのではなく、広い面で略均等な力で接触し、摩耗は生じにくくなる。
【0016】
第4の発明では、ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体を備え、プーリの外周面に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面は伝動に寄与しない平らな低発塵ベルトを対象とする。
【0017】
そして、上記低発塵ベルトは、
上記ベルト本体のプーリのフランジと接触する両側面の間隔が先端に向かうにつれて徐々に小さくなるように、該両側面は、ベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形され、上記プーリに巻き付いたときに該プーリのフランジに略均等な力で面接触するように構成されている。
【0018】
すなわち、ベルトがプーリに巻き付く際に抗張体を基準に抗張体よりも内側は長手方向に圧縮されようとし、外側は長手方向に伸張されようとするが、ベルトに用いられる材料は、ウレタン、ゴム、エラストマーなどのゴム状弾性体であり、非圧縮性を有する材料であるため、抗張体よりも内側では長手方向に圧縮されようとする体積を逃がす必要がある。このため、ベルトがプーリに巻き付いた状態では、側面方向にのみ自由度があるので、抗張体よりも内側ではベルトの幅が拡がろうとする。最も幅が拡がりやすいのは、最も抗張体から離れたベルト本体底面側であるため、ベルトがプーリに巻き付いたときにベルト本体底面部を中心に幅が拡がる。しかしながら、上記の構成によると、ベルト本体の幅がプーリの外周面に向かうにつれて徐々に小さくなっているので、ベルト本体の底面側の幅が拡がっても、底面近傍のみがプーリのフランジに接触するのではなく、広い面で略均等な力で接触する。このため、応力の集中が抑えられ、摩耗を原因とする粉塵の発生が最小限となる。また、側面を成形するときには、直線状に斜めに成形すればよいので、長尺のベルトであっても成形が容易である。なお、この平らな低発塵ベルトは、プーリの外周面に当接する底面側のみが伝動に寄与するものであり、側面も伝動に寄与するVベルトではない。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、最も幅が拡がりやすい最も抗張体から離れた歯の先端に向かうにつれて歯部の幅を徐々に小さくしてベルトがプーリに掛けられたときに歯先部分のみが歯付プーリのフランジに接触するのを防止してフランジに略均等な力で面接触するようにしたことにより、特にベルト使用初期における摩耗を原因とする粉塵の発生を防止することができるので、定常発塵に対する排気設備を備えていればよくなり、排気設備を簡単なものとすることができる。また、初期発塵を収めるために長時間空運転を行う必要がなく、走行停止時間を短縮することができるので、生産性を向上させることができる。
【0020】
上記第2の発明によれば、ベルト歯部側面をベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形するようにしたことにより、長尺のベルトであっても成形が容易であるため、製造コストの増加を最小限とすることができる。
【0021】
上記第3の発明によれば、ベルト歯部をはす歯としたことにより、運転時の清音化を図ることができると共に、歯付プーリのフランジにベルト歯部の側面が広い面積で当接するので、はす歯であっても粉塵の発生を最小限に保つことができる。
【0022】
上記第4の発明によれば、最も幅が拡がりやすい最も抗張体から離れたベルト本体底面部に向かうにつれて底面側のベルト幅を徐々に小さくして底面近傍のみがプーリのフランジに接触するのを防止してフランジに略均等な力で面接触するようにしたことにより、特にベルト使用初期における摩耗を原因とする粉塵の発生を防止することができるので、定常発塵に対する排気設備を備えていればよくなり、排気設備を簡単なものとすることができる。また、初期発塵を収めるために長時間空運転を行う必要がなく、走行停止時間を短縮することができるので、生産性を向上させることができる。また、ベルト本体側面をベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形するようにしたことにより、長尺のベルトであっても成形が容易であるため、製造コストの増加を最小限とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明の実施形態1の歯付の低発塵ベルト1が歯付プーリ2に掛けられたベルト伝動装置を示す側面図である。なお、見やすくするために歯付プーリ2のフランジ3は二点鎖線で示している。便宜上、歯付プーリ2は同じ外径のものを使用しているが、異なる外径のものでもよく、3つ以上の歯付プーリ2に低発塵ベルト1を掛けるようにしてもよい。
【0025】
図2及び図3に示す歯付の低発塵ベルト1は、ピッチラインL1上に抗張体としての心線5が埋設されたベルト本体6を有している。ベルト本体6は、ゴム状弾性体であるウレタン樹脂よりなるが、通常ベルトに使用されるゴム状弾性体であれば特に限定されず、ゴム、エラストマー等であってもよい。また、例えば、心線5はスチールワイヤーよりなる。
【0026】
ベルト本体6のランドラインL2上には、ベルト長手方向に所定のピッチPで複数のベルト歯部7が配設されている。ベルト歯部7は、例えば平歯よりなり、このベルト歯部7に噛み合うように、歯付プーリ2の外周面に歯溝4が形成されている。
【0027】
この歯付の低発塵ベルト1は、歯付プーリ2の歯溝4に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面7aは伝動に寄与しないように構成されている。すなわち、底面及び側面が伝動に寄与するVベルトではない。そして、この低発塵ベルト1は、汎用のベルトであるが、特に粉塵の発生を嫌う、クリーンルーム、食品包装工場などの雰囲気内での使用に適しており、例えば伝動ベルトとして、あるいは搬送ベルトとして構成することができる。
【0028】
そして、上記ベルト歯部7における歯付プーリ2のフランジ3と接触する両側面7aの間隔は、先端に向かうにつれて徐々に小さくなっている。具体的には、ベルト歯部7の側面7aは、ベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形され、その傾斜角度α(図3に示す)は、材質、厚さ、幅等にもよるが、本実施形態では、概ね1°≦α≦20°であり、3°≦α≦10°が好ましい。このように成形面の角度は、比較的浅いものであり、一般的な面取りのような45°というものではない。傾斜を設ける範囲は、上限がランドラインL2であり、それ以下の低い領域、すなわち歯部7の領域で適宜設計可能である。
【0029】
この低発塵ベルト1を歯付プーリ2に掛けると、図4に示すように、ベルト歯部7の歯先部分が圧縮により変形して側面7aがほぼ垂直となり、低発塵ベルト1が偏ったときに、略均等な力でフランジ3に面接触するように構成されている。
【0030】
−低発塵ベルトの製造方法−
詳しくは図示しないが、低発塵ベルト1は、歯形が形成された連続成形用の金型上に心線5を平行にならべ、ウレタン樹脂を注入して連続成形し、その後、必要に応じてカットするなどして、所望の幅に成形する。成形時に心線5が露出しないようにすることにより、発塵が発生し難くなる。
【0031】
次いで、帯状に成形されたベルトを長手方向に繋いで必要な長さとする。
【0032】
側面7aに傾斜を設ける成形は、例えば低発塵ベルト1を長手方向に進めながら砥石にて研削することにより行う。このとき、傾斜角度αは、低発塵ベルト1の長手方向でほぼ一定となっているため、例えば10mなどの長尺の低発塵ベルト1であっても成形が容易となっている。
【0033】
なお、傾斜の成形方法は、砥石に限定されず、カッターによって切断したり、型で成形する際にベルト幅1本ごとに傾斜形状を成形したりしてもよい。
【0034】
−低発塵ベルトの作用−
次いで、低発塵ベルト1の作用について説明する。
【0035】
低発塵ベルト1が歯付プーリ2に巻き付く際に心線5を基準に心線5よりも内側(領域W1)は長手方向に圧縮されようとし、外側(領域W2)は長手方向に伸張されようとするが、低発塵ベルト1に用いられる材料は通常非圧縮性を有するゴム状弾性体であるため、心線5よりも内側では圧縮されようとする体積を逃がす必要がある。このため、低発塵ベルト1が歯付プーリ2と噛み合った状態では、側面7a方向にのみ自由度があるので、低発塵ベルト1の幅が拡がろうとする。最も幅が拡がりやすいのは、最も心線5から離れた歯先であるため、歯先が歯付プーリ2に巻き付いたときに歯先を中心に幅が拡がる。
【0036】
しかしながら、本実施形態では、ベルト歯部7の幅が先端に向かうにつれて徐々に小さくなっているので、歯先側の幅が拡がっても、図4に示すように、ベルト歯部7の歯先部分が圧縮荷重により変形して側面7aがほぼ垂直となり、歯先部分のみが歯付プーリ2のフランジ3に接触するのではなく、広い面で略均等な力で接触する。このため、応力の集中が抑えられ、摩耗を原因とする粉塵の発生が最小限となる。
【0037】
−実施形態1の効果−
したがって、本実施形態にかかる低発塵ベルト1によると、最も幅が拡がりやすい最も心線5から離れた歯の先端に向かうにつれて歯部の幅を徐々に小さくして低発塵ベルト1が歯付プーリ2に掛けられたときに歯先部分のみが歯付プーリ2のフランジ3に接触するのを防止してフランジ3に略均等な力で面接触するようにしたことにより、特に低発塵ベルト1の使用初期における摩耗を原因とする粉塵の発生を防止することができるので、定常発塵に対する排気設備を備えていればよくなり、排気設備を簡単なものとすることができる。また、初期発塵を収めるために長時間空運転を行う必要がなく、走行停止時間を短縮することができるので、生産性を向上させることができる。
【0038】
上記実施形態によれば、ベルト歯部7の側面7aをベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形するようにしたことにより、長尺の低発塵ベルト1であっても成形が容易であるため、製造コストの増加を最小限とすることができる。
【0039】
上記実施形態によれば、底面側側面7aを3°以上10°以下傾斜させて成形したことにより、幅が拡がった底面側側面7aを歯付プーリ2のフランジ3に満遍なく当接させて粉塵の発生を効果的に防止することができる。
【0040】
−発塵評価テスト−
次に、本実施形態にかかる低発塵ベルト1を図5に示す発塵評価機10に掛けて評価した結果を説明する。なお、この評価は、JISB9926のクリーンルームに使用する機器の運動機構からの発塵量測定方法に従っている。
【0041】
発塵評価機10は、試験体設置部11を備え、この試験体設置部11内に一対の歯付プーリ2が白抜き矢印の方向に駆動可能に設けられている。これら歯付プーリ2に低発塵ベルト1が掛けられる。
【0042】
試験体設置部11の上流側には、送風部12が設けられ、外気を取り入れ可能に構成されている。この送風部12の下流側にエアフィルタ部13が設けられ、試験体設置部11内に清浄空気が吸い込まれるようになっている。
【0043】
試験体設置部11内を通った空気は、測定部14を通って放出される。この測定部14内に設けた発塵センサ(図示せず)により、発塵量が測定されるようになっている。
【0044】
例えば、本テストに使用した低発塵ベルト1のベルト歯部7を含む全体の厚みは4mm、幅は20mm、周長は1mであり、心線5の本数は11本である。歯付プーリ2の直径は120mm、歯数数は48歯、幅は30mmとする。張力は400N、回転数200rpm、一方向回転で600分走行させる。
【0045】
実施例:傾斜角度α=5°(歯先からの成形高さh=1mm)、比較例1:傾斜角度α=0°、比較例2:傾斜角度α=30°(歯先からの成形高さh=1mm)として側面7aの傾斜角度を変化させた場合の発塵量を測定した結果を図6に示す。
【0046】
図6に示すように、傾斜を設けない比較例1の発塵量と、傾斜角度の大きい比較例2とは、発塵量がほぼ等しくなっている。つまり、傾斜角度が大きすぎても効果はないことがわかる。
【0047】
傾斜角度5°の実施例では、特に初期段階の360分経過までの期間で比較例1及び2に比べて発塵量が少なくなっている。
【0048】
つまり、傾斜角度は、材質、厚さ、幅等にもよるが、大きすぎても小さすぎてもよくなく、本実施例では5°前後が最適であることがわかる。
【0049】
−実施形態1の変形例−
ベルト歯部7は、はす歯よりなるものとしてもよい。このはす歯に噛み合うように、歯付プーリ2の外周面に歯溝4を形成する。
【0050】
はす歯の場合、運転時の清音化が可能ではあるが、構造上、低発塵ベルト1の幅方向のいずれかへ低発塵ベルト1が寄って行くので、歯付プーリ2のフランジ3にベルト歯部7の側面7aをこすりながら運転される。このため、フランジ3との摩擦はより強くなる方向にあるが、本実施形態によると、ベルト歯部7の幅が先端に向かうにつれて徐々に小さくなっているので、先端側のみがフランジ3に接触することはなく、摩耗は生じにくくなる。
【0051】
この変形例によれば、ベルト歯部7をはす歯としたことにより、運転時の清音化を図ることができると共に、歯付プーリ2のフランジ3にベルト歯部7の側面7aが広い面積で当接するので、はす歯であっても粉塵の発生を最小限に保つことができる。
【0052】
(実施形態2)
図7は本発明の実施形態2にかかる平らな低発塵ベルト101を示し、ベルト歯部を有さない点で上記実施形態1と異なる。なお、本実施形態では、図1〜図6と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0053】
平らな低発塵ベルト101は、ピッチラインL1上に抗張体としての心線105が埋設されたベルト本体106を備え、プーリの外周面に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面は伝動に寄与しない。図示しないが、本実施形態のプーリは、上記実施形態1のような歯溝4は形成されていない。
【0054】
そして、上記低発塵ベルト1におけるベルト本体6のプーリのフランジと接触する両側面106aの間隔は、底面に向かうにつれて徐々に小さくなっている。すなわち、両側面106aは、長手方向から見て直線状に斜めに成形され、その傾斜角度αは、材質、厚さ、幅等にもよるが、本実施形態では、概ね1°≦α≦20°であり、3°≦α≦10°が好ましい。傾斜を設ける範囲は、上限がピッチラインL1であり、それ以下の低い領域、すなわち底面側の領域で適宜設計可能である。
【0055】
上記実施形態1と同様にプーリに掛けると、側面106aの底面側が圧縮により変形してほぼ垂直となり、略均等な力でフランジに面接触するように構成されている。
【0056】
すなわち、低発塵ベルト101がプーリに巻き付く際に心線105を基準に心線105よりも内側(底面側)は長手方向に圧縮されようとし、外側は長手方向に伸張されようとするが、低発塵ベルト101に用いられる材料はウレタン、ゴム、エラストマーなどのゴム状弾性体であり、非圧縮性を有する材料であるため、心線105よりも内側では長手方向に圧縮されようとする体積を逃がす必要がある。このため、低発塵ベルト101がプーリに巻き付いた状態では、側面方向にのみ自由度があるので、心線105よりも内側ではベルト幅が拡がろうとする。最も幅が拡がりやすいのは、最も心線105から離れたベルト本体6底面部であるため、低発塵ベルト101がプーリに巻き付いたときに底面近傍は必ず幅が拡がる。
【0057】
しかしながら、本実施形態では、ベルト本体6の幅がプーリの外周面に向かうにつれて徐々に小さくなっているので、ベルト本体6の底面側の幅が拡がっても、側面106aがほぼ垂直となり、底面近傍のみがプーリのフランジに接触するのが防止される。このため、側面106aが略均等な力でフランジに面接触して摩耗を原因とする粉塵の発生が最小限となる。また、側面106aを成形するときには、直線状に斜めに成形すればよいので、長尺の低発塵ベルト101であっても成形が容易である。
【0058】
したがって、本実施形態にかかる低発塵ベルト101においても、最も幅が拡がりやすい最も心線105から離れたベルト本体106の底面部分に向かうにつれてベルト本体106の幅を徐々に小さくして底面近傍のみがプーリのフランジに接触するのを防止してフランジに略均等な力で面接触するようにしたことにより、特に低発塵ベルト101の使用初期における摩耗を原因とする粉塵の発生を防止することができるので、定常発塵に対する排気設備を備えていればよくなり、排気設備を簡単なものとすることができる。また、初期発塵を収めるために長時間空運転を行う必要がなく、走行停止時間を短縮することができるので、生産性を向上させることができる。また、ベルト本体106側面をベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形するようにしたことにより、長尺の低発塵ベルト101であっても成形が容易であるため、製造コストの増加を最小限とすることができる。
【0059】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0060】
すなわち、上記実施形態では、ベルト本体6,106の背面側は平坦としたが、ブロックやひれ状のプロファイルを成形してもよい。このことで、コイン、食品、ガラス等の搬送を適切に行うことができる。
【0061】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態1にかかる低発塵ベルトが歯付プーリに掛けられたベルト伝動装置の概略を示す側面図である。
【図2】歯付の低発塵ベルトを示す斜視図である。
【図3】歯付の低発塵ベルトの断面図である。
【図4】歯付の低発塵ベルトを歯付プーリに掛けた場合の断面図である。
【図5】発塵評価機を示す側面図である。
【図6】発塵評価テストの結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態2にかかる平らな低発塵ベルトを示す斜視図である。
【図8】従来の歯付伝動ベルトの変形を説明するための断面図であり、(a)が歯付プーリに掛ける前を示し、(b)が歯付プーリに掛けたときを示す。
【図9】従来の歯付伝動ベルトの摩耗の様子を調べた結果を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 歯付の低発塵ベルト
2 歯付プーリ
3 フランジ
4 歯溝
5 心線(抗張体)
6 ベルト本体
7 ベルト歯部
10 発塵評価機
101 平らな低発塵ベルト
105 心線(抗張体)
106 ベルト本体
L1 ピッチライン
P ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体と、該ベルト本体のランドライン上にベルト長手方向に所定のピッチで配設された複数のベルト歯部とを備え、
歯付プーリの歯溝に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面は伝動に寄与しない歯付の低発塵ベルトであって、
上記ベルト歯部における上記歯付プーリのフランジと接触する両側面は、先端に向かうにつれて徐々に間隔が小さくなっており、上記歯付プーリに巻き付いたときに該歯付プーリのフランジに略均等な力で面接触するように構成されている
ことを特徴とする低発塵ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載の低発塵ベルトにおいて、
上記両側面は、ベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形されている
ことを特徴とする低発塵ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の低発塵ベルトにおいて、
上記ベルト歯部は、はす歯よりなる
ことを特徴とする低発塵ベルト。
【請求項4】
ピッチライン上に抗張体が埋設されたベルト本体を備え、プーリの外周面に当接する底面側のみが伝動に寄与し、側面は伝動に寄与しない平らな低発塵ベルトであって、
上記ベルト本体のプーリのフランジと接触する両側面の間隔が先端に向かうにつれて徐々に小さくなるように、該両側面は、ベルト長手方向から見て直線状に斜めに成形され、上記プーリに巻き付いたときに該プーリのフランジに略均等な力で面接触するように構成されている
ことを特徴とする低発塵ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−1959(P2010−1959A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160867(P2008−160867)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】