説明

低粘度アントラサイクリン製剤

本発明は、アントラサイクリン化合物および芳香族化合物または複素環式化合物を含む製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントラサイクリン化合物と芳香族化合物または複素環式化合物とを含む製剤に関する。
【0002】
アントラサイクリン、例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、アクラルビシンまたはカルミノマイシンは悪性腫瘍疾患の治療において使用される。それらの薬剤の狭い治療濃度域ゆえに、いくつかのアントラサイクリン誘導体(Monneret,C. Eur.J.Med.Chem.,2001,36,483−493)およびプロドラッグ(Kratz,F.;Warnecke,A.;Schmid,B.;Chung,D.E.;Gitzel,M. Curr.Med.Chem.2006,13,477)が開発され、そして最初の候補の臨床試験が行われているところである。前記の試験の前提条件は、それぞれのアントラサイクリン誘導体の滅菌製剤の利用可能性である。アントラサイクリンの構造ゆえに、それらは溶液中で濃度、塩の濃度、温度およびpH値に依存して物理的な凝集物および自己結合(self−associate)を形成する(Hayakawa,E.et al., Chem.Pharm.Bull.1991,39,1009−1012)。物理的な凝集物は、滅菌濾過できないゲルの形成および粘質の溶液をもたらし得る。
【0003】
アントラサイクリンは水溶液中で凝集物を形成する("スタッキング効果")。最も一般的に使用されているアントラサイクリンであるドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンおよびイダルビシンについては、スタッキング効果を、酸性pH値および低い塩の濃度でアントラサイクリンを溶解することによって減少でき、従ってその溶液を滅菌濾過できる。特定のアントラサイクリン誘導体およびプロドラッグについては、前記の条件は得られる溶液の粘度を低下させるのに充分ではないか、あるいは安定性の問題のためにそれらを適用できない。凝集物の大きさは、アントラサイクリンの化学修飾に依存する。酸感受性プロドラッグにおいて、そのpHは開裂を防ぐために酸性であり過ぎてはならない。さらには、酸感受性プロドラッグまたは不安定性アントラサイクリン誘導体では、しばしば室温より低い温度で溶液を調整した後、次に溶液の粘度を増加させる滅菌濾過を行うことが望ましい。
【0004】
従って、本発明の課題は、低下した粘度を有するアントラサイクリン製剤を提供し、特にかかる製剤の滅菌濾過を可能にすることである。
【0005】
本発明によれば、前記の課題はアントラサイクリン化合物と芳香族化合物または複素環式化合物とを含む製剤によって解決される。
【0006】
本発明はアントラサイクリン化合物の、特にアントラサイクリン誘導体の溶液の凝集および/または粘度を低下させ、それらに滅菌濾過を適用できるようにする方法に関する。
【0007】
本発明において、芳香族化合物または複素環式化合物の添加がアントラサイクリン化合物、例えばアントラサイクリン誘導体、および/またはプロドラッグの凝集を防止または減少でき、従ってそれぞれの水溶液の粘度が低下することが判明した。本発明による芳香族化合物または複素環式化合物の添加によって、アントラサイクリン誘導体を含有する溶液の粘度を、滅菌濾過させるために充分に低く保つことが可能である。その結果、本発明の製剤は低温、特に<10℃、より好ましくは<5℃の温度においても、まだ充分に低い粘度を有している。これは特に有利である。なぜなら、アントラサイクリン化合物を含有する溶液は、より高い温度でしばしば低い安定性のみを示すからである。
【0008】
ここで使用される場合、滅菌濾過は特に、1μmのフィルターを通した、および好ましくは0.2μm、あるいはより小さいフィルターを通した濾過を示す。本発明の製剤の粘度は、18℃、特に10℃、好ましくは5℃、およびより好ましくは3℃の温度で、好ましくは≦1000mPa・s、より好ましくは≦100mPa/s、特に≦50mPa/s、さらにより好ましくは≦5mPa/sであり、特に≦2mPa/sである。
【0009】
本発明によれば、前記の製剤は芳香族化合物または複素環式化合物を含む。複素環式化合物は、それらの構造内に環を含む任意の化合物であり、ここでその環は炭素原子の他に少なくとも1つのヘテロ原子、特にO、N、SまたはP、特にOおよび/またはNから選択されるヘテロ原子を含有する。複素環は好ましくは1〜5個の、より好ましくは1〜3個の、および最も好ましくは1〜2個のヘテロ原子を含有する。
【0010】
芳香族化合物は、芳香成分を含む任意の化合物である。該芳香成分は、炭素原子のみを含有する環から、あるいはヘテロ原子、特にO、N、SおよびP.好ましくはOおよびNから選択されるヘテロ原子も含有する環から形成されてよい。
【0011】
本発明の製剤は、好ましくはアントラサイクリン化合物と芳香族化合物とを含む。
【0012】
本発明の芳香族化合物または複素環式化合物は、単環式または多環式であってよい。好ましい単環式のものは、安息香酸、およびその誘導体、例えばヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸(アルキル=メチル、エチル、プロピル、ブチル)、ベンジルアルコールおよびその誘導体、およびナイアシン、特にニコチン酸、および/またはニコチン酸アミド、およびその誘導体である。
【0013】
さらに好ましい本発明の芳香族化合物は、アミノ酸またはN−置換アミノ酸、例えばN−アセチル置換アミノ酸である。特に好ましいアミノ酸は、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジンまたはトリプトファンである。最も好ましいN−置換アミノ酸は、D−N−アセチルトリプトファン、L−N−アセチルトリプトファン、またはD,L−N−アセチルトリプトファンである。
【0014】
本発明の製剤はさらに、アントラサイクリン化合物、好ましくはアントラサイクリン誘導体を含む。好ましい実施態様において、アントラサイクリン誘導体は、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、アクラルビシンまたはカルミノマイシンから誘導される。アントラサイクリン誘導体は、特に、アントラサイクリンと生体分子との結合、および特にタンパク質との結合を可能にする結合成分を含有する。従って、好ましいアントラサイクリン誘導体は、マレインイミド、ハロゲンアセテートアミド、ハロゲンアセテート、ピリジルジチオ、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはイソチオシアネート基、最も好ましくはマレインイミド基を含有する。さらに好ましいアントラサイクリン誘導体は、アントラサイクリンヒドラゾン誘導体である。
【0015】
特に好ましいアントラサイクリン誘導体は、一般式:
【化1】

[式中、
1はOCH3、OC25、HまたはOHであり、R2はグリコシドであり、R4およびR5は独立してH、OH、C1〜C4−アルキル、特にC25、OC1〜C4−アルキルまたはC(CH23)=N−NH−COX−Yである。前記R3はHまたはOHであり、前記Xは連結基、特に、−(CH2n−、−(CH2n−C64−または−C64−である。前記n=1〜12であり、且つYは結合基、特にマレインイミド基、ハロゲンアセテートアミド基、ハロゲンアセテート基、ピリジルジチオ基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、イソチオシアネート基、ジスルフィド基、ビニルカルボニル基、アジリジン基またはアセチレン基である。ただし、R4およびR5の少なくとも1つがC(CH23)=N−NH−CO−X−Yである。]
を有する。
【0016】
本発明の実施態様において、アントラサイクリン誘導体は一般式:
【化2】

【0017】
[式中、
1はOCH3、H、OHまたはOC25であり;
2はグリコシド、特に3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘテロピラノシル(heteropyranosyl)、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシル、または3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(4−O−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシルであり;
3はH、OHまたはOCH3であり、且つ
nは1〜12の整数であり、特に、
【化3】

且つ、n=1〜12である。]
を有する。
【0018】
特定の実施態様において、アントラサイクリンはドキソルビシンであり、且つn=5である。即ち、該アントラサイクリン誘導体はドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体である。
【0019】
本発明のさらなる実施態様において、アントラサイクリン誘導体は一般式:
【化4】

[式中、
1はOCH3、H、OHまたはOC25であり;
2はグリコシド、特に3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘテロピラノシル、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシル、または3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(4−O−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシルであり;
3はH、OHまたはOCH3であり、且つ
nは1〜12の整数であり、特に、
【化5】

且つ、n=1〜12である。]
を有する。
【0020】
特定の実施態様において、アントラサイクリンはドキソルビシンであり、且つn=1である。即ち、該アントラサイクリンはドキソルビシンの6−フェニルアセチルヒドラゾン誘導体である。
【0021】
本発明のさらなる実施態様において、アントラサイクリン誘導体は一般式:
【化6】

[式中、
1はOCH3、H、OHまたはOC25であり;
2はグリコシド、特に3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘテロピラノシル、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシル、または3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(4−O−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシルであり;
3はH、OHまたはOCH3であり、且つ
【化7】

である。]
を有する。
【0022】
特定の実施態様において、アントラサイクリンはドキソルビシンであり、且つマレイミド誘導体は、3−または4−マレイミド安息香酸ヒドラジンである。即ち、該アントラサイクリン誘導体は、ドキソルビシンの3−または4−マレイミドベンゾイルヒドラゾン誘導体である。
【0023】
本発明による製剤は、好ましくは水性の製剤、特に少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも50質量%の水を含有する製剤である。特に好ましくは、該製剤は医薬組成物である。
【0024】
本発明によれば、アントラサイクリン化合物、特にアントラサイクリン誘導体と、芳香族化合物または複素環式化合物との間の比は変化し得る。アントラサイクリン誘導体と、芳香族化合物または複素環式化合物との間の好ましい比は、(質量に対して)約0.5〜10、特に0.8〜5である。
【0025】
製剤中のアントラサイクリン化合物の量は、製剤の総量に対して好ましくは0.1質量%〜10質量%、より好ましくは0.5質量%〜5質量%である。
【0026】
芳香族化合物または複素環式化合物、特に芳香族化合物の量は、好ましくは0.1質量%〜10質量%、特に0.2質量%〜5質量%である。
【0027】
典型的には、本発明の芳香族化合物または複素環式化合物を水あるいは緩衝液に添加した後にアントラサイクリン誘導体を添加するが、しかし必要であれば、該芳香族化合物または複素環式化合物をアントラサイクリン誘導体の後に添加してもよい。
【0028】
前記の緩衝液は、緩衝液を調製するために一般的な塩、例えばナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、またはクエン酸塩から製造される。前記の製剤はさらに、製剤学的な溶剤、または可溶化剤、例えばtert−ブタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1,2−プロピレングリコール、グリセロール、マクロゴール、ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシド、ツイーン、クレモフォア(Cremophor)またはポリビニルピロリドンを含有してよい。さらには、該製剤は賦形剤、例えばスクロース、マンニトールまたはラクトースを含有できる。安定性の理由から、緩衝液をその組成によってー20℃の温度に予冷してもよい。
【0029】
前記の緩衝液のpH値は、典型的にはpH4.0〜9.0の範囲、好ましくは5.0〜8.0の範囲である。
【0030】
本発明の特定の実施態様において、ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン(6−maleimidocaproylhyrazone)誘導体をD,L−N−アセチルトリプトファンの存在下で配合する。ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体(DOXO−EMCH)のD,L−N−アセチルトリプトファンに対するモル比は、約0.5〜2.0の範囲内である。医学組成物の製造のために、ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体を予冷した水、あるいは賦形剤としてのスクロースまたはマンニトールと、溶液の粘度を下げ、且つ滅菌濾過を可能にする本発明の複素環式化合物としてのD,L−N−アセチルトリプトファンとを含有する予冷したリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜6.5)に添加する。安定性上の理由から、該緩衝液を+6〜−5℃の範囲の温度に予冷する。D,L−N−アセチルトリプトファンが存在しない場合、DOXO−EMCH溶液の高い粘度のために、滅菌濾過が可能ではない。滅菌濾過のために、0.2μmのフィルターを有する市販のカートリッジを使用する。滅菌濾過の後、該DOXO−EMCH溶液をバイアルに充填し、そして凍結乾燥する。
【0031】
本発明の他の特定の実施態様において、ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体をD,L−N−アセチルトリプトファンおよびtert−ブタノールの存在下で配合する。ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体(DOXO−EMCH)のD,L−N−アセチルトリプトファンに対する比は、約0.5〜2.0の範囲内である。該医薬組成物の調製のために、ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体を、賦形剤としてのスクロースまたはマンニトールと、溶液の粘度を下げ、且つ滅菌濾過を可能にする本発明の複素環式化合物としてのD,L−N−アセチルトリプトファンとを含有する予冷したリン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0〜6.5)とtert−ブタノールとの混合物に添加する。緩衝液混合物中のtert−ブタノールの含有率は約20〜80%の範囲であり、好ましい実施態様においては50%である。安定性上の理由から、該緩衝液混合物を+6〜−15℃の範囲の温度に予冷する。D,L−N−アセチルトリプトファンが存在しない場合、DOXO−EMCH溶液の高い粘度のために、滅菌濾過が可能ではない。滅菌濾過のために、0.2μmのフィルターを有する市販のカートリッジを使用する。滅菌濾過の後、該DOXO−EMCH溶液をバイアルに充填し、そして凍結乾燥する。
【0032】
本発明を、以下の実施例において説明するが、それに限定されない。
【0033】
実施例1
オーバーヘッド攪拌機を据え付けたジャケット付きの容器に、pH値6.0を有し、リン酸ナトリウム10mMを含有する滅菌緩衝液4767mL(D,L−N−アセチルトリプトファン0.6%、およびD−スクロース5%)を添加する。該緩衝液を攪拌し、そして循環しているブライン溶液の助けによって該緩衝液の温度を+5℃に調節する。予冷された緩衝液に、塩酸ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体(DOXO−EMCH HCl)96.458gを添加する。DOXO−EMCH HClを攪拌によって溶解し、そしてAcropak500フィルター(0.8/0.2μm)を通して、−3℃に設定された第二のジャケット付き容器内へと滅菌濾過する。攪拌しながら、50mLのバイアルを、バイアル1つあたり122mgおよび244mgのDOXO−EMCHに相当する6.1mLおよび12.2mLの容積で即座に充填する。充填したトレイを凍結乾燥器内に設置し、そして下記の凍結乾燥サイクルに従って凍結乾燥を実施する:
【表1】

【0034】
実施例2
オーバーヘッド攪拌機を据え付けたジャケット付き容器に、tert−ブタノールと20mMのリン酸ナトリウムとが1:1の滅菌緩衝液混合物500mL(スクロース10%、N−アセチルトリプトファン1.2%(pH6.0))を添加する。該緩衝液混合物を攪拌し、そして循環しているブライン溶液の助けによって該緩衝液の温度を0℃に調節する。予冷された緩衝液混合物に、塩酸ドキソルビシンの6−マレイミドカプロイルヒドラゾン誘導体(DOXO−EMCH HCl)10gを添加する。DOXO−EMCH HClを30分間、攪拌によって溶解し、そしてAcropakフィルター(0.8/0.2μm)を通して、−8℃に設定された第二のジャケット付き容器内へと滅菌濾過する。攪拌しながら、100mLのバイアルを、バイアル1つあたり300mgのDOXO−EMCHに相当する15mLの容積で即座に充填する。充填したトレイを凍結乾燥器内に設置し、そして下記の凍結乾燥サイクルに従って凍結乾燥を実施する:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラサイクリン化合物と芳香族化合物または複素環式化合物とを含む製剤。
【請求項2】
アントラサイクリン化合物がドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、アクラルビシンまたはカルミノマイシンから誘導されるアントラサイクリン誘導体である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
アントラサイクリン化合物が、アントラサイクリンヒドラゾン誘導体である、請求項1あるいは2に記載の製剤。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の製剤において、アントラサイクリン誘導体が一般式:
【化1】

[式中、
1はOCH3、OC25、HまたはOHであり、R2はグリコシドであり、R4およびR5は独立してH、OH、C1〜C4−アルキル、特にC25、OC1〜C4−アルキルまたはC(CH23)=N−NH−CO−X−Yである。前記R3はHまたはOHであり、前記Xは連結基、特に、−(CH2n−、−(CH2n−C64−または−C64−である。前記n=1〜12であり、且つYは結合基、特にマレインイミド基、ハロゲンアセテートアミド基、ハロゲンアセテート基、ピリジルジチオ基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、イソチオシアネート基、ジスルフィド基、ビニルカルボニル基、アジリジン基またはアセチレン基である。ただし、R4およびR5の少なくとも1つがC(CH23)=N−NH−CO−X−Yである。]
を有する製剤。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の製剤において、アントラサイクリン誘導体が一般式:
【化2】

[式中、
1はOCH3、H、OHまたはOC25であり;
2はグリコシド、特に3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘテロピラノシル、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシル、または3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(4−O−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシルであり;
3はH、OHまたはOCH3であり、且つ
nは1〜12の整数であり、特に、
【化3】

且つ、n=1〜12である。]
を有する製剤。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の製剤において、アントラサイクリン誘導体が一般式:
【化4】

[式中、
1はOCH3、H、OHまたはOC25であり;
2はグリコシド、特に3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘテロピラノシル、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシル、または3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(4−O−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシルであり;
3はH、OHまたはOCH3であり、且つ
nは1〜12の整数であり、特に、
【化5】

且つ、n=1〜12である。]
を有する製剤。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の製剤において、アントラサイクリン誘導体が一般式:
【化6】

[式中、
1はOCH3、H、OHまたはOC25であり;
2はグリコシド、特に3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−アルファ−L−リキソ−ヘテロピラノシル、3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシル、または3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−4−O−(4−O−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル−テトラヒドロ−2H−ピラン−3−イル)−アルファ−L−リキソ−ヘキサピラノシルであり;
3はH、OHまたはOCH3であり、且つ
nは1〜12の整数であり、特に、
【化7】

である。]
を有する製剤。
【請求項8】
アントラサイクリンがドキソルビシンである、請求項5から7までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
n=5である、請求項5から8までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
アントラサイクリンがドキソルビシンであり、且つn=5である、請求項5から9までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
芳香族化合物または複素環式化合物が単環式である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
芳香族化合物が、非置換または置換された安息香酸である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
芳香族化合物が、ヒドロキシ安息香酸、アルキルヒドロキシ安息香酸またはベンジルアルコールである、請求項1から11までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
複素環式化合物がナイアシンである、請求項1から11までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
芳香族化合物または複素環式化合物がアミノ酸である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
芳香族化合物または複素環式化合物がN−置換アミノ酸である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
アミノ酸がチロシン、フェニルアラニン、ヒスチジンまたはトリプトファンである、請求項15から16までに記載の製剤。
【請求項18】
アミノ酸がD−N−アセチルトリプトファン、L−N−アセチルトリプトファン、またはD,L−N−アセチルトリプトファンである、請求項16に記載の製剤。
【請求項19】
芳香族化合物または複素環式化合物が二環式、三環式または四環式である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
複素環式化合物がリボフラビン、またはその誘導体である、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
アントラサイクリン誘導体と芳香族化合物または複素環式化合物とが、製剤学的に認容性の溶液または凍結乾燥された形態として調製される、請求項1から20までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
tert−ブタノールおよび/またはスクロースをさらに含む、請求項1から21までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
滅菌濾過された、請求項1から22までのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
癌疾患の治療のための、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項25】
アントラサイクリン化合物の溶液の凝集および/または粘度を、芳香族化合物および/または複素環式化合物を添加することによって減少させる方法。

【公表番号】特表2010−526845(P2010−526845A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507857(P2010−507857)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003969
【国際公開番号】WO2008/138646
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(310010450)カーテーベー トゥモーアフォルシュングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】