説明

低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物

【課題】柔軟性と耐熱性に優れており、かつ卓越した耐傷性を有する低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物の提供。
【解決手段】JIS K7215規定の硬度が1A〜40Aであり、軟化温度が80〜170℃である熱可塑性ゴム重合体組成物(A)、とりわけ熱可塑性架橋ゴム重合体(A−1)と熱可塑性非架橋ゴム重合体(A−2)とからなる熱可塑性ゴム重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物に関するものである。更に詳しくは、柔軟性と耐熱性に優れており、かつ卓越した耐傷性を有する低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性オレフィン系エラストマー等のゴム状重合体とポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このような熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)により製造されたオレフィン系エラストマー(下記特許文献1、2を参照。)を用いる動的架橋技術が知られているが、硬度が高いために柔軟性が充分でなく、必ずしも市場では満足されていない。
一方、柔軟性を改良するための従来技術として、重合型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いたフィルム等の成形体(特許文献3〜5を参照。)が知られている。
【0003】
上記組成物は耐熱性に劣り、産業界では実用的使用に耐える低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物が求められている。
【特許文献1】特開平8−120127号公報
【特許文献2】特開平9−137001号公報
【特許文献3】特開2004−2825号公報
【特許文献4】特開2003−313330号公報
【特許文献5】特開2003−257893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち柔軟性と耐熱性に優れており、かつ卓越した耐傷性を有する低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、優れた柔軟性、耐熱性及び耐傷性に優れた熱可塑性ゴム重合体組成物を鋭意検討した結果、特定のポリマーの組み合わせにより、驚くべきことに柔軟性、耐熱性と耐磨耗性が飛躍的に向上せしめることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、JIS K7215規定の硬度が1A〜40Aであり、軟化温度が80〜170℃である熱可塑性ゴム重合体組成物(A)を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の低硬度熱可塑性ゴム重合体組成物は、柔軟性、耐熱性と耐傷性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明の組成物(A)は、好ましくは熱可塑性架橋ゴム重合体(A−1)と熱可塑性非架橋ゴム重合体(A−2)からなる。
ここで、(A)がJIS K7215規定の硬度が1A〜40Aであり、軟化温度が80〜170℃であることが重要である。柔軟性の指標の上記硬度の要件と耐熱性の指標の上記軟化温の要件を満足する場合にのみ柔軟性を保持しつつ、耐傷性が向上する。
そして、熱可塑性を維持しつつ、架橋された(A−1)と熱可塑性の非架橋の(A−2)との組み合わせにより、柔軟性と耐傷性のバランス特性が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
本発明において、(A)は本願の要件を満足しておれば特に制限されないが、好ましくは熱可塑性架橋ゴム重合体(A−1)と熱可塑性非架橋ゴム重合体(A−2)からなることが好ましい。
(A−1)成分
本発明における(A−1)は、架橋性ゴム状重合体(A−1−1)と熱可塑性樹脂(A−1−2)からなることが好ましく、さらにJIS K7215規定の硬度が41A〜90Aであることが好ましい。
【0009】
本発明における(A−1)の中の(A−1−1)は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び該ジエン系ゴムを水素添加した飽和重合体ゴム(水素添加共重合体ゴム)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等のエチレン・α―オレフィン共重合体等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
また(A−1−1)は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましい。
【0010】
そして、(A−1−1)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50〜120である。
本発明において(A−1−1)の中で好ましい重合体の一つはエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1−1α)であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。
【0011】
また、(A−1−1)は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が挙げられる。とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
本発明において(A−1−1)の好ましい共重合体の一つであるエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、(A−1−1α)のエチレン・α−オレフィン共重合体という。)は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
【0012】
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
【0013】
本発明において用いられる(A−1−1α)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率は組成物の硬度、引張強度等の観点から60重量%以下が好ましく、一方、柔軟性、機械的強度の観点から1重量%以上が好ましい。
(A−1−1α)のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低い本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0014】
本発明にて用いられる(A−1−1α)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体としては、米国特許明細書第5278272号明細書等に記載されている。
【0015】
また、(A−1−1α)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、室温以上に熱天秤(DSC)の融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明にて用いられる(A−1−1α)のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、0.01〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。本発明の組成物は特に架橋される場合には100g/10分以下が好ましく、また、流動性、加工性の観点から0.01g/10分以上が好ましい。
【0016】
本発明において、(A−1−1)のもう一つの好ましい共重合体である上記水素添加共重合体(A−1−1β)は、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムであって、ランダム共重合体の全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加共重合体ゴムが好ましく、とりわけ主鎖および側鎖に二重結合を有する重合体及び/または共重合体からなる不飽和重合体ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加共重合体ゴムであることが好ましい。
上記水素添加共重合体ゴム(A−1−1β)において、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体(以下、共重合可能な単量体という。)を共重合することができる。
【0017】
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
また、前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
【0018】
(A−1−1)としての水素添加共重合体(A−1−1β)において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、また、ビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体を含む場合は、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体とはランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体および/またはブロック状の共重合可能な単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
【0019】
上記水素添加共重合体(A−1−1β)中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下である。このような水素添加共重合体ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0020】
このような水素添加共重合体(A−1−1β)は、上述のジエン系ゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hung Yu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルトー有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケルー有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。
【0021】
ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号の各公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
【0022】
また、水素添加共重合体(A−1−1β)の25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
本発明にて用いられる(A−1−1)の架橋性ゴム状重合体は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0023】
本発明において、(A−1−1)の架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐傷性及び耐油性が向上する。
本発明において(A−1−1)の架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
【0024】
本発明における(A−1)の中の熱可塑性樹脂(A−1−2)は、とくに制限はないが、たとえば、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。
中でも(A−1−2)としてオレフィン系樹脂が好ましく、例えばエチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂が挙げられ、特にプロピレン系樹脂が更に好ましい。
【0025】
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む。)等が挙げられる。
【0026】
本発明において、(A−1−2)成分の中でも、架橋型オレフィン系樹脂であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂(A−1−2α)及び/または、分解型オレフィン系樹脂であるプロピレン系ブロック共重合体樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂(A−1−2β)が好ましく、特に両者との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
(A−1−2α)として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
【0027】
(A−1−2β)はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(A−1−2)は複数個の(A−1−2α)、(A−1−2β)成分の組み合わせでも良い。
(A−1−2α)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler-Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0028】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許0969043A1または米国特許5198401に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
【0029】
また、本発明にて好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度の観点から100g/10分以下であることが好ましく、また、流動性、成形加工性の観点から0.1g/10分以上が好ましい。
【0030】
本発明において、(A−1−1)と(A−1−2)からなる組成物100重量部中の各成分は、(A−1−1)が1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは20〜70重量%であり、(A−1−2)が1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは90〜20重量%、最も好ましくは80〜30重量%である。上記範囲内では、射出成形性と耐傷性のバランスが向上する。
本発明において、(A−1−1)と(A−1−2)からなる該組成物は、別個の(A−1−1)と(A−1−2)を押出機で溶融混合したものであっても良いし,また(A−1−1)と(A−1−2)を重合時に製造した重合型オレフィン系組成物であっても良い。このような重合型オレフィン系組成物は、オレフィン系ゴムの分散相とオレフィン系樹脂の連続相からなる重合法によって製造された熱可塑性エラストマーである。通常は多段重合法により製造される。
【0031】
本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの通常のポリマーブレンド法とは異なる手法である。
【0032】
多段重合法によって得られるオレフィン系架橋性ゴム組成物は、反応器中で(1)ハードセグメントと、(2)ソフトセグメントとが二段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(1)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばプロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。また(2)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックおよびエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。
【0033】
(A−2)成分
本発明における(A−2)成分の熱可塑性非架橋ゴム重合体は、前記(A−1−1)の架橋前の熱可塑性を有するゴム状重合体であり、特に制限されないが、芳香族ビニル単量体単位を含有する熱可塑性ゴム状重合体であることが好ましい。また立体規則性についてはランダムでもブロックでも制限はされないが、耐熱性の観点から芳香族ビニル系ブロック共重合体が好ましい。
(A−2)成分の代表例の一つとして、芳香族ビニルブロックと共役ジエンブロックを有する共重合体またはその水素添加物が挙げられ、具体的には水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体である。
【0034】
このようなブロック共重合体は、芳香族ビニル単位と共役ジエン単位からなるブロック共重合体、または上記共役ジエン単位部分が部分的に水素添加または、必要に応じて、不飽和カルボン酸またはその無水物あるいはエポキシ変性されたブロック共重合体である。
上記ブロック構造は、芳香族ビニル単位からなる重合体ブロックをSで表示し、共役ジエン及び/またはその部分的に水素添加された単位からなる重合体ブロックをBで表示する場合、SB、S(BS)n 、(但し、nは1〜3の整数)、S(BSB)n 、(但し、nは1〜2の整数)のリニア−ブロック共重合体や、(SB)n X(但し、nは3〜6の整数。Xは四塩化ケイ素、四塩化スズ、ポリエポキシ化合物等のカップリング剤残基。)で示され、B部分を結合中心とする星状(スタ−)ブロック共重合体であることが好ましい。なかでもSBの2型、SBSの3型、SBSBの4型のリニア−ブロック共重合体が好ましい。
【0035】
上記ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。
また、上記ブロック共重合体を構成する共役ジエン単量体は、イソプレン、ブタジエン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ブンタジエン等を挙げることができ、特に1,3−ブタジエン及び/またはイソプレンが好ましい。
本発明において、(A−1)と(A−2)からなる組成物100重量部に対して、(A−1)は、1〜99重量部が好ましく、更に好ましくは1〜70重量部、最も好ましくは20〜60重量部である。
【0036】
(B)成分
本発明において、(A−1)は架橋剤(B)で架橋されることが好ましい。
(B)架橋剤は、(B−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(B−2)多官能単量体、(B−3)単官能単量体を含有する。上記(B)架橋剤は、(A−1)100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。上記範囲内では架橋のレベルが高まり、組成物の外観と機械的強度のバランスが向上する。
【0037】
ここで、(B−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、その具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0038】
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
上記(B−1)は、(B)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0039】
本発明において、(B)架橋剤に必要に応じて含まれる(B−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基が好ましい。官能基の数は2以上であるが、(B−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0040】
上記(B−2)は、(B)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0041】
本発明において用いられる前記(B−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
上記(B−3)は、(B)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%が好ましい。
【0042】
本発明において、最も好ましい(B)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン( 商品名パーヘキサ25B)または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシンー3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の(C)が存在するときの(C)の保持性が優れている。
【0043】
(C)成分
(C)成分は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0044】
これらの(C)成分は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では柔軟性と耐ブリード性のバランスが優れる。
本発明において、耐磨耗性が要求される場合は、必要に応じて、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3m/sec)以上であるポリオルガノシロキサンを添加することができる。
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0045】
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10−3m/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10−2m/sec)以上1000万(10m/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m/sec)以上200万(2m/sec)未満である。
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
【0046】
本発明の組成物の中でも、高温の圧縮永久歪または機械的強度等の高温ゴム特性が要求される場合は、リン酸エステル塩系、ソルビトール系、カルボン酸塩系で分類される結晶核剤を転嫁することができる。
【0047】
上記結晶核剤の具体例として、リン酸2、2’ーメチレンビス(4,6ージーtーブチルフェニル)ナトリウム、ビス(pーメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(pーエチルベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。 また上記無機フィラーの具体例として、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、ムーカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、中でも板状フィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
【0048】
上記結晶性向上剤の量は、(A)100重量部に対して、0.01〜200重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜150重量部、最も好ましくは0.1〜100重量部、極めて好ましくは0.1〜50重量部である。
本発明の組成物(A)の最も好ましい組み合わせは、(A−1−1)、(A−1−2)及び(C)からなる(A−1)、(A−2)並びに(C)からなり、さらに好ましくは(A−2)と、(A−1)中の(C)を除いた(C)の重量の和が(A−1)の重量より大きいことが好ましい。
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッキング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
【0049】
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、とりわけ(A−1)と(A−2)並びに(A−1−1)と(A−1−2)とを均一かつ微細に分散させることができ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめる必要性がある場合には、より適している。
【0050】
本発明の熱可塑性ゴム重合体組成物の中でも、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A−1)と(A−2)との溶融押出する際に、事前に(A−1)を製造した後に(A−2)と共に再度溶融押出してもよいし、押出機の前段で(A−1)を製造し、(A−2)をサイドフィードして後段で溶融混合して本発明の組成物を製造してもよい。ここで(A−1)の製造に関しては、(A−1−1)と(A−1−2)をよく混合し、押出機のホッパーに投入する際に、(B)を、(A−1−1)と(A−1−2)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。また(C)を押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A−1−1)と(A−1−2)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A−1−1)と(B)とが架橋反応し、さらに軟化剤(C)を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
【0051】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィ−ド部とサイドフィ−ド部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニ−ディング部分を有し、上記ニ−ディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
【0052】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いずれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
【0053】
本発明の組成物の最も好ましい製造法は、(A−1−1)と(A−1−2)とを溶融混合後、(B)により架橋する方法である。
こうして得られた組成物は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、発泡成形等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
(1) 軟化温度
セイコー電子工業(株)製 TMA100、SSC5000を用い、荷重5g/mm2における直径1mmのプローブが100μm浸入する温度(℃)を軟化温度とした。
(2)柔軟性
1mm厚さのシートを指で押さえた時のクッション感を柔軟性の指標とし、以下の基準で評価を行なう。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、少し硬い
× 硬く、クッション感はない
【0055】
(3) 耐傷性
先端が長さ10mm、幅1mmの長方形で、重さが300gのくさびを高さ5cmから1mm厚さシートに落下させてできた、シートの傷を目視で以下の基準で評価を行なう。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、傷が目立つ
× 傷つきが著しい
また同時にシートの傷をレーザー光で走査して傷深さを測定する。
(4)硬度
JIS K7215規定に準拠した方法で測定し、測定針がサンプルシートに接触してから10秒後の数値を硬度と定義する。
【0056】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いる。
(A)ゴム状重合体
1)エチレン・α−オレフィン共重合体
a)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−1)
特開平3ー163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−1と称する)
b)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−2)
通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。(TPE−2と称する)
c)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPEー3と称する)
【0057】
2)水素添加共役ジエン系ゴム
a)水素添加ブタジエン重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、ブタジエン重合体を水素添加することにより製造する。ムーニー粘度は100である。(HーBRと称する)
b)水素添加スチレン・ブタジエンランダム共重合体
WO01/48079号公報に記載の方法に基づき、スチレン・ブタジエン共重合体を水素添加することにより製造する。前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、70/30(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(H−SBRと称する)
c)水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体
市販のスチレン(S)とエチレン・ブチレン(EB)ブロック共重合体(S/EB=35/65重量比)(SEBSと称する)
【0058】
3)熱可塑性樹脂
a)結晶性ポリプロピレン
市販のアイソタクチックホモポリプロピレン(PPと称する):MFR(温度230℃、荷重2.16kg)=0.5g/10分
【0059】
(B)架橋剤
1)架橋開始剤(B−1)
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(POXと称する)
2)多官能単量体(B−2)
トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
【0060】
(C)軟化剤
市販のパラフィンオイル(JIS K2283に準拠の40℃の動粘度:90cSt)(MOと称する)
【0061】
[実施例1〜8および比較例1〜3]
押出機として、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機を用いる。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いる。
表1に記載の組成の混合物を2軸押出機に導入し、160℃で溶融押出を行なう。
このようにして得られた組成物から200℃にて圧縮成形により1mm厚のシートを作成し、各種特性を評価する。
その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の熱可塑性ゴム重合体組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K7215規定の硬度が1A〜40Aであり、軟化温度が80〜170℃である熱可塑性ゴム重合体組成物(A)。
【請求項2】
(A)が熱可塑性架橋ゴム重合体(A−1)と熱可塑性非架橋ゴム重合体(A−2)とからなる請求項1に記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。
【請求項3】
(A−1)が架橋性ゴム状重合体(A−1−1)と熱可塑性樹脂(A−1−2)からなる、JIS K7215規定の硬度が41A〜90Aである請求項1または2に記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。
【請求項4】
(A−1−1)がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1−1α)、または主鎖および側鎖に二重結合を有する単独重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加ゴム(A−1−1β)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性ゴム系重合体組成物。
【請求項5】
(A−1−1α)がメタロセン触媒を用いて製造された請求項4に記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。
【請求項6】
(A−1−2)がオレフィン系樹脂である請求項3〜5のいずれかに記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。
【請求項7】
(A−1)が架橋剤(B)により架橋してなる請求項2〜6のいずれかに記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。
【請求項8】
更に軟化剤(C)、ポリオルガノシロキサン、結晶性向上剤から選ばれる剤を含有した請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。
【請求項9】
(A)が、(A−1−1)、(A−1−2)及び(C)からなる(A−1)、(A−2)並びに(C)からなる請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性ゴム重合体組成物。

【公開番号】特開2008−1808(P2008−1808A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172868(P2006−172868)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】