説明

低発煙性ケーブル

【課題】 火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、シース側に流出するのを防ぎ、さらにシース外部へ流出するのを防ぐことができ、発煙量の発生を抑制することのできる低発煙性ケーブルを提供すること。
【解決手段】 導体2と、導体2上に被覆する絶縁体3とによって絶縁線心4を形成し、この複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上から金属テープ6をシース7下の外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,金属テープ6の上にシース7を被覆して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発煙性ケーブルに係り、特に火災等によって高熱や火炎に晒されても、シース下の絶縁体・介在等が溶融して火災へ滴下することを防ぐことができ、発煙量の少ない低発煙性ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、多数の人が集合する場所においては、火災等が発生した場合、場内の人を安全に非常口に案内するために、非常口案内灯などの避難誘導灯など、避難が完了する程度の一定の時間点灯させておくことが要求されている。そこで耐火対象物等における消火設備、警報設備、避難設備の配線に用いられる耐火ケーブルに関しては、社団法人日本電線工業会が自主的に独自の耐火電線等に関する認定基準を設け、その性能、構造および材料等の品質の確保を図っている。
【0003】
一般に、火災が発生すると、煙が発生し、この火災発生時の発煙によって人間が安全な場所に避難する場合の視界が遮られる。そこで耐火対象物等における消火設備、警報設備、避難設備の配線に用いられる耐火ケーブルに関しては、社団法人日本電線工業会が自主的に独自の耐火電線等に関する認定基準を設け、人を安全に非常口に案内するために、非常口案内灯などの避難誘導灯など、避難が完了する程度の一定の時間点灯させておくためのその性能、構造および材料等の品質を確保するだけではなく、火災等によって高熱や火炎に晒されても、発煙量の少ない低発煙性ケーブルが要求されている。
【0004】
そこで、近年、火災時の視界の確保が行えるように、限定条件下で燃焼する電気ケーブルの煙濃度測定(IEC61034 3mキューブ発煙濃度試験、以下、3mキューブ試験という)を満足する低発煙性ケーブルがある。この低発煙性ケーブルは、限定条件下で燃焼する電気ケーブルの煙濃度測定(3mキューブ試験)を満足するが、火災発生の際は、火災等によって加熱され、この火災等の熱によって低発煙性ケーブルのシース下の絶縁体・介在等の合成樹脂が溶融する。このシース下の絶縁体・介在等の合成樹脂が溶融し、火災へ滴下すると、発煙量が増加する。
すると、この発煙量の増加によって視界が遮られ、火災時の視界の確保が行えなくなるという結果になる。
【0005】
従来の耐火ケーブルとして、マイカテープを巻回し、耐火層を形成してなる耐火ケーブルが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の耐火ケーブルは、図1に示す如く、導体11上に、内層の耐火層12として軟質集成マイカ箔12aと延伸ポリプロピレンテープ12bとをシリコン系ワニス接着剤で貼り合わせたプラスチックマイカテープ12を、マイカ面を導体11側に向けて縦添えし、その上に外層の耐火層13として軟質集成マイカ箔13aとガラステープ13bとをシリコン系ワニス接着剤で貼り合わせたガラスマイカテープ13を、マイカ面を導体11側に向けて巻回し、その外側にポリエチレン等のプラスチック絶縁体層14を設けて絶縁線心1が構成されている。このような絶縁線心1の所要本数(例えば、3本)を適当な介在物2とともに撚り合わせ、その上に押さえ巻きテープ3を施しさらに、その外側にポリエチレン等のプラスチックシース4を設けて特許文献1の耐火ケーブルが構成されている。
【0006】
この押さえ巻きテープ3は、絶縁線心1の所要本数(例えば、3本)を適当な介在物2とともに撚り合わせて、それらを押さえるために巻回するものであるから、横巻き(オーバーラップ巻きする場合もある)されている。そして、火災の際の発煙量を抑制するため、押さえ巻きテープ3の上に被覆するポリエチレン等のプラスチックシース4に塩化ビニル系ポリマー100重量部に、ヒドロキシ錫酸亜鉛1〜20重量部及びほう酸亜鉛5〜30重量部を配合して構成する難燃性低発煙性塩化ビニル樹脂組成物を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。すなわち、特許文献1に示されるような従来の耐火ケーブルのシースには、低発煙材料が使用されている。
【特許文献1】実開平7−41876号公報(第5頁、図1)
【特許文献2】特開平11−80474号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来の耐火ケーブルのシースに、低発煙材料が使用されていても、特許文献1の耐火ケーブルは、一旦火災に遭うと、高熱や火炎に晒されて、熱せられると、導体11上に巻回される内層の耐火層12と外層の耐火層13の上に押出被覆されるポリエチレン等のプラスチック絶縁体層14の合成樹脂と、絶縁線心1の所要本数(例えば、3本)を撚り合わせた間に介在させる介在物2の合成樹脂が溶融しで流れ出す。このように火災の際に耐火ケーブルが高熱や火炎に晒されて、熱せられ、絶縁体・介在等の合成樹脂が溶融すると、押さえ巻きテープ3の隣り合う巻きテープの隙間からシース4の外部へ流出し、火炎に滴下し、燃焼するため発煙量が増加するという問題を有している。
【0008】
本発明の目的は、火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、シース側に流出するのを防ぎ、さらにシース外部へ流出するのを防ぐことができ、発煙量の発生を抑制することのできる低発煙性ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1記載の低発煙性ケーブルは、導体と、導体上に被覆する絶縁体とによって絶縁線心を形成し、この絶縁線心の複数本を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体にそれらの上から金属テープをシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,前記金属テープの上にシースを被覆して構成したものである。
【0010】
上記課題を解決するため、請求項2記載の低発煙性ケーブルは、導体と、導体上に被覆する絶縁体とによって絶縁線心を形成し、この絶縁線心の複数本を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体にそれらの上から最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープをシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,前記マイカテープの上にシースを被覆して構成したものである。
【0011】
上記課題を解決するため、請求項3記載の低発煙性ケーブルは、導体と、導体上に被覆する絶縁体とによって絶縁線心を形成し、この絶縁線心の複数本を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体にそれらの上から最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープを巻回し、該マイカテープの上に金属テープをシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,前記金属テープの上にシースを被覆して構成したものである。
【0012】
上記課題を解決するため、請求項4記載の低発煙性ケーブルは、請求項1,2又は3記載の低発煙性ケーブル導体において、前記シースを、低発煙性材料を使用し、前記耐火層上に縦添えする前記金属テープの厚さを、0.05mm以上にしたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、シースの直下に金属テープを外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えしてあるため、火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、金属テープの重ね部からシース側に流出するのを防ぐことができ、シースの外部へ流出するのを防げることから、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂の燃焼によって発生する煙の量を抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、シースの直下に最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープを外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えしてあるため、火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、マイカテープの重ね部からシース側に流出するのを防ぐことができ、シースの外部へ流出するのを防げることから、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂の燃焼によって発生する煙の量を抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、絶縁線心の複数本を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体にそれらの上から最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープをテープ巻き外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,さらに、マイカテープの上に金属テープをシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で、前記マイカテープの重ね部と異なる位置で縦添えてあるため、火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、マイカテープの重ね部からシース側に流出するのを防ぐことができ、もし、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、マイカテープの重ね部からシース側に流出しても、金属テープの重ね部からシース側に流出するのを防ぐことができ、シースの外部へ流出するのを防げることから、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂の燃焼によって発生する煙の量を抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、シースに低発煙性材料を使用し、耐火層上に縦添えするマイカテープと金属テープの厚さを、0.05mm以上に構成してあるため、火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、マイカテープと金属テープの重ね部から外部に流出するのを防ぐことができ、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂の燃焼によって発生する煙の量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の低発煙性ケーブルの第1の実施の形態を示す斜視図であり、図2は図1に図示の低発煙性ケーブルの断面図である。
【0018】
図1において、1は、本発明に係る低発煙性ケーブルである。この低発煙性ケーブル1は、多心の低発煙性ケーブル(図1,2においては、3心のケーブル)の場合である。
図1,2において、低発煙性ケーブル1は、導体2と、導体2の上に被覆する絶縁体層3によって構成される絶縁線心4と、絶縁線心4を2本以上撚り合わせ隙間に介在する介在物5とを有している。この複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上から、金属テープ6をシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えしてある。そして、この金属テープ6の上にシース7が押出し被覆されている。
【0019】
この絶縁体層3は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂で構成されている。そして、絶縁体層3は、導体2の上に押出し被覆されて、絶縁線心4が形成されている。この絶縁体層3を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらはそれぞれ特性を有し、ポリオレフィン系樹脂として単独で使用することも、複数種類を併用することも可能である。例えば、EEAやEVAに比べて機械的特性は良いが難燃剤を多く添加することができないポリエチレンと、難燃剤を多く添加することのできるEEAやEVAとを併用することで、機械的特性と難燃剤の受容性の良い材料を構成することが可能となる。
【0020】
また、介在物5は、絶縁線心4を3本撚り合わせる際に、各絶縁線心4間に添えて低発煙性ケーブル1が断面略円形になるようにするためのものである。この介在物5は、合成樹脂製の紐、ジュート、PP解繊糸等が一般的に用いられている。
また、金属テープ6には、銅をテープ状にしたもの、アルミニウムをテープ状にしたもの、鉄をテープ状にしたものがある。
【0021】
また、最外層に被覆されるシース7は、ポリオレフィン系樹脂又は塩化ビニル系樹脂によって構成されている。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらはそれぞれ特性を有し、ポリオレフィン系樹脂として単独で使用することも、複数種類を併用することも可能である。例えば、EEAやEVAに比べて機械的特性は良いが難燃剤を多く添加することができないポリエチレンと、難燃剤を多く添加することのできるEEAやEVAとを併用することで、機械的特性と難燃剤の受容性の良い材料を構成することが可能となる。
また、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル樹脂等がある。
【0022】
シース7のシース材料としては、耐燃ポリエチレンや塩化ビニルを使用しているため、耐燃性に優れ着火しにくい構造にはなっているが、火炎に曝されて燃焼したときに発生する煙を考慮して、低発煙性材料を使用してもよい。低発煙性材料としては、例えば、塩化ビニル系ポリマー100重量部に、ヒドロキシ錫酸亜鉛1〜20重量部及びほう酸亜鉛5〜30重量部を配合して構成する難燃性低発煙性塩化ビニル樹脂組成物がある。
【0023】
また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えする金属テープ6の重ね幅は、シース7下の外径D×π/2重ね以上とするのが適している。この金属テープ6の重ね幅をシース7下の外径D×π/2重ね以上としたのは、熱によって溶融した絶縁体層3、介在物5の合成樹脂が、シース7の外部へ流出せず、火炎に滴下するのを防止できるからである。そして、この金属テープ6の重ね幅、シース7下の外径D×π/2重ね以上は、最も合成樹脂の溶融物が流出し易い状態、すなわち、金属テープ6の重ね合わせ部が鉛直方向にある場合においても、熱によって溶融した絶縁体層3、介在物5の合成樹脂が流動しても、シース7の外部に流出するのを防止できる値である。
【0024】
また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えする金属テープ6の厚さを、0.05mm以上にするとより効果的である。この金属テープ6の厚さを、0.05mm以上としたのは、金属テープ6の厚さが0.05mmよりも小さい場合、防火性能が弱いため金属テープ6が破れて、熱によって溶融した絶縁体層3、介在物5の合成樹脂である溶融物が漏れ出してしまうからである。
【0025】
本発明に係る低発煙性ケーブルの第2の実施の形態は、図1,2に示す如く、導体2と、導体2の上に被覆する絶縁体層3によって構成される絶縁線心4と、絶縁線心4を2本以上撚り合わせ隙間に介在する介在物5とを有し、この複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上から、マイカテープ8をシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えしてある。そして、このマイカテープ8の上にシース7が押出し被覆されている。
【0026】
マイカテープ8は、耐火テープによって形成されており、テープ基材となる合成樹脂フィルムにマイカ粉又はアルミナ粉の耐火材を貼り合わせて構成されている。そして、この耐火テープとしては、例えば、合成樹脂フィルムに微粒子の軟質天然集成マイカ(金雲母)片を集めて貼り合わせて集成し、テープ状にしたものが集成マイカテープがある。この集成マイカテープには、片面フィルム集成マイカテープ、両面フィルム集成マイカテープ等があり、これらのいずれでもよい。図1に示すマイカテープ8は、片面フィルム集成マイカテープを例に採っている。この片面フィルム集成マイカテープは、ポリエチレンテープにマイカシートを貼り合わせて構成されている。
【0027】
この集成マイカテープの微粒子の軟質天然集成マイカ(金雲母)のマイカ片は、鱗片状に形成され、マイカ鱗片1個の厚さが、2μm以下で、マイカ鱗片の粒径は、600μm未満で構成するのがよい。この軟質天然集成マイカ(金雲母)のマイカ鱗片の粒径は、特に250μm以下のもので構成するのが最適である。したがって、マイカ鱗片の粒径は、最大の粒径値が600μm未満であることが望ましい。
そして、マイカテープ8の基材であるポリオレフィン系樹脂又は塩化ビニル系樹脂に練り込む耐火材は、軟質天然集成マイカ(金雲母)を砕片にしたものである。この軟質天然集成マイカ(金雲母)の砕片は、鱗片状に形成され、マイカ鱗片1個の厚さが、2μm以下で、マイカ鱗片の粒径が、600μm未満で構成されているものである。
したがって、マイカテープ8は、テープ基材上に、最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープで、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上にシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えしてある。
【0028】
また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えするマイカテープ8の重ね幅は、シース7下の外径D×π/2重ね以上とするのが適している。このマイカテープ8の重ね幅をシース7下の外径D×π/2重ね以上としたのは、金属テープ6の場合と同じ理由である。
また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えする金属テープ6の厚さを、0.05mm以上にするとより効果的である。このマイカテープ8の厚さを、0.05mm以上としたのは、金属テープ6の場合と同じ理由である。
【0029】
さらに、絶縁体層3、介在物5については、図1,2に示される本発明に係る低発煙性ケーブルの第2の実施の形態と同じである。また、最外層に被覆されるシース7についても、図1,2に示される本発明に係る低発煙性ケーブルの第2の実施の形態と同じである。
【0030】
本発明に係る低発煙性ケーブルの第3の実施の形態は、図1,2に示す如く、導体2と、導体2の上に被覆する絶縁体層3によって構成される絶縁線心4と、絶縁線心4を2本以上撚り合わせ隙間に介在する介在物5とを有し、この複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上から、マイカテープ9をテープ巻きの外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,さらに、このマイカテープ9の上に金属テープ10をシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で、前記マイカテープの重ね部と異なる位置で縦添えしてある。そして、この金属テープ10の上にシース7が押出し被覆されている。
【0031】
マイカテープ9は、耐火テープによって形成されており、テープ基材となる合成樹脂フィルムにマイカ粉又はアルミナ粉の耐火材を貼り合わせて構成されている。そして、この耐火テープとしては、例えば、合成樹脂フィルムに微粒子の軟質天然集成マイカ(金雲母)片を集めて貼り合わせて集成し、テープ状にしたものが集成マイカテープがある。この集成マイカテープには、片面フィルム集成マイカテープ、両面フィルム集成マイカテープ等があり、これらのいずれでもよい。図1に示すマイカテープ9は、片面フィルム集成マイカテープを例に採っている。この片面フィルム集成マイカテープは、ポリエチレンテープにマイカシートを貼り合わせて構成されている。
【0032】
絶縁体層3は、本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態の絶縁体層3及び第2の実施の形態の絶縁体層3と同一である。
また、介在物5は、絶縁線心4を3本撚り合わせる際に、各絶縁線心4間に添えて低発煙性ケーブル1が断面略円形になるようにするためのもので、本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態の介在物5及び第2の実施の形態の介在物5と同一である。
さらに、金属テープ6は、銅をテープ状にしたもの、アルミニウムをテープ状にしたもの、鉄をテープ状にしたもの等であり、本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態の金属テープ6及び第2の実施の形態の金属テープ6と同一である。
【0033】
また、マイカテープ9の集成マイカテープの微粒子の軟質天然集成マイカ(金雲母)のマイカ片は、本発明に係る低発煙性ケーブルの第2の実施の形態のマイカテープ8と同一である。
したがって、マイカテープ9は、テープ基材上に、最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープで、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上にシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えしてある。
【0034】
また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えするマイカテープ9の重ね幅は、テープ巻きの外径D×π/2重ね以上とするのが適している。また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えする金属テープ10の重ね幅は、シース7下の外径D×π/2重ね以上とするのが適している。このマイカテープ9の重ね幅をシース7下の外径D×π/2重ね以上とし、金属テープ10の重ね幅をシース7下の外径D×π/2重ね以上としたのは、本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態の金属テープ6の場合と同じ理由である。
【0035】
また、複数本の絶縁線心4を撚り合わせた線心間に介在物5を充填して一体に形成した上に縦添えするマイカテープ9の厚さ、及びマイカテープ9の上に縦添えする金属テープ10の厚さを、0.05mm以上にするとより効果的である。このマイカテープ9の厚さ、及び金属テープ10の厚さを、0.05mm以上としたのは、本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態の金属テープ6の場合と同じ理由である。
【0036】
さらに、絶縁体層3、介在物5については、図1,2に示される本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同じである。また、最外層に被覆されるシース7についても、図1,2に示される本発明に係る低発煙性ケーブルの第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同じである。
【0037】
次に、本発明に係る低発煙性ケーブルについて、IEC61034による3mキューブ発煙濃度試験を行った。この3mキューブ試験は、3mの試験室内で、アルコール燃料を用い、長さ1mのケーブル試料を燃焼させ、試験室内に封入された煙による光透過の減衰量を評価するものである。すなわち、長さ1mのケーブル試料を燃焼させ、試験室内に封入された煙が多ければ、光透過の減衰量が大きくなる。
【0038】
本発明に係る低発煙性ケーブルについては、代表サイズとして3C×5.5mmによって発煙濃度試験を行った。本発明に係る低発煙性ケーブルの構造は、絶縁線心の上に0.05mm厚のアルミテープ(金属テープ)を縦添えして行った。このアルミテープ(金属テープ)の重ね幅は、シース下外径D×π/2重ねとし、シース材料は、低発煙性材料によって構成した。
比較例として、従来のケーブルの構造を、絶縁線心上に0.05mm厚のアルミテープ(金属テープ)を横巻き(重ね有り)とし、シース材料は、本発明に係る低発煙性ケーブルの場合と同様、低発煙性材料によって構成した。
【0039】
試験結果は、表1に示されている。
【表1】

表1に示される3mキューブ試験の試験結果は、比較品の最小透過率が65%であったのに対し、本発明に係る低発煙性ケーブルの最小透過率が89%となり、より発煙量の少ない低発煙性ケーブルが実現できた。
【0040】
したがって、本実施の形態によれば、火災が発生した際に高熱や火炎に晒されて、シース下の絶縁体および介在が熱によって溶融しても、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂が、金属テープの重ね部からシース側に流出するのを防ぐことができ、シースの外部へ流出するのを防げることから、溶融した絶縁体および介在の合成樹脂の燃焼によって発生する煙の量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の低発煙性ケーブルの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1に図示の低発煙性ケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1……………………低発煙性ケーブル
2……………………導体
3……………………絶縁体層
4……………………絶縁線心
5……………………介在物
6……………………金属テープ
7……………………シース
8……………………マイカテープ
9……………………マイカテープ
10…………………金属テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、導体上に被覆する絶縁体とによって絶縁線心を形成し、この複数本の絶縁線心を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体に形成した上から金属テープをシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,
前記金属テープの上にシースを被覆して構成したことを特徴とする低発煙性ケーブル。
【請求項2】
導体と、導体上に被覆する絶縁体とによって絶縁線心を形成し、この複数本の絶縁線心を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体に形成した上から最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープを、シース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,
前記マイカテープの上にシースを被覆して構成したことを特徴とする低発煙性ケーブル。
【請求項3】
導体と、導体上に被覆する絶縁体とによって絶縁線心を形成し、この複数本の絶縁線心を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体に形成した上から最大の粒径値が600μm未満の鱗片状の軟質マイカを集成してなるマイカテープをテープ巻き外径D×π/2重ね以上の重ね幅で縦添えし,
前記マイカテープの上に金属テープをシース下外径D×π/2重ね以上の重ね幅で、前記マイカテープの重ね部と異なる位置で縦添えし,
前記金属テープの上にシースを被覆して構成したことを特徴とする低発煙性ケーブル。
【請求項4】
前記シースは、低発煙性材料を使用し、前記複数本の絶縁線心を撚り合わせた線心間に介在物を充填して一体に形成した上に縦添えする前記マイカテープ及び又は金属テープの厚さは、0.05mm以上である請求項1,2又は3に記載の低発煙性ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−153003(P2008−153003A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338160(P2006−338160)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】