説明

低粉塵ビルディングパネルの製造方法

低粉塵ビルディングパネルが、 室温で固体であり、機械加工、切断、研削あるいは研磨から選ばれた条件下で溶融して微粉体を凝結および表面吸着の少なくとも一つにより複合粒子を形成する粉塵防止剤を選択して製造される。粉塵防止剤を使用して、水と、硫酸カルシウム半水和物とセメントのいずれか一方または両方の水硬性材料からスラリーを作る。スラリーができてから、このスラリーを表面材料上に置き、パネルとする。次いで、このビルディングパネルを硬化させる。ビルディングパネル製造の実施形態は、粉塵防止剤として天然あるいは合成ワックスを使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断、研磨あるいは切削したときに粉塵発生の少ないビルディングパネルの製造方法に関するものであり、特に、微細粉塵が発生したときに凝結させる粉塵防止剤を含むビルディングパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルディングパネルは、一般に屋内の壁、床および天井を作る材料として建築業界で使用されている。石膏やセメントなどの水硬性材料を水と結合させて形にし、硬化することでできる。パネルは、多くの特定の場所での使用に対し様々な特性を持つように作られる。主にセメントで作られたパネルは、例えばセラミック床タイルとして床下敷きに使用される。従来からの石膏パネルは、屋内の壁や天井を作るに使用される。
【0003】
特別の性状が必要な分野では、セメントあるいは石膏の特別なパネルが使用される。ユナイテッド・スティツ・ジプサム・カンパニー(United States Gypsum Company、シカゴ、イリノイ州)製造の“DUROCKセメントパネル”のようなセメントボードは、浴室のシャワー台やセラミックタイルの支持材として有用である。セメントボードは、かびの成長を受けないし、水で破損して洩れを起すこともない。
【0004】
石膏ボードは、見た目にきれいな表面が望まれる浴室に使用することができる。ユナイテッド・スティツ・ジプサム・カンパニー(United States Gypsum Company、シカゴ、イリノイ州)製造の“HUMITEK”または“MOLD TOUGH石膏パネル”などのビルディングパネルは、耐水性および/または防かび性があり、湿っている所あるいは湿度の高い環境での使用に適する。
【0005】
これらのビルディングパネルは、容易に手に入る切削工具、例えば円盤鋸、水鋸、マットナイフなどで所望の高さや長さに容易に切断されるので、建築に使用するに特に好ましい。切断面の端は、鋭く尖っている端部をなくし、あるいは丁度良い寸法にするために石膏の端を研磨して除去する。しかしながら、このパネルを切断あるいは研磨されるときに、二水和物結晶が切削されて大量の粉塵が発生する。
【0006】
石膏パネルの使用に対しても、高速工作機械を使用する傾向が強くなっている。コンセントやスイッチなどのための切り取りは、“ROTO ZIP(商品名)”切削具などの工具で素早くかつ簡単にできる。これらの工具は、手動工具でパネルを切断するのに比べて、大量の微粉塵粒子を発生している。
【0007】
空中を浮遊する粒子が問題である。石膏粒子は非常に微細であり、空気に同伴して定着するまでに長い距離を移動する。微細な粉塵は、閉め切ったドアや換気ダクトをも通過し、しばしば石膏粉塵が、建築がなされている家やビルディングから出ていく。粉塵粒子は、空中浮遊しているときに、空気中で生活あるいは作業している人に吸引される可能性もある。切断あるいは切削されるときに粉塵発生の少ない石膏製品が、この業界で長く求められていた。粉塵が少ないことは、広く散りばめられた微細石膏粉体を清掃する時間を大幅に短縮することにもなる。
【0008】
化合物で粉塵を結合する粉塵防止剤の添加は、特許文献1に記載されている。特許文献2では、内部バインダーとしてポリエチレングリコールを用いた噴霧型プラスターが、加工したときに微細粉塵を少なくしている。これらの文献には、粉塵防止剤を、複雑な高速プロセスである石膏パネルの製造時に添加することの記載はない。予期しない化学反応が、硬化工程を遅くしたり、未知の析出物でバルブを詰らせたりして、製造工程を遅くしたり止めたりすることがある。添加物は、水和反応を邪魔しない、あるいは他の添加物の作用を阻害しないことを確かめるに充分テストしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,673,144号明細書
【特許文献2】米国特許第6,355,099号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの問題点に鑑み、本発明の目的は、研磨、切断あるいは切削したときに発生する空気浮遊性の粉塵を少なくしたビルディングパネルを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
粉塵防止ビルディングパネルは、室温で固体であるが、切断、切削あるいは研磨から選ばれた条件で溶融して、少なくとも微粉体の凝結と表面吸収により複合体を作るような粉塵防止剤の一種を選んで製造される。粉塵防止剤が使用されて、水と、硫酸カルシウム半水和物およびセメントから選ばれた水硬性材料でなるスラリーが作られる。スラリーが作られてから、表面材料に載せ、パネルに成型する。ビルディングパネルは、その後硬化する。ビルディングパネルの実施形態では、粉塵防止剤として天然または合成ワックスを使用している。
【0012】
ビルディングパネルの1つの実施形態では、清澄な作業環境において、発生した粉塵が凝結されることから特に有用である。施工者の期待は、空中に浮遊する微粉体により損なわれない。空気に同伴して建物の別な場所に運ばれる粉塵の量は少なくなる。
【0013】
さらに、この粉塵防止剤は、他の化学反応の進行を阻害することもない。水和反応を遅延させることは見出されておらず、製造ラインを遅くすることはないであろう。望まない化学反応は最小になり、さらに製造能力を高める。
【発明を実施するための形態】
【0014】
低粉塵ビルディングパネルを製造する第1ステップは、粉塵防止剤を選ぶことである。粉塵防止剤は、室温で固体であるが、切断、切削、研磨から選ばれる条件では溶融して微粉体を凝結するものから選ばれる。
【0015】
切断、研磨あるいは研削する条件で、摩擦により生成した熱が、摩擦した近くでビルディングパネルの温度を高める。その近くの粉塵防止剤は、熱によって溶融する。微粉が発生すると、その微粉は、粉塵防止剤の液滴表面に付着し、空気中に分散することなく粉塵防止剤と一緒になる。液滴が粉塵と一緒になって重くなり、あるいは切断、研削あるいは研磨工程で温度が上がると、その液滴が加熱された表面から落下する。液滴は、粉塵防止剤の中に粉塵粒子を保持したまま落下し、固体になる。
【0016】
融点は、粉塵防止剤を選択するときに考慮しなければならない一つの基準である。少なくとも80°F(27°C)の融点は、粉塵防止剤が室温で固体であることと保証するためのものであるが、周囲あるいは部屋の温度を考えなくてはならない。建築が南部アメリカの暑い夏日に行う場合には、もっと高い融点が望ましいであろう。そのような場合、粉塵防止剤としては少なくとも90°F(32°C)、あるいは100°F(38°C)が有用である。
【0017】
融点は、さらに微粉が発生する条件で粉塵防止剤が溶融するに充分な限りで低くすべきである。高速工具の使用で摩擦が起こり、加工される部分での温度が高められていく。ある実施形態では、150°F(66°C)の融点を持つ粉塵防止剤が適している。ある実施形態における粉塵防止剤の融点は、90°F(32°C)から約150°F(66°C)である。ある実施形態では、約90°F(32°C)から約120°F(49°C)、あるいは約100°F(38°C)から約150°F(66°C)の融点をもつ粉塵防止剤を使用している。非常に高い摩擦が起きる場所では、約150°F(66°C)の融点をもつ粉塵防止剤の選択が考えられる。
【0018】
粉塵防止剤は、不活性で、反応性でなく、分散し易く、微粉塵粒子の表面に吸着して同時に互いに親和性をもつ傾向がある添加物である。好ましい粉塵防止剤は、室温で固体であり、切断条件で溶融し、その後で、切断時にパネルから落ちて凝結し、粉塵粒子と結合して複合粒子になり再固化するものである。
【0019】
一つあるいはそれ以上の粉塵防止剤が、スラリー用の水が加えられる前あるいは後に、石膏に加えられる。適切な粉塵防止剤は、パラフィンワックスとポリエチレングリコールのような合成ワックスである。好ましくは、粉塵防止剤は、高分子量の無定形ポリエチレングリコール粉体である。
【0020】
丁度室温以上の融点をもつポリエチレングリコールは、多くの理由から本発明に好ましく使用される。この材料は、その分子量と直接に関係して相変化する性質を持っている。低分子量ポリエチレングリコールは、室温で液体として存在するが、高分子量のものは固体で存在する。固体形状は、液体形状と同じように、ドライ組成物の調製に使用するに適している。低分子量形は、粉塵粒子の表面に吸着でき、これにより粉塵粒子を付着させることができる。
【0021】
高分子量形は、表面吸着、機械的凝結あるいはその両方を利用して複合粒子を作り、固体から液体に相変化して粉塵微粉を複合粒子にすることができる。分子量は、さらに溶解性にも関係する。高分子量ポリエチレングリコールは、低分子量ポリエチレングリコールより溶解性が低い。固体形状の低溶解性は、水が蒸発して移動することから、乾燥して濃度勾配となり易い。
【0022】
ポリエチレングリコール“PEG”は、共通の名前であるポリエチレンオキシドあるいはそのIUPACによる名称であるポリオキシ−1−エチレンと呼称され、公知の、従来重合技術で製造される。好ましい実施形態では、2,000ダルトンから約8,000ダルトンの分子量をもつポリエチレングリコール粉体が使用され、多くの建築資材に対して良好な粉塵防止性能となっている。
【0023】
ポリエチレングリコールの粉体でない形状のものの使用も考えられる。しかしながら、分子量が小さくなると、ポリエチレングリコール粉体に製造するのが困難になる。
【0024】
好ましいPEGは、ドライ混合物に加えるに便利なドライ粉体の形である。このドライ混合物にPEGが、水硬性組成物をベースにして13重量%、より好ましくは概略0.1〜8重量%、最も好ましくは0.5〜6重量%で加えられる。
【0025】
無定形のポリエチレングリコール粉体は、ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company;ミドランド、ミシガン州)から市販されているカーボワックス(CARBOWAX、商品名)、あるいはクラリエント・コーポレーション(Clariant Corporation;マウントホリー、ノースカロライナ州)から市販されているポリグリコールが使用できる。石膏製品では、満足できる粉塵コントロールにできる最少量のPEGを使用するのが好ましい。PEGは、石膏製品の乾燥時間を長くすると示されており、従って、特定の乾燥レベルに達する迄乾燥キルン中に置く時間を長くする必要である。プロセスの遅くなるのは、残留水分の蒸発であり、水和ではないので、硬化時間は変わらない。
【0026】
高度に枝分かれし、水への再分散性で、そして流動性のポリマー、すなわち、メトキシポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコールポリマーの代わりの内部バインダーとして使用することができる。T−PEGS(テトラヒドロフランポリエチレングリコール)もこの組成物に考えられ、または使用される。この組成物では、メトキシポリエチレングリコールポリマーの好ましい分子量は、2,000と5,000の間にある。
【0027】
ある実施形態では、粉塵防止剤を予め水中に分散させるのが望ましい。ある粉塵防止剤は、湿潤させるのが難しく、分散させるのに時間を要する。そこで、任意に、粉塵防止剤を水に入れる前に溶融させ、あるいは水を暖めて分散を助けることができる。
【0028】
予め分散した粉塵防止剤を製造すると、粉塵防止剤をより均一に分散させることが可能になり、特にミキサー中の滞留時間が秒オーダーである高速製造ライン上では重要である。
【0029】
また別に、硬化の前に、アルコキシル基が置換されたアルキレンオキシドを石膏スラリーに加えて、その場でPEGとすることができる。オキサイドは、酸触媒の存在で水と反応する。重合反応に対してコントロールされていないので、分子量幅の広いPEGが形成される。どのPEGが最も有効か正確にはわからないとき、この方法は有益である。
【0030】
セメントバッキングボードのような硬い材料は、硬い、高分子量のPEGであるのが有益である。硬い材料は、高い温度で柔らかくなる硬いPEGが必要である。PEGを使用したコンクリートパネルの実施形態で、PEGの分子量は、20,000ドルトン以上である。柔い材料は、低温で微粉体を発生させるので、これらの材料を凝結させるのに低分子量のPEGを使用する。
【0031】
パラフィン、密蝋、パームワックスあるいは大豆ワックスのような天然ワックスも、それらの融点特性が、室温において固体で、摩擦があると軟化あるいは液化するワックスである限り、粉塵防止剤として有用である。
【0032】
切断、研磨あるいは研削しているときなど、摩擦により発生する粉塵は、ワックスが柔らかいときに凝結される。凝結されたワックスが作業片から落ちると、粉塵粒子と一緒に固化することで、粉塵の除去が非常に簡単になる。
【0033】
PEGで記述したように、高分子量ワックスおよび/またはオイルは、任意に硬いセメントパネルに使用される。好ましい天然ワックスは、炭素数18〜29のパラフィンである。ワックスは、高速切断工具や手動の安全歯による場合など種々の切断操作で微粉塵を凝結できる平均融点となるようにブレンドすることができる。
【0034】
水硬性材料は、水が鉱物と化学的に結合して水和物を作って硬い製品に硬化する鉱物である。漆喰は、硫酸カルシウム半水和物から作られ、数分で水和されて硫酸カルシウム二水和物になる。
【0035】
商品名がシートロック(SHEETROCKR)の石膏パネル(ユナイテッド・スティツ・ジプサム・カンパニー、シカゴ、イリノイ州)は、漆喰ベースのビルディングパネルの例である。セメントのケイ酸塩化合物は、水和するにより長い時間かかる。これは、石膏と比較してセメントの硬化時間が長いことで説明できる。
【0036】
セメントで作られたビルディングパネルの例は、商品名“DUROCK”のセメントボード(ユナイテッド・スティツ・ジプサム・カンパニー、シカゴ、イリノイ州)である。石灰とフライアッシュを含むポゾランは、水硬性材料の別の例である。水硬性材料の混合物からなるビルディングパネルも考えられる。
【0037】
本発明の1つの実施形態では、漆喰あるいは硫酸カルシウム半水和物が、石膏パネルの製造に使用されている。石膏パネルは、ここで参考に示す米国特許6,893,752号で製造されている。
【0038】
漆喰の2つの形が一般に入手できる。α−形は、加圧下での粉末石膏を焼成して製造される。これは、流動性の良い針形状である。β−形は、針状結晶を作る。この形は、高価ではないが、流動性のためにより多くの水が必要である。この2つの形の一方、あるいは両方の混合物は、壁板パネルに使用されるが、β−焼成硫酸カルシウムは、価格が安く、入手が容易であることからより一般的に使用される。
【0039】
硫酸カルシウム半水和物は、水に加えられると二水和物に転換され、二水和物の内部連結マトリックスを形成する。水和の水は吸着され、スラリーは硬化し、硬くなって最終製品となる。
【0040】
水は、水硬性材料からスラリーを流動化させるに必要な量である。水の最適量は、水硬性材料の全てを水和させるに必要な量を超えている。水の正確な量は、少なくとも一部分で、選択された水硬性材料、その製品が使用される適用箇所、使用される添加物の量とタイプ、そして使用される漆喰がα−形かβ−形か、により決定される。水の重量とドライの水硬性材料の重量の好ましい比率は、約0.6:1から約1:1である。
【0041】
コアは、表面材料に接して、粉塵防止剤と漆喰のスラリーから形成される。スラリーに粉塵防止剤を加えると、スラリーと生成する結晶マトリックスに広く行き渡らせるのが可能になる。適切な粉塵防止剤は、室温において結晶マトリックス中において固体で存在するが、摩擦が加わるとビルディングパネルの一部の温度が上昇して、液化、あるいは粘稠になる。
【0042】
スラリーは、ドライ成分とウエット成分を混合して形成される。スラリーのドライ成分は、焼成した石膏とその他ドライな添加物であり、ミキサーに入れる前に互いに混ぜ合わせておく。
【0043】
水は、ミキサーへ直接計量して入れる。液体添加物は水に加えられ、それらを混合するためにミキサーを短時間動かす。ドライ成分は、ミキサー中の液体に加えられ、ドライ成分が湿潤する迄攪拌する。
【0044】
表面材料は、任意にビルディングパネルの少なくとも1つ面に置く。ビルディングパネルは複数の側面あるいは面があるが、全ての面が材料で覆われている必要はない。ある状況では、1つあるいはそれ以上の側面は、任意に表面材料で覆わないままにする。
【0045】
本発明の1つの実施形態は、1つの面にのみ表面材料のあるセメントパネルである。別の実施形態では、少なくとも1つの第2の面を有し、その第2の面に第2の表面材料を持つ石膏パネルである。1つ以上の面が表面材料で覆われ、ある面の表面材料は、任意に他の面に使用されている表面材料と同じあるいは異なるものにする。
【0046】
如何なる公知の表面材料も、ビルディングパネルに面するために使用されてよい。 紙、パルプあるいはデンプンを含む表面材料が、最も一般的である。圧縮紙は、入手し易く価格の安いことから、石膏パネルには好ましい表面材料である。
【0047】
表面材料は、任意に漂白されていてもよく、無漂白でもよい。紙は、1つあるいは1つ以上の層、すなわち積層でなっている。多積層が使用されるとき、1つあるいは1つ以上の積層が、互いに異なるものが適していると考えられる。
平滑な、漂白した紙は、しばしば、石膏パネルの1つ面に絵を書いたり飾り付けをするに良好な面になる。飾り付け面と反対側の石膏パネル面は、見えない基材に向うことになる。この見えない面は、しばしば無漂白の紙面で覆われる。
【0048】
パネルが、音を吸収するに使用される場合、その表面材料は、任意に音響的に透明にする。これらの材料は、音を反射させるより、通過させることができる。音響的に透明な表面材料の例は、ガラス布またはガラス繊維の織布である。音は、ガラスの繊維間を伝播していく。紙は、針打ちして、音波が紙を貫通することができるように孔を作っておかないと、一般的に音響的に反射する材料である。
【0049】
また、本発明において紙以外の表面材料を使用することも考えられる。表面材料は、プラスチック、繊維、織布あるいは不織布の繊維構造物でも作られる。セメントパネルは、しばしば強度のためにプラスチック織布で覆うことがある。ガラス繊維あるいは他の繊維も、このタイプのパネルにおける表面材料として知られている。
【0050】
セメントパネルが作成されるとき、表面材料は、一般に1つの面に使用される。好ましくは、表面材料は、天然あるいはプラスチック材料で作られた織布で、1つの面のみにを置かれる。しかしながら、コンクリートパネル上に2つ以上の表面材料を使用することも考えられる。
【0051】
スラリーは、均質なスラリーとなるように混合される。通常、水性の泡をスラリーに混合して、最終的なコア材料の密度を制御する。そのような水性の泡は、通常、適切な起泡剤、水および空気を高剪断混合して泡立たせ、その泡をスラリーに入れるようにする。泡は、ミキサー中のスラリー、あるいは好ましくはミキサーから出口配管に出るときのスラリーに入れる。例えば、米国特許5,683,635号を参照されたい。
【0052】
石膏ボード工場では、固体と液体が連続的にミキサーに加えられ、できたスラリーを連続的にミキサーから出していき、平均滞留時間が30秒未満であることはよくあることである。
【0053】
スラリーは、ミキサーから出口配管を通って1つ以上の出口から連続的に出て、動くコンベヤー上にある表面材料に載せられ、パネルに形成される。別の紙のカバーシートが、任意にスラリー上に置かれ、スラリーが2つのカバーシートの間に挟まれてサンドイッチにされ、カバーシートが生成する石膏パネルの表面材料となる。生成したボードの厚さは、成形ロールでコントロールされ、ボードの角端は、紙の端を連続的に切り落し、折り重ねられ、糊付けする適切な機械的装置によって、整えられる。
【0054】
さらにガイドが、硬化途上のスラリーが動いているベルトの上で移動するとき、所定の厚さと幅にする。形が整えられるとともに、焼成された石膏は、一部の水と反応して硬化し、石膏結晶の相互連結マトリックスを形成するに充分な条件(つまり約120°F(49°C)以下の温度)に保持される。
【0055】
次いで、ボードパネルは切断され、形を整えられてキルンに送り、硬化物を乾燥するが、ボードは幾分水分がある。
【0056】
本発明の別の実施形態は、セメントボードあるいはパネルに関するものである。セメントパネルの例、およびそれをどのようにして作るかは、ここで参考に示す米国特許5,030,502号に開示されている。ポートランドセメントは、好ましいセメントである。その他適切なセメントは、リン酸塩セメントおよび水硬性セメントである。
【0057】
セメントベースのビルディング材料では、粉塵防止剤が、製品を機械的な加工、切断あるいは切削により発生する温度で溶融するのが選ばれる。上記したように、粉塵防止剤は、微粉塵を発生したときに溶融し、それを凝結して速やかに落下し、空中浮遊し難いものから選ばれる。
【0058】
ドライ成分は、互いに一緒にされる。粉塵防止剤と硬化促進剤のような固体形状の添加物は、ミキサーに入れる前にセメントと一緒にする。ドライ材料がミキサーに入れられた後に、水と他の液体成分がミキサーに加えられ、均質なスラリーとなるまで混合する。このスラリーを、織布のような表面材料の上に載せる。
【0059】
セメントベースのパネルは、様々な方法でパネルに形成される。ある実施形態では、型枠に入れてパネルの形を作り、取扱いができる程充分固まるまで型枠中で硬化させる。また別の実施形態では、スラリーを、パネルをそのまま養生できるように、所定の形にしている。この場合では、パネルは、型枠に入れて形にされる。
【0060】
セメントが養生された後、形になったものを取り出し、ビルディングパネルをそのまま静置する。パネルを形成する如何なる方法も使用できる。
【0061】
本発明のある実施形態では、最終製品の1つ以上の性状を変えるために添加物がスラリーに加えられる。添加物の濃度は、最終ボードパネル1000平方フィート(“MSF”)あたりの量で報告される。多くの添加物は、石膏スラリーで共通に使用される。デンプンまたは消泡剤は、約6〜約20Ibs/MSN(29〜約97g/m2)で使用され、製品の密度と強度を高める。
【0062】
硬化遅緩剤(最大約2lb/MSF)(最大約9.7g/m2)あるいは硬化促進剤(最大約35lb/MSF)(最大約170g/m2)が、水和反応が起きる速度を変えるために加えられる。“CSA”は、硬化促進剤であり、95%の硫酸カルシウム二水和物と5%の砂糖を一緒に粉砕し、250°F(121°C)に加熱して砂糖をカラメル状にしたものである。“CSA”は、USGコーポレーション(USG Corporation、サウサード、オクラハマ工場)から入手可能であり、他の防腐剤に対する参考で示す米国特許3,573,947号により製造される。
【0063】
ガラス繊維は、任意に、少なくとも9lb/MSF(少なくとも43g/m2)の量でスラリーに加えられる。紙繊維も,最大で15lb/MSF(最大約73g/m2)でスラリーに加えられる。分散剤あるいは界面活性剤は、スラリーの粘性あるいは表面特性を変える共通の添加物である。ジェオ・スペシャルティ・ケミカルズ(Geo Specialty Chemicals、クリーヴランド、オハイオ州)から市販されているDILOFLOWなどナフタレンスルホン酸塩は、好ましい分散剤である。
【0064】
好ましくは、分散剤は、最大16lb/MSF(最大78g/m2)の量でコアスラリーに加えられる。下記に詳細に述べるワックスエマルションは、最終石膏ボードパネルの耐水性を改善するために、最大20ガロン/MSF(0.8l/m2)の量で石膏スラリーに加えられる。
【0065】
追加で、ピリチオン塩類を加えると有用である。ピリチオン塩類を他の添加物と一緒に使用したとき、悪い影響があることは知られていない。それ故、ピリチオン塩類は、他の添加物と一緒に石膏コアスラリーに加えると、硬化石膏コアの他の特性を変えることができて有用である。
【0066】
PEGを、泡と界面活性剤と組み合わせて加えるときには注意が必要である。ある種の界面活性剤は、PEGの存在で安定な微小泡を作る。この微小泡は、分散が容易でなく、一旦生成するとPEGの利点を生かすことができなくなる。このタイプの微小泡を作ることで知られる界面活性剤は、ドデシルベンゾエート系界面活性剤である。
【0067】
硬化石膏含有製品に中空を作るための起泡剤を用いて軽重量にする本発明の実施形態では、発泡硬化石膏製品を製造するに有効であると知られた従来の起泡剤は、いずれも使用できる。
【0068】
多くの起泡剤が良く知られており、商業的に、例えばジェオ・スペシャルティ・ケミカルズ(GEO Specialty Chemicals,アンバー、ペンシルヴァニア州)から入手できる。泡と、発泡石膏製品の好ましい製造方法は、ここで参考に示す米国特許5,683,635号に開示されている。
【0069】
フィラーも、この発明のある実施形態で使用が考えられている。引き延ばしたパーライトなどの軽量集合体が、任意に漆喰に加えられ、製品であるビルディングパネルの密度を下げることができる。小石または砂のような集合体も、セメント含有の実施形態に加えられる。ガラスビーズ、プラスチックビーズおよび有機あるいは無機繊維も、使用できる繊維の例である。フィラーの量は、選ばれたドライ水硬性材料のタイプおよび量に依り選ばれる。フィラーの量は、水硬性成分をベースにして、約20%から約200%の範囲である。
【0070】
ある実施形態で、製品の強度を高め、硬化石膏の耐たわみ性を改善するために、三メタりん酸塩が石膏スラリーに加えられている。
【0071】
好ましく、三メタりん酸塩化合物の濃度は、焼成した石膏の重量に対して約0.1%から約2.0%である。三メタりん酸塩を含む石膏組成物は、ここで参考に示す米国特許6,342,284号に開示されている。
【0072】
典型的な三メタりん酸塩類は、アスタリス,LLC(Astaris,LLC、セントルイス、ミズーリ州)から入手可能な三メタりん酸ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩がある。三メタりん酸塩化合物は、製品の強度を高め、かつ硬化石膏の耐たるみ性を下げるために、ある実施形態において石膏スラリーに加えられる。好ましくは、三メタりん酸塩化合物の濃度は、焼成した石膏の重量に対して約0.1%から約2.0%である。
【0073】
三メタりん酸塩化合物を含む石膏組成物は、ここに参考に示す米国特許6,342,284号に開示されている。典型的な三メタりん酸塩類は、三メタりん酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩であり、アスタリス,LLC(Astaris,LLC、セントルイス、ミズーリ州)から入手可能である。
【0074】
さらに、石膏組成物は、任意に、アルファー化デンプン(pregelatinized starch)または酸変性デンプンなどのデンプンを加えることができる。アルファー化デンプンを加えると、硬化および乾燥した石膏鋳造品の強度を高め、水分が高い条件 (例えば、焼成石膏に対して水の比が高いとき)で、紙が剥れる危険を少なくあるいはなくすることができる。
【0075】
当業界の通常の熟練者は、例えば、生デンプンを水に入れて少なくとも約185°F(85°C)の温度でクッキングする、あるいは別の方法など生デンプンをアルファー化(プレゲル化)する方法は精通しているであろう。アルファー化デンプンの適切な例は、限定されないが、ラウホッフ・グレイン・カンパニー(Lauhoff Grain Company)から入手可能なPCF1000スターチ(PCF 1000 starch)、およびアーチャー・ダニエル・ミドランド・カンパニー(Archer Daniels Midland Company)から入手可能なアメリコール818(AMERIKOR 818)HQMプレゲル(HQM PREGEL)がある。
【0076】
アルファー化デンプンを含む場合には、アルファー化デンプンは如何なる適切量であってもよい。例えば、アルファー化デンプンは、硬化石膏組成物の重量によって約0.5%から約10%の量になるよう硬化石膏組成物を形成する混合物に加えられる。
【0077】
本発明のある石膏実施形態は、かびの成長を減らすために殺微生物剤を加えている。
水分が存在する条件でかびの成長を抑えるために、ピリチオン塩類など公知の殺微生物剤が加えられる。殺微生物剤は、好ましくは、百万重量部の漆喰に対して100重量部の量で、スラリーに加えられる。ある実施形態では、石膏パネル中に殺微生物剤としてピリチオンナトリウム塩を使用している。
【0078】
セメントベース組成物からコアが製造されるとき、ビルディングパネルの特定の使用用途に基づいて、さらに多くの添加物が、任意に加えられる。
これらの添加物は、硬化促進剤、硬化遅延剤、粘稠剤、色材、防腐剤、その他添加物であり、公知の量で加えられる。
【0079】
特別の目的の添加物、およびその適切な量は、当業界の熟練者には知られている。顔料、染料あるいは着色剤のような色材は、特にフローリング用途に有用である。
公知の如何なる色材も、本発明に使用することができる。二酸化チタンは、組成物を白くするに特に有用である。色材は、このタイプの組成物に従来から用いられてきた方法によって加えれる。
【0080】
粉塵防止剤を用いた石膏あるいはセメントパネルの実施形態を示し、記載してきたが、当業者の人であれば、以下の特許請求の範囲に記載した発明から大きく逸脱することなくこれに変更及び修正することができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低粉塵のビルディングパネルを製造する方法であって、
室温で固体であり、機械加工、切断、研削あるいは研磨から選ばれた条件下で溶融して微粉体を凝結および表面吸着の少なくとも一つにより複合粒子を形成する粉塵防止剤を選択する粉塵防止剤選択段階、
水と、硫酸カルシウム半水和物とセメントのいずれか一方または両方の水硬性材料からスラリーを作るスラリー化段階、
前記スラリーを表面材料上に置くスラリー積載段階、
スラリーをパネルに形成するパネル形成段階、そして
スラリーを硬化するスラリー硬化段階、
とからなることを特徴とする低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項2】
前記表面材料は、紙、ガラス繊維、織布のグループから選ばれる1つであることを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項3】
前記スラリー上にさらに第2の表面材料を用いて挟んでサンドイッチにすることを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項4】
前記パネル形成段階は、型枠に入れるあるいは平らに敷きならすことを含むことを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項5】
さらにその場で粉塵防止剤を作る粉塵防止剤形成段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項6】
前記粉塵防止剤形成段階は、アルコキシル基置換アルキレンオキシドを水に入れることを特徴とする請求項5に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項7】
前記粉塵防止剤選択段階は、粉塵防止剤と天然ワックスのグループから選ばれる1つであることを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項8】
前記粉塵防止剤が、プロピレングリコールであることを特徴とする請求項7に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項9】
前記粉塵防止剤選択段階は、融点が約80°Fと約150°Fの間の粉塵防止剤を選択することを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項10】
前記粉塵防止剤選択段階は、融点90°Fと約120°Fの間の粉塵防止剤を選択することを特徴とする請求項9に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項11】
前記粉塵防止剤選択段階は、分子量が約1,000ダルトンから約20,000ダルトンの粉塵防止剤を選択することを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項12】
前記スラリー積載段階の前に、さらにスラリーに泡を加える泡添加段階を行うことを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項13】
さらに、強度向上剤、硬化時間変更剤、バインダー、フィラーおよびこれの混合からなるグループから選ばれる添加物を加える添加物添加段階を有することを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項14】
前記パネル形成段階は、スラリーを石膏パネルに形成する段階であることを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。
【請求項15】
前記パネル形成段階は、スラリーをセメントボードに形成する段階であることを特徴とする請求項1に記載の低粉塵ビルディングパネルを製造する方法。

【公表番号】特表2010−530347(P2010−530347A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512229(P2010−512229)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/061940
【国際公開番号】WO2008/156922
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】