説明

低真空軟X線実験装置

【課題】シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線照射実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供する。
【解決手段】低真空軟X線実験装置において、超高真空(Pbl<1×10-7Torr)の放射光ビームライン1と差動排気室(3、5)を介して接続された低真空(Pex>1×10-2Torr)に保たれた実験槽8で、最終段のオレフィスが円錐管6の先端に設置されている。又、試料7が配置される実験槽8を透明部材で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低真空領域での軟X線放射光実験を可能とする低真空軟X線実験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
約0.1 - 2 keVのエネルギーが低く透過性の弱いX線を軟X線と呼ぶが、このエネルギー領域でエネルギーを連続的に変化させられる光源は実用上シンクロトロン放射光以外に無い。
【0003】
シンクロトロン放射光源から放出される軟X線を物質に照射し、その結果物質から放射される光子、電子等を検出し、物質の組成、構造、磁気的状態、電子状態等に関する情報を得る実験手法は数多く存在し、例えばX線光電子分光法(XPS)、X線吸収分光法(XAFS)、X線発光分光法(XES)、X線磁気円二色測定法(XMCD)、X線磁気線二色測定法(XMLD)等が挙げられ(非特許文献1、非特許文献2)、研究や検査手法として広く用いられている。シンクロトロンから放出された軟X線は、ビームラインと呼ばれる一連の機構中に導かれ、エネルギー選別、形成、集光等の操作をされた後、試料に照射される。
【0004】
しかし、軟X線は図1に示すように、透過性が弱く1気圧(760Torr)の大気中1cmを透過することが殆どできない。よって、シンクロトロン加速器、ビームライン、更に試料の配置される実験槽等も超高真空に保たれる必要があり、測定条件も通常は超高真空条件下に限られる。
【0005】
よって、上記の軟X線測定手法が適用できる試料は、超高真空(0.0000001Torr以下)に導入可能な試料に限られ、比較的水分を多く含む試料等の測定はできない。更に超高真空下では試料取り扱いに多大な制限が生じ、試料交換等の操作も煩雑である。また、ほとんど全ての実験槽はステンレス製であり実験中、操作中の試料の視認性がよくないになるという実験上の欠点がある。
【0006】
図1に示したように、条件を選べば100Torr程度であれば、1cmの空気に対する軟X線の透過率も6〜7割を超える。更に10Torrであれば概ね7割以上となる。大気圧に近い条件下で軟X線実験を行う方法として、高圧(または大気圧)XPS法(非特許文献3)が開発されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C. S. Fadley、 Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 547 (2005) 24
【非特許文献2】J. B. Kortright et al、 J. Magn. Magn. Mater. 207 (1999) 7
【非特許文献3】D.F. Ogletree、 H. Bluhm、 G. Lebedev、 C.S. Fadley、 Z. Hussain、 M. Salmeron、 Rev. Sci. Instrum. 73 (2002) 3872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献3は、ビームライン末端を薄いアルミニウム箔またはチッ化シリコン箔で塞ぎ、半球型アナライザー前段の電子レンズ部を差動排気して1 Torr程度の圧力下でのXPS測定を行うものである。しかし、本発明者らが検討した結果、ビームライン末端の薄膜については破損しやすく、この破損は最悪の場合超高真空ビームラインの超高真空を破壊することが予想された。また、この装置の実験槽は従来の超高真空装置と同様のステンレス製であり、試料の取り扱い、視認性については超高真空で行うXPSと変わりはない。したがって、従来の問題点としては、軟X線実験に於いて超高真空に適応する試料しか対象にできない点、試料の取り扱いが煩雑な点、視認性が悪い点等があげられる。
【0009】
本発明の目的は、シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を改善し、軟X線実験を低真空領域で可能にし、且つ試料の取り扱い、視認性を改善するために、差動排気系をビームラインと実験槽との間に配置し、実験槽として透明プラスチックまたはガラス、改造したアクリル製のグローブボックスを用いることを特徴とする。このとき、サンプル周囲のワーキングスペースを確保するため、試料槽(実験槽)と差動排気部を繋ぐピンホールは円錐状の管の先端に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、差動排気系をビームラインと実験槽との間に配置することによりシンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、実験槽として透明プラスチックまたはガラスを用いることにより試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】各圧力での1cm大気に対するX線の透過率とX線エネルギーとの関係を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る低真空軟X線実験装置の全体概略構成図であり、ビームライン、差動排気部、実験槽の関係を示す。
【図3】図2に示す低真空軟X線実験装置における差動排気部の調整機構の概念図である。
【図4】図2に示す低真空軟X線実験装置における差動排気部最終段ピンホールの実験槽内の設置位置を説明するための実験槽の概念図である。
【図5】図2に示す低真空軟X線実験装置における実験槽に電子分光器を取り付けた概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
超高真空(圧力が10-7Torr以下)に保たれたシンクロトロン放射光源からの放射光軟X線(約0.1keV-2.0keV)をビームラインと差動排気系を介して低真空(圧力が10-2Torr以上)に保たれる実験槽と繋ぐ低真空軟X線実験装置において、差動排気系は真空度の異なるAとB(真空度A<B)を繋ぐが、その間をいくつかの小さく区切られた領域間をオレフィス(またはピンホール)と呼ばれる小さい穴で繋ぎ、それぞれの領域を適当な排気速度のターボ分子ポンプで常に排気することで真空度の異なる複数の領域を繋ぐ機構であり、図2に、真空度がPblであるビームライン1と真空度がPeXである実験槽8が排気系1と排気系2の2段の差動排気で接続された場合の概念図を示した。図2では差動排気の排気室は第1の差動排気室3と第2の差動排気室5の2段だが、1段または3段以上でもよい。なお、差動排気室と差動排気部とは、コンフラットフランジまたはKFフランジを介して接続される。なお、同一符号は同一構成要素を示す。
【0014】
本実施の形態の場合、図2に示したオレフィス2、4、6は真空的に互いの小部屋を繋ぐだけでなく、ビームライン1を経て進んでくる放射光軟X線(約0.1keV-2.0keV)を最終的に実験槽8内に置かれた試料7に導く光路10としても働くので、精度よく一直線上に配置されなければならない。このため、図3に示すように各オレフィス2、4、6はベローズ管もしくはベローズ管を内包した真空XYステージ9と一組で設置されており、光路10に対する微調整を可能にし軟X線を確実に実験槽8内に導く。
【0015】
また、低真空による軟X線の減衰をなるべく減らすためビームライン最末端のオレフィス6と試料7との間の距離はなるべく短いことが望ましい。そのため、図4に示すように最終段のオレフィス6はコーン状に延び、実験槽8内に飛び出したビームライン1の終端に設置されている。この形状により、試料7の周りのワークスペースが確保される。また、ビームライン1からこのコーン状のオレフィス6までは高真空に対応した材料(ステンレス等)が望ましい。
【0016】
実験槽8は、透明なプラスチック(アクリル、ポリカーボネート、またはその他)またはガラス製であり例えば、柱、骨組み21等の一部が金属製でもよい。試料7の取り扱いを容易にするため、実験槽8は通常のグローブボックスのようになっており、薄い手袋20を介して実験槽内部に手を入れることができ、試料交換その他のためにロードロックとなる小部屋が付属していてもよい。実験槽8の真空はバタフライバルブ或いは他の適当なバルブを介してロータリーポンプ、或いはスクロールポンプ等の適当なポンプで排気されており、真空度が0.01〜10Torr程度に保たれる。
【0017】
本実施の形態によれば、XPS等の軟X線実験等で煩雑であった試料の取り扱い、交換等が容易となり、試料周辺の視認性のよい低真空軟X線実験装置を実現する。また、これまで超高真空に導入することができず、XPS等の軟X線実験が適応できなかった試料についても軟X線実験が可能になる。図1に示したように軟X線の1cmの大気に対する透過率は100Torrでは10%以下になるエネルギー領域もあるが、10Torrであれば概ね70%以上となり、軟X線照射実験に十分実用的な透過率が得られる。
【0018】
超高真空下では軟X線照射による、試料帯電(チャージアップ)が問題になり最悪測定不能になるが、低真空下では試料周辺雰囲気が帯電を緩和するため帯電が問題にならない。このことにより、超高真空下では実験困難な絶縁体試料の測定も可能になる。また、通常の超高真空実験槽はステンレス製で高価であるが、グローブボックスをベースにしたプラスチックまたはガラス製の低真空実験槽は比較的安価に製作可能という効果も望める。
【0019】
また、非特許文献3と異なり、XPSアナライザーの前段についた電子レンズ系を差動排気するというシステムを用いる必要がなくXPS以外の手法にも適応できる。
【0020】
軟X線照射により試料から放射される光子、電子等を検出し、分析する分析器としては、X線光電子分光法(XPS)、X線吸収分光法(XAFS)、X線発光分光法(XES)、X線磁気円二色測定法(XMCD)、X線磁気線二色測定法(XMLD)等による分析器を用いることができる。
【0021】
以下、実施例により説明する。
【実施例1】
【0022】
第1の実施例について、図5を用いて説明する。図5は、図2に示す低真空軟X線実験装置における実験槽に電子分光器を取り付けた概念図である。なお、図示はしていないが、他の構成要素として実験槽内の試料台や試料台へ試料を搬送するための試料搬送系、試料台回転移動機構、装置全体を制御する制御部、軟X線を試料に照射することにより試料から放射される光子や電子等の分析器で分析されたデータを解析する解析部、解析結果を表示する表示部等を備えることができる。
【0023】
軟X線実験として最も一般的なのはXPSであるが、本低真空軟X線実験装置もXPSに適応が可能である。図5では、低真空軟X線実験装置として、前述の電子レンズ部を差動排気する機構の電子エネルギー分析器(電子分光装置)11を低真空システムに接続した例を示す。放射光低真空XPSは既に市販されているが、これらは、非特許文献3に関連して説明したように、ビームライン終端をアルミニウムまたはチッ化シリコンの薄膜で塞ぎ、超高真空のビームラインと低真空の実験槽を仕切っている。しかし、この薄膜の破損は常に問題であり、薄膜の存在しない本発明の方に利点がある。
【0024】
図5に示す実験槽を備えた低真空軟X線実験装置を用いて1cm角に切断した未乾燥の植物の葉(試料)を観察したところ、シンクロトロンの超高真空破壊を危惧することなく実験することができ、良好な結果を得ることができた。また、実験槽内での視認性がよく、試料を容易に取り扱うことができた。
【0025】
以上、本実施例に拠れば、シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することができる。また、生体であっても観察が可能となる。
【実施例2】
【0026】
次に、第2の実施例について説明する。ここでは、本実施例に係る低真空軟X線実験装置を用いた場合の試料の帯電の抑制効果について述べる。
超高真空下で軟X線が試料に照射されると光電効果により電子が飛び出し、その結果試料は正に帯電する。試料が導体の場合、帯電はアースからの電子が流れ込むことにより中和される。試料の抵抗値が0.1Ωm以下の半導体、または絶縁体の場合はこの効果が望めないため試料の帯電は中和されず、仕事関数が増大するため最終的に電子は試料の外に脱出できなくなり、測定が不能になる。このため、半導体、絶縁体の軟X線照射実験を行うためには電子銃による帯電の緩和等の操作を要する。
【0027】
本実施例に係る低真空軟X線実験装置の場合、実験槽内は低真空のため試料周囲には充分な量の気体分子があり、試料の帯電を気体分子が緩和する。このため、特殊な操作をすること無く半導体、絶縁体に対する軟X線照射実験が可能になる。
【0028】
図5に示す実験槽を備えた低真空軟X線実験装置を用いて1cm角に切断したガラス基板(試料)を観察したところ、シンクロトロンの超高真空破壊を危惧することなく又帯電の影響を抑制した状態で実験することができ、良好な結果を得ることができた。また、実験槽内での視認性がよく、試料を容易に取り扱うことができた。
【0029】
以上、本実施例に拠れば、シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することができる。また、絶縁体であっても帯電の影響を抑制した観察が可能となる。
【実施例3】
【0030】
次に、第3の実施例について説明する。ここでは、本実施例に係る低真空軟X線実験装置を用いて真空度を悪化させるような試料の観察について述べる。
XPS等一般の軟X線実験は水分を多く含む試料、活性炭などのガス放出量の多い試料、蒸気圧の高い試料は超高真空に導入することができないため測定ができない。しかし、本実施例に係る低真空軟X線実験装置の実験槽では比較的圧力を高く保てるため、水分の蒸発や脱ガス等を押さえることができ、上記のような試料の軟X線実験も可能になる。
【0031】
図5に示す実験槽を備えた低真空軟X線実験装置を用いて活性炭(試料)を観察したところ、シンクロトロンの超高真空破壊を危惧することなく又帯電の影響を抑制した状態で実験することができ、良好な結果を得ることができた。また、実験槽内での視認性がよく、試料を容易に取り扱うことができた。
【0032】
以上、本実施例に拠れば、シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することができる。また、真空度を悪化させるような試料であっても観察が可能となる。
【実施例4】
【0033】
次に、第4の実施例について説明する。ここでは、本実施例に係る低真空軟X線実験装置における実験槽について述べる。
具体的な実験槽としてはアクリル等の透明プラスチック製グローブボックスにCF規格或いはKF規格の真空対応ポートを設置したものが考えられ、通常のステンレス製超高真空実験槽に比べて安価で製作可能という効果も生じる。
【0034】
これらの材料で作成した実験槽を備えた低真空軟X線実験装置を用いて1cm角に切断した未乾燥の植物の葉(試料)を観察したところ、シンクロトロンの超高真空破壊を危惧することなく実験することができ、良好な結果を得ることができた。また、実験槽内での視認性がよく、試料を容易に取り扱うことができた。
【0035】
以上、本実施例に拠れば、シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することができる。また、実験槽としてはアクリル等の透明プラスチック製グローブボックスにCF規格或いはKF規格の真空対応ポートを設置することにより、製造コストを低減することができる。
【実施例5】
【0036】
次に、第5の実施例について説明する。ここでは、本実施例に係る低真空軟X線実験装置における実験槽内の真空度について述べる。
例えば、実験槽の真空度(PeX)が10Torrのとき、第3のオレフィス6と第2のオレフィス4で挟まれた領域(差動排気室2)の真空度は0.1Torr〜0.001Torr程度、第2のオレフィス4と第1のオレフィス2で挟まれた領域(差動排気室1)の真空度は0.001Torr〜0.00001Torr程度、ビームライン1の真空度(Pbl)は0.0000001Torr以下程度になる。
【0037】
図5に示す実験槽を備えた低真空軟X線実験装置において、実験槽内の真空度を10Torrとして活性炭(試料)を観察したところ、シンクロトロンの超高真空破壊を危惧することなく実験することができ、良好な結果を得ることができた。また、実験槽内での視認性がよく、試料を容易に取り扱うことができた。
【0038】
以上、本実施例に拠れば、シンクロトロンの超高真空を破壊することなく低真空領域での軟X線放射光実験を可能にすると共に、試料の操作性、視認性に優れた低真空軟X線実験装置を提供することができる。また、実験槽の真空度を低くすることにより揮発性の高い試料であっても容易に観察をすることができる。
【0039】
以上、本願発明を詳細に説明したが、以下に主な発明の形態を列挙する。
(1)圧力が1×10-7Torr以下の放射光のビームラインに接続される差動排気室と、
前記差動排気室に接続され、圧力が1×10-2Torr以上で使用される実験槽と、を備え、
前記実験槽に最も近い最終段のオレフィスが円錐管の先端に設置されていることを特徴とする低真空軟X線実験装置。
(2)シンクロトロン放射光源から放出された放射光のビームラインに接続される差動排気室と、
前記差動排気室に接続され、圧力が1×10-2Torr以下で使用され、その構成部材として透明部材を含む実験槽と、
前記放射光が前記実験槽内に配置される試料に照射されることにより前記試料から放射される光子または電子を分析する分析器と、を備えることを特徴とする低真空軟X線実験装置。
【0040】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…ビームライン、
2…オレフィス1、
3…差動排気室1、
4…オレフィス2、
5…差動排気室2、
6…オレフィス3(円錐管)、
7…試料、
8…実験槽、
9…XYステージまたはベロー管、
10…X線光路、
11…(低真空用)電子分光装置(電子エネルギー分析器)、
20…手袋(グローブ)、
21…実験槽の柱、骨組み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力が1×10-7Torr以下の放射光のビームラインに接続される差動排気室と、
前記差動排気室に接続され、圧力が1×10-2Torr以上で使用される実験槽と、を備え、
前記実験槽に最も近い最終段のオレフィスが円錐管の先端に設置されていることを特徴とする低真空軟X線実験装置。
【請求項2】
前記ビームライン、前記差動排気室、及び前記実験槽は、第1及び前記最終段のオレフィスでそれぞれ接続され、それぞれのオレフィスは同時に前記放射光の光路となり、前記ビームライン内を通過してくる前記放射光がそれぞれのオレフィス中央を通過できるよう調整機構として、それぞれのオレフィスの前にはベロー管、或いはXYステージが設置されていることを特徴とする請求項1記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項3】
前記差動排気室と前記実験層との間には、更に1つ以上の差動排気室が備えられていることを特徴とする請求項1記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項4】
前記最終段のオレフィスが先端に設けられている前記円錐管は、前記実験槽内部にせり出していることを特徴とする請求項1記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項5】
前記最終段のオレフィスは、前記実験槽に設置される試料との距離が短くなるように配置されることを特徴とする請求項4記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項6】
前記実験槽は、低真空に保つ為に、ロータリーポンプまたはスクロールポンプで排気されることを特徴とする請求項1記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項7】
前記実験槽は、内部の視認性のよいプラスチックまたはガラスを構成要素として含むことを特徴とする請求項1記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項8】
前記プラスチックは、アクリルまたはポリカーボネートであることを特徴とする請求項7記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項9】
前記実験槽は、補強部材として金属を含むことを特徴とする請求項7記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項10】
前記金属は、ステンレスであることを特徴とする請求項9記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項11】
前記差動排気室と前記差動排気室内を排気する差動排気部とは、コンフラットフランジまたはKFフランジを介して接続されることを特徴とする請求項1記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項12】
シンクロトロン放射光源から放出された放射光のビームラインに接続される差動排気室と、
前記差動排気室に接続され、圧力が1×10-2Torr以下で使用され、その構成部材として透明部材を含む実験槽と、
前記放射光が前記実験槽内に配置される試料に照射されることにより前記試料から放射される光子または電子を分析する分析器と、を備えることを特徴とする低真空軟X線実験装置。
【請求項13】
前記ビームライン、前記差動排気室、及び前記実験槽は、第1及び最終段のオレフィスでそれぞれ接続され、
前記最終段のオレフィスは、前記実験槽内部にせり出して配置された円錐管の先端に設けられていることを特徴とする請求項12記載の低真空軟X線実験装置。
【請求項14】
前記分析器は、X線光電子分光法、X線吸収分光法、X線発光分光法、X線磁気円二色測定法、或いはX線磁気線二色測定法を用いた分析器であることを特徴とする請求項12記載の低真空軟X線実験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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