説明

低発塵紙

【課題】本発明の目的は、クリーンルーム内で使用する、アウトガスの発生が少ない、低い発塵性を有する低発塵紙を提供することである。
【解決手段】本発明に係る低発塵紙は、天然繊維を主成分とし、オーブンで80℃の加熱条件下において1時間アウトガスを捕集し、GC−MSにて分析し、定量した質量1g当たりのアウトガス発生質量で定義されるアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下の基紙に、アウトガス発生速度が800ng/g/h以下の水溶性高分子を含有せしめた低発塵紙であって、該低発塵紙のアウトガス発生速度が1000ng/g/h以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然繊維を主成分とする基紙に水溶性高分子を含有せしめた、アウトガスが少なく、半導体、液晶、食品・バイオ、医療等の産業分野のクリーンルーム内で使用できる低発塵紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス、医療、食品・バイオ等の技術分野において、テクノロジーの高度化が進み、それらの分野において、製造現場、研究現場などで極めて高度なクリーンルームが必要とされている。そして、それらのクリーンルーム内で使用されるシートについても、低い発塵性を有することが必要である。この課題に対し、クリーンルーム内で使用されるシートとして、天然繊維を主成分とする基紙に、ブタジエン−スチレン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の樹脂を含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−170749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体製造プロセス等の高度化、微細化に伴いクリーンルームに求められる清浄度が一層厳しくなるに従い、クリーンルーム内で使用される機材から放出されるガス状有機物(以下、「アウトガス」と記載する。)が問題となってきている。そこで、今後はシートからのアウトガスも問題となると考えられる。しかし、特許文献1で開示されている樹脂の水系分散物には、未反応のモノマー及び樹脂を水に分散するための分散剤が含まれており、それらはアウトガスの観点からは望ましくない。なお、本明細書において、水系高分子とは、水系分散物、すなわち分散剤を加えることで水に分散可能な樹脂(エマルジョン)をいい、水溶性高分子とは、水に常温又は加温によって溶解する樹脂、デンプン等の高分子をいう。
【0005】
そこで、本発明の課題は、クリーンルーム内で使用する、アウトガスの発生が少ない、低い発塵性を有するシート、すなわち、低発塵紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の種類の繊維とバインダーを用いることで、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る低発塵紙は、天然繊維を主成分とし、オーブンで80℃の加熱条件下において1時間アウトガスを捕集し、GC−MSにて分析し、定量した質量1g当たりのアウトガス発生質量で定義されるアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下の基紙に、アウトガス発生速度が800ng/g/h以下の水溶性高分子を含有せしめた低発塵紙であって、該低発塵紙のアウトガス発生速度が1000ng/g/h以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る低発塵紙では、前記水溶性高分子は、酸化デンプン、デキストリン等のデンプン類、ポリビニルアルコール又はそれらの誘導体類のうち少なくともいずれか一種であることが好ましい。溶解に分散剤が不要であり、かつ、アウトガス発生速度の低いものが得られやすい。

【0008】
本発明に係る低発塵紙では、半導体製造装置・材料国際協会(SEMI)Doc.No2362規定に準拠した方法で求めた擦り合わせ発塵度が、50個/L以内であることが好ましい。クリーンルーム内での使用を満足することができる。
【0009】
本発明に係る低発塵紙では、前記基紙に対して、前記水溶性高分子が0.5〜10質量%含有されていることが好ましい。低発塵性と低アウトガス発生速度の両方を満足させやすく、現場作業性も満足させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る低発塵紙は、シートからのアウトガスの発生問題を生じさせずに、低い発塵性を有するため、クリーンルーム内での使用条件を充分に満足させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0012】
本実施形態に係る低発塵紙は、天然繊維を主成分とし、オーブンで80℃の加熱条件下において1時間アウトガスを捕集し、GC−MSにて分析し、定量した質量1g当たりのアウトガス発生質量で定義されるアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下の基紙に、アウトガス発生速度が800ng/g/h以下の水溶性高分子を含有せしめた低発塵紙であって、該低発塵紙のアウトガス発生速度が1000ng/g/h以下である。
【0013】
基紙の主成分となる天然繊維としては、叩解によって容易に強度が向上する木材繊維、靱皮繊維、雁皮繊維などからなる天然由来の植物繊維が好ましい。本発明においては、特に木材繊維が、入手が容易である点で好ましい。木材繊維の具体例としては、針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)、針葉樹晒亜硫酸塩パルプ(N−BSP)、広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)、広葉樹晒亜硫酸塩パルプ(L−BSP)などがある。
【0014】
基紙は、オーブンで80℃の加熱条件下において1時間アウトガスを捕集し、GC−MSにて分析し、定量した質量1g当たりのアウトガス発生質量で定義されるアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下、好ましくは1000ng/g/h以下、更に好ましくは500ng/g/h以下のものを使用する。アウトガス発生速度が1200ng/g/hを超えると、低発塵性が得られたとしても、シート全体でアウトガスの発生速度が大きく、クリーンルームでの使用に適さない。本実施形態においては、基紙についてアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下とするために、天然繊維を基紙の主成分とする。ここで天然繊維について脱リグニンの処理を行なったものを使用することが好ましい。なお、アウトガス発生速度が200ng/g/h以上の基紙を使用すればよく、これよりアウトガス速度を小さくしても、処理費用がかかり、また、強度低下という問題が生じることもある。
【0015】
なお、本実施形態において、アウトガス発生総量ではなく、アウトガス発生速度によって、基紙、水溶性高分子及びシートを特定する理由は、常温でのアウトガス発生総量が少なく、正確な測定が困難のためだからである。
【0016】
基紙の主成分である天然繊維のほか、繊維の副成分として合成繊維、ガラス繊維等の非天然繊維をアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下を満たす限り配合することもできるが、非天然繊維はアウトガスを発生するものもあり、好ましくは基紙に含ませる繊維は、天然繊維だけとする。また、基紙には、アウトガス発生速度が1200ng/g/h以下を満たす限り、定着剤、サイズ剤、紙力向上剤、顔料、填料、染料、歩留まり向上剤等、各種添加剤を含有させてもよい。
【0017】
基紙は、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機にて紙匹を形成した後に、乾燥させて得ることができる。
【0018】
水溶性高分子としては、アウトガス発生速度が800ng/g/h以下のものを使用する。アウトガス発生速度が800ng/g/hを超えると、低発塵性が得られたとしても、低発塵紙全体でアウトガスの発生速度が大きく、クリーンルームでの使用に適さない。本実施形態においては、水溶性高分子についてアウトガス発生速度が800ng/g/h以下とするために、ケン化度と重合度が高いポリビニルアルコールを使用する。ケン化度は例えば85mol%以上、重合度は500以上とすることが好ましい。ケン化度と重合度が高いポリビニルアルコールは、アウトガス発生速度を小さくできるので好適であり、ポリビニルアルコールの揮発分も少なくできる。例えば、ポリビニルアルコールの揮発分は、9%以下のものが好ましい。また、ポリビニルアルコールは、カルボキシル基変性等のアニオン変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。基紙の紙層内への浸透が適度に防止されるからである。なお、アウトガス発生速度が200ng/g/h以上の水溶性高分子を使用すればよく、これよりアウトガス速度を小さくするためには、処理費用がかかり、また、溶解が困難という問題が生じることもある。
【0019】
本実施形態に係る低発塵紙では、アウトガス発生速度を小さく保つためと発塵防止効果の改善のために、水溶性高分子と水系高分子との併用は排除しないが、水溶性高分子だけの使用が好ましい。
【0020】
水溶性高分子の具体例としては、酸化デンプン、デキストリン等のデンプン類、ポリビニルアルコール又はそれらの誘導体類のうち少なくともいずれか一種であることが好ましい。これらの水溶性高分子は、水系高分子と異なり、分散剤を含ませる必要がないので、アウトガス発生速度を小さく保ちやすい。また、水溶性であるため、未反応のモノマー等のアウトガス発生源となる揮発性有機物を除去できるので精製しやすく、アウトガス発生速度の低いものが得られやすい。本発明においては、発塵防止効果の大きさから、ポリビニルアルコールが特に好ましい。また、繊維との結合力を更に向上させること、塗工安定性を改善することを目的として、各種変性を施したポリビニルアルコールでもよい。さらに、ポリビニルアルコールとデンプン類とを併用してもよい。
【0021】
また、基紙に水溶性高分子を含浸させる方法としては、各種含浸方法があるが、本実施形態に係る発塵紙においては、サイズプレスが特に好ましい。
【0022】
水溶性高分子の含有量は、対基紙に対して、0.5〜10質量%含有されることが好ましい。含有量が0.5質量%未満の場合は、発塵量が多くなる場合がある。また、10質量%を超えると、現場作業性が悪くなる場合がある。
【0023】
水溶性高分子を含浸した後の乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥などが挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0024】
本実施形態に係る低発塵紙は、天然繊維を主成分とし、アウトガス発生速度が1200ng/g/h以下の基紙に、アウトガス発生速度が800ng/g/h以下の水溶性高分子を含有せしめ、アウトガス発生速度を小さくする。本実施形態に係る低発塵紙は、発塵性抑制効果が得られ、かつ、アウトガス発生速度を損なわない範囲で、定着剤、サイズ剤、紙力向上剤、顔料、填料、染料、歩留まり向上剤等、各種添加剤を含有させてもよい。各種添加剤についても、アウトガス発生源を除くことで、シートとしてはアウトガス発生速度を1000ng/g/h以下、好ましくは750ng/g/h以下、さらに好ましくは500ng/g/h以下とする。なお、シートとしては、アウトガス発生速度が200ng/g/h以上であってもよく、これよりアウトガス速度を小さくするためには、多額の処理費用がかかり、実用的でない。
【0025】
本実施形態に係る低発塵紙では、半導体製造装置・材料国際協会(SEMI)Doc.No2362規定に準拠した方法で求めた擦り合わせ発塵度が、50個/L以内、好ましくは10個/L以内とする。発塵性は、主として水溶性高分子の種類、その添加量によって調整できるが、50個/L以内であればクリーンルーム内での使用を満足することができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0027】
(実施例1)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってカナダ標準濾水度(CSF)400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度256ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスで水溶性高分子としてアウトガス発生速度657ng/g/hのポリビニルアルコール(商品名:ゴーセナールT−350、日本合成化学工業株式会社、カルボキシル基変性、ケン化度:93〜95mol%、重合度:3500、揮発分:7%以下)を対基紙2.5質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0028】
(実施例2)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってCSF400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーに湿紙力増強剤(商品名:ポリフィックス259、昭和高分子株式会社)を対パルプ0.25質量%添加して長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度1130ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスで水溶性高分子としてアウトガス発生速度657ng/g/hのポリビニルアルコール(商品名:ゴーセナールT−350、日本合成化学工業、カルボキシル基変性、ケン化度:93〜95mol%、重合度:3500、揮発分:7%以下)を対基紙2.5質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0029】
(実施例3)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってCSF400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度256ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスで水溶性高分子としてアウトガス発生速度726ng/g/hのポリビニルアルコール(商品名:PVA135H、株式会社クラレ、ケン化度:99.7mol%以上、重合度:3500、揮発分:9%以下)を対パルプ2.5質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0030】
(実施例4)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってCSF400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーに湿紙力増強剤(商品名:ポリフィックス259、昭和高分子株式会社)を対パルプ0.25質量%添加して長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度1130ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスで水溶性高分子としてアウトガス発生速度726ng/g/hのポリビニルアルコール(商品名:PVA135H、株式会社クラレ、ケン化度:99.7mol%以上、重合度:3500、揮発分:9%以下)を対基紙2.5質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0031】
(比較例1)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってCSF400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーに湿紙力増強剤(商品名:ポリフィックス259、昭和高分子株式会社)を対パルプ0.5質量%添加して長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度2100ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスで水系高分子としてアウトガス発生速度10800ng/g/hのブタジエン−スチレン樹脂ラテックス(商品名:PA−3010、日本A&L株式会社)を対基紙0.5質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0032】
(比較例2)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってCSF400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーに湿紙力増強剤(商品名:ポリフィックス259、昭和高分子株式会社)を対パルプ0.5質量%添加して長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度2100ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスでアウトガス発生速度964ng/g/hの高分子として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA135H、株式会社クラレ、ケン化度:99.7mol%以上、重合度:3500、揮発分:9%以下)97質量%とブタジエン−スチレン樹脂ラテックス(商品名:PA−3010、日本A&L株式会社)3質量%との混合体を対基紙3.0質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0033】
(比較例3)
広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)を、叩解機によってCSF400mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーに湿紙力増強剤(商品名:ポリフィックス259、昭和高分子株式会社)を対パルプ0.5質量%添加して長網抄紙機で抄紙・乾燥して、アウトガス発生速度2100ng/g/hの基紙を得た。この基紙に、サイズプレスで水系高分子としてアウトガス発生速度10800ng/g/hのブタジエン−スチレン樹脂ラテックス(商品名:PA−3010、日本A&L株式会社)を対基紙3.0質量%含有させ、坪量50g/mのシートを得た。
【0034】
(アウトガス発生速度の測定)
ダイナミックヘッドスペース法を用いた。発生ガス濃縮導入装置を(MS−TD−258、ジーエルサイエンス社製)を用い、水溶性高分子、水系高分子、水溶性・水系高分子の混合体、得られた基紙又は得られた低発塵紙からそれぞれ試料約0.3gを採り、99.999%のHe気流(流量50ml/min)中で80℃、1時間加熱し、試料から発生したアウトガスを吸着剤(TENAX TA)で捕集濃縮し、270℃で再脱離させたガスをクライオフォーカスユニットでサンプルバンドを狭めた後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP5050A、島津製作所製)に導入して定量した。キャピラリーカラムは、TC−1(ジーエルサイエンス社製、0.25mm×60m、膜厚0.25μm)を用い、質量分析計のイオン化方法を電子衝撃法(イオン化電圧70eV)とした。このときの単位時間当たりのアウトガス発生量をアウトガス発生速度として、n−ヘキサデカン検量線によって相対評価した。
【0035】
(発塵度の測定)
発塵度の測定は、半導体製造装置・材料国際協会(SEMI)Doc.No2362規定に準拠した方法を用いた。得られたシートからA5判(210mm×148mm)の試験片を2枚用意し、クリーンベンチ内において、試験片の表と裏を重ね合わせ、10秒間に3回の割合で200秒間擦り合わせる。このときに発生した0.1μm以上の粒子を光散乱粒子計測器(KC−18、リオン社製)で測定した。該粒子の総個数(1リットル中)から発塵度を表した。したがって、数値が小さいほど発塵し難いことを表す。評価基準は、次のとおりである。
10個/リットル以下・・・低発塵紙として問題なく使える
10個/リットルを超えて50個/リットル以下・・・JIS清浄度クラス7以下のクリーンルーム中で低発塵紙として問題なく使える(実用下限レベル)
50個/リットル超・・・低発塵紙として使用不可(実用不可)
【0036】
以上の測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1のアウトガス発生速度は、実施例1〜3のシートでは1000ng/g/h以下とクリーンルーム内での使用において、シートからのアウトガスの発生問題を生じさせないレベルであったが、比較例1は14500ng/g/h、比較例2は99000ng/g/h、比較例3は115000ng/g/hとクリーンルーム内での使用において、シートからのアウトガスの発生問題を生じさせるレベルであった。また、発塵度は、比較例1だけが318と三桁台であり、劣っていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維を主成分とし、オーブンで80℃の加熱条件下において1時間アウトガスを捕集し、GC−MSにて分析し、定量した質量1g当たりのアウトガス発生質量で定義されるアウトガス発生速度が1200ng/g/h以下の基紙に、アウトガス発生速度が800ng/g/h以下の水溶性高分子を含有せしめた低発塵紙であって、該低発塵紙のアウトガス発生速度が1000ng/g/h以下であることを特徴とする低発塵紙。
【請求項2】
前記水溶性高分子は、酸化デンプン、デキストリン等のデンプン類、ポリビニルアルコール又はそれらの誘導体類のうち少なくともいずれか一種であることを特徴とする請求項1に記載の低発塵紙。
【請求項3】
半導体製造装置・材料国際協会(SEMI)Doc.No2362規定に準拠した方法で求めた擦り合わせ発塵度が、50個/L以内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低発塵紙。
【請求項4】
前記基紙に対して、前記水溶性高分子が0.5〜10質量%含有されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の低発塵紙。

【公開番号】特開2010−248638(P2010−248638A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96308(P2009−96308)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】